ゲスト
(ka0000)
息子の雄姿を
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/10/08 15:00
- 完成日
- 2018/10/09 11:49
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●運動会
地域行事の一環で、その街では毎年決まった季節になると運動会が行われていた。
今年もその季節がやってくる。
富める者も貧しい者も、身分ある者も自由人も、手続きを行えば皆平等に出場でき、観戦できる。
当然ぶっつけ本番で運動会が行われるわけではなく、何度かリハーサルが行われる。
そのリハーサルの時点から、保護者たちが詰め掛けていた。
そう。運動会の主役といえば、やはり子ども。
この運動会には、街中の子どもたちが参加するのが通例なのだ。
現在は徒競走のリハーサルが行われている。
「うちの子の方が速い!」
「いいやうちの子の方が速いね!」
「何いってるんだい! うちの子の方が速いに決まってるだろ!」
母親らしき女性たちが、まだリハーサルであるにも関わらず、観客席で押し合いへし合い、喧々囂々と自分の子どもの方が速いと主張し合っている。
「まだ本番じゃないのに、熱いぞ」
「うん、毎年恒例だけどね」
「リハーサルは酒が出ないのがなぁ」
「本番は半ば祭りみたいな感じだし、楽しみだねぇ」
父親らしき男性たちは母親たちとは打って変わってのほほんとしている。
「ただ今ゴールしました! 一着○○君、二着××君、三着△△君です!」
拡声された実況らしき男性の声が、運動会の舞台となっている広場に響き渡る。
その途端、母親である女性陣の団体から猛抗議が上がった。
「いやおかしいだろ! うちの子の方がどう見ても速かったじゃないか!」
「違う、うちの子の方が速かった!」
「いいや! うちの子が一番だ!」
「判定やり直せ! まともに審判できないなら引っ込め、クソ野郎!」
どいつもこいつも、自分の子どもが一番だと主張して止まない。
実際、目視で確認した限りでは、限りなく同着に近く、微妙な判断が求められた。
しかし、責任を順位の判定を行った審判に求めるというのは酷だろう。
彼らもプロではなく、ボランティアで行っている素人に過ぎないのだ。というか普通に彼らも参加している子どもたちの父兄である。
もっとも公平さを期するために、彼らは自分の子どもが走る場合は自主的に別の審判に交代することにしている。
順位をつけた審判役の父兄たちは、顔を見合わせるとため息をつく。
「やれやれ、毎年毎年判定にケチをつけてくる人たちがいて困るな」
「毎年恒例の、ある意味風物詩ではあるんだが、毎度こうだと堪える」
「まあ、実際判定ミスは必ず出るしなぁ」
顔を見合わせた父兄たちは相談を始めた。
本当は、彼らとて少しでも長く自分たちの子どもを応援したいのである。それを我慢して審判をしているのだ。
「こうなったら、ハンターに判定してもらうのはどうだ」
「いいかもしれないな。根本的に俺達とは動体視力が違うし、それなら間違いもないだろ」
「魔導カメラとかも持ってるかもしれないし、どうせなら競技中の写真撮影も全部お願いしたらどうだ? 空飛んだり姿を隠したりして俺達には思いもつかない方法やアングルで取ってくれるかもしれないぞ」
「いいな、それ! ゴールする瞬間を取ってもらえば順位も明確になる! リハーサルが終わったらさっそく依頼を出しに行こう!」
話が決まった父兄たちは、意気揚々とリハーサルの続きに戻った。
●ハンターズソサエティ
いつものように、上司の承認を得た依頼を受付嬢ジェーン・ドゥが掲示を行っている。
その日はよくある雑魔の殲滅依頼や犯罪者の捕縛、あるいは討伐依頼に混じって、毛色の違う依頼が掲示された。
「ねえ、いい依頼ある? 戦わなくても済みそうなものがいいんだけど」
よく顔を会わせるハンターが一人、ジェーンに話しかけてきた。
「ああ、ちょうどいいのがありますよ」
振り返ったジェーンはにこやかに営業スマイルを浮かべ、綺麗な立ち姿で依頼の説明を始める。
「とある街の地域振興を兼ねて毎年行われている運動会の写真撮影です。自前の、あるいはこちらで用意させていただく魔導カメラを使って、運動会の様子を写真に収めていただきます。総枚数の指定はありませんが、できるだけ多い方がいいとのことです。また、できる限り様々な人物を被写体にすることを公平さを保つ意味でもお勧めします。そして注意事項なのですが、競技の判定関連にも利用したいので、ゴールや順位が決まる瞬間などは必ず全て収めて欲しいそうです」
参加しようか考え込むハンターに、ジェーンは「ごゆっくりどうぞ」と声をかけ、通常業務に戻っていった。
地域行事の一環で、その街では毎年決まった季節になると運動会が行われていた。
今年もその季節がやってくる。
富める者も貧しい者も、身分ある者も自由人も、手続きを行えば皆平等に出場でき、観戦できる。
当然ぶっつけ本番で運動会が行われるわけではなく、何度かリハーサルが行われる。
そのリハーサルの時点から、保護者たちが詰め掛けていた。
そう。運動会の主役といえば、やはり子ども。
この運動会には、街中の子どもたちが参加するのが通例なのだ。
現在は徒競走のリハーサルが行われている。
「うちの子の方が速い!」
「いいやうちの子の方が速いね!」
「何いってるんだい! うちの子の方が速いに決まってるだろ!」
母親らしき女性たちが、まだリハーサルであるにも関わらず、観客席で押し合いへし合い、喧々囂々と自分の子どもの方が速いと主張し合っている。
「まだ本番じゃないのに、熱いぞ」
「うん、毎年恒例だけどね」
「リハーサルは酒が出ないのがなぁ」
「本番は半ば祭りみたいな感じだし、楽しみだねぇ」
父親らしき男性たちは母親たちとは打って変わってのほほんとしている。
「ただ今ゴールしました! 一着○○君、二着××君、三着△△君です!」
拡声された実況らしき男性の声が、運動会の舞台となっている広場に響き渡る。
その途端、母親である女性陣の団体から猛抗議が上がった。
「いやおかしいだろ! うちの子の方がどう見ても速かったじゃないか!」
「違う、うちの子の方が速かった!」
「いいや! うちの子が一番だ!」
「判定やり直せ! まともに審判できないなら引っ込め、クソ野郎!」
どいつもこいつも、自分の子どもが一番だと主張して止まない。
実際、目視で確認した限りでは、限りなく同着に近く、微妙な判断が求められた。
しかし、責任を順位の判定を行った審判に求めるというのは酷だろう。
彼らもプロではなく、ボランティアで行っている素人に過ぎないのだ。というか普通に彼らも参加している子どもたちの父兄である。
もっとも公平さを期するために、彼らは自分の子どもが走る場合は自主的に別の審判に交代することにしている。
順位をつけた審判役の父兄たちは、顔を見合わせるとため息をつく。
「やれやれ、毎年毎年判定にケチをつけてくる人たちがいて困るな」
「毎年恒例の、ある意味風物詩ではあるんだが、毎度こうだと堪える」
「まあ、実際判定ミスは必ず出るしなぁ」
顔を見合わせた父兄たちは相談を始めた。
本当は、彼らとて少しでも長く自分たちの子どもを応援したいのである。それを我慢して審判をしているのだ。
「こうなったら、ハンターに判定してもらうのはどうだ」
「いいかもしれないな。根本的に俺達とは動体視力が違うし、それなら間違いもないだろ」
「魔導カメラとかも持ってるかもしれないし、どうせなら競技中の写真撮影も全部お願いしたらどうだ? 空飛んだり姿を隠したりして俺達には思いもつかない方法やアングルで取ってくれるかもしれないぞ」
「いいな、それ! ゴールする瞬間を取ってもらえば順位も明確になる! リハーサルが終わったらさっそく依頼を出しに行こう!」
話が決まった父兄たちは、意気揚々とリハーサルの続きに戻った。
●ハンターズソサエティ
いつものように、上司の承認を得た依頼を受付嬢ジェーン・ドゥが掲示を行っている。
その日はよくある雑魔の殲滅依頼や犯罪者の捕縛、あるいは討伐依頼に混じって、毛色の違う依頼が掲示された。
「ねえ、いい依頼ある? 戦わなくても済みそうなものがいいんだけど」
よく顔を会わせるハンターが一人、ジェーンに話しかけてきた。
「ああ、ちょうどいいのがありますよ」
振り返ったジェーンはにこやかに営業スマイルを浮かべ、綺麗な立ち姿で依頼の説明を始める。
「とある街の地域振興を兼ねて毎年行われている運動会の写真撮影です。自前の、あるいはこちらで用意させていただく魔導カメラを使って、運動会の様子を写真に収めていただきます。総枚数の指定はありませんが、できるだけ多い方がいいとのことです。また、できる限り様々な人物を被写体にすることを公平さを保つ意味でもお勧めします。そして注意事項なのですが、競技の判定関連にも利用したいので、ゴールや順位が決まる瞬間などは必ず全て収めて欲しいそうです」
参加しようか考え込むハンターに、ジェーンは「ごゆっくりどうぞ」と声をかけ、通常業務に戻っていった。
リプレイ本文
●依頼開始前
依頼を受けた夢路 まよい(ka1328)は、飛行魔法を錬金杖にかけて魔導カメラで上空から撮影を試みるつもりだ。
「わ~運動会! ハンター達でやるような運動会はもうちょっと刺激的だったけど、こういうふうにスポーツするのも楽しそうだなあ。同じ競技をハンターどうしでやろうとすると、大変なことになりかねない気もするけど」
魔導カメラを借り参加したはいいが、そんな便利なスキルないなと思いつつ悩むサクラ・エルフリード(ka2598)は、なんとかなるさと判定の役に立つ写真を中心に撮るため、北で行われているリレーと徒競走の会場に向かった。
「さて、しっかりと写真を撮らないとですね……。あ、すみません、通して貰ってもいいですか……」
ハンターズソサエティから魔導カメラを借りた青峰 らずり(ka3616)は、高い壁に登って写真を撮るつもりだ。
判定ではなく、試合の風景や選手の表情などを追っていく形になる。
「カメラ……それはリアルな情景を切り取って残す魔法の道具! 今こそ私は、写真撮影という魔法を使いこなす、魔法少女フォトグラファーとなるのです!」
依頼を受けたはいいが、初めて扱う魔導カメラに、レイア・アローネ(ka4082)は四苦八苦していた。
扱いを学びながら、感慨に浸る。
「ええと、ここを押せばいいのか? え? ファインダーから目を離すな? 運動会か……故郷では村祭りでかけっこや力比べとかやったなあ……。その絵姿が残せるとは……便利になったものだ……」
時間が来て、やがてハンターたちは撮影のため周囲に散っていく。
さあ、依頼の始まりだ!
●各々写真撮影
飛行魔法をかけた錬金杖に跨り、魔導カメラを手に空中を飛んで、まよいは各競技をやや高めの視点から撮っていく。
「うーん、またブレちゃってる。案外難しいなぁ」
飛行中は墜落防止のため常に移動しながらの撮影になるため、変なブレを起こさないように注意してはいるのだが、あまり上手くいかない。
「そうだ! 撮りたい対象がブレた写真になっちゃいけないわけで、それ以外の背景なんかはブレてもいい……いや、むしろブレてるくらいが主役の存在が際立っていい写真になるかも!」
止まってる対象を撮っても、まよいが動いてる分、全部ブレた写真になるのは考えてみれば必然だ。
「動いてる物に対して、同じ速度で並ぶように飛びながら撮ってくと、主役はくっきり写って、背景は後ろに流れてってるようにブレてる、スピード感のある写真が撮れるんじゃないかな? さっそく試してみようっと!」
いい思い付きだとばかりに、まよいは徒競走やリレーのランナー、サッカーでドリブルする選手、野球のランナーなどの、動きが激しい人達を撮り始めた。
判定のための写真や、野球でバットを振っている人物のような人物を撮る写真は、他の人に担当してもらえると助かるというのが、まよいの判断だった。
ビキニアーマーという服装のサクラは思い切り会場で目立っていた。
撮影中に何か危険があってもいけないので、あくまで護身目的で鎧をつけているつもりなのだが、モノがモノなので露出度はかなり高い。
「さて、大事な瞬間だけは絶対撮り損ねないようにしないとですね……。……何か私が撮られてるような気がしますが気の所為ですよね……」
向けられる父兄からの視線に思わず前かがみになりつつ、判定に必要なシーンを主に撮影していく。
目立っているのは姿の他にも、徒競走やリレーのシーンで被写体の横を一緒に走りながらゴールまで撮影しているためである。
誰よりも健脚で美人なお姉さんがいると選手の間で噂になっているのだが、本人はこのまま走り回りながら全員をなんとか撮影できればいいなぁと、暢気に思っているようだ。
「後は競技中の何気ない一コマ、とかもあればOKな感じでしょうか……? こういうのはよくわからないですけども……」
合間合間に選手個人の様子や、休憩している家族等も撮影しておくのを忘れない。そしてそこでもやはり目立っている。
「ふむ、家族写真的なのもあるといいのですかね……」
結局サクラは最後まで己が目立つ理由に気付くことはなかった。
ハンターオフィスで借りた魔導カメラを手に、らずりは南の野球場へ向かっていた。
撮影の方法だが、らずりには秘策があった。
何を隠そう、らずりは魔法少女である。
実態が魔法少女(笑)とか魔法少女(物理)であっても、ラズリ・ラズライトは世を忍ぶ仮の姿。
その正体は、魔法少女青峰らずりなのである。
「なんと私は壁に張り付くように立ち止まったまま写真がとれるのです! 凄い! 魔法少女凄いです!」
マテリアルを体に巡らせて重力のくびきから離れ、何食わぬ顔で野球場にある大きなポールに登ったらずりは、落ちれば真っ逆さまな高い位置に張り付き、立ち止まった状態で、見下ろすように写真を撮る。
おかげで飛行しながら撮った写真とはまた違った趣の写真を撮ることができた。
たまーに飛んできたボールがらずりの額に直撃しそうになったりもしたが、こんな程度のことでらずりはへこたれない。
魔法少女は心も強いのである。
写真を撮る時は景色がブレないように立ち止まりつつ、なおかつアングルを変えた写真をたくさん集めるために、らずりは撮影の合間にグラヴィティブーツで登れる場所を選んで積極的に居場所を移し、立ち位置の調整を行い、一般人では撮れないアングルの写真を撮り続けた。
ある程度使い方をマスターした魔導カメラを手に、レイアは思案にふける。
「しかし、何を撮ろうか……」
一般人に喜ばれるような競技風景の撮影というものに自信がなかったレイアは、別の選択に逃げた。
「よし、協議判定は私がやろう」
たちまちやる気を出したレイアは、毎年判定を行っていた父兄たちからルールを聞く。
「なるほど、着順がわかるようにゴールの瞬間を撮ればいいのだな? 分かりやすい。反射神経と動体視力なら任せておけ!」
初めは活き活きと撮っているレイアだったが、熱意が高まり過ぎたようで、妙な方向に拘り始めた。
「ん? 待て! 今のはセーフだったか? 写真を撮ってある! 塁審、一緒に見てくれ!」
野球の試合では絶対誤審許さないウーマンがいると選手の間で噂が立つほど口を出した。
「今のゴール待て! オフサイドではなかったか? 今写真を現像する!」
サッカーの試合では疑惑の判定に全て白黒つけて返し、両チームからぐうの音を封じた。
「私の写真に皆の勝敗がかかっている! 不正は許さんぞ!」
(正すべきは不正じゃなくて、誤審なんだけどなぁ……)
依頼人である父兄たちはそう思っていたが、熱意に水を差すのも悪いので、レイアを生温かく見守ることにしたのだった。
●依頼終了
運動会が閉会し、写真を全て提出し終えたまよい、サクラ、らずり、レイアの四人は、依頼人である父兄たちに絶賛された。
「いやあ、どの写真も凄いアングルだね! これはちょっと僕たちじゃ取れないよ!」
「子どもたちの表情が生き生きとしてる! いいよこれは!」
「君たちのおかげで今回は一回も誤審を出さずに澄んだよ!」
「苦情件数はゼロ! いやあ、毎年苦情が入ってたから、今年はいい年だね! 来年もまた頼むよ!」
父兄たちは写真を凄く気に入ったようで、口々に四人を大絶賛した。
四人にしても、普段はあまりしない経験だし、自分たちの仕事振りを感謝されて悪い気はしない。
父兄からのたくさんの礼と、子どもたちのキラキラとした視線を背に、まよい、サクラ、らずり、レイアの四人は意気揚々と運動会会場を後にしたのだった。
なお、四人が撮った写真は後日販売され、飛ぶように売れて全て即日完売したという。
依頼を受けた夢路 まよい(ka1328)は、飛行魔法を錬金杖にかけて魔導カメラで上空から撮影を試みるつもりだ。
「わ~運動会! ハンター達でやるような運動会はもうちょっと刺激的だったけど、こういうふうにスポーツするのも楽しそうだなあ。同じ競技をハンターどうしでやろうとすると、大変なことになりかねない気もするけど」
魔導カメラを借り参加したはいいが、そんな便利なスキルないなと思いつつ悩むサクラ・エルフリード(ka2598)は、なんとかなるさと判定の役に立つ写真を中心に撮るため、北で行われているリレーと徒競走の会場に向かった。
「さて、しっかりと写真を撮らないとですね……。あ、すみません、通して貰ってもいいですか……」
ハンターズソサエティから魔導カメラを借りた青峰 らずり(ka3616)は、高い壁に登って写真を撮るつもりだ。
判定ではなく、試合の風景や選手の表情などを追っていく形になる。
「カメラ……それはリアルな情景を切り取って残す魔法の道具! 今こそ私は、写真撮影という魔法を使いこなす、魔法少女フォトグラファーとなるのです!」
依頼を受けたはいいが、初めて扱う魔導カメラに、レイア・アローネ(ka4082)は四苦八苦していた。
扱いを学びながら、感慨に浸る。
「ええと、ここを押せばいいのか? え? ファインダーから目を離すな? 運動会か……故郷では村祭りでかけっこや力比べとかやったなあ……。その絵姿が残せるとは……便利になったものだ……」
時間が来て、やがてハンターたちは撮影のため周囲に散っていく。
さあ、依頼の始まりだ!
●各々写真撮影
飛行魔法をかけた錬金杖に跨り、魔導カメラを手に空中を飛んで、まよいは各競技をやや高めの視点から撮っていく。
「うーん、またブレちゃってる。案外難しいなぁ」
飛行中は墜落防止のため常に移動しながらの撮影になるため、変なブレを起こさないように注意してはいるのだが、あまり上手くいかない。
「そうだ! 撮りたい対象がブレた写真になっちゃいけないわけで、それ以外の背景なんかはブレてもいい……いや、むしろブレてるくらいが主役の存在が際立っていい写真になるかも!」
止まってる対象を撮っても、まよいが動いてる分、全部ブレた写真になるのは考えてみれば必然だ。
「動いてる物に対して、同じ速度で並ぶように飛びながら撮ってくと、主役はくっきり写って、背景は後ろに流れてってるようにブレてる、スピード感のある写真が撮れるんじゃないかな? さっそく試してみようっと!」
いい思い付きだとばかりに、まよいは徒競走やリレーのランナー、サッカーでドリブルする選手、野球のランナーなどの、動きが激しい人達を撮り始めた。
判定のための写真や、野球でバットを振っている人物のような人物を撮る写真は、他の人に担当してもらえると助かるというのが、まよいの判断だった。
ビキニアーマーという服装のサクラは思い切り会場で目立っていた。
撮影中に何か危険があってもいけないので、あくまで護身目的で鎧をつけているつもりなのだが、モノがモノなので露出度はかなり高い。
「さて、大事な瞬間だけは絶対撮り損ねないようにしないとですね……。……何か私が撮られてるような気がしますが気の所為ですよね……」
向けられる父兄からの視線に思わず前かがみになりつつ、判定に必要なシーンを主に撮影していく。
目立っているのは姿の他にも、徒競走やリレーのシーンで被写体の横を一緒に走りながらゴールまで撮影しているためである。
誰よりも健脚で美人なお姉さんがいると選手の間で噂になっているのだが、本人はこのまま走り回りながら全員をなんとか撮影できればいいなぁと、暢気に思っているようだ。
「後は競技中の何気ない一コマ、とかもあればOKな感じでしょうか……? こういうのはよくわからないですけども……」
合間合間に選手個人の様子や、休憩している家族等も撮影しておくのを忘れない。そしてそこでもやはり目立っている。
「ふむ、家族写真的なのもあるといいのですかね……」
結局サクラは最後まで己が目立つ理由に気付くことはなかった。
ハンターオフィスで借りた魔導カメラを手に、らずりは南の野球場へ向かっていた。
撮影の方法だが、らずりには秘策があった。
何を隠そう、らずりは魔法少女である。
実態が魔法少女(笑)とか魔法少女(物理)であっても、ラズリ・ラズライトは世を忍ぶ仮の姿。
その正体は、魔法少女青峰らずりなのである。
「なんと私は壁に張り付くように立ち止まったまま写真がとれるのです! 凄い! 魔法少女凄いです!」
マテリアルを体に巡らせて重力のくびきから離れ、何食わぬ顔で野球場にある大きなポールに登ったらずりは、落ちれば真っ逆さまな高い位置に張り付き、立ち止まった状態で、見下ろすように写真を撮る。
おかげで飛行しながら撮った写真とはまた違った趣の写真を撮ることができた。
たまーに飛んできたボールがらずりの額に直撃しそうになったりもしたが、こんな程度のことでらずりはへこたれない。
魔法少女は心も強いのである。
写真を撮る時は景色がブレないように立ち止まりつつ、なおかつアングルを変えた写真をたくさん集めるために、らずりは撮影の合間にグラヴィティブーツで登れる場所を選んで積極的に居場所を移し、立ち位置の調整を行い、一般人では撮れないアングルの写真を撮り続けた。
ある程度使い方をマスターした魔導カメラを手に、レイアは思案にふける。
「しかし、何を撮ろうか……」
一般人に喜ばれるような競技風景の撮影というものに自信がなかったレイアは、別の選択に逃げた。
「よし、協議判定は私がやろう」
たちまちやる気を出したレイアは、毎年判定を行っていた父兄たちからルールを聞く。
「なるほど、着順がわかるようにゴールの瞬間を撮ればいいのだな? 分かりやすい。反射神経と動体視力なら任せておけ!」
初めは活き活きと撮っているレイアだったが、熱意が高まり過ぎたようで、妙な方向に拘り始めた。
「ん? 待て! 今のはセーフだったか? 写真を撮ってある! 塁審、一緒に見てくれ!」
野球の試合では絶対誤審許さないウーマンがいると選手の間で噂が立つほど口を出した。
「今のゴール待て! オフサイドではなかったか? 今写真を現像する!」
サッカーの試合では疑惑の判定に全て白黒つけて返し、両チームからぐうの音を封じた。
「私の写真に皆の勝敗がかかっている! 不正は許さんぞ!」
(正すべきは不正じゃなくて、誤審なんだけどなぁ……)
依頼人である父兄たちはそう思っていたが、熱意に水を差すのも悪いので、レイアを生温かく見守ることにしたのだった。
●依頼終了
運動会が閉会し、写真を全て提出し終えたまよい、サクラ、らずり、レイアの四人は、依頼人である父兄たちに絶賛された。
「いやあ、どの写真も凄いアングルだね! これはちょっと僕たちじゃ取れないよ!」
「子どもたちの表情が生き生きとしてる! いいよこれは!」
「君たちのおかげで今回は一回も誤審を出さずに澄んだよ!」
「苦情件数はゼロ! いやあ、毎年苦情が入ってたから、今年はいい年だね! 来年もまた頼むよ!」
父兄たちは写真を凄く気に入ったようで、口々に四人を大絶賛した。
四人にしても、普段はあまりしない経験だし、自分たちの仕事振りを感謝されて悪い気はしない。
父兄からのたくさんの礼と、子どもたちのキラキラとした視線を背に、まよい、サクラ、らずり、レイアの四人は意気揚々と運動会会場を後にしたのだった。
なお、四人が撮った写真は後日販売され、飛ぶように売れて全て即日完売したという。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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写真のおにいさんおねえさん レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/10/08 10:28:23 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/10/08 10:26:16 |