ゲスト
(ka0000)
【落葉】ラズビルナム地下遺跡掃討
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~12人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/10/12 09:00
- 完成日
- 2018/10/13 17:25
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ラズビルナム地下遺跡
地上部の浄化が概ね予定通りに進んでいる中、調査チームによってラズビルナムの古代地下遺跡が発見された。
どうやら古代から続く遺跡で、亜人族のものと思われる遺跡のようだ。
しかし、詳しいことは実際に中に入って調べてみなければ分からない。
そして、この遺跡の中は異界化しており、地上と同じく、または閉所であることからある意味では地上以上に猛烈な雑魔の襲撃が予想される。
というわけで、臨時で偵察チームが編成され派遣された。
全員ハンターではあるが、戦闘を目的としてはおらず、あくまで調査し情報を持ち帰ることを優先にした、生存特化のチームである。
もちろんこれだけで地下遺跡の全てを暴けるとは誰も思っていなかったが、それでもそれなりの情報を持ち帰ってくれることも期待していた。
しかし彼らは知らなかった。
地下遺跡のごくごく浅い階層でさえ、そこは地上部に勝るとも劣らない魔窟だったのだ。
●中にはスケルトンがうようよ
調査チームを一番に歓迎したのは、カタカタと音を鳴らす武装したスケルトンの集団だった。
白い骨を動かすスケルトンたちの眼窩に浮かぶ暗い目玉のような炎が、嫌が応にも不気味さを漂わせる。
ハンターたちは見つからないように必死に息を殺しながら、思った以上の数に戦慄していた。
まず目視できる第一陣だけで三十体以上。当然発見されれば四方八方から追加でスケルトンの大群が押し寄せてくるだろうことは、想像に難くない。
(もし仮に、今オレたちが見つかったら、どうなる?)
(無理です。三十体くらいならもしかしたらいけるかもしれませんが、それ以上来たら物量に圧し潰されます。撤退しましょう)
声に出さずハンドサインで互いの意志を確認した調査チームのハンターたちは、無言のままそろりそろりとその場を後にし、地下遺跡を脱出した。
この調査チームが持ち帰った情報を元に、後日威力偵察チームがハンターズソサエティを通じて募集された。
●蹴散らせ! 威力偵察だ!
威力偵察チームとは、その名の通り高い火力と生存性でもって、立ちはだかるスケルトンの大群を殲滅しつつ行けるところまで探索し、情報を持ち帰ることを目的としたチームである。
先の調査チームが戦闘回避を大前提とした探索チームであるのに対し、今回の探索チームは敵との戦闘を大前提とした強行偵察チームだ。
とにかく物凄い物量のスケルトンに襲われることが予測されるため、それらを一撃で粉砕できる高火力を第一に求められるだろう。
そして、継続戦闘能力を高めるために、回復職もいた方がいい。
頼り甲斐のある壁役も必要だ。もしもの時には殿を務める可能性もある。
後は実力と実績があるハンターならば誰が来ても問題ないだろう。
●ハンターズソサエティ
今回の依頼に当たっては、受付嬢として依頼の公開、斡旋を行うジェーン・ドゥもハンターとして出動を要請された。
ハンターであることは事実とはいえ、職員であるジェーンをも動員するということは、ハンターズソサエティは地下遺跡の攻略に対し、事実上の総動員に近い判断を下しているということだ。
もしかしたら一般に公開されていないだけで、ハンターズソサエティや帝国の上層部は、地下遺跡について何か情報を掴んでいるのかもしれない。
しかし仮にそうだとしても、それが今明かされることはないとみていい。
開示すべきではないと判断されたからこそ秘匿されているのだ。
必要になれば公開されると考えるのが、自然である。
「私にも地下遺跡への探索チーム加入が命じられ、超危険地帯に行かなければいけなくなりました。ここはぜひ道連れ、いえ違います勇気ある同行者を募集いたします」
一瞬怪し気な発言が出かけたものの、ジェーンは真面目な態度を取り繕い、真剣な表情で居並ぶハンターたちに参加を呼び掛けた。
地上部の浄化が概ね予定通りに進んでいる中、調査チームによってラズビルナムの古代地下遺跡が発見された。
どうやら古代から続く遺跡で、亜人族のものと思われる遺跡のようだ。
しかし、詳しいことは実際に中に入って調べてみなければ分からない。
そして、この遺跡の中は異界化しており、地上と同じく、または閉所であることからある意味では地上以上に猛烈な雑魔の襲撃が予想される。
というわけで、臨時で偵察チームが編成され派遣された。
全員ハンターではあるが、戦闘を目的としてはおらず、あくまで調査し情報を持ち帰ることを優先にした、生存特化のチームである。
もちろんこれだけで地下遺跡の全てを暴けるとは誰も思っていなかったが、それでもそれなりの情報を持ち帰ってくれることも期待していた。
しかし彼らは知らなかった。
地下遺跡のごくごく浅い階層でさえ、そこは地上部に勝るとも劣らない魔窟だったのだ。
●中にはスケルトンがうようよ
調査チームを一番に歓迎したのは、カタカタと音を鳴らす武装したスケルトンの集団だった。
白い骨を動かすスケルトンたちの眼窩に浮かぶ暗い目玉のような炎が、嫌が応にも不気味さを漂わせる。
ハンターたちは見つからないように必死に息を殺しながら、思った以上の数に戦慄していた。
まず目視できる第一陣だけで三十体以上。当然発見されれば四方八方から追加でスケルトンの大群が押し寄せてくるだろうことは、想像に難くない。
(もし仮に、今オレたちが見つかったら、どうなる?)
(無理です。三十体くらいならもしかしたらいけるかもしれませんが、それ以上来たら物量に圧し潰されます。撤退しましょう)
声に出さずハンドサインで互いの意志を確認した調査チームのハンターたちは、無言のままそろりそろりとその場を後にし、地下遺跡を脱出した。
この調査チームが持ち帰った情報を元に、後日威力偵察チームがハンターズソサエティを通じて募集された。
●蹴散らせ! 威力偵察だ!
威力偵察チームとは、その名の通り高い火力と生存性でもって、立ちはだかるスケルトンの大群を殲滅しつつ行けるところまで探索し、情報を持ち帰ることを目的としたチームである。
先の調査チームが戦闘回避を大前提とした探索チームであるのに対し、今回の探索チームは敵との戦闘を大前提とした強行偵察チームだ。
とにかく物凄い物量のスケルトンに襲われることが予測されるため、それらを一撃で粉砕できる高火力を第一に求められるだろう。
そして、継続戦闘能力を高めるために、回復職もいた方がいい。
頼り甲斐のある壁役も必要だ。もしもの時には殿を務める可能性もある。
後は実力と実績があるハンターならば誰が来ても問題ないだろう。
●ハンターズソサエティ
今回の依頼に当たっては、受付嬢として依頼の公開、斡旋を行うジェーン・ドゥもハンターとして出動を要請された。
ハンターであることは事実とはいえ、職員であるジェーンをも動員するということは、ハンターズソサエティは地下遺跡の攻略に対し、事実上の総動員に近い判断を下しているということだ。
もしかしたら一般に公開されていないだけで、ハンターズソサエティや帝国の上層部は、地下遺跡について何か情報を掴んでいるのかもしれない。
しかし仮にそうだとしても、それが今明かされることはないとみていい。
開示すべきではないと判断されたからこそ秘匿されているのだ。
必要になれば公開されると考えるのが、自然である。
「私にも地下遺跡への探索チーム加入が命じられ、超危険地帯に行かなければいけなくなりました。ここはぜひ道連れ、いえ違います勇気ある同行者を募集いたします」
一瞬怪し気な発言が出かけたものの、ジェーンは真面目な態度を取り繕い、真剣な表情で居並ぶハンターたちに参加を呼び掛けた。
リプレイ本文
●地下遺跡入口にて
情報を持ち帰るため、時音 ざくろ(ka1250)はこのラズビルナムへやってきた。
「どんなに障害が大きくたって、未知なる場所をこの目で探索出来るなんて、ワクワクするよね!」
「ジェーンまで駆り出されるなんてねえ。一応、往路は力を温存して、帰路に備えておいてね」
「承りました」
頷くジェーンに微笑み、夢路 まよい(ka1328)は遺跡に乗り込む準備を始めた。
無事生還して結果報告することが目的の八島 陽(ka1442)は、はぐれた場合に備えて自分と仲間の通信機器を相互登録する。
「異界を形成する核の情報が得られると幸いなんだけど……どうだろう」
シガレット=ウナギパイ(ka2884)が組み立てた作戦概要は、強行偵察で敵を掃討しつつ、限界まで進んで撤退、生還するというものだ。
「先行威力偵察、本隊、後方確保。それぞれの持ち回りの確認も忘れるなよ」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は自らの役割を周知させる。
「全体が威力偵察部隊だが、私の役目はさらにその先行威力偵察ってところだな。本隊より多少先行して通路の敵を露払いしよう」
「……まさかお前と依頼を受けようとは……。サボろうとかするんじゃないぞ」
「残念ながら、おふざけは無しです」
「だってさ」
レイア・アローネ(ka4082)に涼し気な顔で答えるジェーンを見て、くすりとまよいが笑った。
力試しも兼ねて参加を決めた弓月・小太(ka4679)は、仲間と連携を取りながら進むつもりだ。
「長丁場になりそうですねぇ……。覚醒時間とか細かく考えたの初めてですよぉ」
「敵の戦力が解らずに突っ込まないといけないとは……鉱山のカナリアみたいだな」
呟くキャリコ・ビューイ(ka5044)の役目は、背後を警戒した班の後方での殿と、援護射撃である。
「……スケルトンねぇ。骨だけってのは流石に痩せすぎね。いくら私でもそこまで痩せようとは思わないわ、彼に心配かけたくないし」
道具のチェックをしながら、アルスレーテ・フュラー(ka6148)は一人ごちる。
「フフフ、身の程知らずのスケルトンどもの魔の手を退けながら、誰も知らない遺跡の謎を調べ上げろという訳か」
スケルトンが何体襲って来ようと、遺跡の謎を暴いてやると龍宮 アキノ(ka6831)はやる気を漲らせる。
「マッピングのコツを教えていただけませんか?」
「構いませんよ。まずはですね……」
一応自分でも調べてきたとはいえ、経験者に聞くのが分かりやすいだろうと百鬼 一夏(ka7308)は考え、ジェーンに教わった。
全員の準備が終わったのを確認し、ジェーンが告げる。
「それでは皆様、参りましょう」
さあ、依頼の始まりだ!
●地下遺跡内部・開幕
先行偵察を行うのは、アルト、アルスレーテ、陽の三人だ。
部屋の中には物音でスケルトンが大量にいるのが分かる。
「どうする? 奇襲はかけられそうだが、合流した方がいいか」
「報告通りなら少なくとも三十体以上いるはずよ」
「明かりを気取られると厄介だな。消しておこう」
先行していたアルト、アルスレーテ、陽はいったん仲間と合流することにした。
本隊と及び後方部隊と打ち合わせた結果、戦闘を避けることができないのならば一気に粉砕するべきという結論に至った。
「準備はいいか?」
スケルトンたちに聞こえないよう小声で行われたレイアの問いかけに、仲間たちから囁き声で返事が返ってくる。
「いつでも行けるよ」
「同じく」
「怪我すんじゃねえぞ。回復はできるが、まだまだ先は長いからな」
「さっさと黄泉の国に返してやるよ」
「初めから飛ばしていきます」
まよい、ざくろ、シガレット、アキノ、一夏の五人だ。
「俺とおまえで射撃援護をするぞ。皆がぶつかる前になるべく数を減らすんだ」
「いい経験になりそうですぅ。これだけの相手をすることもなかなかないですしぃ」
後方でキャリコと小太がそれぞれ魔弓と魔導銃を構える。
レイアが扉を開け放つ。
間髪入れずキャリコが弓を強く引き絞り、マテリアルを込めて連続射撃を行い、少し遅れて小太の魔導銃が火を噴き、弾丸の雨を降らせる。
矢と弾丸の雨に追い付いてしまうのではないかと思うような速度でアルトが駆け抜け、スケルトンに法術刀で攻撃を仕掛ける。
一体を反応する間もなく斬り捨てたアルトだったが、別のスケルトンが休む間もなく剣を振り被ってくる。
返す刀で斬り伏せるものの、すぐに三体目が現れて隙間を埋める。
三体目も同じく斬り倒すが、その個体はアルトの攻撃に反応し防御しようとしていた。
アルトの背に悪寒が走る。
当たれば一撃なのは変わりないのに、その一撃が、少しずつ、しかし確実にいなされようとしている感覚がある。
「……くっ、こいつは! 皆油断するな! ただのスケルトンじゃない!」
全身のマテリアルを練り、一気に放出することで一度に数体を倒したアルスレーテも、警戒を呼び掛ける。
「範囲攻撃で仲間が倒された途端散開したわ! 注意して!」
人一倍の身軽さを生かし斬り込んだ二人を押し囲み孤立させようと、スケルトンの集団が動き出す。
しかし、ハンター側もそう簡単に孤立などさせない。
次々と前衛を担当する仲間たちが戦線を作って攻撃を始める。
「ちっ! 簡単に負ける気はせんが、妙に剣技が達者なスケルトンだな!」
レイアがスケルトンたちと斬り結ぶ。
彼女の魔導剣は既にマテリアル光で強化されており、時折衝撃波を放ち複数を一度に攻撃している。
人数差もあり、多対一を強いられているせいもあるかもしれないが、それを踏まえてもスケルトンたちは不気味な強さがあった。
もちろんこの中の単体最強戦力であるアルトが一対一で苦戦するような強さではないが、場所が場所なので何が起きても不思議ではない。
いきなり浮足立った戦闘を落ち着かせたのは、まよいの魔法だった。
魔法で起こした風を纏って魔法の射程内に飛び込んだまよいが、消耗が増えることを承知で普段より多い十本もの魔法の矢を生成し、解き放ったのだ。
「弓持ってる奴優先でいくよ!」
まよいの号令とともに、矢が空を裂いて飛び、弓を構えていたスケルトンたちに直撃する。
魔法の矢により大きく数を減らしたことで、スケルトンたちの周りには空間ができていた。
飛び込んで圧し潰す好機だ。
「燃え尽きろ、拡散ヒートレイ!」
味方に当たらないよう注意しながら、ざくろが魔導剣を媒体にして、扇状に赤白く輝く無数の熱線を放射し、スケルトンを焼いた。
「よっしゃあ、叩き潰せぇ!」
聖導士らしからぬ強面を笑みの形に歪めたシガレットが吠え、光の衝撃波を放ち、衝撃でスケルトンを粉砕する。
「また新しい命が欲しいっていうのかい? この世に二度目の命なんてどこにもないんだよ!」
アキノが展開した光でできた三角形の頂点一つ一つから光線が飛び出し、スケルトンたちを貫く。
全身のマテリアルを練り上げた一夏が、気功を拳に乗せて一気に放出し、スケルトンたちを打ち抜こうとする。
回避しようとするスケルトンたちのうち、一体が回避と見せかけて反撃の構えを取った。
「騙し討ちが効くと思われてるなら舐められたものです!」
そのまま攻撃を続行した一夏は、合わされた斬撃をがっちりと受け止める。
「弓は好きではないんだが、四の五のいってられないな!」
「そ、そこ、横からやらせはしませんよぉっ!」
キャリコと小太が、スケルトンたちを駆逐していく仲間を狙おうと動く個体に射撃、銃撃を浴びせ、被害を防ぐ。
一気に傾いた流れを手放すことなく、ハンターたちは部屋に屯していたスケルトンの群れを全滅させた。
●地下遺跡内部・先行
入口すぐの部屋を突破してからは、スケルトンたちの行動が活発化した。
機械指輪で周囲の状況を探ろうとしても、遺跡内部が異界という特殊状況下だからか、あまり反応が当てにならない。
「通路を塞いでいるのは厄介だな……飛び越えるか。前後から磨り潰すぞ」
「簡単にいってくれるわね……。はいはい、付き合うわよ」
「一応連絡は入れておくよ」
後から来る仲間たちに陽が通信を入れると、アルトとアルスレーテは、一気に獲物に飛び掛かる猛獣のように、全身のばねを使って猛然と走り出した。
特にアルトの動きは秀逸で、残像を残しながら通路の壁から天井へと縦横無尽に蹴りながら立体的に移動し、そのまま駄賃代わりとでもいうようにすれ違うスケルトンを斬り飛ばしている。
しかしアルスレーテとて歴戦のハンターである。
筋力を強化してスケルトンを振り回し、最後には遠くのスケルトンに投げつけてぶつけたスケルトンごと粉砕した。
「おまえも他人のことはいえんな……」
「まだまだ先は長いんだから、節約しなきゃね?」
呆れるアルトに、アルスレーテは澄ました顔で答える。
投げ上げた陽の符が空中で稲妻と化し、最後のスケルトンを貫く。
歩きながら、陽は遺跡に潜ってから抱いていた疑問を二人にぶつけてみる。
「スケルトンたちの動き、不思議に思わないかい? 迷宮を巡回警備してるような……」
「そうだな。それに、スケルトン自体が強くなっているわけではないんだが、妙な感じが……。いや、勘なんだが」
ただの勘でも、強者集うこの依頼で最高戦力であるアルトがいうと、ただの勘では片付けられない不思議な説得力があった。
最初の戦闘でこそ戸惑わされたが、慣れればスケルトンの剣技は対応できないほどではなく、アルトはそれからほぼ一撃で相対したスケルトンたちを屠っている。
アルトほどではないが、アルスレーテも陽と協力すれば倒すのにそう時間はかからない。
いかんせん数が多いので、まぐれ当たりが積み重なっていくのは地味に辛いが。
通信を受けたアルトが二人に伝えた。
「連絡だ。全員合流して休憩にするぞ」
「いいわね。ツナサンドでも作って食べようかしら」
アルスレーテはそのためにパンとツナの缶詰を持ってきている。
「オレもバラエティランチを持ってきたよ。皆で食べよう」
警戒は続けたまま、三人は合流するため来た道を戻った。
●地下遺跡内部・後方
休憩を終え、一行は探索を再開する。
先に進むにつれて、分かれ道なども増え、遺跡内部は複雑さを増し迷路の様相を呈し始めていた。
ちょうど本隊と後方組の間の横道から奇襲を受けないように後方組が偵察していると、ぬっと曲がり角からスケルトンの群れが現れた。
「分かっていたが、思うようにはいかないものだな!」
「せ、狭い通路でもやりようはあるのですぅっ!」
「本隊に合流して一気に殲滅するぞ! それまで消耗は避けろ!」
後方組で固定なキャリコと小太に加え、一時的に加わっていたシガレットが一斉に駆け出した。
追いかけてくるスケルトンのうち、先頭のスケルトンに牽制目的で射撃と銃撃を入れつつ三人は撤退を試みる。
しかしそのタイミングで、シガレットのトランシーバーにレイアから通信が入った。
異界の影響か、所々ノイズが走っているが、救援要請だ。
「同じくスケルトンに出くわして本隊目指して撤退中だ、奇遇だな!」
怒鳴るように交信するシガレットのすぐ後ろで、キャリコと小太の声が上がる。
「次から次へと……きりがないぞ!」
「こういうのもいい経験にはなりそうですがぁ、忙し過ぎますよぉ!」
同行するジェーンが前方を手で指し示した。
「お三方! 本隊の現在位置はこの通路の先のようです!」
しかしジェーンたちの背後からは、スケルトンの群れが迫っている。
「こいつらを連れてなだれ込むわけにはいかねえな! ここで仕留めるぞ!」
反転したシガレットの言葉に、キャリコと小太の戦意がオーラとなって膨れ上がる。
「その言葉を待っていた!」
「たたみかけますぅ!」
時折僅かに生まれる射線を、針に糸を通すような精度で弾丸を操作し通したキャリコと小太は、スケルトンを打ち抜いていく絶技を見せた。
「よし、あらかた殲滅したな! 急いで合流するぞ!」
崩れ落ちるスケルトンたちを確認したシガレットはリペアキットで回復を済ませ、駆け出す。
「またすぐ戦闘になる! 今のうちに矢弾の再装填をしておく!」
「僕ももうやっていますぅ!」
キャリコと小太が慌ただしく次の戦闘に備え走りながら準備をする。
「あともう少しです!」
本隊の姿を目視したジェーンが叫ぶ。
合流は近い。
●地下遺跡内部・本隊
先行組のアルトとアルスレーテに陽、後方組のキャリコ、小太が前後をそれぞれ警戒しているおかげで、その間に挟まれている本隊は散発的なスケルトンの襲撃こそあるものの、比較的平和な状況に置かれていた。
この隙間時間を利用して、シガレットが後方組に動けるほどに。
「うーん……あいつ、ちゃんと働いているんだろうな……。戦えない者を戦わせる気はないが……あいつ戦えるからなあ……」
「まあ、でも正確な強さまでは私たちも知らないし、ね?」
どうやらレイアは普段のジェーンの態度を見慣れているせいか彼女のことが気になるようで、自分の傷を治療中のまよいにフォローされている。
「結構奥へ進んできたけど、回復もかなり減ってきたね。ざくろはもうほとんど打てないよ。戦闘自体はまだまだいけるけど」
既にざくろの回復魔法は尽きかけていた。
ざくろの提案で分かれ道では足跡等の痕跡を調べて、行き止まりなどで退路を塞がれたり時間を無駄にしたりしないよう進む方向を決め、全体で見れば回復は結構温存できている方だが、それでも敵の数が数なのでそれなりに消耗は大きい。
「あたしも似たようなものだね。でも幸い覚醒回数は節約してるからまだ余裕があるよ」
「私は終盤のことを考えると、もうあまり覚醒したくない感じですね……」
一行の中では経験が浅く、元々覚醒回数が少なめなアキノと一夏は、節約するにしても限度があり、特に一夏は序盤仲間に温存させるために飛ばしたので、既に力が枯渇気味だった。
そこへ、スケルトンたちが現れ襲い掛かってきた。
「前方から!? アルトたちをやり過ごしたのか!? 姑息な真似を!」
即座に踏み込んで魔導剣を一閃させ突きを繰り出したレイアを、まよいが援護する。
「奥の方が狙い辛いけど、見えてる範囲なら!」
射出された魔法の矢が、前面のスケルトンに突き刺さる。
「ざくろも前に出るよ!」
雷撃を帯びた光の障壁を展開したざくろが、魔導剣を手にレイアと入れ替わり立ち代わり前に出て、スケルトンに狙いを絞らせないようにする。
元々通路なので大勢で戦うには向いていないのと、僅かでも休憩を取れる時間を作り、継戦能力を高めつつ戦うのだ。
それでも次から次へと襲ってくるスケルトンに、じりじりと本隊を構成する一行は近くの部屋へと追いやられていった。
気付いたアキノが警告する。
「まずいね……誘導されているよ! 屍のくせに悪知恵が働くじゃないか!」
「隠れてたなんてずるいです! ちゃんと先に出てきてくれないとマッピングに生かせないじゃないですか!」
非覚醒時間を利用して遺跡内部のマッピングを行っていた一夏が、慌ててスケルトンから距離を取る。覚醒は残り一回。撤退時のことを考えると最後の手段だ。
レイアが通信で援軍を呼ぶが、それまでは五人で耐え忍ばねばならない。
「ここが正念場だな……! 来るぞ!」
炎のオーラを灯し、空間のベクトルを支配したレイアが一夏を庇うように立つ。
放たれた矢を、レイアは斬り払った。
「お返しだよ!」
広い部屋ならば十分に射線も通る。
出し惜しみせず、まよいは魔法の矢を空中に並べて解き放った。
十本の矢が平行に飛び、スケルトンの数を大幅に減らす。
「しつこいねぇ! 遺跡の秘密はあたし達が美味しく戴いていくから、さっさと黄泉の国に戻りなよ!」
アキノの機導術が生み出す光が、スケルトンたちを薙ぎ払う。
「本当は怖い。でもこのまま死ぬよりかはマシです!」
勇気を振り絞った一夏が最後の覚醒をする。
状況的にこれを凌げば撤退だろう。どの道覚醒は最長一時間は持つ。撤退の途中までは続くはずだ。
凌げればだが。
五人の必死の抵抗も焼け石に水かと思われた頃、待ちわびた声が響いた。
それも、本隊の前後二か所から同時にだ。
「一気に殲滅するぞ! 私に続け!」
「分かったわ!」
「オレに任せてよ!」
前からは先行していたアルト、アルスレーテ、陽が。
「待たせたな! 援軍の到着だぜ!」
「援護射撃に入る! 行くぞ!」
「任せてくださいですぅ!」
後ろからは後方にいたシガレット、キャリコ、小太が。
スケルトンたちが、ハンターたちの増援にたじろいだように見えた。
本隊のメンバーも連携し、今度は逆にスケルトンたちを奇襲した利でもって圧し潰していった。
●撤退
スケルトンは片付いたものの、これ以上の探索は厳しい。
ついにシガレットの回復もなくなり、回復アイテムはほぼ全員が使い切っている。
複数人で協力したのでマップはかなりの面積が埋まり、遺跡内部の分析結果や採取したサンプルの量もそこそこの量になっている。
残念ながらスケルトンの武器は消えてしまった。
スケルトンが来る方向から奥に何かあるのではないかという推測は立つものの、引き返さざるを得ず、一行はここで撤退を選んだ。
嘆くことはない。
帰れば、また来れるのだから。
情報を持ち帰るため、時音 ざくろ(ka1250)はこのラズビルナムへやってきた。
「どんなに障害が大きくたって、未知なる場所をこの目で探索出来るなんて、ワクワクするよね!」
「ジェーンまで駆り出されるなんてねえ。一応、往路は力を温存して、帰路に備えておいてね」
「承りました」
頷くジェーンに微笑み、夢路 まよい(ka1328)は遺跡に乗り込む準備を始めた。
無事生還して結果報告することが目的の八島 陽(ka1442)は、はぐれた場合に備えて自分と仲間の通信機器を相互登録する。
「異界を形成する核の情報が得られると幸いなんだけど……どうだろう」
シガレット=ウナギパイ(ka2884)が組み立てた作戦概要は、強行偵察で敵を掃討しつつ、限界まで進んで撤退、生還するというものだ。
「先行威力偵察、本隊、後方確保。それぞれの持ち回りの確認も忘れるなよ」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は自らの役割を周知させる。
「全体が威力偵察部隊だが、私の役目はさらにその先行威力偵察ってところだな。本隊より多少先行して通路の敵を露払いしよう」
「……まさかお前と依頼を受けようとは……。サボろうとかするんじゃないぞ」
「残念ながら、おふざけは無しです」
「だってさ」
レイア・アローネ(ka4082)に涼し気な顔で答えるジェーンを見て、くすりとまよいが笑った。
力試しも兼ねて参加を決めた弓月・小太(ka4679)は、仲間と連携を取りながら進むつもりだ。
「長丁場になりそうですねぇ……。覚醒時間とか細かく考えたの初めてですよぉ」
「敵の戦力が解らずに突っ込まないといけないとは……鉱山のカナリアみたいだな」
呟くキャリコ・ビューイ(ka5044)の役目は、背後を警戒した班の後方での殿と、援護射撃である。
「……スケルトンねぇ。骨だけってのは流石に痩せすぎね。いくら私でもそこまで痩せようとは思わないわ、彼に心配かけたくないし」
道具のチェックをしながら、アルスレーテ・フュラー(ka6148)は一人ごちる。
「フフフ、身の程知らずのスケルトンどもの魔の手を退けながら、誰も知らない遺跡の謎を調べ上げろという訳か」
スケルトンが何体襲って来ようと、遺跡の謎を暴いてやると龍宮 アキノ(ka6831)はやる気を漲らせる。
「マッピングのコツを教えていただけませんか?」
「構いませんよ。まずはですね……」
一応自分でも調べてきたとはいえ、経験者に聞くのが分かりやすいだろうと百鬼 一夏(ka7308)は考え、ジェーンに教わった。
全員の準備が終わったのを確認し、ジェーンが告げる。
「それでは皆様、参りましょう」
さあ、依頼の始まりだ!
●地下遺跡内部・開幕
先行偵察を行うのは、アルト、アルスレーテ、陽の三人だ。
部屋の中には物音でスケルトンが大量にいるのが分かる。
「どうする? 奇襲はかけられそうだが、合流した方がいいか」
「報告通りなら少なくとも三十体以上いるはずよ」
「明かりを気取られると厄介だな。消しておこう」
先行していたアルト、アルスレーテ、陽はいったん仲間と合流することにした。
本隊と及び後方部隊と打ち合わせた結果、戦闘を避けることができないのならば一気に粉砕するべきという結論に至った。
「準備はいいか?」
スケルトンたちに聞こえないよう小声で行われたレイアの問いかけに、仲間たちから囁き声で返事が返ってくる。
「いつでも行けるよ」
「同じく」
「怪我すんじゃねえぞ。回復はできるが、まだまだ先は長いからな」
「さっさと黄泉の国に返してやるよ」
「初めから飛ばしていきます」
まよい、ざくろ、シガレット、アキノ、一夏の五人だ。
「俺とおまえで射撃援護をするぞ。皆がぶつかる前になるべく数を減らすんだ」
「いい経験になりそうですぅ。これだけの相手をすることもなかなかないですしぃ」
後方でキャリコと小太がそれぞれ魔弓と魔導銃を構える。
レイアが扉を開け放つ。
間髪入れずキャリコが弓を強く引き絞り、マテリアルを込めて連続射撃を行い、少し遅れて小太の魔導銃が火を噴き、弾丸の雨を降らせる。
矢と弾丸の雨に追い付いてしまうのではないかと思うような速度でアルトが駆け抜け、スケルトンに法術刀で攻撃を仕掛ける。
一体を反応する間もなく斬り捨てたアルトだったが、別のスケルトンが休む間もなく剣を振り被ってくる。
返す刀で斬り伏せるものの、すぐに三体目が現れて隙間を埋める。
三体目も同じく斬り倒すが、その個体はアルトの攻撃に反応し防御しようとしていた。
アルトの背に悪寒が走る。
当たれば一撃なのは変わりないのに、その一撃が、少しずつ、しかし確実にいなされようとしている感覚がある。
「……くっ、こいつは! 皆油断するな! ただのスケルトンじゃない!」
全身のマテリアルを練り、一気に放出することで一度に数体を倒したアルスレーテも、警戒を呼び掛ける。
「範囲攻撃で仲間が倒された途端散開したわ! 注意して!」
人一倍の身軽さを生かし斬り込んだ二人を押し囲み孤立させようと、スケルトンの集団が動き出す。
しかし、ハンター側もそう簡単に孤立などさせない。
次々と前衛を担当する仲間たちが戦線を作って攻撃を始める。
「ちっ! 簡単に負ける気はせんが、妙に剣技が達者なスケルトンだな!」
レイアがスケルトンたちと斬り結ぶ。
彼女の魔導剣は既にマテリアル光で強化されており、時折衝撃波を放ち複数を一度に攻撃している。
人数差もあり、多対一を強いられているせいもあるかもしれないが、それを踏まえてもスケルトンたちは不気味な強さがあった。
もちろんこの中の単体最強戦力であるアルトが一対一で苦戦するような強さではないが、場所が場所なので何が起きても不思議ではない。
いきなり浮足立った戦闘を落ち着かせたのは、まよいの魔法だった。
魔法で起こした風を纏って魔法の射程内に飛び込んだまよいが、消耗が増えることを承知で普段より多い十本もの魔法の矢を生成し、解き放ったのだ。
「弓持ってる奴優先でいくよ!」
まよいの号令とともに、矢が空を裂いて飛び、弓を構えていたスケルトンたちに直撃する。
魔法の矢により大きく数を減らしたことで、スケルトンたちの周りには空間ができていた。
飛び込んで圧し潰す好機だ。
「燃え尽きろ、拡散ヒートレイ!」
味方に当たらないよう注意しながら、ざくろが魔導剣を媒体にして、扇状に赤白く輝く無数の熱線を放射し、スケルトンを焼いた。
「よっしゃあ、叩き潰せぇ!」
聖導士らしからぬ強面を笑みの形に歪めたシガレットが吠え、光の衝撃波を放ち、衝撃でスケルトンを粉砕する。
「また新しい命が欲しいっていうのかい? この世に二度目の命なんてどこにもないんだよ!」
アキノが展開した光でできた三角形の頂点一つ一つから光線が飛び出し、スケルトンたちを貫く。
全身のマテリアルを練り上げた一夏が、気功を拳に乗せて一気に放出し、スケルトンたちを打ち抜こうとする。
回避しようとするスケルトンたちのうち、一体が回避と見せかけて反撃の構えを取った。
「騙し討ちが効くと思われてるなら舐められたものです!」
そのまま攻撃を続行した一夏は、合わされた斬撃をがっちりと受け止める。
「弓は好きではないんだが、四の五のいってられないな!」
「そ、そこ、横からやらせはしませんよぉっ!」
キャリコと小太が、スケルトンたちを駆逐していく仲間を狙おうと動く個体に射撃、銃撃を浴びせ、被害を防ぐ。
一気に傾いた流れを手放すことなく、ハンターたちは部屋に屯していたスケルトンの群れを全滅させた。
●地下遺跡内部・先行
入口すぐの部屋を突破してからは、スケルトンたちの行動が活発化した。
機械指輪で周囲の状況を探ろうとしても、遺跡内部が異界という特殊状況下だからか、あまり反応が当てにならない。
「通路を塞いでいるのは厄介だな……飛び越えるか。前後から磨り潰すぞ」
「簡単にいってくれるわね……。はいはい、付き合うわよ」
「一応連絡は入れておくよ」
後から来る仲間たちに陽が通信を入れると、アルトとアルスレーテは、一気に獲物に飛び掛かる猛獣のように、全身のばねを使って猛然と走り出した。
特にアルトの動きは秀逸で、残像を残しながら通路の壁から天井へと縦横無尽に蹴りながら立体的に移動し、そのまま駄賃代わりとでもいうようにすれ違うスケルトンを斬り飛ばしている。
しかしアルスレーテとて歴戦のハンターである。
筋力を強化してスケルトンを振り回し、最後には遠くのスケルトンに投げつけてぶつけたスケルトンごと粉砕した。
「おまえも他人のことはいえんな……」
「まだまだ先は長いんだから、節約しなきゃね?」
呆れるアルトに、アルスレーテは澄ました顔で答える。
投げ上げた陽の符が空中で稲妻と化し、最後のスケルトンを貫く。
歩きながら、陽は遺跡に潜ってから抱いていた疑問を二人にぶつけてみる。
「スケルトンたちの動き、不思議に思わないかい? 迷宮を巡回警備してるような……」
「そうだな。それに、スケルトン自体が強くなっているわけではないんだが、妙な感じが……。いや、勘なんだが」
ただの勘でも、強者集うこの依頼で最高戦力であるアルトがいうと、ただの勘では片付けられない不思議な説得力があった。
最初の戦闘でこそ戸惑わされたが、慣れればスケルトンの剣技は対応できないほどではなく、アルトはそれからほぼ一撃で相対したスケルトンたちを屠っている。
アルトほどではないが、アルスレーテも陽と協力すれば倒すのにそう時間はかからない。
いかんせん数が多いので、まぐれ当たりが積み重なっていくのは地味に辛いが。
通信を受けたアルトが二人に伝えた。
「連絡だ。全員合流して休憩にするぞ」
「いいわね。ツナサンドでも作って食べようかしら」
アルスレーテはそのためにパンとツナの缶詰を持ってきている。
「オレもバラエティランチを持ってきたよ。皆で食べよう」
警戒は続けたまま、三人は合流するため来た道を戻った。
●地下遺跡内部・後方
休憩を終え、一行は探索を再開する。
先に進むにつれて、分かれ道なども増え、遺跡内部は複雑さを増し迷路の様相を呈し始めていた。
ちょうど本隊と後方組の間の横道から奇襲を受けないように後方組が偵察していると、ぬっと曲がり角からスケルトンの群れが現れた。
「分かっていたが、思うようにはいかないものだな!」
「せ、狭い通路でもやりようはあるのですぅっ!」
「本隊に合流して一気に殲滅するぞ! それまで消耗は避けろ!」
後方組で固定なキャリコと小太に加え、一時的に加わっていたシガレットが一斉に駆け出した。
追いかけてくるスケルトンのうち、先頭のスケルトンに牽制目的で射撃と銃撃を入れつつ三人は撤退を試みる。
しかしそのタイミングで、シガレットのトランシーバーにレイアから通信が入った。
異界の影響か、所々ノイズが走っているが、救援要請だ。
「同じくスケルトンに出くわして本隊目指して撤退中だ、奇遇だな!」
怒鳴るように交信するシガレットのすぐ後ろで、キャリコと小太の声が上がる。
「次から次へと……きりがないぞ!」
「こういうのもいい経験にはなりそうですがぁ、忙し過ぎますよぉ!」
同行するジェーンが前方を手で指し示した。
「お三方! 本隊の現在位置はこの通路の先のようです!」
しかしジェーンたちの背後からは、スケルトンの群れが迫っている。
「こいつらを連れてなだれ込むわけにはいかねえな! ここで仕留めるぞ!」
反転したシガレットの言葉に、キャリコと小太の戦意がオーラとなって膨れ上がる。
「その言葉を待っていた!」
「たたみかけますぅ!」
時折僅かに生まれる射線を、針に糸を通すような精度で弾丸を操作し通したキャリコと小太は、スケルトンを打ち抜いていく絶技を見せた。
「よし、あらかた殲滅したな! 急いで合流するぞ!」
崩れ落ちるスケルトンたちを確認したシガレットはリペアキットで回復を済ませ、駆け出す。
「またすぐ戦闘になる! 今のうちに矢弾の再装填をしておく!」
「僕ももうやっていますぅ!」
キャリコと小太が慌ただしく次の戦闘に備え走りながら準備をする。
「あともう少しです!」
本隊の姿を目視したジェーンが叫ぶ。
合流は近い。
●地下遺跡内部・本隊
先行組のアルトとアルスレーテに陽、後方組のキャリコ、小太が前後をそれぞれ警戒しているおかげで、その間に挟まれている本隊は散発的なスケルトンの襲撃こそあるものの、比較的平和な状況に置かれていた。
この隙間時間を利用して、シガレットが後方組に動けるほどに。
「うーん……あいつ、ちゃんと働いているんだろうな……。戦えない者を戦わせる気はないが……あいつ戦えるからなあ……」
「まあ、でも正確な強さまでは私たちも知らないし、ね?」
どうやらレイアは普段のジェーンの態度を見慣れているせいか彼女のことが気になるようで、自分の傷を治療中のまよいにフォローされている。
「結構奥へ進んできたけど、回復もかなり減ってきたね。ざくろはもうほとんど打てないよ。戦闘自体はまだまだいけるけど」
既にざくろの回復魔法は尽きかけていた。
ざくろの提案で分かれ道では足跡等の痕跡を調べて、行き止まりなどで退路を塞がれたり時間を無駄にしたりしないよう進む方向を決め、全体で見れば回復は結構温存できている方だが、それでも敵の数が数なのでそれなりに消耗は大きい。
「あたしも似たようなものだね。でも幸い覚醒回数は節約してるからまだ余裕があるよ」
「私は終盤のことを考えると、もうあまり覚醒したくない感じですね……」
一行の中では経験が浅く、元々覚醒回数が少なめなアキノと一夏は、節約するにしても限度があり、特に一夏は序盤仲間に温存させるために飛ばしたので、既に力が枯渇気味だった。
そこへ、スケルトンたちが現れ襲い掛かってきた。
「前方から!? アルトたちをやり過ごしたのか!? 姑息な真似を!」
即座に踏み込んで魔導剣を一閃させ突きを繰り出したレイアを、まよいが援護する。
「奥の方が狙い辛いけど、見えてる範囲なら!」
射出された魔法の矢が、前面のスケルトンに突き刺さる。
「ざくろも前に出るよ!」
雷撃を帯びた光の障壁を展開したざくろが、魔導剣を手にレイアと入れ替わり立ち代わり前に出て、スケルトンに狙いを絞らせないようにする。
元々通路なので大勢で戦うには向いていないのと、僅かでも休憩を取れる時間を作り、継戦能力を高めつつ戦うのだ。
それでも次から次へと襲ってくるスケルトンに、じりじりと本隊を構成する一行は近くの部屋へと追いやられていった。
気付いたアキノが警告する。
「まずいね……誘導されているよ! 屍のくせに悪知恵が働くじゃないか!」
「隠れてたなんてずるいです! ちゃんと先に出てきてくれないとマッピングに生かせないじゃないですか!」
非覚醒時間を利用して遺跡内部のマッピングを行っていた一夏が、慌ててスケルトンから距離を取る。覚醒は残り一回。撤退時のことを考えると最後の手段だ。
レイアが通信で援軍を呼ぶが、それまでは五人で耐え忍ばねばならない。
「ここが正念場だな……! 来るぞ!」
炎のオーラを灯し、空間のベクトルを支配したレイアが一夏を庇うように立つ。
放たれた矢を、レイアは斬り払った。
「お返しだよ!」
広い部屋ならば十分に射線も通る。
出し惜しみせず、まよいは魔法の矢を空中に並べて解き放った。
十本の矢が平行に飛び、スケルトンの数を大幅に減らす。
「しつこいねぇ! 遺跡の秘密はあたし達が美味しく戴いていくから、さっさと黄泉の国に戻りなよ!」
アキノの機導術が生み出す光が、スケルトンたちを薙ぎ払う。
「本当は怖い。でもこのまま死ぬよりかはマシです!」
勇気を振り絞った一夏が最後の覚醒をする。
状況的にこれを凌げば撤退だろう。どの道覚醒は最長一時間は持つ。撤退の途中までは続くはずだ。
凌げればだが。
五人の必死の抵抗も焼け石に水かと思われた頃、待ちわびた声が響いた。
それも、本隊の前後二か所から同時にだ。
「一気に殲滅するぞ! 私に続け!」
「分かったわ!」
「オレに任せてよ!」
前からは先行していたアルト、アルスレーテ、陽が。
「待たせたな! 援軍の到着だぜ!」
「援護射撃に入る! 行くぞ!」
「任せてくださいですぅ!」
後ろからは後方にいたシガレット、キャリコ、小太が。
スケルトンたちが、ハンターたちの増援にたじろいだように見えた。
本隊のメンバーも連携し、今度は逆にスケルトンたちを奇襲した利でもって圧し潰していった。
●撤退
スケルトンは片付いたものの、これ以上の探索は厳しい。
ついにシガレットの回復もなくなり、回復アイテムはほぼ全員が使い切っている。
複数人で協力したのでマップはかなりの面積が埋まり、遺跡内部の分析結果や採取したサンプルの量もそこそこの量になっている。
残念ながらスケルトンの武器は消えてしまった。
スケルトンが来る方向から奥に何かあるのではないかという推測は立つものの、引き返さざるを得ず、一行はここで撤退を選んだ。
嘆くことはない。
帰れば、また来れるのだから。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/10/11 22:50:07 |
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相談卓 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/10/12 00:49:57 |