ゲスト
(ka0000)
【初夢】リアルブルー観光
マスター:トーゴーヘーゾー

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/03 22:00
- 完成日
- 2015/01/13 02:34
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「これで何度目だろうな」
「言うなよ。仕事だ仕事」
うんざりした雰囲気のなか、彼等は装置を作動させる。
繰り返された失敗。薄れていく熱意。
どれだけ行っても達成の見込みがないと、半ばあきらめた状態で、惰性のように実験は繰り返されていた。
20m四方はある室内に様々な装置が並べられ、中央部分にだけぽっかりと何もない空間が残されていた。
蚊が飛ぶような小さな駆動音から始まり、エンジンが回転数を上げていく様に、作動音と振動が高まっていく。
いつもと変わらぬ風景のなかで、ひとつの違和感が生じる。それは、規模的には小さなものだが、世界に与える影響は巨大なものだった。
それは、一瞬で消滅した。
消えた今となっては、まるで幻だったとしか思えない。
「えっと……、疲れすぎかな。俺」
「奇遇だな。俺もなにかの妄想を見た気がする」
「もしかして、同じ光景を見たんじゃないか?」
「同感だ。まず、お前から何を見たのか話せよ」
「あれはリアルブルーじゃないのか? いや、俺は写真でしか見たこと無いんだし、向こう出身のお前が判断すべきだろ」
「俺の国じゃないけど、俺のいた世界だと思う。たぶん……」
「……じゃあ、実験は成功したのか?」
「した……んだよな?」
お互いの体が興奮で震えてることに、お互いが気づく。
「うおおおっ! すげーっ! 本当か!? 本当だよな!?」
「室長呼んでこい! 急げよ! ……って、俺が呼んでくるわ!」
たまたま当番だった彼等は、この実験に立ち会ったという一点で、クリムゾンウェストとリアルブルーの双方で有名になった。
ふたりが所属していた研究室の目的は、ふたつの世界をつなぐ特異点を作り出すこと。
クリムゾンウェストの魔術師や機導師と、リアルブルーの科学者達が多数参加して、その基礎理論を作り出した。
ほんの短い時間、ごく些細な空間的接触が、この研究を加速させ、ついには転移すら可能とする。
しかし、前代未聞の実証実験のため、失敗をおそれた研究者達は自ら転移するのは拒み、参加希望者を一般から募ることとなった。
抽選で選ばれたメンバーは、クリムゾンウェスト初のリアルブルー観光へ向かうのだ。
「言うなよ。仕事だ仕事」
うんざりした雰囲気のなか、彼等は装置を作動させる。
繰り返された失敗。薄れていく熱意。
どれだけ行っても達成の見込みがないと、半ばあきらめた状態で、惰性のように実験は繰り返されていた。
20m四方はある室内に様々な装置が並べられ、中央部分にだけぽっかりと何もない空間が残されていた。
蚊が飛ぶような小さな駆動音から始まり、エンジンが回転数を上げていく様に、作動音と振動が高まっていく。
いつもと変わらぬ風景のなかで、ひとつの違和感が生じる。それは、規模的には小さなものだが、世界に与える影響は巨大なものだった。
それは、一瞬で消滅した。
消えた今となっては、まるで幻だったとしか思えない。
「えっと……、疲れすぎかな。俺」
「奇遇だな。俺もなにかの妄想を見た気がする」
「もしかして、同じ光景を見たんじゃないか?」
「同感だ。まず、お前から何を見たのか話せよ」
「あれはリアルブルーじゃないのか? いや、俺は写真でしか見たこと無いんだし、向こう出身のお前が判断すべきだろ」
「俺の国じゃないけど、俺のいた世界だと思う。たぶん……」
「……じゃあ、実験は成功したのか?」
「した……んだよな?」
お互いの体が興奮で震えてることに、お互いが気づく。
「うおおおっ! すげーっ! 本当か!? 本当だよな!?」
「室長呼んでこい! 急げよ! ……って、俺が呼んでくるわ!」
たまたま当番だった彼等は、この実験に立ち会ったという一点で、クリムゾンウェストとリアルブルーの双方で有名になった。
ふたりが所属していた研究室の目的は、ふたつの世界をつなぐ特異点を作り出すこと。
クリムゾンウェストの魔術師や機導師と、リアルブルーの科学者達が多数参加して、その基礎理論を作り出した。
ほんの短い時間、ごく些細な空間的接触が、この研究を加速させ、ついには転移すら可能とする。
しかし、前代未聞の実証実験のため、失敗をおそれた研究者達は自ら転移するのは拒み、参加希望者を一般から募ることとなった。
抽選で選ばれたメンバーは、クリムゾンウェスト初のリアルブルー観光へ向かうのだ。
リプレイ本文
●異邦人達
「おお、何時か旅を続けておれば叶うと思っておった念願のリアルブルー渡航が、こんなにも早く叶うとは! ふはははは、やはり神様はよい子の味方のようじゃな!」
カエデ・グリーンフィールド(ka3568)の小さい体が、喜びではち切れそうだ。
「妙に長い馬車じゃが、引くための馬がおらんぞ」
キョロキョロと周りを見渡すカエデに、天竜寺 舞(ka0377)が説明する。
「バス……自動車は、馬がいなくても単独で走るからね」
「おお!? り、リアルブルーは魔導機械もすごいのじゃなぁ」
「め、目立ちます……浮いてます……」
いつもの服装で訪れたミネット・ベアール(ka3282)が、同行者の服装と見比べてうろたえている。
「えーと、んじゃまずは……かっこだな!」
リアルブルー出身者である葵(ka2143)が、彼女らに注意点を説明していく。
フラン・レンナルツ(ka0170)は目立たないようにと、チュニックにプリーツスカート、黒のタイツにアーミーブーツ姿だった。
「武器を手放すのに不安を感じるのもわかるけど、持ち歩いているだけで捕縛されたりするからね」
当人も仕込杖は諦めて、ナイフを腰のベルトに固定して隠し持った。
「つまり、こうじゃな」
カエデは銃や防具をコートで覆い隠し、仕込杖を握っている。
「そう、そう。そんな感じ」
「今となっては何もかも懐かしい……て程離れてる訳じゃないけど、普段お稽古や公演に追われて、遊園地とかショッピングモールとか殆ど行った事ないんだよね。だから観光客として楽しむよ」
舞は楽しむ気、満々である。
「リアルブルー……久しぶり、だな」
ライナス・ブラッドリー(ka0360)の脳裏には、故郷と亡くなった妻子が描き出される。傭兵業が忙しくて、観光につきあう機会も無かった。
「だが、今回はnil(ka2654)が一緒だ。何とも不思議な感じだが……悪くない」
客を乗せたミニバスは、障害物のない地点を選んでリアルブルーへと転移し、そのまま路上で走行を続ける。
(「今、此処に戻って来て、何を想っているんだろ?」)
生まれや育ちのせいで情緒面の発育が遅れているnilにとって、いろいろと世話を焼いてくれるライナスは不思議な存在という認識だった。
「クリムゾンウェストでも、見た事の無い所ばかりだけれど、……リアルブルーも不思議な所、ね……。ねえ、ライナス。この世界でも海は青いんだね……」
「そうだな。この旅行でもっといろんなものを見られるはずだ」
ミニバスの進行方向には、大きな観覧車やジェットコースターが遠目にも見て取れた。
「ここがリアルブルー……。なんや、ぎょうさん夢が詰まった世界やな♪」
わくわくを隠せないアカーシャ・ヘルメース(ka0473)。
「リアルブルーでは『かめら』なるもので、絵心がなくとも直ぐに風景画を描けると聞いたぞ! 欲しいのぅ……、手に入るかのぅ?」
「ショッピングモールに行くんだし、買えるはずだぜ」
葵の補足に、カエデは満面の笑みで応じる。
「一応、ボクはガイド役のひとりだし、みんなを退屈させないように出来ればいいな。久しぶりにリアルブルーの料理や酒も飲みたいし、お酒なんかは大量に持ち帰りたいね」
フランもまた、彼女なりの目的があるようだった。
●遊園地
「バスの運転だけじゃ勿体無いだろう。ベルンハルトも一緒に行こうよ」
フランの誘いに応じる形で、運転手も遊園地を訪れる。
「此処が遊園地かー♪ なんや、遊び心が詰まっとるなー♪」
「ネズミの所じゃないのか……」
「なんやねん、ネズミて?」
舞の独白にアカーシャが食いついた。
「世界規模で有名な遊園地のマスコットキャラがネズミなんだよ」
一同を出迎えたのは、元ネタのわからないモフモフした着ぐるみだった。
「いつもより高い視点だから、……何だか変な感じ。……ライナスの見る景色は、何時もこんな感じなのかな」
肩車されているnilよりも、肩車しているライナスの方が楽しげで、フランが微笑ましそうに見守っている。
「……変な、乗り物。すごく早くて、同じところ、巡ってて……」
「あれはジェットコースターと言うモノだ。凄いスピードで山や谷を走ったり、一回転したりする。……アレに興味があるのか?」
「乗っても、良いの?」
「もちろんだ」
「やっぱりジェットコースターには乗りたいよねー!? クラスの子達がよく話してたけどあたし乗った事ないんだよね!」
期待感も露わに舞が意気込むと、カエデとアカーシャもこれに同調した。
「妾も『じぇっとこーすたー』というのに挑戦するぞ」
「派手で面白そうやからなー♪」
ひとり、ミネットの視線を釘付けにしたのはゴーカートだった。
「あの車運転するやつ私もやってみたいです! 行ってみましょう、ベルガーさん!」
ふたりを放っておけず、フランは注意事項を言い残しながら追いかけて行った。
「仕方ないな。みんなも別行動取るときは、リアルブルー出身者が同行するように気をつけて」
「私は青いマシン! ベルガーさんは是非赤いのをどうぞ」
どこかでカーレースについて聞き及んだらしいミネットが、率先して仕切っていく。
「勝負です! 私は運転した事ないのでハンデも欲しいですが……赤いはにゃ馬には負けません!」
宣戦布告するも最後に噛んだ。
係員の説明通り、赤信号が消えたところで、2台がスタートする。
アクセルべたぶみのミネットがなんとか追いつけても、コーナー時の減速でベルンハルトに先行されてしまう。
「トップはベルンハルト・コチラハ・ベルガー! ベルガーが行ってきた! ミネットはサンバイン!」
自前で実況を続けるミネットはそれでも楽しそうだ。
「ぐぅ……流石です。でも、レースってすっごく楽しいですね!」
「キャーーー♪」
きゅうっと目をつぶりながらも、スピードと横Gが奏でるスリル感に、舞は笑顔で悲鳴を上げる。
彼女らを乗せた金属製の龍が、ようやく巣まで戻ってきた。
「……俺はやっぱり、戦車や戦闘機で十分だよ」
ぐったりするライナスにくらべ、nilはわずかに頬を紅潮させている。
「何だか不思議な乗り物……。また、乗りたい」
そんな感想にライナスは苦笑を浮かべるしかない。
「もう一回乗りたいとこやけど、色んなアトラクションを全部堪能するで♪」
テンションのままにアカーシャが宣言する。
「向こうにはないジャンクなおやつでも……と思ったんだけど、ポップコーンとかフライドポテトとかありそうなんだよなぁ……」
お菓子を前に悩む葵の傍らで、カエデはお土産を買い込んでいる。
「おっ、それカメラだよ」
「……聞いていたのとは違うのぅ?」
「使い捨てだから撮れる枚数は少ないけど、カメラなのは間違いない」
ごっそりと買い込むカエデだが、現像はサルヴァトーレ・ロッソの協力を得る必要がありそうだ。
「アレは? 馬が回ってるけど……馬は止まっていて、台が動いてる……?」
「次はメリーゴーランドか……。アレなら良いかもしれん、な」
と言いつつ、ライナスは乗らず、馬に跨ったnilをまぶしそうに眺めていた。
「リアルブルーには、変なモノが多いのね。……でも、嫌じゃない。ライナスは見ているだけなのに、楽しそう……かな」
買い物から戻ったカエデは、葵の説明を受けながらnilを撮影する。ライナスが欲しがり、何枚も焼き増しする必要がありそうだ。
マスコットキャラと並んで、カエデの被写体を勤めるアカーシャは、向こうでの遊園地運営に思いを馳せる。
「これ、クリムゾンウェストでも儲かるやろな。ただ、莫大な土地がネックやな」
「アカーシャ。リアルブルーならではの乗り物に興味あるか?」
「大ありやっ!」
葵の誘いに、打てば響くような反応が返った。
ふたりが向かったのは、小さな稼働式トロッコに乗って、スクリーン上の敵を打ち倒していくゲーム形式のアトラクションだ。
「映像、言うんか!? 凄いわ、これ! 向こうでやれんのが悔しすぎるで!」
幾重もの意味で再現が難しい内容に、アカーシャが悔しさで歯がみしていた。
●お買い物
だだっ広い駐車場にバスを止め、今度はショッピングセンターに入った。
「凄っ、お店が一杯じゃない!?」
家の束縛が多かった舞は、お上りさんみたいに辺りをキョロキョロ見回して感嘆する。
「ここで流通経路開拓とか、事業学んでクリムゾンウェストで店開けたら面白そうや! あかん、燃えてきたわ!」
うずうずするアカーシャに、葵が慌てて釘を刺す。
「ちょっと待ったぁ! まずは案内図で目星を付けといた方がいいって。迷った場合なんかの集合場所も決めておこう」
携帯電話は契約上の問題があり、トランシーバーが各自に配られた。
「ライナスとnilは、『親子』ふたりで回れるようにしましょう」
皆にそう提案したフランだが、当の彼女がライナスに捕まった。
「少しの間、nilにつきあってくれ」
「無粋な真似は避けるつもりだったんだけど……?」
ためらうフランだったが、事情を聞いて快く頷く。
大きな広場では、地方の物産展が行われていた。
日本国内でも珍しい品揃えなので、クリムゾンウェスト人にしてみればそれ以上だ。
「リアルブルーの、モグモグ、食べ物って、モグ、すっごく美味しい、モグモグ、ですね、モグモグ!」
見かけるたびに試食を繰り返し、ミネットが賞賛を口にする。特に肉がお気に入りのようだ。
カエデが食指を動かすのはもっぱら服で、様々に買い漁っていく。
「おぉ、これが噂にきく『やまとなでしこ』の服か! いいのぅ、こんなのもので舞を踊ったらきっと雅じゃろうなぁ…」
呉服屋を飾るカラフルな反物に足を止めると、舞が声をかけた。
「あ、カエデさん、興味あるの? それなら着付けしてあげるよ。家の仕事柄しょっちゅう着てたからお手の物だしね」
「それは楽しみじゃな」
瞳を輝かせるカエデに、舞は『帯を引っ張って、あ~れ~とやる遊びがあるよ』などと嘘を吹き込みたくなり、その誘惑に耐えるべく頑張っていた。
「こういう形式で店出すんは面白そうやな。物流も各店舗毎やのうて、デパート毎やらせてもらったら儲け半端ないな! ええなー、ええなー♪」
アカーシャの目は銭マークでキラキラと輝いて見えた。
●クリムゾンウェストへ帰るまでが旅行
荷物を積んでいると、ミニバスの後方にあった自動販売機が動き出した。
『……は!?』
この点に限り、『こういうモノ』として受け入れたクリムゾンウェスト人とは違い、リアルブルー人の方が驚きは大きかった。
「……と、雑魔!? こんな時に、無粋なヤツだ……」
「こないな場所にまで出てくるんか!」
ライナスが威嚇射撃で援護すると、アカーシャが撃退に動き出す。
「ぬあああ、このような面妖な箱の物の怪に、妾のリアルブルー観光を汚されてなるものか! 絶対の絶対の絶対の絶対に許さぬ!」
カエデはクラッシュブロウを連続使用して、短期決戦を狙う。
買い物客が集まりだし、葵が慌てて弁解に回った。
「この自販機は故障してるらしい。動作が変だから避難した方がいいよ」
が、ライナスの銃声が状況を悪化させる。
野次馬が騒ぎ出し、用意しておいたIDカードを掲げて援軍が現れる。
「ボクは連合宙軍に所属しているフラン・レンナルツだ。あの怪物はボク等が対処するから、冷静に避難してくれ。……葵は自販機を頼む」
「箱に手足が生えただけというのは、見るからにアンバランスじゃ!」
脚へと攻撃を集中させ、切断はできずとも、転倒させて攻撃を潰していく。
動きを鈍らせた自販機は、代わりに缶ジュースを投じて武器にし始めた。
『地を駆けるもの』で蛇の様な竜を憑依させていたアカーシャが、蛇の様なうねってそれをかわす。
缶の攻撃をマルチステップでかわした舞は、隠し持っていたナイフを手に、ランアウトからのスラッシュエッジで斬りつけた。
「……変な雑魔まで出たのね。飲み物をくれるなんて、これもこの世界ならでは……なの?」
「それはわからんが……。丁度、この缶ジュースは飲めそう……だな」
受け止めた缶を開けて、ライナスが毒味で飲んでみる。
「問題ない。ほらnil……飲んでみるといい。リアルブルーの味、だ」
飛んでくる缶を弓で撃ち抜いていたnilへ、ライナスから手渡される。
「これ、飲めるの……? ……美味しいの、ね」
「楽しく過ごしている、ゴクゴク、人々、ゴク、を襲うなんてゴクゴク、許せゴクません! ゴクゴク」
ミネットなどはもっと豪快に缶を空けていった。
「あ、そっちのも美味しそうですね」
ほのぼの展開を交えつつ、戦いも同時進行していた。
動きは鈍いし、攻撃力も低いが、とにかく敵は頑丈だ。
踏込を使った葵がどーんっと体ごとぶつかっていく。多少の怪我はヒール頼りだ。
「とにかく短期決戦! 取り出し口なんか弱そうじゃない?」
バタフライナイフを突き立ててこじると、穴からあふれた炭酸飲料が泡を立てながらこぼれ落ちる。
チャンスを狙っていたライナスが、エイミングと同時に跳弾で狙い撃つ。
「聖竜六合拳が1つ、竜身体(ドラゴンダンス)。絶招、竜哮勁(ドラゴンロアー)!」
アカーシャが『クラッシュブロウ』で繰り出す掌底攻撃。
「どんなに硬かろうと、中身はどうやっ!」
衝撃は内部へと浸透して何本もの缶ジュースを破裂させた。雑魔が消えた証か、ガコガコガコンと缶が止めどなくこぼれ落ちた。
衆目を集めながら、ハンター達を乗せたミニバスがその場を後にする。
「nil、これを……」
ライナスが目の前にイヤリングを掲げると、nilは不思議そうに首をかしげる。
「リアルブルー土産……だ。喜んでもらえるだろうか」
ショッピングセンターで別行動したのも、驚かせようと考えてのことだ。
「……ありがとう」
のんびりと冬景色を眺めつつ、舞は戦利品として回収した缶ジュースに手を伸ばす。
「太るからってあまり食べさせてもらえなかったんだよね♪」
舞がお菓子を広げ始めると、葵も購入したケーキを配り始めた。
「9種類あるからそれぞれ選んで。あ、ベルンハルトさんのは、食べやすいようにシュークリームにしたから!」
が、運転手はそれどころではなくなった。
騒動を知った警察がサイレンを鳴らして追いかけてきたのだ。
「さすがに軍歴を盾にしても見逃してくれないだろうな」
フランの責任ではないが、行方不明状態のサルヴァトーレ・ロッソ所属という説明では、信用を得られないだろう。
ベルンハルトが転移装置を作動させ、ミニバスはリアルブルーから消滅する。
出発地点に戻ると、安堵した一行が降車し始めた。
「ほんと楽しかった♪ 妹も来させてあげたかったな」
短い異世界旅行を振り返る舞。
ミネットは、居合わせた皆に向けて大声で告げる。
「楽しいツアーありがとうございました!」
「おお、何時か旅を続けておれば叶うと思っておった念願のリアルブルー渡航が、こんなにも早く叶うとは! ふはははは、やはり神様はよい子の味方のようじゃな!」
カエデ・グリーンフィールド(ka3568)の小さい体が、喜びではち切れそうだ。
「妙に長い馬車じゃが、引くための馬がおらんぞ」
キョロキョロと周りを見渡すカエデに、天竜寺 舞(ka0377)が説明する。
「バス……自動車は、馬がいなくても単独で走るからね」
「おお!? り、リアルブルーは魔導機械もすごいのじゃなぁ」
「め、目立ちます……浮いてます……」
いつもの服装で訪れたミネット・ベアール(ka3282)が、同行者の服装と見比べてうろたえている。
「えーと、んじゃまずは……かっこだな!」
リアルブルー出身者である葵(ka2143)が、彼女らに注意点を説明していく。
フラン・レンナルツ(ka0170)は目立たないようにと、チュニックにプリーツスカート、黒のタイツにアーミーブーツ姿だった。
「武器を手放すのに不安を感じるのもわかるけど、持ち歩いているだけで捕縛されたりするからね」
当人も仕込杖は諦めて、ナイフを腰のベルトに固定して隠し持った。
「つまり、こうじゃな」
カエデは銃や防具をコートで覆い隠し、仕込杖を握っている。
「そう、そう。そんな感じ」
「今となっては何もかも懐かしい……て程離れてる訳じゃないけど、普段お稽古や公演に追われて、遊園地とかショッピングモールとか殆ど行った事ないんだよね。だから観光客として楽しむよ」
舞は楽しむ気、満々である。
「リアルブルー……久しぶり、だな」
ライナス・ブラッドリー(ka0360)の脳裏には、故郷と亡くなった妻子が描き出される。傭兵業が忙しくて、観光につきあう機会も無かった。
「だが、今回はnil(ka2654)が一緒だ。何とも不思議な感じだが……悪くない」
客を乗せたミニバスは、障害物のない地点を選んでリアルブルーへと転移し、そのまま路上で走行を続ける。
(「今、此処に戻って来て、何を想っているんだろ?」)
生まれや育ちのせいで情緒面の発育が遅れているnilにとって、いろいろと世話を焼いてくれるライナスは不思議な存在という認識だった。
「クリムゾンウェストでも、見た事の無い所ばかりだけれど、……リアルブルーも不思議な所、ね……。ねえ、ライナス。この世界でも海は青いんだね……」
「そうだな。この旅行でもっといろんなものを見られるはずだ」
ミニバスの進行方向には、大きな観覧車やジェットコースターが遠目にも見て取れた。
「ここがリアルブルー……。なんや、ぎょうさん夢が詰まった世界やな♪」
わくわくを隠せないアカーシャ・ヘルメース(ka0473)。
「リアルブルーでは『かめら』なるもので、絵心がなくとも直ぐに風景画を描けると聞いたぞ! 欲しいのぅ……、手に入るかのぅ?」
「ショッピングモールに行くんだし、買えるはずだぜ」
葵の補足に、カエデは満面の笑みで応じる。
「一応、ボクはガイド役のひとりだし、みんなを退屈させないように出来ればいいな。久しぶりにリアルブルーの料理や酒も飲みたいし、お酒なんかは大量に持ち帰りたいね」
フランもまた、彼女なりの目的があるようだった。
●遊園地
「バスの運転だけじゃ勿体無いだろう。ベルンハルトも一緒に行こうよ」
フランの誘いに応じる形で、運転手も遊園地を訪れる。
「此処が遊園地かー♪ なんや、遊び心が詰まっとるなー♪」
「ネズミの所じゃないのか……」
「なんやねん、ネズミて?」
舞の独白にアカーシャが食いついた。
「世界規模で有名な遊園地のマスコットキャラがネズミなんだよ」
一同を出迎えたのは、元ネタのわからないモフモフした着ぐるみだった。
「いつもより高い視点だから、……何だか変な感じ。……ライナスの見る景色は、何時もこんな感じなのかな」
肩車されているnilよりも、肩車しているライナスの方が楽しげで、フランが微笑ましそうに見守っている。
「……変な、乗り物。すごく早くて、同じところ、巡ってて……」
「あれはジェットコースターと言うモノだ。凄いスピードで山や谷を走ったり、一回転したりする。……アレに興味があるのか?」
「乗っても、良いの?」
「もちろんだ」
「やっぱりジェットコースターには乗りたいよねー!? クラスの子達がよく話してたけどあたし乗った事ないんだよね!」
期待感も露わに舞が意気込むと、カエデとアカーシャもこれに同調した。
「妾も『じぇっとこーすたー』というのに挑戦するぞ」
「派手で面白そうやからなー♪」
ひとり、ミネットの視線を釘付けにしたのはゴーカートだった。
「あの車運転するやつ私もやってみたいです! 行ってみましょう、ベルガーさん!」
ふたりを放っておけず、フランは注意事項を言い残しながら追いかけて行った。
「仕方ないな。みんなも別行動取るときは、リアルブルー出身者が同行するように気をつけて」
「私は青いマシン! ベルガーさんは是非赤いのをどうぞ」
どこかでカーレースについて聞き及んだらしいミネットが、率先して仕切っていく。
「勝負です! 私は運転した事ないのでハンデも欲しいですが……赤いはにゃ馬には負けません!」
宣戦布告するも最後に噛んだ。
係員の説明通り、赤信号が消えたところで、2台がスタートする。
アクセルべたぶみのミネットがなんとか追いつけても、コーナー時の減速でベルンハルトに先行されてしまう。
「トップはベルンハルト・コチラハ・ベルガー! ベルガーが行ってきた! ミネットはサンバイン!」
自前で実況を続けるミネットはそれでも楽しそうだ。
「ぐぅ……流石です。でも、レースってすっごく楽しいですね!」
「キャーーー♪」
きゅうっと目をつぶりながらも、スピードと横Gが奏でるスリル感に、舞は笑顔で悲鳴を上げる。
彼女らを乗せた金属製の龍が、ようやく巣まで戻ってきた。
「……俺はやっぱり、戦車や戦闘機で十分だよ」
ぐったりするライナスにくらべ、nilはわずかに頬を紅潮させている。
「何だか不思議な乗り物……。また、乗りたい」
そんな感想にライナスは苦笑を浮かべるしかない。
「もう一回乗りたいとこやけど、色んなアトラクションを全部堪能するで♪」
テンションのままにアカーシャが宣言する。
「向こうにはないジャンクなおやつでも……と思ったんだけど、ポップコーンとかフライドポテトとかありそうなんだよなぁ……」
お菓子を前に悩む葵の傍らで、カエデはお土産を買い込んでいる。
「おっ、それカメラだよ」
「……聞いていたのとは違うのぅ?」
「使い捨てだから撮れる枚数は少ないけど、カメラなのは間違いない」
ごっそりと買い込むカエデだが、現像はサルヴァトーレ・ロッソの協力を得る必要がありそうだ。
「アレは? 馬が回ってるけど……馬は止まっていて、台が動いてる……?」
「次はメリーゴーランドか……。アレなら良いかもしれん、な」
と言いつつ、ライナスは乗らず、馬に跨ったnilをまぶしそうに眺めていた。
「リアルブルーには、変なモノが多いのね。……でも、嫌じゃない。ライナスは見ているだけなのに、楽しそう……かな」
買い物から戻ったカエデは、葵の説明を受けながらnilを撮影する。ライナスが欲しがり、何枚も焼き増しする必要がありそうだ。
マスコットキャラと並んで、カエデの被写体を勤めるアカーシャは、向こうでの遊園地運営に思いを馳せる。
「これ、クリムゾンウェストでも儲かるやろな。ただ、莫大な土地がネックやな」
「アカーシャ。リアルブルーならではの乗り物に興味あるか?」
「大ありやっ!」
葵の誘いに、打てば響くような反応が返った。
ふたりが向かったのは、小さな稼働式トロッコに乗って、スクリーン上の敵を打ち倒していくゲーム形式のアトラクションだ。
「映像、言うんか!? 凄いわ、これ! 向こうでやれんのが悔しすぎるで!」
幾重もの意味で再現が難しい内容に、アカーシャが悔しさで歯がみしていた。
●お買い物
だだっ広い駐車場にバスを止め、今度はショッピングセンターに入った。
「凄っ、お店が一杯じゃない!?」
家の束縛が多かった舞は、お上りさんみたいに辺りをキョロキョロ見回して感嘆する。
「ここで流通経路開拓とか、事業学んでクリムゾンウェストで店開けたら面白そうや! あかん、燃えてきたわ!」
うずうずするアカーシャに、葵が慌てて釘を刺す。
「ちょっと待ったぁ! まずは案内図で目星を付けといた方がいいって。迷った場合なんかの集合場所も決めておこう」
携帯電話は契約上の問題があり、トランシーバーが各自に配られた。
「ライナスとnilは、『親子』ふたりで回れるようにしましょう」
皆にそう提案したフランだが、当の彼女がライナスに捕まった。
「少しの間、nilにつきあってくれ」
「無粋な真似は避けるつもりだったんだけど……?」
ためらうフランだったが、事情を聞いて快く頷く。
大きな広場では、地方の物産展が行われていた。
日本国内でも珍しい品揃えなので、クリムゾンウェスト人にしてみればそれ以上だ。
「リアルブルーの、モグモグ、食べ物って、モグ、すっごく美味しい、モグモグ、ですね、モグモグ!」
見かけるたびに試食を繰り返し、ミネットが賞賛を口にする。特に肉がお気に入りのようだ。
カエデが食指を動かすのはもっぱら服で、様々に買い漁っていく。
「おぉ、これが噂にきく『やまとなでしこ』の服か! いいのぅ、こんなのもので舞を踊ったらきっと雅じゃろうなぁ…」
呉服屋を飾るカラフルな反物に足を止めると、舞が声をかけた。
「あ、カエデさん、興味あるの? それなら着付けしてあげるよ。家の仕事柄しょっちゅう着てたからお手の物だしね」
「それは楽しみじゃな」
瞳を輝かせるカエデに、舞は『帯を引っ張って、あ~れ~とやる遊びがあるよ』などと嘘を吹き込みたくなり、その誘惑に耐えるべく頑張っていた。
「こういう形式で店出すんは面白そうやな。物流も各店舗毎やのうて、デパート毎やらせてもらったら儲け半端ないな! ええなー、ええなー♪」
アカーシャの目は銭マークでキラキラと輝いて見えた。
●クリムゾンウェストへ帰るまでが旅行
荷物を積んでいると、ミニバスの後方にあった自動販売機が動き出した。
『……は!?』
この点に限り、『こういうモノ』として受け入れたクリムゾンウェスト人とは違い、リアルブルー人の方が驚きは大きかった。
「……と、雑魔!? こんな時に、無粋なヤツだ……」
「こないな場所にまで出てくるんか!」
ライナスが威嚇射撃で援護すると、アカーシャが撃退に動き出す。
「ぬあああ、このような面妖な箱の物の怪に、妾のリアルブルー観光を汚されてなるものか! 絶対の絶対の絶対の絶対に許さぬ!」
カエデはクラッシュブロウを連続使用して、短期決戦を狙う。
買い物客が集まりだし、葵が慌てて弁解に回った。
「この自販機は故障してるらしい。動作が変だから避難した方がいいよ」
が、ライナスの銃声が状況を悪化させる。
野次馬が騒ぎ出し、用意しておいたIDカードを掲げて援軍が現れる。
「ボクは連合宙軍に所属しているフラン・レンナルツだ。あの怪物はボク等が対処するから、冷静に避難してくれ。……葵は自販機を頼む」
「箱に手足が生えただけというのは、見るからにアンバランスじゃ!」
脚へと攻撃を集中させ、切断はできずとも、転倒させて攻撃を潰していく。
動きを鈍らせた自販機は、代わりに缶ジュースを投じて武器にし始めた。
『地を駆けるもの』で蛇の様な竜を憑依させていたアカーシャが、蛇の様なうねってそれをかわす。
缶の攻撃をマルチステップでかわした舞は、隠し持っていたナイフを手に、ランアウトからのスラッシュエッジで斬りつけた。
「……変な雑魔まで出たのね。飲み物をくれるなんて、これもこの世界ならでは……なの?」
「それはわからんが……。丁度、この缶ジュースは飲めそう……だな」
受け止めた缶を開けて、ライナスが毒味で飲んでみる。
「問題ない。ほらnil……飲んでみるといい。リアルブルーの味、だ」
飛んでくる缶を弓で撃ち抜いていたnilへ、ライナスから手渡される。
「これ、飲めるの……? ……美味しいの、ね」
「楽しく過ごしている、ゴクゴク、人々、ゴク、を襲うなんてゴクゴク、許せゴクません! ゴクゴク」
ミネットなどはもっと豪快に缶を空けていった。
「あ、そっちのも美味しそうですね」
ほのぼの展開を交えつつ、戦いも同時進行していた。
動きは鈍いし、攻撃力も低いが、とにかく敵は頑丈だ。
踏込を使った葵がどーんっと体ごとぶつかっていく。多少の怪我はヒール頼りだ。
「とにかく短期決戦! 取り出し口なんか弱そうじゃない?」
バタフライナイフを突き立ててこじると、穴からあふれた炭酸飲料が泡を立てながらこぼれ落ちる。
チャンスを狙っていたライナスが、エイミングと同時に跳弾で狙い撃つ。
「聖竜六合拳が1つ、竜身体(ドラゴンダンス)。絶招、竜哮勁(ドラゴンロアー)!」
アカーシャが『クラッシュブロウ』で繰り出す掌底攻撃。
「どんなに硬かろうと、中身はどうやっ!」
衝撃は内部へと浸透して何本もの缶ジュースを破裂させた。雑魔が消えた証か、ガコガコガコンと缶が止めどなくこぼれ落ちた。
衆目を集めながら、ハンター達を乗せたミニバスがその場を後にする。
「nil、これを……」
ライナスが目の前にイヤリングを掲げると、nilは不思議そうに首をかしげる。
「リアルブルー土産……だ。喜んでもらえるだろうか」
ショッピングセンターで別行動したのも、驚かせようと考えてのことだ。
「……ありがとう」
のんびりと冬景色を眺めつつ、舞は戦利品として回収した缶ジュースに手を伸ばす。
「太るからってあまり食べさせてもらえなかったんだよね♪」
舞がお菓子を広げ始めると、葵も購入したケーキを配り始めた。
「9種類あるからそれぞれ選んで。あ、ベルンハルトさんのは、食べやすいようにシュークリームにしたから!」
が、運転手はそれどころではなくなった。
騒動を知った警察がサイレンを鳴らして追いかけてきたのだ。
「さすがに軍歴を盾にしても見逃してくれないだろうな」
フランの責任ではないが、行方不明状態のサルヴァトーレ・ロッソ所属という説明では、信用を得られないだろう。
ベルンハルトが転移装置を作動させ、ミニバスはリアルブルーから消滅する。
出発地点に戻ると、安堵した一行が降車し始めた。
「ほんと楽しかった♪ 妹も来させてあげたかったな」
短い異世界旅行を振り返る舞。
ミネットは、居合わせた皆に向けて大声で告げる。
「楽しいツアーありがとうございました!」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/01 23:02:30 |
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相談卓だよ 天竜寺 舞(ka0377) 人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/01/03 09:42:49 |