紅葉狩り(物理)

マスター:紫雨

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/10/19 12:00
完成日
2018/10/26 11:33

みんなの思い出

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オープニング

●紅葉した山
 山々が鮮やかな新緑から赤や黄色、橙と鮮やかな色へと衣替えをする秋。移り変わった景色を楽しもうと二人組が訪れていた。
 風はなく穏やかな日差し、暑すぎず寒すぎず過ごしやすい気温、絶好の行楽日和。二人は簡単な登山装備と双眼鏡を手にあちらこちら見ていた。
「あのあたりいい感じに色づいてない?」
「えー、向こうの方がもっと鮮やかだよ」
 互いに気に入った景色を見つけては声を掛け合あう楽し気な二人の声が山中に響くだけ、のはずだった。

●暴れ出す木
 葉がこすれ合うかすかな音に混じって足元を揺るがす地響き。近くの木が立ち上がり、叩き潰そうと両腕を振り上げ、二人に襲い掛かってきた。
「え、なんか音が……って、怪物!?」
「はぁっ!? ちょっ、逃げなきゃ!」
 怪物に気づいた二人は慌てて下山しようと走り出し、その後を木々が追いかける。手当たり次第に周囲を殴り、他の木をなぎ倒しながら怪物が追いかけまわす。あちらこちらを走りまわったせいか、追いかけてくる足音が増えていた。
「え、うそっ! なんか増えてるぅ!?」
「口より足動かして! 転んだら、死んじゃうわよ!?」
 ちらりと後ろを確認した一人は追いかけてくる怪物の数を把握できず、ただ驚愕に叫び声をあげた。それを聞いたもう一人は叱咤する。山を駆け下りてる時点で危ないうえ、後ろから来る怪物に殺されかけてるのだ。転んでしまえばそこで一貫の終わり。
「出口が見えたわ!」
「どこまで追いかけてくるのよ!」
 ようやっと見えてきた山の出口から二人はどうにか逃げることができた。そのまま開けたところまで走っていたが、気づくと怪物はいつの間にかいなくなっていた。

●紅葉狩り(物理)
 ハンターオフィス内。カウンターで受付嬢が物憂げな表情を浮かべている。どうやら手にしている依頼書が原因らしい。
「山の中くらい平和であってほしいものなのに。どこも物騒です……はっ、すみません。お手すきならこちらの依頼をお願いできませんか?」
 入ってきたハンターたちに声をかけると居住まいを正した。依頼書をハンターたちに見えるようにカウンターに置く。依頼書の内容は山での雑魔退治のようだ。
「この山で一般人が二名、紅葉の怪物に襲われたそうです。襲われた二名は軽傷はあるものの無事に逃げることが出来たとのことで、大きな被害はありません。ただ、具体的な敵の数がわからないんです」
 受付嬢いわく、被害者たちが逃げているうちに数が増え、少なくとも3体くらいいたらしい。山から離れたところまで逃げるうちに姿を見失った。とのこと。
「また、この周辺ではこの山の紅葉が有名らしいんです。そのため、早く退治してほしいとのことです。具体的な敵の情報が少ないですが、どうかよろしくお願いします」
 受付嬢はハンターたちの顔を一人一人見つめてから、深々と頭を下げた。

リプレイ本文

●紅葉狩りは雑魔退治だった?
 雑魔が現れたという山にハンターたちは到着した。登山道から見上げる山は異様なほど静かだ。
「それにしても紅葉狩りってそういう意味だったんだ……。じゃあ、いちご狩りも、ぶどう狩りも、キノコ狩りも、ようするに雑魔退治なのかな? それ、楽しそうだね! そっちもやってみたい!」
「違うと思う。少なくとも私の知っている紅葉狩りと違うし、雑魔退治とは本来別物だと思う」
「紅葉狩り依頼かと思いきや、紅葉(歪虚)を狩る依頼だったとは……。入った以上は頑張りますけども……」
 夢路 まよい(ka1328)が純粋な疑問と感想を口にするとレイア・アローネ(ka4082)が困惑しながら言葉をこぼす。その後ろではサクラ・エルフリード(ka2598)が想像していたものと違うと落胆するも参加した以上は全力をもって対処しようと気を引き締める。
「そうなの? でも、あるかもしれないよ?」
「その時はその時だ。まずはこの山の歪虚紅葉を退治してしまおう」
「そうですね……」
 雑魔退治としての果物やキノコ狩りがあると信じているまよいに、ツッコミを入れつつレイアが方向修正をかけていく。サクラも力強く頷き、いつでも動けるように準備をする。
「じゃあ、先に私が空から探して、不自然な木を見つけたら連絡するね。伝話かトランシーバー持ってる?」
「頼む。トランシーバーなら所持している」
「私もトランシーバーなら……」
 全員が連絡を取れることを確認し、二手に分かれ探索することになった。空からはまよいが、地上からはレイアとサクラが担当にする。
「2人も気を付けてね!」
 まよいは【マジックフライト】を使用し、杖に飛行能力を付与する。その杖にまたがり、空へと舞い上がった。その姿を見送った2人は登山道へ向き直る。
「私たちも行くとしよう」
「はい……」
 2人も周囲の木を警戒しながら山の中へ入っていった。

●雑魔紅葉探しはかくれんぼ
 山のほとんどを見渡せる高さまで上昇してきたまよいは感覚をとがらせ、些細な異変も違和感も見逃さないよう山を観察する。するとその中に周囲の木より1mほど高い木が5本あること気に気付いた。
「んー? あれかな。他より背が高いのが5本。立ってる場所散らばってるけど、近いところは近いんだ」
 他より高い木は登山道から離れていたり、すぐそばだったりと法則性はない。その木同士の距離もまちまちで、距離が近いものは戦ったら気づかれそうである。それが敵だったら、の話だが。
「2人に連絡しなきゃだわ」
 トランシーバーを取り出し、レイアとサクラに情報を伝える。

 一方その頃、まよいを見送った2人は警戒しながら登山道を進んでいた。登山道やその周辺には何かえぐった跡が見つかるのだが、複数の跡が入り乱れていた。登山道から引き返した跡もあるのだが、どれが同じ跡で何体いるのかというのがよくわからなかった。
「ここまで雑魔が来たのか。少なくとも3体いると言っていたが、それより多い可能性も出てきたな」
「そのようですね……。見つけ次第、確実に倒していかないとですね……」
『こちらまよい。レイア、サクラ聞こえてる? どうぞ』
 残された痕跡を見聞しているとまよいから連絡が来た。レイアがトランシーバーを手にし応答する。
「こちらレイア、何か見つけたのか? どうぞ」
『見つけたよ。他より背が高い木が5本、場所は登山道には沿ってるところとそうじゃないところがあるかな。全体的に山の裾に沿ってる感じ。目立つ木と木の距離はまちまちだよ。登山道を入って右手に少し行ったところに1本目があるよ。どうぞ』
「分かった。そちらに向かおう。それらしいものを見つけたら連絡する。どうぞ」
『うん。気を付けてね』
 まよいが返事をし、レイアとサクラは顔を見合わせる。
「見た目で判断がしづらいのでしたら最悪、私が囮になって攻撃を誘い、動いた所を狙って貰えばいいでしょうか……」
「判断がしづらくともこれなら敵の反応を引き出せるだろう。囮をサクラにだけ任せるわけにはいかない。では、行こう」
「はい……」
 まよいからの情報をもとにサクラが懸念点を口にする。それに対し、レイアは【ソウルトーチ】を発動させる。視覚があろうとなかろうとマテリアルに強く反応するとしたら効果的な手段だからだ。
 2人はいつでも戦闘が行えるよう武器を構え、目的の木へ向かって進んでいく。

「背が高いだけじゃなくて、何か他に変なところあるかな?」
 まよいは2人に伝えた木に他に気になる点が無いか、木に近寄りすぎないよう注意して観察を続けている。空から見たときに気づいた違いだけでなく、他にもわかりやすい違いがあるかもしれないと考えたからだ。
 背の高い木は全体的にバランスよく枝が生えており、赤々とした葉をまんべんなく纏っている。近くにある他の木との違いを探していると視界の隅に動く影が見えた。その時、風がないなか、背の高い木が立ち上がり動き始めた。
「2人が来たんだ。やらせないんだから!」
 まよいは【エクステンドレンジ】を使用し、動きだした木に意識を集中させる。枝を伸ばされても攻撃が届かない位置をから【マジックアロー】を精製。矢じりが木の真ん中を捉えた時、勢いよく矢が飛び出した。空を切る音が響き、木に命中するとその巨体を大きく揺さぶるほどの強い衝撃を叩きこむ。まよいにも気付いた木、いや雑魔紅葉が攻撃に移ることはない。どこかからか黒い塊が現れ、雑魔紅葉に衝突、再びその巨体を強く揺さぶられる。枝の先や葉の末端から塵へと姿を変え、消えていく。その様子を横目にまよいは2人のもとへと降りていく。
「2人とも大丈夫だった?」
「はい……。ありがとうございます……。まずは1体目、でしょうか……」
「あぁ、助かった。マテリアルに反応したらしく近くまで来たら襲ってきたようだ」
 空から降りてきたまよいに返事を返すレイアとサクラ。雑魔紅葉に止めを刺したのはサクラのようだった。敵が消えていくと次第にその場所が良く見えるようになる。見分けるために何か違うところが無いかと3人で観察しているとサクラが違和感を覚えた。
「木の根元というよりは木の下に当たるところでしょうか……。落ち葉が一切落ちてないところがあります……」
「本当だな。他にも雑魔紅葉の周囲には抉れた跡もある、特徴としたらそのようなところか」
 サクラの指摘から改めて雑魔紅葉が居たあたりをよく見ると抉れた跡があり、不自然に落ち葉が無いことがわかる。消えていく最中も葉が枝から落ちていくことは無かった。
「これなら、すぐに判断がつきそうだね。次の紅葉はあっちだよ」
 再度【マジックフライト】を杖に使用したまよいが空へ舞い上がると2人を導くように先陣を切って進んでいく。遅れぬようにその後ろを盾を構えたサクラと両手に武器を構えたレイアが続き次の敵のもとへと歩き出した。

 敵のだいたいの位置はまよいが把握しており、確実に見分けるポイントも全員が把握しているため、次の雑魔紅葉もすぐに見つけることができた。探知範囲に入ったからかレイアの【ソウルトーチ】に誘われるまま立ち上がり、レイアの傍まで移動すると枝を振り上げ【たたきつける】を繰り出す。
「見つけて早々とはな。だが、そう簡単にやられはしない」
 敵の攻撃を見切り、紙一重でレイアは躱しきる。そのまま【攻めの構え】を取り、【ソウルエッジ】にて武器の威力を底上げ。【二刀流】で十字に切り捨てたうえ、【リバースエッジ】で確実に仕留めようと果敢に踏み込んでいく。
「反撃といかせてもらおう。仕留める」
 雑魔紅葉は回避をしようとするもその巨体ゆえに避けきることができなかった。幹を縦に横に切られ、十字の中央に刀を突きたてられ、激しい魔力の本流に内側から崩壊が始まる。拒絶するかのように体を震わせるも虚しく消滅していった。戦闘音に気づいたのか視界の隅で不意に別の木が立ち上がるのが見える。
「もう1体ですか……。まよいさん、援護をお願いします……」
「うん! 任せて!」
 立ち上がった雑魔紅葉はすぐに見えたのがサクラだったらしい。彼女へ向けて枝を振り回し全力の【体当たり】を行う。サクラは冷静に盾を構え、その攻撃の勢いを殺しつつ耐えきった。そのまま、サクラは次の行動へ移る。
 サクラは盾に魔力を集中させ、強力な一撃を放つ【フォースクラッシュ】でカウンター攻撃を行う。攻撃は至近距離で合り、敵に避ける余裕が生まれず、巨体をひるませることができた。その隙にまよいの【マジックアロー】が命中し、その巨体を塵へと変えていく。
「よく考えたら二連続で紅葉対応……。動かない紅葉と動く紅葉……。私は動かない紅葉の方が好みですね……」
「私も動かない紅葉が好きよ。見て楽しむもよし、落ち葉になったらそれを集めて焼き芋してもよしだもの!」
「普通、紅葉は動かないもの。今回が例外だ」
 その時にふと思ったことを口にしたサクラにつられてまよいも素直な感想を口にする。ただ、レイアが突っ込みを入れ苦笑を浮かべていた。実はこの3人、最近紅葉関係の依頼に一緒に参加していたのだ。
「それもそうですね……。あと2体、頑張りましょうか……」
「そうだな。まよい、案内を頼む」
「分かったわ。こっちよ」
 残り2体となった雑魔紅葉を退治するため3人は進んでいく。

 見えてきた場所にいる雑魔紅葉は少々厄介だ。木の周囲に引きずった跡が二重に見え、その場所だけ落ち葉が一切積もっていないのだった。どうやらかなり近い距離に2体存在しているようだ。
「どこにいるか分かっていればこの程度、なんとでもなります……」
「同時に攻撃したら終わるかしら?」
「これで終わりだ」
 サクラが【プルガトリオ】を雑魔紅葉2体へ発動させるとそれぞれの巨体を闇の刃が串刺しにしていく。枝を振り、立ち上がるが串刺しにしている刃が根を地面に縫い付けてしまった。そこに片方へまよいの【マジックアロー】がすでに精製されており、まよいの声と共に放たれる。もう1体へはレイアが間合いを詰め【二刀流】攻撃を繰り出そうと両手を振り上げている。不意の攻撃だったため満足に回避行動をとることができず、2人の攻撃を受けその身を塵へと変えていった。

●平和な紅葉狩り
 最後の雑魔紅葉が完全に消滅してから3人は警戒を解き、武器をしまう。かくして紅葉の名所を騒がせた雑魔紅葉は全て退治されたのだった。3人が落ち着いて周囲を見回すと紅葉が有名と言われるだけあり色鮮やかな紅葉が日差しを浴びてその色を鮮明に主張している。
「ふぅ……これで終わりだな。改めて紅葉狩りを楽しまないか? 弁当も一応用意してきた」
「いいわね! 私も綺麗な紅葉を楽しみたい!」
「はい……」
 その鮮やかな色を見つめてからレイアが提案するとまよいが嬉し気に賛成の声を上げる。サクラも嬉しそうに微笑み、頷いた。3人で平和になった山で紅葉を楽しむことにした。ここよりもさらに綺麗な景色を探し、3人は山を散策していく。
「やはり紅葉狩りはこういう方が好みですね……。……いや、襲われる方が好みな人はそういないですよね……」
「当たり前だ。襲われる紅葉狩りは今回限りだと思いたい」
 鮮やかな紅葉を見上げサクラがぽつりと言葉をこぼす。サクラのつぶやきが聞こえたレイアがもうこれ以上はいいと首を振りながら言葉を返した。襲われる紅葉狩りというのは早々起きるものではないのだから。
 3人は全員で紅葉を楽しみ、気に入った場所でレイアが用意したお弁当に舌鼓を打つだろう。
 彼女たちの活躍によって平和になった山は地元の住民や紅葉を楽しもうと訪れた人々で賑わうことになる。誰かにとっての小さな幸せを守ることができたのだ。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/19 08:56:33
アイコン 相談卓
ロニ・カルディス(ka0551
ドワーフ|20才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/10/19 10:06:26