ゲスト
(ka0000)
街道駆ける一陣の風
マスター:四方鴉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/25 22:00
- 完成日
- 2014/06/26 23:20
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「大将、今日の仕入れは割りと安くいきましたね」
「おうさ、これなら、がっつり儲かるぞ!」
様々な商材を積み込んだ荷馬車の中、隊商であろう男達は気分良さげに言葉を交わす。
仕入れが上手く行ったのだろう、目的地で売却すればどれほどの利益になるのか考えた男達の表情は明るい。
街道を進み、車輪から伝わる不愉快な振動もこれから先の事を思えば苦にならず。
しかし、そんな隊商の未来を引き裂く存在はすぐ側まで来ていたのだ……
「ネタマシイ、ネタマシイ……バシャヲミルノハ、ネタマシイ……」
「アイツモ、ナカマニ、イッショニ」
「ニガサナイ、ニガサナイ。バシャダケハニガサナイ……」
吹き荒ぶ風の中、風音に混じり聞こえる人の声。
最初は気のせい、しかし何度も聞こえてくるならば、それは人ならざる存在の発した怨嗟の声に他ならない。
「た、大将……なんかヤバイんじゃないですか?」
「びびび、びびってんじゃねぇよ!? いいか、急いでここを抜けるぞ!」
「は、はいっ……って、なんだあれは!?」
口々に言葉を交わし、馬車を急がせる一行。
だが、逃走を許さぬとばかりに吹き付ける風、引き裂かれる布、嘶く馬と道塞ぐ様に姿を現す雑魔の集団。
それは異形の集団、地面より生じたつむじ風から人の手と頭を伸ばした形の雑魔であった。
そこからは一方的な暴力。
幾度も吹き付ける風は荷馬車を引き倒し、切り裂き馬は絶命。
守ろうと立ち向かった男もその身をズタズタに引き裂かれ地面に倒れ伏し、最初から逃げる事だけを考えた男だけが無事という有様であったのだ。
馬車を潰した事で満足したのか雑魔は片隅で腰を抜かした男には一瞥すらせず、現れた時と同じく風を纏い姿を消していた……
●
「ある街道で【馬車ばかり】が雑魔に狙われる事件が多発しています。馬車に対して非常に強い執着心のある雑魔の仕業でしょう。そんな街道を移動する、隊商の荷馬車護衛というお仕事ですよ」
集ったハンターにスタッフが説明を行い、取りまとめられた資料を渡す。
ある街道で馬車が通る時ばかり雑魔が出現、既に犠牲者や街道を回避することで生じる時間的損失などが発生。
だが、今回依頼してきた隊商は急ぎの仕事であり、護衛をつけての強行突破を敢行すると言うのだ。
「本来なら迂回していく予定でしょうが、今回の依頼主は借金をしてまで手を広げたばかり。ここで遅れてしまえば返済が滞り、借金が膨れ上がってしまいますのでそれだけは避けたいそうです。
最低限の目的は、依頼主の荷馬車2台を守りきる事。雑魔の撃破は問いません。人的被害が無くても馬車の損壊が激しければ失敗ですね」
執拗に馬車の破壊を試みる雑魔。
馬車を守ろうと動いたり自身に立ち向かい妨害しようとした相手も纏めて倒す辺り、単純に周りを固める等の手段では恐らく守りきれないだろう。
何らかの工夫をもってして護衛に当たるか、はたまた守りは棄てて雑魔を倒す事だけに集中、やられるまえにやってしまうか。
選択肢はハンターに一任、如何なる手段を持って当たるか。
期待と不安が入り混じった表情で、その隊商達はハンター達を見つめていた。
「大将、今日の仕入れは割りと安くいきましたね」
「おうさ、これなら、がっつり儲かるぞ!」
様々な商材を積み込んだ荷馬車の中、隊商であろう男達は気分良さげに言葉を交わす。
仕入れが上手く行ったのだろう、目的地で売却すればどれほどの利益になるのか考えた男達の表情は明るい。
街道を進み、車輪から伝わる不愉快な振動もこれから先の事を思えば苦にならず。
しかし、そんな隊商の未来を引き裂く存在はすぐ側まで来ていたのだ……
「ネタマシイ、ネタマシイ……バシャヲミルノハ、ネタマシイ……」
「アイツモ、ナカマニ、イッショニ」
「ニガサナイ、ニガサナイ。バシャダケハニガサナイ……」
吹き荒ぶ風の中、風音に混じり聞こえる人の声。
最初は気のせい、しかし何度も聞こえてくるならば、それは人ならざる存在の発した怨嗟の声に他ならない。
「た、大将……なんかヤバイんじゃないですか?」
「びびび、びびってんじゃねぇよ!? いいか、急いでここを抜けるぞ!」
「は、はいっ……って、なんだあれは!?」
口々に言葉を交わし、馬車を急がせる一行。
だが、逃走を許さぬとばかりに吹き付ける風、引き裂かれる布、嘶く馬と道塞ぐ様に姿を現す雑魔の集団。
それは異形の集団、地面より生じたつむじ風から人の手と頭を伸ばした形の雑魔であった。
そこからは一方的な暴力。
幾度も吹き付ける風は荷馬車を引き倒し、切り裂き馬は絶命。
守ろうと立ち向かった男もその身をズタズタに引き裂かれ地面に倒れ伏し、最初から逃げる事だけを考えた男だけが無事という有様であったのだ。
馬車を潰した事で満足したのか雑魔は片隅で腰を抜かした男には一瞥すらせず、現れた時と同じく風を纏い姿を消していた……
●
「ある街道で【馬車ばかり】が雑魔に狙われる事件が多発しています。馬車に対して非常に強い執着心のある雑魔の仕業でしょう。そんな街道を移動する、隊商の荷馬車護衛というお仕事ですよ」
集ったハンターにスタッフが説明を行い、取りまとめられた資料を渡す。
ある街道で馬車が通る時ばかり雑魔が出現、既に犠牲者や街道を回避することで生じる時間的損失などが発生。
だが、今回依頼してきた隊商は急ぎの仕事であり、護衛をつけての強行突破を敢行すると言うのだ。
「本来なら迂回していく予定でしょうが、今回の依頼主は借金をしてまで手を広げたばかり。ここで遅れてしまえば返済が滞り、借金が膨れ上がってしまいますのでそれだけは避けたいそうです。
最低限の目的は、依頼主の荷馬車2台を守りきる事。雑魔の撃破は問いません。人的被害が無くても馬車の損壊が激しければ失敗ですね」
執拗に馬車の破壊を試みる雑魔。
馬車を守ろうと動いたり自身に立ち向かい妨害しようとした相手も纏めて倒す辺り、単純に周りを固める等の手段では恐らく守りきれないだろう。
何らかの工夫をもってして護衛に当たるか、はたまた守りは棄てて雑魔を倒す事だけに集中、やられるまえにやってしまうか。
選択肢はハンターに一任、如何なる手段を持って当たるか。
期待と不安が入り混じった表情で、その隊商達はハンター達を見つめていた。
リプレイ本文
●街道走るは二両の馬車
少しずつ傾く陽光の中、二両の馬車が縦列にて街道を突き進む。
普通の馬車と一点違う事を上げるならば、後ろに付いた馬車は一台、荷車をロープで繋ぎ牽引している点だろう。
「やれやれ、ちょっと足元見られたね、まったく。ま、僕は戦闘と護衛を両立させるべく動くだけだけど」
後方、荷車を引く馬車の中にて超級まりお(ka0824)が呟く。
囮の馬車を用意、本隊と離れて運用する作戦もあったのだが馬車は高額、依頼主もこれ以上の準備できないという状況下で彼女は荷車を確保。
車軸がギリギリ無事だが他が破損、破壊して燃料に回す予定の荷車を交渉にて確保は出来たが、少々高い値段にての譲渡であったのだ。
まあ、今回は急ぎであった点と相手が設けになりそうと判断、駄賃程度の金子を求められたのだ、仕方のない出費。
無事依頼が成功すれば依頼主がある程度は補填してくれるとの事で、そこまで財布は傷まないだろう。
「鉄板での補強、馬以外の動物確保、共に難しかったか」
「急ぎでしたからね。それに、鉄板で補強とか出来ても馬がへたったり、車軸が重さで壊れかねない、って商人さんもいってましたし」
前方の馬車、御者の側でスーズリー(ka1687)とルア・パーシアーナ(ka0355)が言葉を交わし周囲を警戒。
囮の馬車用意や補強はできなかったが、それで工夫が出来ないわけでもない。
雑魔が出現しそうな、数少ない遮蔽物がないかスーズリーが遠くを見遣ればルアは馬の様子に異変がないかを確かめていた。
「折角回ってきた依頼だ、一つ一つ確実にこなしていかねばな」
「うむ、ヴォイド共にくれてやる慈悲はない。叩き潰してくれよう!」
そんな中、牽引される荷車には好対照な二名。
仕事はきっちりこなす、と淡々とした態度で猟銃を構え照準線を確認するロア・シュヴァイツ(ka0423)と血気盛んに雑魔を殴り倒さんと闘志を燃やす由谷 久虎(ka1926)である。
いつでも切り離せる囮の荷車。
一応、それっぽく見える様にと空の木箱が幾つか積まれた中、両者は現れるであろう雑魔に備え警戒を怠らない。
「何で馬車をそんなに恨んでいるのか解らないが、人が理不尽な出来事で不幸になるのは見過ごせないな」
「ええ、これ以上の被害を増やさない為にも! ……わたし達がやらねば……ですね」
戦闘準備を整えていたロアと久虎を見ながら如月 鉄兵(ka1142)がふと言葉を漏らせば隣に座り猟銃を掴んでいたメリエ・フリョーシカ(ka1991)が彼に応じる。
既にコッキングレバーを引かれた彼女の猟銃は、引き金を引けば即座に鉛玉を吐き出し敵対者を討つことだろう。
そして、決意を新たにした仲間をみつつ御者の隣で青山 孝史(ka0280)も周囲を警戒。
「カマイタチは向こうではただの現象の呼び名でしたが、まさかこちらにはいるとは……」
などと感慨にふけりつつ言葉を紡ぐ中、その言葉は揺れ動く馬車、車輪が奏でる音色に消されていくのであった。
●馬車を狙うモノ、守る者
「馬の様子が……? 気をつけて!」
「周囲の遮蔽物は、あの岩か。隠れているならあそこだ」
「反対側にはいませんね。となればやはり……」
吹きつける風の中、声の様な音が混ざり合った気がしたルアが馬を確認すれば少し落ち着かない様子。
異変があると感じた彼女の声に呼応、スーズリーが周辺で襲撃されそうな地点を見定めれば、別方向を孝史が警戒。
残る面々も各々警戒と得物を構えての臨戦態勢を整えれば、やはりスーズリーの予測どおり地面から隆起していた岩陰から雑魔が4体姿を現していた。
「やはりきたか。しかしまだ遠い、引きつけねば」
「皆さんは逆方向に。くれぐれも近づかない様に逃げてくださいね」
敵から距離を離すべく、悪路だが反対側に進むよう指示を出しつつスーズリー、ルアが先頭を進む馬車から飛び出せば、後続の馬車、荷車に陣取っていた面々も行動を。
まりおだけが馬車に残り、雑魔とハンターの交戦が始まっていた。
「狙撃の腕が鈍っていないと良いのだがね」
「これ以上の狼藉は、絶対に赦されない! ここで滅びろ!」
猟銃を構えたロアとメリエ、長射程を持つ二人の狙撃が雑魔・旋風狙い放たれる。
身体を取り巻く風に吸い込まれた銃弾、どれほどのダメージを相手に与えたか風纏う相手の姿からは把握出来ないが少なくとも中央付近には命中。
その攻撃を受け、一瞬怯んだように見えた以上ダメージはあるはずだ。
「まだ遠いな、近づくよりも寄ってきた所を叩かせてもらう」
馬車を追う形で移動しつつ、精霊へ祈りを捧げ力を高めていく鉄平。
ふと横を見れば、こちらも同じ霊闘士の久虎が自身の身体へマテリアルを充填、相手を叩きのめすべく力を高める姿が見て取れた。
旋風の攻撃は届かず、此方も近づいての攻撃は不可能な間合い。
近接主体の面々が力を高め、射撃武器を持つ者が攻撃の準備をする様子を見せるが意に介さず突撃する雑魔旋風。
再度の発砲音が響けば、近接主体の面々も攻撃の為突撃していた。
「ヌンッ!」
真っ先に接敵、トンファーを回転させ風切り音と共に強烈な打撃を見舞う久虎。
旋風を纏った相手、頭部を狙い放った打撃ではあるが腕で防御されるも固体を殴った確かな感触。
「逆恨みで襲撃とか勘弁してくれよ、ここで倒して後腐れなく終わりにするぜ」
続けて攻撃に加わった鉄平。
手近な雑魔に狙いを定め、空切るウィップがしたたかに相手を打ち据えていく。
「馬車しか目に入っていない、という事か?」
「恐らくは。ですが……行け、機導砲!」
更に攻撃を重ねるのはスーズリー、孝史の2人。
猛攻を前にしてもハンターより馬車に注意が向いている様子の雑魔を見、正直な感想を述べつつスーズリーはリボルバーの引き金を引く。
ググッと持ち上がるハンマー、そして一点を越えると同時に一気に振り下ろされ、同時に響く発砲音。
放たれた銃弾を受け、命中箇所を気にした雑魔であったがそこへ間髪居れず一筋の光が飛来。
それは孝史の放った機導砲、その砲撃。
貫かれた場所に数秒、旋風無き空間がぽっかりと穴を空け、その体躯に隠した材木が隙間より顔を見せていた。
この時点で近づいた者は2人、射撃にて攻撃を仕掛けたのは4人。
馬車か邪魔者か、どちらを優先的に狙うか見定める状況は完成していた中、雑魔が選んだのは馬車の破壊。
「ヌオオッ、こやつめ!」
久虎と相対していた雑魔が体内より木材を取り出し、振り下ろした一撃を受け止めた久虎。
その間に脇をすり抜けるよう移動、馬車を狙い動き出す中他の雑魔も馬車目掛け移動をするが、立ち塞がるルア。
「行かせませんよ、私が優先するのは足止め、その一点」
先頭を進む雑魔の前へ回り込む様に駆け込み、真一文字に放たれた斬撃。
虚空に煌く金属の輝きと同時に、雑魔の旋風には大きな切れ目が生じていたのであった。
●追い縋るモノ、討ち果たす者
ハンターの猛攻、その中でも怯む事無く馬車目掛け突き進む雑魔・旋風。
近接戦闘で足止めしようと立ち回る面々の合間を抜け、一気に荷馬車へ近づき両手に風を纏った瞬間、その転機は訪れる。
なんと、全力で逃げていた荷馬車の後方、繋がれていた荷車が切り離され雑魔が追いついてしまったのだ。
「エモノ、バシャ、コワス」
「コワシタ……ツギ、コワセ」
「ニゲルナ、コワレロ」
角材で、そしてカマイタチで一瞬で破壊された荷車。
荷車の残骸を突風にて吹き飛ばし、荒地を駆ける馬車を睨む雑魔だがその距離は攻撃に集中した為引き離されていた。
どうしてこうなったのか?
何のことは無い、ハンター達への攻撃よりも馬車を追うことを優先した雑魔が近づいた時にまりおが荷車を繋いだ縄を切断。
取り残された荷車を馬車の一部と認識していた雑魔がそちら側に殺到、瞬時に破壊するも馬車への接近という貴重な移動機会を奪っていたのだ。
「トカゲの尻尾切り、って感じかな。上手くいったみたいだけど」
遠ざかる雑魔を見つめまりおが呟く。
荷馬車を無傷で通過させることが出来れば彼女にとっての目的は達成、残る行動は万一の戦闘と護衛を両立させる立ち回り。
まりおが馬車に揺られ待機する中、貴重な機会を失った雑魔に七人のハンターが攻撃を継続する。
「どうだ! これでもか! 思い知ったか! どうだどうだどうだァッ!」
鉄平のウィップでよろけた雑魔に踏鞴を踏んで接近、トンファーの連打を容赦なく叩き込む久虎。
身体に纏う旋風が消えうせ、骸骨の様な人の上半身だけが残ったその雑魔にひたすら攻撃を続けていた。
「まず一体か。だが、油断しないように行かねばな」
次なる雑魔を狙うはロア。
残弾尽きた猟銃を下ろしオートマチックピストルを構え、スライドを引いて引き金を引く。
放たれた銃弾は相変わらず旋風の中へ消え去りどの程度のダメージを与えたか把握し辛いが、纏う風の勢いが落ちてきたのを残る面々は見逃さず。
「その憎悪。その殺意! 貴様らは脅威だ。故に! ここで仕留める!」
腰のショートソードを鞘から引き抜き、一気に距離を詰めるメリエ。
盾を翳し、振り上げた剣を思い切り振り下ろせばこれまでの継続ダメージからか、雑魔を纏う旋風が消滅。
縦に走る斬撃の後を残した雑魔の死体がその場にみすぼらしい姿を晒し、一拍の後灰燼へと帰していた。
「どうした化け物っ! 私一人壊せないで、ここで何を壊す!」
馬車を追う雑魔の気を引くべく、雄叫びを上げるメリエ。
彼女を突き動かすのは帝国の誇り、脅威を排する為ならばこの身を盾とする事も厭わぬという強い意志に他ならない。
既に雑魔の数は半数、あとはこのまま確実に倒すのみ。
だが、それでもなお、馬車だけは潰したいのか雑魔は最後の抵抗を試みていた。
「クッ、無理矢理突っ走る気か!?」
巻き起こされた強烈な風。
咄嗟にマントを掴み、バランスを取って転倒を避けたルアが顔を上げれば進路上に居たメリエ、久虎が体勢を崩した隙に一気に駆け抜けようとする雑魔。
逃がさないとばかりにルアが駆け出そうとすれば、その行動を援護するかの様に銃弾を放っていたスーズリー。
身体を纏う風が薄れた所へ容赦なくルアが斬撃を放てば、叫び声を上げつつも進軍を止めない雑魔。
「その執念だけは認めましょう……ですがコレで、終わりです!」
何としても馬車を潰そうと突き進む雑魔に最後通告、その痕跡を消し去るべく光線を放っていた孝史。
かすかに纏った旋風を吹き飛ばし、頭部を完全に吹き飛ばしたその一撃で3体目の雑魔はこの世から姿を消し去っていた。
これで残るはあと1体、先の雑魔が何とか道を切り開こうと奮起し、撃破されるまでに生じた時間で馬車に追い縋る雑魔旋風。
攻撃もかなぐり捨て、悪路を進むが故に速度の落ちる馬車へ無理矢理接近するが猛追もそこまで。
我武者羅に突き進む雑魔を冷めた瞳でまりおが見つめ、冷静に状況を把握。
既に雑魔は満身創痍、後方の仲間が追いつき接近戦を挑むか、射撃で撃ち抜く形でも事足りる為放置でも問題ない。
だが、万一攻撃が外れ倒れなければ馬車に接近、被害が出る可能性があるとすれば……自分が一撃加え足を止めればその様な不安も消失する。
頭の中で、電子的金属音がカイーン、と鳴り響いた瞬間まりおは飛び出し、両腕に風を纏った雑魔に接近。
「テテッテテテッテ、テテッテテ♪」
軽いノリながら滑らかな動きで肉薄、手にしたカイトシールドで殴り飛ばせばそれが致命の一撃か。
断末魔の叫びを上げることすら叶わず、纏った風と同時にその身体は消滅。
後には何も残らず、悪路から元の道へ戻ろうと進む馬車の車輪音だけが響いていた。
●戦の後に
「これでこの街道も安心ですね」
「ああ、その通りだな。雑魔に脅える事も無いだろう」
周辺の安全を確認、メリエとスーズリーが言葉を交わす。
全員の傷も、相手が馬車への接近と破壊を優先していた為か殆ど無く、マテリアルヒーリングで癒しきれる軽微なものであった。
「お仕事完了ですね。これで平和になるでしょう。さ、帰ってお酒です」
「酒か。それもいいだろうが、私は紅茶か。どちらにしても、仕事終わりの一杯が美味いのは同じだな……」
眼鏡のブリッジを中指で持ち上げつつ、仕事上がりの一杯を楽しみにしていた孝史に同じく、仕事上がりの紅茶を嗜むロアが返答。
飲む物が違えど、心地良く楽しめるという点では共通するものがあるのだろう。
「馬車も無事、誰も怪我人なしですか」
「うむ、討伐も出来たのじゃ、言う事無いのう」
雑魔の完全撃破、馬車の無事、負傷者無しという結果を確認しあうのは鉄平と久虎。
達成すべき事項を全て達成したのだ、両者の表情は明るいものである。
そんな中、周辺に散らばっていた加工済みの木材を拾い集め、手を合わせていたルア。
以前に犠牲になった馬車の物なのだろう、彼女は遺品として少し複雑そうな顔をしつつ回収し、ハンターを待っていた馬車に戻り言葉をかける。
「馬車に被害はありませんね? でも、商いが軌道に乗ったら次は安全な道にしましょうね」
にこりと微笑み釘を刺すルア。
無茶なルートを選び、手間を取らせてしまった以上少しバツの悪そうな顔で頭をかいて誤魔化そうとする商人。
その後では、今回囮に使った荷車の経費がどの程度補填してくれるのか、商人と交渉するまりおの姿がしっかりと映っていたのだった……
少しずつ傾く陽光の中、二両の馬車が縦列にて街道を突き進む。
普通の馬車と一点違う事を上げるならば、後ろに付いた馬車は一台、荷車をロープで繋ぎ牽引している点だろう。
「やれやれ、ちょっと足元見られたね、まったく。ま、僕は戦闘と護衛を両立させるべく動くだけだけど」
後方、荷車を引く馬車の中にて超級まりお(ka0824)が呟く。
囮の馬車を用意、本隊と離れて運用する作戦もあったのだが馬車は高額、依頼主もこれ以上の準備できないという状況下で彼女は荷車を確保。
車軸がギリギリ無事だが他が破損、破壊して燃料に回す予定の荷車を交渉にて確保は出来たが、少々高い値段にての譲渡であったのだ。
まあ、今回は急ぎであった点と相手が設けになりそうと判断、駄賃程度の金子を求められたのだ、仕方のない出費。
無事依頼が成功すれば依頼主がある程度は補填してくれるとの事で、そこまで財布は傷まないだろう。
「鉄板での補強、馬以外の動物確保、共に難しかったか」
「急ぎでしたからね。それに、鉄板で補強とか出来ても馬がへたったり、車軸が重さで壊れかねない、って商人さんもいってましたし」
前方の馬車、御者の側でスーズリー(ka1687)とルア・パーシアーナ(ka0355)が言葉を交わし周囲を警戒。
囮の馬車用意や補強はできなかったが、それで工夫が出来ないわけでもない。
雑魔が出現しそうな、数少ない遮蔽物がないかスーズリーが遠くを見遣ればルアは馬の様子に異変がないかを確かめていた。
「折角回ってきた依頼だ、一つ一つ確実にこなしていかねばな」
「うむ、ヴォイド共にくれてやる慈悲はない。叩き潰してくれよう!」
そんな中、牽引される荷車には好対照な二名。
仕事はきっちりこなす、と淡々とした態度で猟銃を構え照準線を確認するロア・シュヴァイツ(ka0423)と血気盛んに雑魔を殴り倒さんと闘志を燃やす由谷 久虎(ka1926)である。
いつでも切り離せる囮の荷車。
一応、それっぽく見える様にと空の木箱が幾つか積まれた中、両者は現れるであろう雑魔に備え警戒を怠らない。
「何で馬車をそんなに恨んでいるのか解らないが、人が理不尽な出来事で不幸になるのは見過ごせないな」
「ええ、これ以上の被害を増やさない為にも! ……わたし達がやらねば……ですね」
戦闘準備を整えていたロアと久虎を見ながら如月 鉄兵(ka1142)がふと言葉を漏らせば隣に座り猟銃を掴んでいたメリエ・フリョーシカ(ka1991)が彼に応じる。
既にコッキングレバーを引かれた彼女の猟銃は、引き金を引けば即座に鉛玉を吐き出し敵対者を討つことだろう。
そして、決意を新たにした仲間をみつつ御者の隣で青山 孝史(ka0280)も周囲を警戒。
「カマイタチは向こうではただの現象の呼び名でしたが、まさかこちらにはいるとは……」
などと感慨にふけりつつ言葉を紡ぐ中、その言葉は揺れ動く馬車、車輪が奏でる音色に消されていくのであった。
●馬車を狙うモノ、守る者
「馬の様子が……? 気をつけて!」
「周囲の遮蔽物は、あの岩か。隠れているならあそこだ」
「反対側にはいませんね。となればやはり……」
吹きつける風の中、声の様な音が混ざり合った気がしたルアが馬を確認すれば少し落ち着かない様子。
異変があると感じた彼女の声に呼応、スーズリーが周辺で襲撃されそうな地点を見定めれば、別方向を孝史が警戒。
残る面々も各々警戒と得物を構えての臨戦態勢を整えれば、やはりスーズリーの予測どおり地面から隆起していた岩陰から雑魔が4体姿を現していた。
「やはりきたか。しかしまだ遠い、引きつけねば」
「皆さんは逆方向に。くれぐれも近づかない様に逃げてくださいね」
敵から距離を離すべく、悪路だが反対側に進むよう指示を出しつつスーズリー、ルアが先頭を進む馬車から飛び出せば、後続の馬車、荷車に陣取っていた面々も行動を。
まりおだけが馬車に残り、雑魔とハンターの交戦が始まっていた。
「狙撃の腕が鈍っていないと良いのだがね」
「これ以上の狼藉は、絶対に赦されない! ここで滅びろ!」
猟銃を構えたロアとメリエ、長射程を持つ二人の狙撃が雑魔・旋風狙い放たれる。
身体を取り巻く風に吸い込まれた銃弾、どれほどのダメージを相手に与えたか風纏う相手の姿からは把握出来ないが少なくとも中央付近には命中。
その攻撃を受け、一瞬怯んだように見えた以上ダメージはあるはずだ。
「まだ遠いな、近づくよりも寄ってきた所を叩かせてもらう」
馬車を追う形で移動しつつ、精霊へ祈りを捧げ力を高めていく鉄平。
ふと横を見れば、こちらも同じ霊闘士の久虎が自身の身体へマテリアルを充填、相手を叩きのめすべく力を高める姿が見て取れた。
旋風の攻撃は届かず、此方も近づいての攻撃は不可能な間合い。
近接主体の面々が力を高め、射撃武器を持つ者が攻撃の準備をする様子を見せるが意に介さず突撃する雑魔旋風。
再度の発砲音が響けば、近接主体の面々も攻撃の為突撃していた。
「ヌンッ!」
真っ先に接敵、トンファーを回転させ風切り音と共に強烈な打撃を見舞う久虎。
旋風を纏った相手、頭部を狙い放った打撃ではあるが腕で防御されるも固体を殴った確かな感触。
「逆恨みで襲撃とか勘弁してくれよ、ここで倒して後腐れなく終わりにするぜ」
続けて攻撃に加わった鉄平。
手近な雑魔に狙いを定め、空切るウィップがしたたかに相手を打ち据えていく。
「馬車しか目に入っていない、という事か?」
「恐らくは。ですが……行け、機導砲!」
更に攻撃を重ねるのはスーズリー、孝史の2人。
猛攻を前にしてもハンターより馬車に注意が向いている様子の雑魔を見、正直な感想を述べつつスーズリーはリボルバーの引き金を引く。
ググッと持ち上がるハンマー、そして一点を越えると同時に一気に振り下ろされ、同時に響く発砲音。
放たれた銃弾を受け、命中箇所を気にした雑魔であったがそこへ間髪居れず一筋の光が飛来。
それは孝史の放った機導砲、その砲撃。
貫かれた場所に数秒、旋風無き空間がぽっかりと穴を空け、その体躯に隠した材木が隙間より顔を見せていた。
この時点で近づいた者は2人、射撃にて攻撃を仕掛けたのは4人。
馬車か邪魔者か、どちらを優先的に狙うか見定める状況は完成していた中、雑魔が選んだのは馬車の破壊。
「ヌオオッ、こやつめ!」
久虎と相対していた雑魔が体内より木材を取り出し、振り下ろした一撃を受け止めた久虎。
その間に脇をすり抜けるよう移動、馬車を狙い動き出す中他の雑魔も馬車目掛け移動をするが、立ち塞がるルア。
「行かせませんよ、私が優先するのは足止め、その一点」
先頭を進む雑魔の前へ回り込む様に駆け込み、真一文字に放たれた斬撃。
虚空に煌く金属の輝きと同時に、雑魔の旋風には大きな切れ目が生じていたのであった。
●追い縋るモノ、討ち果たす者
ハンターの猛攻、その中でも怯む事無く馬車目掛け突き進む雑魔・旋風。
近接戦闘で足止めしようと立ち回る面々の合間を抜け、一気に荷馬車へ近づき両手に風を纏った瞬間、その転機は訪れる。
なんと、全力で逃げていた荷馬車の後方、繋がれていた荷車が切り離され雑魔が追いついてしまったのだ。
「エモノ、バシャ、コワス」
「コワシタ……ツギ、コワセ」
「ニゲルナ、コワレロ」
角材で、そしてカマイタチで一瞬で破壊された荷車。
荷車の残骸を突風にて吹き飛ばし、荒地を駆ける馬車を睨む雑魔だがその距離は攻撃に集中した為引き離されていた。
どうしてこうなったのか?
何のことは無い、ハンター達への攻撃よりも馬車を追うことを優先した雑魔が近づいた時にまりおが荷車を繋いだ縄を切断。
取り残された荷車を馬車の一部と認識していた雑魔がそちら側に殺到、瞬時に破壊するも馬車への接近という貴重な移動機会を奪っていたのだ。
「トカゲの尻尾切り、って感じかな。上手くいったみたいだけど」
遠ざかる雑魔を見つめまりおが呟く。
荷馬車を無傷で通過させることが出来れば彼女にとっての目的は達成、残る行動は万一の戦闘と護衛を両立させる立ち回り。
まりおが馬車に揺られ待機する中、貴重な機会を失った雑魔に七人のハンターが攻撃を継続する。
「どうだ! これでもか! 思い知ったか! どうだどうだどうだァッ!」
鉄平のウィップでよろけた雑魔に踏鞴を踏んで接近、トンファーの連打を容赦なく叩き込む久虎。
身体に纏う旋風が消えうせ、骸骨の様な人の上半身だけが残ったその雑魔にひたすら攻撃を続けていた。
「まず一体か。だが、油断しないように行かねばな」
次なる雑魔を狙うはロア。
残弾尽きた猟銃を下ろしオートマチックピストルを構え、スライドを引いて引き金を引く。
放たれた銃弾は相変わらず旋風の中へ消え去りどの程度のダメージを与えたか把握し辛いが、纏う風の勢いが落ちてきたのを残る面々は見逃さず。
「その憎悪。その殺意! 貴様らは脅威だ。故に! ここで仕留める!」
腰のショートソードを鞘から引き抜き、一気に距離を詰めるメリエ。
盾を翳し、振り上げた剣を思い切り振り下ろせばこれまでの継続ダメージからか、雑魔を纏う旋風が消滅。
縦に走る斬撃の後を残した雑魔の死体がその場にみすぼらしい姿を晒し、一拍の後灰燼へと帰していた。
「どうした化け物っ! 私一人壊せないで、ここで何を壊す!」
馬車を追う雑魔の気を引くべく、雄叫びを上げるメリエ。
彼女を突き動かすのは帝国の誇り、脅威を排する為ならばこの身を盾とする事も厭わぬという強い意志に他ならない。
既に雑魔の数は半数、あとはこのまま確実に倒すのみ。
だが、それでもなお、馬車だけは潰したいのか雑魔は最後の抵抗を試みていた。
「クッ、無理矢理突っ走る気か!?」
巻き起こされた強烈な風。
咄嗟にマントを掴み、バランスを取って転倒を避けたルアが顔を上げれば進路上に居たメリエ、久虎が体勢を崩した隙に一気に駆け抜けようとする雑魔。
逃がさないとばかりにルアが駆け出そうとすれば、その行動を援護するかの様に銃弾を放っていたスーズリー。
身体を纏う風が薄れた所へ容赦なくルアが斬撃を放てば、叫び声を上げつつも進軍を止めない雑魔。
「その執念だけは認めましょう……ですがコレで、終わりです!」
何としても馬車を潰そうと突き進む雑魔に最後通告、その痕跡を消し去るべく光線を放っていた孝史。
かすかに纏った旋風を吹き飛ばし、頭部を完全に吹き飛ばしたその一撃で3体目の雑魔はこの世から姿を消し去っていた。
これで残るはあと1体、先の雑魔が何とか道を切り開こうと奮起し、撃破されるまでに生じた時間で馬車に追い縋る雑魔旋風。
攻撃もかなぐり捨て、悪路を進むが故に速度の落ちる馬車へ無理矢理接近するが猛追もそこまで。
我武者羅に突き進む雑魔を冷めた瞳でまりおが見つめ、冷静に状況を把握。
既に雑魔は満身創痍、後方の仲間が追いつき接近戦を挑むか、射撃で撃ち抜く形でも事足りる為放置でも問題ない。
だが、万一攻撃が外れ倒れなければ馬車に接近、被害が出る可能性があるとすれば……自分が一撃加え足を止めればその様な不安も消失する。
頭の中で、電子的金属音がカイーン、と鳴り響いた瞬間まりおは飛び出し、両腕に風を纏った雑魔に接近。
「テテッテテテッテ、テテッテテ♪」
軽いノリながら滑らかな動きで肉薄、手にしたカイトシールドで殴り飛ばせばそれが致命の一撃か。
断末魔の叫びを上げることすら叶わず、纏った風と同時にその身体は消滅。
後には何も残らず、悪路から元の道へ戻ろうと進む馬車の車輪音だけが響いていた。
●戦の後に
「これでこの街道も安心ですね」
「ああ、その通りだな。雑魔に脅える事も無いだろう」
周辺の安全を確認、メリエとスーズリーが言葉を交わす。
全員の傷も、相手が馬車への接近と破壊を優先していた為か殆ど無く、マテリアルヒーリングで癒しきれる軽微なものであった。
「お仕事完了ですね。これで平和になるでしょう。さ、帰ってお酒です」
「酒か。それもいいだろうが、私は紅茶か。どちらにしても、仕事終わりの一杯が美味いのは同じだな……」
眼鏡のブリッジを中指で持ち上げつつ、仕事上がりの一杯を楽しみにしていた孝史に同じく、仕事上がりの紅茶を嗜むロアが返答。
飲む物が違えど、心地良く楽しめるという点では共通するものがあるのだろう。
「馬車も無事、誰も怪我人なしですか」
「うむ、討伐も出来たのじゃ、言う事無いのう」
雑魔の完全撃破、馬車の無事、負傷者無しという結果を確認しあうのは鉄平と久虎。
達成すべき事項を全て達成したのだ、両者の表情は明るいものである。
そんな中、周辺に散らばっていた加工済みの木材を拾い集め、手を合わせていたルア。
以前に犠牲になった馬車の物なのだろう、彼女は遺品として少し複雑そうな顔をしつつ回収し、ハンターを待っていた馬車に戻り言葉をかける。
「馬車に被害はありませんね? でも、商いが軌道に乗ったら次は安全な道にしましょうね」
にこりと微笑み釘を刺すルア。
無茶なルートを選び、手間を取らせてしまった以上少しバツの悪そうな顔で頭をかいて誤魔化そうとする商人。
その後では、今回囮に使った荷車の経費がどの程度補填してくれるのか、商人と交渉するまりおの姿がしっかりと映っていたのだった……
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 9人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/20 17:33:16 |
|
![]() |
相談をしましょう。 ルア・パーシアーナ(ka0355) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/06/25 17:36:16 |