• 空蒼

【空蒼】レフト・ワァーシン

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/10/25 09:00
完成日
2018/10/31 01:46

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●月面行き打ち上げシャトル
 アメリカ合衆国。シャトル打ち上げ地。
「よーし、野球は好きじゃねぇが今だけピッチャーやってやらぁ」
 大学生くらいの少年が、避難した誰かの落とし物であろう、未開封のツナ缶を拾い上げた。にやにやしている。
「エド……当てられるのかい?」
 と、尋ねたのは線の細い気弱そうな少年。
「何だよハンク。弱気だな。的がデカけりゃ当たるだろう、よっ!」
 エドと呼ばれた少年は、そう言ってピッチングフォームを真似て缶を投げつけた。その先にいるのは、クラゲと大きな眼球を持った虫が融合したような姿のVOIDである。ツナ缶は命中した。VOIDは中空で揺らぐ。
 このエドとハンクは、数週間前にイクシード・アプリをインストールしている。故に、一介の大学生で文化系のエドが投げたツナ缶も、それなりの速度と威力を持っているのだ。人間の頭に当たれば即死は間違いない。
「よっし。メジャーは無理でも大学の野球部に頼まれたら、助っ人くらいは行ってやる」
「大学ももうそれどころじゃないけどね」
 ハンクは力なく言った。
 この二人が遠くで背中にしているのは、月面基地行きのシャトルだ。二人もあれに乗りたいと思っている。現在、最終点検中で、避難民たちは待機所に詰め込まれていた。
 しかし、そこにこのVOIDの登場である。
 良くない。非常に良くない。聞いた話によれば、あのVOID、目からビームを出すと言うではないか。離陸してから爆破されては目も当てられない。避難所やシャトルを守るために、クリムゾンウェストからハンターたちが向かっていると聞いて、時間稼ぎくらいなら、と二人は出てきた。
 一番悪いのはあれがシャトルにくっついて来ることだ。月の方が戦力は多いと言うが、もっとも近距離にいるのは避難民である。VOIDはここに置いて行かなくてはならない。
 もっとも、たくさんあるシャトルや避難所の中で、自分たちのところに確実にハンターが来てくれるとは限らない。

 そもそも、月に行くと言うのがあまり現実的な選択肢ではない。邪神が出てきたから地球の時間を止めます、なんて、信じる人間はそこまで多くない。
 でも、彼らはそれを信じても良いと思った。アプリを持っていても太刀打ちできないような、使徒なんて連中を叩きのめして自分たちを助け出したハンター達の顔が思い起こされたからだ。あの人たちがいる世界だったら、まあそんなに悪くないんじゃないの。得体のしれない化け物がいるのも本当だし。そう思って月行きを選んだ。

「それにしても、ジョンの奴遅いな」
 二人にはもう一人友人がいる。ジョンと言う、同じく大学生で、彼だけはアプリを使っていない。
「僕はお前らと違ってVOIDなんかに太刀打ちできないからな! ハンターさんたちが来てないか探してくる! 死ぬなよ!」
 そう言って、ハンターを探しに行ってから大分経つがまだ戻って来ない。
「逃げたのかね」
「その方が良いよ。ジョンは関係ない」
「ま、そりゃそーなんですけどぉ」
 エドがむくれて、誰かが落としたらしい携帯端末を拾い上げたその時だった。
「おーい!」
 ジョンの声が聞こえた。二人が振り返ると、複数人を連れたジョンが走って来るのが見える。
「ハンター連れてきたぞ!」

●ハンドアウト
 あなたたちは、地上の打ち上げシャトル警護を依頼されたハンターです。
 アメリカ合衆国に派遣されたあなたたちは、シャトル打ち上げ地の方に向かいます。しかし、
「ハンターさんはいらっしゃいませんか!」
 自分たちを探している声がします。あなたたちはそちらに向かいました。
 声の主は、大学生くらいの少年です。あなたたちが名乗ると、彼はほっとしたように、自分がジョンと言う大学生であること、近くにVOIDがいること、イクシード・アプリをインストールしている友人二人がシャトルに行かせないように頑張っていることを伝えます。
 あなたたちが、ジョンと名乗った少年について行くと、二人の少年が、小型狂気に向かって石ころやら落とし物やらを投げつけているのが見えました。
「ハンター連れてきたぞ!」
 ジョンが叫びます。二人の少年はくるりと振り返りました。積極的に投げていた方の少年は嬉しそうに笑うと、もう一人を促してこちらに向かって来ます。
「じゃ、あとはよろしく! 俺たちシャトル乗るからさ! 恩に着るぜ!」
「ありがとうございます! ジョン! 君も来るんだ」
「お前ら、そんないい加減なお礼で……! あああ申し訳ない! 今度会えたらこのお礼は必ず!」
 ジョンは二人に引きずられてハンターたちを拝みます。その姿はどんどん小さくなって、シャトルの方に消えていきました。

 あなたたちはVOIDに向き直ります。
 最初は一体だったそれは、いつの間にか十にまで増えていました。

●恥ずかしいんですけど
「あれっ」
 エドは未だ待機所に避難民が全員揃っているのを見て目を瞬かせた。
「まだ点検終わってないんすか!?」
「終わってないのよぉ」
 一人の女性が眉をハの字にしてぼやく。
「やっべー、俺たちハンターに後よろしく! ってドヤ顔して来ちゃったんすけど。うっわ恥ずかしい」
「ハンターが来てるのか? だったらもうヤケだ。観戦としゃれこもうや」
「おっ、良いねぇ。どうせシャトル乗ったら楽しみもなさそうだもんな」
 避難民たちはぞろぞろと待機場所を出た。
 遠くでは、クラゲじみたVOIDと交戦するハンターたちの姿が見えている。

リプレイ本文

●流星で落ちる火蓋
 三人の学生が去ってから、一同は各々戦闘態勢に入った。コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)は銃の射程になる距離に移動し始めている。
「わっふ! 歪虚さん、たくさんです! じゅっとしていいですー?」
 律儀に歪虚に敬称を付けるのはアルマ・A・エインズワース(ka4901)。犬に喩えられることが多い彼は、尻尾の代わりに耳が良く動く。今もそうだ。大変楽しそうにエルフ特有の長く尖った耳が揺れていた。
「わぅーっ。歪虚さんと遊ぶですー!」
「……見られているね」
 鞍馬 真(ka5819)が、学生たちの去った方を見て肩を竦めた。ぞろぞろと避難民たちが固まって出てきている。視線は一様にこちらを見ているが、どちらかと言うと好奇の目だ。
「歪虚がですぅ? 避難民かシャトル狙いですかぁ?」
 星野 ハナ(ka5852)は符を準備しながらキッと十体の狂気を睨んだ。真が首を横に振って後方を指す。
「いや、避難民が」
「えっ」
「見られているなら無様な戦いをする訳にはいかないね」
 ハナは歪虚と避難民たちを見てから、箒に乗った。
「見てる分には良いんですけどぉ、念のためもうちょっと下がってもらいますぅ」
「わかった」
 彼女が箒に乗って避難民たちの方に飛んでいくと、輝羽・零次(ka5974)が苦笑した。
「ったく……見物料とるぞ、このやろー」
「……観戦者がいる、っていうのも落ち着かないわね……けど悪い雰囲気でもなさそうだし、別に良いわね」
 少々困惑したように微笑むアティ(ka2729)。彼女は、足下に落ちていたロザリオを拾い上げた。誰かの落とし物らしい。
「後で渡せるかしら?」
「わふ、他にもいっぱいあるです! 踏まないようにするですーっ!」
「ああ、気をつけよう」
 アルマの言葉に真も頷く。
「出発までに渡せるように、早いところ倒さないとな」
 零次も拳を握りしめた。

 コーネリアも、やはり避難民たちが観戦しに来ているのに気付いている。
(地球がどうなろうと私のやるべきことは変わらん。歪虚が出たのなら即滅するまでだ)
 地球が封印凍結されるとなっても、妹の無念を晴らすために歪虚を狩り続けるという、その信念が揺らぐことはない。ライフル・ルーナマーレを構えて歪虚を狙っている。
 野次馬に対しては現実の戦場をくっきりと目に焼き付かせるつもりでいる。力を持つと言うことはそう言うことだ。とても、重い。例のイクシードアプリ事件が齎した残酷な現実を。
 だが、それも見て覚える避難民たちが生きていなくては何の意味もない。
「コーネリア、見えるか?」
 トランシーバーから零次の声がした。
「ああ、見える。シャトルに近いのを優先して狙っていく」
「了解」

 スコープの中で青い光が炸裂した。アルマの撃ち出す、紺碧の流星だった。

●観戦のおとも
「みなさぁーん!」
 ハナは避難民のところまでまっすぐに飛んで行った。怒られるとでも思ったのか、彼らは一瞬逃げ腰になる。
「な、何でしょうか?」
 ハンターたちを誘導したジョンが後ずさりながら尋ねた。
「戦線が下がると危ないのでぇ、もう少し下がって見てていただけますぅ? 最後の最後で流れ弾に当たったら嫌じゃないですかぁ」
「見てるのは良い?」
 そう言ったのは、「後はよろしく!」とドヤ顔で去って行った少年である。少々気まずそうにしているのは、言い切ったのに残っているからだろう。
「それは大丈夫ですぅ。士気にも繋がってるみたいですしぃ、応援してくださぁい」
 そう言ってハナが指したのは、こちらに手を振っているアルマの姿だった。避難民も何人かが手を振り返す。
「自称魔王様が居るんですから戦力的な心配はしてないですぅ。避難民さんの近づきすぎの方が心配ですよぅ」
 ハナはそう言って、少年の口にマシュマロを放り込んだ。アイテムスローのスキルなので、外して落ちることもない。それから、一番小さな子どもにマシュマロの袋を投げ渡した。
「皆で食べてくださいねぇ」
 手を振りながら、彼女はもう一度箒に乗り直して全速力で戦線に戻った。既に戦いは始まっている。

●開幕一番
 アルマの放つ紺碧の流星は、狙った三体の内二体に高火力のマテリアルを叩き込んだ。背後から、悲鳴のような歓声が上がる。アルマの背格好は、手品師、怪盗、あるいは大道芸人を思わせるそれで、青白い光までは想像の範囲内ではあったが、明らかにVOIDに損傷を与えるような威力があるとは誰も思っていなかったのだ。
 VOIDはそれなりにガードが堅いようで、辛うじて浮いている。
「わふ! 歪虚さん固いですー! もっと遊んでくれるです?」
 モノクルがきらりと光る。
「ハナさんが注意喚起してるけど、行かせないにこしたことはないからね」
 真はカオスウィースとオペレッタを抜きながらソウルトーチを発動した。十体の視線が彼に集まる。上手く行ったようだ。
 シャトル近くに張ったコーネリアが放ったリトリビューションが降り注いだ。一体がまともに受けて地面に落ちる。他にも数体が封印の光を受けて動きが鈍った。
 その、地面に落ちた一体に向かって、零次が縮地移動で肉薄した。格闘士として鍛えてきたこの拳を叩き込む。彼の戦い方は、他のハンターに比べたら地味かもしれないが、それでもハンターとして培ってきたものがある。地面を蹴って、低い位置を保ちながら滑るように相手の間合いに飛び込んだ彼は、その勢いで拳を引いた

 白虎神拳。白熱するほどにマテリアルを込めた打撃!

 確かな手応えを感じる。だがまだ倒すには至らない。零次はもう片方の手で追撃を加えた。装甲が砕けるのがわかる。砕けた装甲は、そのまま力尽きた本体と共に消えた。

 アティはその様子に気を配りながら、できるだけ多くのVOIDを巻き込める位置でプルガトリオを発動した。二体を縫い付けることに成功する。これでおいそれとシャトルや避難民には近寄れまい。

●ハンターの力を間近に
「えっ」
 アルマが放つ紺碧の流星を見て、避難民たちは予想外の光景に驚愕の歓声を上げた。俯かない限り見える光は、戦場を注視する彼らにはよく見えた。
「あれで自称魔王なの!? もう本業魔王では?」
「待って、何か一人すごい狙われてない?」
 ソウルトーチで真を一斉に注目するVOIDの動きははっきり言って不気味である。だが、視線を受けても真は平然として立っている。二本の剣を持って、堂々たる立ち居振る舞いだ。
「何か、ホラーで秘密の儀式を見付けてしまった主人公感」
「一斉にバッて見られるやつ」
「わかる」
 リトリビューションの雨が降る。光の雨はさながら天罰のよう。避難民たちには、心強く見えただろう。
「すごい!」
「誰が撃ったの?」
「あそこの女の人じゃない? ライフル持ってる」
「かっこいい!」
 そのタイミングで、零次が素早くVOIDに迫った。
「速い!」
 白熱した打撃が繰り出されるのを、彼らは見た。装甲の砕ける音がわずかにここまで届く。
「パンチで割れるんだあれ……」
 それから消えるVOIDを見て、避難民たちは歓声を上げた。自分たちではとうていかないっこない異形を、拳で打ち倒してしまった彼の姿は輝いて見える。
 アティがプルガトリオを発動する。黒い刃は、リトリビューションとは違う意味で天罰にも見えた。その刃が消えた後も、VOIDは動けないでいる。
「素敵……天のお使いみたい……」
「串刺し、まだ効いてるよね? どうなってるんだろう」
 刃が消えてもなお残る足止めに、避難民たちは興味津々だった。

●つかみは上々
「つかみは上々ですーっ!」
 避難民たちの歓声を受けて、アルマはご満悦だ。
「見てて面白いのかなって思ってたけど、案外楽しんでる、ねっ!」
 ソウルトーチのためにほとんどの歪虚から的にされている真は、攻撃を器用にかわしながら歓声に耳を傾けている。一体の殴打を跳んで回避。そのまま空中で身体を捻って別の一体のビームを避けた。戦線は下がるどころか押している。
 一体の歪虚が、ソウルトーチから注意を逸らすことに成功してしまった。それが狙ったのはアティ。だが、プルガトリオで接近できないために攻撃は届かない。
 別の一体が真にビームを放った。絶妙なタイミングで撃たれたそれに、真は回避が難しいと判断。身構える。
「真さん!」
 アティがホーリーヴェールを真にかけた。寸前で、幾何学模様を描く光が展開される。カオスウィースで押し返しながら、一歩間違えればそれが急所に直撃していたことに彼は気付いた。ヴェールは光の粒子に変わって消えていく。
 光が人を守る様に、避難民から安堵の声が上がった
「大丈夫か!」
 零次が呼びかけた。
「ああ! 大丈夫だ! アティさんありがとう」
「無事なら何よりよ」
 避難民のところから、ハナが全速力で戻ってくるのが見えた。

●戦場を舞台に
 旋風の唄が響く。オペレッタが勇壮な旋律を紡いで行く。
「楽しくなるですーっ!」
 真の唄に合わせながら、外套をひらりと翻してアルマが再び紺碧の流星を放つ。リトリビューションの光が降り注ぎ、その光の中で、零次と真がVOIDに打ちかかった。光の届かない場所では闇の刃が敵を縫い付ける。
「戻りましたぁ!」
 ハナが箒で戻ってきた。最初に十いたものが四にまで減っているのを見て、彼女は肩を竦める。
「やっぱり戦力的な心配、要らなかったですねぇ」
「わうーっ!」
 一体がアルマに殴り掛かった。ひょい、と軽いステップでアルマはそれを回避する。
「びっくりしましたー! 何するですかーっ!」
 あの歪虚はすぐにでも消し炭にされるだろう。ハナは五色光符陣を展開しながら頭の片隅でちらりとそんなことを思った。明るすぎるストロボの様な閃光は、避難民まで届いたことだろう。歓声が聞こえる。
 氷の気配を纏った弾丸が飛来してVOIDを撃ち抜いた。コーネリアのフローズンパニッシャーだ。パキパキと音を立てて凍り付いて行く。
「貴様らごときが十体揃ったところでシャトルを破壊するのは不可能だ。身の程を弁えろ雑種共が」
 無線から不敵な声がする。
「僕も氷漬けするですーっ!」
 アルマが錬金杖・ヴァイザースタッフを掲げた。燃やそうかと思ったが、敵も残りわずかだ。派手に決着をつけよう。
「みなさーん! 避けて下さいですーっ!」
 その無邪気な注意喚起に、アティ、真、ハナ、零次は射線から一斉に離れた。
 アルマの左胸が、蒼く燃え上がる。術法陣が展開されて……もはや無慈悲と形容するのに相応しいような、鋭利な氷柱が突き出された。轟音。
 後方にいた、カンの良い一体が直前で陣の上を外れた以外では、全て巻き込んで切り裂いた。氷と共に砕けて、塵と化す。
 真が追撃を試みた。アティも駆け寄る。二刀流を受けて、最後の一体は瀕死の重傷だ。
「アティさん、とどめを」
「はい」
 アティはアブルリーを掲げた。闇の刃は無慈悲に敵を貫いた。

●カーテンコール
「わふ、わふ! 僕、がんばりましたです! たのしかったです! 楽しんでいただけましたですー?」
 アルマは拾った落とし物を抱えて避難民たちに駆け寄った。派手な攻撃に心引かれた者たちはアイドルに群がるファンの様に口々に彼を褒め称える。
「すごかった! あの光ってるビームとか、氷とか!」
「語彙が溶けた! やばいしか言えない」
 真もまた、自分の戦い方がどう見えていたかに興味があった。自分たちを呼んだジョンがぺこっと頭を下げるのを見て、それとなく尋ねてみる。
「歌いながら戦うってすごいですね! しかも二刀流とか! あと避けるの超かっこよかったです!」
 礼儀正しく振る舞ってはいるが、彼もまたハンターたちの戦いに心打たれていたのだろう。興奮気味に感想を述べる。
「このお人形、誰のかしら? 落ちていたんだけど……」
 アティが小さなくまのぬいぐるみを掌に乗せて首を傾げる。一人の少女が手を振った。
「私の!」
「ああ、良かった! さっきまで無い、無いってべそかいてたのよ! ありがとう、ハンターさん」
「いいえ。届けられて良かったわ」
 零次は、来た時にすれ違ったハンクの顔を見付けて手を振った。ハンクはほっとした顔をして零次に近寄る。
「来てくれてありがとう」
「いや、構わないよ。それより、元気でやれよな」
 俺たちの星は、俺たちが必ず取り戻すから。その決意が彼を始めとした、リアルブルー出身ハンターたちの多くの胸にある。
 だからどうかその時まで。
「生きてろよ。約束だからな」

●勝ち方を教えて
 コーネリアは学生たちに歩み寄った。エドが笑顔で出迎える。
「ありがとう。助かった。俺たちだけじゃ勝てたかわからない」
「そうだろうな。よく覚えておけ、これが力を手にした者どもが辿る道だ。これはゲームでも何でもない、現実の戦場だ。覚悟もなく戦場に出張れば、やがて身を滅ぼすことになる」
 エドは少し困った顔をしてから、自分より遙かに背の高い女性を見上げた。
「それは困ったな。もし、また会うようなことがあったら」
「あったら?」
「勝ち方を教えて欲しいって思ったから」
 コーネリアは目を細めた。人の話を聞いていなかったのかこの少年は! その顔を見て、エドは慌てて付け加えた。
「覚悟はしておくからさ」

●星を離れて
「シャトルの点検が終わりました。これより搭乗を開始しますが、イクシード・アプリをご使用の方は拘束します」
 乗務員がアナウンスすると、学生三人は顔を見合わせた。
「マジ?」
「当たり前だ! 途中でお前が暴走したら僕は止められないぞ!」
 げんなりしたエドに、ジョンが目を剥いて強く言う。その間に真が入った。
「まあまあ、月に行くまでの辛抱だよ」
「途中でVOIDと交戦することになって暴走してなければ、その時は戦って頂きます」
「俺たちは猛獣かなんかか?」
「あんな変なものインストールするからだ! 自業自得だよ! 月に行けるだけラッキーだと思え!」
「ジョンくん落ち着いて。心配なのはわかるけど」
「心配なんか……してます」
「面白いでしょこいつ。いつもこうなの」
「友達思いなんだね。私はその気持ち、大事にして欲しいなって思うよ」

 搭乗から発射まで特にトラブルはなかった。ハンターたちは皆残って、その様子を見守っている。
“Five,four,three,two,one……”
 ゼロ。ジェットが噴射される。轟音を立てて、シャトルは地上を離れた。
「みなさん、またですーっ!」
 アルマが飛び跳ねながら手を振った。
「またみんな絶対戻って来れますよぅ。希望はなくさないで下さいねぇ」
 ワンダーフラッシュの花火を打ち上げながら、手を振ってハナが呟く。

 青くて丸い花火。きっと、もう少し後でシャトルの窓から本物を見るだろう。
 ハンターたちは、シャトルが見えなくなるまで見送った。

 蒼い空の向こう側に、明日への希望がある。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • エクラの御使い
    アティ(ka2729
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 拳で語る男
    輝羽・零次(ka5974
    人間(蒼)|17才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/10/23 22:13:32
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/21 22:11:42