お肉の精霊とは

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/10/19 22:00
完成日
2018/10/24 22:13

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 要塞都市ノアーラ・クンタウ内にはドワーフ工房【ド・ウェルク】が存在する。
 現在、そこの管理をしているのはアルフェッカ・ユヴェーレンという帝国軍人の青年。
 本来の仕事は要塞都市を取り仕切る要塞管理官ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0232)直属配下……側近の一人にして、補佐官の一人。彼が要塞管理官として配属される際にドワーフ工房に管理官置くことになったが、誰もが断ってきた。
 ドワーフ工房の面々は荒くれ、好き放題。女職人も覚醒者がおり、汚職や賄賂を要求する帝国軍人とは衝突してきたが、仕事はきっちりの職人集団。
 本来、そんな連中を取りまとめるのは彼等のボス……通称ドワーフ王ヨアキムだ。
 誰もが知る通り、好き勝手やっており、まともにできるわけがない。
 そんな中、白羽の矢……もとい、仕組まれたくじで負けたのがアルフェッカだった。他の側近や補佐官達からも奴のコミュニケーション能力なら何とかなると彼に匙をぶつけている。
 現在のアルフェッカは工房管理官、補佐官の仕事と忙しい人物。ハンターも彼に会う事は滅多にない。

 何かと知り合いが多いアルフェッカは治安部隊の方にもいる。
 帝国内でも同郷の友人が配属されている部屋に遊びに行ったりなどして情報収集、共有をしていた。
 最初の頃は何かとトラブルが多かったドワーフ工房のメンバーの動向を知る為であったりするので、貧乏くじ引かされたなと笑われた。
 現在ではヴェルナーの采配が功を奏し、ドワーフ工房の連中との摩擦はなくなり、何かと多忙だが、良い職場環境を形成している。
 そんなアルフェッカは治安部隊の知り合いと世間話をしていた。
「ホント、疲れた……」
 怠惰王侵攻の後片付け中だが、一応退けたのは事実。
 帝国軍は要塞都市に攻め入られた場合を考慮し、待機していたので疲れ果てている。
「そりゃぁなぁ……どこもかしこも疲弊してるさ」
 アルフェッカは先日の戦いで『さるお方』が視察に来たという話をどこぞから入手し、「マジかよ……」と呟いていたのも記憶に新しい。
 ドア一つ隔てた隣の部屋は治安部隊の隊員達の大部屋。賑やかな声がしてくるので、見回りから戻ってきたのだろう。
 そろそろお暇しようかとアルフェッカが思い立つ。
「お、戻ってきたか。丁度良かった」
 男は大部屋に顔を出して、ある名前を呼ぶ。聞いたことがない名前だなぁ……とアルフェッカは記憶を引っ張り出す。
 呼ばれた人物はアルフェッカの前に立ち、カチコチに緊張していた。
 外見は二十歳になるかどうかの青年。そばかす混じりの頬が緊張で朱に染まっている。アルフェッカは「自分もこんな時代あったなー」と思い出しつつ、挨拶を受ける。
「クヤムです!」
 敬礼をしたクヤム青年にアルフェッカも挨拶を返す。
「新人の紹介って珍しいな」
 わざわざ紹介するとなれば、見どころがある青年なのかもしれないとアルフェッカは知り合いの顔を見やる。
「彼はこの要塞都市内でも顔が広い。お前の困りごともたちまちに解決してくれるだろう」
「は、はい!」
 知り合いが言葉を差し込むと、アルフェッカが何を言い出すんだと言いたそうに目を眇めた。
「あの、自分はこの街で会った人にもう一度会いたかったのですが、怠惰王の侵攻もあり、中々探すことが出来なく……上官に悩みを打ち明けたところ、アルフェッカ殿ならとても詳しいと助言をくださったのです!」
 クヤムが言葉を並べるが、アルフェッカの直感はめっちゃ面倒くさいといっている。
「世辞だ、惑わされるな。とはいえ、私の知り合いであればいいが、市井の人間までそう詳しくはない」
 注意を置いてアルフェッカは話を聞こうと言った。
 クヤムはここに配属されてからまだ日が浅く、見回り隊の列からはぐれることもあったという。
 そんな折に合流するための近道を教えてくれた女性がいた。
「茶色の長い髪に、緑の瞳で、年齢は二十代後半です。長袖の作業着を着ていました。中に襟付きの白い服を着ていて、手首から肘の半ばまで覆う長さのバンドをしてました。バンドを留める紐の色は赤でした」
 何処かの職人なのだろうかとアルフェッカは先を促す。
「持っていた串肉まで頂いて、まるで精霊の導きを受けたようでした……! お礼を言いたくて、上官や先輩に相談しましたが、皆さんわからないと言われて……」
 もういい、これ以上何も言うなといわんばかりにアルフェッカは頭を抱える。ちらり……と知り合いの顔を見ると、クヤムの視界には見えないところに立っており、ニヤニヤとアルフェッカを見ている。
 分かって助言したのは言うまでもない。
「話はわかった。しかし、君は見回りの部隊に入っているのだろう? この街に来てまだ日も浅い。人任せにするより、自分の足で探した方が街の見識が広がり、経験にもなる」
「はぁ……」
 アルフェッカの返答にクヤムは眉を八の字にして返事をする。
「しかし、君はその女性を見つけられないのだから、ハンターに助けを求めるといい」
「え?」
 アルフェッカではないのかという表情をするクヤムだが、ハンターのことは知っている。
「要塞都市や辺境を拠点にして活動しているハンターもいると聞く。彼らに悩みを聞いてもらうのもいいだろう」
「は、はい! ありがとうございます!」
 クヤムはアルフェッカの助言を聞き、礼を言って退室した。
 部屋にアルフェッカと知り合いが残った時、部屋の主は笑いを堪えすことが出来ず、「ぶふー!」と笑う。
「お前、知って俺を使ったんだろ」
「はははは! いや、悪かった! お肉の精霊とか言い出して、面白かったんだ……」
 笑いすぎでお腹がいたのか、知り合いは腹を抱えている。
 真面目な青年だったのだろう。そんなこと真顔で言われたらアルフェッカも噴くだろう。
「やっぱり素直に言わなかったかー。お母さんは大変だ」
「言ってろよ」
 面白くなさそうにアルフェッカも部屋を出た。

 要塞都市内のどこかで大きなくしゃみをする音が聞こえる。
「あら、風邪?」
「うーん? 疲れてはいるけど、妙な悪寒がするわね」
「鳥肌じゃねぇか」
 そんなやり取りをしつつ、仕事をこなしていった。

リプレイ本文

 依頼人に会うなりキラキラ目を輝かせているのはディーナ・フェルミ(ka5843)。
「今回はお肉の精霊様を探すと聞いたのっ!」
「え、あの……」
「一生肉食に困らなそうなその加護、是非あやかりたいのっ」
 ディーナがクローズアップするところにクヤムがツッコミを入れようとするが、彼女はヒートアップしていた。
「丘にも花にも川にも宝石にも水道にも精霊がいるんだもの、お肉の精霊だってきっといると思ってたの」
 水道……?と、首傾げた鞍馬 真(ka5819)だが、日本でいうところの八百万の神を当てはめる考えであればいてもいいのかなと内心納得する。
「それを探せるなんて、ありがとうなの!」
「は、はい、よろしく……?」
 嬉しさのあまり、ディーナはクヤムの手を握りしめて上下に振る。いつもなら女性に手を繋がれて顔を赤くする彼だが、状況に追いつけない。
「大丈夫?」
 夢路 まよい(ka1328)の心配にクヤムは曖昧に返事をする。
「とりあえず、この辺境都市で食事をする際にお店に困ることはないと思うわ」
 遠い目をしているのはエミリオ・ブラックウェル(ka3840)。
 クヤムは中性的な麗人のエミリオにどぎまぎしていたが、声を聴いた瞬間の彼の様子は目を丸くして背後に宇宙の幻影が見えた気がしたかもしれない。
「道に詳しいという事だし、そうかもしれないわね」
 頷いているフィリテ・ノート(ka0810)に真も同意していた。
「とりあえず、特徴を聞こう」
 本題を進めるレイア・アローネ(ka4082)の提案にフィリテは紙とペンを取り出す。
「特徴は書きつけていくわ」
 レイアからの質問を受けていったクヤムは女性の身体的特徴から持っていた串肉が何本だったのか、その時の周囲の状況まで詳しく答えていった。
「凄い記憶力だね」
 目を瞬く真にクヤムは照れてしまう。
「褒められると照れます。とっさの対応には中々対処できなくて」
 真が男というのはわかったようだが、中性的な容姿の為なんだか顔を赤くしている。
「大丈夫……?」
 書付を終えたフィリテが気遣ったのはエミリオだった。
「うん……大丈夫よ……」
 ふーっとため息をついたエミリオは瞳を伏せて口元を手で覆い、アンニュイな様子を見せているが、実際は口角を上げて笑みの形となっている。
「とりあえず、お肉の精霊の情報を集めに行くわね」
 物憂げな表情からうって変わり、ウィンク一つしてエミリオは立ち上がる。
「ああ、そうそ。精霊に会えた時に『お供え物』は大事よね。お肉の精霊だし、お肉の蜂蜜漬けなんかどうかしら?」
「お肉に蜂蜜……ですか」
 きょとんとするディーナにエミリオは蜂蜜は肉を柔らかくする効果がある旨を伝えた。
「待ち合わせはルクバトという食堂でね」
 彼の指定に他のメンバーも異論はなかった。「じゃあね」とエミリオはその場を辞した。
「私も行ってくる」
 同じくまよいも別行動をとる。

 エミリオが大通りに面した市場へ向かっていったのをまよいは見かけていた。
 まよいが向かっているのは要塞都市の一角にあるドワーフ工房【ド・ウェルク】。
 依頼内容とクヤムが話していた女性の特徴を聞いてまよいが思い出したのはドワーフ工房からの依頼を受けた時にいた女職人。
 彼女もお肉が大好きだったはず。
「こんにちはー」
 声をかけてまよいはドワーフ工房の中へと入っていった。

 クヤム青年と一緒残ったレイアは書付を見ていたが、クヤムを向く。
「ところで、お前自身は探したのか?」
「時間を見つけては探したのですが……自分は軍人ゆえ、私用であまり聞きまわっては市民に不安を与えるのではと……」
「それで上司に相談をしたのか」
 真面目だなとレイアは感心する。
「規律を破ると懲罰対象もありえるから、精霊のお導きよねっ」
 うんうんと頷くディーナにクヤムはとりあえず笑ってごまかしてしまう。
「懲罰を免れたのであれば、お礼は言いたいよね」
「はい」
 正体が精霊であっても人であってもお礼を言いたいのは確か。
 真の言葉にクヤムはいい返事をした。

 大通りに面する市場で買い物を終えたエミリオは目的の場所へと向かう。
 クヤムから聞いた特徴で思い出したのはただ一人。というか、二人いても要塞都市の肉の消費が増えるだけだろう。
 経済が回るのはいい事なのだろうが。
「なんというか、面白……いえいえ……前回の借り……もとい、迷える子羊ちゃんを助けなくちゃね☆」
 ふふふと微笑みつつ、エミリオは勝手知ったるドワーフ工房へと足を踏み入れた。

 少し時間を巻き戻して、まよいはドワーフ工房へ入っていった。
 金属加工を担当するクレムトの区域を越えると、フォニケが所属するフェルツの部屋がある。
「あら、まよいちゃん。こんにちは」
 研磨機と向かい合っていたフォニケが機械を止めてまよいに声をかけた。
「焼肉以来だね。今、人探しをしているの」
「あら、人探しの依頼?」
「そう」
 頷くまよいに他の工房のメンバーも手を休め、お茶を淹れてくれる。
「とてもお肉が好きな人みたいで……」
 まよいは指折り数えて特徴を上げていく。真剣に聞いているフォニケの後ろではフェルツのドワーフ達が「シェダルとアルフェッカに伝えろ」「また何かやらかしたのか」とコメントが出てきた。
「こんな感じだったけど……」
「うん……私ね」
 遠い目をしているフォニケは自分の事だと理解している。
「今までに何枚のお肉を食べたか数えてないわ」
 ずばん、と言い出すフォニケに廊下の方から「それはわかってるわよ」というツッコミが聞こえてきた。
「エミリオ君?」
 通信機器をタップしたエミリオが中へ入る。
「まよいちゃん、ありがとうね」
「やっぱり同じだったね」
 エミリオがまよいに礼を告げると、まよいも微笑み、手にしていた通信機器の画面を確認した。
「ハンターに人探しをされる心当たりは最近ないわよ」
「何をやらかしているの?」
 降参という様子を見せるフォニケにエミリオは真顔で返す。
 この話の噛みあいを考えると、フォニケは何か悪いことで自分を捜索しようとしている輩がいると思われているようだ。
「まぁ、悪さではないから……ね☆」
「ね☆」
 ちらっ、と互いに目くばせしたエミリオとまよいが同時にフォニケへウィンクする。
 可愛らしい悪戯妖精二人組から逃げようとするが、それは現場監督の地位にいるカペラの手によって遮られた。
「ここは任せて。シェダルさんとアルフェッカさんの不在の内に帰ってきてね」
 にっこり笑顔を張り付かせたカペラが抱えるのはドワーフ工房女性陣お気に入りの果実酒とつまみ一式が入った籠。
「カペラちゃん!?」
 嗜好と胃袋を掴まれてしまっては従うしかないのはフォニケとて同じなのだ。
「じゃ! 行こっか!」
「行きましょ♪」
 両手に花宜しくフォニケは二人の手によって引きずられていった。

 クヤムの方は情報収集しながら街を歩いていた。
 町の人々の反応はというと、クヤムの探し人が誰であるのかすぐに分かってくれた。
「その人はドワーフ工房の……」
 真が途中小声で言うと、女将は頷いた。
 彼女しかいないよね……と真もどこか遠い目をする。
「ありがとうございます」
 礼を言って真は離れようとした時、魔導スマートフォンが着信を伝える。
 伝話の相手はエミリオだった。
「目撃者を見つけたよ。やっぱりフォニケさんのようだよ」
 エミリオの方はまよいと共にフォニケを連れ出しており、待ち合わせ場所へ誘導している。
「今、フィリテさんが贈り物を勧めているようだから、路地一本向こうから回ってくれないかな」
 その後二言三言かわして真は伝話を切った。
「どうした?」
 真が電話をしていた事に気づいていたレイアが声をかけると、「エミリオさんから」と返す。
「贈り物をするんだよね」
 確認をする真にフィリテが「はい」と返した。
「畏まった品物よりは気軽なものがいいかと思って」
「じ、自分は装飾品についてわからないので、ご教授願えたらと思います……」
 及び腰になるクヤムは心底困った様子だ。
「とりあえず、雑貨がある市場へ行きましょう」
 フィリテが三人を案内していった。

 エミリオとまよいに連れられたフォニケは世間話をしつつ、散歩している。
「ところで、フォニケちゃんは年下オッケー?」
「恋バナは自分より人様の方が好きなんだけど」
「知ってる、で、どお?」
 茶化して躱そうとするフォニケを包囲するようにエミリオが返す。
「まぁ、気にしないわね。エミリオ君は?」
「私? あの子に娘が産まれたらお嫁に貰う気満々よ」
「Oh……」
 真顔で言い切ったエミリオは男前でしかない。
 そんな二人の会話を聞きつつ、まよいはエミリオに目配せしてその場を離脱する。

 もう一人別行動をしていたディーナはお肉の精霊について情報収集をしていた。
「わ、このお肉、外はカリカリで中はふわふわっ」
 屋台の串肉を頬張るディーナは絶品と言える焼き加減に感動を覚える。
「そうだろう、精霊様もお気に入りなんだ」
 屋台の店主はにっかりと笑う。
 聞き込みをしてきたディーナは「お肉の精霊を探しているの」とストレートに尋ねた。
 店主はノリよく「ああ、よく来ているよ」とオススメの串肉を勧めてきて、彼女はそれを買って食べている真っ最中。
「お肉の精霊はこの辺をよく歩ているけど、そろそろ昼飯頃だから、来るだろ」
 精霊にもお昼休みがあるのだろうかと思案しつつもディーナは串肉にぱくつく。
「お肉の精霊はここにいて長いんですか?」
「今の要塞管理官が来る前からいるよ。前の管理官は手下も悪いやつらばかりで、飲み屋街では迷惑かけられたいたりした店もあってなぁ」
 肩を落とす店主の話をディーナは肉を食べながら聞いていた。
「よく覚えているのは、飲み屋の美人ママさんに帝国の連中が悪さしようとして、通りかかった精霊様とドワーフ工房の連中が一緒になって大立ち回り」
「おお」
 目を丸くするディーナ。意外と豪快なところがある模様。
 お肉の精霊はドワーフ工房に関する精霊という事が判明し、次の店へと向かった。
 次の店で骨付き肉を頼んで食べていたディーナはその店の人より精霊の名前がフォニケと分かる。
 一度仲間に連絡を取ろうと思ったところにまよいが来た。
「あ、美味しそう」
 骨付き肉に目を輝かせたまよいも一本頂く。
 二人で美味しいと言いながらお肉を食べ、情報交換を行い、伝話で真へ共有する。
 ハンター達の見当は情報収集にあたったハンター達の裏付けとなり、お肉の精霊はドワーフ工房の女職人、フォニケであると判断した。
「本人は今、店へ向かってるの。行きましょ」
 食べ終わった二人も待ち合わせの食堂へ向かう。

 雑貨屋でお肉の精霊へ贈り物を選んでいたクヤムと一緒にレイアも悩んでいた。
 職人相手の贈り物に悩み、おろおろするクヤムにフィリテが勧めたのはシンプルな髪留め。
「髪が長い方なんでしょ? いくつあってもいいと思うの」
「作業中なら束ねるだろうしな」
 髪留めを見つめていたレイアが確認するように言うと、クヤムは「そうですね」と髪留めの選定に入る。
「その女性が身につけてた物の色とか参考になると思うわ。差し色……赤、だったっけ?」
 フィリテの助言と確認にクヤムが肯定の返事を返す。迷いながら真剣に考えたクヤムが選んだのは赤い石が嵌め込まれたシンプルな髪留め。
「気に入ってもらえるといいな」
 レイアの言葉にクヤムは緊張しつつ言葉を返した。
「頃合いかな。お肉の精霊がルクバトの近くにいるようだから行こう」
 真が促し、四人は足早に気づかれないよう店へと向かった。

 エミリオ達はまよいとディーナと合流していた。
「もしかして、貴女がお肉の精霊!」
 キラキラ目を輝かせるディーナにフォニケは絶句してしまう。
 仲間に文字通り売られてしまったのに何をして「お肉の精霊」と呼ばれるのかといつもノリのいいフォニケの調子が完全にぶっ飛んでいる。
「そうよ、しっかり捕まえて行きましょ」
 肯定したエミリオが言えば、「了解なのー♪」と言ってディーナがフォニケの腕を取って連行していった。
 花が増えている。
「そろそろ着くからね」
 一歩後ろを歩いていたまよいがクヤム達と一緒にいるメンバーへ連絡をしていた。


 店に着くと、会った事があるハンターもいてフォニケは頭の上に疑問符しか浮かばなかったが、同席している青年には見覚えがある。
 先日彼女が助けた帝国兵士。
「ちょっと、私何かしたの!? ここの所暴れた憶えないわよ!」
 身構えるフォニケが身の潔白を叫ぶ。
「多分、そのことではない。クヤム」
 何をしたのだろうかと勘ぐってしまいそうだと思いつつ、レイアはクヤムに前へ出るように声をかける。
「あ……あの、先日助けて頂いた帝国兵士です……クヤムといいます」
 身体が硬直し、顔を真っ赤にしたクヤムが名乗る。
「あの日、列を乱せば、懲罰となる所でした……貴女のお陰で助かりました。本当にありがとうございました……!」
 クヤムは手に持っていた小さな箱をフォニケに渡す。
「もう一度会いたくて、礼を言いたくて……その……お恥ずかしながら、ハンターの皆さんのお力を借りました」
「贈り物までありがとう……」
 漸くフォニケも肩の力を抜いて微笑む。
「あの、お名前聞いてもいいですか?」
 クヤムが尋ねる。
「私はフォニケ、ドワーフ工房【ド・ウェルク】のメンバーよ」
 笑みを浮かべるフォニケの自己紹介にクヤムは固まる。
「あの、ドワーフ工房の……」
 フォニケ自体はドワーフ工房の荒くれぶりを理解しているようで、クヤムの態度は気にしてない。
 情報収集に回ったハンター達はドワーフ工房の話をかいつまんで聞いているので、無言となってしまう。
「よかったね、ちゃんとお礼を言えて」
 結果はどうあれ、目的を果たせたことをクヤムへ言うまよいの言葉に彼は照れたように頷く。
「頑張ったわね」
「お疲れさま」
 エミリオと真がクヤムに声をかけると、彼は改めてハンターに礼を言った。

 皆でランチを食べて帰ろうとした時、レイアはフォニケの様子に気づく。
「どうかしたか?」
「なんか、逆だなぁって」
 フォニケの言葉にレイアは首を傾げる。
「昔ね、帝国兵士に助けて貰ったことがあったの」
 今の要塞管理官ではない頃よ。と彼女は付け足す。
「憧れたとか?」
 フィリテが言葉を差し込むと、フォニケは目を細める。
「まぁね。誰かと好きになり合うなんて奇跡みたいなものよね」
 ため息交じりに告げるフォニケにフィリテが「奇跡……」と呟きつつ、思い出すのは恋人の事。
「何ー? 好きな子いるの?」
 キランと目を輝かせるフォニケにフィリテは慌ててしまう。
「腹ごなしのお肉食べないー?」
 先を歩いていたディーナが声をかけてきた。
「では、行くか。お肉の精霊よ」
「もっちろん!」
 レイアが誘うと、フォニケは頷いた。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 5
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 恋人は幼馴染
    フィリテ・ノート(ka0810
    人間(紅)|14才|女性|魔術師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 愛しき陽の守護星
    エミリオ・ブラックウェル(ka3840
    エルフ|19才|男性|機導師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン お肉の精霊を探せ!【相談卓】
エミリオ・ブラックウェル(ka3840
エルフ|19才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2018/10/19 20:18:11
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/19 12:57:20