芋畑に潜む芋(虫)スナイパー

マスター:きりん

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/10/26 07:30
完成日
2018/10/29 09:51

みんなの思い出

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オープニング

●芋畑はもうすぐ収穫
 秋は実りの季節であり、多くの動物たちが冬支度を始める季節でもある。
 付近の街や村の食料事情を一手に引き受ける、とある大規模な芋畑が、ついに収穫の日を迎えた。
 辺りの街や村からたくさんの人手が動員され、すくすくと育った芋を掘り起こす収穫作業が始まる。
「いやー、今年の芋は大きいな! 食いでがありそうだ!」
 芋を収穫する男たちが、掘り起こした芋の出来を見て喜んでいる。
 収穫量は豊作といってもいいペースで順調に推移しており、このままいけば例年の収穫量を上回ることは確実だ。
 飢饉などが起これば食料不足で苦しむことを考えれば、今回は恵まれているといえるだろう。
 だが、いかんせん畑は広く、収穫作業は一日では終わらない。
 来る日も来る日も芋を掘る毎日。
 毎年の恒例なのだから慣れてはいるが、飽きが来るのもまた事実。秋だけに。
「うーむ、腰が痛いな」
「もう歳だろ、無理すんな!」
「何を、まだまだ若いぞ!」
 男たちは軽口を叩きつつ、芋掘りを続けた。

●土中の雑魔
 畑の中には様々な虫たちがいる。
 ミミズ、芋虫、エトセトラ。
 それらの多くは土を肥やし良質な芋を育てるにはなくてはならないもので、いわば芋栽培のパートナー的存在だった。
 しかしいつの間にか、収穫作業に引き寄せられたのか、それとも元からいたのが転化したのか、その中に一つ異物が混ざっていた。
「なんだ? こいつは……」
 一人の男が、掘り出した芋にしがみついた大きな虫を見かけて首を傾げる。
 それは雑魔だったが、あまりにもごく自然に掘り出されてしまったせいで、男は最初のその異常性に気付かなかった。
「こ、こいつは!」
 思い至った男は、仲間たちに警告を発しようとするが、一歩遅く雑魔が発射した弾丸が飛来する。
「逃げろ、雑魔だ! 雑魔がいるぞ!」
 警告を出した男の言葉で回りはパニックに陥り、大混乱になって畑から逃げ出した。
 雑魔はかなりの遠くにいる男たちに狙撃を成功させた後、再び芋にしがみついたまま地中へと戻っていった。
 その生態、攻撃方法、まさしく芋スナである。

●芋スナ被害に
 それから雑魔は畑に訪れた人間を無差別に狙撃した。
 幸いにも、よほど当たり所が悪くない限り一撃で殺されるような威力ではないようだが、それでも有効射程は恐るべき長さで、畑の端から端まで届くほどだ。
 すっかり尻込みしてしまった男たちは、畑に入りたがらない。
 そういうわけで、ハンターズソサエティに依頼が出された。

●ハンターズソサエティ
 本日もハンターズソサエティでは受付嬢たちが仕事に励んでいる。
 そのうちの一人であるジェーン・ドゥが、居並ぶハンターたちに依頼の説明を行っていた。
「収穫作業中のジャガイモ畑で雑魔が発見されました。どうやら芋虫型の雑魔のようで、体内で弾丸を作り出し、地上に顔を出して狙撃してくることが確認されています。堂々と身体を晒していればいい的でしょう。幸いあまり頻繁には移動しないようですから、一度狙撃を見れば狙撃された方角の見当をつけるのは難しくないと思われます」
 言葉を切ったジェーンは、表情を笑顔に変えて最後の一言を付け加える。
「ちなみに、依頼を受けた方には依頼報酬とは別に、収穫したジャガイモをその場で蒸して食べさせていただけるそうです。私も塩とバター持参で、参加させていただきます」
 あ、この人ただ取れ立て新鮮なジャガイモを食べに行きたいだけだと、居並ぶハンターたちは思ったとか思っていないとか。
 とにかく、ジェーンはそんな感じで依頼の説明を終えた。

リプレイ本文

●始まりは打ち合わせから
 依頼が始まる前に、一行は簡単な打ち合わせを行う。
 役割的に後衛になることが多いことから、ロニ・カルディス(ka0551)は己が果たすべき仕事を定め、意見を出す。
「畑の角から攻めた方が良さそうだな。俺は囮役が受けた攻撃から位置を割り出そう。支援は任せてくれ」
「それじゃ私もアースウォールで狙撃を防ぎながら、壁と狙撃の角度を測って割り出しを手伝おうかな」
 同じく後衛として、しかしロニとは別に火力を発揮する役割を担う夢路 まよい(ka1328)も自分の行動を決める。
「なら私は飛行して探すとしようか。空渡で移動してもいいし、魔箒も複数持ってきた。空中でも私ならある程度動けるから適任だろう」
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が冷静に己の実力を鑑みて、もっとも危険な役割を願い出た。
「狙撃に対する備えは私がしておく。いざとなればガウスジェイルで引き受けよう。その代わり援護は任せる」
 盾役を務めるのはレイア・アローネ(ka4082)だ。最悪一人に狙撃が集中することもあり得る関係上、彼女の行動は重要だ。
 四人の役割分担が終わり、自然と残る一人、ジェーン・ドゥに視線が注がれる。
「お前はどうするつもりだ?」
 ジト目のレイアに、ジェーンは考え込んで答えた。
「そうですね。標的が確認できるまでは皆さんとお芋を食べる準備をしておきましょう」
「おい待て」
 レイアとジェーンのやり取りを見て、まよいが苦笑する。
「サツマイモで焼き芋パーティーしたばかりなのに、こんどはジャガイモにつられたんだね……」
「もちろん標的確認後は皆さんのフォローをさせていただきますよ? 本当ですよ?」
 勘違いされるのは心外だとジェーンは抗議するが、二人から注がれる視線は生温かい。
 間違いなく日頃の行いのせいである。
「皆、もう意見はないな?」
「綺麗に話がまとまったようだし基本方針も決まった。いくぞ」
 ロニが最後の確認をし、アルトが出発の号令を出す。
 さあ、依頼の始まりだ!

●どこまでも広い畑
 ロニに障壁を付与してもらったアルトは魔箒に跨り、マッピングセットを取り出しながらイヤリングの通信機能で語り掛ける。
「今のところ狙撃はなし。敵影も確認できない。……分かってはいたが、物凄く広いぞ。地平線ぎりぎりまで畑が続いている」
『この辺り一帯で消費するジャガイモを全部ここで生産してるって話だからねぇ。ジェーンから聞いた話だけど』
 イヤリングからはまよいの声が聞こえてくる。
 感度は良好だ。ノイズもなく、これならばクリアな通信ができるだろう。
 通信は主にアルトとまよい、あるいはロニ間でやり取りし、レイアに通信内容を伝えることになった。
 これは各人が持つ通信手段によって自然にそうなった形だ。
 そこへ、アルトの感覚が飛来する何かを捉える。
「すまない! 通信をしている場合じゃなさそうだ!」
『え、ちょっと!』
 魔箒を旋回させ、飛来する何かを回避する。
 いや、何かなどとぼかす必要はないだろう。敵が放った弾丸だ。
「ほとんど土の中に埋まっているくせに正確な射撃だな。こちらを見つけるのが中々に上手いじゃないか!」
 そのまま狙撃され続けるのも何なので、一度退避してから射撃の方角をマッピングセットに記録する。
「たった今狙撃された。角度的に、距離はまだ遠いな」
『怪我はないか? 必要なら回復するぞ』
 今度は魔導スマートフォンから、ロニの声が響く。
「問題ない。このまま接近してみる。お前たちも動いてくれ」
『了解だ』
 通信を終えたアルトは、再び前進を開始した。

 アルトが狙撃され、回避する瞬間は、下にいるロニ、まよい、レイアの三人にもはっきりと見えた。
「さすがにこの距離は庇えないな……。まあ、狙撃に当たるとは考え辛いが」
 空間のベクトルを操ろうにも、範囲外なのでレイアにはどうしようもない。
「物量で押されるような展開ならともかく、数そのものは少ないもんねぇ。というか、私が魔法で飛んでる時と動きのキレが全く違うよ」
 一応飛行魔法を使うという意味ではまよいの方が専門家のはずなのだが、そもそもの身体能力が違い過ぎた。
 危なげなくアルトが回避する光景を見て、ロニが号令を出す。
「引き付けてくれているうちに接近して探そう。いざという時は頼むぞ」
「ああ、引き受けた」
 頷いたレイアを先頭に、まよい、ロニの順で歩き出した。

●芋(虫)スナイパー、散る
 進むにつれて、狙撃の頻度は増えていった。
『どうやら標的たちはある程度近い位置に固まっているみたいだ! このまま私は回避に集中するから、お前たちで探ってくれ!』
「任せてよ! アルトも気を付けてね!」
 空中で回避運動を取るアルトに通信を返し、まよいは土壁に隠れて見定め、ロニとレイアを振り向く。
「狙撃位置は大体分かったから、土壁に隠れながら接近するよ! ついてきて!」
「無茶はするな! 私を盾に使え!」
「俺もいる! 援護しよう!」
 レイアを先頭に、三人はロニとまよいの二人がかりで作り出した土壁を使い、狙撃の射線を防ぎつつ畑を進む。
 スコップで掘り返して見つけてしまえば、戦闘自体はあっけなく終わった。
「かくれんぼはこれで終わりだ!」
 地上に降りたアルトがオーラを展開、残像を置いてけぼりにして一気に接近し、ノーモーションで剣撃を叩き込む。
 刹那に刻まれた高速剣の軌跡が、一瞬後に血の華を咲かせる。
 別の芋虫型雑魔が顔を出し、弾丸を発射する。
「残念だったな、私がいるぞ!」
 ロニやまよいを狙って飛んでくる弾をレイアが引き寄せ、守りを重視した体勢から身体をずらして防具の硬い部分で弾いた。
 これでは有効打にならない。
「いっくよー!」
 レイアやロニによって存分に守られたまよいが、魔法の矢を上空に作り出し、錬金杖を突きつけて突撃を命じる。
 勢いよく飛び出した矢が、芋虫型雑魔を貫いた。
 対象にならなかった方の芋虫型雑魔が、まよいに向けて弾を撃ち出した。
 避けられない。
「させるものか!」
 すかさずロニがまよいの前に光の防御壁を展開し、銃弾を防ぐ。
「ありがと!」
 守られたまよいがロニに感謝を述べる。
 残る二匹のうち、一匹をレイアが衝撃波をぶつけて倒し、最後の一匹は忍び寄ったジェーンが一撃加えたところにアルトが合わせ止めを刺した。

●戦いの後は美味しい蒸かし芋を
 芋虫型雑魔四体を倒し終えると、約束通り収穫したばかりの芋を食べさせてもらえることになった。
 いそいそとバターや塩をジェーンが用意し、蒸された芋が次々提供される。
「簡単な調理なのに、驚くほど美味いな」
 芋を頬張り、ロニが舌鼓を打つ。
「ホクホクだぁ~」
 小さな口で芋をはむりと食べ、まよいは熱々の中身を口の中で転がしながら笑顔を浮かべた。
 食べ終えたアルトが再び手を伸ばす。
「バターも塩も悪くない。どれ、もう一つ」
 濃厚な味を楽しみたければバターを、さっぱりした味で済ませたければ塩を。
 切れ目を入れた芋にバターがしみ込んでいくのは見ているだけで食欲をそそるし、塩であっさりいただくのもいいだろう。
 これなら自宅で料理をしてみてもいいし、土産にするのもいいかもしれない。
 レイアも二つ目に突入していた。
「この間のサツマイモも悪くはないが、ジャガイモも格別だな……」
 虫はあまり好きではないレイアだったが、依頼の締めに食事を楽しんでいる。
 広大な自然の中で畑を前にして食べる。
 言葉にすれば蒸かした芋にバターや塩をつけているだけなのに、とんでもなく美味に感じるのは、目前に広がる情景のおかげか。
 ……心地よい風が吹く。
 お土産として、一行は芋をどっさりともらって帰った。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/25 09:35:43
アイコン 相談卓
ロニ・カルディス(ka0551
ドワーフ|20才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/10/25 23:40:00