ゲスト
(ka0000)
【HW】ジェーン・ドゥがいっぱい
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/10/31 09:00
- 完成日
- 2018/11/02 15:21
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●淑女ジェーン・ドゥ
ハンターズソサエティでは、本日も受付嬢たちが来客を捌き、依頼の受付や応対を行っている。
その受付嬢の一人であるジェーン・ドゥは、てきぱきと仕事をこなすがうさんくさい性格で、一部の界隈では有名な女性だ。
しかし、今日の彼女は何かがが違った。
「いらっしゃいませ。ハンターズソサエティへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか」
たおやかな物腰で、ジェーンが客の応対をしている。
「ご依頼ですね? こちらのカウンターで、必要事項を記入して書類を提出してくださいませ」
普段の彼女であればうさんくささが物腰にどうしても滲み出ているものだが、こうして働いている彼女は何というか、違う。
全体的に若々しいというか、まるで箱入りお嬢様のような、のんびりした雰囲気が漂っている。
「えっと、その、ジェーンちゃん、イメチェンでもした?」
恐る恐る問いかける上司のエルス・モウザムに、ジェーンは首を傾げて答えた。
「いえ? 別にしておりませんが」
その所作すらゆっくりとしていてたおやかで、気品がある。きびきびしているがうさんくさい普段の彼女とは違う。
しかし、これは後の混乱に続く序章に過ぎないのだった。
●男の娘ジェーン・ドゥ
次の日ハンターズソサエティに出勤してきたジェーン・ドゥも普段とは違い、しかも昨日とはまた違う意味で変わっていた。
「どうしたの? ボクの顔に何かついてる?」
第一に若過ぎる。しかも一人称が違う。ボクっ娘になっているうえ、上司であるエルス・モウザムにタメ口を使う。注意しても「ゴメーン☆ てへぺろ」みたいな感じで流されてしまう。
曰く本人らしいが、とても信じられない。
しかし一緒に仕事をする職員からは、「普段の彼女よりはよほどマシ」という評価だった。何でも普段のジェーンはうさんくさすぎて何を考えているのか分からない危険人物にしか見えなかったらしい。
今は良くも悪くも裏表がないので、安心できるようだ。
「トイレ行ってきまーす☆」
ジェーンはそう一緒に仕事をする受付嬢たちに声をかけると、当たり前のように男子トイレに入っていった。
硬直している受付嬢たちに変わり、慌てて上司のエルスが追いかけ、トイレのドアを開ける。
「ちょ、ジェーンちゃん! こっち男子トイレだから! 間違ってるよ!」
「やだなぁ、ボク、男の子ですよ?」
「え?」
小便器で用を足していたジェーンを見て、エルスは固まった。
エルスが見たもの、その正体は。
ぱおーん。
この擬音で全て察していただきたい。
●既婚者ジェーン・ドゥ
ジェーン・ドゥ実は男の娘説が流れて震撼したハンターズソサエティだったが、また次の日になるといつものジェーンに戻っていた。
きちんと女子トイレに入っていったし、受付嬢たちが強引に乗り込むと、怪訝な顔をしていたがきちんと女であることも確認できた。
うさんくさい性格は相変わらずなものの、元に戻っていたので安心したハンターズソサエティの職員たちだったが、彼らは見落としていた。
普段通りのように見えるジェーンが、普段の彼女なら絶対に嵌めていない、結婚指輪を薬指に嵌めていたことに。
「ああ、ハニー! 待ちきれなくて来てしまったよ!」
「あら、ダーリン! 迎えに来てくれたの!? 大好きよ!」
突然ハンターズソサエティに入ってきた男にジェーンが走って行って熱い抱擁と口づけを交わしたことに、受付嬢たちが卒倒した。
「え……。ジェ、ジェーンちゃん、それ、誰?」
エルス・モウザルの動揺は、男をそれ扱いすることから察していただきたい。
「誰って、私の夫ですが?」
「君結婚してたの!?」
仰天するエルスだったが、まだまだ甘かった。
その後ジェーンの終業時間まで男は居座り、その間エルスたちは甘々ラブラブな二人を延々見せつけられる羽目になったのだから。
●なんだこれは
心配になったエルス・モウザルが終業後ジェーンの様子を見にジェーン宅へ行ってみると、三人のジェーンに出迎えられた。
「これは一体どういうことですか!?」
「何で二人もボクがいるの!? しかも女だし!」
「私とダーリンの愛の巣が影も形もなくなってるんですけど!? ローン組んだばかりなのに!」
「ああ、ハニーがこんなにたくさん、ここは桃源郷か……!」
「ち、近寄らないでください!」
「キモい! あっち行け!」
「同じ私とはいえ他の女に色目使ってるんじゃないわよダーリンの馬鹿!」
何だか三人のジェーンに幸せそうな笑顔で袋叩きにされている男の姿がちらっと見えた気もするエルスだったが、それどころではないので彼は見なかったことにした。
「状況を説明してくれないかね!?」
「それは私の台詞です!」
「ボクの方が聞きたいよ!」
「私は三人いるのに、どうしてダーリンが三人じゃないの!?」
本人にそのつもりがあったかどうかはともかく、ボケた三人目のジェーンは他のジェーン二人にダブルヤクザキックをくらった。
「ちょっと君は黙っててくれるかな」
エルスも若干イラっとした様子で窘め、事態の収拾方法を考えた。
目の前では全く同じ顔のジェーンが三人、それぞれ別々の雰囲気を纏って言い争いをしている。
「うん、とりあえず依頼を出そう」
当然思い浮かぶはずもなく、何だか頭が痛くなってきて、思考を放棄したエルスは全部ハンターに丸投げすることにした。
ハンターズソサエティでは、本日も受付嬢たちが来客を捌き、依頼の受付や応対を行っている。
その受付嬢の一人であるジェーン・ドゥは、てきぱきと仕事をこなすがうさんくさい性格で、一部の界隈では有名な女性だ。
しかし、今日の彼女は何かがが違った。
「いらっしゃいませ。ハンターズソサエティへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか」
たおやかな物腰で、ジェーンが客の応対をしている。
「ご依頼ですね? こちらのカウンターで、必要事項を記入して書類を提出してくださいませ」
普段の彼女であればうさんくささが物腰にどうしても滲み出ているものだが、こうして働いている彼女は何というか、違う。
全体的に若々しいというか、まるで箱入りお嬢様のような、のんびりした雰囲気が漂っている。
「えっと、その、ジェーンちゃん、イメチェンでもした?」
恐る恐る問いかける上司のエルス・モウザムに、ジェーンは首を傾げて答えた。
「いえ? 別にしておりませんが」
その所作すらゆっくりとしていてたおやかで、気品がある。きびきびしているがうさんくさい普段の彼女とは違う。
しかし、これは後の混乱に続く序章に過ぎないのだった。
●男の娘ジェーン・ドゥ
次の日ハンターズソサエティに出勤してきたジェーン・ドゥも普段とは違い、しかも昨日とはまた違う意味で変わっていた。
「どうしたの? ボクの顔に何かついてる?」
第一に若過ぎる。しかも一人称が違う。ボクっ娘になっているうえ、上司であるエルス・モウザムにタメ口を使う。注意しても「ゴメーン☆ てへぺろ」みたいな感じで流されてしまう。
曰く本人らしいが、とても信じられない。
しかし一緒に仕事をする職員からは、「普段の彼女よりはよほどマシ」という評価だった。何でも普段のジェーンはうさんくさすぎて何を考えているのか分からない危険人物にしか見えなかったらしい。
今は良くも悪くも裏表がないので、安心できるようだ。
「トイレ行ってきまーす☆」
ジェーンはそう一緒に仕事をする受付嬢たちに声をかけると、当たり前のように男子トイレに入っていった。
硬直している受付嬢たちに変わり、慌てて上司のエルスが追いかけ、トイレのドアを開ける。
「ちょ、ジェーンちゃん! こっち男子トイレだから! 間違ってるよ!」
「やだなぁ、ボク、男の子ですよ?」
「え?」
小便器で用を足していたジェーンを見て、エルスは固まった。
エルスが見たもの、その正体は。
ぱおーん。
この擬音で全て察していただきたい。
●既婚者ジェーン・ドゥ
ジェーン・ドゥ実は男の娘説が流れて震撼したハンターズソサエティだったが、また次の日になるといつものジェーンに戻っていた。
きちんと女子トイレに入っていったし、受付嬢たちが強引に乗り込むと、怪訝な顔をしていたがきちんと女であることも確認できた。
うさんくさい性格は相変わらずなものの、元に戻っていたので安心したハンターズソサエティの職員たちだったが、彼らは見落としていた。
普段通りのように見えるジェーンが、普段の彼女なら絶対に嵌めていない、結婚指輪を薬指に嵌めていたことに。
「ああ、ハニー! 待ちきれなくて来てしまったよ!」
「あら、ダーリン! 迎えに来てくれたの!? 大好きよ!」
突然ハンターズソサエティに入ってきた男にジェーンが走って行って熱い抱擁と口づけを交わしたことに、受付嬢たちが卒倒した。
「え……。ジェ、ジェーンちゃん、それ、誰?」
エルス・モウザルの動揺は、男をそれ扱いすることから察していただきたい。
「誰って、私の夫ですが?」
「君結婚してたの!?」
仰天するエルスだったが、まだまだ甘かった。
その後ジェーンの終業時間まで男は居座り、その間エルスたちは甘々ラブラブな二人を延々見せつけられる羽目になったのだから。
●なんだこれは
心配になったエルス・モウザルが終業後ジェーンの様子を見にジェーン宅へ行ってみると、三人のジェーンに出迎えられた。
「これは一体どういうことですか!?」
「何で二人もボクがいるの!? しかも女だし!」
「私とダーリンの愛の巣が影も形もなくなってるんですけど!? ローン組んだばかりなのに!」
「ああ、ハニーがこんなにたくさん、ここは桃源郷か……!」
「ち、近寄らないでください!」
「キモい! あっち行け!」
「同じ私とはいえ他の女に色目使ってるんじゃないわよダーリンの馬鹿!」
何だか三人のジェーンに幸せそうな笑顔で袋叩きにされている男の姿がちらっと見えた気もするエルスだったが、それどころではないので彼は見なかったことにした。
「状況を説明してくれないかね!?」
「それは私の台詞です!」
「ボクの方が聞きたいよ!」
「私は三人いるのに、どうしてダーリンが三人じゃないの!?」
本人にそのつもりがあったかどうかはともかく、ボケた三人目のジェーンは他のジェーン二人にダブルヤクザキックをくらった。
「ちょっと君は黙っててくれるかな」
エルスも若干イラっとした様子で窘め、事態の収拾方法を考えた。
目の前では全く同じ顔のジェーンが三人、それぞれ別々の雰囲気を纏って言い争いをしている。
「うん、とりあえず依頼を出そう」
当然思い浮かぶはずもなく、何だか頭が痛くなってきて、思考を放棄したエルスは全部ハンターに丸投げすることにした。
リプレイ本文
●なにこれ
何故か三人に増えていたジェーン・ドゥを見て、夢路 まよい(ka1328)は考え込んでいた。
(ジェーンがいっぱい? この中に……本物は1人で、あとは偽物ってこと!?)
ちらりとジェーンの夫を名乗る人物と、ジェーンのうちの一人を見る。
「既婚者ジェーンが本物? いや、そもそも全員があなたのハニー?」
視線の先では自称夫が勝手に「その通りさ!」と答えジェーンたち三人に足蹴にされている。
(……ジェーンさんが増えました!? なんですか、これ!? さては……分身の術!? ということは、ジェーンさんは実はニンジャだった……ナンデ!?)
目の前の光景に混乱していた青峰 らずり(ka3616)は我に返る。
「様々な忍法を使いこなすという忍者、それも女性の……くノ一! 魔法少女としては、負けてはいられません!」
「いやお前ら私の知らない女なのだが……」
レイア・アローネ(ka4082)は頭を抱えている。
「え!? いつも依頼受けてくれていますよね……? ジェーンですよ?」
「知らない振りするなんて水臭いなぁ! ジェーンだよ!」
「毎度お世話になっております。ジェーンでございます」
ジェーンたちがレイアへ詰め寄る。
「そうかジェーンか……。どういうことだ!?」
(ここのオフィスに来るのも久しぶりだな。なんか個性的な受付嬢がいた、確かジェーンとかいう……。おお、いたいた彼女……だ……?」
ハンターズソサエティにやってきたエメラルド・シルフィユ(ka4678)が見たのは、何故か三人に増えているジェーン・ドゥの姿だった。
しかも、一人一人微妙に姿が違い、個性が出ている。
「それじゃあ、今日一日よろしく頼むよ。申し訳ないけど、僕もう限界で……」
頭に十円ハゲができたエルス・モウザルが死んだ目で四人に三人のジェーン・ドゥを託した。
さあ、依頼の始まりだ!
●三人のジェーン
「よし、ここは本物のジェーンにしか分からないはずの質問をして、答えられるか確かめてみよう!」
「待てまよい、これ以上事態をややこしくするな!」
レイアの制止を他所に、まよいは三人のジェーンに近寄っていく。
「これまでジェーンが依頼にかこつけて食べてきた食べ物を答えて!」
「直近では秋刀魚でしょうか。その節はお世話になりました」
「えっとね、秋刀魚と芋二つ……種類までは忘れちゃった! でも依頼の記録を調べれば分かるよ!」
「秋刀魚とサツマイモと、あとダーリン……♪」
正解でも度合いが違うし、約一名脳内ピンク色になっていそうなジェーンがいるものの、概ね合っている。
笑顔を浮かべるまよいの頭上に疑問符が飛び交った。
(全員間違っているわけじゃないけど、正解とするにも微妙だね。一人だけ正解で他が間違ったなら、正解の人が本物……と思ってたけど、これはどういうことなのかな)
とりあえず考えていても仕方ないので、全員受付に座っていてもらうことにした。
仕事をする手が三人になるので、三倍の仕事量をこなせる。斡旋の頻度も三倍になるだろうから依頼の消化も捗るだろう。
しかし、このジェーンたちは全員性格が違い、完全な正解ともいえないため本物と断言できない。
「……あれ、本物、いない?」
その可能性に思い至ってしまったまよいはジェーンを探すあてのない旅に出ることにした。
(分身したうえに、そのうちの性別まで変えてしまうなんて……なんて恐ろしい術の使い手でしょうか!)
慄いたらずりは、一人ずつ確かめることにした。
「ここは失礼して、ボディチェックをば……ダメですか?」
「別にいいけど……どうしたのさ?」
ボディチェックをした結果、どうみてもボーイッシュな少女にしか見えないこのジェーンは男の子であることが判明した。
次は人妻ジェーンである。
(どうやったら忍法で旦那さんの存在まで生み出せるのでしょう!? その術、ちょっと私にも教えて……いえ、ダメです!)
顔を赤らめたらずりが悶々している間に、他のジェーンに粉をかけた自称夫が妻のジェーンに笑顔でボディブローをくらっていた。
三人目のジェーンが心配そうにらずりへ近寄る。
「あの……大丈夫ですか? 気分が悪いなら、休憩室を貸しましょうか?」
最後の一人は性格が良すぎて神々しかった。
(あのようなジェーンさんから、このように清らかな方は、どのような術を持ってしても生み出せるはずがありません!」
「貴女はジェーンさんの影武者か何か、そうなのでしょう? 私の目は誤魔化せませんよ!)
「影武者も何も、私がジェーンのはずなのですが……」
淑女ジェーンは泣きそうになっている。
「で、本物はどこだ?」
レイアの問いに、ジェーン三人は一斉に答えた。
「私だと思うのですが……」
「ボクだよ!」
「私です」
これでは答えになっていない。
「……すまなかった、そうだな、人を捕まえて偽物呼ばわりは良くない。そもそも別に実害があるわけでもないならこれでいいのか……?」
さすがのレイアも頭を抱えている。
最初に口を開いたのは心配そうな表情の淑女ジェーンだった。
「もし具合が悪くなったら、休憩室をお貸しいたしますので休んでください。これで多少の恩返しになればいいのですが」
「……調子が狂うくらい善人だな。うん、むしろこのままでいいのかもしれん」
そして、レイアの目は男の娘ジェーンに移る。
「ボクたちも困ってるんだよねー。なんか知らないうちに自分が増えてるし。しかもそれが女だなんてねー」
(なんかこれは認めると大事な一線を越えてしまいそうな……。友人の身体がこんな……受け入れていいものか……?)
悩むレイアの目に、夫と抱き合う人妻ジェーンの姿が目に入る。
(違和感しかないが……これはこれで幸せなのだろうか)
しかし、レイアは自称夫に対してこれだけはツッコミを入れておかねばならなかった。
「お前は誰なんだ。少しは状況を心配しろ!」
当然の疑問である。
ジェーンは静かに仕事をしている。
無駄口を叩かず、真面目に、穏やかな態度で。
その姿は控えめにいっても淑女で相違なかった。
そんな彼女が受付カウンターを出て別の部屋に行くのをエメラルドは見送る。
(こんな感じだったか……? 思ったより真面目でおとなしいというか……)
違和感と言い切るには、エメラルドがジェーンに会うには久しぶり過ぎた。
直後に男子トイレからジェーンが出てくる。
「はー。寒くなってくるとすぐしたくなっちゃうから困るよ。……ん? どうしたの?」
「……男子トイレから出てきたような気がするが、きっと見間違いだな」
現実逃避気味なエメラルドに、ジェーンはきょとんとした表情で現実を突きつけた。
「ボク男だもん。別に見間違いじゃないよ」
「……わ、訳が分からない。少し失礼する!」
混乱したエメラルドは、トイレに駆け込む。
当然女子トイレである。
中にジェーンがいた。
「うわっ! ここ女子トイレだぞ!?」
「……何をいっているんですか? 女なんですから女子トイレを使うのは当たり前ですよ」
「え? 女? だってさっき……」
「まったくダーリンにも困ったものです。同じ私とはいえ、他の女にまで色目を使うなんて……」
「だ、ダーリン……?」
エメラルドは頭を抱えた。
●まどろみ
目が覚めた。
どうやら夢を見ていたようだ。
ジェーン・ドゥという女性が三人に増殖するという変な夢だった。
ハンターズソサエティではジェーン・ドゥがいつもの様子で働いている。
エルス・モウザルの頭にも十円ハゲはない。
まよいは旅に出ていないし、らずりがジェーンにボディチェックをした事実もない。
レイアがジェーンの夫に詰問した事実は夫の存在ごと消えていた。
エメラルドはそもそもジェーンと再会していない。
全ては夢の中の出来事である。
何故か三人に増えていたジェーン・ドゥを見て、夢路 まよい(ka1328)は考え込んでいた。
(ジェーンがいっぱい? この中に……本物は1人で、あとは偽物ってこと!?)
ちらりとジェーンの夫を名乗る人物と、ジェーンのうちの一人を見る。
「既婚者ジェーンが本物? いや、そもそも全員があなたのハニー?」
視線の先では自称夫が勝手に「その通りさ!」と答えジェーンたち三人に足蹴にされている。
(……ジェーンさんが増えました!? なんですか、これ!? さては……分身の術!? ということは、ジェーンさんは実はニンジャだった……ナンデ!?)
目の前の光景に混乱していた青峰 らずり(ka3616)は我に返る。
「様々な忍法を使いこなすという忍者、それも女性の……くノ一! 魔法少女としては、負けてはいられません!」
「いやお前ら私の知らない女なのだが……」
レイア・アローネ(ka4082)は頭を抱えている。
「え!? いつも依頼受けてくれていますよね……? ジェーンですよ?」
「知らない振りするなんて水臭いなぁ! ジェーンだよ!」
「毎度お世話になっております。ジェーンでございます」
ジェーンたちがレイアへ詰め寄る。
「そうかジェーンか……。どういうことだ!?」
(ここのオフィスに来るのも久しぶりだな。なんか個性的な受付嬢がいた、確かジェーンとかいう……。おお、いたいた彼女……だ……?」
ハンターズソサエティにやってきたエメラルド・シルフィユ(ka4678)が見たのは、何故か三人に増えているジェーン・ドゥの姿だった。
しかも、一人一人微妙に姿が違い、個性が出ている。
「それじゃあ、今日一日よろしく頼むよ。申し訳ないけど、僕もう限界で……」
頭に十円ハゲができたエルス・モウザルが死んだ目で四人に三人のジェーン・ドゥを託した。
さあ、依頼の始まりだ!
●三人のジェーン
「よし、ここは本物のジェーンにしか分からないはずの質問をして、答えられるか確かめてみよう!」
「待てまよい、これ以上事態をややこしくするな!」
レイアの制止を他所に、まよいは三人のジェーンに近寄っていく。
「これまでジェーンが依頼にかこつけて食べてきた食べ物を答えて!」
「直近では秋刀魚でしょうか。その節はお世話になりました」
「えっとね、秋刀魚と芋二つ……種類までは忘れちゃった! でも依頼の記録を調べれば分かるよ!」
「秋刀魚とサツマイモと、あとダーリン……♪」
正解でも度合いが違うし、約一名脳内ピンク色になっていそうなジェーンがいるものの、概ね合っている。
笑顔を浮かべるまよいの頭上に疑問符が飛び交った。
(全員間違っているわけじゃないけど、正解とするにも微妙だね。一人だけ正解で他が間違ったなら、正解の人が本物……と思ってたけど、これはどういうことなのかな)
とりあえず考えていても仕方ないので、全員受付に座っていてもらうことにした。
仕事をする手が三人になるので、三倍の仕事量をこなせる。斡旋の頻度も三倍になるだろうから依頼の消化も捗るだろう。
しかし、このジェーンたちは全員性格が違い、完全な正解ともいえないため本物と断言できない。
「……あれ、本物、いない?」
その可能性に思い至ってしまったまよいはジェーンを探すあてのない旅に出ることにした。
(分身したうえに、そのうちの性別まで変えてしまうなんて……なんて恐ろしい術の使い手でしょうか!)
慄いたらずりは、一人ずつ確かめることにした。
「ここは失礼して、ボディチェックをば……ダメですか?」
「別にいいけど……どうしたのさ?」
ボディチェックをした結果、どうみてもボーイッシュな少女にしか見えないこのジェーンは男の子であることが判明した。
次は人妻ジェーンである。
(どうやったら忍法で旦那さんの存在まで生み出せるのでしょう!? その術、ちょっと私にも教えて……いえ、ダメです!)
顔を赤らめたらずりが悶々している間に、他のジェーンに粉をかけた自称夫が妻のジェーンに笑顔でボディブローをくらっていた。
三人目のジェーンが心配そうにらずりへ近寄る。
「あの……大丈夫ですか? 気分が悪いなら、休憩室を貸しましょうか?」
最後の一人は性格が良すぎて神々しかった。
(あのようなジェーンさんから、このように清らかな方は、どのような術を持ってしても生み出せるはずがありません!」
「貴女はジェーンさんの影武者か何か、そうなのでしょう? 私の目は誤魔化せませんよ!)
「影武者も何も、私がジェーンのはずなのですが……」
淑女ジェーンは泣きそうになっている。
「で、本物はどこだ?」
レイアの問いに、ジェーン三人は一斉に答えた。
「私だと思うのですが……」
「ボクだよ!」
「私です」
これでは答えになっていない。
「……すまなかった、そうだな、人を捕まえて偽物呼ばわりは良くない。そもそも別に実害があるわけでもないならこれでいいのか……?」
さすがのレイアも頭を抱えている。
最初に口を開いたのは心配そうな表情の淑女ジェーンだった。
「もし具合が悪くなったら、休憩室をお貸しいたしますので休んでください。これで多少の恩返しになればいいのですが」
「……調子が狂うくらい善人だな。うん、むしろこのままでいいのかもしれん」
そして、レイアの目は男の娘ジェーンに移る。
「ボクたちも困ってるんだよねー。なんか知らないうちに自分が増えてるし。しかもそれが女だなんてねー」
(なんかこれは認めると大事な一線を越えてしまいそうな……。友人の身体がこんな……受け入れていいものか……?)
悩むレイアの目に、夫と抱き合う人妻ジェーンの姿が目に入る。
(違和感しかないが……これはこれで幸せなのだろうか)
しかし、レイアは自称夫に対してこれだけはツッコミを入れておかねばならなかった。
「お前は誰なんだ。少しは状況を心配しろ!」
当然の疑問である。
ジェーンは静かに仕事をしている。
無駄口を叩かず、真面目に、穏やかな態度で。
その姿は控えめにいっても淑女で相違なかった。
そんな彼女が受付カウンターを出て別の部屋に行くのをエメラルドは見送る。
(こんな感じだったか……? 思ったより真面目でおとなしいというか……)
違和感と言い切るには、エメラルドがジェーンに会うには久しぶり過ぎた。
直後に男子トイレからジェーンが出てくる。
「はー。寒くなってくるとすぐしたくなっちゃうから困るよ。……ん? どうしたの?」
「……男子トイレから出てきたような気がするが、きっと見間違いだな」
現実逃避気味なエメラルドに、ジェーンはきょとんとした表情で現実を突きつけた。
「ボク男だもん。別に見間違いじゃないよ」
「……わ、訳が分からない。少し失礼する!」
混乱したエメラルドは、トイレに駆け込む。
当然女子トイレである。
中にジェーンがいた。
「うわっ! ここ女子トイレだぞ!?」
「……何をいっているんですか? 女なんですから女子トイレを使うのは当たり前ですよ」
「え? 女? だってさっき……」
「まったくダーリンにも困ったものです。同じ私とはいえ、他の女にまで色目を使うなんて……」
「だ、ダーリン……?」
エメラルドは頭を抱えた。
●まどろみ
目が覚めた。
どうやら夢を見ていたようだ。
ジェーン・ドゥという女性が三人に増殖するという変な夢だった。
ハンターズソサエティではジェーン・ドゥがいつもの様子で働いている。
エルス・モウザルの頭にも十円ハゲはない。
まよいは旅に出ていないし、らずりがジェーンにボディチェックをした事実もない。
レイアがジェーンの夫に詰問した事実は夫の存在ごと消えていた。
エメラルドはそもそもジェーンと再会していない。
全ては夢の中の出来事である。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
ジェーン・ドゥがいっぱい レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/10/31 08:43:48 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/10/31 07:46:15 |