ゲスト
(ka0000)
【HW】その特別な一枚を!
マスター:石田まきば
このシナリオは5日間納期が延長されています。
オープニング
●倉庫
『もうすぐ一般開場時間となりますーぅ、皆さん、最終チェックをお願いしますねーぇ?』
のんびりとした声がスピーカーから聞こえる。放送部のオトリはその間延びした声が癒されると評判だ。微笑みにも慈愛が溢れ素敵なお姉様だとか。
「皆騙されてると思うんっすけどねえ」
あの微笑みは頭ん中策謀巡らしてる顔だと思うレオ。同じく放送部で下っ端一年生の彼は暗幕等の在庫チェックをしていた。緊急で必要なときに手配しやすいようにだ。
「ひのふのみ……サイズも数もおっけーっすね」
一覧表に記入して仕事を終える。振り向くと同じクラスのフクカンがなぜか深呼吸をしていた。
カメラを首から下げているのだが、なぜ倉庫に?
「……もう少ししたら体育倉庫、もしくはここへ時間つぶしに現れるはず、そこで転ばずに近付いて、出来るだけ爽やかに挨拶してうまくすれば文化祭の記念に一枚……ツーショット、とか……ぐふ、ぐふふ……おねえさまあ……(はぁと)」
(あっこれやばいやつっす。ストーカーっぽいっす)
聞こえてしまったけどどうしよう、注意するとか実行委員の居る本部に何か言っておくべきだろうか。
「ああっ! でも恥ずかしくて声を掛けられる気がしません……! いつになったら近くに行けるようになるんでしょうかっ! 天の神様はどうしてこんな試練を与えるのですかっ」
真っ赤な顔を両手で覆ってイヤイヤするフクカン。
それを背にレオは倉庫を出て行った。事件性はなさそうだったし、相手にするのもメンドそうだったので。
●生徒会室
「ユレイテルはエクゼント会長と一緒に体育館側から、デリアはエーリカ副会長と一緒に特別教室側から回ってくれ。報告をうけたり皆に伝えるのは私がやっておく」
無線機を渡しながら伝えるテオバルトに、メンバー四人が頷く。
「「わかった」」「「わかりました!」」
そうして四人を見送った後、自分用の席で猛然と書類を確認しようとして……ガラッと豪快にドアが開いた。
「お前それ、文化祭のやつじゃねぇんだろ?」
「モーリッツ、せめてノックくらいしてください」
これも立派に仕事ですよ。生徒会も引き継ぎの時期ですからと書類から目を離さないテオバルト。会計の鏡である。
「まあ聞けよ。……クソ真面目なお仕事人間に体育会総長から報告だ。科学部のリハーサル実験で小規模とはいえ爆発が起きた」
バンッ! ガタッ!
「またジークリットですかあの実験馬鹿!」
従妹とはいえ今度こそ締め上げる。鬼気迫る顔で生徒会室を出て行こうとするテオバルトをモーリッツが宥める。
「まあ俺がのんびり報告できてるんだから察しろよ。うちで手の空いてる後輩が消火済みだし教師の方にも連絡はいってる。問題の実験は中止して他の発表や安全な実験で科学部の参加は問題ないそうだ」
「……備品は大丈夫ですか」
「本人の持ち寄りばっかり壊れたそうだぜ、幸運なことに。いつもどおり当人以外の怪我人もゼロ」
面白いなあの娘。くつくつ笑うモーリッツに溜息しか出ないテオバルト。
「ところで、文化会の総長はどうしたんです。本来ならそちらから報告が上がるべきでしょう」
「カミラなら調理部でジャーマンポテト作りまくってるから動いてねぇな」
「……彼女は……」
「まーあそこは補佐役の後輩が舎弟の如く働くからなー、問題でてねぇだろ?」
「そうですけど」
深呼吸をしてから座り直すテオバルト。
「被害報告の詳細は」
「大丈夫だって、ちゃんと出すよう言っといてある」
●特別教室等
「ああ、やっぱりいいですね、この匂い、この手触り」
階下の科学室での爆発音も気づかず。受付カウンターで読書を続けるパウラ。文化祭当日も図書室として開放されているので、図書委員として当番を買って出たのである。
とはいえ様々な出し物に客が集まるので、図書室は静かに過ごしたい人くらいしか現れず、普段とあまり変わらない。いつも通り本を愛でることに没頭する。
「もうすぐ元の通りに戻してあげますからねー……♪」
ただの本の補修なのだが、音符が周囲を飛び交うくらいご機嫌なようだった。
知らせを受けたイサークは、調理室での補佐から離れてジークリットを保健室に運んでいた。
「また貴女ですの、ジークリットさん」
出迎えた保健委員のフュネが苦笑しながら手慣れた様子で消毒液を取り出している。
「成功したら一躍注目を浴びる予定だったんですよー、折角の文化祭ですよ! 人気出したいじゃないですかー!」
「それで怪我したら無意味だと思いますの……」
横で待っているだけのイサークは気もそぞろだ。彼ははやくジャーマンポテトの試食に戻りたい。オリーブオイルと塩胡椒で味付けるだけとはいえ、使うウインナーが多様なのだ。チョリソーは絶対美味しい。チーズ入りもいいと思う。サルサたっぷりのやつはさっぱりしているとカミラ部長が言っていた。もう辛抱たまらない。普段は家で父親の晩酌に付き合いおつまみを頂戴しているイサークにとってどう見てもおつまみメニューなジャーマンポテトはものすごく美味しい御馳走だった。そっと口元を拭う。あぶない、よだれが……
「あっ、お二人もうちの調理部に食べに来てくださいね」
誤魔化すように言えば、丁度手当てが終わったらしい女子二人が首を傾げる。
「男性向けのメニューだとお伺いしておりますわ」
「そうそう、体育会系御用達って感じでしたー」
例年ジャーマンポテトを出すのが調理部の伝統だと、何故か全校生徒が知っている。
「メインはそうですけど、実は今年、デザート向けにスイートポテトも用意してあるんですよ」
チョコやマシュマロを入れた奴は数量限定なのでお早めに。そう言えば友人も誘うと即座に返された。
●体育館
「さっさと解放するべきなのである」
出し物に参加していない生徒も出欠をとらなければならない。そのため彼等は体育館に集められていた。
早めの時間に集まり、出欠をとる。そしてパイプ椅子を並べ終わるまでが拘束時間だ。終われば帰宅も良し、文化祭を楽しんでも良しと自由だ。
「我はそもそも高校など行かぬと言っていたというのに……」
ブツブツ文句を垂れながらも椅子を並べるヴォールに、くすくす笑うのはシャイネ。
「まあ仕方ないんじゃないかな兄さん」
そうでもしないと家から出ないだろう? 父さんも母さんも心配なんだと思うよ。
「生活資金くらい家から出ずとも稼げるのである」
「それを言っちゃあおしまいだよ? そうだ兄さん、たまには僕の方も手伝ってみない?」
「バイト代を要求するのである」
「えぇー……今日のお昼、兄さんが好きなの選んで。ただし文化祭で出してるやつの中からね♪」
「午後は帰るのである」
「じゃあおやつも」
「りんごのソルベクレープであれば考えてもいいのである」
「それ駅前の人気店だよね? それは後日でどうかな♪」
「仕方ないので今日は芋で我慢してもいいのである」
「ふふ、人手確保♪」
『もうすぐ一般開場時間となりますーぅ、皆さん、最終チェックをお願いしますねーぇ?』
のんびりとした声がスピーカーから聞こえる。放送部のオトリはその間延びした声が癒されると評判だ。微笑みにも慈愛が溢れ素敵なお姉様だとか。
「皆騙されてると思うんっすけどねえ」
あの微笑みは頭ん中策謀巡らしてる顔だと思うレオ。同じく放送部で下っ端一年生の彼は暗幕等の在庫チェックをしていた。緊急で必要なときに手配しやすいようにだ。
「ひのふのみ……サイズも数もおっけーっすね」
一覧表に記入して仕事を終える。振り向くと同じクラスのフクカンがなぜか深呼吸をしていた。
カメラを首から下げているのだが、なぜ倉庫に?
「……もう少ししたら体育倉庫、もしくはここへ時間つぶしに現れるはず、そこで転ばずに近付いて、出来るだけ爽やかに挨拶してうまくすれば文化祭の記念に一枚……ツーショット、とか……ぐふ、ぐふふ……おねえさまあ……(はぁと)」
(あっこれやばいやつっす。ストーカーっぽいっす)
聞こえてしまったけどどうしよう、注意するとか実行委員の居る本部に何か言っておくべきだろうか。
「ああっ! でも恥ずかしくて声を掛けられる気がしません……! いつになったら近くに行けるようになるんでしょうかっ! 天の神様はどうしてこんな試練を与えるのですかっ」
真っ赤な顔を両手で覆ってイヤイヤするフクカン。
それを背にレオは倉庫を出て行った。事件性はなさそうだったし、相手にするのもメンドそうだったので。
●生徒会室
「ユレイテルはエクゼント会長と一緒に体育館側から、デリアはエーリカ副会長と一緒に特別教室側から回ってくれ。報告をうけたり皆に伝えるのは私がやっておく」
無線機を渡しながら伝えるテオバルトに、メンバー四人が頷く。
「「わかった」」「「わかりました!」」
そうして四人を見送った後、自分用の席で猛然と書類を確認しようとして……ガラッと豪快にドアが開いた。
「お前それ、文化祭のやつじゃねぇんだろ?」
「モーリッツ、せめてノックくらいしてください」
これも立派に仕事ですよ。生徒会も引き継ぎの時期ですからと書類から目を離さないテオバルト。会計の鏡である。
「まあ聞けよ。……クソ真面目なお仕事人間に体育会総長から報告だ。科学部のリハーサル実験で小規模とはいえ爆発が起きた」
バンッ! ガタッ!
「またジークリットですかあの実験馬鹿!」
従妹とはいえ今度こそ締め上げる。鬼気迫る顔で生徒会室を出て行こうとするテオバルトをモーリッツが宥める。
「まあ俺がのんびり報告できてるんだから察しろよ。うちで手の空いてる後輩が消火済みだし教師の方にも連絡はいってる。問題の実験は中止して他の発表や安全な実験で科学部の参加は問題ないそうだ」
「……備品は大丈夫ですか」
「本人の持ち寄りばっかり壊れたそうだぜ、幸運なことに。いつもどおり当人以外の怪我人もゼロ」
面白いなあの娘。くつくつ笑うモーリッツに溜息しか出ないテオバルト。
「ところで、文化会の総長はどうしたんです。本来ならそちらから報告が上がるべきでしょう」
「カミラなら調理部でジャーマンポテト作りまくってるから動いてねぇな」
「……彼女は……」
「まーあそこは補佐役の後輩が舎弟の如く働くからなー、問題でてねぇだろ?」
「そうですけど」
深呼吸をしてから座り直すテオバルト。
「被害報告の詳細は」
「大丈夫だって、ちゃんと出すよう言っといてある」
●特別教室等
「ああ、やっぱりいいですね、この匂い、この手触り」
階下の科学室での爆発音も気づかず。受付カウンターで読書を続けるパウラ。文化祭当日も図書室として開放されているので、図書委員として当番を買って出たのである。
とはいえ様々な出し物に客が集まるので、図書室は静かに過ごしたい人くらいしか現れず、普段とあまり変わらない。いつも通り本を愛でることに没頭する。
「もうすぐ元の通りに戻してあげますからねー……♪」
ただの本の補修なのだが、音符が周囲を飛び交うくらいご機嫌なようだった。
知らせを受けたイサークは、調理室での補佐から離れてジークリットを保健室に運んでいた。
「また貴女ですの、ジークリットさん」
出迎えた保健委員のフュネが苦笑しながら手慣れた様子で消毒液を取り出している。
「成功したら一躍注目を浴びる予定だったんですよー、折角の文化祭ですよ! 人気出したいじゃないですかー!」
「それで怪我したら無意味だと思いますの……」
横で待っているだけのイサークは気もそぞろだ。彼ははやくジャーマンポテトの試食に戻りたい。オリーブオイルと塩胡椒で味付けるだけとはいえ、使うウインナーが多様なのだ。チョリソーは絶対美味しい。チーズ入りもいいと思う。サルサたっぷりのやつはさっぱりしているとカミラ部長が言っていた。もう辛抱たまらない。普段は家で父親の晩酌に付き合いおつまみを頂戴しているイサークにとってどう見てもおつまみメニューなジャーマンポテトはものすごく美味しい御馳走だった。そっと口元を拭う。あぶない、よだれが……
「あっ、お二人もうちの調理部に食べに来てくださいね」
誤魔化すように言えば、丁度手当てが終わったらしい女子二人が首を傾げる。
「男性向けのメニューだとお伺いしておりますわ」
「そうそう、体育会系御用達って感じでしたー」
例年ジャーマンポテトを出すのが調理部の伝統だと、何故か全校生徒が知っている。
「メインはそうですけど、実は今年、デザート向けにスイートポテトも用意してあるんですよ」
チョコやマシュマロを入れた奴は数量限定なのでお早めに。そう言えば友人も誘うと即座に返された。
●体育館
「さっさと解放するべきなのである」
出し物に参加していない生徒も出欠をとらなければならない。そのため彼等は体育館に集められていた。
早めの時間に集まり、出欠をとる。そしてパイプ椅子を並べ終わるまでが拘束時間だ。終われば帰宅も良し、文化祭を楽しんでも良しと自由だ。
「我はそもそも高校など行かぬと言っていたというのに……」
ブツブツ文句を垂れながらも椅子を並べるヴォールに、くすくす笑うのはシャイネ。
「まあ仕方ないんじゃないかな兄さん」
そうでもしないと家から出ないだろう? 父さんも母さんも心配なんだと思うよ。
「生活資金くらい家から出ずとも稼げるのである」
「それを言っちゃあおしまいだよ? そうだ兄さん、たまには僕の方も手伝ってみない?」
「バイト代を要求するのである」
「えぇー……今日のお昼、兄さんが好きなの選んで。ただし文化祭で出してるやつの中からね♪」
「午後は帰るのである」
「じゃあおやつも」
「りんごのソルベクレープであれば考えてもいいのである」
「それ駅前の人気店だよね? それは後日でどうかな♪」
「仕方ないので今日は芋で我慢してもいいのである」
「ふふ、人手確保♪」
リプレイ本文
●
園芸部で育てた朝摘みのハーブは花束に。そのまま飾って楽しんでも何かに使っても。生けずに吊るして乾かせば、長く楽しむこともできるから。ひとつひとつ丁寧に大きな籠に詰め込んで、支度はバッチリ。
「ご注文のお届けです!」
次にエステル・クレティエ(ka3783)が向かうのはスイーツ部。
「待っていたよ、花売りさん」
笑顔で迎え入れたシャーリーン・クリオール(ka0184)からのお返しは、ワッフルコーンを利用したフルーツブーケ。アーモンドクリームの上に並んだ果物は花のように美しく、ワックスペーパーのラッピングは可愛さは勿論、手元を汚さない気遣いの表れだ。
「ハーブのお礼もあるけど、皆への特別メニューさね」
ナパージュのきらめきがエステルの瞳に反射する。
「シャーリーン、メニュー表ってこれで大丈夫かしら」
奥から確認にやってきた高瀬 未悠(ka3199)が、カフェらしくデコレーションされたカードを持ってくる。
「エステルも一緒に見る?」
『スイーツ部のカフェメニュー』
・菫香るブランマンジェ
口当たりの滑らかさを念頭に置いた至玉の一品。糖衣がけの菫の花弁の香りを一緒に楽しんで。
・果物畑のガレット
綺麗に並べたカットフルーツを、そば粉の生地と一緒に香ばしく焼き上げた一品。優しい甘味が広がります。
・ローストチキンサンド
園芸部のハーブで香りづけした鶏の胸肉を焼き上げ、クロワッサンでサンドイッチ。爽やかなのにジューシィで旨味たっぷり。
・フレッシュハーブティー
・100%生絞りジュース
「助かる、忙しいのに小道具まで悪いな」
「いけない、バンドの準備があるんだった! 失礼します!」
シャーリーンの声で我に返ったのはエステル。人前で演るのだから出来る限り良いものを! そのためにも準備運動は念入りに!
「差し入れのクレープ宜しく♪ っと……これでよし」
廊下に出てから双子の兄へのおねだりメール。スイーツは乙女の心のエネルギーだ。
「流石よね、流行りのカフェレベルよ……」
未悠の脳裏ではオープンカフェでのデートが繰り広げられている。彼からあーん、の一口が……
「未悠?」
「そんな恥ずかしいわ先せ……ッ! 気に入ってもらえてよかったわ。私、着替えてくるわね!」
真っ赤な顔を隠すように控室にかけていく未悠が抱えているのは執事服。
「皆さんこちらに居たのですね。でもなぜ高瀬さんは男装を……?」
ライブの宣伝チラシを刷ってきたユメリア(ka7010)が入れ違いで入ってくる。
「似合うしいいんじゃないか?」
くすりとシャーリーンは笑って、仕込みに戻っていった。
「パウラが羨ましい……私も図書館に帰りたい……」
「そもそも、手伝うと言い出したのは君だろう」
いつもの禁断症状とばかりに呟き始めたエルティア・ホープナー(ka0727)に、シルヴェイラ(ka0726)が溜息を零す。
(図書委員の当番をしないんて、雨が降るのではと思ったが)
窓から空を見上げれば、過ごしやすい陽射しをもたらす青空。
「だって同郷のよしみじゃない。勿論シーラも一緒に来てくれるでしょう?」
丁度、生徒会室の前に辿り着く。
「ああ、ユレイテルの……納得だ」
幼馴染は身内には比較的甘いのだ。勿論、その筆頭が自分であることは譲らないけれど。
デリアの淹れた紅茶を飲みながら行動方針の確認を行って。すこし居住まいを正すのはエア。
「折角手伝うんだもの……あなたが会長になった時には、図書室の蔵書を増やして頂戴ね?」
(((だと思った)))
一名を除く、その場の全員の心が一つになる。
「学業の為になるとか、説得力のある理由があれば、理事会が動くんじゃないか」
(((お疲れ様)))
今度は二名以外の心が一つに!
「大丈夫? 結構痛そうな音がしたけど」
ドジって転んだフクカンに声をかける鞍馬 真(ka5819)の腕には、特設会場のスタッフを示す腕章がついている。
「驚き過ぎてオーバーになっただけで……ありがとうございます!」
見上げてくる後輩が自分の頭上を注視していることに気付き、首を傾げた。
「友達に似合いそうって言われて着てみたんだけど、似合うかな? 可愛い?」
「はいっ、すっごく可愛いですっ!」
ウサギ耳のカチューシャと白いケープは、真の長い髪とあわさって違和感がない。更にフクカンとのやり取りで……揃って女子にしか見えない。
「仮装は借りられませんかねえ?」
「聞いてみようか? ちょっと待ってて」
見知った真が居たのが幸いか、Gacrux(ka2726)は衣装を一揃い借り受けることに成功。そのまま着替えを行う。
「どうかな!」
「自分で見えませんからねえ」
「じゃあ撮ったやつを見ればいいよね! ハイチーズ!」
パシャッ
真コーディネートの衣装の上から新聞部の腕章をつけなおし、Gacruxは会場へと繰り出していた。写真も情報も、用途は多い。目指すはイイねと……おまけで狙う、系列大学への内部推薦枠。
(一番は、被写体が学校の主人公になることですけどね)
笑いと明るい記事を目指して、唸れスクープセンサー!(と呼ぶことにした小悪魔カチューシャ!)
体操部の部員が練習で作った焼きそばは、ちょっと味が濃い。
「ああ、ウン。いいンじゃないの?」
勿体ないと理由をつけながら食べすすめるフォークス(ka0570)は、脳内でどうやって今日の時間をつぶすか考えている。
(顧問ってのも面倒だよなァ)
伝統だか何だか知らないが、運動部は食べ物の屋台が多い。火の管理があるから、大きく離れるなんてことは許されない。
●
「そんなダッサイ奴無理だろ!」
逃げ回りながらボルディア・コンフラムス(ka0796)が叫ぶ。
(体動かすイベントじゃねぇとヤル気出ねぇンだよなぁ)
逃げながら回転技を使ったり、階段の手すりを平均台がわりに使ったり。自由自在に体を動かす技術を最大限駆使しながら。
(『焼きそば魂』なんてTシャツ着れるかよ!?)
呼び子として校舎を回るだけでいいと言われたが……あのデザインは、ない!
近未来(受験)より人生の目標(大道芸)とばかりに磨き上げたこの腕を。
「この舞台でお披露目だー!」
ふんすと気合を入れた藤堂研司(ka0569)は最初からフルスロットル。体育倉庫から失敬してきた手押し車に仲間を乗せて敷地内をパレード中!
「これぞ禁断の片手二刀流運転! さあさあ我らの自己紹介から」
そんな彼の背には『良い子は真似しちゃいけません』の文句と共に『飼育員のお兄さんとの約束だぞ♪』と書かれたポスターが下がっている。何故って?
「うさぐるみ隊長ダヨー♪」
シルクハット付き兎ぐるみのアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)と。
「うさじゃけっと隊員です」
兎耳フードのメアリ・ロイド(ka6633)が、それぞれ得意とする小道具と一緒に手押し車に乗っているから。兎さんがコンセプトなのだ!
「力仕事から大立ち回りまで、飼育担当藤堂研司! ご挨拶がわりに」
すかさずバルーンを差し出す隊長。
きゅっぐるぐるっきゅっきゅっきゅー♪
「さあ、兎ちゃん風船はいらんかね!」
ぱぱらぱっぱー♪
掲げるタイミングにあわせて効果音を出す隊員。連係プレーも相まって、子供連れが大漁! 彼らの珍道中は始まったばかりだ!
「はいそこ、クラスと氏名」
違反を見つける度、エアルドフリス(ka1856)は声をかけて回る。
「黙秘してもいいぞ? この俺から逃げられると思うなら、だが」
過度ではないが制服を着崩した風紀の鬼、凄みが効いた笑顔がそこにあった。
「いらっしゃいませー♪」
笑顔で振り返るウェイトレスの動きにあわせてスカートも翻る、魅せ南瓜ペチコートもちらり。ふわり跳ねるツインテールを目で追って、チラシを渡された一般客は正しい性別を知らない。
「わーここも広いねー」
席に案内されながら、昼寝場所に困らなさそうなんてフューリト・クローバー(ka7146)は考えている。
「君は受験生?」
尋ねる店員、ジュード・エアハート(ka0410)に頷く。
「家から近いし、昼寝場所に困りそうにないし?」
学校の先生には言うなって止められたけど、この人先生じゃないしいいよね。
「ふふっ。ご注文は何にしますか?」
「おすすめは何かなー? パンケーキとか好きなんだー」
「じゃあガレットが近いかな、それとジュースでいい?」
「おまかせー」
声が低めだった気がするけど、かーいい服だったなー。
「お待たせしましたお嬢様、お好みで蜂蜜を入れてください。喉に優しいですよ」
ずきゅぅん!
襟足で結った長髪に、男性らしい足さばき。ニコッと未悠が微笑めば、妹候補生たちの頬は朱色に染まる。
けれどバックヤードでつまみ食いを目論む姿はただの乙女である。
「照れない技術を教えてほしいです、って高瀬さん?」
追ってきたのはユメリアだ。
「ばれちゃったわね。そうね……じゃあ私にあーん、で練習よ♪」
「えっ? ……あーん?」
「はぁ、美味しいわ……さあ、貴女も共犯になりなさいっ♪」
あーん♪
勢いに負けた事実に、しっかり飲み込んでから気付くユメリアだった。
パァン!
クラッカーの音を合図に視線が集まる。仕掛けた研司は既に階段の手すりと踊り場を利用してアクロバットの独壇場だ。
追ってメアリが流す軽快なBGMに即興で合わせていけば、隊長が即席スポットでライトアップ。階下に集まる人からの視線が集まり、集客効果は抜群だ!
「皆ー、この上の階デ、特別展示をやってるヨ♪」
上の階ダカラって、お客サン少ないの、勿体ないと思うんだヨネ。
実際に見て楽しませてもらったアルヴィンとしては、もっといろんな人の目に触れてほしいわけで。
着ぐるみの手で器用にシルクハットを外す。くるりと回って優雅にお辞儀。身に着けた身のこなしは格好と相まって、アルヴィンを役者のように見せていた。
「じゃあ、二人分ちゃーんと楽しんでくるニャス♪」
三毛猫尻尾を手遊びしながら電話に出たミア(ka7035)だが、相手が来られなくなったようで。残念だけど、にぱっと笑顔。
羨ましがっても知らないニャスよ!
「ふむふむ~、結構色んな食べ物があるニャスねぇ」
フロアマップも書かれたガイドをぺらりとめくるミア。
「目指すは全制覇! あっ、早速いい匂いニャス~」
コルクボードに値札はピン留め。商品はフックピンにストラップをひっかけて。
簡易の行商スタイルになった浅緋 零(ka4710)は、部員仲間と作り貯めた手芸作品を売り歩いていた。
「文化祭の……記念に、おひとつ、いかが……ですかー?」
今着ているワンピースも零の手製だ。呼子を兼ねているし、手元の商品だってごく一部。展示場所として確保した教室には、魅力的な商品がいっぱい並んで……
(うん、やっぱり……むり)
くるり、振り返る。
唐突なそれにビクッと震える兎と、ハラハラ見守っていた周囲の皆様。
「せんせい。ストーカーは、犯罪……だよ」
(皆せーちゃん先生だって気付くよね)
不審者兎にドン引きつつも気づかないふりをしている生徒達の中に鳳城 錬介(ka6053)も含まれていた。一度担当した生徒は勿論、顔見知り程度の生徒にまで過保護な数学教師は生徒の間では有名である。ちなみに試験問題は趣味に走った内容でえげつないと評判。
(むしろ零さんはよく耐えたと思う)
視線は向けているが、ケバブを焼く手は止めない。何故って、イベントごとでもなければ見れない機材を思いっきり堪能できるからだ!
「お兄さん貰えるニャス?」
わくわくした顔で注文に来たミアに笑顔を向ける。新しい玩具(ケバブ専用機)が楽しくて仕方ないので自然と笑顔が続くのだ。
「はぁい、一人前追加ですね!」
周囲の様子は視界が狭いために気付かない、ある意味幸運な神代 誠一(ka2086)は兎の頭を外した。
「なんで俺ってわかったんだ?」
零は沈黙し、周囲の学生たちがざわつく。
「何か、買って……くれたら、許す」
「そうか! じゃあこれにするな」
指さす先には、ひょうきん顔の白兎あみぐるみ。自分が作ったと明言もしていないけれど。迷わず選ばれたことに小さな笑みがこぼれる。
(自信はあったが、正解だったようで何よりだ)
ストラップだから落さないで済むなと笑って、いそいそと着ぐるみ内から代金を払う誠一。
「せーちゃん先生、ついでにケバブどうですかね!」
財布を出した瞬間が商機。錬介の声が飛んでくる。
「美味そうだから貰おうか! 零はどうだ?」
「……クラス全員分、買って、届ける?」
「ぐっ……無理だな」
「レンスケ、レイのも」
「あわせて二人前別会計で、了解! 零さん、俺にもお勧め売ってくれます?」
「わかった……これとか?」
まさかのマンガ肉ストラップである。思わず吹き出す錬介。
「誰が作ったんですこれ……いや面白いんで買いますけど!」
●
「まさか一般客からご要望が出るなんてー、どこ情報かなあ?」
ソフィア =リリィホルム(ka2383)がポケットアルバムを取り出す。好みの傾向を聞くためのカタログだ。
チカッ☆
「!? ごめんねお客さん、都合が悪くなっちゃった!」
協力者からの合図に手早く身支度。
「それはお詫びでサービス!」
1枚だけ客に押し付けて、ぺろっと舌を出しつつも素早くその場を離れていくソフィア。
「ちょっと! ……逃しましたわ!」
間髪入れずに現れた金鹿(ka5959)に驚く客は、渡された写真をまだしまう前。気付いた金鹿が近づいていく。
「そこの貴方、その写真、どこの誰に渡されましたの?」
私風紀委員を務めておりますの。ご協力、していただけますわよね?
「ふっふっふ。さーすが祭の間は財布の紐が緩いねぇ♪」
校内の人気者の写真を撮り集めては、求める子羊達に販売するのがソフィア流の小遣い稼ぎ。被写体には撮影許可をもらっているし、際どいものは扱わないのが矜持だ。とはいえ風紀委員にいい顔される訳が無いのは事実で。
「はぁ……ソフィアさん、貴女またですの?」
「おっと、バレちまっちゃしょーがない!」
油断したなぁ! と頭をぺちん。
「今日こそしっかりお話いたしましょうね?」
じりじり、近付く金鹿は勝者の笑みだ。
「今日は使わない棟だからいけると思ったんだけどねぇ」
「素直に観念なさいませ!」
「そんなお堅いとモテねーぞ、っと!」
「なっ、私のことは今関係ございませんでしょう?!」
「なんだぁ~、初恋もまだって奴ぅ?」
「放っておいてくださいまし!」
「えぇ~、金鹿写真のご要望にも応えなきゃいけないんだよねぇ」
「そっ」
まさか恋心を向けられているとか? チラリと掠めた考えに真っ赤になる金鹿。
「なになにぃ、興味あるなら紹介しようかぁ?」
「~~~! ここは袋小路ですわよ?」
揶揄いすぎて逆効果、ソフィア、確保ぉ!
『思いっきりやりましょう!』
後輩で親友のルナ・レンフィールド(ka1565)の言葉に背を押されたから、出来る限りの準備は整えた。
「後夜祭で演奏するんです、よかったら見に来てください♪」
ステージを盛り上げる準備に無駄なことはないと思うから、受付を手伝いながらも宣伝を欠かさない。興味を持った様子があれば、すかさずチラシも差し出して。
恥ずかしさが頬の熱になって、初々しさがイイ! なんて支持層を集めているなんて知らないまま。
「結局、販売を止める念書はとれませんでしたわ……」
力いっぱい地団駄を踏みたいところなのだが。気分転換と休憩にと、今はスイーツ部のカフェを訪れている金鹿。醜態を晒すわけにもいかず……どうにもすっきりとしない。そんな金鹿の元にハーブティーが届けられた。
レモンバームが、ふわり。
(あ、いい香りですわ……)
自分の担当として渡されたビラを配るルナは、空きスペースを見つけて笑顔を零す。
「未悠先輩、エステルちゃん。ここが最初だよ!」
「「OK!」」
すかさずクラシックギターの位置をなおせば。サックスと電子ドラムの二人からもGOサイン!
「さいっこうに盛り上げるんだから……!」
仕上げは勿論後夜祭。でも昼間からボルテージあげていってもいいじゃない?
すぐに走り出そう 余所見なんかしないで!
今だけだったらどうするの?
転んだっていいじゃない かっこ悪くなんかない!
みつけた素敵があれば always best!
「こらぁああ!」
くぐもった、けれど大声に観客もろとも視線が向かう。
ズダダダダ、ダッ……
盛大な助走をつけた大跳躍!
ダンッ!
からの、バンド前への華麗な着地!
「「「うさぎぃぃぃ!?」」」
「お前ら、なぁ……!」
ルナが勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさいっ! でも盛り上げたいんですっ!」
先輩の為だというのは、誠一も人伝てに知っているのだ。
「……あんまり、人の流れを止めるところはやめておけな? ……頑張って来いよ!」
「ありがとう、せーちゃん先生!」
●
交代時間だと呼ばれた時に、廊下に見えた髪色。バックヤードに置いていた差し入れを大慌てでひっつかんだジュードは目的の背を追いかけ呼び止める。
「エアさん!」
個包装した菓子入りのバスケットを見せながら正面に回り込む。
「お疲れ様♪」
疲れてる時には甘いものでしょ?
「自分で食えもがっ」
隙あり♪ と差しこまれたのはジュード手製のハートグミ。
「残りは皆にあげようかなって」
これから差し入れに行くんだよ。聞きながらも、籠の中から菓子を抜いていくエアルドフリス。
「これは没収」
不機嫌そうな声に目を瞬けば、すぐに去っていく風紀委員長。
(美味しかった、ってことでいいのかな)
考えながら見下ろして……ジュードは笑顔を抑えられなくなった。
「ふふっ♪」
色んな形を用意したはずが。バスケットからハートだけがなくなっていた。
ついに彼等は出会った!
「お前は……あの時行方不明になったぴょん吉!? よくぞここまで大きくなって!」
がばっぎゅー!
すかさずはぐれ兎に抱きつく研司。咄嗟の出来事に混乱した誠一は、隊長兎のジェスチャーで研司の背中に気付いた。
「……お兄さん、会いたかった!」
突如始まった感動劇の背後では、隊員がヴァイオリンを演奏している。自作BGM集もあるのだが、咄嗟に対応するのはやはり生演奏に限る。
周囲は演奏に驚きつつも勢いに流されて、拍手喝采だ!
「巨大ウサギが暴れてると聞いて来てみれば……」
はぁぁぁぁ、と盛大な溜息をつくエアルドフリス。足取りを追っていた彼の苦労は眉間の皺が物語っている。
「ちょーっと落ち着いて頂けませんかね、先生?」
身長ではぐれ兎の正体を察した彼はハリセンを振るうか迷う。こちらの兎は不審者疑惑の方なので。
その隙に隊長は新たな目標に狙いを定め、ガサゴソ道具を探しながら歩き出す。
っぽん♪
紙花を取り出して、壁の装飾にぺたぺた、てくてく、ぺったん……
「うん、キレイ♪」
「そこの帽子兎も、逃げちゃ駄目だぞ……ってアールーヴィーン! またあんたか!」
誰が片付けると思ってる! お前のせいでさっきからゴミ袋が手放せないんだが!
「ワァ♪ お見通しなんて凄いネー♪」
「お前理事長だろぉぉぉ! 仕事増やすな!」
「今日は学生デモあるんだよ?」
ホラ♪ と兎ぐるみの懐から取り出すネームタグには、一日体験入学の文字。
「そんなんで誤魔化されるか!」
スッパァアアアアーン!
一本、決まりましたー!
「差し入れだよ!」
今平気かと尋ねるジュードに答えるのはメアリ。
「大丈夫です。鬼は隊長ばかり狙っているので」
空き教室まで駆使して追いかけっこをする隊長を眺めながら、選んだクッキーは人参の形。折角だから兎の気分を味わおうと思ったのだ。
「いただきます」
「あっ俺も俺もー! 動いたから腹減った!」
逃げ回るだけではなく、ジャグリングやアクロバットまでやっているのだ。研司の消費カロリーは半端ないはずで。
「どうぞどうぞー♪」
お勧めの話を聞きながら、ほんのり人参の甘い香りを楽しむメアリ。
「それ気に入った? 良かった!」
(……?)
首を傾げれば、口元が笑っていたよとジュード。メアリに自覚はなかった。
「笑ってました?」
「ん? 俺今日何度も見たぞ?」
今度は研司だ。何度も……知らない、なぜだろう。
役に立とうと気にして居た覚えはあるが、笑おうとは思っていなかった。でも実際には笑顔だったと。
「……楽しいです」
言葉にすれば、すとんと胸に落ちた。今日は、ずっと。
●
弓道部のアイス屋のからかっぱらってきたドライアイスを水入りペットボトルに入れるボルディア。即座に数本投擲!
「「「!?」」」
サビのタイミングに合わせたから盛り上がるはずだ。スモークの量も十分な筈!
(すーぐ逃げねぇとな!)
次はあの兄ちゃんのズボン下げるか!
(まだ、科学部は在るでしょうか?)
ガイドを見るまでもなく、科学室へと歩を進める天央 観智(ka0896)。
スルッ!
「……ぇっ?」
突如おろされるズボン!
歩みと思考が止まり……上着の前を掻き合わせた。ズボンは膝上で止まっているので誤魔化せるが、目撃者は……
「うちの先輩がすみません!」
「はいっ?」
『焼きそば魂』のシャツを着た学生が深々と下げてくる。聞けば、先輩を追いながら技の説明をしたり事後処理に回っているのだそうで。
(宣伝するくらい……なんですね)
問題を許容して余りあるものを持った子なのだろう、と考える。
「大丈夫……ですよ。貴重な視点を貰えました。OBとしても……笑って済ませる範囲です」
焼きそばのタダ券も貰ったことだし、あとで食べに行きますね。
(高校生ってあんな演出もするんだねー)
目をぱちくりしながら、スモークつきのテロライブを眺めるフューリト。エステル達バンドメンバーは内心驚いていたが、幸い皆の視線はスモークが遮ってばれていない。
「音楽は世界共通の言葉、なんだっけ」
おかーさんが言ってたし、僕もこの音、好きだなー。
子供の文化祭なのに来れなくなった主のため、アリバイ作りがフィロ(ka6966)の任務。だから常にビデオカメラを回している。
(実は内緒でパパ、見に行ったんだ~。声かけると怒られちゃうと思って柱の影からね☆ ……なんて、子煩悩な旦那様らしいです)
(だいぶ混雑してきたな……)
私も撮影に回るべきだろうかと首を傾げた真に近寄る人影。
「そこのスタッフ様」
「私ですか?」
振り向けばメイド服。フィロである。
「面倒な注文をしたいのですが、構わないでしょうか」
「仮装ですよね? 大丈夫ですよ!」
まさか本職のメイドと思わない真は、仮装に拘りがあるのだろうと考え気楽に請け負う。
「体型がわかりにくく、かつ顔が見えないものを。出来ればこれも一緒に……」
フィロが取り出したのはネクタイだ。
「普段と全く違うテイストってことですね……着ぐるみなんてどうです?」
兎が大人気なんですよとすすめれば、頷くフィロ。
「撮るときも少しご協力いただきたく」
「? あっ、そうですよね! わかりました!」
「今日の運勢占ってあげるカラ、ルールー落ち着いて?」
「お前のせいだぁぁぁ!」
ハリセンを振りかざしながら追う風紀委員長にアルヴィンが見せたカードはハートの7の、正位置。
●
プシッ……ゴクッゴクップハァーッ!
(冷蔵庫に隠しておいた過去のあたいを褒めたいねぇ)
自賛するフォークスにしてみれば、缶ビール一本くらい酔ってるうちに入らない。
ひらりと影がかかり、片目で見上げるフォークス。
「ゲッ!? フォー公」
「ボルディアじゃねーかぁ、あいつら探してたぞぉ?」
フォークスが後ろ手に指し示すのは教室内。つまり体操部の焼きそば店。
「知ってる。テラスなら素通り出来ると思ったんだけどなぁ」
「すればぁ?」
「そろそろ隠れ場所……って酒呑んでていいのかよ」
「っせーなぁ、生徒は楽しんでて先公のあたいは楽しんじゃいけねーってのかよォ」
「ま、俺が言えるこっちゃないか」
「しかしツマミが足りねぇんだなぁ」
「そんな顧問サマに今ならジャーマンポテトが」
「高いんじゃねぇの?」
「これが先ほどかっぱらってきたばかりで、熱々だぜ」
「お前も悪だなぁ」
共犯になった二人は笑いあう。
「匿ってくれるか」
「……いいンじゃね?」
「おなかもいっぱいー。沢山面白かったし、あとはー」
三時のおやつも買い込んで、フラフラ歩くフューリト。
花壇の近く、爽やかな香りに誘われるように芝生へと、ぐんにゃり。
(お菓子は持ち帰りー……でー……おやすみー……)
ぐー……
足りない身長分は台に乗り、上半身だけの写真が一枚。
「証明品が作れました」
胸をなでおろしたフィロだが、まだ全て終わったわけではない。最終的にはレポートに纏める必要がある。
「旦那様は滞在可能だとしても最大25分……時間の齟齬や混雑具合も確かめておかなくては」
だから様々に回るのは必須事項だ。ジャーマンポテトは絶対食べに行こうと思うけれど。
(旦那様好みの味なら重畳です)
万が一ご子息に遭遇したとしても、主とは別行動中だと言ってしまえばいいのだ。
(生徒以外はそうそう変わるものでもありませんか)
妙に焦げたようなにおいが気になるが、科学部の展示も、体験できる簡易実験コーナーも盛況なようだ。卒業して数年、同じ時を過ごした後輩は居ないが、帰ってきたのだと感じる。
(思い出深い場所……なんです)
かつての自分が突き詰めた題材と同じ発表を見つけ、語り合えないものだろうかと、観智は部員へと声をかけた。
パシャッ
「何を撮っているんだ?」
迷子案内や仲裁などをしながらも、売り物は買い集めていたエア。その大半は生徒会への差し入れ兼土産物で、シーラが全て抱えている。
「学祭の写真だって、お土産になると思うのよ」
皆で楽しむものでしょう?
「なるほどな……」
納得して、次の目的地へと足を向けようとしたのだが。
「シーラ、こっち向いて?」
「なんだ……んん……?」
改めてエアの方に顔を向けたシーラの前に、差し出されたのはスイートポテト。
「さ、口開けて。落としちゃうわよ?」
だって今貴方食べられないでしょう。早くと急かされ、しぶしぶと口を開ける。運ぶ荷が嵩張っているせいで、細心の注意を払わないと……指を食べてしまいそうだ。
「すまない、首を動かすのも結構厳しいんだ」
苦し紛れの言葉はどうにか信じて貰えたようで。
「もう、仕方ないわね?」
色々な葛藤がシーラの中で繰り広げられる。……理性は、勝った。じっくりと時間を描けて咀嚼する。堪えたものを言葉ではきださないように、念入りに。
「……あとで、珈琲でも淹れようか」
「ふふ、やっぱり最後は貴方の淹れたものじゃないとね。楽しみにしているわ」
『後夜祭は17時、ステージイベントから始まりますぅ。皆さまお誘いあわせの上……』
空を見れば確かに、空色も変わっている。ミアは買ったばかりの肉まんを食べる場所を探していた。
「穴場発見~?」
見つけたベンチにぽすんと座る。さぁあったかいうちに……
「!」
タッタッタッタッ……
ステージに向かう人の流れとは明らかに違う足音。仕事を終えてそのままの格好の彼が走ってくる。
「早く来ないと冷めるニャス! でも、間に合ったからひとつわけてあげるニャス♪」
大きく手を振って出迎えるミアの顔は、今日一番の笑顔だった。
●
ガールズバンド【組曲】の本番は後夜祭。昼のトリオにユメリアが加わって、全員制服姿のカルテット。
「先輩、音は支えますから」
「この為に友達に習ってきたんです」
ベースに持ち替えたルナ、サックスのエステル。
ドラムチェックを終えた未悠がピアノのユメリアの背を景気づけに軽く叩いて。
「さあ、本番の幕があがるわよ。……楽しみましょうね!」
「「「はい!」」」
抱えてた熱は どこまでも昇ってく
追いかけたいのに 何か足りなくて
僕らの熱は ここにもあるのに
手を伸ばすばかりで 気付けばあと少し
かけられた言葉が翼になって風を呼んで
隣に居る君の力強さに勇気をもらった
繋いだ手の中にある 熱をぎゅっと抱きしめて
次の誰かの 光になろう
顔も体も火照ったままにステージを降りる。余韻に心地よく浸りながら、携帯を取り出しカメラアプリを起動するユメリア。
「お疲れ様です、撮りますよ」
袖で進行を見守っていたユレイテルの好意に感謝しながら、四人の笑顔が揃う。
パシャリ♪
「ありがとうございます。……クラブへの昇格、お願いします……!」
これが最後の機会だと、携帯を受け取りながら三年間の想いを勢いで伝えてしまう。
「寂しいけど、私達はいつでも音で繋がってるわ」
ずっと一緒だと。未悠がユメリアを抱きしめる。
「来年の新入生、たっくさん捕まえますから!」
「ルナさんってば、本当音楽のことになると過激だよね」
私で良ければ手伝うよと続くエステル。可愛い事を言う後輩にもそれぞれ、未悠が破顔して抱きついた。
●
(♯スタァは君だ! #文化祭生報道 #新聞部 タグ、一部抜粋)
『味覚も嗅覚から、心と身体を癒すカフェ。(スイーツメニュー画像数枚と自撮りGacrux画像付き) ☆690』
『君は校内を練り歩く盛り上げ隊を見たか! 特製バルーンを貰えたら今日の特別な思い出がワンランクアップかも!?(兎耳画像付き) ☆816』
『ライブテロリストの熱い想いを聞いてみた! 「同行会からの昇格を頑張る先輩に、最高の思い出を贈りたかった」……聴き逃したあなたは後夜祭へGO!(ステージのタイムスケジュール付き) ☆459』
『手芸部妖精と兎の珍道中、跳ね駆けまわる焼きそば魂、噂のポートレイト屋営業中……ハプニングRemix!(それぞれのスクープ写真付き) ☆5515』
園芸部で育てた朝摘みのハーブは花束に。そのまま飾って楽しんでも何かに使っても。生けずに吊るして乾かせば、長く楽しむこともできるから。ひとつひとつ丁寧に大きな籠に詰め込んで、支度はバッチリ。
「ご注文のお届けです!」
次にエステル・クレティエ(ka3783)が向かうのはスイーツ部。
「待っていたよ、花売りさん」
笑顔で迎え入れたシャーリーン・クリオール(ka0184)からのお返しは、ワッフルコーンを利用したフルーツブーケ。アーモンドクリームの上に並んだ果物は花のように美しく、ワックスペーパーのラッピングは可愛さは勿論、手元を汚さない気遣いの表れだ。
「ハーブのお礼もあるけど、皆への特別メニューさね」
ナパージュのきらめきがエステルの瞳に反射する。
「シャーリーン、メニュー表ってこれで大丈夫かしら」
奥から確認にやってきた高瀬 未悠(ka3199)が、カフェらしくデコレーションされたカードを持ってくる。
「エステルも一緒に見る?」
『スイーツ部のカフェメニュー』
・菫香るブランマンジェ
口当たりの滑らかさを念頭に置いた至玉の一品。糖衣がけの菫の花弁の香りを一緒に楽しんで。
・果物畑のガレット
綺麗に並べたカットフルーツを、そば粉の生地と一緒に香ばしく焼き上げた一品。優しい甘味が広がります。
・ローストチキンサンド
園芸部のハーブで香りづけした鶏の胸肉を焼き上げ、クロワッサンでサンドイッチ。爽やかなのにジューシィで旨味たっぷり。
・フレッシュハーブティー
・100%生絞りジュース
「助かる、忙しいのに小道具まで悪いな」
「いけない、バンドの準備があるんだった! 失礼します!」
シャーリーンの声で我に返ったのはエステル。人前で演るのだから出来る限り良いものを! そのためにも準備運動は念入りに!
「差し入れのクレープ宜しく♪ っと……これでよし」
廊下に出てから双子の兄へのおねだりメール。スイーツは乙女の心のエネルギーだ。
「流石よね、流行りのカフェレベルよ……」
未悠の脳裏ではオープンカフェでのデートが繰り広げられている。彼からあーん、の一口が……
「未悠?」
「そんな恥ずかしいわ先せ……ッ! 気に入ってもらえてよかったわ。私、着替えてくるわね!」
真っ赤な顔を隠すように控室にかけていく未悠が抱えているのは執事服。
「皆さんこちらに居たのですね。でもなぜ高瀬さんは男装を……?」
ライブの宣伝チラシを刷ってきたユメリア(ka7010)が入れ違いで入ってくる。
「似合うしいいんじゃないか?」
くすりとシャーリーンは笑って、仕込みに戻っていった。
「パウラが羨ましい……私も図書館に帰りたい……」
「そもそも、手伝うと言い出したのは君だろう」
いつもの禁断症状とばかりに呟き始めたエルティア・ホープナー(ka0727)に、シルヴェイラ(ka0726)が溜息を零す。
(図書委員の当番をしないんて、雨が降るのではと思ったが)
窓から空を見上げれば、過ごしやすい陽射しをもたらす青空。
「だって同郷のよしみじゃない。勿論シーラも一緒に来てくれるでしょう?」
丁度、生徒会室の前に辿り着く。
「ああ、ユレイテルの……納得だ」
幼馴染は身内には比較的甘いのだ。勿論、その筆頭が自分であることは譲らないけれど。
デリアの淹れた紅茶を飲みながら行動方針の確認を行って。すこし居住まいを正すのはエア。
「折角手伝うんだもの……あなたが会長になった時には、図書室の蔵書を増やして頂戴ね?」
(((だと思った)))
一名を除く、その場の全員の心が一つになる。
「学業の為になるとか、説得力のある理由があれば、理事会が動くんじゃないか」
(((お疲れ様)))
今度は二名以外の心が一つに!
「大丈夫? 結構痛そうな音がしたけど」
ドジって転んだフクカンに声をかける鞍馬 真(ka5819)の腕には、特設会場のスタッフを示す腕章がついている。
「驚き過ぎてオーバーになっただけで……ありがとうございます!」
見上げてくる後輩が自分の頭上を注視していることに気付き、首を傾げた。
「友達に似合いそうって言われて着てみたんだけど、似合うかな? 可愛い?」
「はいっ、すっごく可愛いですっ!」
ウサギ耳のカチューシャと白いケープは、真の長い髪とあわさって違和感がない。更にフクカンとのやり取りで……揃って女子にしか見えない。
「仮装は借りられませんかねえ?」
「聞いてみようか? ちょっと待ってて」
見知った真が居たのが幸いか、Gacrux(ka2726)は衣装を一揃い借り受けることに成功。そのまま着替えを行う。
「どうかな!」
「自分で見えませんからねえ」
「じゃあ撮ったやつを見ればいいよね! ハイチーズ!」
パシャッ
真コーディネートの衣装の上から新聞部の腕章をつけなおし、Gacruxは会場へと繰り出していた。写真も情報も、用途は多い。目指すはイイねと……おまけで狙う、系列大学への内部推薦枠。
(一番は、被写体が学校の主人公になることですけどね)
笑いと明るい記事を目指して、唸れスクープセンサー!(と呼ぶことにした小悪魔カチューシャ!)
体操部の部員が練習で作った焼きそばは、ちょっと味が濃い。
「ああ、ウン。いいンじゃないの?」
勿体ないと理由をつけながら食べすすめるフォークス(ka0570)は、脳内でどうやって今日の時間をつぶすか考えている。
(顧問ってのも面倒だよなァ)
伝統だか何だか知らないが、運動部は食べ物の屋台が多い。火の管理があるから、大きく離れるなんてことは許されない。
●
「そんなダッサイ奴無理だろ!」
逃げ回りながらボルディア・コンフラムス(ka0796)が叫ぶ。
(体動かすイベントじゃねぇとヤル気出ねぇンだよなぁ)
逃げながら回転技を使ったり、階段の手すりを平均台がわりに使ったり。自由自在に体を動かす技術を最大限駆使しながら。
(『焼きそば魂』なんてTシャツ着れるかよ!?)
呼び子として校舎を回るだけでいいと言われたが……あのデザインは、ない!
近未来(受験)より人生の目標(大道芸)とばかりに磨き上げたこの腕を。
「この舞台でお披露目だー!」
ふんすと気合を入れた藤堂研司(ka0569)は最初からフルスロットル。体育倉庫から失敬してきた手押し車に仲間を乗せて敷地内をパレード中!
「これぞ禁断の片手二刀流運転! さあさあ我らの自己紹介から」
そんな彼の背には『良い子は真似しちゃいけません』の文句と共に『飼育員のお兄さんとの約束だぞ♪』と書かれたポスターが下がっている。何故って?
「うさぐるみ隊長ダヨー♪」
シルクハット付き兎ぐるみのアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)と。
「うさじゃけっと隊員です」
兎耳フードのメアリ・ロイド(ka6633)が、それぞれ得意とする小道具と一緒に手押し車に乗っているから。兎さんがコンセプトなのだ!
「力仕事から大立ち回りまで、飼育担当藤堂研司! ご挨拶がわりに」
すかさずバルーンを差し出す隊長。
きゅっぐるぐるっきゅっきゅっきゅー♪
「さあ、兎ちゃん風船はいらんかね!」
ぱぱらぱっぱー♪
掲げるタイミングにあわせて効果音を出す隊員。連係プレーも相まって、子供連れが大漁! 彼らの珍道中は始まったばかりだ!
「はいそこ、クラスと氏名」
違反を見つける度、エアルドフリス(ka1856)は声をかけて回る。
「黙秘してもいいぞ? この俺から逃げられると思うなら、だが」
過度ではないが制服を着崩した風紀の鬼、凄みが効いた笑顔がそこにあった。
「いらっしゃいませー♪」
笑顔で振り返るウェイトレスの動きにあわせてスカートも翻る、魅せ南瓜ペチコートもちらり。ふわり跳ねるツインテールを目で追って、チラシを渡された一般客は正しい性別を知らない。
「わーここも広いねー」
席に案内されながら、昼寝場所に困らなさそうなんてフューリト・クローバー(ka7146)は考えている。
「君は受験生?」
尋ねる店員、ジュード・エアハート(ka0410)に頷く。
「家から近いし、昼寝場所に困りそうにないし?」
学校の先生には言うなって止められたけど、この人先生じゃないしいいよね。
「ふふっ。ご注文は何にしますか?」
「おすすめは何かなー? パンケーキとか好きなんだー」
「じゃあガレットが近いかな、それとジュースでいい?」
「おまかせー」
声が低めだった気がするけど、かーいい服だったなー。
「お待たせしましたお嬢様、お好みで蜂蜜を入れてください。喉に優しいですよ」
ずきゅぅん!
襟足で結った長髪に、男性らしい足さばき。ニコッと未悠が微笑めば、妹候補生たちの頬は朱色に染まる。
けれどバックヤードでつまみ食いを目論む姿はただの乙女である。
「照れない技術を教えてほしいです、って高瀬さん?」
追ってきたのはユメリアだ。
「ばれちゃったわね。そうね……じゃあ私にあーん、で練習よ♪」
「えっ? ……あーん?」
「はぁ、美味しいわ……さあ、貴女も共犯になりなさいっ♪」
あーん♪
勢いに負けた事実に、しっかり飲み込んでから気付くユメリアだった。
パァン!
クラッカーの音を合図に視線が集まる。仕掛けた研司は既に階段の手すりと踊り場を利用してアクロバットの独壇場だ。
追ってメアリが流す軽快なBGMに即興で合わせていけば、隊長が即席スポットでライトアップ。階下に集まる人からの視線が集まり、集客効果は抜群だ!
「皆ー、この上の階デ、特別展示をやってるヨ♪」
上の階ダカラって、お客サン少ないの、勿体ないと思うんだヨネ。
実際に見て楽しませてもらったアルヴィンとしては、もっといろんな人の目に触れてほしいわけで。
着ぐるみの手で器用にシルクハットを外す。くるりと回って優雅にお辞儀。身に着けた身のこなしは格好と相まって、アルヴィンを役者のように見せていた。
「じゃあ、二人分ちゃーんと楽しんでくるニャス♪」
三毛猫尻尾を手遊びしながら電話に出たミア(ka7035)だが、相手が来られなくなったようで。残念だけど、にぱっと笑顔。
羨ましがっても知らないニャスよ!
「ふむふむ~、結構色んな食べ物があるニャスねぇ」
フロアマップも書かれたガイドをぺらりとめくるミア。
「目指すは全制覇! あっ、早速いい匂いニャス~」
コルクボードに値札はピン留め。商品はフックピンにストラップをひっかけて。
簡易の行商スタイルになった浅緋 零(ka4710)は、部員仲間と作り貯めた手芸作品を売り歩いていた。
「文化祭の……記念に、おひとつ、いかが……ですかー?」
今着ているワンピースも零の手製だ。呼子を兼ねているし、手元の商品だってごく一部。展示場所として確保した教室には、魅力的な商品がいっぱい並んで……
(うん、やっぱり……むり)
くるり、振り返る。
唐突なそれにビクッと震える兎と、ハラハラ見守っていた周囲の皆様。
「せんせい。ストーカーは、犯罪……だよ」
(皆せーちゃん先生だって気付くよね)
不審者兎にドン引きつつも気づかないふりをしている生徒達の中に鳳城 錬介(ka6053)も含まれていた。一度担当した生徒は勿論、顔見知り程度の生徒にまで過保護な数学教師は生徒の間では有名である。ちなみに試験問題は趣味に走った内容でえげつないと評判。
(むしろ零さんはよく耐えたと思う)
視線は向けているが、ケバブを焼く手は止めない。何故って、イベントごとでもなければ見れない機材を思いっきり堪能できるからだ!
「お兄さん貰えるニャス?」
わくわくした顔で注文に来たミアに笑顔を向ける。新しい玩具(ケバブ専用機)が楽しくて仕方ないので自然と笑顔が続くのだ。
「はぁい、一人前追加ですね!」
周囲の様子は視界が狭いために気付かない、ある意味幸運な神代 誠一(ka2086)は兎の頭を外した。
「なんで俺ってわかったんだ?」
零は沈黙し、周囲の学生たちがざわつく。
「何か、買って……くれたら、許す」
「そうか! じゃあこれにするな」
指さす先には、ひょうきん顔の白兎あみぐるみ。自分が作ったと明言もしていないけれど。迷わず選ばれたことに小さな笑みがこぼれる。
(自信はあったが、正解だったようで何よりだ)
ストラップだから落さないで済むなと笑って、いそいそと着ぐるみ内から代金を払う誠一。
「せーちゃん先生、ついでにケバブどうですかね!」
財布を出した瞬間が商機。錬介の声が飛んでくる。
「美味そうだから貰おうか! 零はどうだ?」
「……クラス全員分、買って、届ける?」
「ぐっ……無理だな」
「レンスケ、レイのも」
「あわせて二人前別会計で、了解! 零さん、俺にもお勧め売ってくれます?」
「わかった……これとか?」
まさかのマンガ肉ストラップである。思わず吹き出す錬介。
「誰が作ったんですこれ……いや面白いんで買いますけど!」
●
「まさか一般客からご要望が出るなんてー、どこ情報かなあ?」
ソフィア =リリィホルム(ka2383)がポケットアルバムを取り出す。好みの傾向を聞くためのカタログだ。
チカッ☆
「!? ごめんねお客さん、都合が悪くなっちゃった!」
協力者からの合図に手早く身支度。
「それはお詫びでサービス!」
1枚だけ客に押し付けて、ぺろっと舌を出しつつも素早くその場を離れていくソフィア。
「ちょっと! ……逃しましたわ!」
間髪入れずに現れた金鹿(ka5959)に驚く客は、渡された写真をまだしまう前。気付いた金鹿が近づいていく。
「そこの貴方、その写真、どこの誰に渡されましたの?」
私風紀委員を務めておりますの。ご協力、していただけますわよね?
「ふっふっふ。さーすが祭の間は財布の紐が緩いねぇ♪」
校内の人気者の写真を撮り集めては、求める子羊達に販売するのがソフィア流の小遣い稼ぎ。被写体には撮影許可をもらっているし、際どいものは扱わないのが矜持だ。とはいえ風紀委員にいい顔される訳が無いのは事実で。
「はぁ……ソフィアさん、貴女またですの?」
「おっと、バレちまっちゃしょーがない!」
油断したなぁ! と頭をぺちん。
「今日こそしっかりお話いたしましょうね?」
じりじり、近付く金鹿は勝者の笑みだ。
「今日は使わない棟だからいけると思ったんだけどねぇ」
「素直に観念なさいませ!」
「そんなお堅いとモテねーぞ、っと!」
「なっ、私のことは今関係ございませんでしょう?!」
「なんだぁ~、初恋もまだって奴ぅ?」
「放っておいてくださいまし!」
「えぇ~、金鹿写真のご要望にも応えなきゃいけないんだよねぇ」
「そっ」
まさか恋心を向けられているとか? チラリと掠めた考えに真っ赤になる金鹿。
「なになにぃ、興味あるなら紹介しようかぁ?」
「~~~! ここは袋小路ですわよ?」
揶揄いすぎて逆効果、ソフィア、確保ぉ!
『思いっきりやりましょう!』
後輩で親友のルナ・レンフィールド(ka1565)の言葉に背を押されたから、出来る限りの準備は整えた。
「後夜祭で演奏するんです、よかったら見に来てください♪」
ステージを盛り上げる準備に無駄なことはないと思うから、受付を手伝いながらも宣伝を欠かさない。興味を持った様子があれば、すかさずチラシも差し出して。
恥ずかしさが頬の熱になって、初々しさがイイ! なんて支持層を集めているなんて知らないまま。
「結局、販売を止める念書はとれませんでしたわ……」
力いっぱい地団駄を踏みたいところなのだが。気分転換と休憩にと、今はスイーツ部のカフェを訪れている金鹿。醜態を晒すわけにもいかず……どうにもすっきりとしない。そんな金鹿の元にハーブティーが届けられた。
レモンバームが、ふわり。
(あ、いい香りですわ……)
自分の担当として渡されたビラを配るルナは、空きスペースを見つけて笑顔を零す。
「未悠先輩、エステルちゃん。ここが最初だよ!」
「「OK!」」
すかさずクラシックギターの位置をなおせば。サックスと電子ドラムの二人からもGOサイン!
「さいっこうに盛り上げるんだから……!」
仕上げは勿論後夜祭。でも昼間からボルテージあげていってもいいじゃない?
すぐに走り出そう 余所見なんかしないで!
今だけだったらどうするの?
転んだっていいじゃない かっこ悪くなんかない!
みつけた素敵があれば always best!
「こらぁああ!」
くぐもった、けれど大声に観客もろとも視線が向かう。
ズダダダダ、ダッ……
盛大な助走をつけた大跳躍!
ダンッ!
からの、バンド前への華麗な着地!
「「「うさぎぃぃぃ!?」」」
「お前ら、なぁ……!」
ルナが勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさいっ! でも盛り上げたいんですっ!」
先輩の為だというのは、誠一も人伝てに知っているのだ。
「……あんまり、人の流れを止めるところはやめておけな? ……頑張って来いよ!」
「ありがとう、せーちゃん先生!」
●
交代時間だと呼ばれた時に、廊下に見えた髪色。バックヤードに置いていた差し入れを大慌てでひっつかんだジュードは目的の背を追いかけ呼び止める。
「エアさん!」
個包装した菓子入りのバスケットを見せながら正面に回り込む。
「お疲れ様♪」
疲れてる時には甘いものでしょ?
「自分で食えもがっ」
隙あり♪ と差しこまれたのはジュード手製のハートグミ。
「残りは皆にあげようかなって」
これから差し入れに行くんだよ。聞きながらも、籠の中から菓子を抜いていくエアルドフリス。
「これは没収」
不機嫌そうな声に目を瞬けば、すぐに去っていく風紀委員長。
(美味しかった、ってことでいいのかな)
考えながら見下ろして……ジュードは笑顔を抑えられなくなった。
「ふふっ♪」
色んな形を用意したはずが。バスケットからハートだけがなくなっていた。
ついに彼等は出会った!
「お前は……あの時行方不明になったぴょん吉!? よくぞここまで大きくなって!」
がばっぎゅー!
すかさずはぐれ兎に抱きつく研司。咄嗟の出来事に混乱した誠一は、隊長兎のジェスチャーで研司の背中に気付いた。
「……お兄さん、会いたかった!」
突如始まった感動劇の背後では、隊員がヴァイオリンを演奏している。自作BGM集もあるのだが、咄嗟に対応するのはやはり生演奏に限る。
周囲は演奏に驚きつつも勢いに流されて、拍手喝采だ!
「巨大ウサギが暴れてると聞いて来てみれば……」
はぁぁぁぁ、と盛大な溜息をつくエアルドフリス。足取りを追っていた彼の苦労は眉間の皺が物語っている。
「ちょーっと落ち着いて頂けませんかね、先生?」
身長ではぐれ兎の正体を察した彼はハリセンを振るうか迷う。こちらの兎は不審者疑惑の方なので。
その隙に隊長は新たな目標に狙いを定め、ガサゴソ道具を探しながら歩き出す。
っぽん♪
紙花を取り出して、壁の装飾にぺたぺた、てくてく、ぺったん……
「うん、キレイ♪」
「そこの帽子兎も、逃げちゃ駄目だぞ……ってアールーヴィーン! またあんたか!」
誰が片付けると思ってる! お前のせいでさっきからゴミ袋が手放せないんだが!
「ワァ♪ お見通しなんて凄いネー♪」
「お前理事長だろぉぉぉ! 仕事増やすな!」
「今日は学生デモあるんだよ?」
ホラ♪ と兎ぐるみの懐から取り出すネームタグには、一日体験入学の文字。
「そんなんで誤魔化されるか!」
スッパァアアアアーン!
一本、決まりましたー!
「差し入れだよ!」
今平気かと尋ねるジュードに答えるのはメアリ。
「大丈夫です。鬼は隊長ばかり狙っているので」
空き教室まで駆使して追いかけっこをする隊長を眺めながら、選んだクッキーは人参の形。折角だから兎の気分を味わおうと思ったのだ。
「いただきます」
「あっ俺も俺もー! 動いたから腹減った!」
逃げ回るだけではなく、ジャグリングやアクロバットまでやっているのだ。研司の消費カロリーは半端ないはずで。
「どうぞどうぞー♪」
お勧めの話を聞きながら、ほんのり人参の甘い香りを楽しむメアリ。
「それ気に入った? 良かった!」
(……?)
首を傾げれば、口元が笑っていたよとジュード。メアリに自覚はなかった。
「笑ってました?」
「ん? 俺今日何度も見たぞ?」
今度は研司だ。何度も……知らない、なぜだろう。
役に立とうと気にして居た覚えはあるが、笑おうとは思っていなかった。でも実際には笑顔だったと。
「……楽しいです」
言葉にすれば、すとんと胸に落ちた。今日は、ずっと。
●
弓道部のアイス屋のからかっぱらってきたドライアイスを水入りペットボトルに入れるボルディア。即座に数本投擲!
「「「!?」」」
サビのタイミングに合わせたから盛り上がるはずだ。スモークの量も十分な筈!
(すーぐ逃げねぇとな!)
次はあの兄ちゃんのズボン下げるか!
(まだ、科学部は在るでしょうか?)
ガイドを見るまでもなく、科学室へと歩を進める天央 観智(ka0896)。
スルッ!
「……ぇっ?」
突如おろされるズボン!
歩みと思考が止まり……上着の前を掻き合わせた。ズボンは膝上で止まっているので誤魔化せるが、目撃者は……
「うちの先輩がすみません!」
「はいっ?」
『焼きそば魂』のシャツを着た学生が深々と下げてくる。聞けば、先輩を追いながら技の説明をしたり事後処理に回っているのだそうで。
(宣伝するくらい……なんですね)
問題を許容して余りあるものを持った子なのだろう、と考える。
「大丈夫……ですよ。貴重な視点を貰えました。OBとしても……笑って済ませる範囲です」
焼きそばのタダ券も貰ったことだし、あとで食べに行きますね。
(高校生ってあんな演出もするんだねー)
目をぱちくりしながら、スモークつきのテロライブを眺めるフューリト。エステル達バンドメンバーは内心驚いていたが、幸い皆の視線はスモークが遮ってばれていない。
「音楽は世界共通の言葉、なんだっけ」
おかーさんが言ってたし、僕もこの音、好きだなー。
子供の文化祭なのに来れなくなった主のため、アリバイ作りがフィロ(ka6966)の任務。だから常にビデオカメラを回している。
(実は内緒でパパ、見に行ったんだ~。声かけると怒られちゃうと思って柱の影からね☆ ……なんて、子煩悩な旦那様らしいです)
(だいぶ混雑してきたな……)
私も撮影に回るべきだろうかと首を傾げた真に近寄る人影。
「そこのスタッフ様」
「私ですか?」
振り向けばメイド服。フィロである。
「面倒な注文をしたいのですが、構わないでしょうか」
「仮装ですよね? 大丈夫ですよ!」
まさか本職のメイドと思わない真は、仮装に拘りがあるのだろうと考え気楽に請け負う。
「体型がわかりにくく、かつ顔が見えないものを。出来ればこれも一緒に……」
フィロが取り出したのはネクタイだ。
「普段と全く違うテイストってことですね……着ぐるみなんてどうです?」
兎が大人気なんですよとすすめれば、頷くフィロ。
「撮るときも少しご協力いただきたく」
「? あっ、そうですよね! わかりました!」
「今日の運勢占ってあげるカラ、ルールー落ち着いて?」
「お前のせいだぁぁぁ!」
ハリセンを振りかざしながら追う風紀委員長にアルヴィンが見せたカードはハートの7の、正位置。
●
プシッ……ゴクッゴクップハァーッ!
(冷蔵庫に隠しておいた過去のあたいを褒めたいねぇ)
自賛するフォークスにしてみれば、缶ビール一本くらい酔ってるうちに入らない。
ひらりと影がかかり、片目で見上げるフォークス。
「ゲッ!? フォー公」
「ボルディアじゃねーかぁ、あいつら探してたぞぉ?」
フォークスが後ろ手に指し示すのは教室内。つまり体操部の焼きそば店。
「知ってる。テラスなら素通り出来ると思ったんだけどなぁ」
「すればぁ?」
「そろそろ隠れ場所……って酒呑んでていいのかよ」
「っせーなぁ、生徒は楽しんでて先公のあたいは楽しんじゃいけねーってのかよォ」
「ま、俺が言えるこっちゃないか」
「しかしツマミが足りねぇんだなぁ」
「そんな顧問サマに今ならジャーマンポテトが」
「高いんじゃねぇの?」
「これが先ほどかっぱらってきたばかりで、熱々だぜ」
「お前も悪だなぁ」
共犯になった二人は笑いあう。
「匿ってくれるか」
「……いいンじゃね?」
「おなかもいっぱいー。沢山面白かったし、あとはー」
三時のおやつも買い込んで、フラフラ歩くフューリト。
花壇の近く、爽やかな香りに誘われるように芝生へと、ぐんにゃり。
(お菓子は持ち帰りー……でー……おやすみー……)
ぐー……
足りない身長分は台に乗り、上半身だけの写真が一枚。
「証明品が作れました」
胸をなでおろしたフィロだが、まだ全て終わったわけではない。最終的にはレポートに纏める必要がある。
「旦那様は滞在可能だとしても最大25分……時間の齟齬や混雑具合も確かめておかなくては」
だから様々に回るのは必須事項だ。ジャーマンポテトは絶対食べに行こうと思うけれど。
(旦那様好みの味なら重畳です)
万が一ご子息に遭遇したとしても、主とは別行動中だと言ってしまえばいいのだ。
(生徒以外はそうそう変わるものでもありませんか)
妙に焦げたようなにおいが気になるが、科学部の展示も、体験できる簡易実験コーナーも盛況なようだ。卒業して数年、同じ時を過ごした後輩は居ないが、帰ってきたのだと感じる。
(思い出深い場所……なんです)
かつての自分が突き詰めた題材と同じ発表を見つけ、語り合えないものだろうかと、観智は部員へと声をかけた。
パシャッ
「何を撮っているんだ?」
迷子案内や仲裁などをしながらも、売り物は買い集めていたエア。その大半は生徒会への差し入れ兼土産物で、シーラが全て抱えている。
「学祭の写真だって、お土産になると思うのよ」
皆で楽しむものでしょう?
「なるほどな……」
納得して、次の目的地へと足を向けようとしたのだが。
「シーラ、こっち向いて?」
「なんだ……んん……?」
改めてエアの方に顔を向けたシーラの前に、差し出されたのはスイートポテト。
「さ、口開けて。落としちゃうわよ?」
だって今貴方食べられないでしょう。早くと急かされ、しぶしぶと口を開ける。運ぶ荷が嵩張っているせいで、細心の注意を払わないと……指を食べてしまいそうだ。
「すまない、首を動かすのも結構厳しいんだ」
苦し紛れの言葉はどうにか信じて貰えたようで。
「もう、仕方ないわね?」
色々な葛藤がシーラの中で繰り広げられる。……理性は、勝った。じっくりと時間を描けて咀嚼する。堪えたものを言葉ではきださないように、念入りに。
「……あとで、珈琲でも淹れようか」
「ふふ、やっぱり最後は貴方の淹れたものじゃないとね。楽しみにしているわ」
『後夜祭は17時、ステージイベントから始まりますぅ。皆さまお誘いあわせの上……』
空を見れば確かに、空色も変わっている。ミアは買ったばかりの肉まんを食べる場所を探していた。
「穴場発見~?」
見つけたベンチにぽすんと座る。さぁあったかいうちに……
「!」
タッタッタッタッ……
ステージに向かう人の流れとは明らかに違う足音。仕事を終えてそのままの格好の彼が走ってくる。
「早く来ないと冷めるニャス! でも、間に合ったからひとつわけてあげるニャス♪」
大きく手を振って出迎えるミアの顔は、今日一番の笑顔だった。
●
ガールズバンド【組曲】の本番は後夜祭。昼のトリオにユメリアが加わって、全員制服姿のカルテット。
「先輩、音は支えますから」
「この為に友達に習ってきたんです」
ベースに持ち替えたルナ、サックスのエステル。
ドラムチェックを終えた未悠がピアノのユメリアの背を景気づけに軽く叩いて。
「さあ、本番の幕があがるわよ。……楽しみましょうね!」
「「「はい!」」」
抱えてた熱は どこまでも昇ってく
追いかけたいのに 何か足りなくて
僕らの熱は ここにもあるのに
手を伸ばすばかりで 気付けばあと少し
かけられた言葉が翼になって風を呼んで
隣に居る君の力強さに勇気をもらった
繋いだ手の中にある 熱をぎゅっと抱きしめて
次の誰かの 光になろう
顔も体も火照ったままにステージを降りる。余韻に心地よく浸りながら、携帯を取り出しカメラアプリを起動するユメリア。
「お疲れ様です、撮りますよ」
袖で進行を見守っていたユレイテルの好意に感謝しながら、四人の笑顔が揃う。
パシャリ♪
「ありがとうございます。……クラブへの昇格、お願いします……!」
これが最後の機会だと、携帯を受け取りながら三年間の想いを勢いで伝えてしまう。
「寂しいけど、私達はいつでも音で繋がってるわ」
ずっと一緒だと。未悠がユメリアを抱きしめる。
「来年の新入生、たっくさん捕まえますから!」
「ルナさんってば、本当音楽のことになると過激だよね」
私で良ければ手伝うよと続くエステル。可愛い事を言う後輩にもそれぞれ、未悠が破顔して抱きついた。
●
(♯スタァは君だ! #文化祭生報道 #新聞部 タグ、一部抜粋)
『味覚も嗅覚から、心と身体を癒すカフェ。(スイーツメニュー画像数枚と自撮りGacrux画像付き) ☆690』
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依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/06 01:55:36 |
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相談?雑談? アルヴィン = オールドリッチ(ka2378) エルフ|26才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/11/06 14:29:33 |