ゲスト
(ka0000)
栗拾いに行こう
マスター:きりん

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/11/09 07:30
- 完成日
- 2018/11/09 16:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●美味しい栗
村の中は平和なものだ。
雑魔などに対する備えは当然として村単位であるものの、田舎の常として家々の防犯意識は低く、村の中なら安全と村人たちは考えている。
芋をモグモグと食べ歩いていたトアは、村の男たちが落ち葉を燃やして焚火をしているのを見つけた。
「なにやってるの?」
「おう、こいつを焼いてるのさ」
「……なあに、これ?」
トアは差し出されたものを見て首を傾げた。
それはリアルブルーではいわゆる栗と呼ばれるものだったが、当然クリムゾンウエストでも同じようなものは存在し、これもその一つだった。
「栗だ。美味いぞ」
「たべものなの?」
「ああ。食ってみろ」
「とあ、たべる!」
急いで持っていた芋を食べ切り既に焼かれた栗を一つ貰ったトアは、それを食べようとして途方に暮れた。
「おじさん、これかたくてたべられないよ」
「丸ごと食うもんじゃないぞこれは。殻を剥くんだ。そら、貸してみろ」
栗を受け取った男が、器用に指で栗を割って中の実を取り出す。
「ほれ、これでいい」
「いただきます!」
大振りな栗を口に頬張ったトアは、口内に広がる素朴な栗の甘味に歓声を上げた。
「おいしい! おいしいよこれ! もっとちょうだい!」
ねだるトアに、男は仕方ないなぁという顔で苦笑しながら栗を食べさせていく。
しかし、十個目を超えたところで男は真顔になった。
「ちょうだい!」
「駄目だ、もうやらん」
断られ、トアはむくれた。
●もっと食べたい
家に戻ったトアは、父親であるディルクと母親のアンティに栗が食べたいとねだった。
食べさせてもらった栗に、トアはすっかり夢中になってしまったのである。
普段食べている芋にはすっかり飽き飽きしていたトアなので、この秋の味覚が気に入ったようだ。
「そうね……。村の近くに栗の木がある林があるし、栗拾いに行きましょうか」
「そうだな。アルムも連れて行ってみるか」
二人も乗り気なようで、アルムを呼んで栗拾いに行くことを伝えた。
「栗拾い? 行く! 絶対行く!」
「おにいちゃん、くりしってるの?」
不思議そうな顔のトアに、アルムがうかつなことを口にした。
「ああ。母さんに食べさせてもらったことある」
「……とあ、知らない」
不満げに頬を膨らませたトアに、アルムが己の失敗を悟るが、既に遅い。
「あ」
「こら、アルム。秘密にしておいてって言ったじゃない」
そしてアンティの一言が駄目押しをした。
「ずるい!」
「仕方ないだろ、その時トアはまだ乳離れしてなくて食べられなかったんだから」
「ずーるーいー!」
アルムがいわなかった理由を説明するものの、トアは納得せず駄々をこねる。
結局トアの機嫌は、栗拾いに行くまで直らなかった。
●出かけてみたら……
いざ出かけたディルク、アンティ、アルム、トアの四人だったが、残念ながら栗拾いを行うことができなかった。
どこから紛れ込んだのか、猿型雑魔が四匹栗林を徘徊していたのである。
「……これは、中止だな」
「そうね。仕方ないわ」
「命の方が大事だぞ。トアも我慢しろよ」
「……わかってるもん」
さすがに危険の傍でだだをこねるほどわがままではないトアは、しょんぼりしつつ家族の意志に従った。
その姿を見たディルクとアンティ、アルムは顔を見合わせ、アンティがトアを抱き締めた。
「帰ったら、ハンターズソサエティに連絡して退治してもらいましょう。その後で、改めて栗拾いしましょうね」
「うん! とあもがんばってはんたーさんにおねがいする!」
トアの表情が、喜びでぱあっと輝いた。
●ハンターズソサエティ
受付嬢ジェーン・ドゥが新しい依頼をハンターたちに向けて公開した。
その内容は、トアの村近くにある栗林に紛れ込んだ猿型雑魔四体を退治して欲しいというものであった。
村の中は平和なものだ。
雑魔などに対する備えは当然として村単位であるものの、田舎の常として家々の防犯意識は低く、村の中なら安全と村人たちは考えている。
芋をモグモグと食べ歩いていたトアは、村の男たちが落ち葉を燃やして焚火をしているのを見つけた。
「なにやってるの?」
「おう、こいつを焼いてるのさ」
「……なあに、これ?」
トアは差し出されたものを見て首を傾げた。
それはリアルブルーではいわゆる栗と呼ばれるものだったが、当然クリムゾンウエストでも同じようなものは存在し、これもその一つだった。
「栗だ。美味いぞ」
「たべものなの?」
「ああ。食ってみろ」
「とあ、たべる!」
急いで持っていた芋を食べ切り既に焼かれた栗を一つ貰ったトアは、それを食べようとして途方に暮れた。
「おじさん、これかたくてたべられないよ」
「丸ごと食うもんじゃないぞこれは。殻を剥くんだ。そら、貸してみろ」
栗を受け取った男が、器用に指で栗を割って中の実を取り出す。
「ほれ、これでいい」
「いただきます!」
大振りな栗を口に頬張ったトアは、口内に広がる素朴な栗の甘味に歓声を上げた。
「おいしい! おいしいよこれ! もっとちょうだい!」
ねだるトアに、男は仕方ないなぁという顔で苦笑しながら栗を食べさせていく。
しかし、十個目を超えたところで男は真顔になった。
「ちょうだい!」
「駄目だ、もうやらん」
断られ、トアはむくれた。
●もっと食べたい
家に戻ったトアは、父親であるディルクと母親のアンティに栗が食べたいとねだった。
食べさせてもらった栗に、トアはすっかり夢中になってしまったのである。
普段食べている芋にはすっかり飽き飽きしていたトアなので、この秋の味覚が気に入ったようだ。
「そうね……。村の近くに栗の木がある林があるし、栗拾いに行きましょうか」
「そうだな。アルムも連れて行ってみるか」
二人も乗り気なようで、アルムを呼んで栗拾いに行くことを伝えた。
「栗拾い? 行く! 絶対行く!」
「おにいちゃん、くりしってるの?」
不思議そうな顔のトアに、アルムがうかつなことを口にした。
「ああ。母さんに食べさせてもらったことある」
「……とあ、知らない」
不満げに頬を膨らませたトアに、アルムが己の失敗を悟るが、既に遅い。
「あ」
「こら、アルム。秘密にしておいてって言ったじゃない」
そしてアンティの一言が駄目押しをした。
「ずるい!」
「仕方ないだろ、その時トアはまだ乳離れしてなくて食べられなかったんだから」
「ずーるーいー!」
アルムがいわなかった理由を説明するものの、トアは納得せず駄々をこねる。
結局トアの機嫌は、栗拾いに行くまで直らなかった。
●出かけてみたら……
いざ出かけたディルク、アンティ、アルム、トアの四人だったが、残念ながら栗拾いを行うことができなかった。
どこから紛れ込んだのか、猿型雑魔が四匹栗林を徘徊していたのである。
「……これは、中止だな」
「そうね。仕方ないわ」
「命の方が大事だぞ。トアも我慢しろよ」
「……わかってるもん」
さすがに危険の傍でだだをこねるほどわがままではないトアは、しょんぼりしつつ家族の意志に従った。
その姿を見たディルクとアンティ、アルムは顔を見合わせ、アンティがトアを抱き締めた。
「帰ったら、ハンターズソサエティに連絡して退治してもらいましょう。その後で、改めて栗拾いしましょうね」
「うん! とあもがんばってはんたーさんにおねがいする!」
トアの表情が、喜びでぱあっと輝いた。
●ハンターズソサエティ
受付嬢ジェーン・ドゥが新しい依頼をハンターたちに向けて公開した。
その内容は、トアの村近くにある栗林に紛れ込んだ猿型雑魔四体を退治して欲しいというものであった。
リプレイ本文
●集まったハンターたち
美味しい栗を食べられるように頑張るつもりの夢路 まよい(ka1328)は、いてもおかしくない姿が見当たらないことが不思議だった。
(ジェーン……食べ物関係の依頼なのに来ないの? 明日は雪でも降るのかな?)
雪どころか雹が降るかもしれない。
まあいない人間を気にしていても仕方ない。
兎にも角にも、雑魔猿退治である。
栗に惹かれて参加したサクラ・エルフリード(ka2598)は、集めるのを邪魔する猿にさっさと退場してもらう予定だ。
「さて、栗を楽しむ前に邪魔なお猿さんに退場して貰いましょう……」
攻撃する前にいなくなっていそうだが、一応作戦も立ててある。
「……ところでジェーンさんは何処に……。……後で来るんでしょうかね……?」
「来ていない……だと……!? 体調でも悪くて寝込んでるのか? 栗だぞ栗!? はっ、ま、まさか……また偽物に入れ替わられて……! 皆、一大事だ!」
夢と現実がごっちゃになるほど混乱したレイア・アローネ(ka4082)だったが、気を取り直して準備をする。
「……ともあれ、子供たちの楽しみの為にも雑魔は倒さなければな……」
スキレットや足つきダッチオーブン、油きりトレイに油と塩を準備したマリィア・バルデス(ka5848)は、それらを梱包して括り付けるとバイクに飛び乗った。
「子供が期待しているって聞くと、張り切りたくなっちゃうわね」
笑いながら颯爽と目的地へ向かうマリィアは、さっさと雑魔を退治して子供が喜ぶ栗パーティをしようと思っている。
ハンターたちにとっては、この程度の雑魔を倒すことなど造作もないだろう。
故に、これは彼女たちにとって休暇も同然かもしれない。
さあ、依頼の始まりだ!
●雑魔猿退治
絶好の狙撃位置を確保したマリィアは、大型魔導銃を構え皆の攻撃を待った。
続いて動くのはレイアだ。
攻めに意識を割いて魔導剣を構え、さらに生体マテリアルを流し込んで強化する。
(暴れ回って栗を潰さないように気をつける必要があるな)
足元に気をつけながら雑魔猿の一匹に接近する。
レイアに少し遅れて魔法で生み出した緑に輝く風を自分の身体にまとわせ、投げつけてくる毬の軌道を逸らせるようにしておいてから会敵したまよいは、精神を集中して高まるマテリアルのうねりをまとめ上げた。
膨大なマテリアルを変換して連続で射出された水と地の力は、それぞれの対象に伸びていき、その体内で現象化した。
体内から無数の氷柱と岩柱を生やした雑魔猿二匹が悲鳴もなく息絶える。
続けて魔法の矢を詠唱していたまよいだったが、必要なくなったため中断して魔法を取りやめた。
サクラが闇の法術を行使する。
無数の闇の刃が空を裂いて飛び、雑魔猿を串刺しに縫い止める。
それだけに留まらず、足止め効果が発揮された結果、雑魔猿はそのままレイアが放った刺突の軌跡に巻き込まれる。
鋭い踏み込みから放たれた瞬発力のある突きが、勢いそのまま雑魔猿を二匹まとめて木に叩きつけ、その体表に大きな穴を穿った。
遠くの敵は仲間たちに任せ、レイアは積極的に近付いてくる個体を狩りに行く。
マリィアは天に向かって全弾を一斉に撃ち尽くす。
放たれた無数の弾丸はマテリアルを纏い、やがて弓なりになると光の雨となって地上に降り注いだ。
封印の力を持つ光が、雑魔猿たちの身体を貫き身体の自由を奪う。
マテリアルを瞬間的に体に満たし、リロードの動作を高速化させて短時間で大型魔導銃に次弾を装填したマリィアは、雑魔猿たちが全て倒れるまで弾切れを起こすことなく、何かあればすぐ妨害射撃に入れる状態を維持し続けた。
「とはいっても、後はもう見ている以外特にやることないけど……まあたまにはいいわよね、こんなのも」
いざとなれば発射した弾丸をマテリアルで操作し、雑魔猿のみを撃ち抜くことも考えていたが、その出番はなさそうだ。
それでも油断はせずに、大型魔導銃を構えて狙撃の姿勢を維持し続けたマリィアは、最後の一匹が倒されるまで警戒を続けた。
●栗拾い
「ありがとうございます。お蔭様で栗拾いができます」
「ほら、アルムとトアも皆さんにお礼をいいなさい」
ディルクとともに頭を下げながら、妻のアンティが子ども二人に頭を下げるよう促す。
「やっぱりハンターって凄いや……!」
「ざつまがあっというまにけちょんけちょんなの!」
雑魔を全滅させた後は栗拾いとイガ取りを行う。
子供たちに教えてやろうと考えたレイアは、手招きをして二人を呼び寄せた。
「こうやってトゲに刺さらないように指でだな……」
トアは目を真ん丸にして呆気にとられた顔をしている。
「あいたた、栗の毬って素手で触るとイガイガだね。覚醒者が怪我するほどのことじゃないから、頑張って素手で無理やり剥いてもいいんだけど……。あ、こうして靴を履いた両足で、毬を挟むようにして両端の位置を踏みながら割り開くと痛くない! 天才的な発明かも!」
「……あんな風に、踏むのではなく?」
喜ぶまよいを見て恐る恐る尋ねたアルムに、レイアは不思議そうに首を傾げた。
「え? いや、手で剥くのではないのか……?」
素で超脳筋的に処理していたレイアは、誤魔化すように咳払いをする。
「……これが悪い例だ。手が痛むから真似してはいけないぞ」
改めて、全員で栗拾いを行う。
いっぱい拾いたいとサクラは思うが、トアたち子どもが主役と考え、そちらにたくさん拾わせる方向で動いた。
「邪魔者はいなくなりましたし栗拾いを楽しみましょうか……。あ、向こうに良さそうな栗が落ちてますよ……」
怪我しないよう注意しつつ、良さげな栗がある場所を伝え拾わせる。
サクラは籠を背負い、そこに拾った栗を入れて運びながら、トアとアルムに付き合っている。
十分な量の栗が集まったので、一行は村に戻った。
●栗を食べよう
選別や皮むきもサクラは手伝った。
「調理の手伝いをしたいですが、子供がいる所で手伝うと危険そうなので諦めます…」
基本的に包丁が宙を舞う程度の料理スキルなので一歩間違えれば大惨事である。
代わりに料理中はトアやアルムの遊び相手を努めた。
こんな性格だが一応子供好きだ。
「栗料理が出来るまで私と遊んでいましょうか……?」
「すみません、僕たちの子守りまで」
「おねえちゃんあそんで!」
トアはともかくアルムは子どものくせに老成し過ぎだ。
「着火はリトルファイアを使えば手早く簡単にできるよ!」
「そうね。じゃあお願いしようかしら」
簡単に組んだ石炉の上にスキレットを設置したマリィアは、それを風よけ代わりにして足つきダッチオーブンを横に置くと、まよいに火をつけてもらう。
それからトアに話しかけた。
「貴女がトアちゃん? それじゃ野外で簡単に作れる焼き栗と揚げ栗でパーティしましょうか」
「する! とあぱーてぃする!」
トアの歓声を背に、賑やかな調理が始まった。
まずは焼き栗だ。
良く洗って鬼皮に深く切り込みいれた栗を、スキレットに敷き詰める。
蓋をして弱火で三十分焼いたら一回掻き混ぜてから火を止め、そのまま十分待つ。
その間に揚げ栗の準備だ。
鬼皮をむいて渋皮のみにした栗を、鍋に並べひたひたの油を入れ中火で約十五分揚げる。
ナイフでつついて固さを確認して程よい塩梅になっていることを確認したら、油きりトレイに移して余分な油を落として塩を振る。
「できたわ。皆で食べるわよ」
出来上がった焼き栗と揚げ栗を、マリィアはトアや村人、仲間たちと分け合った。
「栗ってお菓子にしても美味しいけど、こうしてシンプルに料理してそのまま食べるのもホクホクで美味しいんだねえ」
「おかし!? どんなのがあるの!?」
食いついてきたトアの前で、まよいは思案する。
(また食べてみたいっていいだすから、余計な入れ知恵するなっていわれちゃうかな? 問題なければ、モンブランとかいくらでも教えてあげちゃうけど。ふふふ、栗を使ったスイーツの世界は、一度知ったら抜け出せなくなるよ……。例えるとしたならば底のない沼だね……)
「……それはねぇ……内緒だよ!」
「が、がーん!」
トアの未来を慮り、答えないでおくまよいだった。
「外じゃこの程度だけど、台所使えばもっとお菓子作れるわよ。来年も呼んでちょうだいね」
「うん!」
マリィアに頭を撫でられながら、トアは満面の笑顔で頷いたのだった。
●姿を見せないあの人
「……で、本当にジェーンの奴来なかったな。……仕方ない、土産でも持っていってやるか……」
余った栗をレイアは懐にしまう。
サクラはジェーンがまだ来ていないことに驚いていた。
「ジェーンさん、身体でも壊したのでしょうか……。栗なのに来ないなんて……」
結局最後まで来なかったので、お土産を持っていこうとレイアと一緒に余った栗を懐に入れた。
栗を堪能したマリィアとまよいが撤収準備を始める。
こうして、依頼は無事終了した。
美味しい栗を食べられるように頑張るつもりの夢路 まよい(ka1328)は、いてもおかしくない姿が見当たらないことが不思議だった。
(ジェーン……食べ物関係の依頼なのに来ないの? 明日は雪でも降るのかな?)
雪どころか雹が降るかもしれない。
まあいない人間を気にしていても仕方ない。
兎にも角にも、雑魔猿退治である。
栗に惹かれて参加したサクラ・エルフリード(ka2598)は、集めるのを邪魔する猿にさっさと退場してもらう予定だ。
「さて、栗を楽しむ前に邪魔なお猿さんに退場して貰いましょう……」
攻撃する前にいなくなっていそうだが、一応作戦も立ててある。
「……ところでジェーンさんは何処に……。……後で来るんでしょうかね……?」
「来ていない……だと……!? 体調でも悪くて寝込んでるのか? 栗だぞ栗!? はっ、ま、まさか……また偽物に入れ替わられて……! 皆、一大事だ!」
夢と現実がごっちゃになるほど混乱したレイア・アローネ(ka4082)だったが、気を取り直して準備をする。
「……ともあれ、子供たちの楽しみの為にも雑魔は倒さなければな……」
スキレットや足つきダッチオーブン、油きりトレイに油と塩を準備したマリィア・バルデス(ka5848)は、それらを梱包して括り付けるとバイクに飛び乗った。
「子供が期待しているって聞くと、張り切りたくなっちゃうわね」
笑いながら颯爽と目的地へ向かうマリィアは、さっさと雑魔を退治して子供が喜ぶ栗パーティをしようと思っている。
ハンターたちにとっては、この程度の雑魔を倒すことなど造作もないだろう。
故に、これは彼女たちにとって休暇も同然かもしれない。
さあ、依頼の始まりだ!
●雑魔猿退治
絶好の狙撃位置を確保したマリィアは、大型魔導銃を構え皆の攻撃を待った。
続いて動くのはレイアだ。
攻めに意識を割いて魔導剣を構え、さらに生体マテリアルを流し込んで強化する。
(暴れ回って栗を潰さないように気をつける必要があるな)
足元に気をつけながら雑魔猿の一匹に接近する。
レイアに少し遅れて魔法で生み出した緑に輝く風を自分の身体にまとわせ、投げつけてくる毬の軌道を逸らせるようにしておいてから会敵したまよいは、精神を集中して高まるマテリアルのうねりをまとめ上げた。
膨大なマテリアルを変換して連続で射出された水と地の力は、それぞれの対象に伸びていき、その体内で現象化した。
体内から無数の氷柱と岩柱を生やした雑魔猿二匹が悲鳴もなく息絶える。
続けて魔法の矢を詠唱していたまよいだったが、必要なくなったため中断して魔法を取りやめた。
サクラが闇の法術を行使する。
無数の闇の刃が空を裂いて飛び、雑魔猿を串刺しに縫い止める。
それだけに留まらず、足止め効果が発揮された結果、雑魔猿はそのままレイアが放った刺突の軌跡に巻き込まれる。
鋭い踏み込みから放たれた瞬発力のある突きが、勢いそのまま雑魔猿を二匹まとめて木に叩きつけ、その体表に大きな穴を穿った。
遠くの敵は仲間たちに任せ、レイアは積極的に近付いてくる個体を狩りに行く。
マリィアは天に向かって全弾を一斉に撃ち尽くす。
放たれた無数の弾丸はマテリアルを纏い、やがて弓なりになると光の雨となって地上に降り注いだ。
封印の力を持つ光が、雑魔猿たちの身体を貫き身体の自由を奪う。
マテリアルを瞬間的に体に満たし、リロードの動作を高速化させて短時間で大型魔導銃に次弾を装填したマリィアは、雑魔猿たちが全て倒れるまで弾切れを起こすことなく、何かあればすぐ妨害射撃に入れる状態を維持し続けた。
「とはいっても、後はもう見ている以外特にやることないけど……まあたまにはいいわよね、こんなのも」
いざとなれば発射した弾丸をマテリアルで操作し、雑魔猿のみを撃ち抜くことも考えていたが、その出番はなさそうだ。
それでも油断はせずに、大型魔導銃を構えて狙撃の姿勢を維持し続けたマリィアは、最後の一匹が倒されるまで警戒を続けた。
●栗拾い
「ありがとうございます。お蔭様で栗拾いができます」
「ほら、アルムとトアも皆さんにお礼をいいなさい」
ディルクとともに頭を下げながら、妻のアンティが子ども二人に頭を下げるよう促す。
「やっぱりハンターって凄いや……!」
「ざつまがあっというまにけちょんけちょんなの!」
雑魔を全滅させた後は栗拾いとイガ取りを行う。
子供たちに教えてやろうと考えたレイアは、手招きをして二人を呼び寄せた。
「こうやってトゲに刺さらないように指でだな……」
トアは目を真ん丸にして呆気にとられた顔をしている。
「あいたた、栗の毬って素手で触るとイガイガだね。覚醒者が怪我するほどのことじゃないから、頑張って素手で無理やり剥いてもいいんだけど……。あ、こうして靴を履いた両足で、毬を挟むようにして両端の位置を踏みながら割り開くと痛くない! 天才的な発明かも!」
「……あんな風に、踏むのではなく?」
喜ぶまよいを見て恐る恐る尋ねたアルムに、レイアは不思議そうに首を傾げた。
「え? いや、手で剥くのではないのか……?」
素で超脳筋的に処理していたレイアは、誤魔化すように咳払いをする。
「……これが悪い例だ。手が痛むから真似してはいけないぞ」
改めて、全員で栗拾いを行う。
いっぱい拾いたいとサクラは思うが、トアたち子どもが主役と考え、そちらにたくさん拾わせる方向で動いた。
「邪魔者はいなくなりましたし栗拾いを楽しみましょうか……。あ、向こうに良さそうな栗が落ちてますよ……」
怪我しないよう注意しつつ、良さげな栗がある場所を伝え拾わせる。
サクラは籠を背負い、そこに拾った栗を入れて運びながら、トアとアルムに付き合っている。
十分な量の栗が集まったので、一行は村に戻った。
●栗を食べよう
選別や皮むきもサクラは手伝った。
「調理の手伝いをしたいですが、子供がいる所で手伝うと危険そうなので諦めます…」
基本的に包丁が宙を舞う程度の料理スキルなので一歩間違えれば大惨事である。
代わりに料理中はトアやアルムの遊び相手を努めた。
こんな性格だが一応子供好きだ。
「栗料理が出来るまで私と遊んでいましょうか……?」
「すみません、僕たちの子守りまで」
「おねえちゃんあそんで!」
トアはともかくアルムは子どものくせに老成し過ぎだ。
「着火はリトルファイアを使えば手早く簡単にできるよ!」
「そうね。じゃあお願いしようかしら」
簡単に組んだ石炉の上にスキレットを設置したマリィアは、それを風よけ代わりにして足つきダッチオーブンを横に置くと、まよいに火をつけてもらう。
それからトアに話しかけた。
「貴女がトアちゃん? それじゃ野外で簡単に作れる焼き栗と揚げ栗でパーティしましょうか」
「する! とあぱーてぃする!」
トアの歓声を背に、賑やかな調理が始まった。
まずは焼き栗だ。
良く洗って鬼皮に深く切り込みいれた栗を、スキレットに敷き詰める。
蓋をして弱火で三十分焼いたら一回掻き混ぜてから火を止め、そのまま十分待つ。
その間に揚げ栗の準備だ。
鬼皮をむいて渋皮のみにした栗を、鍋に並べひたひたの油を入れ中火で約十五分揚げる。
ナイフでつついて固さを確認して程よい塩梅になっていることを確認したら、油きりトレイに移して余分な油を落として塩を振る。
「できたわ。皆で食べるわよ」
出来上がった焼き栗と揚げ栗を、マリィアはトアや村人、仲間たちと分け合った。
「栗ってお菓子にしても美味しいけど、こうしてシンプルに料理してそのまま食べるのもホクホクで美味しいんだねえ」
「おかし!? どんなのがあるの!?」
食いついてきたトアの前で、まよいは思案する。
(また食べてみたいっていいだすから、余計な入れ知恵するなっていわれちゃうかな? 問題なければ、モンブランとかいくらでも教えてあげちゃうけど。ふふふ、栗を使ったスイーツの世界は、一度知ったら抜け出せなくなるよ……。例えるとしたならば底のない沼だね……)
「……それはねぇ……内緒だよ!」
「が、がーん!」
トアの未来を慮り、答えないでおくまよいだった。
「外じゃこの程度だけど、台所使えばもっとお菓子作れるわよ。来年も呼んでちょうだいね」
「うん!」
マリィアに頭を撫でられながら、トアは満面の笑顔で頷いたのだった。
●姿を見せないあの人
「……で、本当にジェーンの奴来なかったな。……仕方ない、土産でも持っていってやるか……」
余った栗をレイアは懐にしまう。
サクラはジェーンがまだ来ていないことに驚いていた。
「ジェーンさん、身体でも壊したのでしょうか……。栗なのに来ないなんて……」
結局最後まで来なかったので、お土産を持っていこうとレイアと一緒に余った栗を懐に入れた。
栗を堪能したマリィアとまよいが撤収準備を始める。
こうして、依頼は無事終了した。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 4人 |
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![]() |
栗拾いに行こう レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/11/08 02:51:27 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/08 02:38:50 |