ゲスト
(ka0000)
【空蒼】シンデレラ・アーミー
マスター:三田村 薫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/11/09 09:00
- 完成日
- 2018/11/15 23:58
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●次の方どうぞ
「大丈夫ですか?」
赤毛のハンター司祭・ヴィルジーリオは、にこにこしながら依頼終了後の手続きをするお下げに眼鏡の職員にそっと声を掛けた。
「何がですかぁ? 忙しいと言う意味だったらあんまり大丈夫じゃないですよぉ」
「地球の時間を止めたのが、転進であると言うことは間違いないと、クリムゾンウェストのハンターである私は思います。ですが、やはりリアルブルーのあなたはショックの方が大きいのでは?」
「……」
彼女はちらりとヴィルジーリオを見上げた。
「バレてますか?」
「一応、司祭なので。ええ、人の顔色を見ることはできます。休憩や休暇をもらうのも一つの手です。言い出しにくければ私も口添えをしましょう」
「ううん。大丈夫です。正直、何かしてたいって気持ちの方が強くて」
「わかりますよ。私で良ければ見えるところにいましょうか」
「あ、それはお願いしたいです……」
普段は甘えたような口調の彼女が、その時だけ少し温度の低いしゃべり方をした。彼女は書類を最後に点検してクリップで留める。
「終わりました。お疲れ様です」
「お疲れ様でした。何かあれば呼んでください」
「ありがとうございます」
長い赤毛の背中が少し遠ざかるのを見送ってから、彼女は両頬を手でぺちぺちと叩いた。ブルーからの転移者のかなりが、契約を希望している。今日だって契約希望者がたくさんいるのだ。個人的な感傷で窓口を滞らせてはいけない。彼女はにっこり笑うと、ワントーン高い声で呼びかけた。
「次の方どうぞぉ!」
●三人の軍人
「あたしはナンシー。こっちはマシューとヴィクター。三人とも地球統一連合軍の軍人だよ」
と、代表の女性は自己紹介した。付き従う様に二人の男性がくっついている。
「あ、ナンシー・スギハラ曹長ですね? 報告書でお名前は」
「恥ずかしいからやめて」
「はぁい。それで、今日はどうされましたぁ?」
「こいつを早いところ覚醒者にしてほしい。イクシード・アプリをインストールしちまってるのさ」
彼女はそう言って、眼鏡を掛けた金髪のオールバックの男性を引っ張る。ヴィクターと紹介された方だ。
「精霊と契約すれば上書きできるって聞いた。ついでに、あたしとマシューも契約したい。できる?」
「適性があれば誰でも」
職員はにっこりと笑う。
幸いにも、三人とも適性はあった。
●親切な人が良い
ナンシーは猟撃士、マシューは機導師、ヴィクターは符術師を選択した。
「良かった……」
マシューはヴィクターが覚醒して目を白黒させているのを見て安堵の表情を浮かべる。聞けば、アプリをインストールした時からいつ死ぬかずっと怯えていたらしい。マシューが。
「安心しました」
「あたしも」
「悪かったな、心配掛けて」
「済んだことは良いんだよ。それよりさ、マテリアル使う戦い方って初めてなんだよ。当たり前だけど」
「ですよねぇ」
「もし、手の空いてる人で教えてやるよって人がいたら、教えて欲しいんだけど、声かけてもらえない?」
「良いですよぉ。ちょっと待っててくださいねぇ。どんな人が良いとかありますかぁ?」
「そりゃ親切な人が良い」
「はーい! じゃ、あとの手続き終わったら声かけてみますねぇ!」
●レクチャー募集中
「と言うことで、新人さんにレクチャーしてくれる人を募集しまぁす!」
職員はハンターたちが談話しているところに言って呼びかけた。
「ついこの前まで前線で身体張ってた軍人さんたちですぅ。戦い方は知ってるんですけどマテリアルの扱い方に自信がないらしくって、それを教えてほしいってことでーす!」
「大丈夫ですか?」
赤毛のハンター司祭・ヴィルジーリオは、にこにこしながら依頼終了後の手続きをするお下げに眼鏡の職員にそっと声を掛けた。
「何がですかぁ? 忙しいと言う意味だったらあんまり大丈夫じゃないですよぉ」
「地球の時間を止めたのが、転進であると言うことは間違いないと、クリムゾンウェストのハンターである私は思います。ですが、やはりリアルブルーのあなたはショックの方が大きいのでは?」
「……」
彼女はちらりとヴィルジーリオを見上げた。
「バレてますか?」
「一応、司祭なので。ええ、人の顔色を見ることはできます。休憩や休暇をもらうのも一つの手です。言い出しにくければ私も口添えをしましょう」
「ううん。大丈夫です。正直、何かしてたいって気持ちの方が強くて」
「わかりますよ。私で良ければ見えるところにいましょうか」
「あ、それはお願いしたいです……」
普段は甘えたような口調の彼女が、その時だけ少し温度の低いしゃべり方をした。彼女は書類を最後に点検してクリップで留める。
「終わりました。お疲れ様です」
「お疲れ様でした。何かあれば呼んでください」
「ありがとうございます」
長い赤毛の背中が少し遠ざかるのを見送ってから、彼女は両頬を手でぺちぺちと叩いた。ブルーからの転移者のかなりが、契約を希望している。今日だって契約希望者がたくさんいるのだ。個人的な感傷で窓口を滞らせてはいけない。彼女はにっこり笑うと、ワントーン高い声で呼びかけた。
「次の方どうぞぉ!」
●三人の軍人
「あたしはナンシー。こっちはマシューとヴィクター。三人とも地球統一連合軍の軍人だよ」
と、代表の女性は自己紹介した。付き従う様に二人の男性がくっついている。
「あ、ナンシー・スギハラ曹長ですね? 報告書でお名前は」
「恥ずかしいからやめて」
「はぁい。それで、今日はどうされましたぁ?」
「こいつを早いところ覚醒者にしてほしい。イクシード・アプリをインストールしちまってるのさ」
彼女はそう言って、眼鏡を掛けた金髪のオールバックの男性を引っ張る。ヴィクターと紹介された方だ。
「精霊と契約すれば上書きできるって聞いた。ついでに、あたしとマシューも契約したい。できる?」
「適性があれば誰でも」
職員はにっこりと笑う。
幸いにも、三人とも適性はあった。
●親切な人が良い
ナンシーは猟撃士、マシューは機導師、ヴィクターは符術師を選択した。
「良かった……」
マシューはヴィクターが覚醒して目を白黒させているのを見て安堵の表情を浮かべる。聞けば、アプリをインストールした時からいつ死ぬかずっと怯えていたらしい。マシューが。
「安心しました」
「あたしも」
「悪かったな、心配掛けて」
「済んだことは良いんだよ。それよりさ、マテリアル使う戦い方って初めてなんだよ。当たり前だけど」
「ですよねぇ」
「もし、手の空いてる人で教えてやるよって人がいたら、教えて欲しいんだけど、声かけてもらえない?」
「良いですよぉ。ちょっと待っててくださいねぇ。どんな人が良いとかありますかぁ?」
「そりゃ親切な人が良い」
「はーい! じゃ、あとの手続き終わったら声かけてみますねぇ!」
●レクチャー募集中
「と言うことで、新人さんにレクチャーしてくれる人を募集しまぁす!」
職員はハンターたちが談話しているところに言って呼びかけた。
「ついこの前まで前線で身体張ってた軍人さんたちですぅ。戦い方は知ってるんですけどマテリアルの扱い方に自信がないらしくって、それを教えてほしいってことでーす!」
リプレイ本文
●最高に親切なメンバーを紹介するぜ
職員の募集に応じたのは四人のハンターたちだった。聖導士のセレスティア(ka2691)、猟撃士の瀬崎・統夜(ka5046)、符術師の星野 ハナ(ka5852)、そして機導師の穂積 智里(ka6819)だ。
「ナンシーさんはお久しぶりです」
「ナンシーさん達もハンターになったんですね。仲間が増えてうれしいです」
この内、セレスティアと智里はナンシーがカジノで窮地に陥った時に救援に来てくれたハンターである。
「あんたたち! 元気そうで良かったよ」
「俺は瀬崎・統夜。よろしくな」
クラスが同じと言うことでレクチャーに入る統夜が手を差し出した。ナンシーはその手を握って、
「こちらこそよろしく」
「曹長様はモテモテで羨ましいね」
茶化すヴィクターに、そっと人影が忍び寄る。その人はヴィクターの手をがしっと握り……。
「本日現在、猟撃士登録八百四十七名、機導師登録八百六十名、符術師登録二百五名ッ……今も絶賛増加中……オカルティックな世界へようこそですぅ」
符術師のハナだった。ヴィクターは、彼女が上げた数字を頭の中で吟味してから目を剥いた。ざっと概算して四対四対一の割合である。
「符術師そんなにいねぇの!?」
「意外ですね」
マシューが説明書きを読みながら言う。
「便利なスキルが多い様に見受けられますが」
「回復以外なら何でもできますぅ」
「待てよ、俺たちもしかして全員殴りに行くクラス選んでねぇか?」
「そう言うところも含めてご説明しますね」
セレスティアがにこりと笑った。
●ハンターシステムとは
「私はメインクラスがご一緒の方がおられませんので、全体的なことをお話ししますね」
と、セレスティアが告げると、一同は黙って彼女を見た。
「ハンターの特徴といえばやはり適性に応じて大きく十通りに分かれるということでしょうか。それと覚醒というシステム」
「適性がクラスだね?」
「そうです」
「もう選んじゃったけど」
「みなさん状況に合わせた補助が得意な職種を選んでらっしゃいますぅ」
ハナが補足した。
「猟撃士は遠距離とCAM戦闘が得意になりますしぃ、機導師は機械を介した補助が得意ですしぃ、符術師は符を介しての調査戦闘が得意って感じでしょぉかぁ。個別は各担当ごとで話しますけどぉ」
「なるほどね。ね、銃が上手く扱えると思って選んだんだけど、殴っても良いんだよね?」
「おい、ナンシー……」
「いや、殴っても構わない」
恐る恐るヴィクターがなだめようとするのを、統夜が制した。
「一口に猟撃士と言ってもいろいろだ。遠距離射撃を得意とするもの、弾をばら撒き制圧を行うもの、俺の様に速度と格闘技術を生かして接近戦も対応するもの、とな」
「その辺りは今まで自分たちがしていたことと変わりませんね」
マシューが頷いた。
「そうだな。今までの経験も併せて、自分に合ったスタイルを身につけて応じたスキルを学ぶのが良いと思うぜ」
「うんうん。習うより慣れろってね。セレスティア、続けて」
「はい。覚醒は一度したら一時間は持ちますが、逆に言えばそれしか続きません。経験を積めば一日に再度の使用することも可能になっていきますが、まずそれを意識してほしいです。」
「ずっと無敵ってわけじゃねぇのか」
ヴィクターが神妙な顔になる。
「覚醒してても無敵ではないんですけどね」
智里が言った。
「ですが、覚醒するとそうでないときとは比べ物にならないほど丈夫になります。そしてスキルというマテリアルを使った特殊能力を扱えます。私の様な聖導士であれば傷の治療をはじめとした魔法ですね」
「聖導士になっときゃ良かったかな」
ヴィクターが呟く。
「治療ができねぇ」
その肩を、満面の笑みでハナが叩いた。
「ふっふっふ。ご心配なくですよぉ、ヴィクターさん」
「お、おう……」
「サブクラスというのがあるんですぅ」
「セールスみてぇになってきたな、あんた」
●サブクラスを取得してオールラウンダーを目指そう!
「戦闘は習うより慣れろですねぇ。そのためにも週二回利用できるハントは積極的に通ってレベル上げとイクシード取得をお勧めしますぅ。これを貯めるとサブクラスが取得できて一挙にできることが広がりますぅ」
「サブクラス」
「たとえばなんですけどぉ、ナンシーさんは殴るのがお好きでしたらサブクラスに格闘士とか取ってぶん殴るスキルが使えるんですぅ」
「へぇ!」
「符術師は?」
「私は符術師はオールラウンダーだと思ってますのでぇ、サブには防御も魔法威力も上がって回復もできるようになる聖導士をお勧めしますけどぉ、本人さんの戦術次第だとも思うのでぇ……訓練場で各種調べてみて下さいぃ」
「聖導士って言うのがセレスティアのクラスだな?」
「はい。聖導士もなかなかオールラウンドですよ。魔法も物理も治療もできます」
「今、訓練場の話が出たが」
統夜が職員を振り返る。
「訓練場、使えるか? 実際にスキルを実演したい」
「そう仰ると思って押さえておきましたぁ」
職員はこっくりと頷く。
「ただ、順番なのでもうちょっとお待ちください」
「了解。そしたら、実際にスキルがどんなものか、覚醒するとどんな風になるかというのを体験してもらおう」
●体験! 覚醒者の身のこなし
やがて、訓練場の空きが出た。職員に見送られて彼らは訓練場に移動する。
「ハンターは強くなって訓練場で新しいスキルを覚えての繰り返しです」
智里が隣を歩くマシューに説明した。
「同じ術も複数習得して威力重視や回数重視に変えていきます。装備も錬成工房でどんどん強化します。良く壊れもしますけど。だからマテリアルの使い方と言われても、戦闘で回数切れ起こさないように考えながらどんどん使って覚えるものという気がします」
「なるほど……弾丸の残りのようなものですね」
「はい。ちなみに、機導師は機械を介する魔術師です。本職より防御力は少し高くて味方へのバフが得意です。浄化も飛行もできます。銃器との相性も悪くないです」
「飛べるの?」
前を歩いていたナンシーが振り返った。
「飛べます。マテリアルを足から噴射するスキルがあるんです」
「斥候もできそうですね」
「そうですね。追跡なんかにも。私は中途半端ですけど、装備を整えて機導砲で千越えのダメージを叩き出すトップランカーの方も、ガチガチに鎧を固めて前線で攻撃しながら指揮を執る方もいます」
「千越え……」
ヴィクターが恐れをなしたように呟いた。
「ただ銃器はリロードで弾切れが防げる分威力を銃単体で出さなければならない制約もあるので、そういう方々はもう魔法一本に絞ってらっしゃいますね」
「さっき、統夜も言ってたけど、一口にそのクラスって言っても色んな運用の仕方があるんだねぇ。あたしたちどうしようか」
「やって覚えるしかねぇだろ。頼むぜ曹長」
ヴィクターが肩を竦めた。やがて訓練場に到着する。
「セレスティアも言っていたが、覚醒するとまず感覚が違う。動きに際してこの違いには戸惑うだろう」
統夜はそう言いながら銃を取り出した。ナンシーも、買ったばかりの銃を抜く。
「ひとまず向け合ってみよう」
「了解」
統夜はシャープシューティングのスキルで銃口を上げた。ナンシーはその勢いに圧されて目を丸くする。狙いの付け方、その精密さが違う。
「なるほどね? これがスキル、マテリアルの力ってことか」
「そう言うことだ。これは割と早い段階で習得できるスキルだ。ただし、狙いを付けることに集中するから身動きが取れなくなる」
「安心した。狙いを付けながらめちゃくちゃ走り回れとか言われたら無理だもん。できないなら、やらないという前提で話が進められるよね」
「できることが多すぎると考えることが多すぎる。制約があるならそこは省いて考えても良いってこったな」
「今のように、スキルには性能の特化と同時に制約のかかるものも多くあります」
セレスティアが総括した。
「聖導士ですと、ダメージを与える代わりに動けなくする、なんてスキルもあります。動きを止める代わりにダメージは入らないんです」
「だったらダメージの方が良いんじゃないの?」
「ところが、そうも行かないんですぅ」
ハナが肩を竦める。
「ものすごく回避が高くて、動きを止めないと全然攻撃が当たらない、どんどんこっちのスキル回数ばっかり減っていく……なんてこともありえますしぃ、行動を制限するスキルって言うのは結構使いどころが多いんですぅ。符術師ですと地縛符とか、五色光符陣なんかもそうですねぇ」
説明しながら、ハナは五色光符陣を発動して見せた。まばゆい光にヴィクターが思わず後ずさる。
「びっくりした! フラッシュバンみたいなもんか」
「そう言う使い方もできますねぇ」
「私もお見せしますね」
智里が前に出た。デルタレイを発動する。三角形の頂点から発射される光に、三人は目を丸くした。
「私はこのデルタレイと、攻性防壁をよく使います。相手の攻撃に電撃で反撃して麻痺させるんです」
「便利ですね。ところで、それは、杖、ですか?」
マシューは不思議そうに智里のエグリゴリを見る。
「杖です。ただ、これは機導術も使える杖です」
「あ、それ聞いたことあるよ。アクセサリーとか着てるものでも魔法が使えるってやつでしょ」
「ああ……あったなそんなこと」
ヴィクターが目を逸らした。と、言うのも、彼がアプリ絡みで発狂しかかった時に、アクセサリーや着ているものを発動媒体とした魔法で助けてもらったことがあるのである。
「それと」
統夜は装填を確かめると、的とは違う方向に銃口を向けた。なんだろう、と思ってナンシーが見ていると、彼は引き金を引く。放たれた弾丸は固い音を立てて床で跳ねると、的を貫いた。
「ヒュウ!」
跳弾だ。
「あんまり遠くの相手は狙えないがな」
「それもスキル?」
「そうだ」
統夜は銃口を的に向ける。
「それからこういうのもある。ハウンドバレットと言って……」
弾丸が奇妙な軌道を描いて、的を二度貫くのを彼らは見た。
「これは直線上にいる相手なら数体狙うこともできるし、同じやつに二回当てることもできる。二回以上狙われると避けにくい」
「蛸殴りにすれば避けられない」
「違う、そうじゃねぇ」
統夜の言うことに目を輝かせるナンシーに、ヴィクターが頭を抱えた。マシューは早速機導砲を撃ちまくっている。
「これすごいですよヴィクターさん! ヴィクターさんも試してみては」
「とりあえず胡蝶符でしょうかぁ」
マシューとハナに勧められて、ヴィクターは胡蝶符を放った。光る蝶がまっすぐに飛んでいく。
「オウ……あれ、蝶だよな……」
「蝶ですねぇ。あ、符は使うと弾丸と一緒で消費されますぅ。手札がなくなっちゃうと術が使えなくなっちゃうんでぇ、リロードは心がけておいてください。ドローアクションだとすぐに準備できますよぉ」
「猟撃士はクイックリロードって似たような技術がある」
「覚えておく。弾切れは怖いからね」
「符術師はバフやデバフ、調査が得意ですぅ。回復以外何でもできますぅ。だからこそ符と術がきれたらアウトですぅ。代替手段や通信機器は大事ですけどぉ、アクセサリはタロット全埋めがお勧めですぅ。私は調査のダウジングにもよく使いますぅ」
「なるほどな、術によってはすげぇ枚数一気に使うのな……とはいえ準備していったもん使い切ったらその時点で最善じゃねぇからな。多すぎるくらいが丁度良いか」
「それから」
セレスティアが祈りを捧げた。誰も怪我はしていないが、フルリカバリーの光は温かい。
「回復のことも忘れないでくださいね。ハンターだって、怪我はしますよ」
●これからのこと
一通りスキルを体験して、一行は戻ってきた。統夜がナンシーを見下ろす。
「どうだった? 役に立ったか?」
「そりゃもちろん! もし依頼とかで一緒することがあったらその時はまた教えてよ」
「まずは同じ依頼に入れるくらい練度上げないとやべぇだろ……その前にサブで聖導士習得して……」
力を得て暴れるつもりのナンシーの背中を見ながら、ヴィクターが半ば光を失った目でぶつぶつと呟いている。その背中を、ハナが軽く叩いた。
「ハンターは人を助ける仕事ですぅ。無理せず頑張って下さいねぇ」
「おう……そう言うハナもな……強いとその分やべぇもんの相手させられるだろ」
「いずれヴィクターさんが一緒にやべぇもんの相手してくださるのを楽しみにしてますぅ」
「元々俺は支援職だからな……まあお前らの支援できるならそれに越したことはねぇな」
その様子を、マシューは安堵したように見つめている。智里は知っている。マシューは、ヴィクターが精神的に追い詰められているところを目の当たりにしてずっと気を揉んでいたことを。
セレスティアも、仲間を失ったナンシーが泣きわめいたところを聞いている。二人は目を見交わした。
「良かったですね」
「ええ、本当に。ナンシーさん」
セレスティアが声を掛ける。
「良かったら今度お食事でもご一緒にどうですか? 戦い以外のこともお話して差し上げられると思います」
「良いの? あたしからも是非お願いするよ。その前に、買い物付き合ってくれない? 装備も整えたいし、あとあれ、ポーションほしい」
「もちろんです」
「俺も符とかそろえたいな。ハナの見てると面白い符がいっぱいあるみたいだし」
「でしたら自分は銃を。でも、その前にレクチャーしてもらいましたって受付に報告した方が良さそうですね」
「そうだね。受付に声かけてからショップ付き合ってもらおうかな」
ナンシーは頷いてから、ハンターたちを見た。
「あんたたちありがとうね。とはいえ、これからも世話になることはたくさんあると思うから、その時はよろしく。あたしたちも、あんたたちが必要なら助けに行けるように頑張るよ」
職員の募集に応じたのは四人のハンターたちだった。聖導士のセレスティア(ka2691)、猟撃士の瀬崎・統夜(ka5046)、符術師の星野 ハナ(ka5852)、そして機導師の穂積 智里(ka6819)だ。
「ナンシーさんはお久しぶりです」
「ナンシーさん達もハンターになったんですね。仲間が増えてうれしいです」
この内、セレスティアと智里はナンシーがカジノで窮地に陥った時に救援に来てくれたハンターである。
「あんたたち! 元気そうで良かったよ」
「俺は瀬崎・統夜。よろしくな」
クラスが同じと言うことでレクチャーに入る統夜が手を差し出した。ナンシーはその手を握って、
「こちらこそよろしく」
「曹長様はモテモテで羨ましいね」
茶化すヴィクターに、そっと人影が忍び寄る。その人はヴィクターの手をがしっと握り……。
「本日現在、猟撃士登録八百四十七名、機導師登録八百六十名、符術師登録二百五名ッ……今も絶賛増加中……オカルティックな世界へようこそですぅ」
符術師のハナだった。ヴィクターは、彼女が上げた数字を頭の中で吟味してから目を剥いた。ざっと概算して四対四対一の割合である。
「符術師そんなにいねぇの!?」
「意外ですね」
マシューが説明書きを読みながら言う。
「便利なスキルが多い様に見受けられますが」
「回復以外なら何でもできますぅ」
「待てよ、俺たちもしかして全員殴りに行くクラス選んでねぇか?」
「そう言うところも含めてご説明しますね」
セレスティアがにこりと笑った。
●ハンターシステムとは
「私はメインクラスがご一緒の方がおられませんので、全体的なことをお話ししますね」
と、セレスティアが告げると、一同は黙って彼女を見た。
「ハンターの特徴といえばやはり適性に応じて大きく十通りに分かれるということでしょうか。それと覚醒というシステム」
「適性がクラスだね?」
「そうです」
「もう選んじゃったけど」
「みなさん状況に合わせた補助が得意な職種を選んでらっしゃいますぅ」
ハナが補足した。
「猟撃士は遠距離とCAM戦闘が得意になりますしぃ、機導師は機械を介した補助が得意ですしぃ、符術師は符を介しての調査戦闘が得意って感じでしょぉかぁ。個別は各担当ごとで話しますけどぉ」
「なるほどね。ね、銃が上手く扱えると思って選んだんだけど、殴っても良いんだよね?」
「おい、ナンシー……」
「いや、殴っても構わない」
恐る恐るヴィクターがなだめようとするのを、統夜が制した。
「一口に猟撃士と言ってもいろいろだ。遠距離射撃を得意とするもの、弾をばら撒き制圧を行うもの、俺の様に速度と格闘技術を生かして接近戦も対応するもの、とな」
「その辺りは今まで自分たちがしていたことと変わりませんね」
マシューが頷いた。
「そうだな。今までの経験も併せて、自分に合ったスタイルを身につけて応じたスキルを学ぶのが良いと思うぜ」
「うんうん。習うより慣れろってね。セレスティア、続けて」
「はい。覚醒は一度したら一時間は持ちますが、逆に言えばそれしか続きません。経験を積めば一日に再度の使用することも可能になっていきますが、まずそれを意識してほしいです。」
「ずっと無敵ってわけじゃねぇのか」
ヴィクターが神妙な顔になる。
「覚醒してても無敵ではないんですけどね」
智里が言った。
「ですが、覚醒するとそうでないときとは比べ物にならないほど丈夫になります。そしてスキルというマテリアルを使った特殊能力を扱えます。私の様な聖導士であれば傷の治療をはじめとした魔法ですね」
「聖導士になっときゃ良かったかな」
ヴィクターが呟く。
「治療ができねぇ」
その肩を、満面の笑みでハナが叩いた。
「ふっふっふ。ご心配なくですよぉ、ヴィクターさん」
「お、おう……」
「サブクラスというのがあるんですぅ」
「セールスみてぇになってきたな、あんた」
●サブクラスを取得してオールラウンダーを目指そう!
「戦闘は習うより慣れろですねぇ。そのためにも週二回利用できるハントは積極的に通ってレベル上げとイクシード取得をお勧めしますぅ。これを貯めるとサブクラスが取得できて一挙にできることが広がりますぅ」
「サブクラス」
「たとえばなんですけどぉ、ナンシーさんは殴るのがお好きでしたらサブクラスに格闘士とか取ってぶん殴るスキルが使えるんですぅ」
「へぇ!」
「符術師は?」
「私は符術師はオールラウンダーだと思ってますのでぇ、サブには防御も魔法威力も上がって回復もできるようになる聖導士をお勧めしますけどぉ、本人さんの戦術次第だとも思うのでぇ……訓練場で各種調べてみて下さいぃ」
「聖導士って言うのがセレスティアのクラスだな?」
「はい。聖導士もなかなかオールラウンドですよ。魔法も物理も治療もできます」
「今、訓練場の話が出たが」
統夜が職員を振り返る。
「訓練場、使えるか? 実際にスキルを実演したい」
「そう仰ると思って押さえておきましたぁ」
職員はこっくりと頷く。
「ただ、順番なのでもうちょっとお待ちください」
「了解。そしたら、実際にスキルがどんなものか、覚醒するとどんな風になるかというのを体験してもらおう」
●体験! 覚醒者の身のこなし
やがて、訓練場の空きが出た。職員に見送られて彼らは訓練場に移動する。
「ハンターは強くなって訓練場で新しいスキルを覚えての繰り返しです」
智里が隣を歩くマシューに説明した。
「同じ術も複数習得して威力重視や回数重視に変えていきます。装備も錬成工房でどんどん強化します。良く壊れもしますけど。だからマテリアルの使い方と言われても、戦闘で回数切れ起こさないように考えながらどんどん使って覚えるものという気がします」
「なるほど……弾丸の残りのようなものですね」
「はい。ちなみに、機導師は機械を介する魔術師です。本職より防御力は少し高くて味方へのバフが得意です。浄化も飛行もできます。銃器との相性も悪くないです」
「飛べるの?」
前を歩いていたナンシーが振り返った。
「飛べます。マテリアルを足から噴射するスキルがあるんです」
「斥候もできそうですね」
「そうですね。追跡なんかにも。私は中途半端ですけど、装備を整えて機導砲で千越えのダメージを叩き出すトップランカーの方も、ガチガチに鎧を固めて前線で攻撃しながら指揮を執る方もいます」
「千越え……」
ヴィクターが恐れをなしたように呟いた。
「ただ銃器はリロードで弾切れが防げる分威力を銃単体で出さなければならない制約もあるので、そういう方々はもう魔法一本に絞ってらっしゃいますね」
「さっき、統夜も言ってたけど、一口にそのクラスって言っても色んな運用の仕方があるんだねぇ。あたしたちどうしようか」
「やって覚えるしかねぇだろ。頼むぜ曹長」
ヴィクターが肩を竦めた。やがて訓練場に到着する。
「セレスティアも言っていたが、覚醒するとまず感覚が違う。動きに際してこの違いには戸惑うだろう」
統夜はそう言いながら銃を取り出した。ナンシーも、買ったばかりの銃を抜く。
「ひとまず向け合ってみよう」
「了解」
統夜はシャープシューティングのスキルで銃口を上げた。ナンシーはその勢いに圧されて目を丸くする。狙いの付け方、その精密さが違う。
「なるほどね? これがスキル、マテリアルの力ってことか」
「そう言うことだ。これは割と早い段階で習得できるスキルだ。ただし、狙いを付けることに集中するから身動きが取れなくなる」
「安心した。狙いを付けながらめちゃくちゃ走り回れとか言われたら無理だもん。できないなら、やらないという前提で話が進められるよね」
「できることが多すぎると考えることが多すぎる。制約があるならそこは省いて考えても良いってこったな」
「今のように、スキルには性能の特化と同時に制約のかかるものも多くあります」
セレスティアが総括した。
「聖導士ですと、ダメージを与える代わりに動けなくする、なんてスキルもあります。動きを止める代わりにダメージは入らないんです」
「だったらダメージの方が良いんじゃないの?」
「ところが、そうも行かないんですぅ」
ハナが肩を竦める。
「ものすごく回避が高くて、動きを止めないと全然攻撃が当たらない、どんどんこっちのスキル回数ばっかり減っていく……なんてこともありえますしぃ、行動を制限するスキルって言うのは結構使いどころが多いんですぅ。符術師ですと地縛符とか、五色光符陣なんかもそうですねぇ」
説明しながら、ハナは五色光符陣を発動して見せた。まばゆい光にヴィクターが思わず後ずさる。
「びっくりした! フラッシュバンみたいなもんか」
「そう言う使い方もできますねぇ」
「私もお見せしますね」
智里が前に出た。デルタレイを発動する。三角形の頂点から発射される光に、三人は目を丸くした。
「私はこのデルタレイと、攻性防壁をよく使います。相手の攻撃に電撃で反撃して麻痺させるんです」
「便利ですね。ところで、それは、杖、ですか?」
マシューは不思議そうに智里のエグリゴリを見る。
「杖です。ただ、これは機導術も使える杖です」
「あ、それ聞いたことあるよ。アクセサリーとか着てるものでも魔法が使えるってやつでしょ」
「ああ……あったなそんなこと」
ヴィクターが目を逸らした。と、言うのも、彼がアプリ絡みで発狂しかかった時に、アクセサリーや着ているものを発動媒体とした魔法で助けてもらったことがあるのである。
「それと」
統夜は装填を確かめると、的とは違う方向に銃口を向けた。なんだろう、と思ってナンシーが見ていると、彼は引き金を引く。放たれた弾丸は固い音を立てて床で跳ねると、的を貫いた。
「ヒュウ!」
跳弾だ。
「あんまり遠くの相手は狙えないがな」
「それもスキル?」
「そうだ」
統夜は銃口を的に向ける。
「それからこういうのもある。ハウンドバレットと言って……」
弾丸が奇妙な軌道を描いて、的を二度貫くのを彼らは見た。
「これは直線上にいる相手なら数体狙うこともできるし、同じやつに二回当てることもできる。二回以上狙われると避けにくい」
「蛸殴りにすれば避けられない」
「違う、そうじゃねぇ」
統夜の言うことに目を輝かせるナンシーに、ヴィクターが頭を抱えた。マシューは早速機導砲を撃ちまくっている。
「これすごいですよヴィクターさん! ヴィクターさんも試してみては」
「とりあえず胡蝶符でしょうかぁ」
マシューとハナに勧められて、ヴィクターは胡蝶符を放った。光る蝶がまっすぐに飛んでいく。
「オウ……あれ、蝶だよな……」
「蝶ですねぇ。あ、符は使うと弾丸と一緒で消費されますぅ。手札がなくなっちゃうと術が使えなくなっちゃうんでぇ、リロードは心がけておいてください。ドローアクションだとすぐに準備できますよぉ」
「猟撃士はクイックリロードって似たような技術がある」
「覚えておく。弾切れは怖いからね」
「符術師はバフやデバフ、調査が得意ですぅ。回復以外何でもできますぅ。だからこそ符と術がきれたらアウトですぅ。代替手段や通信機器は大事ですけどぉ、アクセサリはタロット全埋めがお勧めですぅ。私は調査のダウジングにもよく使いますぅ」
「なるほどな、術によってはすげぇ枚数一気に使うのな……とはいえ準備していったもん使い切ったらその時点で最善じゃねぇからな。多すぎるくらいが丁度良いか」
「それから」
セレスティアが祈りを捧げた。誰も怪我はしていないが、フルリカバリーの光は温かい。
「回復のことも忘れないでくださいね。ハンターだって、怪我はしますよ」
●これからのこと
一通りスキルを体験して、一行は戻ってきた。統夜がナンシーを見下ろす。
「どうだった? 役に立ったか?」
「そりゃもちろん! もし依頼とかで一緒することがあったらその時はまた教えてよ」
「まずは同じ依頼に入れるくらい練度上げないとやべぇだろ……その前にサブで聖導士習得して……」
力を得て暴れるつもりのナンシーの背中を見ながら、ヴィクターが半ば光を失った目でぶつぶつと呟いている。その背中を、ハナが軽く叩いた。
「ハンターは人を助ける仕事ですぅ。無理せず頑張って下さいねぇ」
「おう……そう言うハナもな……強いとその分やべぇもんの相手させられるだろ」
「いずれヴィクターさんが一緒にやべぇもんの相手してくださるのを楽しみにしてますぅ」
「元々俺は支援職だからな……まあお前らの支援できるならそれに越したことはねぇな」
その様子を、マシューは安堵したように見つめている。智里は知っている。マシューは、ヴィクターが精神的に追い詰められているところを目の当たりにしてずっと気を揉んでいたことを。
セレスティアも、仲間を失ったナンシーが泣きわめいたところを聞いている。二人は目を見交わした。
「良かったですね」
「ええ、本当に。ナンシーさん」
セレスティアが声を掛ける。
「良かったら今度お食事でもご一緒にどうですか? 戦い以外のこともお話して差し上げられると思います」
「良いの? あたしからも是非お願いするよ。その前に、買い物付き合ってくれない? 装備も整えたいし、あとあれ、ポーションほしい」
「もちろんです」
「俺も符とかそろえたいな。ハナの見てると面白い符がいっぱいあるみたいだし」
「でしたら自分は銃を。でも、その前にレクチャーしてもらいましたって受付に報告した方が良さそうですね」
「そうだね。受付に声かけてからショップ付き合ってもらおうかな」
ナンシーは頷いてから、ハンターたちを見た。
「あんたたちありがとうね。とはいえ、これからも世話になることはたくさんあると思うから、その時はよろしく。あたしたちも、あんたたちが必要なら助けに行けるように頑張るよ」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/06 19:58:18 |
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お仲間歓迎のご相談♪ 星野 ハナ(ka5852) 人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2018/11/06 20:01:59 |