ゲスト
(ka0000)
愛おしき人形―dianthusBF―
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~9人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/11/11 19:00
- 完成日
- 2018/11/25 01:47
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●誰かの今際
こっちにいらっしゃいと、爛れたこの手を引いたのは、小さな小さな白い陶器の手。
旦那様の最後にして最高の傑作だというお嬢様は、無くして久しい心臓が爆ぜるくらいに美しかった。
お嬢様をお作りになった旦那様の技術で、死体相応に爛れた肌は整えられ、新しく植えられた金の髪をお嬢様が手ずからに結って下さって、そして。
私のことを、お嬢様のお友達になるはずだったお方の名前で呼ばれた。
ユリア、というそのお友達を連れ去ってしまったのは、ハンターという良くない者の集まりらしい。
お嬢様が私を連れてここへ来たのは、お嬢様の新しいお友達の為だそう。
小さな男の子で、両親の亡骸を前に泣いてばかりいる。
新しい死体を動かすのは、私は得意では無いけれど、お嬢様が、この子に素敵な魔法を掛けてあげたいと仰るから、出来るだけの恩返しのつもりだった。
お嬢様のお友達になれば、この子はきっと自分の両親くらい、自分で用意出来るのだ。
旦那様がお嬢様をそうしたように。
この子がお嬢様のお友達になる準備を整えるまで、私は死体をどうにか動かして、食事を運んだり遊ばせたり、時には寝かしつけたりもした。
借り物のお家をお嬢様が掌握した頃、お友達になる準備もできて、私は最後の買い出しを終わらせた死体を捨てた。
最後の最後。
お友達になる約束を終えるまで、それを始めてしまったら、少し騒がしくなってしまうだろうこのお家の地下に作ったお嬢様のお部屋。
そこへ誰も通さないことが私の……お嬢様の手に縋った私の恩返しで、お嬢様の友達になれなかった本物のユリアがきっと、お嬢様とお友達になって、してあげたかったこと。
難しいことを考えるのは疲れてしまう。
旦那様に整えて頂いた顔が砕けてしまうのに、私を守ってくれる子ども達はもういない。
――お嬢様、私はちゃんと、あなたのお友達をできていましたか?
●
階段からハンター達の方へ転がる様に飛んできた椎木は、息を整えることも無く部屋を見回す。
既に見付けていた物も含め、数十の不審物が目に留まった。
ハンター達の足元、今開かれようとする地下への扉。
キッチンの地下収納にも見えるそれは、しかし、溢れてくる負のマテリアルの気配が尋常では無い。
「推測を含みますが――
椎木は2階の状況を掻い摘まんで話した。
発見した不審物の数と配置、ダミーの有無、個々の威力と、全てが爆発したと仮定した場合の被害。
そして、今確認したこの階の様子。
ラヴェルと2階を調査しながら、幾つかのパターンを思考していたのだろう。
引き当てたのは、余り芳しくない結果らしい。
――皆さんが進まれた瞬間にこの家屋は倒壊します」
マテリアルにより制御される爆発物はラヴェルの手に負える数では無かった。
その中で、ハンターの命は助けられる物を選んで壊している。
進むか退くか、どちらにしても結論を出したタイミングで、残りが敵の手によって爆発させられるだろう。
戦いの中、接触のあったはずのハンター達のマテリアルで、それらが爆発に至らなかったのは、恐らく制御している者が存在するから。
ならば、当然、こうして集まっている今すぐ、爆発に導くことも可能と考えられる。
この会話を許しているのは、感知していないのか、或いは余裕が有るのか。
「嘘を吐くのは下手なので正直に申し上げますが。精霊が感知している下階の歪虚は1体です。生者と死者、契約者の区別は付きません。ですが、歪虚の他に何かが存在していたとして、それは歪虚や雑魔ではない。助けるべき存在、……だと思います」
椎木はほんの少し外が見える窓を肩越しに振り返って示した。
逃げる決断が出来たら、あの窓を割って下さい。
枠が歪んでいるので開けることは出来ません。手に気を付けて。
精霊が、その上だけはすぐには崩れないと言っていた。窓の傍だけは、と。
「上からラヴェルを連れて先に出ます。窓の外であなた方を引きずり出す準備をしなければ。……あなた方も、助けるべき存在ですから」
●
甘い香りの漂う仄暗い部屋。
人工的な明かりがぼんやりと照らす複雑な紋様を織るカーペット、天鵞絨を張った豪奢な作りの古い椅子。
カーペットには柔らかな毛布と小さな子ども、椅子には綺麗な人形が座っている。
人形は子どもへ花を一輪差し出した。
「この花を選びなさい。貴方はいずれ、貴方の大切な人を取り戻す力を得ることが出来る」
少女の声が語りかける。痩せた子どもは、毛布に包まったまま、落ち窪んだ暗い瞳をじっとその花へ向ける。
悍ましい色をして、黒い靄を纏う一輪の薔薇。
椅子の裏側に張られた重厚なカーテンがふんわりと揺れる。
微かに捲れたその端から、闇の中に点々と灯る白磁の燭台が覗いた。
こっちにいらっしゃいと、爛れたこの手を引いたのは、小さな小さな白い陶器の手。
旦那様の最後にして最高の傑作だというお嬢様は、無くして久しい心臓が爆ぜるくらいに美しかった。
お嬢様をお作りになった旦那様の技術で、死体相応に爛れた肌は整えられ、新しく植えられた金の髪をお嬢様が手ずからに結って下さって、そして。
私のことを、お嬢様のお友達になるはずだったお方の名前で呼ばれた。
ユリア、というそのお友達を連れ去ってしまったのは、ハンターという良くない者の集まりらしい。
お嬢様が私を連れてここへ来たのは、お嬢様の新しいお友達の為だそう。
小さな男の子で、両親の亡骸を前に泣いてばかりいる。
新しい死体を動かすのは、私は得意では無いけれど、お嬢様が、この子に素敵な魔法を掛けてあげたいと仰るから、出来るだけの恩返しのつもりだった。
お嬢様のお友達になれば、この子はきっと自分の両親くらい、自分で用意出来るのだ。
旦那様がお嬢様をそうしたように。
この子がお嬢様のお友達になる準備を整えるまで、私は死体をどうにか動かして、食事を運んだり遊ばせたり、時には寝かしつけたりもした。
借り物のお家をお嬢様が掌握した頃、お友達になる準備もできて、私は最後の買い出しを終わらせた死体を捨てた。
最後の最後。
お友達になる約束を終えるまで、それを始めてしまったら、少し騒がしくなってしまうだろうこのお家の地下に作ったお嬢様のお部屋。
そこへ誰も通さないことが私の……お嬢様の手に縋った私の恩返しで、お嬢様の友達になれなかった本物のユリアがきっと、お嬢様とお友達になって、してあげたかったこと。
難しいことを考えるのは疲れてしまう。
旦那様に整えて頂いた顔が砕けてしまうのに、私を守ってくれる子ども達はもういない。
――お嬢様、私はちゃんと、あなたのお友達をできていましたか?
●
階段からハンター達の方へ転がる様に飛んできた椎木は、息を整えることも無く部屋を見回す。
既に見付けていた物も含め、数十の不審物が目に留まった。
ハンター達の足元、今開かれようとする地下への扉。
キッチンの地下収納にも見えるそれは、しかし、溢れてくる負のマテリアルの気配が尋常では無い。
「推測を含みますが――
椎木は2階の状況を掻い摘まんで話した。
発見した不審物の数と配置、ダミーの有無、個々の威力と、全てが爆発したと仮定した場合の被害。
そして、今確認したこの階の様子。
ラヴェルと2階を調査しながら、幾つかのパターンを思考していたのだろう。
引き当てたのは、余り芳しくない結果らしい。
――皆さんが進まれた瞬間にこの家屋は倒壊します」
マテリアルにより制御される爆発物はラヴェルの手に負える数では無かった。
その中で、ハンターの命は助けられる物を選んで壊している。
進むか退くか、どちらにしても結論を出したタイミングで、残りが敵の手によって爆発させられるだろう。
戦いの中、接触のあったはずのハンター達のマテリアルで、それらが爆発に至らなかったのは、恐らく制御している者が存在するから。
ならば、当然、こうして集まっている今すぐ、爆発に導くことも可能と考えられる。
この会話を許しているのは、感知していないのか、或いは余裕が有るのか。
「嘘を吐くのは下手なので正直に申し上げますが。精霊が感知している下階の歪虚は1体です。生者と死者、契約者の区別は付きません。ですが、歪虚の他に何かが存在していたとして、それは歪虚や雑魔ではない。助けるべき存在、……だと思います」
椎木はほんの少し外が見える窓を肩越しに振り返って示した。
逃げる決断が出来たら、あの窓を割って下さい。
枠が歪んでいるので開けることは出来ません。手に気を付けて。
精霊が、その上だけはすぐには崩れないと言っていた。窓の傍だけは、と。
「上からラヴェルを連れて先に出ます。窓の外であなた方を引きずり出す準備をしなければ。……あなた方も、助けるべき存在ですから」
●
甘い香りの漂う仄暗い部屋。
人工的な明かりがぼんやりと照らす複雑な紋様を織るカーペット、天鵞絨を張った豪奢な作りの古い椅子。
カーペットには柔らかな毛布と小さな子ども、椅子には綺麗な人形が座っている。
人形は子どもへ花を一輪差し出した。
「この花を選びなさい。貴方はいずれ、貴方の大切な人を取り戻す力を得ることが出来る」
少女の声が語りかける。痩せた子どもは、毛布に包まったまま、落ち窪んだ暗い瞳をじっとその花へ向ける。
悍ましい色をして、黒い靄を纏う一輪の薔薇。
椅子の裏側に張られた重厚なカーテンがふんわりと揺れる。
微かに捲れたその端から、闇の中に点々と灯る白磁の燭台が覗いた。
リプレイ本文
●
握り締めた包みがアリア・セリウス(ka6424)の手の中で軋む音を立てた。
助けるために、ここまで。上階で爆ぜた影響か、木屑を溢す天井を見上げて思う。
灯した端末の無機質な光りを映して雪の如き淡い光が、ちらちらと明滅し漂う。青い双眸が足元を、先の敵を見据えると、その瞳孔が縦に裂ける。
「それは、子供が秘める一番の……」
誰かの為に成すことこそ強さだと思う。その強さが危うい可能性を引き当ててしまう前に、光の下へ導くべく、アリアは蓋へ手を掛けて、星野 ハナ(ka5852)を見る。
使って欲しいと、マリィア・バルデス(ka5848)の手にカンバスの包みが託される。
マリィアが頷いて、それを確りと受け取った。
海中に漂うかのように揺らぐ、束ねたブラウンの髪。今度こそ。誓うように伏せた瞼を開くと蒼い瞳が輝く。
「絶対助けますぅ!」
深く、深く、息を吐く。
嘗て、救う手の届かなかった少女がいた。
今度こそ、失敗しない。
子どもの場所を教えて欲しいとマリィアが言う。
それに答えた2人を見て、玲瓏(ka7114)が蓋の傍に屈んで自身の持つ包みを解き、頷く。その片手には伏した杖が構えられ、聖印を輝かせている。
「もう誰もお前に契約なんてさせないですぅ!」
記憶へ抗うように声を張り上げ、星野は得物たる符を握り締めた。
玲瓏の杖を介して届く祈りが星野のマテリアルを騒がせ、昂ぶらせる。片手で包みを解くと同時に、アリアと星野が地下への蓋を開けた。
収納の蓋だったその下に広がっていたのは、暗い部屋。
カーペットを敷き、仄かな明かりが所々灯っている。薄暗く、湿った。負のマテリアルの気配が重く立ち込め、進む足を竦ませるほど、息苦しい部屋。
包みを傾けて蓋の真下へ注がれた砂粒は、仄かな光りを帯びて広がる。漂う様に床に落ち、細かな粒が舞い上がり、やがてそれも静まっていく。
蓋の退けられた穴の縁へ手を掛け、アリアと星野が下へ降りる。足の届かない高さだが構わずに飛び降り、砂の上へ降り立った。
僅かに舞い上がるその砂粒から、確かに精霊の加護を感じる。
続けて玲瓏の杖が振るわれ、祈りを受け取りながらアリアは端末の頼りない光りを四方へ向けた。
1つ目の爆発音は真上に聞いた。
続けざまに2つ、3つ、視界の隅で天井の板が1枚落ちた。
玄関の方だろうか、音の止む様子は無く、すぐにここにもその崩壊が至るだろう。
カリアナ・ノート(ka3733)も包みをGacrux(ka2726)へ托し、玲瓏と穴の縁へ屈む。
「時間はありません、お願いします」
先に2人が降りた穴へ、玲瓏も手を掛ける。続いてカリアナも。
「そこにもあるみたいだわ。これ、使ってね」
示した鉢は斜めに、不自然なバランスでそこに立っている。土は零れて黒く枯れた葉が垂れた状態で。
隣の鉢も萎びているが、その違いは一目瞭然、置かれている場所で爆ぜて床が落ちれば地下の仲間や、捕らわれているだろう子どもが危うい。
「間に合いますかねえ……それにしても」
響き続ける音を聞きながら、ガクルックスは呟く。あの歪虚のお家芸か、以前対峙した人形の歪虚の最後の手は、そう、だった。
自身が見付けた物と、カリアナから任されたもの。恐らくまだあるだろうが、どれを避ければ。
思考と手は殆ど同時に動いている。
ガクルックスが投じた鉢が崩れかけた天井と共に爆ぜるのを最後に玲瓏は掴んだ縁から手を離す。
ここで退くことは出来ない。
あと少しだ。あと少しで、届くはずだ。
「6時の方向、……っ、距離は――――」
玲瓏が降り立った直後、カリアナの降りた音を聞くと同時に視界の先へ広がった砂。アリアの高い声。
光りが捉えた敵の姿。
薄く微笑む壮絶に美しい少女の人形。
重なる古い照明の橙色の明かりが柔らかく照らして浮かび上がらせる白磁には、丁寧に修復された跡が幾つも残っている。
そのすぐ傍らにゆっくりと上下に動く毛布の塊があった。
それを捉えた瞬間に、アリアは砂をカンバスを解いた砂を投じた。
広がる砂が敵までの道を作る。
救助すべき子どもの位置を告げる声は上階へも届き、マリィアは反射的に床を蹴った。
伝えられた子どもの真上へ至ると、違和感を感じた物を全て投じる。手を繋いだ陶器の人形。1つは洒落たキャンディーボックス、向き合い歪に笑ったもう1つが爆ぜると色取り取りの飴をまき散らした。
から、ころ、と軽い音に耳を貸さず、目を捕らわれず。砂を巻き、視線を走らせ、自身の真上が軋むまでマリィアは手を止めなかった。
背後で轟音を聞く。倒れた柱、その振動で舞い上がる砂。飛び跳ねるように転がった時計は秒針を逆に回している。手許の最後の砂で押し付ける様に被せるが、覆うには足りない。
爆ぜる衝撃を殺しきれず、グローブの内までぴりぴりと痺れが伝う。
ガクルックスも同様に、下階の場所と仲間、子どもの位置を推し測りながら爆発物を取り除く。既に壊れた方へと投げた硝子を満たしたティーカップが、華やかに砕けながら爆風でその破片を散らす。
浮遊感を感じながら、窓へ目を遣る。瞼から目許へ染める黒と、青。眦から鋭く切れ上がる様に紋様を走らせている。
天井の軋み、零れる木片に限界を知る。椎木から聞いた窓の一角だけは酷く拉げてはいるもののその隣よりは形を保っている。
真上が崩れる直前まで、すぐに降りられる距離を保って異物の除去に当たるが、地下への穴は先の柱に塞がれた。
脱出の為、窓へ走るマリィアとガクルックスを追う様に、埃と木屑、2階の家具を溢しながら、天井が剥がれ落ちてきた。
弾き飛ばされるように窓際へ、精霊の残した小さな安全地帯へ転がり込むと、駆る勢いのまま、ガクルックスは鎧を当てて窓硝子を割り脱出を図る。マリィアも続けて外へ出る。
瓦礫を転がり落ちてきた2人を迎えた職員とハンターに引き摺られるように倒壊していく家から離れる。
最後まで残っていた窓枠と壁が、全ての支えを無くして、ゆっくりと倒れ、残った柱や梁に支えられていた屋根が落ちる。
家の建っていた場所全てが、テラコッタの瓦に覆われた。
●
止め処なく聞こえていた爆発音が止み、穴から零れてくる木屑と瓦礫に家が崩れたと知る。
残った2人が間に合ったのだろう、地下の部屋がその爆発で崩れる事は無かった。
アリアが作った砂の道を走り人形へ迫る星野の手には神獣を描く黒い符が携えられている。
やはり、この歪虚だった、二種の符を束ねて放ち、蒼い双眸が敵を睨む。
「力は使わせないですぅ」
符を留まらせ、星野自身もその場を動かずに、歪虚の力を封じることに専心する。
アリアも敵向かって前進、攻撃に相応しい構えで銀水晶の刃にマテリアルを纏わせる。
それは願いと憧憬であり、彼女自身の生命でもある。血を啜ったように、刃は赤く輝いた。
前へ動くアリアに合わせ、カリアナはその場で金を纏う槍を振り翳す。
神々しい光りに包まれ放つ氷の矢が、人形の足元を凍て付かせると、その機に合わせて、アリアが刃を振り下ろした。
足を取られながらも刃を躱して後退する間際、人形の小さな手が毛布へと伸びる。
「闇と影の中へ、行って良い存在ではないわ」
人形を引き付けようと、アリアは切っ先を更に突き付ける。
「駄目なら、直接……」
凍らせてだめなら。カリアナは霊槍の柄をくるりと取り回して中程を両手で握る。
切っ先を人形に据えるが、小さな的に眉間に皺が刻まれる。
毛布へと急いだ玲瓏は、人形の小さな舌打ちを聞く。
子どもへ伸びていた手はハンターの方へ向き、星野の符から逃れようと、豪奢なスカートを翻して身を捩った。
子どもの小さな手は花を握って、弄ぶように毟っている。それの歪さも悍ましさも理解していないだろう様子に、子どもらしいいとけなさ故に深く触れて仕舞いかねない様子に、玲瓏は手の届くまで数歩を残して語りかける。
「駄目ですよ」
それに触れていてはいけない。それはあなたに必要のないもの。
警句に反応した子どもに、再び向けられた薔薇の首を黒い符が落とす。
カリアナの投じた槍は人形も子どもも大きく逸れて床に刺さるが、子どもを見ていた人形がその攻撃に慌てた動きで顔を上げる。
二刀を構えたアリアが迫っていた。緋色の刃と、優美な月を写した銀の刃。
咄嗟に掴んだランタンを投じようと向けた人形の小さな白い陶器の手に、二刀の切っ先が迫る。
目の眩む光りが砕けた瞬間、その破片の中に白く滑らかなそれを知る。砕けて尚美しい白磁は、爪の先まで精緻に作られて、淡い桃色の塗られた爪が最後に引っ掻くように動いて霧散する。
右の手首の球体が砕け、その腕ごと瓦解し掛かる人形は、アリアを睨み付けると、椅子の背後へと逃走を図る。
アリアは刀を収め、すぐ傍の毛布を覗く。
手から薔薇を落として、子どもは目を閉じている。
細い呼吸が辛うじて聞こえるが、恐らく状態は芳しくない。
「私が盾になっても、守るわ」
人形から庇う様に抱え、玲瓏へ托す。
「何度だって止めてやりますぅ」
封印を振り切った人形へ星野が再び符を放った。
砕く力は無くとも、契約は絶対に結ばせない。
2人から託されるように毛布ごと子どもを抱えた玲瓏は、大きく後退してカリアナの傍まで下がる。
●
ブローチを弄び、窓から入り口までの位置を思い出す。
崩れる天井の下を駆け抜けた記憶は危ういが、近くにあたれば、味方からの通信で調整出来るだろう。
ガクルックスはマテリアルの刃を形作った槍を振るう。緑の光る軌跡が通り抜けると、煉瓦は舞うようにその場を退いた。
「あの辺りの筈ですねぇ」
手伝って貰えますかと、マリィアに、他のハンター達に問う。
勿論だとマリィアは倒れた壁へ手を掛けた。
すぐに見えてきた床は、傷付いているものの、爆発のそれでは無い。近いようだと耳を欹てる。
軍の経験を思い出す様に、マリィアもその周辺の瓦礫を覗く。
「無事なんですか?」
不意に掛けられた声。引き起こした柱を肩に、椎木がマリィアを見詰めていた。
「救助出来る可能性を、私は選択したつもりよ」
子どもを含めた全員を。柱の反対側を引き上げて外側へ転がしながら答える。
状況を受け取ったハンター達が示された場所を優先的に片付け始めた。離れて休んでいたラヴェルが、何かに気が付いたように近付いてくる。
「そこらの下の方で、是れの砂が零れている」
ガクルックスとマリィアは顔を見合わせた。ガクルックスの記憶とも重なる。それは玲瓏とアリアが撒いた砂のことだろう。
見付かりそうだと、安堵しながらも、未だ堆く重なる柱に肩を竦めた。
●
「ねえ、君、……わかる?」
毛布の上からそっと子どもを抱いてカリアナが話し掛ける。
子どもは細い呼吸を続けるばかり答える様子は無い。
逃走を続けた人形は、椅子の裏から更に奥へ進む。境の様なカーテンを切り落とすと、その先は穴を掘っただけの道が続き、ぼんやりと灯る陶器の燭台が並んでいた。
あれも、と思った瞬間、その想像通りに燭台は爆ぜ、土を崩して人形を追う道を塞ぐ。
符を握り締めた星野は、すぐに気持ちを切り替えて玲瓏とカリアナ、そして保護した子どもの元へ下がる。
引き直した符を周囲に巡らせた結界の中、重い空気を清めるようにマテリアルの浄化を行う。
玲瓏は、戻った仲間の様子を見て癒やしの祈りを紡ぎながら、地下の部屋の天井を見る。
漸く、状況を伝える余裕が出来たと、子どもの髪を優しく撫でて安堵の息を吐く。
助かったが、ここから出られなくてはどうしようもない。子どももひどく弱っている。
「大丈夫ですぅ、もうすぐ他の人たちも来ますよぅ。それより、飲めそうですかぁ?」
星野が手持ちの回復薬を取り出すが、それすらも難しそうだ。早く病院へ、せめて、外へと通信を急ぐ。
「――――ガクルックス様、聞こえますか?」
すぐに返された応答は、やや雑音が混ざっていた。
部屋の上を辿って、もうすぐ入り口が見えるらしい。
もう少しだよ、本当のパパとママが眠る場所まで。
音が、声が聞こえた。
外から入り口を探す音、重い柱を退かす掛け声。
張り直した結界に綻びが出始める。そろそろこちらも限界が近い。
「恐らく近いはずです。声を――――」
直接声を。
雑音が無くなり明瞭な音が届く。
ここにいます、ここです、聞こえますか。
押し退けられたた柱、覗いた茶色の髪と見開いた緑の瞳。零れる木片を玲瓏が盾を傘にして庇う。
地下の部屋へ光りが傾れ込んでくる。
「見付けたわ、良かった……」
ここよ、と響いた声に、職員が縄梯子を抱えて走ってくる。
背へ、と、アリアが玲瓏に告げて子どもを示す。
アリアに負ぶわれ、玲瓏の手に支えられて子どもは外へ昇っていく。
「貴方の両親は泣き続けることを望むかしら」
背に確かな温もりを感じてアリアが呟く。
「笑う明日を望んでいる筈よ。人形とではなく、人と」
撤去が滞りなく進み、全てが片付いた頃に子どもは小さな病室で目を覚ました。
怖ろしい夢を見たと言うが、その夢の最後は温かな光りに包まれていたらしい。
握り締めた包みがアリア・セリウス(ka6424)の手の中で軋む音を立てた。
助けるために、ここまで。上階で爆ぜた影響か、木屑を溢す天井を見上げて思う。
灯した端末の無機質な光りを映して雪の如き淡い光が、ちらちらと明滅し漂う。青い双眸が足元を、先の敵を見据えると、その瞳孔が縦に裂ける。
「それは、子供が秘める一番の……」
誰かの為に成すことこそ強さだと思う。その強さが危うい可能性を引き当ててしまう前に、光の下へ導くべく、アリアは蓋へ手を掛けて、星野 ハナ(ka5852)を見る。
使って欲しいと、マリィア・バルデス(ka5848)の手にカンバスの包みが託される。
マリィアが頷いて、それを確りと受け取った。
海中に漂うかのように揺らぐ、束ねたブラウンの髪。今度こそ。誓うように伏せた瞼を開くと蒼い瞳が輝く。
「絶対助けますぅ!」
深く、深く、息を吐く。
嘗て、救う手の届かなかった少女がいた。
今度こそ、失敗しない。
子どもの場所を教えて欲しいとマリィアが言う。
それに答えた2人を見て、玲瓏(ka7114)が蓋の傍に屈んで自身の持つ包みを解き、頷く。その片手には伏した杖が構えられ、聖印を輝かせている。
「もう誰もお前に契約なんてさせないですぅ!」
記憶へ抗うように声を張り上げ、星野は得物たる符を握り締めた。
玲瓏の杖を介して届く祈りが星野のマテリアルを騒がせ、昂ぶらせる。片手で包みを解くと同時に、アリアと星野が地下への蓋を開けた。
収納の蓋だったその下に広がっていたのは、暗い部屋。
カーペットを敷き、仄かな明かりが所々灯っている。薄暗く、湿った。負のマテリアルの気配が重く立ち込め、進む足を竦ませるほど、息苦しい部屋。
包みを傾けて蓋の真下へ注がれた砂粒は、仄かな光りを帯びて広がる。漂う様に床に落ち、細かな粒が舞い上がり、やがてそれも静まっていく。
蓋の退けられた穴の縁へ手を掛け、アリアと星野が下へ降りる。足の届かない高さだが構わずに飛び降り、砂の上へ降り立った。
僅かに舞い上がるその砂粒から、確かに精霊の加護を感じる。
続けて玲瓏の杖が振るわれ、祈りを受け取りながらアリアは端末の頼りない光りを四方へ向けた。
1つ目の爆発音は真上に聞いた。
続けざまに2つ、3つ、視界の隅で天井の板が1枚落ちた。
玄関の方だろうか、音の止む様子は無く、すぐにここにもその崩壊が至るだろう。
カリアナ・ノート(ka3733)も包みをGacrux(ka2726)へ托し、玲瓏と穴の縁へ屈む。
「時間はありません、お願いします」
先に2人が降りた穴へ、玲瓏も手を掛ける。続いてカリアナも。
「そこにもあるみたいだわ。これ、使ってね」
示した鉢は斜めに、不自然なバランスでそこに立っている。土は零れて黒く枯れた葉が垂れた状態で。
隣の鉢も萎びているが、その違いは一目瞭然、置かれている場所で爆ぜて床が落ちれば地下の仲間や、捕らわれているだろう子どもが危うい。
「間に合いますかねえ……それにしても」
響き続ける音を聞きながら、ガクルックスは呟く。あの歪虚のお家芸か、以前対峙した人形の歪虚の最後の手は、そう、だった。
自身が見付けた物と、カリアナから任されたもの。恐らくまだあるだろうが、どれを避ければ。
思考と手は殆ど同時に動いている。
ガクルックスが投じた鉢が崩れかけた天井と共に爆ぜるのを最後に玲瓏は掴んだ縁から手を離す。
ここで退くことは出来ない。
あと少しだ。あと少しで、届くはずだ。
「6時の方向、……っ、距離は――――」
玲瓏が降り立った直後、カリアナの降りた音を聞くと同時に視界の先へ広がった砂。アリアの高い声。
光りが捉えた敵の姿。
薄く微笑む壮絶に美しい少女の人形。
重なる古い照明の橙色の明かりが柔らかく照らして浮かび上がらせる白磁には、丁寧に修復された跡が幾つも残っている。
そのすぐ傍らにゆっくりと上下に動く毛布の塊があった。
それを捉えた瞬間に、アリアは砂をカンバスを解いた砂を投じた。
広がる砂が敵までの道を作る。
救助すべき子どもの位置を告げる声は上階へも届き、マリィアは反射的に床を蹴った。
伝えられた子どもの真上へ至ると、違和感を感じた物を全て投じる。手を繋いだ陶器の人形。1つは洒落たキャンディーボックス、向き合い歪に笑ったもう1つが爆ぜると色取り取りの飴をまき散らした。
から、ころ、と軽い音に耳を貸さず、目を捕らわれず。砂を巻き、視線を走らせ、自身の真上が軋むまでマリィアは手を止めなかった。
背後で轟音を聞く。倒れた柱、その振動で舞い上がる砂。飛び跳ねるように転がった時計は秒針を逆に回している。手許の最後の砂で押し付ける様に被せるが、覆うには足りない。
爆ぜる衝撃を殺しきれず、グローブの内までぴりぴりと痺れが伝う。
ガクルックスも同様に、下階の場所と仲間、子どもの位置を推し測りながら爆発物を取り除く。既に壊れた方へと投げた硝子を満たしたティーカップが、華やかに砕けながら爆風でその破片を散らす。
浮遊感を感じながら、窓へ目を遣る。瞼から目許へ染める黒と、青。眦から鋭く切れ上がる様に紋様を走らせている。
天井の軋み、零れる木片に限界を知る。椎木から聞いた窓の一角だけは酷く拉げてはいるもののその隣よりは形を保っている。
真上が崩れる直前まで、すぐに降りられる距離を保って異物の除去に当たるが、地下への穴は先の柱に塞がれた。
脱出の為、窓へ走るマリィアとガクルックスを追う様に、埃と木屑、2階の家具を溢しながら、天井が剥がれ落ちてきた。
弾き飛ばされるように窓際へ、精霊の残した小さな安全地帯へ転がり込むと、駆る勢いのまま、ガクルックスは鎧を当てて窓硝子を割り脱出を図る。マリィアも続けて外へ出る。
瓦礫を転がり落ちてきた2人を迎えた職員とハンターに引き摺られるように倒壊していく家から離れる。
最後まで残っていた窓枠と壁が、全ての支えを無くして、ゆっくりと倒れ、残った柱や梁に支えられていた屋根が落ちる。
家の建っていた場所全てが、テラコッタの瓦に覆われた。
●
止め処なく聞こえていた爆発音が止み、穴から零れてくる木屑と瓦礫に家が崩れたと知る。
残った2人が間に合ったのだろう、地下の部屋がその爆発で崩れる事は無かった。
アリアが作った砂の道を走り人形へ迫る星野の手には神獣を描く黒い符が携えられている。
やはり、この歪虚だった、二種の符を束ねて放ち、蒼い双眸が敵を睨む。
「力は使わせないですぅ」
符を留まらせ、星野自身もその場を動かずに、歪虚の力を封じることに専心する。
アリアも敵向かって前進、攻撃に相応しい構えで銀水晶の刃にマテリアルを纏わせる。
それは願いと憧憬であり、彼女自身の生命でもある。血を啜ったように、刃は赤く輝いた。
前へ動くアリアに合わせ、カリアナはその場で金を纏う槍を振り翳す。
神々しい光りに包まれ放つ氷の矢が、人形の足元を凍て付かせると、その機に合わせて、アリアが刃を振り下ろした。
足を取られながらも刃を躱して後退する間際、人形の小さな手が毛布へと伸びる。
「闇と影の中へ、行って良い存在ではないわ」
人形を引き付けようと、アリアは切っ先を更に突き付ける。
「駄目なら、直接……」
凍らせてだめなら。カリアナは霊槍の柄をくるりと取り回して中程を両手で握る。
切っ先を人形に据えるが、小さな的に眉間に皺が刻まれる。
毛布へと急いだ玲瓏は、人形の小さな舌打ちを聞く。
子どもへ伸びていた手はハンターの方へ向き、星野の符から逃れようと、豪奢なスカートを翻して身を捩った。
子どもの小さな手は花を握って、弄ぶように毟っている。それの歪さも悍ましさも理解していないだろう様子に、子どもらしいいとけなさ故に深く触れて仕舞いかねない様子に、玲瓏は手の届くまで数歩を残して語りかける。
「駄目ですよ」
それに触れていてはいけない。それはあなたに必要のないもの。
警句に反応した子どもに、再び向けられた薔薇の首を黒い符が落とす。
カリアナの投じた槍は人形も子どもも大きく逸れて床に刺さるが、子どもを見ていた人形がその攻撃に慌てた動きで顔を上げる。
二刀を構えたアリアが迫っていた。緋色の刃と、優美な月を写した銀の刃。
咄嗟に掴んだランタンを投じようと向けた人形の小さな白い陶器の手に、二刀の切っ先が迫る。
目の眩む光りが砕けた瞬間、その破片の中に白く滑らかなそれを知る。砕けて尚美しい白磁は、爪の先まで精緻に作られて、淡い桃色の塗られた爪が最後に引っ掻くように動いて霧散する。
右の手首の球体が砕け、その腕ごと瓦解し掛かる人形は、アリアを睨み付けると、椅子の背後へと逃走を図る。
アリアは刀を収め、すぐ傍の毛布を覗く。
手から薔薇を落として、子どもは目を閉じている。
細い呼吸が辛うじて聞こえるが、恐らく状態は芳しくない。
「私が盾になっても、守るわ」
人形から庇う様に抱え、玲瓏へ托す。
「何度だって止めてやりますぅ」
封印を振り切った人形へ星野が再び符を放った。
砕く力は無くとも、契約は絶対に結ばせない。
2人から託されるように毛布ごと子どもを抱えた玲瓏は、大きく後退してカリアナの傍まで下がる。
●
ブローチを弄び、窓から入り口までの位置を思い出す。
崩れる天井の下を駆け抜けた記憶は危ういが、近くにあたれば、味方からの通信で調整出来るだろう。
ガクルックスはマテリアルの刃を形作った槍を振るう。緑の光る軌跡が通り抜けると、煉瓦は舞うようにその場を退いた。
「あの辺りの筈ですねぇ」
手伝って貰えますかと、マリィアに、他のハンター達に問う。
勿論だとマリィアは倒れた壁へ手を掛けた。
すぐに見えてきた床は、傷付いているものの、爆発のそれでは無い。近いようだと耳を欹てる。
軍の経験を思い出す様に、マリィアもその周辺の瓦礫を覗く。
「無事なんですか?」
不意に掛けられた声。引き起こした柱を肩に、椎木がマリィアを見詰めていた。
「救助出来る可能性を、私は選択したつもりよ」
子どもを含めた全員を。柱の反対側を引き上げて外側へ転がしながら答える。
状況を受け取ったハンター達が示された場所を優先的に片付け始めた。離れて休んでいたラヴェルが、何かに気が付いたように近付いてくる。
「そこらの下の方で、是れの砂が零れている」
ガクルックスとマリィアは顔を見合わせた。ガクルックスの記憶とも重なる。それは玲瓏とアリアが撒いた砂のことだろう。
見付かりそうだと、安堵しながらも、未だ堆く重なる柱に肩を竦めた。
●
「ねえ、君、……わかる?」
毛布の上からそっと子どもを抱いてカリアナが話し掛ける。
子どもは細い呼吸を続けるばかり答える様子は無い。
逃走を続けた人形は、椅子の裏から更に奥へ進む。境の様なカーテンを切り落とすと、その先は穴を掘っただけの道が続き、ぼんやりと灯る陶器の燭台が並んでいた。
あれも、と思った瞬間、その想像通りに燭台は爆ぜ、土を崩して人形を追う道を塞ぐ。
符を握り締めた星野は、すぐに気持ちを切り替えて玲瓏とカリアナ、そして保護した子どもの元へ下がる。
引き直した符を周囲に巡らせた結界の中、重い空気を清めるようにマテリアルの浄化を行う。
玲瓏は、戻った仲間の様子を見て癒やしの祈りを紡ぎながら、地下の部屋の天井を見る。
漸く、状況を伝える余裕が出来たと、子どもの髪を優しく撫でて安堵の息を吐く。
助かったが、ここから出られなくてはどうしようもない。子どももひどく弱っている。
「大丈夫ですぅ、もうすぐ他の人たちも来ますよぅ。それより、飲めそうですかぁ?」
星野が手持ちの回復薬を取り出すが、それすらも難しそうだ。早く病院へ、せめて、外へと通信を急ぐ。
「――――ガクルックス様、聞こえますか?」
すぐに返された応答は、やや雑音が混ざっていた。
部屋の上を辿って、もうすぐ入り口が見えるらしい。
もう少しだよ、本当のパパとママが眠る場所まで。
音が、声が聞こえた。
外から入り口を探す音、重い柱を退かす掛け声。
張り直した結界に綻びが出始める。そろそろこちらも限界が近い。
「恐らく近いはずです。声を――――」
直接声を。
雑音が無くなり明瞭な音が届く。
ここにいます、ここです、聞こえますか。
押し退けられたた柱、覗いた茶色の髪と見開いた緑の瞳。零れる木片を玲瓏が盾を傘にして庇う。
地下の部屋へ光りが傾れ込んでくる。
「見付けたわ、良かった……」
ここよ、と響いた声に、職員が縄梯子を抱えて走ってくる。
背へ、と、アリアが玲瓏に告げて子どもを示す。
アリアに負ぶわれ、玲瓏の手に支えられて子どもは外へ昇っていく。
「貴方の両親は泣き続けることを望むかしら」
背に確かな温もりを感じてアリアが呟く。
「笑う明日を望んでいる筈よ。人形とではなく、人と」
撤去が滞りなく進み、全てが片付いた頃に子どもは小さな病室で目を覚ました。
怖ろしい夢を見たと言うが、その夢の最後は温かな光りに包まれていたらしい。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/10 01:46:09 |
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ご相談 玲瓏(ka7114) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/11/11 19:01:43 |