ゲスト
(ka0000)
【虚動】今の僕らにできること
マスター:神宮寺飛鳥

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/05 22:00
- 完成日
- 2015/01/08 02:10
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ほえ? 戻ってこいって、どういう事なのよ?」
錬魔員から派遣された通信兵が背負った短伝を手に首を傾げるブリジッタ。
『あんた何も聞いてないの!? 辺境でのCAMの起動実験は中止よ! 今すぐ戻ってらっしゃいっていうかなんて第二師団都市にまだいるのよ!?』
「カオル君改造してたらなんかテンションあがってきたのよさ」
『バカなんじゃないの?』
「なにぃい!? バカっていうやつがバカなんじゃー!」
喚くブリジッタから受話器を借り、通信兵に周囲にも音が聞こえるスピーカーモードに切り替えさせると、リーゼロッテはヤンから経緯を聞き出した。
実験場に複数の強力な歪虚が出現し、その騒動の中でCAMが奪われた事により実験は中止。各国目標を逃亡するCAMの追撃に切り替えたのだ。
『ま、そうでなくてもCAMが実際に動いて闘う所を見たそうだから、殆どのアーマー派は勝手に引き返してるわ。あんたもお役御免だから、帝都に戻りなさいな』
「おいオカマ、そのCAMはどこに向かってるんだ?」
『あちこちだけど、帝国領内では二つのルートに分かれて進行するみたいよ。今は各師団が帝国領内でCAMを止めようと先回りを始めているみたい』
「……こうなっては私達が辺境に向かう理由もありませんね。ヤンさんの言う通り、私達は帝都に……」
「――いや。辺境から帝国領を目指すならどんなルートでもこのカールスラーエからは近いのよさ。オカマ、私はカオル君で先回りしてCAMを足止めするのよね」
「えぇ!? ブリちゃん、さすがにそれは無茶ですよ! いくら改造したと言ってもカオル君はまだ……!」
「元々私はCAMなんて大嫌いでぶっ壊したかったのよさ。オカマ、敵の進路予測を教えるのね!」
ドヤ顔で語りかけるブリジッタだが、ヤンの返答はない。顔を見合わせるブリとボイン、その耳にスピーカーからの怒声が突き刺さる。
『いぃぃぃ加減にしなさい! あんたが行ってもどうにもならないし、殺されるだけよ! バカも休み休み言いなさい!」
「なにぃい!? バーカ! ……休み。バーカ!」
『あんた帰ってきたらピーマン生で食わせるわよ』
「ぴゃっ!? 鬼かおまえぇえ!?」
『リーゼロッテ、その子を連れ帰って。これも経験だと思っていたけど、命のやりとりなんて絶対に許可出来ないわ』
ヤンの言葉には確固たる決意が感じられた。その判断にはリーゼロッテも賛成だ。歪虚の力で強化されたCAMに今の魔導アーマーで太刀打ち出来る筈がない。
「ブリちゃん、今回はヤンさんの言う通りに……」
「……絶対に嫌なのよ! オカマの言う事なんて無視なのよさ!」
「ブリちゃん!」
「うっとーしーんだよ! 保護者面して偉そうな事言うな! なんで私の……カオル君の限界をおまえらが決めてんだ!?」
思わず目を見開くリーゼロッテ。その脳裏に幼い頃の記憶が過る。
――どうしてリーゼが僕の限界を決めつけるの? 長い前髪の合間から覗く悲しげな眼差しを思い出した。
「努力する機会を! 他人の可能性を! 大人の勝手な都合で台無しにしてんじゃねーのよさ!」
「……室長! 僕達からもお願いします!」
通話中のヤンが振り返ると、そこには各地から帰還を果たした魔動アーマー開発者達の姿があった。
「悔しいけど、現状最高性能の魔動アーマーはカオルクヴァッペです。勿論彼女だけに行かせません。俺達も一緒に行きます!」
「はあ!? あんた達急に何言ってんの? まさかまだ……」
「違います。今の魔動アーマーじゃCAMには敵わない、それはわかってます。そのCAMが人類にとってかけがえのない技術の塊である事も」
これまで各地で無作為に騒動を起こした開発者達だが、彼らはハンターと接する事で自分達の在り方を相談し、考えを改めたのだ。
「今の魔動アーマーではCAMには勝てない。だけど、人類の希望を守る礎になれるかもしれない。お願いです室長! ブリジッタを行かせてあげてください!」
「あ、あんた達……」
『ふん。雑魚どもは来なくてもいーのね。第一武器もないし。あ、そーだ。私が考案した新兵器、スペルランチャーでも作ってるが良いのね。まーその間に戦いは終わってるだろうけどー!』
「スペルランチャーならもうありますよぉ?」
更に全員がぐるっと振り返ると、そこにはいつの間にか錬魔院のトップ、ナサニエルが立っていた。
「どうもー、転移門で先に戻りましたぁ。って、何皆さん揃ってのけぞってるんですか?」
「げぇ、ワカメ! あんた何しに来たのよ!? 敵地よ敵地!」
「いや、私の工房の一部ですけど……。それよりスペルランチャーなら僕がもう作ってありますから、貸してあげますよ」
『はあ!? な、名前が似てるだけなのね! 勝手に人の構想パクるんじゃないのよさ!』
受話器を受け取ったナサニエルはペラペラとスペルランチャーについて語りだす。ブリジッタが徐々に冷や汗を流し、ぷるぷる震え始めたのは、それが彼女の想定よりはるかに高性能な兵器だったからだ。
「後出しはそっちですよぉ。言いがかりはよしてください」
『ちょっと待って! ナサく……院長のそのスペルランチャー理論は危険すぎます! どうせ試射もしていないような不安定な兵器を……ひゃあ!? ブリちゃんどこ触ってるの!?』
『うっせーボイン、邪魔だから受話器返すのよさぁ! ワカメ、どういう風の吹き回しだー!?』
それは場の全員が知りたい事であった。ともすればこの試作兵器の実験台にでもされるのかもしれない。猜疑心の篭った視線の中心、しかしナサニエルは飄々と笑う。
「どうって……別に。僕、結構皆さんの事気に入ってますからねぇ」
「『「 はあ!? 」』」
「皆さんはバカな凡人ですが、愚直に努力する凡人は嫌いじゃありませんからね」
「あんたってつくづく他人を見下してるわねぇ」
「それは誤解ですよぉ。皆さんは道端の蟻をいちいちバカにして歩きますかぁ? そこまで暇じゃないでしょ。むしろ行列を成してエサを運んでいる姿を見たら、応援したくなりませんか?」
思わずぞくりとするような笑顔。そう、この男は本当に――他人に悪意なんて抱かない。見下すこともない。当たり前の事を当たり前だと叫ぶ必要なんてないのだから。
「自らの限界を越えようとする意思を妨げる権利等誰にもありません。願う者には力を……それが私の方針ですよ」
ナサニエルはある意味正直だ。正直すぎるからこそ他人と衝突し、危険視もされる。
「手を貸しますよ。試作兵器のスペルランチャーと魔動アーマー、二つを最も効率よく機能させ、最大の成果を得る為に……ね?」
悪魔の誘惑を断れなかったのは、彼の立案した作戦が現実的であったから。
そして何より、彼こそが誰も逆らう事の出来ない、この魔塔の王であったからだろうか――。
「それではCAM迎撃スペルランチャー作戦、頑張っていきましょうか♪」
錬魔員から派遣された通信兵が背負った短伝を手に首を傾げるブリジッタ。
『あんた何も聞いてないの!? 辺境でのCAMの起動実験は中止よ! 今すぐ戻ってらっしゃいっていうかなんて第二師団都市にまだいるのよ!?』
「カオル君改造してたらなんかテンションあがってきたのよさ」
『バカなんじゃないの?』
「なにぃい!? バカっていうやつがバカなんじゃー!」
喚くブリジッタから受話器を借り、通信兵に周囲にも音が聞こえるスピーカーモードに切り替えさせると、リーゼロッテはヤンから経緯を聞き出した。
実験場に複数の強力な歪虚が出現し、その騒動の中でCAMが奪われた事により実験は中止。各国目標を逃亡するCAMの追撃に切り替えたのだ。
『ま、そうでなくてもCAMが実際に動いて闘う所を見たそうだから、殆どのアーマー派は勝手に引き返してるわ。あんたもお役御免だから、帝都に戻りなさいな』
「おいオカマ、そのCAMはどこに向かってるんだ?」
『あちこちだけど、帝国領内では二つのルートに分かれて進行するみたいよ。今は各師団が帝国領内でCAMを止めようと先回りを始めているみたい』
「……こうなっては私達が辺境に向かう理由もありませんね。ヤンさんの言う通り、私達は帝都に……」
「――いや。辺境から帝国領を目指すならどんなルートでもこのカールスラーエからは近いのよさ。オカマ、私はカオル君で先回りしてCAMを足止めするのよね」
「えぇ!? ブリちゃん、さすがにそれは無茶ですよ! いくら改造したと言ってもカオル君はまだ……!」
「元々私はCAMなんて大嫌いでぶっ壊したかったのよさ。オカマ、敵の進路予測を教えるのね!」
ドヤ顔で語りかけるブリジッタだが、ヤンの返答はない。顔を見合わせるブリとボイン、その耳にスピーカーからの怒声が突き刺さる。
『いぃぃぃ加減にしなさい! あんたが行ってもどうにもならないし、殺されるだけよ! バカも休み休み言いなさい!」
「なにぃい!? バーカ! ……休み。バーカ!」
『あんた帰ってきたらピーマン生で食わせるわよ』
「ぴゃっ!? 鬼かおまえぇえ!?」
『リーゼロッテ、その子を連れ帰って。これも経験だと思っていたけど、命のやりとりなんて絶対に許可出来ないわ』
ヤンの言葉には確固たる決意が感じられた。その判断にはリーゼロッテも賛成だ。歪虚の力で強化されたCAMに今の魔導アーマーで太刀打ち出来る筈がない。
「ブリちゃん、今回はヤンさんの言う通りに……」
「……絶対に嫌なのよ! オカマの言う事なんて無視なのよさ!」
「ブリちゃん!」
「うっとーしーんだよ! 保護者面して偉そうな事言うな! なんで私の……カオル君の限界をおまえらが決めてんだ!?」
思わず目を見開くリーゼロッテ。その脳裏に幼い頃の記憶が過る。
――どうしてリーゼが僕の限界を決めつけるの? 長い前髪の合間から覗く悲しげな眼差しを思い出した。
「努力する機会を! 他人の可能性を! 大人の勝手な都合で台無しにしてんじゃねーのよさ!」
「……室長! 僕達からもお願いします!」
通話中のヤンが振り返ると、そこには各地から帰還を果たした魔動アーマー開発者達の姿があった。
「悔しいけど、現状最高性能の魔動アーマーはカオルクヴァッペです。勿論彼女だけに行かせません。俺達も一緒に行きます!」
「はあ!? あんた達急に何言ってんの? まさかまだ……」
「違います。今の魔動アーマーじゃCAMには敵わない、それはわかってます。そのCAMが人類にとってかけがえのない技術の塊である事も」
これまで各地で無作為に騒動を起こした開発者達だが、彼らはハンターと接する事で自分達の在り方を相談し、考えを改めたのだ。
「今の魔動アーマーではCAMには勝てない。だけど、人類の希望を守る礎になれるかもしれない。お願いです室長! ブリジッタを行かせてあげてください!」
「あ、あんた達……」
『ふん。雑魚どもは来なくてもいーのね。第一武器もないし。あ、そーだ。私が考案した新兵器、スペルランチャーでも作ってるが良いのね。まーその間に戦いは終わってるだろうけどー!』
「スペルランチャーならもうありますよぉ?」
更に全員がぐるっと振り返ると、そこにはいつの間にか錬魔院のトップ、ナサニエルが立っていた。
「どうもー、転移門で先に戻りましたぁ。って、何皆さん揃ってのけぞってるんですか?」
「げぇ、ワカメ! あんた何しに来たのよ!? 敵地よ敵地!」
「いや、私の工房の一部ですけど……。それよりスペルランチャーなら僕がもう作ってありますから、貸してあげますよ」
『はあ!? な、名前が似てるだけなのね! 勝手に人の構想パクるんじゃないのよさ!』
受話器を受け取ったナサニエルはペラペラとスペルランチャーについて語りだす。ブリジッタが徐々に冷や汗を流し、ぷるぷる震え始めたのは、それが彼女の想定よりはるかに高性能な兵器だったからだ。
「後出しはそっちですよぉ。言いがかりはよしてください」
『ちょっと待って! ナサく……院長のそのスペルランチャー理論は危険すぎます! どうせ試射もしていないような不安定な兵器を……ひゃあ!? ブリちゃんどこ触ってるの!?』
『うっせーボイン、邪魔だから受話器返すのよさぁ! ワカメ、どういう風の吹き回しだー!?』
それは場の全員が知りたい事であった。ともすればこの試作兵器の実験台にでもされるのかもしれない。猜疑心の篭った視線の中心、しかしナサニエルは飄々と笑う。
「どうって……別に。僕、結構皆さんの事気に入ってますからねぇ」
「『「 はあ!? 」』」
「皆さんはバカな凡人ですが、愚直に努力する凡人は嫌いじゃありませんからね」
「あんたってつくづく他人を見下してるわねぇ」
「それは誤解ですよぉ。皆さんは道端の蟻をいちいちバカにして歩きますかぁ? そこまで暇じゃないでしょ。むしろ行列を成してエサを運んでいる姿を見たら、応援したくなりませんか?」
思わずぞくりとするような笑顔。そう、この男は本当に――他人に悪意なんて抱かない。見下すこともない。当たり前の事を当たり前だと叫ぶ必要なんてないのだから。
「自らの限界を越えようとする意思を妨げる権利等誰にもありません。願う者には力を……それが私の方針ですよ」
ナサニエルはある意味正直だ。正直すぎるからこそ他人と衝突し、危険視もされる。
「手を貸しますよ。試作兵器のスペルランチャーと魔動アーマー、二つを最も効率よく機能させ、最大の成果を得る為に……ね?」
悪魔の誘惑を断れなかったのは、彼の立案した作戦が現実的であったから。
そして何より、彼こそが誰も逆らう事の出来ない、この魔塔の王であったからだろうか――。
「それではCAM迎撃スペルランチャー作戦、頑張っていきましょうか♪」
リプレイ本文
「敵発見っす! やべーっす! こっちより早いっす! げ、迎撃用意っす!」
先頭車両にて双眼鏡を覗き込んだ神楽(ka2032)の声にハンター達が視線を向けた。
東側より接近する二機の敵影は砂埃を巻き上げ荒野を疾走。進路上に先回りするように加速していく。
「――来たか。敵さん、相変わらず嗅ぎ付けるのが早いじゃ無ェか……」
吸いかけの葉巻を握り潰し目を細めるナハティガル・ハーレイ(ka0023)。
「歪虚側に情報ダダ漏れ、って訳かい。――内通者が居る……っと考えるのが普通だが。なあ? アンタはどう見る?」
彼のすぐ隣には長い髪を風に揺らすナサニエルの姿があった。第六車両、そこが二人の担当だ。
「私を疑っているんですかぁ?」
「そういうわけじゃあないさ。錬魔院トップの意見を参考にしたくてな」
「あなたの推測は正しいと思いますよぉ。そうでなければ辻褄が合いませんから」
そう、今回のCAMに纏わる騒動は歪虚側の動きが早過ぎる。今回もこうして迅速な迎撃のお出ましだ。
「それだけ歪虚もCAMに興味を示しているという事なのだろうな」
一方第三車両ではCharlotte・V・K(ka0468)とレイス(ka1541)が並んで遠い敵影を睨んでいた。
「逆に言えば、これらは奴らにとって脅威となり得るという事。護り抜ければ天秤はこちらに傾く……!」
今回の事件の裏にどんな暗躍があるのかは不明だ。しかし二人の言う通り、この戦いが人類にとっても歪虚にとっても重要な意味を持つ事は明らかだ。
「人が兵器や武器を持つ時は、それらで逆に自らが攻撃される可能性をいつも念頭に置いておくべきよね。だからこれは、私達がどうしても乗り越えなくてはならない戦いなんだわ」
同じ事はきっと魔導アーマーにも、このスペルランチャーにも言える事だ。エイル・メヌエット(ka2807)は第二車両で銃を抜く。
「前方より敵接近! 左右に一体ずつ……右に乙型、左に甲型ですっ!」
叫ぶソフィア =リリィホルム(ka2383)。まずブレードアームを搭載した甲型が反転、先頭車両に急接近する。
「ちょ、向こういけっす!」
助手席から身を乗り出し魔導銃で迎撃する神楽。しかし甲型はブレードを展開、大きく跳躍しトラックへ斬りかかる。
「攻撃が来るっす! ハンドルから手を離せっす!」
悲鳴を上げる運転手に神楽が声をかけた頃、ソフィアは荷台から運転席上部へと駆け上がる。
振り下ろされるブレードの動きに合わせ体ごと盾を振るい、受け流すように刃を弾く。しかし衝撃でソフィアの身体も空を舞った。
「質量差が大きすぎる……!?」
「ソフィアさん!」
ソフィアに攻撃を弾かれた甲型は大きな体躯を翻し空を舞うと反転、今度は輸送隊を追撃し始める。
第二車両のエイルは銃でその動きを追いながらソフィアに叫ぶが、吹っ飛びながら魔導アーマーの腕に捕まって転落を免れたようだ。
「い、いきなり落ちるかと思った……っ」
「右側から乙型が速度落として接近してるっす! ソフィアちゃん!」
神楽の声にソフィアが体制を立て直す頃、第三者車両と第四車両の間で速度を合わせた甲型へ後部では対応が始まっていた。
第三車両、既に自身の強化を終えていたCharlotteが甲型へ銃撃を行う。レイスも拳銃で迎撃に当たる。
その様子ロイ・I・グリーヴ(ka1819)をは銃を手に第五車両から身を乗り出し攻撃の機会を伺っていたが、その目に前方第四車両のエハウィイ・スゥ(ka0006)が留まった。
「ガタゴト揺れて気持ち悪ぅ……おえええ!」
「の、乗り物酔いですか? 大丈夫ですか、スゥ殿!?」
「あんばりだいじょうぶじゃなひ」
「スゥ殿、前を!」
Charlotteの構えた銃が雷を帯び、放たれた弾丸が甲型を感電させる。速度を緩めた甲型は丁度顔を上げたエハウィイの目の前に来ていた。
甲型は吠えると同時、第四車両に体当たりをかます。荷台を転がりアーマーに激突するエハウィイ。
「車を寄せてくれ! 跳び移って迎撃する!」
第三、第五車両が第四車両へ接近する。ロイとレイスはロープを車両に括り、その上でスキルを発動。大きく跳躍を果たした。
アームを振り上げ巨大な剣を振り下ろす甲型。その間に滑り込んだ二人が互いの得物を交差させ受け止める。
「成程、こう言った立ち回りもやってみるものです」
「――動きに自信が有るのはそちらだけでは無いぞ歪虚共。迂闊に近寄ってきた事を後悔させてやる」
甲型は並走しつつブレードを振るう。二人はそれらを交互に受け止める。エハウィイはその間に強化した弓を構え、二人の間から光を帯びた矢を放った。
矢が命中し敵が怯むとレイスが槍を突き刺し、ロイは一度鞘に収めた刀を指先で弾き、一気に振りぬいた。
「愛刀の切れ味、試させて貰おうか」
斬撃を受けた甲型は悲鳴を上げ減速、後方車両へ移動する。
一方乙型は距離を保ったまま並走、機銃で攻撃を仕掛けていた。
「敵は俺らが相手するんで運ちゃんは気にせずアクセル踏みっぱでよろしくっす! 敵の攻撃が来たら俺が庇ってやるから焦ってハンドル切ったりするなっすよ!」
神楽は先頭車両から身を乗り出し銃撃。狙いは足だが状況もあり中々難しい。一方ソフィアは防壁で車両や運転手への攻撃を防御する。
「好き放題撃ってくれますねっ」
徐々に速度を落とし、乙型は第二車両へ。既に運転手にプロテクションを施したエイルは魔導アーマーの前で盾を構え機銃に耐える。
「皆さんは頭を下げていて下さい!」
「で、でも、僕達だけ何もしないで守られるなんて……」
「そちらの出番は辿り着いたこの先だ。命の懸け所は間違えないでくれ」
背後からの声に振り返ると第二車両へ移動してきたヘイルの姿があった。ヘイルは機銃を前に槍を回転させ弾丸を弾き飛ばす。
「貴方達は敵と戦えないかもしれないが、俺達も魔導アーマーは十全に動かせない。魔導アーマーもそれに関わる貴方達も、取るに足らないお荷物なんかじゃない。敵がはっきりと狙ってきた事こそその証拠だ。今は俺達を信じて任せてくれ」
「それはいいとして……そんなにぴょんぴょん移動して大丈夫なの?」
「コツは覚えた」
並んで小銃を構えるエイルとヘイル。そこへ第三車両からCharlotteの弾丸が飛来し、乙型を感電させる。
「いい援護だ!」
「動きが鈍い……今なら!」
エイルは杖に光を集め、ホーリーライトを放つ。魔法は砲身に爆ぜ、破壊する事に成功した。
「いい攻撃! いいねぇ、ノってきたぜぇ!」
「ソ、ソフィアちゃん……? ま、まあなんでもいいっす! 弱り目に祟り目、集中攻撃っす!」
第一車両の二人も銃で攻撃。狙うは足、機動力の低下だ。第三車両のCharlotteも車体の上で銃を構え、髪を靡かせスコープを覗く。
トリガーを引くと同時、放たれた弾丸が再び雷撃を迸らせる。どうやら雷撃に弱いと見たソフィアは怯んだ所へ自らも電撃を乗せた銃弾を撃ちこむ。
脚部を損傷した乙型は転倒。見る見るうちに後方へその影は流されていく。
「……ん? 今のは射撃型か? 前方車両の連中が上手くやったらしい」
第六車両、最後尾では甲型との戦闘が続いている。転がってきた乙型に一瞬目を向けたナハティガルだが、弓で甲型を攻撃するのも忘れない。
「……流石は剣機、硬さは相当だぜ」
「防御は私にお任せを。あなたは攻撃に専念して下さい」
ナサニエルの攻性強化を受けるナハティガル。言われた通り、今は即席の相棒を信じて攻めの構えを取る。
幅寄せしつつブレードを振り下ろす甲型。ナサニエルは障壁で勢いを殺した上で爪のような魔導ガントレットを振るい、刃を弾き返す。
「――やるもんだ。錬魔院のトップは伊達じゃあ無いな……!」
ナハティガルは思い切り身体を捻じり、このタイミングに合わせて力を溜めた槍を繰り出す。
「俺も負けちゃいられないんでな――!」
狙うはブレードを支えるアーム部分。ここはフレキシブルに稼働するが、その分強度は弱い筈だ。
アームに突き刺さった槍がブレード傾ける。ナサニエルはついでに爪先から光の剣を展開、破損したアームを完全に切断した。
「へェ。案外俺達悪くないコンビなんじゃねェか?」
「かも知れませんねぇ♪」
口笛を吹きながら片目を瞑るナハティガル。甲型は一端距離を離し加速。第五車両へ向かう。
「後方は院長達にお任せ出来そうですね。実に頼もしい」
第五車両に戻っていたロイは銃で甲型を迎撃。甲型はそれに反応し距離を詰めると前足を振り上げ第五車両に取り付いてくる。
揺れるトラック。慌てて減速した第六車両が遠ざかる。ロイは刀でトラックに食い込んだ甲型の前足を切りつけるが、中々離れない。
「う、うわああ!?」
「落ち着いて下さい! 大丈夫です。必ず貴方達は無事に送り届けます!」
甲型を引きずり蛇行するトラック。前方の第四車両に跳んできたヘイルはエハウィイの隣に着地、距離の開いた後続に目を向ける。
「離れすぎたか……!」
「更に乙型も追い付いてきて後ろがそこはかとなくピンチっぽい」
「エハウィイも大分顔色が悪いようだが」
「それは関係ない理由なのでそっとしといてください。あとあまり私に近づかない方が良いと思う」
首を傾げるヘイル。第四車両はゆっくりと減速。第六車両は第五車両を援護に向かいたいが、追い付いてきた乙型の攻撃を受けていた。
「ちぃ……しつこい犬っころだ!」
「乙型は既に脚部を損傷しています。完全に破壊出来れば置き去りに出来るでしょう」
「ロイには悪いが、そっちはなんとかしてもらうしかねェな……!」
減速した第四車両からエハウィイのヒールを受けるロイ。レイスは銃で甲型の頭部を攻撃し援護する。
「もう少し車両を左に移動させてくれ。そのままゆっくり減速出来るか?」
一方第三車両。運転席に腰を当て、片足を魔導アーマーの肩に乗せライフルを構えるCharlotteの姿があった。
第四車両に射線が被らないように調整し、発砲。バチリと感電すると同時、ロイは甲型を蹴り飛ばす。
巨体は離れていくがトラックの外装の一部を巻き込み引き剥がすと、ロイもその衝撃で落下しそうになる。が、身体にロープを結んでおり、空中で態勢を整えるとロープを頼りに大地に足を着き、数歩走った後大きく跳躍して荷台に飛び込んだ。
「……間一髪だな」
「今あの人空中走ってなかった?」
冷や汗を流すヘイルとエハウィイ。甲型は再びロイの乗る車両へ襲いかかるが、エハウィイはロイにホーリーセイバーを付与。
「往生際の悪さもここまでです!」
ロイは敵が前足を振り上げた瞬間、光を帯びた剣でその右前足を切断する。先ほど散々切りつけていたので、いい加減破壊されたようだ。
「あ、こけた」
「……だな」
甲型は派手に転倒しながら後方へ。第六車両はそれをかわすのに揺れるが、ナハティガル達は転落しなかった。
「……っととォ。いい加減、こっちもご退場願おうか!」
大弓を構えるナハティガル。ナサニエルも機導砲で攻撃、乙型の壊れかけた足に集中攻撃を行う。
足を一本完全に破壊された乙型は転倒。二機のプラッツェン型は足を破壊され走行出来ない。となれば当然、魔導トラックに追いつくことも不可能だ。
完全に撃破したわけではないがもう相手をしてやる道理もない。恨めしげにトラックを見送る二機を跡目に、ハンター達は戦場へ急いだ。
「おっそいのよね! さっさと積み荷を降ろして準備するのよさ!」
現地では既に多くの軍人やハンターが集まり作戦開始を待っていた。ブリジッタの指示に従い大地に降り立つアーマー達、それをロイは眺めている。
「ありがとうございました。あの時はもう駄目かと思いましたが……」
「不安にさせて申し訳ありませんでした。本作戦の成功の鍵は貴方達です。ここから先は貴方達の領分。健闘を祈っています」
ロイの差し出す手を両手で握り締めるアーマー研究者。神楽は後頭部で両手を組み。
「それにしても意外と楽勝だったっす!」
「作戦が上手く行ったという事かしらね」
笑顔を返すエイル。その視線の先ではエハウィイが急にナサニエルに殴りかかり、その拳を受け止められていた。
「急にどうしたんですかぁ?」
「しらばっくれやがって! お前の罪を数えろ!」
「というと?」
「ワカメのせいででかぱいの目が死んでいる!」
びしりと指差すエハウィイ。Charlotteは咳払いを一つ。
「人を動力として起動する非人道的な兵器のせいでリーゼロッテくんが心を痛めていると言いたいのではないかな?」
「ああ。そんな事ですかぁ?」
「そんな事とはなんだ! 道端の蟻の気持ちもちゃんと考えてやれよバカワカメ! 略してバカメ!」
「バ……バカメ!? ヒヒ、やべーっす! 闇ワカメを超える新ジャンル誕生っす! 駄目っす! 我慢できないっす!」
両手で口を覆いながら笑いを堪える神楽。Charlotteは肩を竦め。
「だが、魔導汚染を考えれば、新しい代替エネルギーとしては悪くない手でもある。鉱物マテリアルに変わる新エネルギーの考案は急務だと思うが、ナサニエルくんはどう思うかね?」
「私も色々考えては居ますが、言うと大体怒られるので黙ってるんですよ。多分あなたも怒りますねぇ」
「無視すんなやこらぁ!」
ナサニエルに飛びかかるエハウィイ。その手を取り男は笑う。
「リーゼを心配してくれる人がいて私は嬉しいですよ。彼女は人に好かれる才能だけは私よりありましたから、当然かもしれませんが」
ぐぬぬと震えるエハウィイ。レイスは時計を確認し。
「む。あまり立ち話をしている時間もなさそうだ」
「そうだったわね。次の作戦は西側だから……エルフハイムまで全力移動ね」
「一先ず魔導アーマーが動いているのは見物出来ましたし、行きますか」
苦笑を浮かべるエイル。ソフィアはやや複雑そうな眼差しで魔導アーマーの勇姿を眺めている。
「しかし……ここから東には海しかねェよな? さっきの二体、どこからきやがったんだ?」
首を傾げるナハティガル。この近辺には歪虚が拠点と出来るような施設も、隠れられるような地形もない。
「海から来たのか空飛んできたのか……どっちにせよ奴らの自力とは思えねェが」
「海岸でリンドヴルム型を見たという話もあります。空輸の可能性が高いかと」
ナサニエルの返答にとりあえず納得するナハティガル。続いて歪虚CAM迎撃作戦に参加する者達は慌ただしく準備を開始する。
「僕達は今の僕達に出来る事を頑張ります! 皆さんもご武運を!」
手を振るアーマー研究者達に見送られ、ハンター達は次なる戦場へと急ぐのであった。
先頭車両にて双眼鏡を覗き込んだ神楽(ka2032)の声にハンター達が視線を向けた。
東側より接近する二機の敵影は砂埃を巻き上げ荒野を疾走。進路上に先回りするように加速していく。
「――来たか。敵さん、相変わらず嗅ぎ付けるのが早いじゃ無ェか……」
吸いかけの葉巻を握り潰し目を細めるナハティガル・ハーレイ(ka0023)。
「歪虚側に情報ダダ漏れ、って訳かい。――内通者が居る……っと考えるのが普通だが。なあ? アンタはどう見る?」
彼のすぐ隣には長い髪を風に揺らすナサニエルの姿があった。第六車両、そこが二人の担当だ。
「私を疑っているんですかぁ?」
「そういうわけじゃあないさ。錬魔院トップの意見を参考にしたくてな」
「あなたの推測は正しいと思いますよぉ。そうでなければ辻褄が合いませんから」
そう、今回のCAMに纏わる騒動は歪虚側の動きが早過ぎる。今回もこうして迅速な迎撃のお出ましだ。
「それだけ歪虚もCAMに興味を示しているという事なのだろうな」
一方第三車両ではCharlotte・V・K(ka0468)とレイス(ka1541)が並んで遠い敵影を睨んでいた。
「逆に言えば、これらは奴らにとって脅威となり得るという事。護り抜ければ天秤はこちらに傾く……!」
今回の事件の裏にどんな暗躍があるのかは不明だ。しかし二人の言う通り、この戦いが人類にとっても歪虚にとっても重要な意味を持つ事は明らかだ。
「人が兵器や武器を持つ時は、それらで逆に自らが攻撃される可能性をいつも念頭に置いておくべきよね。だからこれは、私達がどうしても乗り越えなくてはならない戦いなんだわ」
同じ事はきっと魔導アーマーにも、このスペルランチャーにも言える事だ。エイル・メヌエット(ka2807)は第二車両で銃を抜く。
「前方より敵接近! 左右に一体ずつ……右に乙型、左に甲型ですっ!」
叫ぶソフィア =リリィホルム(ka2383)。まずブレードアームを搭載した甲型が反転、先頭車両に急接近する。
「ちょ、向こういけっす!」
助手席から身を乗り出し魔導銃で迎撃する神楽。しかし甲型はブレードを展開、大きく跳躍しトラックへ斬りかかる。
「攻撃が来るっす! ハンドルから手を離せっす!」
悲鳴を上げる運転手に神楽が声をかけた頃、ソフィアは荷台から運転席上部へと駆け上がる。
振り下ろされるブレードの動きに合わせ体ごと盾を振るい、受け流すように刃を弾く。しかし衝撃でソフィアの身体も空を舞った。
「質量差が大きすぎる……!?」
「ソフィアさん!」
ソフィアに攻撃を弾かれた甲型は大きな体躯を翻し空を舞うと反転、今度は輸送隊を追撃し始める。
第二車両のエイルは銃でその動きを追いながらソフィアに叫ぶが、吹っ飛びながら魔導アーマーの腕に捕まって転落を免れたようだ。
「い、いきなり落ちるかと思った……っ」
「右側から乙型が速度落として接近してるっす! ソフィアちゃん!」
神楽の声にソフィアが体制を立て直す頃、第三者車両と第四車両の間で速度を合わせた甲型へ後部では対応が始まっていた。
第三車両、既に自身の強化を終えていたCharlotteが甲型へ銃撃を行う。レイスも拳銃で迎撃に当たる。
その様子ロイ・I・グリーヴ(ka1819)をは銃を手に第五車両から身を乗り出し攻撃の機会を伺っていたが、その目に前方第四車両のエハウィイ・スゥ(ka0006)が留まった。
「ガタゴト揺れて気持ち悪ぅ……おえええ!」
「の、乗り物酔いですか? 大丈夫ですか、スゥ殿!?」
「あんばりだいじょうぶじゃなひ」
「スゥ殿、前を!」
Charlotteの構えた銃が雷を帯び、放たれた弾丸が甲型を感電させる。速度を緩めた甲型は丁度顔を上げたエハウィイの目の前に来ていた。
甲型は吠えると同時、第四車両に体当たりをかます。荷台を転がりアーマーに激突するエハウィイ。
「車を寄せてくれ! 跳び移って迎撃する!」
第三、第五車両が第四車両へ接近する。ロイとレイスはロープを車両に括り、その上でスキルを発動。大きく跳躍を果たした。
アームを振り上げ巨大な剣を振り下ろす甲型。その間に滑り込んだ二人が互いの得物を交差させ受け止める。
「成程、こう言った立ち回りもやってみるものです」
「――動きに自信が有るのはそちらだけでは無いぞ歪虚共。迂闊に近寄ってきた事を後悔させてやる」
甲型は並走しつつブレードを振るう。二人はそれらを交互に受け止める。エハウィイはその間に強化した弓を構え、二人の間から光を帯びた矢を放った。
矢が命中し敵が怯むとレイスが槍を突き刺し、ロイは一度鞘に収めた刀を指先で弾き、一気に振りぬいた。
「愛刀の切れ味、試させて貰おうか」
斬撃を受けた甲型は悲鳴を上げ減速、後方車両へ移動する。
一方乙型は距離を保ったまま並走、機銃で攻撃を仕掛けていた。
「敵は俺らが相手するんで運ちゃんは気にせずアクセル踏みっぱでよろしくっす! 敵の攻撃が来たら俺が庇ってやるから焦ってハンドル切ったりするなっすよ!」
神楽は先頭車両から身を乗り出し銃撃。狙いは足だが状況もあり中々難しい。一方ソフィアは防壁で車両や運転手への攻撃を防御する。
「好き放題撃ってくれますねっ」
徐々に速度を落とし、乙型は第二車両へ。既に運転手にプロテクションを施したエイルは魔導アーマーの前で盾を構え機銃に耐える。
「皆さんは頭を下げていて下さい!」
「で、でも、僕達だけ何もしないで守られるなんて……」
「そちらの出番は辿り着いたこの先だ。命の懸け所は間違えないでくれ」
背後からの声に振り返ると第二車両へ移動してきたヘイルの姿があった。ヘイルは機銃を前に槍を回転させ弾丸を弾き飛ばす。
「貴方達は敵と戦えないかもしれないが、俺達も魔導アーマーは十全に動かせない。魔導アーマーもそれに関わる貴方達も、取るに足らないお荷物なんかじゃない。敵がはっきりと狙ってきた事こそその証拠だ。今は俺達を信じて任せてくれ」
「それはいいとして……そんなにぴょんぴょん移動して大丈夫なの?」
「コツは覚えた」
並んで小銃を構えるエイルとヘイル。そこへ第三車両からCharlotteの弾丸が飛来し、乙型を感電させる。
「いい援護だ!」
「動きが鈍い……今なら!」
エイルは杖に光を集め、ホーリーライトを放つ。魔法は砲身に爆ぜ、破壊する事に成功した。
「いい攻撃! いいねぇ、ノってきたぜぇ!」
「ソ、ソフィアちゃん……? ま、まあなんでもいいっす! 弱り目に祟り目、集中攻撃っす!」
第一車両の二人も銃で攻撃。狙うは足、機動力の低下だ。第三車両のCharlotteも車体の上で銃を構え、髪を靡かせスコープを覗く。
トリガーを引くと同時、放たれた弾丸が再び雷撃を迸らせる。どうやら雷撃に弱いと見たソフィアは怯んだ所へ自らも電撃を乗せた銃弾を撃ちこむ。
脚部を損傷した乙型は転倒。見る見るうちに後方へその影は流されていく。
「……ん? 今のは射撃型か? 前方車両の連中が上手くやったらしい」
第六車両、最後尾では甲型との戦闘が続いている。転がってきた乙型に一瞬目を向けたナハティガルだが、弓で甲型を攻撃するのも忘れない。
「……流石は剣機、硬さは相当だぜ」
「防御は私にお任せを。あなたは攻撃に専念して下さい」
ナサニエルの攻性強化を受けるナハティガル。言われた通り、今は即席の相棒を信じて攻めの構えを取る。
幅寄せしつつブレードを振り下ろす甲型。ナサニエルは障壁で勢いを殺した上で爪のような魔導ガントレットを振るい、刃を弾き返す。
「――やるもんだ。錬魔院のトップは伊達じゃあ無いな……!」
ナハティガルは思い切り身体を捻じり、このタイミングに合わせて力を溜めた槍を繰り出す。
「俺も負けちゃいられないんでな――!」
狙うはブレードを支えるアーム部分。ここはフレキシブルに稼働するが、その分強度は弱い筈だ。
アームに突き刺さった槍がブレード傾ける。ナサニエルはついでに爪先から光の剣を展開、破損したアームを完全に切断した。
「へェ。案外俺達悪くないコンビなんじゃねェか?」
「かも知れませんねぇ♪」
口笛を吹きながら片目を瞑るナハティガル。甲型は一端距離を離し加速。第五車両へ向かう。
「後方は院長達にお任せ出来そうですね。実に頼もしい」
第五車両に戻っていたロイは銃で甲型を迎撃。甲型はそれに反応し距離を詰めると前足を振り上げ第五車両に取り付いてくる。
揺れるトラック。慌てて減速した第六車両が遠ざかる。ロイは刀でトラックに食い込んだ甲型の前足を切りつけるが、中々離れない。
「う、うわああ!?」
「落ち着いて下さい! 大丈夫です。必ず貴方達は無事に送り届けます!」
甲型を引きずり蛇行するトラック。前方の第四車両に跳んできたヘイルはエハウィイの隣に着地、距離の開いた後続に目を向ける。
「離れすぎたか……!」
「更に乙型も追い付いてきて後ろがそこはかとなくピンチっぽい」
「エハウィイも大分顔色が悪いようだが」
「それは関係ない理由なのでそっとしといてください。あとあまり私に近づかない方が良いと思う」
首を傾げるヘイル。第四車両はゆっくりと減速。第六車両は第五車両を援護に向かいたいが、追い付いてきた乙型の攻撃を受けていた。
「ちぃ……しつこい犬っころだ!」
「乙型は既に脚部を損傷しています。完全に破壊出来れば置き去りに出来るでしょう」
「ロイには悪いが、そっちはなんとかしてもらうしかねェな……!」
減速した第四車両からエハウィイのヒールを受けるロイ。レイスは銃で甲型の頭部を攻撃し援護する。
「もう少し車両を左に移動させてくれ。そのままゆっくり減速出来るか?」
一方第三車両。運転席に腰を当て、片足を魔導アーマーの肩に乗せライフルを構えるCharlotteの姿があった。
第四車両に射線が被らないように調整し、発砲。バチリと感電すると同時、ロイは甲型を蹴り飛ばす。
巨体は離れていくがトラックの外装の一部を巻き込み引き剥がすと、ロイもその衝撃で落下しそうになる。が、身体にロープを結んでおり、空中で態勢を整えるとロープを頼りに大地に足を着き、数歩走った後大きく跳躍して荷台に飛び込んだ。
「……間一髪だな」
「今あの人空中走ってなかった?」
冷や汗を流すヘイルとエハウィイ。甲型は再びロイの乗る車両へ襲いかかるが、エハウィイはロイにホーリーセイバーを付与。
「往生際の悪さもここまでです!」
ロイは敵が前足を振り上げた瞬間、光を帯びた剣でその右前足を切断する。先ほど散々切りつけていたので、いい加減破壊されたようだ。
「あ、こけた」
「……だな」
甲型は派手に転倒しながら後方へ。第六車両はそれをかわすのに揺れるが、ナハティガル達は転落しなかった。
「……っととォ。いい加減、こっちもご退場願おうか!」
大弓を構えるナハティガル。ナサニエルも機導砲で攻撃、乙型の壊れかけた足に集中攻撃を行う。
足を一本完全に破壊された乙型は転倒。二機のプラッツェン型は足を破壊され走行出来ない。となれば当然、魔導トラックに追いつくことも不可能だ。
完全に撃破したわけではないがもう相手をしてやる道理もない。恨めしげにトラックを見送る二機を跡目に、ハンター達は戦場へ急いだ。
「おっそいのよね! さっさと積み荷を降ろして準備するのよさ!」
現地では既に多くの軍人やハンターが集まり作戦開始を待っていた。ブリジッタの指示に従い大地に降り立つアーマー達、それをロイは眺めている。
「ありがとうございました。あの時はもう駄目かと思いましたが……」
「不安にさせて申し訳ありませんでした。本作戦の成功の鍵は貴方達です。ここから先は貴方達の領分。健闘を祈っています」
ロイの差し出す手を両手で握り締めるアーマー研究者。神楽は後頭部で両手を組み。
「それにしても意外と楽勝だったっす!」
「作戦が上手く行ったという事かしらね」
笑顔を返すエイル。その視線の先ではエハウィイが急にナサニエルに殴りかかり、その拳を受け止められていた。
「急にどうしたんですかぁ?」
「しらばっくれやがって! お前の罪を数えろ!」
「というと?」
「ワカメのせいででかぱいの目が死んでいる!」
びしりと指差すエハウィイ。Charlotteは咳払いを一つ。
「人を動力として起動する非人道的な兵器のせいでリーゼロッテくんが心を痛めていると言いたいのではないかな?」
「ああ。そんな事ですかぁ?」
「そんな事とはなんだ! 道端の蟻の気持ちもちゃんと考えてやれよバカワカメ! 略してバカメ!」
「バ……バカメ!? ヒヒ、やべーっす! 闇ワカメを超える新ジャンル誕生っす! 駄目っす! 我慢できないっす!」
両手で口を覆いながら笑いを堪える神楽。Charlotteは肩を竦め。
「だが、魔導汚染を考えれば、新しい代替エネルギーとしては悪くない手でもある。鉱物マテリアルに変わる新エネルギーの考案は急務だと思うが、ナサニエルくんはどう思うかね?」
「私も色々考えては居ますが、言うと大体怒られるので黙ってるんですよ。多分あなたも怒りますねぇ」
「無視すんなやこらぁ!」
ナサニエルに飛びかかるエハウィイ。その手を取り男は笑う。
「リーゼを心配してくれる人がいて私は嬉しいですよ。彼女は人に好かれる才能だけは私よりありましたから、当然かもしれませんが」
ぐぬぬと震えるエハウィイ。レイスは時計を確認し。
「む。あまり立ち話をしている時間もなさそうだ」
「そうだったわね。次の作戦は西側だから……エルフハイムまで全力移動ね」
「一先ず魔導アーマーが動いているのは見物出来ましたし、行きますか」
苦笑を浮かべるエイル。ソフィアはやや複雑そうな眼差しで魔導アーマーの勇姿を眺めている。
「しかし……ここから東には海しかねェよな? さっきの二体、どこからきやがったんだ?」
首を傾げるナハティガル。この近辺には歪虚が拠点と出来るような施設も、隠れられるような地形もない。
「海から来たのか空飛んできたのか……どっちにせよ奴らの自力とは思えねェが」
「海岸でリンドヴルム型を見たという話もあります。空輸の可能性が高いかと」
ナサニエルの返答にとりあえず納得するナハティガル。続いて歪虚CAM迎撃作戦に参加する者達は慌ただしく準備を開始する。
「僕達は今の僕達に出来る事を頑張ります! 皆さんもご武運を!」
手を振るアーマー研究者達に見送られ、ハンター達は次なる戦場へと急ぐのであった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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質問板 Charlotte・V・K(ka0468) 人間(リアルブルー)|26才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/01/05 20:59:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/01 19:12:55 |
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護送計画(疾走中)【相談卓】 エイル・メヌエット(ka2807) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/01/05 03:43:22 |