ゲスト
(ka0000)
【虚動】驢馬の騎士
マスター:湖欄黒江

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~15人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/06 09:00
- 完成日
- 2015/01/14 07:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ドミニオンMK.IV改修型『ドンキィノーズ』。
CAM稼働実験場を襲った雑魔の群れから避難させられた後、
緊急迎撃の要に備えて武装の点検が行われた直後に、機体の暴走が始まったそうだ。
「30ミリに弾ぶち込んだすぐ後、最悪のタイミングだった」
ドンキィノーズの元のパイロットは、地面に下ろされた担架に横たわったまま、問いかけに答えた。
同時に整備中だったCAM数機と共同し、ドンキィノーズは格納庫を破壊。
宙軍の警備兵を蹴散らして実験場外へと逃走した。
元CAMパイロットの便利屋"クリケット"が駆けつけたとき、
現場に残されていたのは焼け落ちた格納庫と大量の負傷者、
後始末に駆けずり回る各国兵士ばかりで、CAMの姿は何処にも見えなかった。
「ラナ2――俺の相棒の機は無事と聞いたが、はっきりしたことは分からん。
この有様だからな、情報が錯綜していて」
「機体の状態はどうだ。遠くまで逃げられる程度の故障だったのか?」
「武装は30ミリとナイフだけだ。右脚部と胸部左側に何枚か増加装甲、
代替素材で基準値色々割ってるから、無茶すると真っ先に剥がれちまうって言われたな。
それと、消費電力の都合でEP(電子防護)なんか大分取っ払った筈だ。
でも、敵には大して困った話じゃないだろう。あんな滅茶苦茶な動かし方ができるなら……」
クリケットは然したる意味もなく頷くと、腰を上げた。
兎に角、ドンキィノーズは歪虚に乗っ取られて逃げ出したらしい。いずれ何処かで破壊されるのだろう。
性能や西方世界における希少価値云々を忘れてしまえば、CAMも所詮ただの兵器。
そこに至る経緯はどうあれ、いつか必ず壊れるもの。いちいち胸を痛めるのは俗な感傷に過ぎない。
忘れちまえ、知ったこっちゃないって。機械が1台壊れるからってそれが――
あるいは、このまま逃げおおせるということもあり得るのだろうか?
宙軍と西方三国の対応が遅れれば、歪虚の手に落ちたCAMはどう使われることやら。
皮肉な話だ。かつて民間人を守る盾として使われたCAMが、街のひとつふたつ吹っ飛ばす。阿鼻叫喚の巷。
「俺の前に誰か、女が乗ってたろう」
踵を返しかけたクリケットへ、パイロットが首をもたげて言う。
「コンソールのレイアウトとか、ダンパーの調整具合で何となく分かるんだ。あんたの恋人か?」
「余計なこと気にするんじゃねぇよ。別に――単なる、戦友だよ」
そう、ジュゼッパは俺の戦友だった。LH044の戦闘で見殺しにしてしまった。
彼女に今更、何かしてやれることなんてあるのか?
パイロットと別れた後、クリケットの足はひとりでに、
歪虚迎撃と暴走CAMの追跡命令で大わらわの本陣へと向かった。
ドンキィノーズの行方について、何か訊き出せるかも知れない。
●
驢馬の顔を思わせる頭部センサーが特徴的なCAMが1機、
岩だらけの荒野を横切って、山間の狭路へと入っていく。実験場でもあまり見かけられなかった型だが、
「間違いない。もうここまで逃げてきやがったか、足が速い」
CAM暴走と歪虚の襲撃。混乱の最中にも関わらず、
実験場周辺からどうにか人手を掻き集めて、即席の追跡班が組織された。
対歪虚の最新・最強の兵器、西方世界にもたらされた新たな希望。みすみす敵の手に引き渡してはならない。
制止できずとも、CAMの追跡と監視、最低でも今後の逃走経路の割り出しは必須だった。
各国部隊の連絡官を含む追跡班十数名は、
双眼鏡にて遠方のCAMを発見した現場指揮官より合図を受け、すぐさま2台の魔導トラックへ分乗する。
CAMが消えていった狭路は、主に帝国軍が利用していた輸送路のひとつ。
切り立つ崖に左右を挟まれた幅の狭い一本道。待ち伏せの危険もあって重要物資の運搬には適さないが、
帝国~辺境間を結ぶ最短ルートと繋がっており、危急の際に少数部隊を辺境へ展開する限りでは重宝されていた。
「谷間に入ったら逃げ場がない、大きな遮蔽物もない。慎重に距離を保て」
帝国軍第二師団から派遣された武官が、トラックの運転手に注意を促す。
これまでのところ、実験場を脱出したCAMは逃亡を第一義に行動しているらしく、
敵武装の射程外から、距離を取って監視のみを続けるのであれば大きな危険はないと思われた。
トラック2台が連なって、狭路へ進入する。
前方を走るCAMの後ろ姿がすぐに目視できた。追跡班には目もくれず、滑らかな足運びで先行する。
宙軍技術士官がトラックの荷台から顔を出して、
「動きのリズムからして、アクチュエーターの稼働限界を越えとるな。
通常はソフトウェアのほうでリミッターがかけられる筈だが、ハードだけで純物理的に動作させとるか、
でなけりゃソフトごとハッキングして制御系をいじったかも分からん」
「すると、どうなりますか」
尋ねられた技術士官は、しばし目を谷間の空に泳がせた後、弱々しい笑みを浮かべて答えた。
「順当に考えるなら、その内部品が焼き切れてまともに動けなくなる。
だが、歪虚ってのは横紙破りが常套の連中だからね。どうにでもして稼働させ続けるんじゃないかな。
私が思うに、CAM本体を持っていかれることは勿論痛手だが、
兵器として直接使われるより、鹵獲機体を通じて地球の技術理論を解析される可能性のほうが個人的には怖い。
敵がCAMと接している時間に比例して、その危険は増大していくよ。
CAMの機構を応用した兵器でも開発・生産されたらどうなるかね? こちらの兵器の弱点を突く発明とか?
ただでさえ連中には、既に独自の機械工学があるんだから。何と言ったか、帝国で暴れ回っとったアレ……」
●
技術士官の物忘れに居合わせた面々が答えるより早く、答えそのもののほうから姿を見せてくれた。
剣機リンドヴルム。その量産型3機が、狭い谷間へ急降下攻撃を仕掛ける。
翼を広げたドラゴンの影が3頭、頭上を擦過するなり、文字通り鉛弾の雨が追跡班のトラックを襲った。
ブレス機能こそ搭載されてはいなかったものの、荷台に詰めかけた追跡班の人員を殺傷するには、
その両肩に装備した機銃の掃射で充分だった。
最後に通りがかった1体が駄目押しとばかりに、長く垂らした尾をトラックの運転台に叩きつけていった。
損傷し、狭路に立ち往生したトラック2台。生き残った追跡班が慌てて車を降り、徒歩で逃走を図るも、
上空では既に3体のリンドヴルム量産型が旋回・反転し、再度降下を準備していた。
3体に与えられた任務はこの輸送路を封鎖し、CAM追跡を困難にすること。
暴走CAM・ドンキィノーズは背後の惨劇もよそに、谷間の道をひた走った。
やがて狭路を抜け、向かうは帝国領。そこでは引き続き四霊剣の支援を受けながら、
嫉妬の歪虚・クラーレが指定したランデヴーポイントを目指すこととなる。
ドミニオンMK.IV改修型『ドンキィノーズ』。
CAM稼働実験場を襲った雑魔の群れから避難させられた後、
緊急迎撃の要に備えて武装の点検が行われた直後に、機体の暴走が始まったそうだ。
「30ミリに弾ぶち込んだすぐ後、最悪のタイミングだった」
ドンキィノーズの元のパイロットは、地面に下ろされた担架に横たわったまま、問いかけに答えた。
同時に整備中だったCAM数機と共同し、ドンキィノーズは格納庫を破壊。
宙軍の警備兵を蹴散らして実験場外へと逃走した。
元CAMパイロットの便利屋"クリケット"が駆けつけたとき、
現場に残されていたのは焼け落ちた格納庫と大量の負傷者、
後始末に駆けずり回る各国兵士ばかりで、CAMの姿は何処にも見えなかった。
「ラナ2――俺の相棒の機は無事と聞いたが、はっきりしたことは分からん。
この有様だからな、情報が錯綜していて」
「機体の状態はどうだ。遠くまで逃げられる程度の故障だったのか?」
「武装は30ミリとナイフだけだ。右脚部と胸部左側に何枚か増加装甲、
代替素材で基準値色々割ってるから、無茶すると真っ先に剥がれちまうって言われたな。
それと、消費電力の都合でEP(電子防護)なんか大分取っ払った筈だ。
でも、敵には大して困った話じゃないだろう。あんな滅茶苦茶な動かし方ができるなら……」
クリケットは然したる意味もなく頷くと、腰を上げた。
兎に角、ドンキィノーズは歪虚に乗っ取られて逃げ出したらしい。いずれ何処かで破壊されるのだろう。
性能や西方世界における希少価値云々を忘れてしまえば、CAMも所詮ただの兵器。
そこに至る経緯はどうあれ、いつか必ず壊れるもの。いちいち胸を痛めるのは俗な感傷に過ぎない。
忘れちまえ、知ったこっちゃないって。機械が1台壊れるからってそれが――
あるいは、このまま逃げおおせるということもあり得るのだろうか?
宙軍と西方三国の対応が遅れれば、歪虚の手に落ちたCAMはどう使われることやら。
皮肉な話だ。かつて民間人を守る盾として使われたCAMが、街のひとつふたつ吹っ飛ばす。阿鼻叫喚の巷。
「俺の前に誰か、女が乗ってたろう」
踵を返しかけたクリケットへ、パイロットが首をもたげて言う。
「コンソールのレイアウトとか、ダンパーの調整具合で何となく分かるんだ。あんたの恋人か?」
「余計なこと気にするんじゃねぇよ。別に――単なる、戦友だよ」
そう、ジュゼッパは俺の戦友だった。LH044の戦闘で見殺しにしてしまった。
彼女に今更、何かしてやれることなんてあるのか?
パイロットと別れた後、クリケットの足はひとりでに、
歪虚迎撃と暴走CAMの追跡命令で大わらわの本陣へと向かった。
ドンキィノーズの行方について、何か訊き出せるかも知れない。
●
驢馬の顔を思わせる頭部センサーが特徴的なCAMが1機、
岩だらけの荒野を横切って、山間の狭路へと入っていく。実験場でもあまり見かけられなかった型だが、
「間違いない。もうここまで逃げてきやがったか、足が速い」
CAM暴走と歪虚の襲撃。混乱の最中にも関わらず、
実験場周辺からどうにか人手を掻き集めて、即席の追跡班が組織された。
対歪虚の最新・最強の兵器、西方世界にもたらされた新たな希望。みすみす敵の手に引き渡してはならない。
制止できずとも、CAMの追跡と監視、最低でも今後の逃走経路の割り出しは必須だった。
各国部隊の連絡官を含む追跡班十数名は、
双眼鏡にて遠方のCAMを発見した現場指揮官より合図を受け、すぐさま2台の魔導トラックへ分乗する。
CAMが消えていった狭路は、主に帝国軍が利用していた輸送路のひとつ。
切り立つ崖に左右を挟まれた幅の狭い一本道。待ち伏せの危険もあって重要物資の運搬には適さないが、
帝国~辺境間を結ぶ最短ルートと繋がっており、危急の際に少数部隊を辺境へ展開する限りでは重宝されていた。
「谷間に入ったら逃げ場がない、大きな遮蔽物もない。慎重に距離を保て」
帝国軍第二師団から派遣された武官が、トラックの運転手に注意を促す。
これまでのところ、実験場を脱出したCAMは逃亡を第一義に行動しているらしく、
敵武装の射程外から、距離を取って監視のみを続けるのであれば大きな危険はないと思われた。
トラック2台が連なって、狭路へ進入する。
前方を走るCAMの後ろ姿がすぐに目視できた。追跡班には目もくれず、滑らかな足運びで先行する。
宙軍技術士官がトラックの荷台から顔を出して、
「動きのリズムからして、アクチュエーターの稼働限界を越えとるな。
通常はソフトウェアのほうでリミッターがかけられる筈だが、ハードだけで純物理的に動作させとるか、
でなけりゃソフトごとハッキングして制御系をいじったかも分からん」
「すると、どうなりますか」
尋ねられた技術士官は、しばし目を谷間の空に泳がせた後、弱々しい笑みを浮かべて答えた。
「順当に考えるなら、その内部品が焼き切れてまともに動けなくなる。
だが、歪虚ってのは横紙破りが常套の連中だからね。どうにでもして稼働させ続けるんじゃないかな。
私が思うに、CAM本体を持っていかれることは勿論痛手だが、
兵器として直接使われるより、鹵獲機体を通じて地球の技術理論を解析される可能性のほうが個人的には怖い。
敵がCAMと接している時間に比例して、その危険は増大していくよ。
CAMの機構を応用した兵器でも開発・生産されたらどうなるかね? こちらの兵器の弱点を突く発明とか?
ただでさえ連中には、既に独自の機械工学があるんだから。何と言ったか、帝国で暴れ回っとったアレ……」
●
技術士官の物忘れに居合わせた面々が答えるより早く、答えそのもののほうから姿を見せてくれた。
剣機リンドヴルム。その量産型3機が、狭い谷間へ急降下攻撃を仕掛ける。
翼を広げたドラゴンの影が3頭、頭上を擦過するなり、文字通り鉛弾の雨が追跡班のトラックを襲った。
ブレス機能こそ搭載されてはいなかったものの、荷台に詰めかけた追跡班の人員を殺傷するには、
その両肩に装備した機銃の掃射で充分だった。
最後に通りがかった1体が駄目押しとばかりに、長く垂らした尾をトラックの運転台に叩きつけていった。
損傷し、狭路に立ち往生したトラック2台。生き残った追跡班が慌てて車を降り、徒歩で逃走を図るも、
上空では既に3体のリンドヴルム量産型が旋回・反転し、再度降下を準備していた。
3体に与えられた任務はこの輸送路を封鎖し、CAM追跡を困難にすること。
暴走CAM・ドンキィノーズは背後の惨劇もよそに、谷間の道をひた走った。
やがて狭路を抜け、向かうは帝国領。そこでは引き続き四霊剣の支援を受けながら、
嫉妬の歪虚・クラーレが指定したランデヴーポイントを目指すこととなる。
リプレイ本文
●
輸送路上空を旋回する量産型リンドヴルム3体。
谷間の狭路への侵入者を察知するなり、編隊を組んで降下準備を始めた。
薄曇りの空に、3つの黒い染みのような影が過る。互いに未だ射程外、
「散開!」
十 音子(ka0537)のかけ声で、15名のハンターが散らばって狭路の方々へ走り込む。
なまじ固まれば機銃掃射の餌食にされてしまう。
3体とも地上に落ちるまでそれぞれ離れ、単独で急降下攻撃に対処しなければならない。
「あいつらの飛行速度からすっと、そんなに余裕なさそー、です。急ぎで」
量産型リンドヴルム戦の経験者、八城雪(ka0146)も言いつつ手近な岩陰へ隠れた。
空を飛ぶ敵に、彼女が手にしたルーサーンハンマーでは到底届かない。
味方の射撃で撃墜した後、白兵戦で止めを刺す。それまでは物陰で見守るより他なかった。
狭路の奥には、壊滅した追跡班の魔導トラック2台が乗り捨てられている。
精確性に乏しい量産型の対地攻撃も、逃げ場がほとんどないこの地形では威力を発揮したようだ。
一列になって降下する敵へ、狭路に点在する射撃要員が応射、
弱点である光の魔法を帯びた矢が、閃光の尾を曳いて次々に崖下から打ち上がる。
全員、狙いは先頭の1体。射撃班のひとり、柊 真司(ka0705)も大弓『吼天』の矢を放った。
(空を飛ばれてると戦い辛いからな、狙い撃つぜ)
矢は逸れてしまった――まだ射程が遠い。
次の矢をつがえている間に、先頭の1体が崖の頂上付近まで降下してくる。
蠅のように小さかった敵影が見るみる内に地上へ接近し、その巨体を晒した。
ドラゴンの腐乱死体。青黒く変色した皮膚のあちこちから、骨格と思しき白い突起が飛び出す。
膨張・白濁した眼球がぐるぐると回転し、滑空の為に広げられた両の翼、
その付け根に据えられた2門の機銃も、眼下のハンターを照準しようとぎこちなく上下する。
「でけぇ蠅がいたもんだ……今、叩き落してやるからよ」
いよいよ敵が迫り、カルス(ka3647)もグリントボウの弦を引き絞った。
彼の背後には、やはり弓を構えたイグレーヌ・ランスター(ka3299)。
少し離れた岩場から、ノアール=プレアール(ka1623)が機導術で支援を送る。
カルスのグリントボウから放たれた矢は、武器由来とノアールの支援、
双方の魔力を帯びてリンドヴルムの翼に突き刺さる。しかし、
「抜かれた!」
頭上を1体目のリンドヴルムが通り過ぎていく。イグレーヌの矢も敵を止められなかったが、
「次がすぐ来る、気を抜くんじゃない!」
イグレーヌの叱咤で気を取り直し、カルスは続いて谷に入った2体目を振り返る。
「さあ、オリジナルとどれだけ違うか試させてもらうぜ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が魔導銃を掲げ、猛然と迫るリンドヴルムに対峙する。
敵の機銃から爆竹のような破裂音が連続し、周囲に砂煙が上がる。怯まず撃ち返す――
すれ違いざま、魔導銃の連射が敵の胸部を穿った。見上げた顔に、溶けかけた腐肉と骨片が降り注ぐ。
(高度が下がり切った。今なら落とせる)
次いで真司の第2射が下腹部を貫き、先頭を飛んでいた1体は彼の目前で墜落、
砂利を散らして狭路へ転がり込んだ。途端に鼻を突くような腐臭が漂い、真司は顔をしかめる。
「後を頼むぜ!」
尾を激しく打ち振るいながら、リンドヴルムが起き上がる。
後退する真司と入れ替わりに雪が駆けつけ、銃を下ろしたレイオス、
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)とレイ・T・ベッドフォード(ka2398)もこれに続く。
「墜ちよ、堕ちよ、魔性の化外……」
飛行中の2体目がレオン・イスルギ(ka3168)に機銃を向けた。
小口径の弾丸の雨が彼女を打ち据えるが、逃げはしない。真っ向撃ち返す。
レオンが射った矢は相手の胸に命中。後方から更に音子、
そしてマリーシュカ(ka2336)の矢が翼に大穴を空けていくと、敵は錐もみして頭から地面に激突した。
レオンは弓を置き、光の魔法を封じたトンファー・烈光旋棍へ持ち替える。素振りで握りの具合を確かめ、
「剣ほど自在とはいきませんが……八ツ原の武技、ここに振るいましょう」
ストーンアーマーの魔法が、ステップを刻む彼女の足元から砂利を巻き上げ、その身を包む。
「剣機リンドヴルムの量産型……本当にドラゴンみたいな姿ですね」
「さて、奴らが余計な知識をつける前に何とかしたいものだね」
レオンの後ろから、真田 天斗(ka0014)と龍崎・カズマ(ka0178)がやはり構えを取りつつ現れる。
2体目はこの3人で、何としても抑え込まなければならない。
●
地上に降り立った量産型リンドヴルム、その1体目。
両肩の機銃が火を噴き、前衛へ真正面から弾丸をぶつけていく。アルトとレイ、そして雪が被弾。
その間にレイオスが背後から敵へ追いすがるが、接敵まで少々距離がある。
「まだ動けるね!?」
アルトが咄嗟で傍らのふたりの仲間へ声をかけた。
当座、射撃班の手前で敵を止められる位置にいるのはこの3人だけだ。
「この程度、問題ねー、です」
「上に同じく」
「一気に行くよ!」
3方に分かれて再び走り出し、雪が真っ先に接敵すると、
「1匹目……さっさと叩っ潰す、です」
長柄の武器で打ちかかる。身長差を補うべく、下半身のばねを活かした跳躍からの渾身の一撃だった。
だが、ドラゴンの尾が予想外の反応速度で彼女を打ち落とした。
丸太を振るってぶつけたような強烈な反撃に、雪は吹き飛ばされる。レイが庇うように進路を変えると、
(まさに『腐ってもドラゴン』か。面白い)
アルトはのたうつ尾を警戒しつつ、別方向から間合いを詰めていく。
「剣機は各所が金属で補強されてるらしいけど……!」
居合抜き。その手に握られた試作振動刀が、リンドヴルムの脚部装甲板に食い込んで低い唸りを上げる。
「屍のくせに!」
3体目のリンドヴルムの機銃掃射が、岩陰のマリーシュカを見舞った。
弾丸と岩の破片を浴びて負傷しながら、どうにか通過する敵の翼へ矢を命中させた。
別の岩に隠れていたシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)も、
敵後方からアサルトライフルの固め撃ちを浴びせると、すぐさま遮蔽を離れてこれを追った。
銃を構えたまま上半身をぶらさない、軍隊仕込みの走り姿。
アルケミックヘルムの後頭部からこぼれ出た、長い銀髪をなびかせて走るシルヴィアを見送って、
「この私に余計な血を流させて……高くつくわよ」
血の滴る腕の傷を一舐めし、マリーシュカも駆け出す。
前方では待ち構えていた音子、イグレーヌとカルスの矢が翼を射抜き、遂に最後の1体を地上へ落下させた。
地面へ転げるなり、敵は意外にも機敏な動作で立ち上がり、
着地後の追い打ちを牽制せんと機銃から弾丸をばら撒く。すぐさま射撃班が下がる。
「コイツはちっときつそうだな……受ける依頼を間違えたか?」
ぼやきつつも、敵へ立ちはだかるヒースクリフ(ka1686)。ノアールと共に、3体目へ躍りかかった。
レイに助け起こされた雪。頭が眩み、視界がちかちかと瞬く。
身動きするたび、胸が針を飲んだように鋭く痛んだ。
「無理はなさらず。ここは私が食い止め――」
レイが言うが早いか、大蛇のような尾が彼の頭をかすめた。
リンドヴルムは縦横自在に尾を振るい、前衛たちを寄せつけない。
初太刀を当てたアルトも後退し隙をうかがうが、ひとり捨て身で飛び込んでも仕留められる相手ではない。
そうこうしている内に、3体目のリンドヴルムが墜落した。
これで全ての敵を地上へ引きずり下ろしたが、数十メートルの間隔を空けて並んだ3体の剣機、
抑えを突破され合流されれば、間合いの広い尾や機銃の攻撃で互いをカバーされ、
止めを刺すまでにかなりの犠牲を払わされかねない。
銃から剣へ得物を持ち替えたレイオス。
振り返れば、3体目の抑え役がどうやらふたりだけのようだ。
手が足りないかも知れず、助けに回りたいがこちらもピンチだ――
真司のライフルの連射が、1体目のリンドヴルムの頭部を叩く。一瞬だが敵が怯んだ。
すかさずアルトが飛び込む。レイが続きつつ、
「行って下さい!」
レイオスも迷いを捨て、3体目攻撃の支援へ走る。被っていたサークレットの魔力で声を増幅し、
『ヒースクリフ、ノアール、そっちを手伝う!』
接近を知らせながら、2体目の後方を回り込んで更に奥、3体目へと向かった。
2体目との格闘も苦戦しているようだが、今はそちらを助けている暇がない。
(全く……量産型剣機、まるで剣機のバーゲンセールだな)
●
(大きいだけあって当て易く避け易いが、一撃の威力が私では怖い)
振り回された尾が天斗を襲う。左腕でどうにか受け流し、すぐ体勢を立て直すが、
(2度は耐えられそうにない)
レオンが自らも走りつつ、風の支援魔法を天斗とカズマに投げかける。
天斗は痺れた左腕をどうにか上げてボクシングの構えに戻ると、
(だが、退く訳にもいかない!)
リンドヴルムの腕の一振りをダッキングでかわして懐へ飛び込み、
ドリルナックルを嵌めた拳で敵の左脚部へコンビネーションを繰り出す。
左、右、左、左フック――左腕が完全でない。最後のフックに肘打ちをおまけして、飛び退ろうとした。
遅ればせに振り下ろされた敵の左腕、問題なく避けられるタイミングだったが、
(翼か!)
腕の振りと共に身体をひねり、半身になったリンドヴルムの翼が天斗の頬を打つ。
翼の被膜は薄く、ダメージはないに等しいが、それでも思わず首ががくっと右にぶれた。
勢いをつけて身体を回転させるリンドヴルム。脚のもつれた天斗を、尾で横ざまに薙いだ。
「おい!? ――畜生!」
転倒したまま動けなくなった天斗から敵を引き離そうと、カズマがイルミナティウィップを放つ。
光り輝く鞭が激しい音を立てて飛び、リンドヴルムの脚に巻きついた。
光の魔法が装甲ごと敵の肉体を焼き、霧状のマテリアルが立ち昇る。
リンドブルムが顎を開き、咳き込むように腐汁を吐いた。効いている。
「合わせます!」
レオンがトンファーでもう片方の脚を殴った。
カズマが巻きつけた鞭を引けば、左右から両脚を揺さぶられ、いよいよリンドヴルムがよろめく。
「そうだ、そのままそっちを向いてろよ……!」
脚へのダメージ蓄積を見て、カズマが敵の背後へ回る。
背中に武装はないし、飛びついてしまえば手足も尾も届かない。
脚を壊されて倒れるか、前のめりになってくれさえすればチャンスができる。
前面で戦っていたレオンの姿が突然消し飛んだかと思うと、
リンドヴルムが砂埃を巻き上げ、全身を使って何か素早い動きをした。
雷に打たれたような、突発的で反射的な動作。何をした?
(――こいつ)
リンドヴルムは両脚を広げて下半身を踏ん張ったまま、上半身だけを回転させていた。
生体ではあり得ない、180度以上の回転。
甲高い音を立てて装甲が弾け飛び、張り裂けた腹部から黒く液状化した臓器を吹き出す。
あまりに強引な動きに脊椎、肩甲骨その他の金属骨格も分解しかけた筈だが、
その腕にはレオンを弾いた上、背後に回ったカズマを殴打するだけの威力があった。
肩口に重い打撃を受け、カズマは数メートルの距離を転がされる。
●
3体目。機銃の砲火を潜り抜け、ノアールとヒースクリフが敵の足下まで辿り着く。
「いっくわよー、そぉれ!」
ノアールのステッキから電光が迸る。
機導術・エレクトリックショック。敵の動きを封じる作戦だったが、
「……あら?」
リンドヴルムは術を跳ね除け、ノアールを蹴りつけた。
ヒースクリフが展開した防御障壁によって致命傷は免れたが、
「抵抗力もそれなりみたい。参っちゃうわねー」
「力押しっきゃねぇのかよ」
ヒースクリフはアックスブレードの補助グリップを押し込み、長柄の斧へ変形させると、
ノアールから攻性強化の術を受けつつ切り込んだ。
リンドヴルムは身体ごと尾を振るって、その一撃を打ち落としてしまう。
攻撃を跳ね返され、体勢の崩れたヒースクリフは追撃を回避できない。
ノアールが防御障壁を張りつつ入れ替わり、もう一度エレクトリックショックによる拘束を試みる。
(私たちもこれくらいの兵器を量産できたら、楽になるわよねー。
……CAMがそうなってくれるかしら? 今は敵方に持ってかれちゃってるけど)
リンドヴルムの再びの回転攻撃で、ノアールとヒースクリフがまとめて倒される。
続けざま、巨体による踏みつけがふたりを襲う――
「オレ流の竜尾の一撃だ! 喰らいやがれっ!」
身体と剣のリーチを目いっぱい使って、遠心力に任せたレイオスの奇襲。振り出された尾に深く食い込んだ。
剣を戻しての二太刀目。正面を向いて腕で迎撃しようとする敵の動きを、シルヴィアの連射が封じた。
(周囲を前衛が囲んでいれば、敵はぐるぐる回るだけで足を止めている。
牽制射撃で回転の向きをコントロールすれば、防御や反撃も抑えられるかも知れない)
慣れた手つきでライフルの弾倉を交換すると、シルヴィアは再び移動した。
常に敵の死角から弾を送り込み、その動きを封じる。
レイオスの剣が敵の腕を斬りつけた。ヒースクリフも連携して斧で脚を叩く。
足下にまとわりついて戦うふたりと、シルヴィアの牽制射撃、
そして2度のエレクトリックショックによるダメージもかさんで、敵は次第に守勢へ回っていく。
「このまま追い込みます!」
慎重に狙いをつけていた音子が、チャンスと見て矢を射った。
頭部に矢を受けたリンドヴルムは首を振り立て苦しみ出す。マリーシュカが、
「尾を曲げたら攻撃の合図よ、注意しなさい!」
尾の攻撃を、寸前でレイオスの盾が受けた。なまくらの刃が盾を撫ぜ、火花を散らす。
マリーシュカの射撃が胴に刺さると、瀕死のリンドヴルムはパニックを起こしたかのように突進を始めた。
レイオス、ヒースクリフ、ノアールが進路上に飛び込む。
体当たりでまとめて転がされつつも、3人の攻撃は確実に敵の脚へ打ち込まれた。
前のめりに転倒したリンドヴルムが機銃を無茶撃ちし、弾丸がマリーシュカと音子をかすめる。
(止めなければ)
シルヴィアが横合いから駆け寄り、至近距離からの連射で機銃の片一方を破壊した。
すかさず、音子が破壊された機銃の側へ走る。
ざっと砂を蹴ってその場でスタンスを取ると、止めの矢を撃ち込んだ。
「これで、まずは1体!」
●
1体目のリンドヴルムに、マテリアルヒーリングでどうにか痛みを消した雪が挑みかかる。
ハンマーを脚部へ打ち下ろそうとした瞬間、蹴り上げられた。
雪は仰向けに倒されて、今度こそ起き上がれない。しかし、
「――非才の身、ですが。全力の一撃、です」
その隙に背後から、レイが雷神斧を構えて身体ごとぶつかった。
カウンターに振り出された尾それ自体の勢いも合わさって、斧は装甲を苦もなく切り裂く。
敵の尾が両断されると、ここを先途とアルトも斬りかかる。
真司のライフル射撃がこれに加わり、各部を大きく負傷したリンドヴルムはうつ伏せに這いつくばった。
翼を広げ、4本足で走り出そうとするも、レイが首目がけて雷神斧を振り下ろす。
ドラゴンの首が落ちた。残された身体はしばらくの間手足を震わせ身悶えするが、やがて動かなくなる。
最後の1体。天斗とカズマを退けたものの、全身の骨格を損傷しその動きはぎこちない。
もはや両脚で歩くこともできず、1体目と同じく4本足での突進を開始する。
これを止めるのは――自己回復を終えたレオン。
トンファーを自在に操り、敵の頭部に早業の連撃を加えて進路を逸らす。
乱射される機銃から身を翻して逃れれば、カルスとイグレーヌの弓が止めを引き受ける。
「主は賜った」
イグレーヌがエクラの聖句を唱え、矢をつがえるその腕に紅く輝く刻印が広がる。
「土は土に、灰は灰に、塵は塵に――」
「いい加減くたばりやがれ……!」
カルスの矢がリンドヴルムの右の眼球に突き立てられると、イグレーヌの矢も過たず、左の眼球を刺し貫いた。
「――光あれ」
リンドヴルムの頭部が湿った音を立てて破裂する。
こうして3体の量産型リンドヴルムは完全に停止し、狭路を封じる歪虚の脅威は完全に排除された。
●
狭路には破壊されたトラックと追跡班の遺体の他、巨大な足跡がくっきりと砂地に残されていた。
「間違いなくCAMのもんだぜ」
元パイロットのレイオスが言う。崖の崩落も免れ、トラックを撤去しさえすれば輸送路の封鎖は解かれるが、
「剣機をどうやって作ってんのか知らねーけど、レベル跳ね上がりそう、です」
CAMを逃がし切れば、その技術はいずれ剣機その他の機械化歪虚に反映される。
呟く雪に、周辺警戒を終えた音子も浮かない顔で、
「税金の塊を屑鉄にしなきゃならない今後の作戦は、色々痛いですよ……ロッソの艦長も頭痛いだろうなぁ」
だが、どういう訳か雪の表情は明るい。
後々はもっと手強い敵が出てくる。CAMがどうなろうと、ハンターにとっては過酷な戦いが続く。
その愉悦を思えば、胸の傷の痛みなど――
「周辺に残敵、ありません。準備でき次第撤収しましょう」
ヘルメットでくぐもったシルヴィアの声に、ノアールが頷いて、
「シン君、どうー?」
「トラックが直れば楽なんだが。怪我人がいてこっちも大変、遺体回収は悪いが後回しだな」
真司が元整備士の音子を呼ぶが、西方世界製のトラック、マニュアルでもなければ修理は難しそうとのこと。
「では、小さな遺品だけでも先に持ち帰りましょう……失くなったら大変ですからね」
レイは荷台に追跡班の遺体を並べ、
身元を明かすような持ち物の一部を、大事そうに自分の荷物入れへ移していく。マリーシュカも、
「まぁ、からからに乾いちゃって可哀想に……」
遺品回収へ手を貸す。彼女がおもむろに鼻歌を歌い始めると、レイが何やら妙な顔をした。
「……不謹慎だったかしら?」
「い、いえ、そういう訳では決して。どうぞお続けください」
「生存者なしか。世知辛いねぇ」
腹の虫が鳴りそうなのを手で押さえながら、カルスが遺体運びを手伝う。
通り過ぎたトラックの脇では、怪我を負った天斗とカズマ、ヒースクリフが土に寝そべっている。
「お手伝いできず、申し訳ありません」
「気にすんなよ。それよりイグレーヌを見なかったか?」
天斗は済まなそうな顔で、カルスへ首を横に振ってみせる。隣のカズマが、
「レオンもいねぇな。俺らがへばってる間、あいつとお前らとで敵を仕留めてくれたから、
礼のひとつも言っとこうかと思ったんだが」
「トンファー持った娘か? それならさっき、谷の向こうへ歩いてったぜ」
枕代わりに敷いていたハンカチから、ヒースクリフが頭を上げて言う。
と、通りかかったアルトが、
「イグレーヌさんも一緒の筈だよ。
4人で見回りに出たけど、敵ももういなさそうだし、シルヴィアさんとボクは途中で戻って来たんだ」
「これ以上は無駄だ。シルヴィアも言ったろう、CAM追跡はまた別の仕事だとな」
狭路の奥を睨んで佇むレオンに、イグレーヌが後ろから声をかける。
道の先には、CAMの足跡が点々と続いている。
奪われたCAM・ドンキィノーズは追跡班を振り切り、まんまと帝国領へ侵入したのだ。
今更徒歩で追えはしないと分かっているが――
「……借りを返す機会は、まだまだある筈だ。戻ろう」
イグレーヌが道を引き返し始めると、レオンも意を決したように、踵を返して彼女を追う。
(郷の伝承に謳われし青の世界、その力を汚されたままではおかぬ。いずれ)
必ずや、この手で一矢報いてみせる。そう決心し、仲間たちの下へと戻っていった。
輸送路上空を旋回する量産型リンドヴルム3体。
谷間の狭路への侵入者を察知するなり、編隊を組んで降下準備を始めた。
薄曇りの空に、3つの黒い染みのような影が過る。互いに未だ射程外、
「散開!」
十 音子(ka0537)のかけ声で、15名のハンターが散らばって狭路の方々へ走り込む。
なまじ固まれば機銃掃射の餌食にされてしまう。
3体とも地上に落ちるまでそれぞれ離れ、単独で急降下攻撃に対処しなければならない。
「あいつらの飛行速度からすっと、そんなに余裕なさそー、です。急ぎで」
量産型リンドヴルム戦の経験者、八城雪(ka0146)も言いつつ手近な岩陰へ隠れた。
空を飛ぶ敵に、彼女が手にしたルーサーンハンマーでは到底届かない。
味方の射撃で撃墜した後、白兵戦で止めを刺す。それまでは物陰で見守るより他なかった。
狭路の奥には、壊滅した追跡班の魔導トラック2台が乗り捨てられている。
精確性に乏しい量産型の対地攻撃も、逃げ場がほとんどないこの地形では威力を発揮したようだ。
一列になって降下する敵へ、狭路に点在する射撃要員が応射、
弱点である光の魔法を帯びた矢が、閃光の尾を曳いて次々に崖下から打ち上がる。
全員、狙いは先頭の1体。射撃班のひとり、柊 真司(ka0705)も大弓『吼天』の矢を放った。
(空を飛ばれてると戦い辛いからな、狙い撃つぜ)
矢は逸れてしまった――まだ射程が遠い。
次の矢をつがえている間に、先頭の1体が崖の頂上付近まで降下してくる。
蠅のように小さかった敵影が見るみる内に地上へ接近し、その巨体を晒した。
ドラゴンの腐乱死体。青黒く変色した皮膚のあちこちから、骨格と思しき白い突起が飛び出す。
膨張・白濁した眼球がぐるぐると回転し、滑空の為に広げられた両の翼、
その付け根に据えられた2門の機銃も、眼下のハンターを照準しようとぎこちなく上下する。
「でけぇ蠅がいたもんだ……今、叩き落してやるからよ」
いよいよ敵が迫り、カルス(ka3647)もグリントボウの弦を引き絞った。
彼の背後には、やはり弓を構えたイグレーヌ・ランスター(ka3299)。
少し離れた岩場から、ノアール=プレアール(ka1623)が機導術で支援を送る。
カルスのグリントボウから放たれた矢は、武器由来とノアールの支援、
双方の魔力を帯びてリンドヴルムの翼に突き刺さる。しかし、
「抜かれた!」
頭上を1体目のリンドヴルムが通り過ぎていく。イグレーヌの矢も敵を止められなかったが、
「次がすぐ来る、気を抜くんじゃない!」
イグレーヌの叱咤で気を取り直し、カルスは続いて谷に入った2体目を振り返る。
「さあ、オリジナルとどれだけ違うか試させてもらうぜ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が魔導銃を掲げ、猛然と迫るリンドヴルムに対峙する。
敵の機銃から爆竹のような破裂音が連続し、周囲に砂煙が上がる。怯まず撃ち返す――
すれ違いざま、魔導銃の連射が敵の胸部を穿った。見上げた顔に、溶けかけた腐肉と骨片が降り注ぐ。
(高度が下がり切った。今なら落とせる)
次いで真司の第2射が下腹部を貫き、先頭を飛んでいた1体は彼の目前で墜落、
砂利を散らして狭路へ転がり込んだ。途端に鼻を突くような腐臭が漂い、真司は顔をしかめる。
「後を頼むぜ!」
尾を激しく打ち振るいながら、リンドヴルムが起き上がる。
後退する真司と入れ替わりに雪が駆けつけ、銃を下ろしたレイオス、
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)とレイ・T・ベッドフォード(ka2398)もこれに続く。
「墜ちよ、堕ちよ、魔性の化外……」
飛行中の2体目がレオン・イスルギ(ka3168)に機銃を向けた。
小口径の弾丸の雨が彼女を打ち据えるが、逃げはしない。真っ向撃ち返す。
レオンが射った矢は相手の胸に命中。後方から更に音子、
そしてマリーシュカ(ka2336)の矢が翼に大穴を空けていくと、敵は錐もみして頭から地面に激突した。
レオンは弓を置き、光の魔法を封じたトンファー・烈光旋棍へ持ち替える。素振りで握りの具合を確かめ、
「剣ほど自在とはいきませんが……八ツ原の武技、ここに振るいましょう」
ストーンアーマーの魔法が、ステップを刻む彼女の足元から砂利を巻き上げ、その身を包む。
「剣機リンドヴルムの量産型……本当にドラゴンみたいな姿ですね」
「さて、奴らが余計な知識をつける前に何とかしたいものだね」
レオンの後ろから、真田 天斗(ka0014)と龍崎・カズマ(ka0178)がやはり構えを取りつつ現れる。
2体目はこの3人で、何としても抑え込まなければならない。
●
地上に降り立った量産型リンドヴルム、その1体目。
両肩の機銃が火を噴き、前衛へ真正面から弾丸をぶつけていく。アルトとレイ、そして雪が被弾。
その間にレイオスが背後から敵へ追いすがるが、接敵まで少々距離がある。
「まだ動けるね!?」
アルトが咄嗟で傍らのふたりの仲間へ声をかけた。
当座、射撃班の手前で敵を止められる位置にいるのはこの3人だけだ。
「この程度、問題ねー、です」
「上に同じく」
「一気に行くよ!」
3方に分かれて再び走り出し、雪が真っ先に接敵すると、
「1匹目……さっさと叩っ潰す、です」
長柄の武器で打ちかかる。身長差を補うべく、下半身のばねを活かした跳躍からの渾身の一撃だった。
だが、ドラゴンの尾が予想外の反応速度で彼女を打ち落とした。
丸太を振るってぶつけたような強烈な反撃に、雪は吹き飛ばされる。レイが庇うように進路を変えると、
(まさに『腐ってもドラゴン』か。面白い)
アルトはのたうつ尾を警戒しつつ、別方向から間合いを詰めていく。
「剣機は各所が金属で補強されてるらしいけど……!」
居合抜き。その手に握られた試作振動刀が、リンドヴルムの脚部装甲板に食い込んで低い唸りを上げる。
「屍のくせに!」
3体目のリンドヴルムの機銃掃射が、岩陰のマリーシュカを見舞った。
弾丸と岩の破片を浴びて負傷しながら、どうにか通過する敵の翼へ矢を命中させた。
別の岩に隠れていたシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)も、
敵後方からアサルトライフルの固め撃ちを浴びせると、すぐさま遮蔽を離れてこれを追った。
銃を構えたまま上半身をぶらさない、軍隊仕込みの走り姿。
アルケミックヘルムの後頭部からこぼれ出た、長い銀髪をなびかせて走るシルヴィアを見送って、
「この私に余計な血を流させて……高くつくわよ」
血の滴る腕の傷を一舐めし、マリーシュカも駆け出す。
前方では待ち構えていた音子、イグレーヌとカルスの矢が翼を射抜き、遂に最後の1体を地上へ落下させた。
地面へ転げるなり、敵は意外にも機敏な動作で立ち上がり、
着地後の追い打ちを牽制せんと機銃から弾丸をばら撒く。すぐさま射撃班が下がる。
「コイツはちっときつそうだな……受ける依頼を間違えたか?」
ぼやきつつも、敵へ立ちはだかるヒースクリフ(ka1686)。ノアールと共に、3体目へ躍りかかった。
レイに助け起こされた雪。頭が眩み、視界がちかちかと瞬く。
身動きするたび、胸が針を飲んだように鋭く痛んだ。
「無理はなさらず。ここは私が食い止め――」
レイが言うが早いか、大蛇のような尾が彼の頭をかすめた。
リンドヴルムは縦横自在に尾を振るい、前衛たちを寄せつけない。
初太刀を当てたアルトも後退し隙をうかがうが、ひとり捨て身で飛び込んでも仕留められる相手ではない。
そうこうしている内に、3体目のリンドヴルムが墜落した。
これで全ての敵を地上へ引きずり下ろしたが、数十メートルの間隔を空けて並んだ3体の剣機、
抑えを突破され合流されれば、間合いの広い尾や機銃の攻撃で互いをカバーされ、
止めを刺すまでにかなりの犠牲を払わされかねない。
銃から剣へ得物を持ち替えたレイオス。
振り返れば、3体目の抑え役がどうやらふたりだけのようだ。
手が足りないかも知れず、助けに回りたいがこちらもピンチだ――
真司のライフルの連射が、1体目のリンドヴルムの頭部を叩く。一瞬だが敵が怯んだ。
すかさずアルトが飛び込む。レイが続きつつ、
「行って下さい!」
レイオスも迷いを捨て、3体目攻撃の支援へ走る。被っていたサークレットの魔力で声を増幅し、
『ヒースクリフ、ノアール、そっちを手伝う!』
接近を知らせながら、2体目の後方を回り込んで更に奥、3体目へと向かった。
2体目との格闘も苦戦しているようだが、今はそちらを助けている暇がない。
(全く……量産型剣機、まるで剣機のバーゲンセールだな)
●
(大きいだけあって当て易く避け易いが、一撃の威力が私では怖い)
振り回された尾が天斗を襲う。左腕でどうにか受け流し、すぐ体勢を立て直すが、
(2度は耐えられそうにない)
レオンが自らも走りつつ、風の支援魔法を天斗とカズマに投げかける。
天斗は痺れた左腕をどうにか上げてボクシングの構えに戻ると、
(だが、退く訳にもいかない!)
リンドヴルムの腕の一振りをダッキングでかわして懐へ飛び込み、
ドリルナックルを嵌めた拳で敵の左脚部へコンビネーションを繰り出す。
左、右、左、左フック――左腕が完全でない。最後のフックに肘打ちをおまけして、飛び退ろうとした。
遅ればせに振り下ろされた敵の左腕、問題なく避けられるタイミングだったが、
(翼か!)
腕の振りと共に身体をひねり、半身になったリンドヴルムの翼が天斗の頬を打つ。
翼の被膜は薄く、ダメージはないに等しいが、それでも思わず首ががくっと右にぶれた。
勢いをつけて身体を回転させるリンドヴルム。脚のもつれた天斗を、尾で横ざまに薙いだ。
「おい!? ――畜生!」
転倒したまま動けなくなった天斗から敵を引き離そうと、カズマがイルミナティウィップを放つ。
光り輝く鞭が激しい音を立てて飛び、リンドヴルムの脚に巻きついた。
光の魔法が装甲ごと敵の肉体を焼き、霧状のマテリアルが立ち昇る。
リンドブルムが顎を開き、咳き込むように腐汁を吐いた。効いている。
「合わせます!」
レオンがトンファーでもう片方の脚を殴った。
カズマが巻きつけた鞭を引けば、左右から両脚を揺さぶられ、いよいよリンドヴルムがよろめく。
「そうだ、そのままそっちを向いてろよ……!」
脚へのダメージ蓄積を見て、カズマが敵の背後へ回る。
背中に武装はないし、飛びついてしまえば手足も尾も届かない。
脚を壊されて倒れるか、前のめりになってくれさえすればチャンスができる。
前面で戦っていたレオンの姿が突然消し飛んだかと思うと、
リンドヴルムが砂埃を巻き上げ、全身を使って何か素早い動きをした。
雷に打たれたような、突発的で反射的な動作。何をした?
(――こいつ)
リンドヴルムは両脚を広げて下半身を踏ん張ったまま、上半身だけを回転させていた。
生体ではあり得ない、180度以上の回転。
甲高い音を立てて装甲が弾け飛び、張り裂けた腹部から黒く液状化した臓器を吹き出す。
あまりに強引な動きに脊椎、肩甲骨その他の金属骨格も分解しかけた筈だが、
その腕にはレオンを弾いた上、背後に回ったカズマを殴打するだけの威力があった。
肩口に重い打撃を受け、カズマは数メートルの距離を転がされる。
●
3体目。機銃の砲火を潜り抜け、ノアールとヒースクリフが敵の足下まで辿り着く。
「いっくわよー、そぉれ!」
ノアールのステッキから電光が迸る。
機導術・エレクトリックショック。敵の動きを封じる作戦だったが、
「……あら?」
リンドヴルムは術を跳ね除け、ノアールを蹴りつけた。
ヒースクリフが展開した防御障壁によって致命傷は免れたが、
「抵抗力もそれなりみたい。参っちゃうわねー」
「力押しっきゃねぇのかよ」
ヒースクリフはアックスブレードの補助グリップを押し込み、長柄の斧へ変形させると、
ノアールから攻性強化の術を受けつつ切り込んだ。
リンドヴルムは身体ごと尾を振るって、その一撃を打ち落としてしまう。
攻撃を跳ね返され、体勢の崩れたヒースクリフは追撃を回避できない。
ノアールが防御障壁を張りつつ入れ替わり、もう一度エレクトリックショックによる拘束を試みる。
(私たちもこれくらいの兵器を量産できたら、楽になるわよねー。
……CAMがそうなってくれるかしら? 今は敵方に持ってかれちゃってるけど)
リンドヴルムの再びの回転攻撃で、ノアールとヒースクリフがまとめて倒される。
続けざま、巨体による踏みつけがふたりを襲う――
「オレ流の竜尾の一撃だ! 喰らいやがれっ!」
身体と剣のリーチを目いっぱい使って、遠心力に任せたレイオスの奇襲。振り出された尾に深く食い込んだ。
剣を戻しての二太刀目。正面を向いて腕で迎撃しようとする敵の動きを、シルヴィアの連射が封じた。
(周囲を前衛が囲んでいれば、敵はぐるぐる回るだけで足を止めている。
牽制射撃で回転の向きをコントロールすれば、防御や反撃も抑えられるかも知れない)
慣れた手つきでライフルの弾倉を交換すると、シルヴィアは再び移動した。
常に敵の死角から弾を送り込み、その動きを封じる。
レイオスの剣が敵の腕を斬りつけた。ヒースクリフも連携して斧で脚を叩く。
足下にまとわりついて戦うふたりと、シルヴィアの牽制射撃、
そして2度のエレクトリックショックによるダメージもかさんで、敵は次第に守勢へ回っていく。
「このまま追い込みます!」
慎重に狙いをつけていた音子が、チャンスと見て矢を射った。
頭部に矢を受けたリンドヴルムは首を振り立て苦しみ出す。マリーシュカが、
「尾を曲げたら攻撃の合図よ、注意しなさい!」
尾の攻撃を、寸前でレイオスの盾が受けた。なまくらの刃が盾を撫ぜ、火花を散らす。
マリーシュカの射撃が胴に刺さると、瀕死のリンドヴルムはパニックを起こしたかのように突進を始めた。
レイオス、ヒースクリフ、ノアールが進路上に飛び込む。
体当たりでまとめて転がされつつも、3人の攻撃は確実に敵の脚へ打ち込まれた。
前のめりに転倒したリンドヴルムが機銃を無茶撃ちし、弾丸がマリーシュカと音子をかすめる。
(止めなければ)
シルヴィアが横合いから駆け寄り、至近距離からの連射で機銃の片一方を破壊した。
すかさず、音子が破壊された機銃の側へ走る。
ざっと砂を蹴ってその場でスタンスを取ると、止めの矢を撃ち込んだ。
「これで、まずは1体!」
●
1体目のリンドヴルムに、マテリアルヒーリングでどうにか痛みを消した雪が挑みかかる。
ハンマーを脚部へ打ち下ろそうとした瞬間、蹴り上げられた。
雪は仰向けに倒されて、今度こそ起き上がれない。しかし、
「――非才の身、ですが。全力の一撃、です」
その隙に背後から、レイが雷神斧を構えて身体ごとぶつかった。
カウンターに振り出された尾それ自体の勢いも合わさって、斧は装甲を苦もなく切り裂く。
敵の尾が両断されると、ここを先途とアルトも斬りかかる。
真司のライフル射撃がこれに加わり、各部を大きく負傷したリンドヴルムはうつ伏せに這いつくばった。
翼を広げ、4本足で走り出そうとするも、レイが首目がけて雷神斧を振り下ろす。
ドラゴンの首が落ちた。残された身体はしばらくの間手足を震わせ身悶えするが、やがて動かなくなる。
最後の1体。天斗とカズマを退けたものの、全身の骨格を損傷しその動きはぎこちない。
もはや両脚で歩くこともできず、1体目と同じく4本足での突進を開始する。
これを止めるのは――自己回復を終えたレオン。
トンファーを自在に操り、敵の頭部に早業の連撃を加えて進路を逸らす。
乱射される機銃から身を翻して逃れれば、カルスとイグレーヌの弓が止めを引き受ける。
「主は賜った」
イグレーヌがエクラの聖句を唱え、矢をつがえるその腕に紅く輝く刻印が広がる。
「土は土に、灰は灰に、塵は塵に――」
「いい加減くたばりやがれ……!」
カルスの矢がリンドヴルムの右の眼球に突き立てられると、イグレーヌの矢も過たず、左の眼球を刺し貫いた。
「――光あれ」
リンドヴルムの頭部が湿った音を立てて破裂する。
こうして3体の量産型リンドヴルムは完全に停止し、狭路を封じる歪虚の脅威は完全に排除された。
●
狭路には破壊されたトラックと追跡班の遺体の他、巨大な足跡がくっきりと砂地に残されていた。
「間違いなくCAMのもんだぜ」
元パイロットのレイオスが言う。崖の崩落も免れ、トラックを撤去しさえすれば輸送路の封鎖は解かれるが、
「剣機をどうやって作ってんのか知らねーけど、レベル跳ね上がりそう、です」
CAMを逃がし切れば、その技術はいずれ剣機その他の機械化歪虚に反映される。
呟く雪に、周辺警戒を終えた音子も浮かない顔で、
「税金の塊を屑鉄にしなきゃならない今後の作戦は、色々痛いですよ……ロッソの艦長も頭痛いだろうなぁ」
だが、どういう訳か雪の表情は明るい。
後々はもっと手強い敵が出てくる。CAMがどうなろうと、ハンターにとっては過酷な戦いが続く。
その愉悦を思えば、胸の傷の痛みなど――
「周辺に残敵、ありません。準備でき次第撤収しましょう」
ヘルメットでくぐもったシルヴィアの声に、ノアールが頷いて、
「シン君、どうー?」
「トラックが直れば楽なんだが。怪我人がいてこっちも大変、遺体回収は悪いが後回しだな」
真司が元整備士の音子を呼ぶが、西方世界製のトラック、マニュアルでもなければ修理は難しそうとのこと。
「では、小さな遺品だけでも先に持ち帰りましょう……失くなったら大変ですからね」
レイは荷台に追跡班の遺体を並べ、
身元を明かすような持ち物の一部を、大事そうに自分の荷物入れへ移していく。マリーシュカも、
「まぁ、からからに乾いちゃって可哀想に……」
遺品回収へ手を貸す。彼女がおもむろに鼻歌を歌い始めると、レイが何やら妙な顔をした。
「……不謹慎だったかしら?」
「い、いえ、そういう訳では決して。どうぞお続けください」
「生存者なしか。世知辛いねぇ」
腹の虫が鳴りそうなのを手で押さえながら、カルスが遺体運びを手伝う。
通り過ぎたトラックの脇では、怪我を負った天斗とカズマ、ヒースクリフが土に寝そべっている。
「お手伝いできず、申し訳ありません」
「気にすんなよ。それよりイグレーヌを見なかったか?」
天斗は済まなそうな顔で、カルスへ首を横に振ってみせる。隣のカズマが、
「レオンもいねぇな。俺らがへばってる間、あいつとお前らとで敵を仕留めてくれたから、
礼のひとつも言っとこうかと思ったんだが」
「トンファー持った娘か? それならさっき、谷の向こうへ歩いてったぜ」
枕代わりに敷いていたハンカチから、ヒースクリフが頭を上げて言う。
と、通りかかったアルトが、
「イグレーヌさんも一緒の筈だよ。
4人で見回りに出たけど、敵ももういなさそうだし、シルヴィアさんとボクは途中で戻って来たんだ」
「これ以上は無駄だ。シルヴィアも言ったろう、CAM追跡はまた別の仕事だとな」
狭路の奥を睨んで佇むレオンに、イグレーヌが後ろから声をかける。
道の先には、CAMの足跡が点々と続いている。
奪われたCAM・ドンキィノーズは追跡班を振り切り、まんまと帝国領へ侵入したのだ。
今更徒歩で追えはしないと分かっているが――
「……借りを返す機会は、まだまだある筈だ。戻ろう」
イグレーヌが道を引き返し始めると、レオンも意を決したように、踵を返して彼女を追う。
(郷の伝承に謳われし青の世界、その力を汚されたままではおかぬ。いずれ)
必ずや、この手で一矢報いてみせる。そう決心し、仲間たちの下へと戻っていった。
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【虚動】驢馬の騎士【相談板】 マリーシュカ(ka2336) エルフ|13才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/01/06 02:35:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/02 20:24:11 |