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【CF】パルムの拳 聖輝節救世主伝説

マスター:近藤豊

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/12/05 22:00
完成日
2018/12/10 09:51

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 愛を育むカップルにおいて、イベントと言えば聖輝節を忘れる事はできない。
 降りしきる雪を窓から眺め、暖かい暖炉と美味しい食事で楽しい一時を過ごす。

 ――だが。
 そのカップルの営みを全否定する組織が、かつてあった。
 愛を独占する『愛の富裕層』に対して敢然と立ち向かい、愛の再分配を掲げる組織。
 早い話、独り身で聖輝節に恨みしか抱けない悲しい者達がカップルに八つ当たりしているだけなのだが、ある年の聖輝節では冒険都市リゼリオを混乱に陥れた。
 その組織の名は『自由の鐘』という――。

「もうすぐ聖輝節ね」
「ああ、そうだね。きっと幸せな日になるんだろうな」
 手を繋いだカップルが、幸せを振りまきながら歩いている。
 その楽しそうな笑顔。周りに自分達の幸せを振りまいているつもりなのだろう。
 だが、それは独り身からは羨望と憤怒の対象。決して許して良い相手ではない。
 そう、この男も二人を決して許すつもりはなかった。
「貴様」
 二人の前に男は立ちはだかった。
 鍛え上げられた肉体。
 黒の革製ジャケット。袖は破られ、寒空の下でも筋肉を誇示している。
 だが、特徴的なのは胸の部分は七つの破れたハートが描かれたTシャツ。それをジャケットの下に着ている点だ。
「な、なんだよ」
 女性を庇うように男性は前に出る。
 女性の前で格好付けようというのだろうか。それがまた立ちはだかった男を苛つかせる。
「汚い手で女性に触るな」
「お前は誰だ?」
「俺は……ソイヤだ」
 この男、かつては聖・霊闘士と名乗って毒パルムを操り多くのカップルを破滅させてきたソイヤというハンターだ。
 数年前の聖輝節で敗れてから悔しさ余り、勢いに乗って山ごもり。
 片眉剃って鍛え続けた結果、筋骨隆々の男となっていた。
「俺の邪魔をするな」
「彼女にちょっかいを出すな!」
 男性は握りこぶしを作ってソイヤに闘争心を向ける。
 だが、ソイヤに臆する様子はない。
「ほあたぁ!」
 怪鳥音と共にソイヤは毒パルムを投げつけた。
 だが、毒パルムは二人に直撃せず、明後日の方向に消えていく。
「な、なんだ? 当たってないぞ?」
「パルム壊愛拳」
 ソイヤは、ただそう呟いた。
 カップルの男性は意味が分からない。
「何言っているんだ?」
「お前はもう……フラれている」
 人差し指で女性を差すソイヤ。
 次の瞬間、女性は自分のバックが軽い事に気付く。
「あれ? 財布がないんだけど」
「え!? 何処かに置き忘れた?」
「いや、そんな……って、ちょっと。なんであんたが私の財布を持ってるのよ!」
 女性は男性の懐にあった財布に気付いた。
 突如男性に泥棒疑惑が浮上。
 男性も言い訳するが、納得して貰える気配はない。
「最っっっ低!」
 女性は男性に派手なビンタ。
 怒りながら女性は立ち去ってしまった。
 涙ながらに女性の後を追いかける男性だが、もう遅い。
「俺はソイヤ。胸に七つの失恋を持つ男だ」


 今年の聖輝節はケーキ屋が建ち並ぶのだが、少し離れた所に異彩を放つ屋台がある。
 その屋台からは異様な空気が流れ、近づくカップルは皆無。いるのは酒で酔っ払ったドワーフぐらいだ。
「ちょ! これは何ザマス?」
 ラズモネ・シャングリラ艦長の森山恭子(kz0216)は、赤いドレスに身を包みながら恐れ戦いた。
 今年の聖輝節はリアルブルーの人々が月と共に転移してきた事から、歓迎の意味で大規模なパーティが開催される事になった。リゼリオを舞台に各地でクリスマスパーティが催される事になった。イベントも各種執り行われ、その費用は部族会議が負担する事になっているのだが……。
 クリスマスムード一色でナンパ待ちしていた恭子は、ある屋台の異様な空気に圧倒された。
「いらっしゃい……あ」
 屋台から顔を出したのは山岳猟団の八重樫 敦(kz0056)。
 強面のままピンクのエプロンを着用して接客していたようだが、ここで知り合いに出会うとは考えていなかったらしい。
「八重樫さん、何やっているザマスか?」
「……聞くな」
「ああ、なんか知り合いに屋台を手伝わされているらしいぜ。婆さん」
 テーブルに腰掛けて酒を飲んでいるのはジェイミー・ドリスキル(kz0231)。
 本当はこの屋台で店員として連れて来られたようだが、酒ばかり飲んでやる気は皆無。無理もない。クリスマスムード一色の街で、何故おっさんだけでケーキの屋台を出さなければならないのか。
「婆さんじゃないザマス。まだ還暦前ザマス。
 それより、八重樫さん。ここは何ザマス?」
「ああ、これだ」
 八重樫は看板の上に書かれた文字を指差した。

 『漢爆裂超絶硬派洋菓子店「ヨアキム」』

 馬鹿で有名な辺境のドワーフ王ヨアキム(kz0011)が、ケーキをよく理解しないまま出店した異彩の店舗だ。店主のヨアキムはキュジィ(kz0078)を連れて買い出しに行っている為、店にいるのは八重樫とドリスキルだけのようだ。
「個性的ザマスね。で、ケーキは?」
「ああ、このツマミは美味いぞ。漢のオーラとやらを放っているらしいが、美味ければ何でもいいさ」
 恭子の鼻先に突き出されたのはこの屋台のケーキだ。
 超濃厚漢汁ケーキと名付けられたそれは、ヨアキムが生み出した自称『漢のケーキ』。
 ピータンと精力剤を練り込んだスポンジに味噌とおからでデコレート。異彩と腐臭を放つケーキをヨアキムは『漢のオーラ』を放つと自画自賛していた。
 しかし、恭子にとっては――。
「うわっ、臭いザマス! 近付けないで欲しいザマス!」
「なんだよ、ノリ悪いな」
 そう言いながら、ドリスキルはケーキを一口放り込むとウイスキーで一気に洗い流した。
 どうやら、酒のツマミとしては悪くないようだ。
「なんだか、事情は知らないザマスが……二人とも屋台の手伝い頑張るザマス。それでは……」
「待つであります!」
 立ち去ろうとする恭子を呼び止めたのは、自称『幻獣王』のチューダ(kz0173)であった。
「あら、可愛らしい生き物ザマスね。持ち帰ってペットにするザマス」
「こらっ! 我輩は、ペットじゃないであります! 王様でありますよ!
 それより大変であります! もうすぐここに自由の鐘が押し寄せるでありますよ!」
 実はヨアキムから店舗を護るよう依頼されていたチューダ。
 間もなく聖輝節を滅茶苦茶にする為に自由の鐘の面々が訪れるというのだ。彼らがやってくればカップルどころか家族団らんもままならない阿鼻叫喚にされるに違いない。
「自由の鐘……ああ、あの馬鹿どもか」
「これは危機であります! 我輩、ドワーフ王と約束を守る為、ここに幻獣王親衛隊を編制するであります!
 皆も参加させるので頑張って屋台を護るでありますよ」

リプレイ本文

 聖輝節は、夢のような時間が流れる。
 心地良い歌声。
 素晴らしい料理。
 それを楽しむ人々。
 過ごす時間は幻想的。

 ――だが、待って欲しい。
 それは本当に幸せなのか?
 
 夢は常に美しく幸せな夢とは限らない。
 時には悪夢もあり、理解を遙かに超えた事象が待ち受ける。
 そこには闇へ誘う入り口の先に広がる混沌ではないだろうか。

 夢のような時間は、本当に――幸せなのか。


「ふっひぃ~! あのカップルを襲うぞぉ」
 何故かモヒカンに刺々しい肩パッドを装着した『自由の鐘』の面々。
 聖輝節ムードいっぱいの冒険都市『リゼリオ』において荒れ狂う独り身の者達。愛いっぱいのカップルを見かければ、茶化しながらイチャイチャっぷりを茶化そうと大暴れだ。
「何するのよ! どっか行ってよ!」
 カップルの女性が思わず叫ぶ。
 だが、その悲痛な声にも自由の鐘には届かない。
「聞こえんなぁ。俺達にもその愛を分けてくれよぉ」
 愛を独占する『愛の富裕層』から愛を奪い返し、愛の再分配を唱える自由の鐘。
 彼らが流すは嫉妬塗れとなった血の涙か。
 そこへ現れるのは一人の男――。
「ほー、あたぁ!」
 修行により筋肉質となった毒パルム神拳継承者ソイヤが、怪鳥音と共に毒パルムを投げつける。
「パルム破顔拳」
「ちょ、ちょっと! パルムが顔に落書きを!」
 ソイヤが投げつけた毒パルムがカップルの顔に落書きを始める。
 肉体的な負傷はないが、予定では楽しい聖輝節を過ごすはずが自由の鐘のせいで精神的苦痛でしかない。
 カップルにトラウマを負わせながら、自由の鐘の面々はリゼリオの中心部へ向かう。
 狙うは、ケーキ屋台。
 今年の聖輝節の象徴とも言える存在を、自由の鐘は完全破壊を目論んでいたのだ。


「彼女いない歴=年齢で、時々人類裏切って結婚申し込んでくれた女歪虚の所に行こうか迷っちゃうくらい餓えている俺……。そんな俺の前で女といちゃつくとは許せんっす!」
 いつも以上に気合いを入れて息巻いているのは自由の鐘の神楽(ka2032)。
 戦場とはまったく違う雰囲気に殺気立つ神楽は、視界に入ったカップルへ襲い掛かる。
「きゃー!」
「キショいのが来たっ!」
「逃げろーー!」
 カップルばかりか、付近にいた女性達まで逃げ出す始末。
 それは神楽のガラスのハートをちょっとばかり傷付けた。
「ケケケ、お前も蝋人形……じゃなかった触手を味合わせてやるっす!」
 神楽は幻影触手を放つ。
 魔法で作り出した幻影の触手が周辺のカップルや女子を拘束する。
 自由を奪われた者達は驚きと恐怖に顔を歪ませる。
「ざまあないっす! 聖輝節なんか……聖輝節なんか……。
 あ、俺は触手の歪虚王なんで、ハンターの誰かに似てても他人の空似っすよ~」
 触手で暴れるだけ暴れておいた挙げ句、後でハンターズソサエティに怒られないよう工作も怠らない。
 恐るべし、神楽。
 しかし、かつてこの世に悪の栄えた試しなし。
 必ず自由の鐘に対抗する存在が姿を現すのだ。
「待つでありますっ!」
 中心から少し外れた屋台より聞こえるやや甲高い声。
 そこには自称『幻獣王』チューダ(kz0173)がテーブルの上に立っている。
 幻獣王親衛隊。
 それは幻獣王チューダ麾下に編成された特別部隊であり、聖輝節を守ってヨアキム(kz0011)の屋台である『漢爆裂超絶硬派洋菓子店「ヨアキム」』をお留守番しているのだ。
「これ以上の蛮行は許さないでありますよ! ……先生、やっちゃって下さい!」
 チューダの叫びに答え、空から一台のフライングスレッドが飛来する。
 猛スピードでやってくるフライングスレッドから飛び出したのは――。
「この私が来たからには安心です。
 サンタ仮面が天に変わっておしおきします!」
 サクラ・エルフリード(ka2598)――ではなく、サンタ仮面が登場。
 着地した後、己の筋肉を誇示するようにスッと立ち上がる。
 他人からの視線を意識しながら、サイド・チェスト。
 どうやらサンタ仮面は自身の筋肉にかなりの自信を持っているようだ。
「くっ、触手王の邪魔をするっすか?」
「神聖な祭りを汚す輩には、きついお仕置きが必要ですね……。あ、私はサンタ仮面であってサクラではないので……」
 サンタ仮面もハンターズソサエティが怖いのか、それとなく予防線を張る。
 しかし、幻獣王親衛隊のサンタ仮面はひと味違う。
 両腕を頭の後ろへ回してアブドミナル・アンド・サイを決めながら、ゆっくりと自由の鐘の面々に向かって歩き始める。
「怒りも嫉妬も、筋肉の前には無力。知りなさい。筋肉は決して裏切らない、と」
 流れるようなポージングを決めながら、サンタ仮面はアブソリュート・ポーズ。
 筋肉の波動がポージングと共に光へと変わって解き放たれる。
 そして衝撃が周囲へと伝わっていく。
「うわっす!」
 衝撃で幻影触手が解除される。
 地面へ落下するカップル達。逃げられるチャンスと分かって次々とその場を離れていく。
「くっ、俺とやるっすか」
「待ちなさい」
 そこへ現れたのは露出度の高い衣装を身につけたエルバッハ・リオン(ka2434)が姿を見せた。
 立ち位置から考えれば戦隊物の悪役幹部だが、リオンは自由の鐘でも姫と扱われる人材。その証拠に背後には自由の鐘に身を落とした哀れな男達が付き従って付いてくる。
「サンタ仮面と言いましたね。筋肉の力でこの男達を籠絡できまして?」
 リオンは堂々と胸を張った。
 リオンは男性参加者を要り仕掛けで籠絡。自分の指揮下に置く事で完全に制御して効率良く運用していた。実は聖輝節に大きな被害を出さないようにした上で、説得するよりも色仕掛けで籠絡した方が早いという経験を生かした作戦であった。
 だが、リオンも自由の鐘。聖輝節には気を遣いつつもサンタ仮面とは対峙する。
「筋肉に頼らず、色仕掛けとは卑劣な」
「神楽さん。私の行く手を阻むサンタ仮面を触手で縛り上げて下さい。私はチューダ様に用事があります」
「はい、エル様。了解っす。何でも言う事を聞くんで、御褒美をお願いしますっす~」
 リオンの背後にいた男達と共に神楽はサンタ仮面に近づいていく。
 迫る危機。
 幻想触手がサンタ仮面へ超接近。
 だが、サンタ仮面は――筋肉は、決して裏切らない。
「筋肉の力は……至高の筋肉は……。ここにあります!
 愛と筋肉と筋肉の爆熱マッスルフィンガーです……」
 サンタ仮面は再度アブソリュート・ポーズ。
 再び発生する衝撃。
 思わず神楽は顔を覆って衝撃に耐える。
 ガラ空きになるボディ。そこへサンタ仮面の筋肉の力が込められた拳が叩き込まれる。
 節制の力に変えられたマテリアルが神楽の体で爆ぜる。
「ぐあっ! 
 おのれ……だが世にカップルがある限り、俺はカップルに天誅を下す為に何度でも現れるっすよ……」
 地面に突っ伏して倒れる神楽。
 気付けば筋肉の前に男達は完全敗北していた。
「見ましたか! これが筋肉の力です」
「やりますね、サンタ仮面」
「おお、先生っ! 見事であります! ちゃちゃっとやっつけたでありますな」
 サンタ仮面とリオンの間に姿を見せたのはチューダ。
 その姿を見たリオンは一瞬にして目の色が変わる。
「チューダ様、後でダイエット計画についてお話があります。もしも逃げたりした場合、地の果てまで追いかけてでも制裁もとい教育的指導をしますから」
 突然降って湧いたチューダのダイエット計画。
 今チューダが一番聞きたくない言葉――それが、ダイエット。怠惰以上に怠惰とまで言わしめたチューダのサボりっぷりをリオンは見逃せない。
「い、嫌でありますっ!」
「逃がしませんわ」
 逃げ回るチューダをリオンが追いかけ回す。
 こうして自由の鐘と幻獣王親衛隊は正面から激突した。


「聖輝節とやらは家族や親しい者達と温かい料理を囲んで『けぇき』を食べる善き日だと聞いていたのだが……」
 リゼリオまで聖輝節見物に訪れた銀 真白(ka4128)であったが、眼前に広がるのは自由の鐘と幻獣王親衛隊の武力衝突。
 これはこれで喧嘩祭のようだが、誰もこの状況を止めようとしない状況。
 いつもの癖か、定めか。
「美味しいけぇきと食べ物を求めていただけなのだが、放置すれば目当ての食事にもありつけぬ。致し方あるまい」
 真白は逃げ遅れた市民を率先して避難させ始めた。
 幸い、戦場となっているヨアキムの屋台は他の屋台から少し離れた場所にある。聖輝節全体に影響する可能性は低い。ならば、無関係な市民を避難させておいた方がいい。
「さぁ、皆。こちらは安全だ」
「ありがとう!」
 真白に感謝しながら逃げるカップル達。
 これで嫌な事は忘れて聖輝節を満喫してくれるはずだ。
 だが、意外にもこの場から離れる者ばかりではない。自らやってくる者もいる。
「お。いいところにいたな。付き合えよ」
 ほんのり酒の匂いを漂わせながら、セルゲン(ka6612)が真白の前に現れる。
 酔っている。
 それは真白の目から見ても明らかだ。
「ちょっと待て。私は民の避難を」
「かてぇ事言うなよ。一人で飲むのも飽きちまったんだ……」
 半ば真白を強引に屋台へと連れ込んだむセルゲン。
 だが、眼前に現れたのはピンクのフリルを付きエプロンを着けた八重樫 敦(kz0056)であった。
「いらっしゃい」
 壁のような巨躯。
 さらに厳ついを通り越した強面。
 それに付け加えられた女子力高めのエプロン。
 まるで浅漬けのきゅうりに生クリームが乗っている代物を口にねじ込まれたような感覚。
 真白とセルゲンは思わず口籠もる。
「ま、まあ、趣味は人それぞれだからな……い、良いと思うぜ……!」
「そ、そうですね。西方の祭りは強者もあのような姿になるとは存じ上げなかった」
 無理矢理サムズアップするセルゲンの横で、真白は合わせる様に小さく頷いた。
 八重樫の方も二人が何を考えているのか察しているようだ。
 だが、敢えて八重樫は何も言わない。今はただの店員だから。
 しかし、セルゲンが無茶な要求してきた。
「ちょっとくれぇ飲んでも平気だろ?」
 セルゲンは八重樫に缶ビールを差し出した。
「セルゲン殿、さすがに仕事中に酒は……」
 そう言い掛けた真白の言葉を掻き消すように、八重樫はビールを受け取り椅子へ座った。
 八重樫も好き好んでこの屋台で働いていた訳ではないようだ。
「へへ、いいねぇ。乾杯だ」
 八重樫の持つ缶ビールに自身の持つ缶ビールを当てるセルゲン。
 それに対して八重樫は、あまり言葉を発しない。
 だが、『自分の情けない姿を早く忘れたい』という思いだけは伝わってくる。
「…………ツマミだ」
「おお。八重樫殿、感謝……致すが、これは『けぇき』ではないのか?」
 その傍らではツマミとして八重樫が持ってきた物。
 それは真白の目には欲していたけぇきにしか見えなかった。
 その正体はこの屋台で出されている『超濃厚漢汁ケーキ』である。
「まさか、西方ではけぇきに味噌とおからを……東方の食材でもけぇきが作られるとは、青天の霹靂」
「うーん、このツマミはビールより米酒が合うな」
 セルゲンは早々に純米酒「若峰」へと切り替えていた。
 箸でケーキを掬い、口へと運んでいく。
 しかし――。
「おおっ!?」
 突然、揺れるテーブル。
 セルゲンが掬っていたケーキは無残にもテーブルの上へと落下する。
 どうやら自由の鐘と幻獣王親衛隊が戦う余波でテーブルが大きく揺れたのが原因のようだ。
 これにはセルゲンも怒りを隠せない。
「うるせぇ! 落ち着いて酒を飲ませろ!」
 屋台の外に出てアブソリュートポーズを決める。
 真白もさすがに屋台の中にまで被害が出るのは放置できない。
「その蛮行、見逃す訳にはいかぬ」
 自由の鐘でも、幻獣王親衛隊でもない者達も戦いへ参戦。
 騒ぎはますます大きくなっていく。


 ジェイミー・ドリスキル(kz0231)中尉は、この喧噪の中でウイスキーの注がれたグラスに口を付ける。
 ニダヴェリールでの戦いで命を落としかけたのが、つい先日のようだ。
 それを考えればこの喧噪を聞けるのが幸せの一つかもしれない。馬鹿やってる連中の顔を見ているだけで彼らが生を謳歌している事が分かる。
 一人グラスを傾けるドリスキル。
 その幸せが長続きしない事も、既に分かっていた。
「何? この店では店員が接客もせずにお酒を飲むの?」
 屋台へ入るなり、ドリスキルの姿を見つけたマリィア・バルデス(ka5848) 。
 出会い頭にそう言い放つ。
「店員ならもういるだろう? フリフリなピンクのエプロンを着ける八重樫が」
「じゃあ、ジェイミーは何をするの?」
「俺か? 接客だよ。美しい女性専門のウェイターだ」
 ドリスキルの言葉にマリィアは軽く鼻で笑った。
 変わらない。
 地球が封印され、クリムゾンウェストへ転移してもドリスキルの限度はいつもと同じ。それがマリィアにとっては嬉しくもある。
「美人専門のウェイターなら、私に接客してくれるはずよね? 隣、座らせてもらうわよ」
 マリィアはドリスキルの返事を待たずに座る。
 ドリスキルもその行為を止める事無く、再びグラスを傾ける。
 屋台の外で行われる騒ぎが、二人には届かない。
「乾杯ぐらい、してくれない?」
 沈黙を破ったのは、マリィアだった。
 手にはドリスキルと同じくウイスキーの注がれたグラス。ドリスキルは軽く笑みを浮かべると、自らのグラスをマリィアに近付ける。
「再会に」
 ドリスキルとマリィアのグラスが静かになった。
 いつ以来の再会だろうか。
 本当あれば、マリィアはドリスキルに言いたい事が山のようにあった。
 何故、連絡してくれないのか。
 早々に現役復帰なんて体は平気なのか。
 怒りと心配が入り交じる感情。
 だが、ドリスキルの顔をみた途端に、それらはどうでも良くなった。
 ドリスキルが生きている。
 それが何よりも重要だ。
「良いのか? 外で騒いでいる連中の中には見知った奴もいるんだろう?」
「……銃で参加しちゃまずいでしょう? 私は見ているだけで充分だわ」
「そうだな」
 ドリスキルの一言。
 何気ない会話が流れる。
 一人で静かに飲む幸せもあるが、二人でグラスを傾ける幸せもある。
 それぞれの幸せが、そこにはある。
「ねぇ」
 マリィアは空になったグラスをテーブルに置いた。
 今日は酔いが回ったのか、普段と異なり雰囲気が違う。笑みの裏に潜む妖艶さ。
「私、好きな相手には目いっぱい甘えたいの……ジェイミー、今夜は聖輝節よ?」
 うつ伏せになるように体を腕で支えながら、上目遣いでドリスキルを見つめる。
 ドリスキルはその雰囲気が異なる理由を察していた。
「聖輝節、か。今夜は長くなりそうだな」
 ドリスキルは手にしていたグラスを一気に飲み干した。
 この喧噪だ。二人が消えていても、誰も気付かない。

 今年の聖輝節は、いつもより熱く長くなりそうだ。


 死闘が続く自由の鐘と幻獣王親衛隊。
 だが、ここに来て新たなる局面を迎える事となる。

「女がダメなら仲間内でも男同士でもつるめばいいと思うのだが」
 衝撃なコメントを口にしたのは、ルベーノ・バルバライン(ka6752)。
 恋愛における前提を覆し兼ねないこの言葉を耳にした一部のハンター達の間がざわめく。
 しかし、ここで超反応を示した存在がいた。
「正論キターーー!!」
 雄叫びのような声を上げたのは、メタ・シャングリラ館長の森山恭子(kz0216)であった。
 いつも以上に興奮している原因は、地球が封印された為に秋葉原や池袋で販売されている『薄い本』が買えなかったからだ、と述懐している。
「ここは知らんが、ジェオルジなら同性カップルは結構居たぞ? 別に衆道が禁止されているわけでもあるまいに」
「な、な、な、なんザマスってー!!」
 ルベーノの言葉に衝撃を受ける恭子。
 既に恭子の中では男子達が日常的にくどき口説かれるイケメンパラダイスを想像。中から溢れる鼻血を必死で堰き止めようとしている。
「凄いザマス、クリムゾンウェスト!
 そりゃ、薄い本が無くて納得ザマス!」
「うむ。恭子はジェオルジの方が楽しめたかもしれんな」
 大きく頷くルベーノ。
 実際にはそんなイケメンパラダイスは存在しない上、ジェオルジだって平穏な街だ。
 だが、暴走した恭子はもう止まらない。
「は、早くあたくしをそのジェオルジへ連れて行くザマス」
「まあ、その前にこの騒乱を何とかせねばな。聞けば、自由の鐘の連中は愛を欲しているらしいな。なら、俺が愛をくれてやろう。……聖輝節覇者を目指す俺がな」
 そう言うなりお色直しに入るルベーノ。
 準備していた化粧で顔を白塗り。頬に丸く紅を塗り、唇にはルージュを引く。
 衣装はそのままな為、筋肉質の男が化粧で妖怪化したようにしか見えない。
「愛に飢えた輩に力づくで愛を振る舞ってやろう。お代は無料だ、遠慮なく来るがいい、ハッハッハ」
 両手を広げ、近くに居た自由の鐘の男へ近付くルベーノ。
 男にしてみれば、半裸に近い男が顔面だけ化粧して愛を押し売りにしてくる。恐怖以外の何物でも無いが、その背後では赤いドレスを纏った恭子が凝視していた。
「くっ、来るなっ!」
「お前が自由の鐘か? 遠慮は要らん、力一杯掛かってこい」
 笑みを浮かべながら近付いたルベーノは、男を至近距離まで追い詰めた後に力尽くで唇を奪う。
 男は悲鳴を上げたくても口を塞がれ悲鳴も上げられない。
 念の為に付け加えればルベーノは自称ノーマルである。
「どうだ、俺の愛は?」
「ちょーーーっと待ったぁ!」
 ルベーノから解放されて白目を剥く男。
 そこへ恭子が挙手して厳しい指摘を始める。
「駄目ザマス! キスまでの工程にも丁寧さが不可欠ザマス」
「聖輝節の施しならこれでいいんじゃないのか?」
「甘いザマス。肩に手を乗せ、そっと耳元で『愛を知らないのか? なら俺が教えてやる。雪を溶かす程に熱く、ワイルドに……』って囁きがあってからザマス」
 恭子の熱血指導。
 単に性癖を晒しているだけなのだが、ルベーノからすればリアルブルーにおける愛の深さを知る機会となる。
「そうか、シチュエーションか。これでまた聖輝節覇者に近付いたな」
「さあ、次の実戦で試すザマス。……あ、あの子がいいザマスよ!」
「任せておけ!」
 恭子の好みの男に向かって走るルベーノ。
 クリムゾンウェストに新たなる世界が生まれようとしていた。


 激化する衝突だが、その中心にいるのは自由の鐘を率いるソイヤであろう。
「聞き覚えがある」
 ソイヤの前に立ったのは、玄武坂 コウ(ka5750)。
 以前兄がリアルブルーで出会ったという男。訓練ではあったが、兄曰く『強敵と書いて『とも』と読み奴が居た』というのだ。
 それを示すかのようにソイヤから放たれるのは負のマテリアルとは違う残念オーラ。
 ――ただ者じゃない。
「お前は……?」
 ソイヤの問いかけ。
 意を決しながらコウは答える。
「俺は玄武坂コウ。以前兄さんが世話になったようだな。あんたはここで止める」
 身構えるコウ。
 だが、眼前にいるソイヤの残念オーラに押され気味なのは事実だ。
 一方、ソイヤはコウの口にしたある言葉が引っかかっていた。
「兄……。そう、俺には三人の兄がいた……」
 何故、兄がここで気になるのか。
 それは分からない。
 しかし、これがコウにとって攻撃の最大のチャンスである事は間違いない。
「何か、何か攻める方法は……あ」
 コウの目に映ったのは屋台のケーキ。
 ソイヤとは異質なオーラを放つあれならば――!
 コウは急いで手近なケーキに手を伸ばした。
「すまない、一つ借りる。お代は……うちの代表にでもつけておいてくれ」
 さらりとチューダに借金を背負わせたコウは、ケーキを片手にソイヤへ急接近。
 右腕のケーキを大きく振りかぶってソイヤの顔面へと叩き付ける。
「ソイヤ、こいつを喰らえっ!」
 ソイヤの顔面に目掛けて振り抜かれる右腕。
 ケーキが派手に飛散する。
「お前はもう、喰っている」
 確実に捉えた、はずだった。
 だが、妙な違和感が手の中にある。
「きかぬ、きかぬのだ!」
 ソイヤの呟き。
 コウが見れば顔面に命中する直前に割り込んだ毒パルムがクッションとなっている。
 寸前で毒パルムを使って防御していたようだ。
「くっ、防がれたのか」
「異質なるケーキを使っての偽りの剛拳。それでこのソイヤが倒せると思ったのか。
 ……コウよ。さらば、我が最愛の弟! これが貴様が目指した兄ソイヤの拳だーーー!」
 いつからコウがソイヤの弟になったのか。
 勝手に不思議設定を付けられた挙げ句、一斉に毒パルム達がコウに向かって襲い掛かる。
「うわっ!」
「パルム百裂拳」
 大量の毒パルムを前にコウは防戦を強いられる。
 ソイヤ、やはりただ者ではなかった。


「我ながら、巻き込まれ体質だなぁ……」
 それが鞍馬 真(ka5819)の率直な感覚だった。
 激戦の続いた一年。
 聖輝節ぐらいはのんびりと屋台巡りをするつもりであった。しかし、現実は自由の鐘と幻獣王親衛隊が激突する真っ只中にいた。
 そのまま彼らの争いを無視しても良かったが、それを見逃せないからこその巻き込まれ体質。鞍馬も暴れる自由の鐘を止めるべく動きだしていた。
「屋台を壊すより、私と遊ばない?」
 付近で暴れていた男にテンプテーション。
 視線を外さないように意識しながら、男にそっと近付く。
「ああ」
 空返事のような男の返答。
 体を起こして鞍馬に付いていこうとする。
 テンプテーションがいているのか、完全に無防備。防御姿勢を取る気配もない。
「悪いね」
 男が返答する間を与えず、鞍馬の グローブ「スキアタキオン」が男の拳へ突き刺さる。
 悶絶する男。
 鞍馬はこの手で既に複数の自由の鐘を無力化していた。
「世の中そんなに甘くないんだよ。
 カップルを引き裂いている暇があったら、リア充に慣れるよう努力したら?」
 リア充の余裕。
 高位置からのマウントに男も言い返す気力も起きない。
「さて、次は……」
 次の目標を探す鞍馬の目に飛びこんできたのはボルディア・コンフラムス(ka0796)。
 他の屋台から大量の飯を買い込んできたのだろう。ケーキだけではなく、たこ焼きやウインナー、チョコバナナなどお祭りのような光景だ。
「いや~、我ながら買い込んだなぁ。へへっ、どれから食おうかな?」
 飯を屋台のテーブルの上に広げ、椅子に腰掛けるボルディア。
 テーブルの上に敷き詰められた飯の数々。温かみが残りつつ、それぞれの食事から放たれる香りがボルディアの鼻腔をくすぐる。まるで自分が如何に美味しいかを訴えているようだ。
 溢れる涎を喉の奥へ押し込みながら、ボルディアは前傾姿勢で飯に臨む。
「そんじゃ、いただきま~……」
「うわっ!」
 ボルディアの至福の時が訪れる直前、屋台の外から吹き飛ばされた男が、ボルディアのテーブルに直撃。
 買い集めた食事が宙を舞い、そのまま地面へと落下。先程まで美味しさをアピールしていた飯達が、今や無残な姿となった。
 
 何という事でしょう。
 あんなに美味しそうだった食べ物が、泥と埃塗れに……。

 そんなナレーションがボルディアの脳裏に流れているのか。ボルディアの視線は何も無い虚空を見つめ続けている。
 だが、空虚なボルディアが一変するのにそれ程時間はかからなかった。
「テメェ等全員まとめてかかってきやがれえええぇぇ!!」
 ボルディアの魂の叫び。
 炎獣憑依の儀『禍狗』で祖霊の破壊的な力のみを憑依させ、暴れる男達を次から次へと殴り飛ばす。
「ひぇ!」
 殴られた男達から悲鳴のような声が漏れる。
 それでも血の涙を流さんばかりのボルディアの怒りは収まらない。
「ふざけんなよぉぉ!」
「マズい、あれは止めないと!」
 ボルディアの暴れぶりに危機感を抱いた鞍馬は止めに入る。
 黙視騎士相手でも正面から殴り合いを挑むボルディアだ。いくら自由の鐘の面々が覚醒者でも怒り狂って暴れるボルディアは手加減する気もない。
 ましてやこんな街中で暴れらればどうなるか……。

 食べ物の怨みで怒る炎狼を前に、鞍馬は飛び込んでいく。


 自由の鐘と幻獣王親衛隊の衝突も、次第に趨勢が見えてきた。
 自由の鐘側の劣勢。
 その原因は二つある。
 一つは幻獣王親衛隊との戦力差。圧倒的に幻獣王親衛隊についた者が多い。
 もう一つは、主力の一人であるソイヤが徹底的にマークされていた事だ。
「へへへー、てめえがソイヤか。死にそうな感じがBINBINして楽しみじゃーん」
「新手か」
 ソイヤの前に現れたのは、ゾファル・G・初火(ka4407)。
 田舎で食っちゃ寝しながらゴロゴロしていたら、いつの間にか拳法を創設していたという拳法界の超大型新人。
 その拳法の名をゾファル怠極拳という。
「貴様に、毒パルム座の隣で輝くあの星が見えるか?」
 ソイヤは空を指差した。
 その星こそ、見た者に死を司る星……と一部で囁かれている。実際にクリムゾンウェストの都市伝説みたいなものだが――。
「ばっちり丸見えじゃーん」
 どうやらゾファルにもあのヤバい星が見えるらしい。
 それを聞いたソイヤは構える。
「パルム百裂拳」
 ゾファルに大量の毒パルムが襲いかかる。
 だが、ゾファルは何もしない。
 構える事すら放棄。毒パルムに触られようが一切気にしない。
「むっ」
「ゾファル怠極拳は怠ければ怠けるほど強くなるじゃん」
 ゾファルは捨て身のようなノーガード戦法でソイヤへ近付いていく。
 そんな中、別方向からソイヤへ近付く者がいる。
「ソイヤ……生きていたのか。今度こそ、私の手でトドメを刺す!」
 エメラルド・シルフィユ(ka4678)は、ソイヤと過去に因縁がある。
 再びソイヤが現れたと聞いて駆け付けたのだが、今回は白銀聖導士とは些か雰囲気が異なる。
「エクラの神より賜りし金属製の聖なるヨーヨー。これでお前を倒す!」
 エメラルドの手に握られるのは自称『聖なるヨーヨー』。そして密かに隠し持った 娥媚刺でソイヤとの決着を狙う。
「ふっ」
 ソイヤはエメラルドにも大量の毒パルムを襲わせる。
 だが、エメラルドも毒パルムを気にする素振りはない。
「私は女を捨てた戦士……エミヤだ! 退かぬ、媚びぬ、省みぬ!」
 毒パルムを無視して突き進むエミヤ。
 二方向から攻められるソイヤは、これで窮地だと誰もが考えていた。
「いやっほー! これで我輩の勝利であります!」
「北に毒パルム神拳あれば南にガーディアン聖拳あり」
 ボロ布を纏ったか弱い女性。
 ここで毒パルム神拳に出会とは、まさに運命なのだろうか。
「お前は……」
 呟くソイヤ。
 北斗の者として何かを知っているようだ。
「ガーディアン六聖が一人、義星、ガーディアン羽斬拳のレイア参上。
 今宵の星は綺麗だぞ、チューダ。毒パルム座の傍らに輝くもう一つの星も見えているだろう?」
 レイア・アローネ(ka4082)は、魔導剣「カオスウィース」と星神器「天羽羽斬」を抜き放つ。
「幻獣王の噂は聞いている。北斗が敵なら……チューダ、この命を貴様にくれてやろう」 荒ぶる神を討滅したとされる伝説の刀だが、今宵斬られるのはまさかのチューダ。
「あ、あれ!? 我輩にも刺客が来ているでありますか? ちょ、待てよ! ……であります」
「チューダ。一つだけ言っておきたい。お前は幻獣王なのか親衛隊長なのかどっちだ!」「えーと、その……我輩は王様でありますっ!」
 馬鹿は馬鹿なりに考えた結果、意味もなく胸をはって威張って見せた。
 それでも因縁のあるチューダにレイアは手加減をする気配はない。
 ソイヤとチューダそれぞれに迫る危機。
 しかし、ここである事件が起こる。それはソイヤがある事に気付いた事だ。
(あれ? ……もしかして、モテてないか?)
 今の状態は、ゾファルとエミヤという女性に迫られている。
 謂わば新手のナンパか!? チューダにはレイアが迫っているが、数で言えば二対一。
 ついにモテ期が到来したのではないか!
「……!」
 ソイヤはふいに腕を上げる。
 天高々と振り上げた拳。
「それ、何の意味があるじゃん?」
「我が生涯に……一片の悔い無しっ!」
 モテ期到来を実感したソイヤは、感動と興奮で鼻血を出しながら失神していた。
 予定であればぶん殴る予定なのだが、勝手に気絶してしまったようだ。
「なんだよ、勝手に自滅じゃん」
「やっぱり弟の仇を討つ為にソイヤを倒す設定の方が良かったか。……弟はいないが」
 ゾファルの横でエミヤが残念そうな顔を浮かべる。
 ソイヤが勝手に幸せに包まれて自滅するという結果に納得はいかないが、これで自由の鐘の暴走を止める事ができた。
 
 一方、チューダといえば――。
「た、戦いは終わりであります!」
「何故構えぬ!! 何故闘おうとせん!! チューダよ! 血化粧は、己の血でするがいい!!」
 ソイヤが気絶した後もレイアに追い回されていた。
 聖輝節後も二人の因縁は続きそうだ。

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参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 正秋隊(雪侍)
    銀 真白(ka4128
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • ゾファル怠極拳
    ゾファル・G・初火(ka4407
    人間(蒼)|16才|女性|闘狩人
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • お前はもう食っている
    玄武坂 コウ(ka5750
    人間(紅)|17才|男性|格闘士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 半折れ角
    セルゲン(ka6612
    鬼|24才|男性|霊闘士
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

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アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/12/05 15:20:32
アイコン 愛をとりもどせ!!(相談卓)
玄武坂 コウ(ka5750
人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2018/12/05 15:03:29