秘密の宝箱

マスター:君矢

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/01/09 15:00
完成日
2015/01/19 23:53

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 村の南側。緩やかな丘の上に一本の大きな木が立っている。大人が二十人くらい手をつないでやっと囲えるかという大きな木だ。夏の間に青々と茂っていた葉もすっかりと落ちて、冬の到来を待つばかりとなっている。
 その木の根本に大きなウロがあった。中で5,6歳の女の子が三人、自慢の宝物を見せ合っている。
「見て。綺麗でしょ」
 と言って、ティナがガラス瓶を見せていた。細かな模様の入った緑色のガラス瓶で太陽にかざすとキラキラと輝いていた。
「きれい!いいなぁ」
 と答えたのは、ユーリだ。
「町でお父さんが買ってきてくれたの」
 ティナはガラス瓶をそっと木箱の中に入れる。白く塗られていた木箱は色あせてしまっていた。いつの頃からかこの木のウロの中にあったごく普通の木箱で、村の子供達は宝箱と呼んでいた。この箱の中に大切な宝物を入れるのが子供達の流行りだった。
「ユーリはねぇ。マリちゃんのお洋服持ってきたの」
 と言って、ユーリは人形のワンピースを広げて見せた。マリちゃんというのはユーリの祖母が手作りしてくれた人形の名前だった。
「お洋服入れちゃって大丈夫なの? マリちゃんが着る服無くなっちゃうじゃない」
 と言ったのは、サーミアだった。
「このお洋服は夏のお洋服だもん。来年まで仕舞っておくの!」
 ユーリは、ワンピースをたたむと丁寧に木箱にしまった。
「サーミアは何を持ってきたの?」
 二人の視線がサーミアに集まった。サーミアは得意げに胸をはると下げていたポシェットから、布袋を取り出した。
「これよ! きれいでしょ」
 袋の中には、子供の両手に収まる大きさの髪飾りが入っていた。真珠とピンク珊瑚のあしらわれた可愛らしい髪飾りだった。
「うわ~。すごい。どうしたの、これ!?」
「あ、あたし知ってる。これ、新年のお祭りに着けるのだよね」
「見せて、見せて」
「私も見たいよ~。サーミア、貸して」
「今度のお祭り、お姉ちゃんが神様にご挨拶するんだ。すごいでしょ!」
「サーミアのお姉ちゃん美人だもんね! いいなぁ」
 この髪飾りがとても大切なものだということは、三人ともよく分かっていた。今まで大人達から大切なものだからと言われ、さわることが出来なかった三人は、髪飾りを髪に着けてみたり、真珠や珊瑚をなぞってみたりと大はしゃぎだった。
「これ、しまっちゃっていいの?」
 ティナがサーミアに聞いた。
「大切な物を入れておく場所だよ。これよりも大切な物なんてないじゃない」
「怒られないかな」
「大丈夫よ。ここに入れていおいて無くなったものなんて無いんだから」
 といって、サーミアは髪飾りをしまうと木箱の蓋を閉めた。蓋の蝶番がギィィとかすかに音を立てて蓋が閉じられた。

 今日は、新年の祭りの練習をする日だった。サーミアの姉、リディアは化粧台にしまってある宝石箱を取り出した。実際に衣装を身につけて行う本番さながらのリハーサルの日だったので、真珠と珊瑚の髪飾りも身につける予定だ。
 普段は敬虔なエクラ教徒の村人たちだが、古くから行われているこの新年の祭りだけは、大切な伝統として継承されていた。
今回の新年の祭りは、例年になく力が入っていてリディアも失敗は出来ないと今から緊張していた。というのも、村近くの巨木の立っている丘に歪虚が居着いてしまったのだった。歪虚は今のところ、奇妙な氷のオブジェを丘の上に作っているだけで、村に被害は無いがいつ村が歪虚に襲われるのかと村人達は怯えていた。村では、ハンターに歪虚退治を依頼しようと相談をしているところだった。
 そんな状況の中での新年の祭り。村の守り神に新年の安全と繁栄を祈願する祭りなので、万が一にも失敗は出来ないとリディアはプレッシャーと戦っていた。
 宝石箱を開ける。中にはネックレス、指輪、イヤリングとリディアの私物が綺麗にそろっているのに、肝心の髪飾りがなくなっていた。リディアの顔色が見る見るうちに青ざめていく。
「お、お母さん。髪飾りが無いの。知らない?」
「真珠と珊瑚のかい?無いって……。そんなはずないわ。よく見たの?」
「私、ちゃんとここに入れておいたのに……。なんで……」
 真珠とピンク珊瑚の髪飾りは、新年の祭りの時に巫女役の少女が身につける決まりになっている。祭りの最後に次の年の巫女役の少女へと手渡され、その少女の家で一年間保管される。そうやって長い間、村に受け継がれてきた宝物だった。
 その髪飾りが盗まれたと大騒ぎになったのだった。

 サーミアは、姉の宝石箱を開けたり閉めたりしながら、窓の外を見ていた。窓の向こうに丘の上の巨木がわずかに見える。サーミアの表情は、青白く気分が悪そうに見える。
「どうしよう……」
(こんな事になっちゃうなんて! 言った方がいいよね……。でもでも、言ったら怒られちゃう。怖い。どうしてこんな事になっちゃったんだろう! 何か髪飾りを取り戻す方法見つけなきゃ!)

 村人達が難しい顔をして集会場に集まっていた。
「どうしてこう、問題ばかり起こるんだ」
「歪虚が居着いちまった次は、髪飾りが盗まれただとさ」
「きちんと探したのか?化粧台の後ろに落っこちてたとかいうことはないだろうな」
 一人がギロリとリディアとサーミアの父、ランドをにらんだ。
「家中ひっくり返して探したさ。どこにもないんだ。前の祭りの時に預かって、宝石箱にしまって大切にしていた。本当だ」
 ランドの反論する声には力が無い。顔には濃いクマが出来ていて紛失が発覚して以来の心労が伺えた。
「リディアは、寝込んじまうし。サーミアは怯えちまうし。本当にどこにいっちまったんだ」
「ランドを責めても仕方ないだろう」
 別の村人が、ランドへの批判をやめさせた。
「それよりも、これからどうする。髪飾りなしで祭りをするのか?」
「髪飾りのない中途半端な事ができるか。まして、歪虚がいつ村を襲うのかわからないんだ。万全を期して祭りをしなくてどうする」
「しかし、どこに髪飾りは消えたんだ。オレたちの誰かが盗んだとも考えられんし」
 議論は、ここで止まってしまった。盗んだのは誰なのか。それは村の中にいるのか。下手に犯人探しをしだすと村の結束にヒビが入ってしまうかもしれなかった。
「そうだ。ハンターに依頼しよう」
「ハンターに?」
「そうだ。ハンターだったら、捜し物も得意なんじゃないかな」

 集会場に集まった大人たちの会話をサーミアはこっそりと聞いていた。どうやら、ハンターという凄い人達が髪飾りのためにやってくるらしい。
(そうだ。ハンターさん達にお願いすればいいんだ。宝箱の中に髪飾りが入っているからこっそり取り戻してくださいって)
 とサーミアは決意した。

リプレイ本文

「フフッ……」
 リーゼロッテ=御剣(ka3558)は昔、リアルブルーで流行った捜し物を探す曲を口ずさみ、村を歩いていた。出会った村人に髪飾りについて質問をする。
「どんな髪飾りだったのかって?」
「手がかりになるかと思って。教えてくれない?」
「細工も色も綺麗な髪飾りだったよ。毎年の巫女役は若い娘ならみんな憧れるね。私も一度身に着けたかったねぇ」
 答えてくれたのは中年の女性だった。
「真珠と珊瑚の髪飾りよね、高価な物なの?」
「値段は分からないけどね、随分と古くから伝わってきた物でね。身に着けるとぐっと華やかになってねぇ」
「大切な物なのね」
「そう。それが無くなったて大騒ぎさ。古い物だから乱暴に扱うと壊れるかもしれないし。見つけておくれね。お願いだよ」
 女性の目に切実さが宿っていた。
「もちろんよ。任せてちょうだい」

 村の大通りを布団のような物をかぶって雪村 練(ka3808)が移動していた。腕だけが突き出ていて、ダウジング棒が握られている。時折、みょーん、ぴきーんと聞こえる。
「あれ、何だ?」
「ハンターらしいぞ」
 村人達は練を気にしたがハンターならば大丈夫だろうと自分たちの仕事に戻っていった。
「あたしのダウジングロッドが唸って光るー。お前を探せと轟き叫ぶー」
 ダウジング棒は、南方向に向かって反応する。
「むっ、南に反応あり。なに、村の南に歪虚が住み着いている? バカモーン! そいつが犯人だ!」
 そこへ少女が二人戸惑いつつ近寄ってきた。
「何か話があんのか?」
 少女達は勇気を出して話すことにした。大人がこの人は髪飾りを探してくれる凄い人だと言っていた。
「私はユーリです」
「あたしはティナ」
 二人はしゃがみ込み小さい声で話し始めた。
「私たちサーミアの友達で」
「えっと」
「おう、それで」
 二人は言いよどむ。練は二人が続きを話すのを静かに待った。
「大きな木の穴に宝箱があってその中に髪飾りを隠したの」
「ごめんなさい」
 二人の声は今にも消えそうだった。
「化け物がいて取りに行けなくて。取りに行けないの」
「髪飾りを取り戻して」
「お願い」
「そうか、なんとかするさ」
 練が答える。少女達はペコリと一礼すると走っていった。

 髪飾り紛失の家をリュー・グランフェスト(ka2419)とベラ・ハックウッド(ka3727)は訪れていた。
「よろしくお願いします……」
 応接室に通され、家の主人ランドは弱々しい声で挨拶をした。
「髪飾り紛失について教えてほしいんだ」
 リューが訪ねる。
「大切に宝石箱にしまっていて、持ち出してもいません」
「侵入者とかは?」
「無いはずです」
「他に変わった事は?」
「丘の上の化け物くらいでしょうか。様子を見に行った人の話だと体当たりや、雪の玉を投げたりするらしいです。やっかいな事ばかりで困ります」
「歪虚が現れたのね。何とかしないと無くした物探しどころではないわね」
 質問をしているリューの後ろに立っていたベラが言った。ふと視線を動かすとドアの影から少女が部屋をのぞき込んでいた。
「なあに、お嬢ちゃん」
 ベラは、そっと少女に話しかけた。少女は一瞬びっくりと固まったあと口を開いた。
「あの……」
「うん?」
「えっとね」
「サーミア、大事なお話だから部屋に戻っていなさい」
 ランドがサーミアに告げると渋々とドアから離れる。しかし諦めきれないのか少し離れた場所からこちらを伺っていた。
「怖がられちゃったのかしら。声が低いからかしら昔から怖がられちゃうのよね……」
「娘がすみません」
「俺、外を見てくるよ」
 ベラに、後のことを頼みリューは家の外に出た。

 リューはサーミアがやってくるのではと思い外へ出たのだった。案の定、サーミアが追いかけてきた。リューは、しゃがみ込みサーミアに視線の高さを合わせる。
「俺はリュー。リュー・グランフェストだ。よろしくな」
「私、サーミア。お願いがあるの……」
 そこまでいってサーミアは続きを言うことが出来なかった。なかなか踏ん切りがつかない。そこへ、別行動をしていたアレス=マキナ(ka3724)、マヘル・ハシバス(ka0440)、リーゼロッテが集まってきた。ベラも合流する。ベラは怖がられるかもしれないと後ろに下がった。怖がられるのは、さすがに傷つくのだ。
「どうしたの?」
 リーゼロッテがやさしく話しかけた。
「髪飾りなんだけど」
「お祭りの髪飾り?」
 リーゼロッテは、サーミアが話やすい様に質問していった。
「うん、丘の大きな木の中の宝箱にあるの……」
「宝箱って何かな?」
「白っぽい大切な物をしまっておく箱なの」
「どうしてその中にあると、知っているのですか?」
 アレスがサーミアに質問した。サーミアはうつむき告白する。
「私が仕舞ったの。大切な物だから宝箱に仕舞わなきゃって思って。あと、その宝箱がね。あの変な氷のオブジェに埋まってるみたい」
「本当か?」
 リューが確認する。
「遠いからはっきりと見えなかったけど……」
 サーミアは、顔を上げるとハンター達の顔をしっかりと見る。
「こっそり取り戻して下さい。お願いします」
「……わかった。とりあえずは髪飾り、取り戻してやるよ。そう言う仕事だしな。歪虚の仕業に出来るかもしれないし」
「よく話してくれたわ。髪飾り必ず取り戻すわ。安心して」
 リューとリーゼロッテが答えるとサーミアはホッとした様だった。
「構いませんが、その『後』どうするかに関しては、考えた方がいいですよ?」
 アレスが語りかけた。サーミアは虚を突かれた様な顔をした。
「嘘をつくのは簡単です。歪虚の近くから髪飾りは発見されるわけです。歪虚のせいに出来るでしょう。大人達はそう信じようとするでしょうね。仲間を疑いたくは無いですから。ですが、その中で真実を知るあなたは笑っていられますか? 嘘で隠れて、心から笑えますか? 決めるのは貴女です」
 アレスの言葉を聞いたサーミアは俯いてじっと何かを考える様だった。

「俺はもう少し村人達の話を聞きに言ってくる。歪虚の仕業かもしれないってほのめかしてくるぜ」
 と言ってリューは歩いていった。
「寒いところね……。雪の上だと動きづらいし、あまり激しい動きは出来ないわね。村に雪の上を歩きやすくするようなものはないかしら」
 ベラが丘を覆う雪を見ながら言った。
「丘の確認をしてくるわ。歪虚の動きとかね」
 リーゼロッテが言った。
「気を付けて下さいね。丘は凍っているそうですから、簡単なアイゼンか雪用の靴を借りられないか聞いてきます」
 とマヘルが答えた。

 リーゼロッテは丘を見渡せる場所に出た。遠目ではあるが歪虚の動きはよく分かる。丘の上、巨木の下に人間の形をした雪像がいた。今も、細長い氷のオブジェにせっせと手を加えているようだった。雪像の周りには大きな雪玉達がごろりと転がっていた。
「どんな感じですか?」
 マヘルがやってきて、リーゼロッテに声をかける。
「丘から降りる気配は無いわね」
「依頼は髪飾りの捜索でしたが……。結局こうなるのですね」
 用事を済ませた仲間達が集まってきた。

「雪玉を優先して攻撃してから雪像を狙いたいですね。オブジェに宝箱が埋まっているらしいですから、避けて戦わないと」
 マヘルが丘を見ながら言う。
「私は丘の反対側から近づいて射撃で雪玉の注意を引くわ。オブジェ周辺から誘い出しましょう」
 リーゼロッテが言った。
「炎の魔法が使える方はいませんか?」
 アレスが仲間達に確認する。
「ファイアアローだったら使えるわ」
 ベラが答えた。
「雪像周辺の雪を溶かせないでしょうか。雪の玉を投げてくるそうですし。少しは楽になるかと」
 アレスの問いにベラは難しい顔をした。
「敵に衝撃を与えるとすぐに消えるの。雪を溶かせるかどうか……」
「そうですか。仕方ありませんね」
 アレスは残念そうな顔をした。
「雪の上でも滑りにくい靴を借りました。必要な方はいらっしゃいますか?」
 リューとベラが靴を借りた。
「みんな準備はよろしいですか?」
 アレスが仲間達を見渡す。みんなうなずいた。
「それでは参りましょうか」

 雪の歪虚達は丘の上のオブジェの周囲でマイペースに行動していた。
 リーゼロッテは、丘の反対側から隠れるように移動する。仲間たちがポジションについたことを確認するとイレイザーを構え引き金を引く。
「まずは引き離さないと」
 銃弾は、雪玉達が密集している付近に着弾した。雪玉たちは突然の攻撃に驚いたようでぶつかったり離れたりと混乱していた。
 そこへリューのワイヤーウィップが襲い掛かる。リューが雪用の靴でしっかりと地面を踏みしめて鞭を振るった。ヒュン! と風を切り鞭が舞う。雪玉を牽制しオブジェからさらに引き離した。鞭の振るい方を変え、大きな雪玉を絡め取り自身の方に引き寄せた。
 鞭を避けた雪玉がオブジェに戻るのを阻止するために、リーゼロッテが再び引き金を引く。
 リューはワイヤーウィップを手放し、鬼霧雨を構える。引き寄せた雪玉に対し踏み込むと渾身撃をたたき込んだ。

「変なオブジェ……。歪虚のものではない物が詰め込まれているようね……。何の目的かはわからないけど、下手にいじれないわね。まずは歪虚の掃討からね」
 手近な雪玉の歪虚から一体ずつ潰した方が良さそうねとベラは考えた。仲間達の後ろからファイアアローを唱え、リューとリーゼロッテが引き離した雪玉を狙っていく。ベラの手から放たれた炎の矢はまっすぐに雪玉へと向かっていった。狙われた雪玉は逃げようと移動するがファイアアローから逃れることは出来なかった。雪玉の中央を貫かれ、四散し動かなくなる。
 ベラは、別の雪玉にも狙いをつけるとファイアアローを放ち撃破した。

 アレスはオブジェの状況を確認しながら背にするように回り込む。オブジェに対する流れ弾が怖い所だ。
 アレスは野生の目を使い命中率を高める。雪玉の動きを注視しながら、イルミナルウィップを使って距離の開いている雪玉を叩き潰しっていった。
 雪玉が体当たりを仕掛けてくるが、直線的な動きでしかないため避けるのは簡単だった。スッと避けると振り向きざまに鞭をたたき込んでいく。

 マヘルはラウンドシールドを構え防御姿勢を取る。雪玉の体当たりを誘い、オブジェから離れるように慎重に移動した。比較的小さい雪玉のがマヘルに向かって体当たりを仕掛けてきた。オブジェが射線に入らないように気を付けて、盾の陰からS-01の引き金を引いて雪玉を攻撃する。小さい方の雪玉に弾丸が当たる。命中した場所から亀裂が入り崩れ落ちた。
「マヘルさん! 後ろから来ます!」
 アレスが叫びマヘルに注意を促した。マヘルは雪に足を取られないように慎重に、しかし、素早く振り向いた。
 大きい雪玉が丘の斜面を利用し加速を着けてマヘルに向かってくる。
 ドスン! と雪玉の体当たりをマヘルは盾で受け止めた。そのまま雪玉に密着し、機動剣を唱えた。足下に注意しながら雪玉を切り裂いた。

 みょーん。ぴきーん。
 練は丘を反対側から登ってオブジェに近寄っていく。
「お布団を被ってるんだから気づかれないぜ! ってその思考は幼児か!」
 匍匐前進でオブジェに近寄っていくと、雪像が這っている練に気がつき雪の玉を投げつけてくる。いくら厚い布の下にいる練とはいえ雪玉が当たると痛い。しかし、彼女は止まらない。
 魔法の効果範囲まで近づくと雪像にエレクトリックショックを当てた。
 ビクッ! と雪像は動きを止め全身を痙攣させる。雪像が振り上げていたつららの剣が練めがけ落下する。
「危ない!」
 アレスが叫び、イルミナルウィップを振るう。つららの剣に命中し弾き飛ばした。剣を失った雪像は、ぎこちなく動き出し拳を振り下ろそうとしていた。
 雪玉を片付けたマヘルが雪像に狙いを定め、攻撃強化をしたS-01の引き金を引く。
「止めです!」
 マヘルの打った弾丸が雪像に迫る。弾丸は、雪像の胸に命中した。放射線状に亀裂が走る。限界を迎えたのだろう雪像はゆっくりと崩れ落ちた。

 アレスは、胸を抑え激しく咳き込んでいる。過呼吸だろうか、その場に座り込んでしまった。
「大丈夫ですか?」
 マヘルが心配し声をかける。アレスは大丈夫だと身振りで伝える。時間をかけゆっくりと呼吸を整えた。

 仲間達がオブジェの周りに集まった。オブジェの上部には古ぼけた木箱が埋まっているのが見える。
「サーミアさんの言っていた宝箱でしょうか」
 マヘルが見上げながら言った。
「だな。慎重に解凍しないとな」
 リューが答える。
「ある程度出てきたら確保したいですね」
 過呼吸から回復したアレスが言った。
 オブジェが揺れたり、木箱が落ちそうになったりとひやりとする場面があったものの、無事に木箱を取り外すことができた。
 練は万が一、木箱が落下した時はクッション代わりに受け止めようと思っていたので無事に作業が終わりホッとした。
 マヘルが持ち上げ恐る恐る蓋をあける。中は、人形の服やガラス瓶といった子供達の宝物に混じって真珠と珊瑚の髪飾りがあった。
「これですか。たしかにかわいらしいですね」
 マヘルは傷の有無を確認する。幸いなことに傷ついていなかった。
「これを村に引き渡して依頼は完了ね」
 リーゼロッテがマヘルの手の中をのぞき込みながら言った。

 六人が髪飾りを回収し村に戻ると入り口でサーミアが待っていた。
「大丈夫。無事に取り戻しましたよ」
 マヘルがサーミアに傷一つない髪飾りを見せる。
「よかったわね」
 とベラが言った。髪飾りを持ち出したのが自分だと家族に打ち明けるのも、歪虚に取られていたというのも、それはサーミアしだい。ベラはそこに干渉するつもりはなかった。サーミアはホッとして表情をゆるめ、笑顔を浮かべた。
「ハンターのみなさん。ありがとうございました」
 礼を言うと勢いよく頭をさげた。
「もう、勝手に持ち出してはいけませんよ」
 マヘルが言い、リューが続ける。
「大騒ぎで怖かったろ?」
 サーミアは、うんと頷いた。思い出したのか顔をしかめる。
「今回は事が大きくなりすぎたからな。これを大人達に無理に言えとは言わねえよ。踏ん切りがついたら打ち明けろよ」
 サーミアは、手を握りしめて言った。
「みんなに心配かけちゃったから」
 今にも泣きそうなのを必死にこらえる。リーゼロッテがそっと背中をさする。
「謝りたい、一緒に来て……」
 最後は泣き声に紛れてしまったが聞き取れた。
「おう、付き合ってやるよ。偉いじゃないか」
 リューが一緒に行くことを承諾する。泣いているサーミアをリーゼロッテが優しく抱きとめた。

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重体一覧

参加者一覧

  • 憧れのお姉さん
    マヘル・ハシバス(ka0440
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 母の愛と勇気
    リーゼロッテ=御剣(ka3558
    人間(蒼)|30才|女性|闘狩人
  • 冒険者
    アレス=マキナ(ka3724
    エルフ|15才|男性|霊闘士
  • 冒険者
    ベラ・ハックウッド(ka3727
    エルフ|24才|女性|魔術師

  • 雪村 練(ka3808
    人間(蒼)|15才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 髪飾りを取り返すために
ベラ・ハックウッド(ka3727
エルフ|24才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2015/01/09 07:40:41
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/04 23:48:45