ゲスト
(ka0000)
【CF】薬草園で年の瀬準備?
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/12/10 07:30
- 完成日
- 2018/12/19 21:34
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●薬草園
グラズヘイム王国の中央でも北東寄りの中途半端な地域かつ、街道がいくつも周囲にあるのに、素通りされる地域に薬草園はある。小さな町も城壁があったり何かの守りになっているはずだが、守る人も少なく、比較的穏やかな地域である。
ただ、街道に巡礼路が重なっていた関係で、歪虚の襲撃はあったり、その立て直しを図ったり忙しく一年が過ぎる。
薬草園の主ジャイルズ・バルネは領主からの手紙を見て溜息を洩らした。
「確かに冬の間はやることが少ないな」
植物が活発化するのは春から夏だ。乾燥させたり、薬を作ったりすることも終われば、薬草園の主は暇である。だから、この時期にプラントハンターとして行動をすることはある。
「それを邪魔されるともいえるが、手助けの一環でもあるのか」
イスルダ島帰還に向けて元住民があれこれやっていることに領主が手を貸しているという。そのためにハーブを植えることで、何かの役に立たないかということだった。この時期にできることはない。
「送るだけでも構わないのだがな」
送るならば、栽培が簡単で、現在、手入れを怠って樹木化してしまったローズマリーがある。
「それでも、枝から根は出すべきだし、今の時期ではない」
結局、手伝うとしても今の時期はできることが限られていたので、その旨を領主に伝えることにした。
作業小屋の扉が開き、助手のコリンが入ってくる。
「ジャイルズさん、聖輝節ですよね。そろそろ大掃除とか準備しますか?」
「そういう時期か……」
年月が経つのは早い。
ジャイルズがふと思った。
「それなら何か送るか……」
ジャイルズの言葉にコリンは首を傾げた。
●依頼
ジャイルズは依頼を出すことにした。
「その日にアイテム作りと周辺の掃除をしたいと思っている」
依頼を受ける職員のロビン・ドルトスはジャイルズの厳しい表情に緊張しながらうなずく。
「カネというより、休暇、ボランティア」
すごくはっきり言った。ロビンはうなずく。
「食事は作ることはできるが、持参。掃除道具、箒塵取り熊手は用意してある」
「あれ? どこの掃除をするんですか?」
「薬草園の外だ」
ロビンはうなずいた。薬草園自体は整備しているだろうからどこの掃除だろうかと思ってはいた。
薬草園の外は街道につながっている。あのあたりの街道は特に汚いわけではないが、今のうちに少しでもきれいにしておこうということらしい。林が多いため、落葉樹の葉も多いはずだし、針葉樹とて古い葉を落とす。
「アイテム作りって何を作るんですか?」
「どこかの地域でこの時期に作るらしい『オレンジポマンダー』とリースだな」
「オレンジポマンダー?」
「オレンジにクローブを突き刺して作るものだ」
「……へええ」
ロビンは「どこの地域」が不明であるが、特には気にしなかった。リアルブルーですらそれに入る。そもそも、今手に入りそうなもので作ろうとしているらしい。
「それどうするんですか?」
「領主や町で必要なら渡す。あと、運べそうなら、イスルダ島にいる領主のせがれに送ればいい」
ロビンは依頼を了承した旨を示した。
(結局、バルネさんは人のこと好きなんだよな……めちゃくちゃ表情怖いけど)
ロビンはジャイルズの動きにびくっとなりながら、内心溜息をついていた。
●どこかでミス
ジャイルズが発注したオレンジやクローブの数が一桁多かった。
まさかのオレンジの量、それに見合ったクローブや粉の量。
どーんと積まれた材料を見たジャイルズが頭を押さえ、コリンは目を丸くし、ユグディラのチャが逃げた。
「ハンターさん来てくれるといいですね」
「なんでこうなったのか……」
ジャイルズが苦情を入れに言った結果、相手の手配ミスだったけれども生ものなのでそのまま処理してほしいということが店側と決着ついたのだった。
グラズヘイム王国の中央でも北東寄りの中途半端な地域かつ、街道がいくつも周囲にあるのに、素通りされる地域に薬草園はある。小さな町も城壁があったり何かの守りになっているはずだが、守る人も少なく、比較的穏やかな地域である。
ただ、街道に巡礼路が重なっていた関係で、歪虚の襲撃はあったり、その立て直しを図ったり忙しく一年が過ぎる。
薬草園の主ジャイルズ・バルネは領主からの手紙を見て溜息を洩らした。
「確かに冬の間はやることが少ないな」
植物が活発化するのは春から夏だ。乾燥させたり、薬を作ったりすることも終われば、薬草園の主は暇である。だから、この時期にプラントハンターとして行動をすることはある。
「それを邪魔されるともいえるが、手助けの一環でもあるのか」
イスルダ島帰還に向けて元住民があれこれやっていることに領主が手を貸しているという。そのためにハーブを植えることで、何かの役に立たないかということだった。この時期にできることはない。
「送るだけでも構わないのだがな」
送るならば、栽培が簡単で、現在、手入れを怠って樹木化してしまったローズマリーがある。
「それでも、枝から根は出すべきだし、今の時期ではない」
結局、手伝うとしても今の時期はできることが限られていたので、その旨を領主に伝えることにした。
作業小屋の扉が開き、助手のコリンが入ってくる。
「ジャイルズさん、聖輝節ですよね。そろそろ大掃除とか準備しますか?」
「そういう時期か……」
年月が経つのは早い。
ジャイルズがふと思った。
「それなら何か送るか……」
ジャイルズの言葉にコリンは首を傾げた。
●依頼
ジャイルズは依頼を出すことにした。
「その日にアイテム作りと周辺の掃除をしたいと思っている」
依頼を受ける職員のロビン・ドルトスはジャイルズの厳しい表情に緊張しながらうなずく。
「カネというより、休暇、ボランティア」
すごくはっきり言った。ロビンはうなずく。
「食事は作ることはできるが、持参。掃除道具、箒塵取り熊手は用意してある」
「あれ? どこの掃除をするんですか?」
「薬草園の外だ」
ロビンはうなずいた。薬草園自体は整備しているだろうからどこの掃除だろうかと思ってはいた。
薬草園の外は街道につながっている。あのあたりの街道は特に汚いわけではないが、今のうちに少しでもきれいにしておこうということらしい。林が多いため、落葉樹の葉も多いはずだし、針葉樹とて古い葉を落とす。
「アイテム作りって何を作るんですか?」
「どこかの地域でこの時期に作るらしい『オレンジポマンダー』とリースだな」
「オレンジポマンダー?」
「オレンジにクローブを突き刺して作るものだ」
「……へええ」
ロビンは「どこの地域」が不明であるが、特には気にしなかった。リアルブルーですらそれに入る。そもそも、今手に入りそうなもので作ろうとしているらしい。
「それどうするんですか?」
「領主や町で必要なら渡す。あと、運べそうなら、イスルダ島にいる領主のせがれに送ればいい」
ロビンは依頼を了承した旨を示した。
(結局、バルネさんは人のこと好きなんだよな……めちゃくちゃ表情怖いけど)
ロビンはジャイルズの動きにびくっとなりながら、内心溜息をついていた。
●どこかでミス
ジャイルズが発注したオレンジやクローブの数が一桁多かった。
まさかのオレンジの量、それに見合ったクローブや粉の量。
どーんと積まれた材料を見たジャイルズが頭を押さえ、コリンは目を丸くし、ユグディラのチャが逃げた。
「ハンターさん来てくれるといいですね」
「なんでこうなったのか……」
ジャイルズが苦情を入れに言った結果、相手の手配ミスだったけれども生ものなのでそのまま処理してほしいということが店側と決着ついたのだった。
リプレイ本文
●オレンジの山
ハンターは三々五々、薬草園に集まってきた。
ソナ(ka1352)は薬草園の門をくぐる。ユグディラのチャがうろうろとしていた。
「チャちゃん、こんにちは」
『にゃ』
「すごい状況だと聞いて手伝いに来ました」
チャは目を見開き、フルフルと震える。しぐさで鼻を抑えた。
「薬草園も匂いはしますけれども?」
チャはより一層首を横に振った。
マリィア・バルデス(ka5848)が後ろからやってくる。途中から話が聞こえたらしく苦笑している。
「オレンジポマンダーのクローブかしらね? 匂い、結構するわよ。スパイスも使うから、ユグディラには堪えるのかもしれないわね」
ソナは納得したとうなずいた。
コリンがやってくる。すでに天手古舞の様子がうかがえる顔つきだ。
「あ、皆さん、おはようございます。今日はよろしくお願いします」
小屋に案内をしてくれた。
中を見た瞬間、オレンジ百個の山を見た。部屋はぬくもりがあるが、外より暖かい程度だろう。
星野 ハナ(ka5852)はその様子を見て目を瞬く。
「これがポマンダーの材料なのですぅ? 日本ではクリスマスは他所から入ってきたお祭りなのでぇ、食べ物にしろ、絶対これって感じじゃなくてぇ。鳥ならOK、ツリーあればOKみたいな……」
ハナが解説をする。
トリプルJ(ka6653)が笑う。
「それを言ったら、クリスマスの状況は国によって違うから、気にすることないだろう? 俺らのナビダーは十二月十六日から一月六日までだし、ヨーロッパ方面はもっと長いところもあるし。あー、でも、日本なんぞ、ハロウィンが終わったらもうナビダーに入るじゃねぇか? よく知らねぇが最長じゃね?」
ハナが「あはは」と笑い、マリィアは「そうなるかしら」と首を傾げた。
●仕事の前の準備
ルカ(ka0962)は小屋はぬくもりを感じるが、じっとしているとどうなるかわからない。
「少しでも、暖かいもの用意したほうが、いいですよね……」
湯たんぽかそれに準じるモノがないかコリンに尋ねる。すると、水袋のような物を出してくれた。熱湯は駄目であるが、ある程度熱いものは入れられる。
「僕、やっておきますね」
「ううん。作業、ありますから……」
ルカが引き受けた。
「……確認をしておいていいですか?」
「なんですか?」
「外の掃除の道具が置いてある場所……も直したりした方が、いいのですか?」
「いらないと思います。でも、余裕が有るなら見ていただいたほうがいいかもしれません」
コリンは礼を言って作業準備のために移動していった。
シレークス(ka0752)は作業を指折り考える。
「オレンジ百個も処理した上に、大掃除まであるとは……なかなか重労働でやがりますね。奉仕活動も聖職者の務め、このシスター・シレークス、全力でやらせていただきますですよ!」
やる気を宣言した。
コリンはその宣言に飲まれ、うなずいたが、はっとする。
「いえ、そこまで! ただ、オレンジはどうにかしたいです」
「力仕事を有効活用しやがるです」
「それは……なら、掃除の方を頼みます。結構幅広いと思いますので」
コリンが薦めた。シレークスは了解の旨を告げる。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)が早速出かける準備をしている。
「知らんものを作るより、慣れたことをするほうが間違いなかろう? 手先仕事は得意だが、知らねば全然違うものを作ってしまうかもしれんからな、ハッハッハッ」
あっけらかんという。
フィロ(ka6966)はどういうするようにうなずく。
「掃除なら慣れておりますので、役に立てると考えました。必要な仕事があればそれ以外でも承ります」
フィロの丁寧な言い方に、コリンは深々とお辞儀をするのだった。
コリンと薬草園の主ジャイルズ・バルネがハンターの質問等に答える。
「清掃ついでに柵の補強やペンキ塗りもするぞ。それに格闘士は飛べるからな。高木の枝打ちが必要なら行うぞ」
ルベーノが笑い、告げる。
「そこまでは不要だ。範囲も広いし、ゴミさえなければいい。第一、ここには高いものはないし、林などは領主の管轄だろう」
ジャイルズが淡々と告げ、掃除を頼みたい範囲を示す。ここと町をつなぐ道の一部だ。
「わかった。移動するには楽だが、距離はあるな。そういえば落ち葉はどうするのだ? たい肥にするのか、焼くのか? 焼くなら急いで町に芋を買いに行かねばならん」
ルベーノは焼き芋を所望した。
「葉などは焼くではなく燃やすだな」
ジャイルズは指摘した。芋焼く気はないようだった。時間も足りない可能性を考えると残念なことであるが、仕方がない。
「えっと、お芋あるので、余裕が有れば焼きましょう」
コリンがわたわたとフォローした。
「空き家の内外も掃き清めたほうがよろしいでしょうか? それとこの近辺で抜いてはいけないものを教えていただけないでしょうか?」
フィロが告げるとジャイルズが薬草園の中では「仕切りがあるうちは触らなければ問題ない」と現物を指して教える。外ではよほど出ない限り草むしりの作業は発生しない。
「空き家の……」
「ジャイルズさん、あそこ、子どもの遊び場でもあるんです」
「本当は……」
「なのですが、それは」
コリンが先回りしてジャイルズの言葉を止めていく。
「分かった。清掃をするか否かは君達の判断に任せるが、道具を取る際一通り見てくれ」
ジャイルズはコリンの言葉を受けてハンターについでを頼んだ。
「あと、空き家で修理必要なところもあるかわからないので、修理必要そうな場所が有れば教えていただければいいと思います。時間限られていますし」
コリンが言うと、そうじをメーンにする予定のルベーノとフィロが了解の旨を異口同音に言う。
「オレンジポマンダー作り始めたほうがいいですよね?」
ソナが促す。作ることに慣れているものもいるが、数も恐ろしい状況だ。
「あ、はい」
コリンがうなずいた。
「さぁーって、気合をいれてやりますですよ! 力仕事なら任せろです」
シレークスが腕まくりをするように言った。ジャイルズに掃除班に割り振られたのだった。
●空き家とそうじ
シレークスとルベーノ、フィロは薬草園を出て空き家に向かう。
「秋だな」
ルベーノは木を見上げる。通りに沿っているの常緑樹が多いが、どこからか飛んできた枯れ枝、枯れ葉は道に至るところに転がっている。
「これはなかなか掃除のしがいがありやがります」
「急いで道具を取りに行きましょう。これは箒より熊手の方が効率は良いようですね」
シレークスとフィロの足が速くなる。ルベーノが追いかける。そして、全体的に速くなる。空き家到着直前には軽い短距離走であった。
「空き家、意外と大きさですね」
フィロのつぶやきに二人はうなずく。由来は何かわからないが結構立派な空き家だ。
「子どもは遊び場にしやがりますね」
シレークスは町の方を見る。この辺りが安全であれば、町の外にこっそり出ていくことはあるだろう。そうなると町で使っているとはいえ空き家ならば、子どもたちの隠れ家にもってこいだ。
「中にいたりしてな」
ルベーノが扉を開けた。
中は埃臭いだけで、誰もいないようだった。
「窓を開けたほうがいいですね」
フィロは二階を見上げる。
「鍵はかかっていないということは開け放ってもいいか? 俺たちが閉め忘れなければいいわけだな」
ルベーノは一階を見て回る。今日は掃除日和の気候だ。ならば、雨や突風による被害はない。
フィロとシレークスも手分けして動いた。窓開けることで家の中も明るくなる。修理箇所や掃除が必要そうなところもわかりやすい。
窓開けついでに見たところ、特に修理が必要そうなところはなかった。
掃除道具を手にすると、三人は街道を薬草園に向かって移動を始めた。
「持久力を試しやがってます」
シレークスは自然物のゴミを熊手で履く。風が弱いため一定量を貯めてゴミを溜める箱に入れられる。てきぱきやっても進むペースは限られる。
「手を動かすのが重要です」
「そうだな。千里の道も一歩からだ」
フィロとルベーノも手を動かす。
三人はせっせと掃除を進める。枯れ葉がたまるため、ある程度で押し込む。嵩を減らしていくことも重要だった。
●ポマンダー
テーブルを囲み、ルカとソナ、マリィアとトリプルJがコリンとともに粛々と作業をする。その近くで、ハナがリースを作っている。
オレンジポマンダーはリボンをつける所を考え、クローブを差し込む穴をあける作業だ。粘着テープなどがあれば利用できるがそれはないため、適宜考える必要はある。
穴をあけることでオレンジの香りがより一層舞う。
「オレンジ、いい香り……でも、猫さんは逃げますよね……」
ルカは呟く。
「懐かしい……。この香りがないとクリスマスが来たって気がしないのよね。軍でも申請して、よく休憩室や食堂に置かせてもらったわ、ふふ。香りって記憶に残るのよ。この世界でもこれがクリスマスの香りになると嬉しいわね」
マリィアの表情は懐かしさに緩む。手際はさすがに良く、話しながらもてきぱき進んでいる。
「それはそうだなー。こっちでポマンダーなんぞ見なかったが、どんどんクリスマスが混じってくるようで何よりだぜ」
トリプルJも作業をしつつ手を動かす。
「混ざったあとどうなるかはその国次第なのですぅ」
リースの土台を作りながらハナが言う。
「それはそうだな。結局、料理だってその地域のものが関わるだろう?」
「そうですねぇ。日本じゃ七面鳥なんていませんしぃ」
トリプルJとハナは出身国のクリスマスを思い出す。
「は、早いです……」
ソナはマリィアの手元を見て驚く。慣れるというのはこういうことかというのを感じ取る。
「でも、焦ると駄目ですね」
深呼吸をして自分のペースを維持する。
「そうです、焦ってはいけない……です」
ルカはうなずく。
「リースは常緑樹で魔除けと希望、ブドウの蔦やリンゴや麦穂で収穫、円の形で永遠の神の愛て意味らしいですからぁ、後は視覚的に可愛く作ればいいと思いますぅ」
ハナは材料を見て不足が多いことに気づく。
「これは……周辺に行って拾ってこないと駄目なのですぅ?」
ローズマリーがどっしりしているから常緑樹にはなるが、デザイン的に松ぼっくりが不足しているのは困るかもしれない。
「そういえば、チャが集めてました。言えばくれると思います」
「……どこにいるのですか」
ハナとコリンが一旦外に出た。
「……開始早々波乱なのでしょうか?」
ソナはオレンジに穴をあけつつ考える。
それでも気持ちがゆったりしているのは、オレンジやスパイスの香りのおかげかもしれない。
「あ、これ、作ってきたのよ、食べてね」
マリィアがペッパカーカとグロッグの入った器や瓶を取り出す。
「スパイスの匂いが……するはずなのだけれども、ここはすでにいろいろなにおいがしてわからないわね」
ペッパカーカはジンジャーなどのスパイスが入ったクッキーであり、グロッグはスパイスが入ったワインである。グロッグは温める必要はある。
ハナとコリンが松ぼっくりを箱や袋に入れて持って戻ってきた。
「コリンさん、コップ使ってもいいですか?」
ルカが問うとコリンが場所を教えつつ、松ぼっくりの入った箱を置く。
棚からコップを取り出したルカは、コップがほしいという人に渡す。
「体温まりそうだぜ。それにスパイスがすごいな。俺のところだとポサダ――十六日から二十四日にピニャータってくす玉割って、菓子拾うんだが……あれはこっちに入ってくれりゃいいと思ったなあ」
トリプルJは棒で何かをたたくしぐさをする。
「くす玉ですぅ?」
「そうだ、色々な形があってな、その中に菓子や果物を入れて、棒を持った人が目隠ししてたたき割るんだ」
ハナ「スイカ割り」と言うと、トリプルJは肯定した。
「リース作りもします」
ソナは道具を握っていた手を開くと痛みというか、関節が固まっている感覚に襲われる。
「間に違う作業を挟むほうが、集中力ももちそうですね。穴あけが適当だと後々悲惨ですし」
ソナは慣れない作業なため不安になる。
「大丈夫よ、気にしなくて。ゆっくりでも終わるはずよ。パウダーをまぶすところまでが細かいだけだし」
「気楽にいこう。丁寧な方が確かにいいかもしれないけど、多少外れても悲惨なことにはならない、はずだ」
マリィアとトリプルJに続いて、コリンも「できるところまででいいです」と告げる。
そうは言っても頼まれたハンター、きっちり最後までやり切る心はできている。
ソナは気分転換のため、リースを作り始める。ローズマリーの立派な枝を取り出す。
「ここまで大きくなるとは……種類で違うんですね。香りは……一瞬スッとしましたが」
ソナの鼻にローズマリー独特のスッとした匂いが届くが、オレンジなどの匂いに混じっていくのは早かった。
混ざった匂いは、集中力と安らぎを与えてくれているようだった。
●昼食
掃除はは順調であった。屋外で寒いし、同じ姿勢だとつらい。それでも三人は黙々と進める。時々、体を伸ばしたり、違う作業をしている。
「そろそろ時間ですね。一旦昼食を作るために戻ります」
フィロがルベーノとシレークスに告げる。
「もうそんな時間か! 昼食持参とは言っていたが、忘れていた! 作ってくれるならば、助かるぞ」
ルベーノが破顔する。
「こっちの箱を持って行ってもらえると助かりやがるです」
シレークスは小さな箱を指さした。
「承りました」
フィロが箱を持ち立ち去った。
薬草園の小屋の中、ハナは腰を伸ばし、作業を中断する。
「材料はあるのですぅ」
ハナは状況を確認する。コリンはある程度あると告げる。それに、ハンターが持ち込んだものがある。
「チャちゃんにも手伝ってもえるかしら」
ソナも休憩を兼ね、料理を作りに行こうとしている。
「……あ、えと……」
ルカは料理を作るのを手伝うか、作業を進めるか悩ましい。いろいろ持っては来ているが足りるか不明だ。必要なら作るつもりもあった。
「休憩は必要よ。慣れないことしているんだから」
手は止めないでマリィアが指摘した。
「食事あるなら嬉しいぞ?」
トリプルJは顔を上げて笑う。
「ということで手分けしてでも作るのですよぉ」
ハナがさっさと外に出た。ルカはうなずくとついて行った。
風は穏やかでも空気が寒い。
たき火だけでなく、石が組まれて一応鍋は置けそうだ。テーブルはないため、作業用に使っていない椅子など必要なものを持ってくる。
「チャちゃん、どこにいるのでしょうか?」
ソナはチャを探す。
互いに何を作るつもりだったのか相談し、調整後、作り始める。屋外、そこまで場所がなかった。
それに、火がないと寒いし水は冷たい。
火が付くとソナに言われてやってきたチャは目を潤ませて前足を火にかざした。
フィロとハナが野菜を切り鍋に放り込みスープを作る。
ルカはナンの生地を寝かしている間に、ジャイルズを探した。ジャイルズは奥で作業をしていた。
「あ、あの……ハーブティー用に何か頂いてもいいでしょうか?」
おずおずと告げる。ジャイルズのむっとした顔が向くと逃げたくなる。
「どういうものが飲みたいのか?」
「えっと……」
ルカは希望を何とか絞り出した。
ジャイルズは何種類か取ると渡した。
「洗ってからポットに入れればいい」
「ありがとうございます」
びくびくと立ち去った。
戻ると、ちょうど生地が発酵終えたという。
「これを伸ばしますか?」
ソナが確認を取る。彼女が作っているものはすでに湯の中であり、温まるまで手が空いている。
「あ、はい」
ルカは返事をして、鉄板に適宜、生地を載せて焼いていった。
「味付けはいかがいたしますか?」
「これをいれるのですぅ。それと塩コショウです」
フィロにハナは赤ワインとトマトジュース、ウスターソースを見せる。どばーと入れる、適宜に入れる。
「シンプルにそして、大胆にですね」
「これでも量があって食べられる味に収まっていますよぉ」
「確かに材料的には問題があるようには見受けられません」
フィロとハナはうなずく。
「会話が恐ろしそうでしたが、でもおいしそうなにおいです……こちらも仕上げです。チャちゃんは……鶏肉くわえてどこにいくのですか!」
ソナは鶏肉を一口大に切っていたら、一部持って逃げられた。残った物や山菜を含む野菜に調味料で味付けをしたのだった。
鳥肉入り温サラダ、トマト味のシチューとナンが出来上がった。試食もかねて四人は食べた。胃からぬくもりが上がっていく感覚がはっきり分かった。
マリィアとトリプルJは伸びをする。調理していたメンバーが戻ってきて、作業と休憩の交代となる。
「楽しいとついつい同じ姿勢のまま時間が経つのよね」
「動かないのは危険とわかっているのにな」
二人は苦笑する。
「温かそうよね……チャ何しているかしら?」
チャははたき火の前で丸くなっている。鶏肉を食べて戻ってきたことは知らない。
大きな箱を持ってシレークスとルベーノが戻ってくる。
「これはこの山だな」
「そのようだです」
二人は枯れ葉がため込まれているところに、箱を軽々と逆さにして中身を空にした。
「寒かったでしょ?」
「ユグディラスペースに行っていいぞ」
マリィアとトリプルJがシレークスとルベーノに薦める。
「動いていたからな」
「それでも冷えやがるのです」
ルベーノとシレークスはシチューを器に注ぐと、自分が冷えているのよくわかる。大丈夫とは言っても、自然と暖かい方に体は動く。
「それにしても焦げ臭くないか?」
ルベーノの指摘に「やっぱり?」というふう表情になるマリィアとトリプルJ。
「……ほほーう……」
シレークスは視線をチャに向ける。シチューの器を置くと、チャを抱き抱える。
「焦げてやがるです」
『にゃ!?』
「ここ」
『にゃあああああああああああああ』
チャの背中当たりの毛が焦げていた。シレークスはポンポンと撫でると炭化していた毛の先が飛び散った。
「これですんでよかったです。近づきすぎは駄目だぜですよ?」
シレークスは慰めるが、チャはしおれていた。
「そうね。さ、私たちは温かいうちに食べて作業の締めまで行かないとね」
マリィアが苦笑して、チャを撫でた。
「そうだな。にしてもちょっとと言うだけでも豪勢だな」
トリプルJはサラダを食べる。
「これだけしっかり食べられたら午後の作業も捗るだろう。フィロが一人で作業をしているし、早く食べて戻ろう」
ルベーノが同意する。
四人は食べてから手早く片づけを済ます。
温かさの余韻とともに、午後の作業に移る。おいしくぬくもりがある食事は活力だった。
●あと少し
ハナは覚醒して松ぼっくりをリースに縛り付ける。その上でリボンもつける。リースは幾つか制作完了しそうだ。
「これが効率がいいのですぅ」
「それはそれで一つの手だな」
トリプルJはクローブを穴に入れる細かい作業を進める。
作業は進む。
「パウダーはここに入れたほうがいいわね」
マリィアがクローブの刺さったオレンジにまぶすポマンダー粉を平たい器に出した。
シナモンやカルダモンといったスパイスの匂いが小屋に広まる。オレンジの香りと混じり、独特な香りとなる。
ルカはクローブの匂いを嗅ぎながら思い出したことがあった。
「これはゴ……ブリ撃退にも良いです……見た目はちょっとあれですけど」
オレンジにブツブツとクローブが刺さり、粉をまぶしたところを見ると外見は得体のしれないものとなる。
「ペパーミント精油に効果があるという話を聞きましたよ?」
コリンがどこかで聞きかじったことを告げる。思わずルカの顔が上がる。
「それは重要です」
ルカは香りの不思議を知った。
「片付くものなのですね」
ソナはほっとしていた。人海戦術や慣れた人がいたとはいえ、片付くというのに驚いた。
「粉をまぶしたのはこちらに置くんですね」
まぶされたものをソナは並べて行った。板が一杯になるどかす。これが乾燥するとどんな風になるのか考えるとワクワクする。
茶色や濃い色でブツブツしている外見であるポマンダーにリボンを添えることでどのようなモノになるのか、気になるし、匂いも変化するに違いない。今は新鮮な香りであるが、乾燥すると落ち着いたものになるのだろう。
「楽しみですね」
ソナは微笑んだ。
フィロは食事後、空き家の掃除をしていた。シレークスとルベーノが戻ってきたところで、外の掃除に向かう。
「残りは薬草園の回りだな」
「あとひといきでやがります! 腹ごなしに張り切ってやるですよ」
「おう」
シレークスとルベーノは腕まくりをする。
「あれはチャ様」
フィロは薬草園の側でゴロゴロしているユグディラを発見する。シレークスが先ほどあったことを教えた。
「それは大変でしたね。チャ様、聖輝節にはお知り合いの方も戻ってくるかもしれませんよ。楽しみですね」
フィロはチャに明るい話題を提供した。チャは起き上がると「にゃあ」と鳴いた。強がりかそれとも喜びか、今一つわからなかった。
薬草園の脇に来ればあと一息だ。熊手や箒で掃き集め、塵取りで取り箱に入れる。それを繰り返し、薬草園を少し先の林の入り口の手前に到着した。
「道の掃除はキリがねーですよ」
「そうだな」
「そうですね」
道は続くのだから、どこまででも掃除していきそうだ。三人はゴミを集め、片付け作業に移った。
この日の作業は無事終わる。リースは早速必要なところに配達されるということだった。
後日、乾燥したポマンダーができたということがハンターに伝わった。それに加え、空き家がきれいになっていたということで町からの礼もあったという。
そして、年末に向けて穏やかな時が進むことを願った。
ハンターは三々五々、薬草園に集まってきた。
ソナ(ka1352)は薬草園の門をくぐる。ユグディラのチャがうろうろとしていた。
「チャちゃん、こんにちは」
『にゃ』
「すごい状況だと聞いて手伝いに来ました」
チャは目を見開き、フルフルと震える。しぐさで鼻を抑えた。
「薬草園も匂いはしますけれども?」
チャはより一層首を横に振った。
マリィア・バルデス(ka5848)が後ろからやってくる。途中から話が聞こえたらしく苦笑している。
「オレンジポマンダーのクローブかしらね? 匂い、結構するわよ。スパイスも使うから、ユグディラには堪えるのかもしれないわね」
ソナは納得したとうなずいた。
コリンがやってくる。すでに天手古舞の様子がうかがえる顔つきだ。
「あ、皆さん、おはようございます。今日はよろしくお願いします」
小屋に案内をしてくれた。
中を見た瞬間、オレンジ百個の山を見た。部屋はぬくもりがあるが、外より暖かい程度だろう。
星野 ハナ(ka5852)はその様子を見て目を瞬く。
「これがポマンダーの材料なのですぅ? 日本ではクリスマスは他所から入ってきたお祭りなのでぇ、食べ物にしろ、絶対これって感じじゃなくてぇ。鳥ならOK、ツリーあればOKみたいな……」
ハナが解説をする。
トリプルJ(ka6653)が笑う。
「それを言ったら、クリスマスの状況は国によって違うから、気にすることないだろう? 俺らのナビダーは十二月十六日から一月六日までだし、ヨーロッパ方面はもっと長いところもあるし。あー、でも、日本なんぞ、ハロウィンが終わったらもうナビダーに入るじゃねぇか? よく知らねぇが最長じゃね?」
ハナが「あはは」と笑い、マリィアは「そうなるかしら」と首を傾げた。
●仕事の前の準備
ルカ(ka0962)は小屋はぬくもりを感じるが、じっとしているとどうなるかわからない。
「少しでも、暖かいもの用意したほうが、いいですよね……」
湯たんぽかそれに準じるモノがないかコリンに尋ねる。すると、水袋のような物を出してくれた。熱湯は駄目であるが、ある程度熱いものは入れられる。
「僕、やっておきますね」
「ううん。作業、ありますから……」
ルカが引き受けた。
「……確認をしておいていいですか?」
「なんですか?」
「外の掃除の道具が置いてある場所……も直したりした方が、いいのですか?」
「いらないと思います。でも、余裕が有るなら見ていただいたほうがいいかもしれません」
コリンは礼を言って作業準備のために移動していった。
シレークス(ka0752)は作業を指折り考える。
「オレンジ百個も処理した上に、大掃除まであるとは……なかなか重労働でやがりますね。奉仕活動も聖職者の務め、このシスター・シレークス、全力でやらせていただきますですよ!」
やる気を宣言した。
コリンはその宣言に飲まれ、うなずいたが、はっとする。
「いえ、そこまで! ただ、オレンジはどうにかしたいです」
「力仕事を有効活用しやがるです」
「それは……なら、掃除の方を頼みます。結構幅広いと思いますので」
コリンが薦めた。シレークスは了解の旨を告げる。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)が早速出かける準備をしている。
「知らんものを作るより、慣れたことをするほうが間違いなかろう? 手先仕事は得意だが、知らねば全然違うものを作ってしまうかもしれんからな、ハッハッハッ」
あっけらかんという。
フィロ(ka6966)はどういうするようにうなずく。
「掃除なら慣れておりますので、役に立てると考えました。必要な仕事があればそれ以外でも承ります」
フィロの丁寧な言い方に、コリンは深々とお辞儀をするのだった。
コリンと薬草園の主ジャイルズ・バルネがハンターの質問等に答える。
「清掃ついでに柵の補強やペンキ塗りもするぞ。それに格闘士は飛べるからな。高木の枝打ちが必要なら行うぞ」
ルベーノが笑い、告げる。
「そこまでは不要だ。範囲も広いし、ゴミさえなければいい。第一、ここには高いものはないし、林などは領主の管轄だろう」
ジャイルズが淡々と告げ、掃除を頼みたい範囲を示す。ここと町をつなぐ道の一部だ。
「わかった。移動するには楽だが、距離はあるな。そういえば落ち葉はどうするのだ? たい肥にするのか、焼くのか? 焼くなら急いで町に芋を買いに行かねばならん」
ルベーノは焼き芋を所望した。
「葉などは焼くではなく燃やすだな」
ジャイルズは指摘した。芋焼く気はないようだった。時間も足りない可能性を考えると残念なことであるが、仕方がない。
「えっと、お芋あるので、余裕が有れば焼きましょう」
コリンがわたわたとフォローした。
「空き家の内外も掃き清めたほうがよろしいでしょうか? それとこの近辺で抜いてはいけないものを教えていただけないでしょうか?」
フィロが告げるとジャイルズが薬草園の中では「仕切りがあるうちは触らなければ問題ない」と現物を指して教える。外ではよほど出ない限り草むしりの作業は発生しない。
「空き家の……」
「ジャイルズさん、あそこ、子どもの遊び場でもあるんです」
「本当は……」
「なのですが、それは」
コリンが先回りしてジャイルズの言葉を止めていく。
「分かった。清掃をするか否かは君達の判断に任せるが、道具を取る際一通り見てくれ」
ジャイルズはコリンの言葉を受けてハンターについでを頼んだ。
「あと、空き家で修理必要なところもあるかわからないので、修理必要そうな場所が有れば教えていただければいいと思います。時間限られていますし」
コリンが言うと、そうじをメーンにする予定のルベーノとフィロが了解の旨を異口同音に言う。
「オレンジポマンダー作り始めたほうがいいですよね?」
ソナが促す。作ることに慣れているものもいるが、数も恐ろしい状況だ。
「あ、はい」
コリンがうなずいた。
「さぁーって、気合をいれてやりますですよ! 力仕事なら任せろです」
シレークスが腕まくりをするように言った。ジャイルズに掃除班に割り振られたのだった。
●空き家とそうじ
シレークスとルベーノ、フィロは薬草園を出て空き家に向かう。
「秋だな」
ルベーノは木を見上げる。通りに沿っているの常緑樹が多いが、どこからか飛んできた枯れ枝、枯れ葉は道に至るところに転がっている。
「これはなかなか掃除のしがいがありやがります」
「急いで道具を取りに行きましょう。これは箒より熊手の方が効率は良いようですね」
シレークスとフィロの足が速くなる。ルベーノが追いかける。そして、全体的に速くなる。空き家到着直前には軽い短距離走であった。
「空き家、意外と大きさですね」
フィロのつぶやきに二人はうなずく。由来は何かわからないが結構立派な空き家だ。
「子どもは遊び場にしやがりますね」
シレークスは町の方を見る。この辺りが安全であれば、町の外にこっそり出ていくことはあるだろう。そうなると町で使っているとはいえ空き家ならば、子どもたちの隠れ家にもってこいだ。
「中にいたりしてな」
ルベーノが扉を開けた。
中は埃臭いだけで、誰もいないようだった。
「窓を開けたほうがいいですね」
フィロは二階を見上げる。
「鍵はかかっていないということは開け放ってもいいか? 俺たちが閉め忘れなければいいわけだな」
ルベーノは一階を見て回る。今日は掃除日和の気候だ。ならば、雨や突風による被害はない。
フィロとシレークスも手分けして動いた。窓開けることで家の中も明るくなる。修理箇所や掃除が必要そうなところもわかりやすい。
窓開けついでに見たところ、特に修理が必要そうなところはなかった。
掃除道具を手にすると、三人は街道を薬草園に向かって移動を始めた。
「持久力を試しやがってます」
シレークスは自然物のゴミを熊手で履く。風が弱いため一定量を貯めてゴミを溜める箱に入れられる。てきぱきやっても進むペースは限られる。
「手を動かすのが重要です」
「そうだな。千里の道も一歩からだ」
フィロとルベーノも手を動かす。
三人はせっせと掃除を進める。枯れ葉がたまるため、ある程度で押し込む。嵩を減らしていくことも重要だった。
●ポマンダー
テーブルを囲み、ルカとソナ、マリィアとトリプルJがコリンとともに粛々と作業をする。その近くで、ハナがリースを作っている。
オレンジポマンダーはリボンをつける所を考え、クローブを差し込む穴をあける作業だ。粘着テープなどがあれば利用できるがそれはないため、適宜考える必要はある。
穴をあけることでオレンジの香りがより一層舞う。
「オレンジ、いい香り……でも、猫さんは逃げますよね……」
ルカは呟く。
「懐かしい……。この香りがないとクリスマスが来たって気がしないのよね。軍でも申請して、よく休憩室や食堂に置かせてもらったわ、ふふ。香りって記憶に残るのよ。この世界でもこれがクリスマスの香りになると嬉しいわね」
マリィアの表情は懐かしさに緩む。手際はさすがに良く、話しながらもてきぱき進んでいる。
「それはそうだなー。こっちでポマンダーなんぞ見なかったが、どんどんクリスマスが混じってくるようで何よりだぜ」
トリプルJも作業をしつつ手を動かす。
「混ざったあとどうなるかはその国次第なのですぅ」
リースの土台を作りながらハナが言う。
「それはそうだな。結局、料理だってその地域のものが関わるだろう?」
「そうですねぇ。日本じゃ七面鳥なんていませんしぃ」
トリプルJとハナは出身国のクリスマスを思い出す。
「は、早いです……」
ソナはマリィアの手元を見て驚く。慣れるというのはこういうことかというのを感じ取る。
「でも、焦ると駄目ですね」
深呼吸をして自分のペースを維持する。
「そうです、焦ってはいけない……です」
ルカはうなずく。
「リースは常緑樹で魔除けと希望、ブドウの蔦やリンゴや麦穂で収穫、円の形で永遠の神の愛て意味らしいですからぁ、後は視覚的に可愛く作ればいいと思いますぅ」
ハナは材料を見て不足が多いことに気づく。
「これは……周辺に行って拾ってこないと駄目なのですぅ?」
ローズマリーがどっしりしているから常緑樹にはなるが、デザイン的に松ぼっくりが不足しているのは困るかもしれない。
「そういえば、チャが集めてました。言えばくれると思います」
「……どこにいるのですか」
ハナとコリンが一旦外に出た。
「……開始早々波乱なのでしょうか?」
ソナはオレンジに穴をあけつつ考える。
それでも気持ちがゆったりしているのは、オレンジやスパイスの香りのおかげかもしれない。
「あ、これ、作ってきたのよ、食べてね」
マリィアがペッパカーカとグロッグの入った器や瓶を取り出す。
「スパイスの匂いが……するはずなのだけれども、ここはすでにいろいろなにおいがしてわからないわね」
ペッパカーカはジンジャーなどのスパイスが入ったクッキーであり、グロッグはスパイスが入ったワインである。グロッグは温める必要はある。
ハナとコリンが松ぼっくりを箱や袋に入れて持って戻ってきた。
「コリンさん、コップ使ってもいいですか?」
ルカが問うとコリンが場所を教えつつ、松ぼっくりの入った箱を置く。
棚からコップを取り出したルカは、コップがほしいという人に渡す。
「体温まりそうだぜ。それにスパイスがすごいな。俺のところだとポサダ――十六日から二十四日にピニャータってくす玉割って、菓子拾うんだが……あれはこっちに入ってくれりゃいいと思ったなあ」
トリプルJは棒で何かをたたくしぐさをする。
「くす玉ですぅ?」
「そうだ、色々な形があってな、その中に菓子や果物を入れて、棒を持った人が目隠ししてたたき割るんだ」
ハナ「スイカ割り」と言うと、トリプルJは肯定した。
「リース作りもします」
ソナは道具を握っていた手を開くと痛みというか、関節が固まっている感覚に襲われる。
「間に違う作業を挟むほうが、集中力ももちそうですね。穴あけが適当だと後々悲惨ですし」
ソナは慣れない作業なため不安になる。
「大丈夫よ、気にしなくて。ゆっくりでも終わるはずよ。パウダーをまぶすところまでが細かいだけだし」
「気楽にいこう。丁寧な方が確かにいいかもしれないけど、多少外れても悲惨なことにはならない、はずだ」
マリィアとトリプルJに続いて、コリンも「できるところまででいいです」と告げる。
そうは言っても頼まれたハンター、きっちり最後までやり切る心はできている。
ソナは気分転換のため、リースを作り始める。ローズマリーの立派な枝を取り出す。
「ここまで大きくなるとは……種類で違うんですね。香りは……一瞬スッとしましたが」
ソナの鼻にローズマリー独特のスッとした匂いが届くが、オレンジなどの匂いに混じっていくのは早かった。
混ざった匂いは、集中力と安らぎを与えてくれているようだった。
●昼食
掃除はは順調であった。屋外で寒いし、同じ姿勢だとつらい。それでも三人は黙々と進める。時々、体を伸ばしたり、違う作業をしている。
「そろそろ時間ですね。一旦昼食を作るために戻ります」
フィロがルベーノとシレークスに告げる。
「もうそんな時間か! 昼食持参とは言っていたが、忘れていた! 作ってくれるならば、助かるぞ」
ルベーノが破顔する。
「こっちの箱を持って行ってもらえると助かりやがるです」
シレークスは小さな箱を指さした。
「承りました」
フィロが箱を持ち立ち去った。
薬草園の小屋の中、ハナは腰を伸ばし、作業を中断する。
「材料はあるのですぅ」
ハナは状況を確認する。コリンはある程度あると告げる。それに、ハンターが持ち込んだものがある。
「チャちゃんにも手伝ってもえるかしら」
ソナも休憩を兼ね、料理を作りに行こうとしている。
「……あ、えと……」
ルカは料理を作るのを手伝うか、作業を進めるか悩ましい。いろいろ持っては来ているが足りるか不明だ。必要なら作るつもりもあった。
「休憩は必要よ。慣れないことしているんだから」
手は止めないでマリィアが指摘した。
「食事あるなら嬉しいぞ?」
トリプルJは顔を上げて笑う。
「ということで手分けしてでも作るのですよぉ」
ハナがさっさと外に出た。ルカはうなずくとついて行った。
風は穏やかでも空気が寒い。
たき火だけでなく、石が組まれて一応鍋は置けそうだ。テーブルはないため、作業用に使っていない椅子など必要なものを持ってくる。
「チャちゃん、どこにいるのでしょうか?」
ソナはチャを探す。
互いに何を作るつもりだったのか相談し、調整後、作り始める。屋外、そこまで場所がなかった。
それに、火がないと寒いし水は冷たい。
火が付くとソナに言われてやってきたチャは目を潤ませて前足を火にかざした。
フィロとハナが野菜を切り鍋に放り込みスープを作る。
ルカはナンの生地を寝かしている間に、ジャイルズを探した。ジャイルズは奥で作業をしていた。
「あ、あの……ハーブティー用に何か頂いてもいいでしょうか?」
おずおずと告げる。ジャイルズのむっとした顔が向くと逃げたくなる。
「どういうものが飲みたいのか?」
「えっと……」
ルカは希望を何とか絞り出した。
ジャイルズは何種類か取ると渡した。
「洗ってからポットに入れればいい」
「ありがとうございます」
びくびくと立ち去った。
戻ると、ちょうど生地が発酵終えたという。
「これを伸ばしますか?」
ソナが確認を取る。彼女が作っているものはすでに湯の中であり、温まるまで手が空いている。
「あ、はい」
ルカは返事をして、鉄板に適宜、生地を載せて焼いていった。
「味付けはいかがいたしますか?」
「これをいれるのですぅ。それと塩コショウです」
フィロにハナは赤ワインとトマトジュース、ウスターソースを見せる。どばーと入れる、適宜に入れる。
「シンプルにそして、大胆にですね」
「これでも量があって食べられる味に収まっていますよぉ」
「確かに材料的には問題があるようには見受けられません」
フィロとハナはうなずく。
「会話が恐ろしそうでしたが、でもおいしそうなにおいです……こちらも仕上げです。チャちゃんは……鶏肉くわえてどこにいくのですか!」
ソナは鶏肉を一口大に切っていたら、一部持って逃げられた。残った物や山菜を含む野菜に調味料で味付けをしたのだった。
鳥肉入り温サラダ、トマト味のシチューとナンが出来上がった。試食もかねて四人は食べた。胃からぬくもりが上がっていく感覚がはっきり分かった。
マリィアとトリプルJは伸びをする。調理していたメンバーが戻ってきて、作業と休憩の交代となる。
「楽しいとついつい同じ姿勢のまま時間が経つのよね」
「動かないのは危険とわかっているのにな」
二人は苦笑する。
「温かそうよね……チャ何しているかしら?」
チャははたき火の前で丸くなっている。鶏肉を食べて戻ってきたことは知らない。
大きな箱を持ってシレークスとルベーノが戻ってくる。
「これはこの山だな」
「そのようだです」
二人は枯れ葉がため込まれているところに、箱を軽々と逆さにして中身を空にした。
「寒かったでしょ?」
「ユグディラスペースに行っていいぞ」
マリィアとトリプルJがシレークスとルベーノに薦める。
「動いていたからな」
「それでも冷えやがるのです」
ルベーノとシレークスはシチューを器に注ぐと、自分が冷えているのよくわかる。大丈夫とは言っても、自然と暖かい方に体は動く。
「それにしても焦げ臭くないか?」
ルベーノの指摘に「やっぱり?」というふう表情になるマリィアとトリプルJ。
「……ほほーう……」
シレークスは視線をチャに向ける。シチューの器を置くと、チャを抱き抱える。
「焦げてやがるです」
『にゃ!?』
「ここ」
『にゃあああああああああああああ』
チャの背中当たりの毛が焦げていた。シレークスはポンポンと撫でると炭化していた毛の先が飛び散った。
「これですんでよかったです。近づきすぎは駄目だぜですよ?」
シレークスは慰めるが、チャはしおれていた。
「そうね。さ、私たちは温かいうちに食べて作業の締めまで行かないとね」
マリィアが苦笑して、チャを撫でた。
「そうだな。にしてもちょっとと言うだけでも豪勢だな」
トリプルJはサラダを食べる。
「これだけしっかり食べられたら午後の作業も捗るだろう。フィロが一人で作業をしているし、早く食べて戻ろう」
ルベーノが同意する。
四人は食べてから手早く片づけを済ます。
温かさの余韻とともに、午後の作業に移る。おいしくぬくもりがある食事は活力だった。
●あと少し
ハナは覚醒して松ぼっくりをリースに縛り付ける。その上でリボンもつける。リースは幾つか制作完了しそうだ。
「これが効率がいいのですぅ」
「それはそれで一つの手だな」
トリプルJはクローブを穴に入れる細かい作業を進める。
作業は進む。
「パウダーはここに入れたほうがいいわね」
マリィアがクローブの刺さったオレンジにまぶすポマンダー粉を平たい器に出した。
シナモンやカルダモンといったスパイスの匂いが小屋に広まる。オレンジの香りと混じり、独特な香りとなる。
ルカはクローブの匂いを嗅ぎながら思い出したことがあった。
「これはゴ……ブリ撃退にも良いです……見た目はちょっとあれですけど」
オレンジにブツブツとクローブが刺さり、粉をまぶしたところを見ると外見は得体のしれないものとなる。
「ペパーミント精油に効果があるという話を聞きましたよ?」
コリンがどこかで聞きかじったことを告げる。思わずルカの顔が上がる。
「それは重要です」
ルカは香りの不思議を知った。
「片付くものなのですね」
ソナはほっとしていた。人海戦術や慣れた人がいたとはいえ、片付くというのに驚いた。
「粉をまぶしたのはこちらに置くんですね」
まぶされたものをソナは並べて行った。板が一杯になるどかす。これが乾燥するとどんな風になるのか考えるとワクワクする。
茶色や濃い色でブツブツしている外見であるポマンダーにリボンを添えることでどのようなモノになるのか、気になるし、匂いも変化するに違いない。今は新鮮な香りであるが、乾燥すると落ち着いたものになるのだろう。
「楽しみですね」
ソナは微笑んだ。
フィロは食事後、空き家の掃除をしていた。シレークスとルベーノが戻ってきたところで、外の掃除に向かう。
「残りは薬草園の回りだな」
「あとひといきでやがります! 腹ごなしに張り切ってやるですよ」
「おう」
シレークスとルベーノは腕まくりをする。
「あれはチャ様」
フィロは薬草園の側でゴロゴロしているユグディラを発見する。シレークスが先ほどあったことを教えた。
「それは大変でしたね。チャ様、聖輝節にはお知り合いの方も戻ってくるかもしれませんよ。楽しみですね」
フィロはチャに明るい話題を提供した。チャは起き上がると「にゃあ」と鳴いた。強がりかそれとも喜びか、今一つわからなかった。
薬草園の脇に来ればあと一息だ。熊手や箒で掃き集め、塵取りで取り箱に入れる。それを繰り返し、薬草園を少し先の林の入り口の手前に到着した。
「道の掃除はキリがねーですよ」
「そうだな」
「そうですね」
道は続くのだから、どこまででも掃除していきそうだ。三人はゴミを集め、片付け作業に移った。
この日の作業は無事終わる。リースは早速必要なところに配達されるということだった。
後日、乾燥したポマンダーができたということがハンターに伝わった。それに加え、空き家がきれいになっていたということで町からの礼もあったという。
そして、年末に向けて穏やかな時が進むことを願った。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/12/09 17:12:45 |