ゲスト
(ka0000)
【CF】聖輝節は甘~く溺れて
マスター:のどか

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/12/14 12:00
- 完成日
- 2018/12/24 01:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
受付嬢のケーキ屋さん「オフィスの森」では、ケーキバトルロイヤルの名のもとに日夜大量のケーキが量産――もとい焼かれている。
もちろん、すでに自信作の域に達した商品ではあるが、せっかく長い期間があるのだから毎日微妙に味の向上を今も重ねていて、そのために試作品もまた大量に作られていた。
「ごめんなさい……私、もう、限界です……」
「の、希ちゃーん!?」
厨房の床にぱたりと倒れた作る人・紡伎 希(kz0174)を、食べる人・ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)は慌てて駆け寄って抱き起した。
「ああ……小麦粉さん、卵さん、牛乳さん、それに沢山の砂糖さん……ごめんなさい……私はもう、これ以上みんなを美味しくできない……」
「そ、そんなことないよ! ちゃんと美味しくなってるよ! だから自信もって!?」
絵にかいたようなトオイメで虚空を見つめる希。
お店にはちゃんと天井があるはずなのに、その瞳には、お空の上で笑顔で手を振る小麦粉や卵や牛乳たちの姿が見えた。
「でも、あまりに沢山作り過ぎて『ケーキ』という概念がゲシュタルト崩壊してきたんです……」
「希ちゃん、難しい言葉知ってるね」
「甘いってなに? ケーキってなんで白いの? そもそも、ケーキってなんだっけ??」
重症だ。
ルミはとりあえず休憩用のソファに彼女を寝かせると、今一度厨房の惨状に目を向けた。
戦いに勝つため、そして自分が食べたいと思うおいしいケーキを求めて、開店前からずっとたくさんの試行錯誤を重ねて来た。
とはいえ、ロワイヤルの出品商品は1点だけ。
材料の分量やスポンジの焼き方、その重ね方を変えたりはできるものの、トッピングを全く別物にしたり、そもそも全く別のケーキに変えたりすることはできない。
結果としてこの時期の品質向上のためには似たようなケーキを延々作り続けることになり、そりゃ精神的にも参るはず。
「ううん……確かに、あたしも味飽きはしてきちゃったかも。舌が慣れると、細かい部分の味の違いは分からなくなってくるものね」
お湯を沸かして、暖かいオレンジ&チョコフレーバーのお茶を淹れる。
それをソファ傍の机の上に置くと、コート掛けの真っ白い羊毛のポンチョを掴んで勝手口を開いた。
吹き込んだ冷た~い風に意識が戻ってきた希は、お店を後にするルミの姿を見て、縋るように声をかけた。
「出かけるんですか……?」
風で長い髪をなびかせて、ルミは答えた。
「私(たちのケーキ)より、強い(おいしい)奴(ケーキ)に会って(食べて)くる――」
●
おいしいケーキを作るには、ケーキのおいしさを知らなければならない。
木枯らしの中、荒野を歩く旅人みたいに無駄にかっこよく歩くルミの手には、1枚のチラシが握られていた。
この間の【郷祭】の時にハンターたちの対戦相手だった菓子職人から貰ったお店のチラシ。
赤と緑と白を基調としたそれには、流れるような字体で『聖輝節限定ケーキビュッフェ』と書かれていた。
「ビュッフェ――またの呼び方をバイキング。私たちはお宝を強奪する海賊。そう……パティシエが誇るケーキという名の無敵艦隊を突破するには、仲間が必要なのよ。具体的にはあと5人くらい」
誰に聞かせるわけでもないのに、無駄に凄みを持って呟く。
心なしか、彼女を構成するタッチがキリリとした劇画調になっている気がした。
迷いなく進む道。
向かう先にあるのは、彼女の職場ハンターオフィス。
あそこならきっといるはず。
血肉に飢えた、ハングリー精神むき出しの猛者たちが。
「ルミ、ちょうどいいところに。次の依頼の紹介をお願いしたいのだが――」
オフィスに入ったところで、ちょうど依頼掲示板を眺めていたアンナ=リーナ・エスト(kz0108)が声をかけてきたのでルミはその両肩をガッチリと掴んだ。
「採用」
「えっ?」
困惑するアンナを捨て置いてルミはオフィスを見渡した。
ふふふ、猛者どもがうようよおるわ。
これから向かうのは戦場。
そう、戦場だ。
ルミはひとしきり顔ぶれを眺めて当たりをつけると、アンナの手を引いてずんずんとオフィスの中を進んでいった。
そして語るのだ。
――「一緒にケーキ、食べいこう!」
受付嬢のケーキ屋さん「オフィスの森」では、ケーキバトルロイヤルの名のもとに日夜大量のケーキが量産――もとい焼かれている。
もちろん、すでに自信作の域に達した商品ではあるが、せっかく長い期間があるのだから毎日微妙に味の向上を今も重ねていて、そのために試作品もまた大量に作られていた。
「ごめんなさい……私、もう、限界です……」
「の、希ちゃーん!?」
厨房の床にぱたりと倒れた作る人・紡伎 希(kz0174)を、食べる人・ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)は慌てて駆け寄って抱き起した。
「ああ……小麦粉さん、卵さん、牛乳さん、それに沢山の砂糖さん……ごめんなさい……私はもう、これ以上みんなを美味しくできない……」
「そ、そんなことないよ! ちゃんと美味しくなってるよ! だから自信もって!?」
絵にかいたようなトオイメで虚空を見つめる希。
お店にはちゃんと天井があるはずなのに、その瞳には、お空の上で笑顔で手を振る小麦粉や卵や牛乳たちの姿が見えた。
「でも、あまりに沢山作り過ぎて『ケーキ』という概念がゲシュタルト崩壊してきたんです……」
「希ちゃん、難しい言葉知ってるね」
「甘いってなに? ケーキってなんで白いの? そもそも、ケーキってなんだっけ??」
重症だ。
ルミはとりあえず休憩用のソファに彼女を寝かせると、今一度厨房の惨状に目を向けた。
戦いに勝つため、そして自分が食べたいと思うおいしいケーキを求めて、開店前からずっとたくさんの試行錯誤を重ねて来た。
とはいえ、ロワイヤルの出品商品は1点だけ。
材料の分量やスポンジの焼き方、その重ね方を変えたりはできるものの、トッピングを全く別物にしたり、そもそも全く別のケーキに変えたりすることはできない。
結果としてこの時期の品質向上のためには似たようなケーキを延々作り続けることになり、そりゃ精神的にも参るはず。
「ううん……確かに、あたしも味飽きはしてきちゃったかも。舌が慣れると、細かい部分の味の違いは分からなくなってくるものね」
お湯を沸かして、暖かいオレンジ&チョコフレーバーのお茶を淹れる。
それをソファ傍の机の上に置くと、コート掛けの真っ白い羊毛のポンチョを掴んで勝手口を開いた。
吹き込んだ冷た~い風に意識が戻ってきた希は、お店を後にするルミの姿を見て、縋るように声をかけた。
「出かけるんですか……?」
風で長い髪をなびかせて、ルミは答えた。
「私(たちのケーキ)より、強い(おいしい)奴(ケーキ)に会って(食べて)くる――」
●
おいしいケーキを作るには、ケーキのおいしさを知らなければならない。
木枯らしの中、荒野を歩く旅人みたいに無駄にかっこよく歩くルミの手には、1枚のチラシが握られていた。
この間の【郷祭】の時にハンターたちの対戦相手だった菓子職人から貰ったお店のチラシ。
赤と緑と白を基調としたそれには、流れるような字体で『聖輝節限定ケーキビュッフェ』と書かれていた。
「ビュッフェ――またの呼び方をバイキング。私たちはお宝を強奪する海賊。そう……パティシエが誇るケーキという名の無敵艦隊を突破するには、仲間が必要なのよ。具体的にはあと5人くらい」
誰に聞かせるわけでもないのに、無駄に凄みを持って呟く。
心なしか、彼女を構成するタッチがキリリとした劇画調になっている気がした。
迷いなく進む道。
向かう先にあるのは、彼女の職場ハンターオフィス。
あそこならきっといるはず。
血肉に飢えた、ハングリー精神むき出しの猛者たちが。
「ルミ、ちょうどいいところに。次の依頼の紹介をお願いしたいのだが――」
オフィスに入ったところで、ちょうど依頼掲示板を眺めていたアンナ=リーナ・エスト(kz0108)が声をかけてきたのでルミはその両肩をガッチリと掴んだ。
「採用」
「えっ?」
困惑するアンナを捨て置いてルミはオフィスを見渡した。
ふふふ、猛者どもがうようよおるわ。
これから向かうのは戦場。
そう、戦場だ。
ルミはひとしきり顔ぶれを眺めて当たりをつけると、アンナの手を引いてずんずんとオフィスの中を進んでいった。
そして語るのだ。
――「一緒にケーキ、食べいこう!」
リプレイ本文
「ケ~キ~~!!」
従業員に渡されたメニューを見ただけで、ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)の瞳が生き生きと輝く。
シックな給仕服に身を包んだ従業員はクスリとほほ笑むと、お決まりのころお伺いします、と会釈をして離れていった。
「ねぇねぇ水月、いっぱいあるよ! どれにしよっか?」
「選ぶのは悩んじゃうし、とりあえず全部食べちゃうくらいで良いんじゃないかな?」
同じくらいワクワクとしている葛音 ステラ(ka5122)へと、葛音 水月(ka1895)は優しく言い添える。
ステラは確かに、と頷くとメニューの上から順に人差し指をはわせる。
カフェ「インヴェルノ」のケーキビュッフェはオーダー式だ。
幅広い年齢層に愛されている店とはいえ、基本は淑女御用達店。
お客に都度立ち歩かせるようなことはしない。
「注文は三品ずつか。小ぶりなのだろうが、流石に全部を試せる気はしないな」
「でも、できるだけ頑張りたいですよね。せっかくですし。う~ん、最初は王道のショートケーキかしら……あっ、これ今年のおすすめなんだ。絶対美味しいのだわ」
メニューを吟味するアンナ=リーナ・エスト(kz0108)に、天王寺茜(ka4080)もメニューとにらめっこ。
何から食べてもいいのだが、何から食べるのかは意外と大事なことだ。
「それにしても、ホントに良いんですか? いっこ上のメニューにしてもらっちゃって」
茜がメニューの端から視線を覗かせると、それに気づいたイルム=ローレ・エーレ(ka5113)がふわりと笑みをこぼす。
「これくらいは年長者に見栄を張らせてもらえると嬉しいな。それに氷菓も気になっていたところだしね♪」
「それはもう、太鼓判おしちゃいます」
お店に来てからビュッフェメニューにワンランク上のコースがあることを知ったのだが、イルムがせっかくだからそれにしようと提案をしたのだ。
差額は自分で出すから、と言い添えて。
追加のメニューは当店の看板商品である季節のジェラート。
ここに向かうまでの道中、茜の勧めもあって気になっていたものだ。
断る理由はなく、お言葉に甘える形となった。
やがて注文を通すと、まずは温かい飲み物から。
続いてメインのケーキプレートが運ばれてくる。
白いテーブルクロスの上が一気に色で華やいで、思わず気分も高揚する。
「ん~~~~最っ高!!」
うるさいくらいの第一声は、当然と言っていいのか、ルミのものだった。
いただきますも早々に、フォーク片手に目の前のガトーショコラに舌も心も奪われる。
「毎日ケーキ尽くしなのによく食べられるな……」
「他人のケーキは別腹別腹!」
呆れた様子のアンナだったが、ルミは気にせず黙々と口に運ぶ。
シンプルなしっとりタイプのガトーショコラは、良い意味でイメージ通りの味。
ちょっと香るブランデー香は大人向けのお店のためか。
底に敷き詰められたナッツの層が、香ばしさと食感をプラスして口飽きを感じさせない。
「おいしい~! ほら水月、あーん♪」
甘酸っぱいベリータルトから始めたステラは、ひと口食べるなり目を輝かせて隣の水月へフォークを運ぶ。
「ん……♪ ステラもほら。こっちも美味しいよー?」
水月は差し出されたタルトをパクリと食べてほほ笑み、お返しにと自分のチョコレートケーキを同じように差し出す。
ふわふわのチョコスポンジとホイップの間に挟まれたオレンジの層は、ドライオレンジだろうか。
甘さの中に漂う爽やかな柑橘の香りが食欲をそそる。
「なるほど、シェアすればメニュー制覇も夢じゃないね♪」
2人の様子を前に、イルムがぽんと手を叩く。
いやその実、はじめからシェアするつもりで他の人が選んでいないケーキをさりげなく選んでいたのだが――実際に見せつけられたというのはとっかかりとして重要だ。
「ということで、どうかなアンナ君? あーん」
「わ、私かっ?」
ニコニコと向かいに座るイルムが差し出したカシスのムースケーキを、アンナはぎょっとして見つめる。
しばらく迷っていた様子だったが、やがて意を決して口を開いた――ところで、隣から割り込んだルミが、ぱくりと食べてしまった。
「ん~! おいしいっ!」
「あ、ああ……それは良かった」
食い意地の張った友人に、思わず苦笑するアンナ。
ほっとしたような、残念なような、何とも言えない気持ちに小さく息をつく。
「焦らなくてもみんなに食べてもらおうと思っていたよ。ということで、今度こそアンナ君?」
「えっ……あ、ああ……うん、おいしい」
改めて差し出されたイルムのフォーク。
今度は観念して初めからパクリと食べると、ほんのり苦酸っぱい大人の味に素直な舌鼓を打つ。
「そう言えば茜ちゃん、フレッド村の料理対決に出たんだよね? いいなぁ~、ルミちゃんも行きたかったなぁ~」
「あははは、負けちゃったんだけどね」
ルミの「行きたかった」は「食べたかった」と変換していいだろう。
茜はショートケーキの苺をかじりながら、天井から下がったチューリップランプを見上げて想いを馳せる。
「自信はあったんだけど、料理好きとプロとの違いを見せつけられたかなぁ……」
「茜ちゃんはプロを目指してるの?」
「どうなんだろう。最近、自分でも将来のことがよくわかんないんです」
ステラの質問に、茜はちょっと言い淀みながら笑った。
「将来と言えば、将来を誓い合ったふたりのなれそめとかボクは興味があるよ!」
「あっ、それは私も! その……なんというか、いつかの参考に」
ふいにイルムが話題を切り出すと、茜も表情を明るくして乗りかかる。
ステラは一瞬「えっ!?」と驚いて水月を見たが、彼が無言で頷き返すと、頬を染めながら姿勢を正した。
「その、恥ずかしながら私の勘違いがきっかけだったんだよね。夜遅くまで話し込んでて、それで眠くなった水月君を私の部屋に連れてったんだけど――」
「わっ、大胆~!?」
ルミが両頬を手で覆って色めく。
彼女だけでなく他の女子たちもわっと驚いてみせたので、ステラは慌てて身を乗り出した。
「だから勘違いしてたのっ! 水月君のこと女の子だと思ってて……」
「ああ……水月さん、綺麗だもんね」
茜がどこか納得したように水月を見ると、彼は何も言わず、ただにっこりと笑顔を返した。
「それでそれで、いつ気づいたの?」
「その……お風呂で」
「ああ……」
迫るルミに、ステラは耳を赤く染めながら、うつむき気味に答えた。
なんという交通事故。
流石に同情というか、女の子としては茶化したら申し訳なさが勝る。
「あっ、すみませーん! タルトタタンとレモンケーキとレーズンビスケットケーキください!」
仕切り直しにお代わりを頼んで、その間、あたたかい飲み物で一息。
ステラも喉を潤すと、ぽつぽつと、落穂を拾うように話を続けた。
「私の大失敗ではあったんだけど、それをきっかけに距離は縮まったっていうか、なんでもさらけ出せたっていうか……そのうち、お互いの弱いところを補い合えるかもって感じたんだ」
そう、はじめの気持ちを慈しむように語る。
「そうやって結ばれて……そうそう水月にね、彼のものってことで首輪つけてもらったんだ♪」
「えっ?」
ニコニコと嬉しそうに首輪を撫でるステラに、ルミはキョトンと目を丸くして、それから眉間を押さえて空いた手で「タンマ」をコールする。
「えーっと、途中まですごい、良い話だなぁって聞いてたんだけど、急に分かんなくなった。なんだって?」
「アッハッハ! ルミ君、愛の表現方法は人それぞれさ」
「首輪だけじゃないよ! 指輪貰ったり、一緒の時間を過ごしたり、家族で遊びにいったり……それでようやく。思えば、遠いところまできたよね」
そう言って左手の指輪をなぞったステラの手を、水月がそっと握った。
「僕はステラのことを支えていきたいし、そうすることで逆に支えられてもいる。だからご両親に認めてもらったことも嬉しいし、一層、大事にしたいと思ってるよ」
「水月……」
見つめ合い、良い雰囲気の2人に自分の方が熱くなってしまって、茜は照れを隠すようにとろっとしたフロマージュをつつく。
「でも、やっぱそういうの素敵。羨ましいなぁ……」
「そういう茜君は、良いお相手はいないのかい?」
「ブッ! わ、私ですか? あ、あはは、そっちはアテがないというか、出会いが全く……」
サラリと話を振ったイルムに、茜は苦い表情でプルプルと首を振った。
「そういうイルムさんはどうなんですか?」
「ボクかい? ボクは魅力的な子なら大歓迎! 最高の想いで愛するよ!」
イルムは胸を押さえながら感極まった様子で語り上げる。
それからその熱い視線をふと、アンナに向けた。
「アンナ君はどうだい? あれから好みのタイプに変化はあったかな」
「そ、そこで私に振るのか」
「アハハ。なんだか口数が少なかったからね」
「アンナさんの好みのタイプ? 気になりますっ!」
茜が生き生きとした目で身を乗り出して、アンナは思わず引き気味に距離を取る。
「どちらかに寄りそうわけじゃなく、対等に過ごせる相手……その考えは変わっていないと思う」
「ああー、アンナさんは頼られそうですもんね」
「ああ、ベッタリはダメだな。恋愛感情よりも保護者的な気持ちが先行してしまう」
水月の言葉にアンナが頷く。
「フフッ。つまり、アンナ君も頼るときは頼りたいんだね」
「そ、それは……誰しも、そういうものだろう?」
そうしてイルムの鋭い突っ込みに、どこかきまりが悪そうに、でも挑戦的に言葉を返した。
「好きなタイプかぁ……私は眼鏡の似合う人っていいなぁって思う時が。真面目っぽい人がたまに気を緩めたところとか、逆に真剣な時とか、そのギャップが――」
「なーんか、やけに具体的じゃない?」
「えっ!? そ、そんなことないと思うけど……あー、もう、ギ、ギブアップ! そういうルミはどうなの!?」
「ルミちゃん? そーだなぁ……自信に満ちてて、背中が広くって、普段は別に放っててくれていいんだけど迷った時には背中を押してくれて、あと素直だからこその勘違いとかちょっと可愛くって――」
「そっちもやけに具体的じゃない? てか、私より全然」
「えっ!? そ、そうかなぁ?」
言われてドキリとして、ルミは顔を赤らめながらお茶を啜る。
ついさっきお代わりを貰ったばかりのそれは思ったより熱かったようで、「あちっ」と舌を出して顔をしかめた。
「ふー、ふー……ところでそろそろ聖輝節本番だけど、みんな予定は? あっ、葛音ご夫妻は言わずもがなだと思うけど」
「わー! ご夫妻って言われるとなんかむず痒いねっ。嬉しいけど!」
身もだえするステラにほっこりしつつ、イルムがうーんと小さく唸る。
「聖輝節はボクのお店も一年で唯一忙しい時期でね、残念なことに色めく予定はないのさ」
するとアンナが、ああ、と思い出したようにイルムを見た。
「雑貨屋だものな。プレゼントで引く手あまたか」
「そういうこと。だけど仕入れて箱詰めしてラッピングして、まるでサンタになった気分だよ! お客さんが笑顔になってくれるなら、それ以上の対価は野暮ってものさ」
それから一拍間を置いて、イルムはくるりと女性陣を見渡す。
「でも、誘ってもらえるなら是が非でも時間は空けるよっ。断るのはボクの信条に反するからね♪」
そうは言っても、無理強いみたいになるのもまた心情に反する。
程よく宣伝をしたところでイルムは従業員を呼ぶと、お代わりの皿をお願いした。
「でも、クリスマスデートは憧れるなぁ……ルミやアンナさんは分かるかな? イルミネーション」
「もちろん。でも、こっちでもあるよね?」
「魔導式のがあるけど、私の住んでたとこだと夜の大通りを飾る光のトンネルみたいなのがあるの。そこをカップルで腕を組んで歩くのって、素敵だなあって。はぁ、彼氏欲しいなぁ」
「も~、茜ちゃん幸せ逃げるよ? あっ、シューモンブランください!」
「まだ食べるの!? みんなの倍は食べてるよね?」
「え~、だって市場偵察だもん。たっぷり舌にインプットしてかないと」
そういえば名目上はそうだった。
ルミの言葉にみんな目的を思い出したが、とはいえ、おおむねひとしきりメニューのお試しできただろうか。
ステラが背もたれに身体を預けながらさわさわとお腹を撫でた。
「私、けっこうお腹いっぱいになってきたよ~」
「僕も。あのタルトタタンっていうの面白いね。焼くのにコツがいりそうだけど」
「意外とそんなにでもないですよ。実の詰まったしっかりした果物を選ぶのと、入れる量にさえ気をつければあんまり失敗はないと思います」
「そうなんだ。じゃあ、さっそく帰ったら試してみようかな。よかったらレシピとかあると嬉しいけれど」
「あっ、じゃあ帰ったら探してみますね。あったような……なかったような……」
茜と楽しそうに話している旦那の腕に、横からステラが腕を絡める。
それを見下ろして、水月は苦笑しながら彼女の頭を撫でた。
「さて。お腹は膨れて来たけど、口直しがてらそろそろジェラートを頂こうと思うんだけど」
だいぶお腹も満足してきて、イルムがジェラートメニューをテーブルに勧める。
「そうだな。少しクリームを食べ過ぎたから……サッパリしたものが食べたいな」
「あっ、それならこの『シシ』がおいしいと思いますよ。レモンみたいな果物なんですけど。私もちゃんと食べてみたいな」
覗き込みながら、フレーバーのひとつを指でなぞる茜。
「ステラ、冬だしお腹壊すと悪いからほどほどにね」
「う~、心配してくれるのは嬉しいけど、子ども扱いはなし~!」
ステラはプリプリ怒ってみせたが、すぐに笑顔に戻ってどれにしようがあれこれと悩む。
決められなかったら、そのうち1つを頼んであげよう。
水月はそう思いながら、彼女の選択を待った。
「ルミ君はどうする?」
「んっ?」
もくもくと、まだひとケーキを頬張っていたルミは名前を呼ばれてキョトンとイルムを見つめる。
ごくんと口の中のものを飲み込んで、唇の端についたクリームを指で舐めとって一息。
そういえば他にも何かを忘れているような……思い返して、ポンと手を打った。
「そうだ、クリスマスケーキ! みんな『オフィスの森』に買いに来てねっ!」
「えっ、このタイミング!?」
「だって、いま思い出したんだも~ん」
驚く茜にルミはぺろっと舌を出してみせる。
1年で1番、華やかな季節はすぐ目の前に。
今年はどんな奇跡が待っているのだろうか。
それは鐘の音だけが知っている……かもしれない。
従業員に渡されたメニューを見ただけで、ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)の瞳が生き生きと輝く。
シックな給仕服に身を包んだ従業員はクスリとほほ笑むと、お決まりのころお伺いします、と会釈をして離れていった。
「ねぇねぇ水月、いっぱいあるよ! どれにしよっか?」
「選ぶのは悩んじゃうし、とりあえず全部食べちゃうくらいで良いんじゃないかな?」
同じくらいワクワクとしている葛音 ステラ(ka5122)へと、葛音 水月(ka1895)は優しく言い添える。
ステラは確かに、と頷くとメニューの上から順に人差し指をはわせる。
カフェ「インヴェルノ」のケーキビュッフェはオーダー式だ。
幅広い年齢層に愛されている店とはいえ、基本は淑女御用達店。
お客に都度立ち歩かせるようなことはしない。
「注文は三品ずつか。小ぶりなのだろうが、流石に全部を試せる気はしないな」
「でも、できるだけ頑張りたいですよね。せっかくですし。う~ん、最初は王道のショートケーキかしら……あっ、これ今年のおすすめなんだ。絶対美味しいのだわ」
メニューを吟味するアンナ=リーナ・エスト(kz0108)に、天王寺茜(ka4080)もメニューとにらめっこ。
何から食べてもいいのだが、何から食べるのかは意外と大事なことだ。
「それにしても、ホントに良いんですか? いっこ上のメニューにしてもらっちゃって」
茜がメニューの端から視線を覗かせると、それに気づいたイルム=ローレ・エーレ(ka5113)がふわりと笑みをこぼす。
「これくらいは年長者に見栄を張らせてもらえると嬉しいな。それに氷菓も気になっていたところだしね♪」
「それはもう、太鼓判おしちゃいます」
お店に来てからビュッフェメニューにワンランク上のコースがあることを知ったのだが、イルムがせっかくだからそれにしようと提案をしたのだ。
差額は自分で出すから、と言い添えて。
追加のメニューは当店の看板商品である季節のジェラート。
ここに向かうまでの道中、茜の勧めもあって気になっていたものだ。
断る理由はなく、お言葉に甘える形となった。
やがて注文を通すと、まずは温かい飲み物から。
続いてメインのケーキプレートが運ばれてくる。
白いテーブルクロスの上が一気に色で華やいで、思わず気分も高揚する。
「ん~~~~最っ高!!」
うるさいくらいの第一声は、当然と言っていいのか、ルミのものだった。
いただきますも早々に、フォーク片手に目の前のガトーショコラに舌も心も奪われる。
「毎日ケーキ尽くしなのによく食べられるな……」
「他人のケーキは別腹別腹!」
呆れた様子のアンナだったが、ルミは気にせず黙々と口に運ぶ。
シンプルなしっとりタイプのガトーショコラは、良い意味でイメージ通りの味。
ちょっと香るブランデー香は大人向けのお店のためか。
底に敷き詰められたナッツの層が、香ばしさと食感をプラスして口飽きを感じさせない。
「おいしい~! ほら水月、あーん♪」
甘酸っぱいベリータルトから始めたステラは、ひと口食べるなり目を輝かせて隣の水月へフォークを運ぶ。
「ん……♪ ステラもほら。こっちも美味しいよー?」
水月は差し出されたタルトをパクリと食べてほほ笑み、お返しにと自分のチョコレートケーキを同じように差し出す。
ふわふわのチョコスポンジとホイップの間に挟まれたオレンジの層は、ドライオレンジだろうか。
甘さの中に漂う爽やかな柑橘の香りが食欲をそそる。
「なるほど、シェアすればメニュー制覇も夢じゃないね♪」
2人の様子を前に、イルムがぽんと手を叩く。
いやその実、はじめからシェアするつもりで他の人が選んでいないケーキをさりげなく選んでいたのだが――実際に見せつけられたというのはとっかかりとして重要だ。
「ということで、どうかなアンナ君? あーん」
「わ、私かっ?」
ニコニコと向かいに座るイルムが差し出したカシスのムースケーキを、アンナはぎょっとして見つめる。
しばらく迷っていた様子だったが、やがて意を決して口を開いた――ところで、隣から割り込んだルミが、ぱくりと食べてしまった。
「ん~! おいしいっ!」
「あ、ああ……それは良かった」
食い意地の張った友人に、思わず苦笑するアンナ。
ほっとしたような、残念なような、何とも言えない気持ちに小さく息をつく。
「焦らなくてもみんなに食べてもらおうと思っていたよ。ということで、今度こそアンナ君?」
「えっ……あ、ああ……うん、おいしい」
改めて差し出されたイルムのフォーク。
今度は観念して初めからパクリと食べると、ほんのり苦酸っぱい大人の味に素直な舌鼓を打つ。
「そう言えば茜ちゃん、フレッド村の料理対決に出たんだよね? いいなぁ~、ルミちゃんも行きたかったなぁ~」
「あははは、負けちゃったんだけどね」
ルミの「行きたかった」は「食べたかった」と変換していいだろう。
茜はショートケーキの苺をかじりながら、天井から下がったチューリップランプを見上げて想いを馳せる。
「自信はあったんだけど、料理好きとプロとの違いを見せつけられたかなぁ……」
「茜ちゃんはプロを目指してるの?」
「どうなんだろう。最近、自分でも将来のことがよくわかんないんです」
ステラの質問に、茜はちょっと言い淀みながら笑った。
「将来と言えば、将来を誓い合ったふたりのなれそめとかボクは興味があるよ!」
「あっ、それは私も! その……なんというか、いつかの参考に」
ふいにイルムが話題を切り出すと、茜も表情を明るくして乗りかかる。
ステラは一瞬「えっ!?」と驚いて水月を見たが、彼が無言で頷き返すと、頬を染めながら姿勢を正した。
「その、恥ずかしながら私の勘違いがきっかけだったんだよね。夜遅くまで話し込んでて、それで眠くなった水月君を私の部屋に連れてったんだけど――」
「わっ、大胆~!?」
ルミが両頬を手で覆って色めく。
彼女だけでなく他の女子たちもわっと驚いてみせたので、ステラは慌てて身を乗り出した。
「だから勘違いしてたのっ! 水月君のこと女の子だと思ってて……」
「ああ……水月さん、綺麗だもんね」
茜がどこか納得したように水月を見ると、彼は何も言わず、ただにっこりと笑顔を返した。
「それでそれで、いつ気づいたの?」
「その……お風呂で」
「ああ……」
迫るルミに、ステラは耳を赤く染めながら、うつむき気味に答えた。
なんという交通事故。
流石に同情というか、女の子としては茶化したら申し訳なさが勝る。
「あっ、すみませーん! タルトタタンとレモンケーキとレーズンビスケットケーキください!」
仕切り直しにお代わりを頼んで、その間、あたたかい飲み物で一息。
ステラも喉を潤すと、ぽつぽつと、落穂を拾うように話を続けた。
「私の大失敗ではあったんだけど、それをきっかけに距離は縮まったっていうか、なんでもさらけ出せたっていうか……そのうち、お互いの弱いところを補い合えるかもって感じたんだ」
そう、はじめの気持ちを慈しむように語る。
「そうやって結ばれて……そうそう水月にね、彼のものってことで首輪つけてもらったんだ♪」
「えっ?」
ニコニコと嬉しそうに首輪を撫でるステラに、ルミはキョトンと目を丸くして、それから眉間を押さえて空いた手で「タンマ」をコールする。
「えーっと、途中まですごい、良い話だなぁって聞いてたんだけど、急に分かんなくなった。なんだって?」
「アッハッハ! ルミ君、愛の表現方法は人それぞれさ」
「首輪だけじゃないよ! 指輪貰ったり、一緒の時間を過ごしたり、家族で遊びにいったり……それでようやく。思えば、遠いところまできたよね」
そう言って左手の指輪をなぞったステラの手を、水月がそっと握った。
「僕はステラのことを支えていきたいし、そうすることで逆に支えられてもいる。だからご両親に認めてもらったことも嬉しいし、一層、大事にしたいと思ってるよ」
「水月……」
見つめ合い、良い雰囲気の2人に自分の方が熱くなってしまって、茜は照れを隠すようにとろっとしたフロマージュをつつく。
「でも、やっぱそういうの素敵。羨ましいなぁ……」
「そういう茜君は、良いお相手はいないのかい?」
「ブッ! わ、私ですか? あ、あはは、そっちはアテがないというか、出会いが全く……」
サラリと話を振ったイルムに、茜は苦い表情でプルプルと首を振った。
「そういうイルムさんはどうなんですか?」
「ボクかい? ボクは魅力的な子なら大歓迎! 最高の想いで愛するよ!」
イルムは胸を押さえながら感極まった様子で語り上げる。
それからその熱い視線をふと、アンナに向けた。
「アンナ君はどうだい? あれから好みのタイプに変化はあったかな」
「そ、そこで私に振るのか」
「アハハ。なんだか口数が少なかったからね」
「アンナさんの好みのタイプ? 気になりますっ!」
茜が生き生きとした目で身を乗り出して、アンナは思わず引き気味に距離を取る。
「どちらかに寄りそうわけじゃなく、対等に過ごせる相手……その考えは変わっていないと思う」
「ああー、アンナさんは頼られそうですもんね」
「ああ、ベッタリはダメだな。恋愛感情よりも保護者的な気持ちが先行してしまう」
水月の言葉にアンナが頷く。
「フフッ。つまり、アンナ君も頼るときは頼りたいんだね」
「そ、それは……誰しも、そういうものだろう?」
そうしてイルムの鋭い突っ込みに、どこかきまりが悪そうに、でも挑戦的に言葉を返した。
「好きなタイプかぁ……私は眼鏡の似合う人っていいなぁって思う時が。真面目っぽい人がたまに気を緩めたところとか、逆に真剣な時とか、そのギャップが――」
「なーんか、やけに具体的じゃない?」
「えっ!? そ、そんなことないと思うけど……あー、もう、ギ、ギブアップ! そういうルミはどうなの!?」
「ルミちゃん? そーだなぁ……自信に満ちてて、背中が広くって、普段は別に放っててくれていいんだけど迷った時には背中を押してくれて、あと素直だからこその勘違いとかちょっと可愛くって――」
「そっちもやけに具体的じゃない? てか、私より全然」
「えっ!? そ、そうかなぁ?」
言われてドキリとして、ルミは顔を赤らめながらお茶を啜る。
ついさっきお代わりを貰ったばかりのそれは思ったより熱かったようで、「あちっ」と舌を出して顔をしかめた。
「ふー、ふー……ところでそろそろ聖輝節本番だけど、みんな予定は? あっ、葛音ご夫妻は言わずもがなだと思うけど」
「わー! ご夫妻って言われるとなんかむず痒いねっ。嬉しいけど!」
身もだえするステラにほっこりしつつ、イルムがうーんと小さく唸る。
「聖輝節はボクのお店も一年で唯一忙しい時期でね、残念なことに色めく予定はないのさ」
するとアンナが、ああ、と思い出したようにイルムを見た。
「雑貨屋だものな。プレゼントで引く手あまたか」
「そういうこと。だけど仕入れて箱詰めしてラッピングして、まるでサンタになった気分だよ! お客さんが笑顔になってくれるなら、それ以上の対価は野暮ってものさ」
それから一拍間を置いて、イルムはくるりと女性陣を見渡す。
「でも、誘ってもらえるなら是が非でも時間は空けるよっ。断るのはボクの信条に反するからね♪」
そうは言っても、無理強いみたいになるのもまた心情に反する。
程よく宣伝をしたところでイルムは従業員を呼ぶと、お代わりの皿をお願いした。
「でも、クリスマスデートは憧れるなぁ……ルミやアンナさんは分かるかな? イルミネーション」
「もちろん。でも、こっちでもあるよね?」
「魔導式のがあるけど、私の住んでたとこだと夜の大通りを飾る光のトンネルみたいなのがあるの。そこをカップルで腕を組んで歩くのって、素敵だなあって。はぁ、彼氏欲しいなぁ」
「も~、茜ちゃん幸せ逃げるよ? あっ、シューモンブランください!」
「まだ食べるの!? みんなの倍は食べてるよね?」
「え~、だって市場偵察だもん。たっぷり舌にインプットしてかないと」
そういえば名目上はそうだった。
ルミの言葉にみんな目的を思い出したが、とはいえ、おおむねひとしきりメニューのお試しできただろうか。
ステラが背もたれに身体を預けながらさわさわとお腹を撫でた。
「私、けっこうお腹いっぱいになってきたよ~」
「僕も。あのタルトタタンっていうの面白いね。焼くのにコツがいりそうだけど」
「意外とそんなにでもないですよ。実の詰まったしっかりした果物を選ぶのと、入れる量にさえ気をつければあんまり失敗はないと思います」
「そうなんだ。じゃあ、さっそく帰ったら試してみようかな。よかったらレシピとかあると嬉しいけれど」
「あっ、じゃあ帰ったら探してみますね。あったような……なかったような……」
茜と楽しそうに話している旦那の腕に、横からステラが腕を絡める。
それを見下ろして、水月は苦笑しながら彼女の頭を撫でた。
「さて。お腹は膨れて来たけど、口直しがてらそろそろジェラートを頂こうと思うんだけど」
だいぶお腹も満足してきて、イルムがジェラートメニューをテーブルに勧める。
「そうだな。少しクリームを食べ過ぎたから……サッパリしたものが食べたいな」
「あっ、それならこの『シシ』がおいしいと思いますよ。レモンみたいな果物なんですけど。私もちゃんと食べてみたいな」
覗き込みながら、フレーバーのひとつを指でなぞる茜。
「ステラ、冬だしお腹壊すと悪いからほどほどにね」
「う~、心配してくれるのは嬉しいけど、子ども扱いはなし~!」
ステラはプリプリ怒ってみせたが、すぐに笑顔に戻ってどれにしようがあれこれと悩む。
決められなかったら、そのうち1つを頼んであげよう。
水月はそう思いながら、彼女の選択を待った。
「ルミ君はどうする?」
「んっ?」
もくもくと、まだひとケーキを頬張っていたルミは名前を呼ばれてキョトンとイルムを見つめる。
ごくんと口の中のものを飲み込んで、唇の端についたクリームを指で舐めとって一息。
そういえば他にも何かを忘れているような……思い返して、ポンと手を打った。
「そうだ、クリスマスケーキ! みんな『オフィスの森』に買いに来てねっ!」
「えっ、このタイミング!?」
「だって、いま思い出したんだも~ん」
驚く茜にルミはぺろっと舌を出してみせる。
1年で1番、華やかな季節はすぐ目の前に。
今年はどんな奇跡が待っているのだろうか。
それは鐘の音だけが知っている……かもしれない。
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ケーキビュッフェ卓(雑談) 天王寺茜(ka4080) 人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト) |
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