ゲスト
(ka0000)
【CF】HOTな時間を提供します
マスター:奈華里

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2018/12/20 12:00
- 完成日
- 2019/01/04 00:28
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
リゼリオでのケーキバトルロワイアルの噂を聞いて、彼女達は動き出す。
ここはとある村のとある倉庫。今年彼女達の倉庫に新種のキノコが見つかったのはまだ記憶に新しい。そのキノコは新種と言ってもクリムゾンウエストでの話でリアルブルーには存在したキノコらしかった。だから、危険性は低く実際に食べた事のあるハンターにお墨付きを貰っておいたから普通に販売しても構わないと彼女達は判断し、早速それを売り出す算段を模索していたのだ。
「ケーキが飛ぶように売れているみたいだし、きっと甘いものが苦手な人に私達のキノコ料理は刺さる筈よ。それにこの色…ぴったりだと思わない?」
出来立てのスープを前にしてシモンが言う。そのスープには白いキノコが浮かび、ベースの赤を引き立てていて、その色合いはまさに聖輝節に相応しい。刻んだパセリを散らせばさらにらしさが増す事だろう。
「でも、こっちは? 色合い的にはちょとパッとしないけど」
もう一つのシチューを掬って、今度はリコットが言葉する。
「でもでも、白に薄茶でしょ。トナカイとか雪とかにかければ」
もったりとしたルーに浮かぶのは薄茶のキノコ。確かに見ようによってはそう言えない事もない。
「だったらこうしましょう。メインはこっちのボルシチで、シチューはお食事用にくり抜いたパンに入れて提供するのよ。そうすればインパクトが薄くてもお腹は満足。絶対いけると思うのよね」
見た目がダメなら満足度でカバー。もうその辺は慣れたものだ。
「ああ、確かに。みんな必死で売り込んでいるだろうし、お腹も空いてるよねっきっと」
ぱんっと胸の前で手を合わせてマロ―ナが言う。
「そうね…人が集まるチャンスは早々ないもの。そんなチャンス逃す手はないわね」
リコットもそれでやる気になったのか、ぐっと拳を作ってみせる。
「ケーキもいいけど、お食事も大事だもの。寒空の下なら尚更よ」
今までの実績から味には割と自信がある。
それにキノコ発見のその後に彼女達は農作業の合間を縫って、このキノコたちの美味しい食べ方を日々考え試作してきたのだ。ここでその成果を披露して、一気に村の知名度を爆上げしたい。
「そうと決まればやるわよっ。もうバトロワは始まっているみたいだし急がないとっ」
食材の準備に調理場所の手配。パンを使うからパンの手配も必要だろう。
三人がそれぞれ役割を決めて、出店に備える。
そうして、準備が整い出店が決まったのはバトロワ終了の数日前だった。
「結構急いだものの、これが限界だったわね」
どこも早いうちから場所だの店だのを抑えられていた為空きがなく、店を借り切る事は出来なかった。
そこで彼女達は例年の郷祭の時のように簡易テントを用意して、そこで炊き出しをするような形で調理場所を確保し、販売する事にしたのだ。
「リゼリオのパン屋さんからブールを卸して貰える様には取り付けたけど、数がそこまで多くないんだよね」
この時期は聖輝節用の保存がきくパンの生産も高まる。
手間のかかる作業が多いからか、突然の大量発注は無理があったようだ。
「この数だと…シチュー分くらいしかないわよ。ボルシチはどうしようか? 目玉商品を失くす訳にはいかないでしょ」
「うーん…」
折角考えた紅白色の特別なスープだ。どうしても提供したい。シモンが静かに考える。
「ねえ、ちょっと見て見てこれ。凄く可愛くない?」
そんな彼女にマロ―ナが差し出したのは食器のカタログだった。
そこには木製の食器が沢山並んでおり、ところ所にワンポイントの彫刻が彫られている。
「これよっ、これ! マロ―ナでかしたわっ!」
突如閃いた妙案にシモンが興奮した面持ちで立ち上がる。
「えっと…何かな?」
「だから、これよ。特別な日だもの、木製のスープ皿なら熱さも多少軽減できるし何より加工できるでしょ。だからね、お皿ごと販売するのよ。名前を彫刻、あるいはカワイイ焼き印を選んで貰ってその場で加工して販売すれば思い出も出来て一石二鳥でしょうよ」
我ながら名案であるとシモンが胸を張って言う。
「でも、私達彫刻なんて…」
「そこはハンターに任せるの。どうせ三人じゃあ手が足りないもの。器用なハンターさんに任せて、沢山売れれば一石二鳥どころのの話じゃないわよ」
シモンが商売人な顔になりつつ断言する。
「私も可愛いの欲しいし…いいね、やろう」
「じゃあ、この木製スープカップ注文するね。たくさんあるといいけど」
リコットの言葉を受けて、マロ―ナが再び動き出す。
今年は郷祭に出店しなかった分、こちらにかけるお金はあるようで…。
彼女達はこの冬に力の全てを出し切ろうと誓うのであった。
ここはとある村のとある倉庫。今年彼女達の倉庫に新種のキノコが見つかったのはまだ記憶に新しい。そのキノコは新種と言ってもクリムゾンウエストでの話でリアルブルーには存在したキノコらしかった。だから、危険性は低く実際に食べた事のあるハンターにお墨付きを貰っておいたから普通に販売しても構わないと彼女達は判断し、早速それを売り出す算段を模索していたのだ。
「ケーキが飛ぶように売れているみたいだし、きっと甘いものが苦手な人に私達のキノコ料理は刺さる筈よ。それにこの色…ぴったりだと思わない?」
出来立てのスープを前にしてシモンが言う。そのスープには白いキノコが浮かび、ベースの赤を引き立てていて、その色合いはまさに聖輝節に相応しい。刻んだパセリを散らせばさらにらしさが増す事だろう。
「でも、こっちは? 色合い的にはちょとパッとしないけど」
もう一つのシチューを掬って、今度はリコットが言葉する。
「でもでも、白に薄茶でしょ。トナカイとか雪とかにかければ」
もったりとしたルーに浮かぶのは薄茶のキノコ。確かに見ようによってはそう言えない事もない。
「だったらこうしましょう。メインはこっちのボルシチで、シチューはお食事用にくり抜いたパンに入れて提供するのよ。そうすればインパクトが薄くてもお腹は満足。絶対いけると思うのよね」
見た目がダメなら満足度でカバー。もうその辺は慣れたものだ。
「ああ、確かに。みんな必死で売り込んでいるだろうし、お腹も空いてるよねっきっと」
ぱんっと胸の前で手を合わせてマロ―ナが言う。
「そうね…人が集まるチャンスは早々ないもの。そんなチャンス逃す手はないわね」
リコットもそれでやる気になったのか、ぐっと拳を作ってみせる。
「ケーキもいいけど、お食事も大事だもの。寒空の下なら尚更よ」
今までの実績から味には割と自信がある。
それにキノコ発見のその後に彼女達は農作業の合間を縫って、このキノコたちの美味しい食べ方を日々考え試作してきたのだ。ここでその成果を披露して、一気に村の知名度を爆上げしたい。
「そうと決まればやるわよっ。もうバトロワは始まっているみたいだし急がないとっ」
食材の準備に調理場所の手配。パンを使うからパンの手配も必要だろう。
三人がそれぞれ役割を決めて、出店に備える。
そうして、準備が整い出店が決まったのはバトロワ終了の数日前だった。
「結構急いだものの、これが限界だったわね」
どこも早いうちから場所だの店だのを抑えられていた為空きがなく、店を借り切る事は出来なかった。
そこで彼女達は例年の郷祭の時のように簡易テントを用意して、そこで炊き出しをするような形で調理場所を確保し、販売する事にしたのだ。
「リゼリオのパン屋さんからブールを卸して貰える様には取り付けたけど、数がそこまで多くないんだよね」
この時期は聖輝節用の保存がきくパンの生産も高まる。
手間のかかる作業が多いからか、突然の大量発注は無理があったようだ。
「この数だと…シチュー分くらいしかないわよ。ボルシチはどうしようか? 目玉商品を失くす訳にはいかないでしょ」
「うーん…」
折角考えた紅白色の特別なスープだ。どうしても提供したい。シモンが静かに考える。
「ねえ、ちょっと見て見てこれ。凄く可愛くない?」
そんな彼女にマロ―ナが差し出したのは食器のカタログだった。
そこには木製の食器が沢山並んでおり、ところ所にワンポイントの彫刻が彫られている。
「これよっ、これ! マロ―ナでかしたわっ!」
突如閃いた妙案にシモンが興奮した面持ちで立ち上がる。
「えっと…何かな?」
「だから、これよ。特別な日だもの、木製のスープ皿なら熱さも多少軽減できるし何より加工できるでしょ。だからね、お皿ごと販売するのよ。名前を彫刻、あるいはカワイイ焼き印を選んで貰ってその場で加工して販売すれば思い出も出来て一石二鳥でしょうよ」
我ながら名案であるとシモンが胸を張って言う。
「でも、私達彫刻なんて…」
「そこはハンターに任せるの。どうせ三人じゃあ手が足りないもの。器用なハンターさんに任せて、沢山売れれば一石二鳥どころのの話じゃないわよ」
シモンが商売人な顔になりつつ断言する。
「私も可愛いの欲しいし…いいね、やろう」
「じゃあ、この木製スープカップ注文するね。たくさんあるといいけど」
リコットの言葉を受けて、マロ―ナが再び動き出す。
今年は郷祭に出店しなかった分、こちらにかけるお金はあるようで…。
彼女達はこの冬に力の全てを出し切ろうと誓うのであった。
リプレイ本文
●準備
「ハ、ハナさん…?」
テントを張ってスープの調理をし始めた村娘達。
そんな三人の元にやって来た星野 ハナ(ka5852)は早速鍋へと向かい、匂いを嗅ぐ。
「あの、何か変でしょうか?」
その行動に不安を感じてマロ―ナが質問。が、彼女は答えない。
「あの、ひょっとして…このスープに興味が?」
そこでリコットが何かを感じ取って、そう尋ねるとコクコク頷くハナ。今までも何度か彼女達を手伝っている彼女は料理好き。それなりに腕もいいし、持っている知識もレシピも豊富だ。だが、このなめこのシチューだけは、聞いただけでは味の想像が出来なかったようで…。
「このシチューがなめこのになるんですよね? 何味ですぅ?」
まだ作りかけというか、ぶっちゃけ鍋にはジャガイモしか入ってはいない。
しかし、準備された食材を見ただけでこちらがシチューだと判断する。
「先日は世話になったな。あのキノコで料理を作ったのか。どれ、私も試食していいかな?」
とそこへキノコの毒見…もとい、調査依頼に参加していたレイア・アローネ(ka4082)が到着。
彼女も鍋を覗き込む。
「フフフッ、なんかここまで期待されると嬉しいですね~」
マロ―ナが別の鍋でボルシチの準備をしつつ言う。
「あ、そっちがサンタのボルシチですね! そうそう、ボルシチといえば私初めて食べた時ぃ、ビーツがハムっぽく見えて…。でも食べたら野菜でぇ、子供心に騙されたぁ~って思ったんですよねぇ」
幼少の頃のエピソードを披露して、立ち昇るスープの香りに自然とハナの顏が綻ぶ。
「あの、こちらがスープ販売のお手伝いを依頼されたテントで間違いないでしょうか?」
とそこへ少し足を引きずりながらメイド服のフィロ(ka6966)が訪れて、
「そうですけど、貴方は…」
「申し遅れました。私はフィロ…シモン様、リコット様、マロ―ナ様。不手際でご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、本日は宜しくお願いします」
と丁寧なご挨拶。彼女はどうやら先の依頼で怪我をしたらしく、あちこちに包帯を巻いてはいるが、日常生活をするにおいてはそれ程支障なさそうだ。
「いえいえ、こちらこそ大変な時に有難う御座います」
傷をおしてまで依頼を受けてくれた事に感謝して、マロ―ナが彼女を椅子のある方に誘導する。
「あの、本当にお気になさらず…」
傷は深いとはいえ、彼女自体はオートマトンだ。見た目よりは頑丈に出来ている。
それからは各自販売開始までの僅かな間にやる事を分担。
パン屋へのブールの受け取りに、運ばれてきたカップの開封と数の確認。
使い捨てられるようなスプーンも必要だろう。
「まずは何から致しましょうか?」
椅子に座らされたまま、フィロが尋ねる。
「そうね。フィロさんには道具の確認をお願いします。ハナさんはパンの受け取り、レイアさんは設営の手伝いを」
時間は待ってくれない。
味見するにもスープの完成が不可欠という事で出来るまでの間にまず一仕事。
街はケーキバトル真っ只中であり、ところどころで各ケーキの販売が行われているようだ。
「今年は食べ比べとかできそうよねぇ」
売上が良ければ沢山味見してみるのも悪くない。今後の為にも食べておきたいとリコットが密かに思う。
そんな彼女の思いを悟ってマロ―ナとシモンはこっそり動き出していた。
●特別
準備が整う頃には、テントを見つけた街人達が何事かと店に好奇の目を向ける。
そんな中でひっそりと作業に没頭しているのはフィロだ。持参した特殊なペンを手に取って、見本用カップを作っているらしい。
「うーん、なかなか難しいものですが出来なくはありませんね」
ふぅと彫ったばかりの所に息をかけて、彫り上がったばかりの文字を見つめ呟く。
「それは?」
隣りではレイアもネーム彫りを試していたのだが、どうにも曲面に文字を彫るにはコツがいるらしい。
とはいえ、日曜大工も彫金もそこそこ出来るから彼女のそれも文字として認識できるから、商品として問題ないだろう。しかし、フィロのはそれを遥かに上回っているから見過ごせない。
「はい。これはカリグラフィーと言って、バースディカードなどにも使われる特殊な書き方をした文字になります。どうせ彫るなら少しでも気に入って頂きたくて…駄目でしょうか?」
彫刻刀とは違うペンの先には平刀のような形の金属板が取り付けられ、そこに皮で補強がされていてペン先を熱する事で焼き印同様表面を焦がしつつ、文字を書き込んでいく仕組みらしい。普通ならば特殊なペンとインクで紙に描くものであるが、今回は素材が木という事もあり、焦がしでの書き込みに挑戦しているようだ。
「凄いな…たまげたもんだ」
彼女の仕上がったそれを手に取り、レイアは感心する。
「こちらがローマンキャピタル。そしてこちらがハーフアンシェルとインシュラーになります」
「何だ、それ。何かの呪文か?」
全て字体の種類なのだが、聞き慣れない人間が聞いたらそう思ってしまうのも無理はない。
「何これ、凄く可愛いんですけどぉ」
そこへマロ―ナがやってきて、フィロの作品に大喜び。
「これ、絶対いけるよ。ねえ、そう思うでしょ、リコット~♪」
お洒落に仕上がったそれを見せて、村娘達が盛り上がる。
「評判いいみたいだな…こうなると私の出番はないかもしれん」
くすりと微笑しレイアが言う。
「そんな…レイア様の文字入れも卓越された技術が見えて素晴らしいと思います」
レイアの試作品をじっくりと見て、フィロもにこりと微笑む。
「うむむ…私はその手の技術はありませんが、こっちでは負けないですからねぇ」
二人の様子を見取り、運んできたばかりのブールをくり抜きながらハナが呟く。
そして、こっそり傍にあったベルの焼き印を手に取って…。
(かわいいものなら、私も判りますからねぇ~。絶対こっちにも入れておく方がいいのですよぉ)
じゅうっとパンの表面にベルの焼き印が押される。それでぐっと聖輝節の雰囲気が上がる事だろう。
たった少しの工夫で、普通の商品を特別に見せる事は可能なのだ。
「皆、出来たわよ~。販売前の腹ごしらえといきましょう」
シモンがそう言い、皆を呼び寄せる。
勿論まなかいとして出ているのは、販売前のボルシチとホワイトシチューだ。
「ひゃっほ~、待ってましたですよぉ」
お待ちかねの料理を前にハナが早速スプーンを手に取る。
「いただこう」
「いただきます」
二人もそれに続いて、それぞれに出された料理を口へと運ぶ。
昼と言えど、風が吹けば冷たさを感じるからこの温かな商品はもってこいだ。
「オーソドックスなホワイトシチューですが、この触感は今までになかったから面白いですねぇ」
パンをちぎりシチューにつけて味わいながらハナが率直な感想を漏らす。
「うん、あっさりしているからこれは飲みやすいな」
とこれはレイアだ。初めはどんなものかと焦ったヤマブシダケであるが、味の主張が少ない分何にでもよく合う。黒胡椒を多めに振ればピリリッとした刺激が入り大人な味に変貌する。
「ボルシチは大人に、シチューはお子様に人気が出そうですね」
静かに淡々と手と口を動かしながらフィロはそう分析する。
「そうね。大人をターゲットにするなら、隠し味に生姜でもいれてみようかしら?」
この時期の生姜は体を温めてくれる。スープだけでも充分であるが、そこに食材の力も加わればもっともっと美味しく、そして体に優しい一品に仕上げる事ができるだろう。
「ハナさん、調整…手伝って貰えますか?」
ギリギリまで味にはこだわりたい。
完成としていたが、追求できるならとことんが彼女達のモットーでもある。
「わかりました。どんとこいですよぉ」
もぐもぐ残りのパンを口に入れて、ハナが早速リコット共にボルシチの鍋に移動する。
「プロとはああいうものなのだな」
「勉強になります」
その様子にレイアとフィロが言う。
「私達も出来る事をやるだけよ。お二人さんも宜しくね」
シモンがリーダーらしく気合を入れて――いよいよ、開店。
すでに立ち昇る香りが評判を呼び、数名の人が開店の時を待ち並び始めていた。
●感謝
街角を彩るツリーに装飾、まだお昼でもその豪華さに道行く人々が足を止める。
そんな中で買い物に疲れた街人はランチを求めて、店を探すだろう。けれど、いつもと同じお店ではつまらない。
そんな人々の耳にこの言葉は魅力的に聞こえはしないだろうか。
「いらっしゃいいらっしゃーい! リアルブルーの珍しいキノコを使った聖輝節限定メニュー。お一つ、ものは試しに食べていかないか―?」
ネーム彫刻したカップを掲げて、レイアが周囲に呼び込みをかける。
「珍しいキノコだって?」
「どんなだろうねぇ…」
その言葉にぽつりぽつりと振り返る通行人達。興味はあってもまだ踏み出す勇気まではないようだ。
そこに透かさず、もう一つの隠し玉。
「ボルシチのカップには現在ネームサービス実施中だ。手間をかけたくなければ焼き印を入れて可愛くって手もある。ぜひ、見ていくだけでもどうだろうか」
「カップ? 焼き印?」
普通の販売ではない事を知って、今度は顔を見合わせるカップルや家族グループ。
そこで覗きに来てさえもらえればしめたものだ。フィロの彫ったあれを見たら、彼女の方が彼氏に記念に欲しいとねだるだろうし、子供はあのブールのシチューにワクワクするに違いない。試食でアピールも考えていたレイアであるが、この分だとそこまでしなくても人は集まってくれそうだ。
「よし、一つ買ってみるか」
子供にせがまれて、父親らしい男性がシチューを注文する。
そして、受け取った後こっそり押されたベルの焼き印を見つけて、子供はにこにこ。
たったこれだけであるが、それでも子供には嬉しいのだ。
「パパ、これすごくおいしいねー」
父親と一個を分け合って食べるのも、ここだけの特別な体験だと言える。
この食事が今年のいい思い出に変わったら、それはとても嬉しい事だ。
「この字体で…その、二人のイニシャルを入れて貰ってもいいですか?」
一方カップルはそう言って、一つのカップに二人の名を頼む者やそれぞれに入れて貰う者まで。終始イチャイチャムード全開。手にはどこかのケーキを下げているから、帰ったら帰ったでそちらを楽しむのかもしれない。
「あーあー、今日だけは店員として目を瞑るのですよぉ」
ハナが鍋の火の番をしつつ、追加の野菜を些か乱暴に切り刻みながらぼそりと呟く。
「あっははー…ハナさん、気持ちはわかるけど、手元気を付けて下さいねー」
その様子にリコットが色々察して、そう助言する。
「あの、うさぎのやつお願いします」
だが、そう言ってカップを差出す子供がくると途端にニコリ。
辛くてもその素振りは見せないのは立派だ。
「オッケーですよぉ。どこに押したらいいですかぁ?」
とスマイルゼロ円で熱さにも負けず、じゅうと押して喜ぶ子供の頭をなでなで。
焼き印は動物が人気らしかった。大人が今飲む為に買って、容器は子供にというパターンも多い。
「カップ付き、大成功だね」
マロ―ナがシモンに言う。
「そうね。でもまだまだこれからよ」
シモンはそう言うも人の流れは夜まで衰えず、その日は予定より早く店じまいするのだった。
「すみません。現在お名前ですと少しお時間を頂いていますが、それでもよろしいでしょうか?」
フィロが出来上がったのを渡しながら次のお客にそう断りを入れる。
彼女の文字入れサービスは思いの外好評だった。ただ彫るだけでなく、特殊な字体でおしゃれな感じが皆の心を掴んだらしい。始めは直接名前を聞いて作業していたのだが、それでは間に合わなくなり名前を書いて貰い、番号を配っての順番待ちとなっている。それでもやはり欲しいと言う人は後を絶たず、そんな人にはちゃっかり更なる売込みをかける。
「もしよろしければお待ち頂く間、トナカイへの贈り物はいかがでしょうか?」
ともう一つも食べてみないかとさりげにアピール。
百発百中とはいかないまでも半分くらいは興味を示して、さらにその半分くらいは購入に繋がっている。
「あわわ、追加のブール用意いた方がいいかも」
底をつきかけてきた在庫のパンを見て、リコットが言葉する。
「なら、ここは私に任せて下さい。大体どう作るのかも初めので覚えましたから、足らなくなったら補充しておきますよぉ」
今日で販売も最終日。当日の準備を見ていた事もあり、すでに二つのスープの作り方をハナは覚えたらしい。
「じゃあ、お願いしますねー」
リコットがそう言い、パン屋へ走る。
「なんだ。ココは一人か?」
それと入れ違いに中に来たのはレイアだ。
接客対応をしていたのだが、焼き印の注文が入った為、焼きゴテを取りに来たようだ。
「リコットさんはパンの追加に…あ、そう言えばカップも大分減ってきましたねぇ」
発注した数は多くまだ仮倉庫に向かえば在庫はあるようだが、この場所に持ってきている分の残りは少ない。荷車に並んでいる分が全ての様だ。
「そうか。なら取ってこないとだな」
数を確認した後人が減るのを待って、レイアが素早く取りに走る。
その頃にはもう空には星が輝き、さすがに雪はふらないものの辺りはそれなりに冷え込んできている。
「これは…たまらないだろうなぁ」
スープを求めて並ぶ人々の気持ちが今は痛いほどわかる。
そういえば、今日もお昼前のまかないの後は忙しく、何も食べれていない。晩御飯を取りたい所だが、人員が少ない為、今日も終了までお預けとなりそうだ。だけど、彼女らは思う。
(この笑顔の為なら頑張れる!)
温かいスープを受け取った後の笑顔。
カップに刻まれた名前の出来に喜ぶ笑顔。
そして大切な人と共に過ごしているそんな笑顔がみれるなら、後少し。もう少しだけ頑張ろうと――。
そして、
「有難う御座いましたー! 完売でーす」
最後のシチューを手渡したのち集まっていたお客さんを前に六人が店の前に並び、ぺこりとお辞儀する。
その様子にまず周りにいたお客さんが彼女達に盛大な拍手と有難うの言葉を送ってくれる。
「やったねっ、みんな~」
それに思わず嬉しくなって互いを抱きしめ、喜びを分かち合う。
たった二つのメニューで勝負したこのお店だったが、箱を開ければ大盛況に終わって…彼女達は片付けをおえると、仮倉庫に皆を集めて少し遅い聖輝節のケーキでお祝いだ。手伝ってくれたハンター達と共に、いつの間に買ったのか数種のケーキが並んでいる。
「どれも美味しそうですねぇ」
「これは役得だな。手伝って良かった」
ハナとレイアは乙女全開な甘いケーキにテンションが上がる。
「フィロさんもご苦労様でした」
そんな中、一番大変だったと思われるフィロのケーキには大き目の苺が乗せられていて、自然と微笑むフィロなのであった。
「ハ、ハナさん…?」
テントを張ってスープの調理をし始めた村娘達。
そんな三人の元にやって来た星野 ハナ(ka5852)は早速鍋へと向かい、匂いを嗅ぐ。
「あの、何か変でしょうか?」
その行動に不安を感じてマロ―ナが質問。が、彼女は答えない。
「あの、ひょっとして…このスープに興味が?」
そこでリコットが何かを感じ取って、そう尋ねるとコクコク頷くハナ。今までも何度か彼女達を手伝っている彼女は料理好き。それなりに腕もいいし、持っている知識もレシピも豊富だ。だが、このなめこのシチューだけは、聞いただけでは味の想像が出来なかったようで…。
「このシチューがなめこのになるんですよね? 何味ですぅ?」
まだ作りかけというか、ぶっちゃけ鍋にはジャガイモしか入ってはいない。
しかし、準備された食材を見ただけでこちらがシチューだと判断する。
「先日は世話になったな。あのキノコで料理を作ったのか。どれ、私も試食していいかな?」
とそこへキノコの毒見…もとい、調査依頼に参加していたレイア・アローネ(ka4082)が到着。
彼女も鍋を覗き込む。
「フフフッ、なんかここまで期待されると嬉しいですね~」
マロ―ナが別の鍋でボルシチの準備をしつつ言う。
「あ、そっちがサンタのボルシチですね! そうそう、ボルシチといえば私初めて食べた時ぃ、ビーツがハムっぽく見えて…。でも食べたら野菜でぇ、子供心に騙されたぁ~って思ったんですよねぇ」
幼少の頃のエピソードを披露して、立ち昇るスープの香りに自然とハナの顏が綻ぶ。
「あの、こちらがスープ販売のお手伝いを依頼されたテントで間違いないでしょうか?」
とそこへ少し足を引きずりながらメイド服のフィロ(ka6966)が訪れて、
「そうですけど、貴方は…」
「申し遅れました。私はフィロ…シモン様、リコット様、マロ―ナ様。不手際でご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、本日は宜しくお願いします」
と丁寧なご挨拶。彼女はどうやら先の依頼で怪我をしたらしく、あちこちに包帯を巻いてはいるが、日常生活をするにおいてはそれ程支障なさそうだ。
「いえいえ、こちらこそ大変な時に有難う御座います」
傷をおしてまで依頼を受けてくれた事に感謝して、マロ―ナが彼女を椅子のある方に誘導する。
「あの、本当にお気になさらず…」
傷は深いとはいえ、彼女自体はオートマトンだ。見た目よりは頑丈に出来ている。
それからは各自販売開始までの僅かな間にやる事を分担。
パン屋へのブールの受け取りに、運ばれてきたカップの開封と数の確認。
使い捨てられるようなスプーンも必要だろう。
「まずは何から致しましょうか?」
椅子に座らされたまま、フィロが尋ねる。
「そうね。フィロさんには道具の確認をお願いします。ハナさんはパンの受け取り、レイアさんは設営の手伝いを」
時間は待ってくれない。
味見するにもスープの完成が不可欠という事で出来るまでの間にまず一仕事。
街はケーキバトル真っ只中であり、ところどころで各ケーキの販売が行われているようだ。
「今年は食べ比べとかできそうよねぇ」
売上が良ければ沢山味見してみるのも悪くない。今後の為にも食べておきたいとリコットが密かに思う。
そんな彼女の思いを悟ってマロ―ナとシモンはこっそり動き出していた。
●特別
準備が整う頃には、テントを見つけた街人達が何事かと店に好奇の目を向ける。
そんな中でひっそりと作業に没頭しているのはフィロだ。持参した特殊なペンを手に取って、見本用カップを作っているらしい。
「うーん、なかなか難しいものですが出来なくはありませんね」
ふぅと彫ったばかりの所に息をかけて、彫り上がったばかりの文字を見つめ呟く。
「それは?」
隣りではレイアもネーム彫りを試していたのだが、どうにも曲面に文字を彫るにはコツがいるらしい。
とはいえ、日曜大工も彫金もそこそこ出来るから彼女のそれも文字として認識できるから、商品として問題ないだろう。しかし、フィロのはそれを遥かに上回っているから見過ごせない。
「はい。これはカリグラフィーと言って、バースディカードなどにも使われる特殊な書き方をした文字になります。どうせ彫るなら少しでも気に入って頂きたくて…駄目でしょうか?」
彫刻刀とは違うペンの先には平刀のような形の金属板が取り付けられ、そこに皮で補強がされていてペン先を熱する事で焼き印同様表面を焦がしつつ、文字を書き込んでいく仕組みらしい。普通ならば特殊なペンとインクで紙に描くものであるが、今回は素材が木という事もあり、焦がしでの書き込みに挑戦しているようだ。
「凄いな…たまげたもんだ」
彼女の仕上がったそれを手に取り、レイアは感心する。
「こちらがローマンキャピタル。そしてこちらがハーフアンシェルとインシュラーになります」
「何だ、それ。何かの呪文か?」
全て字体の種類なのだが、聞き慣れない人間が聞いたらそう思ってしまうのも無理はない。
「何これ、凄く可愛いんですけどぉ」
そこへマロ―ナがやってきて、フィロの作品に大喜び。
「これ、絶対いけるよ。ねえ、そう思うでしょ、リコット~♪」
お洒落に仕上がったそれを見せて、村娘達が盛り上がる。
「評判いいみたいだな…こうなると私の出番はないかもしれん」
くすりと微笑しレイアが言う。
「そんな…レイア様の文字入れも卓越された技術が見えて素晴らしいと思います」
レイアの試作品をじっくりと見て、フィロもにこりと微笑む。
「うむむ…私はその手の技術はありませんが、こっちでは負けないですからねぇ」
二人の様子を見取り、運んできたばかりのブールをくり抜きながらハナが呟く。
そして、こっそり傍にあったベルの焼き印を手に取って…。
(かわいいものなら、私も判りますからねぇ~。絶対こっちにも入れておく方がいいのですよぉ)
じゅうっとパンの表面にベルの焼き印が押される。それでぐっと聖輝節の雰囲気が上がる事だろう。
たった少しの工夫で、普通の商品を特別に見せる事は可能なのだ。
「皆、出来たわよ~。販売前の腹ごしらえといきましょう」
シモンがそう言い、皆を呼び寄せる。
勿論まなかいとして出ているのは、販売前のボルシチとホワイトシチューだ。
「ひゃっほ~、待ってましたですよぉ」
お待ちかねの料理を前にハナが早速スプーンを手に取る。
「いただこう」
「いただきます」
二人もそれに続いて、それぞれに出された料理を口へと運ぶ。
昼と言えど、風が吹けば冷たさを感じるからこの温かな商品はもってこいだ。
「オーソドックスなホワイトシチューですが、この触感は今までになかったから面白いですねぇ」
パンをちぎりシチューにつけて味わいながらハナが率直な感想を漏らす。
「うん、あっさりしているからこれは飲みやすいな」
とこれはレイアだ。初めはどんなものかと焦ったヤマブシダケであるが、味の主張が少ない分何にでもよく合う。黒胡椒を多めに振ればピリリッとした刺激が入り大人な味に変貌する。
「ボルシチは大人に、シチューはお子様に人気が出そうですね」
静かに淡々と手と口を動かしながらフィロはそう分析する。
「そうね。大人をターゲットにするなら、隠し味に生姜でもいれてみようかしら?」
この時期の生姜は体を温めてくれる。スープだけでも充分であるが、そこに食材の力も加わればもっともっと美味しく、そして体に優しい一品に仕上げる事ができるだろう。
「ハナさん、調整…手伝って貰えますか?」
ギリギリまで味にはこだわりたい。
完成としていたが、追求できるならとことんが彼女達のモットーでもある。
「わかりました。どんとこいですよぉ」
もぐもぐ残りのパンを口に入れて、ハナが早速リコット共にボルシチの鍋に移動する。
「プロとはああいうものなのだな」
「勉強になります」
その様子にレイアとフィロが言う。
「私達も出来る事をやるだけよ。お二人さんも宜しくね」
シモンがリーダーらしく気合を入れて――いよいよ、開店。
すでに立ち昇る香りが評判を呼び、数名の人が開店の時を待ち並び始めていた。
●感謝
街角を彩るツリーに装飾、まだお昼でもその豪華さに道行く人々が足を止める。
そんな中で買い物に疲れた街人はランチを求めて、店を探すだろう。けれど、いつもと同じお店ではつまらない。
そんな人々の耳にこの言葉は魅力的に聞こえはしないだろうか。
「いらっしゃいいらっしゃーい! リアルブルーの珍しいキノコを使った聖輝節限定メニュー。お一つ、ものは試しに食べていかないか―?」
ネーム彫刻したカップを掲げて、レイアが周囲に呼び込みをかける。
「珍しいキノコだって?」
「どんなだろうねぇ…」
その言葉にぽつりぽつりと振り返る通行人達。興味はあってもまだ踏み出す勇気まではないようだ。
そこに透かさず、もう一つの隠し玉。
「ボルシチのカップには現在ネームサービス実施中だ。手間をかけたくなければ焼き印を入れて可愛くって手もある。ぜひ、見ていくだけでもどうだろうか」
「カップ? 焼き印?」
普通の販売ではない事を知って、今度は顔を見合わせるカップルや家族グループ。
そこで覗きに来てさえもらえればしめたものだ。フィロの彫ったあれを見たら、彼女の方が彼氏に記念に欲しいとねだるだろうし、子供はあのブールのシチューにワクワクするに違いない。試食でアピールも考えていたレイアであるが、この分だとそこまでしなくても人は集まってくれそうだ。
「よし、一つ買ってみるか」
子供にせがまれて、父親らしい男性がシチューを注文する。
そして、受け取った後こっそり押されたベルの焼き印を見つけて、子供はにこにこ。
たったこれだけであるが、それでも子供には嬉しいのだ。
「パパ、これすごくおいしいねー」
父親と一個を分け合って食べるのも、ここだけの特別な体験だと言える。
この食事が今年のいい思い出に変わったら、それはとても嬉しい事だ。
「この字体で…その、二人のイニシャルを入れて貰ってもいいですか?」
一方カップルはそう言って、一つのカップに二人の名を頼む者やそれぞれに入れて貰う者まで。終始イチャイチャムード全開。手にはどこかのケーキを下げているから、帰ったら帰ったでそちらを楽しむのかもしれない。
「あーあー、今日だけは店員として目を瞑るのですよぉ」
ハナが鍋の火の番をしつつ、追加の野菜を些か乱暴に切り刻みながらぼそりと呟く。
「あっははー…ハナさん、気持ちはわかるけど、手元気を付けて下さいねー」
その様子にリコットが色々察して、そう助言する。
「あの、うさぎのやつお願いします」
だが、そう言ってカップを差出す子供がくると途端にニコリ。
辛くてもその素振りは見せないのは立派だ。
「オッケーですよぉ。どこに押したらいいですかぁ?」
とスマイルゼロ円で熱さにも負けず、じゅうと押して喜ぶ子供の頭をなでなで。
焼き印は動物が人気らしかった。大人が今飲む為に買って、容器は子供にというパターンも多い。
「カップ付き、大成功だね」
マロ―ナがシモンに言う。
「そうね。でもまだまだこれからよ」
シモンはそう言うも人の流れは夜まで衰えず、その日は予定より早く店じまいするのだった。
「すみません。現在お名前ですと少しお時間を頂いていますが、それでもよろしいでしょうか?」
フィロが出来上がったのを渡しながら次のお客にそう断りを入れる。
彼女の文字入れサービスは思いの外好評だった。ただ彫るだけでなく、特殊な字体でおしゃれな感じが皆の心を掴んだらしい。始めは直接名前を聞いて作業していたのだが、それでは間に合わなくなり名前を書いて貰い、番号を配っての順番待ちとなっている。それでもやはり欲しいと言う人は後を絶たず、そんな人にはちゃっかり更なる売込みをかける。
「もしよろしければお待ち頂く間、トナカイへの贈り物はいかがでしょうか?」
ともう一つも食べてみないかとさりげにアピール。
百発百中とはいかないまでも半分くらいは興味を示して、さらにその半分くらいは購入に繋がっている。
「あわわ、追加のブール用意いた方がいいかも」
底をつきかけてきた在庫のパンを見て、リコットが言葉する。
「なら、ここは私に任せて下さい。大体どう作るのかも初めので覚えましたから、足らなくなったら補充しておきますよぉ」
今日で販売も最終日。当日の準備を見ていた事もあり、すでに二つのスープの作り方をハナは覚えたらしい。
「じゃあ、お願いしますねー」
リコットがそう言い、パン屋へ走る。
「なんだ。ココは一人か?」
それと入れ違いに中に来たのはレイアだ。
接客対応をしていたのだが、焼き印の注文が入った為、焼きゴテを取りに来たようだ。
「リコットさんはパンの追加に…あ、そう言えばカップも大分減ってきましたねぇ」
発注した数は多くまだ仮倉庫に向かえば在庫はあるようだが、この場所に持ってきている分の残りは少ない。荷車に並んでいる分が全ての様だ。
「そうか。なら取ってこないとだな」
数を確認した後人が減るのを待って、レイアが素早く取りに走る。
その頃にはもう空には星が輝き、さすがに雪はふらないものの辺りはそれなりに冷え込んできている。
「これは…たまらないだろうなぁ」
スープを求めて並ぶ人々の気持ちが今は痛いほどわかる。
そういえば、今日もお昼前のまかないの後は忙しく、何も食べれていない。晩御飯を取りたい所だが、人員が少ない為、今日も終了までお預けとなりそうだ。だけど、彼女らは思う。
(この笑顔の為なら頑張れる!)
温かいスープを受け取った後の笑顔。
カップに刻まれた名前の出来に喜ぶ笑顔。
そして大切な人と共に過ごしているそんな笑顔がみれるなら、後少し。もう少しだけ頑張ろうと――。
そして、
「有難う御座いましたー! 完売でーす」
最後のシチューを手渡したのち集まっていたお客さんを前に六人が店の前に並び、ぺこりとお辞儀する。
その様子にまず周りにいたお客さんが彼女達に盛大な拍手と有難うの言葉を送ってくれる。
「やったねっ、みんな~」
それに思わず嬉しくなって互いを抱きしめ、喜びを分かち合う。
たった二つのメニューで勝負したこのお店だったが、箱を開ければ大盛況に終わって…彼女達は片付けをおえると、仮倉庫に皆を集めて少し遅い聖輝節のケーキでお祝いだ。手伝ってくれたハンター達と共に、いつの間に買ったのか数種のケーキが並んでいる。
「どれも美味しそうですねぇ」
「これは役得だな。手伝って良かった」
ハナとレイアは乙女全開な甘いケーキにテンションが上がる。
「フィロさんもご苦労様でした」
そんな中、一番大変だったと思われるフィロのケーキには大き目の苺が乗せられていて、自然と微笑むフィロなのであった。
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スープ屋さんのお手伝い レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/12/19 21:23:11 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/12/18 12:02:03 |