精霊の森の兎と猫の頂上決戦

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2018/12/15 15:00
完成日
2018/12/21 23:30

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 辺境の森の奥には精霊の宿る大樹がある。
 しかし一人の堕落者の手によって大樹からマテリアルが奪われ、精霊は力の大半を失ってしまった。
 負のマテリアルの影響の強い辺境で精霊からのマテリアル供給を失った森は死を意味しているに等しい。
 精霊は残された僅かなマテリアルを使って新芽を生やし、人間に願った。
 森のために手を貸して欲しいと。
 しかし精霊は念波を一瞬しか出せない程に弱っており、その術を伝える前に再び沈黙した。
 この森に40年前にリアルブルーから転移し、足が不自由なためずっと守り人として暮らしているケイトは精霊から時々発せられる念波を根気よく聞き集め、森を救う術を何とか纏め上げた。
 精霊の大樹は大昔から不定期的に自身を株分けし、様々な生き物に託して森の外へ運んで植えてもらっていた。
 そうして精霊の森を広げ、辺境から歪虚に汚染された土地を減らしてゆくという地道な反抗を行っていたのだ。
 そのため森の各所には株分けされた精霊の大樹が生えている。
 その分け木からマテリアルを分けてもらい、自身に注ぎ込んでゆけば力が戻ってきて森にも再びマテリアルが満ちる。
 しかし問題もある。
 マテリアルを分けた分け木は一時的にではあるが力が弱まってしまう事。
 分け木はその木を植えた生き物の子孫が守っているだろうが、その子孫達は大元の大樹の精霊の事など知らないだろうという事。
 生き物達にとって分け木のマテリアルは森で生きるための要で、快くマテリアルを分けてもらえるかどうか分からない事。
 分けてもらうには説明や説得が必要になるだろうが、人間に友好的な生き物ばかりではない事。
 ケイトはそこまで精霊から聞き取ると、この計画には欠点がある事に気づいた。
「でも人間は動物と会話ができないわ。どうやって説明や説得をすればいいの?」
『手段を講じる』
 そう尋ねると精霊はそれだけ告げて再び沈黙した。
 そして1週間程経ったある日。
『我の枝木を持ってゆけ』
 いきなり精霊からケイトに念話が飛んできた。
「えっ何?」
『枝木を通じて念話での橋渡しをしよう』
 どうやら動物との会話の手段を講じ終えたらしい。
『ただし念話が通じるのは我の分け木の周囲のみ。それに枝木に込められたマテリアルが尽きれば念話も途絶える』
「どのくらいの時間持つの?」
『日が少し傾く程』
「ア、アバウトねぇ……」
 精霊の持つ時間の概念はケイトには理解しづらかったが、だいたい2時間くらいだと感じた。
 ともかく準備は整ったため、ケイトは精霊の分け木の元へ行ってくれるハンターを募る手紙を綴った。

 数日後、ケイトの依頼を受けたハンターがやってきた。
 ケイトから説明を受けたハンターは精霊の苗木から枝木を手折る。
 すると精霊の苗木からはマテリアルがほとんど感じられなくなった。
 枝木に自身のマテリアルの大半を注ぎ込んだのだろう。
 もし分け木からマテリアルを持ってこれなければ、精霊にはもう次の枝木を作る力は残されていないように感じられた。
「精霊さんが教えてくれた一番近くの分け木の場所は向こうよ」
 ケイトが東北東の方角を指差す。
「ごめんなさい。分かるのは方角だけなの。距離は、日が登って頂点から少し傾ぐ頃には着くだろう、と言っていたわ。分け木は精霊さんと同じマテリアルを発しているから、枝木から感じるマテリアルと同じマテリアルを感じられたら近くにあると思うの。ものすごく曖昧な手がかりばかりだけれど、よろしくお願いします」
 ハンターは頭を下げるケイトに見送られ、分け木を探しに出た。

 深い森に分け入って6時間以上経った。
 本当に方角はあっているのか?
 このまま進んで大丈夫なのか?
 皆が懐疑的になり始めた頃、ハンターは大きな生き物を発見した。 
 大きくて長い耳を頭から生やしていて二足歩行をする幻獣、ユキウサギだ。
 ハンターは声を掛けようとしたが、ユキウサギ達は急いでいるのか全力で駆けてゆく。
 見失わないようにハンターが追いかけると、やがて大きな木が見えてきた。
 その木からは持っている精霊の枝木が発するマテリアルと同じマテリアルが感じられる。
 ついに精霊の大樹の分け木を見つけたのだ。
 大樹の前には大勢のユキウサギが集まっていた。
 しかし集まっているのはユキウサギだけではない。
 頭に小さな三角形の耳を生やし、口の端から牙を覗かせたモフモフの毛皮の幻獣、ユグディラだ。
 ユグディラもユキウサギと同じくらいの数集まっており、ちょうど大樹を境にして左右に分かれていた。
 なにやら険悪な雰囲気をさせながら互いに唸り声を上げあっている。
 ハンターが精霊の枝木を使うと、彼らの発する言葉の意味が直接脳に響いてきた。
『ここは昔っから俺達の縄張りニャン! ウサ公はさっさと出ていくニャン!』
『何を言っているウサ! ここは昔々の大昔から僕達の縄張りウサ! クソ猫こそ出ていけウサ!』
 どうやら縄張り争いをしているらしい。
 声を掛けると2匹は言い争いを止めてハンターを見た。
『人間ニャ』
『珍しいウサね』
 幸い人間に対して悪意は持っていないらしく、友好的な雰囲気が感じられる。
『何用ニャ?』
『道にでも迷ったウサか?』
 ハンターが事情を説明する。
『へー、この木に親がいたのニャ~』
『知らなかったウサ』
『親を助けるためにマテリアルとかいうのがいるのニャ』
『いいウサよ。持っていけウサ』
 トントン拍子に話が進むかに思えた。
 しかし。
『ちょっと待てニャ。どうしてウサ公が仕切ってるニャ?』
『もちろん僕達がこの木を植えた偉大な先祖の子孫だからウサ』
『ふざけるニャー! 植えたのは俺達の先祖ニャー!』
『どこにそんな証拠があるウサ! 見せろウサ!』
『そっちこそ証拠見せろニャー!』
 ユキウサギとユグディラは再び悶着を始めてしまった。
『こうなったらどっちがこの縄張りに相応しい偉大な一族か決着つけるウサ』
『望むところニャ。どっちが上か思い知らせてやるニャ。ちょうど証人もいるニャ』
 ハンターは勝手に証人にされてしまった。
『人間さん人間さん、お願いだから手を貸して欲しいニャ。人間さんがいれば百人力ニャ』
 悶着を続けるユグディラとは別のユグディラがハンターをスカウトしにきた。
『人間だから参加できニャい? そんな事ないニャ。このネコミミを付ければ人間さんも立派なユグディラニャン♪』
 ユグディラがどこからともなくネコ耳のカチューシャを取り出してくる。
『人間さん人間さん。あんなクソ猫じゃなく僕達に手を貸して欲しいウサ』
 ユキウサギ側もハンターをスカウトしに来る。
『このウサミミを付ければ人間さんも立派なユキウサギウサ♪』
 ユキウサギもどこからともかくウサ耳のカチューシャを取り出した。

 こうしてハンターは闘志を燃やすユキウサギとユグディラの縄張り争いに巻き込まれてしまったのであった。

リプレイ本文

 森に住むユキウサギやユグディラにスカウトされたハンター達は戸惑いながらも彼らの競技『たたいて・かぶって・ジャンケンポン』に参加する事になった。
『よろしくウサ♪ がんばるぴょん♪』
 ソナ(ka1352)の連れているユキウサギのバーニャは大勢の仲間と出会えた事が嬉しかったのかスッカリやる気になっており、ソナも選手としてウサミミのカチューシャを付けられた。 
『ウサミミがとってもお似合いウサよ、人間さん』
「私は人間ではないのですが……」
 エルフであるソナが苦笑する。
 しかし彼らにとっては耳の長い短いなど毛皮の模様が違う程度の差異にしか感じられず、人間と同種族に見えるのだろう。

『付き人1号、分かってるだろうにゃ。ちゃんと吾輩様のために場を盛り上げろにゃん』
「もちろん分かっております!」
 保・はじめ(ka5800)は連れてきたユグディラの三毛丸の命令に喜々として答えた。
「三毛丸が喋っていて、森のユグディラ達が喋っていて……ああ、なんてすばらしいことか!」
 猫好きでもちろんユグディラも好きな保はこの夢のような環境に感無量であった。
「精霊の力を取り戻す理由が、ひとつ増えましたね」

「……私達は何しに来たんだっけ」
 鞍馬 真(ka5819)は何故か自分の幻獣達の競技の選手になっている流れに首を傾げながらも、何の躊躇もなくウサミミカチューシャを装着した。
 着け慣れているためかウサミミが妙にマッチしている。
『ご主人様はユキウサギ側にゃのですか?』
 真の連れているユグディラのシトロンが寂しそうに尋ねてくる。
「ごめんよシトロン。でも競技が白熱しすぎた時に両方に仲裁役がいた方が良いと思ったんだ。僕とシトロンで場を収めるためにね」
『分かりましたにゃ。私はご主人様と同じ陣営が良かったけど、ご主人様が望むなら仕方ないにゃあ』
「まあ、折角だからシトロンと対決するのも面白そうかな、という思いもあるけどね」
 真がイタズラっぽく笑う。

 ボルディア・コンフラムス(ka0796)は仲間達が自身の幻獣と楽しそうに話している光景を羨ましそうに見ていた。
「くそぉ! せっかく幻獣と会話できるなんつーアイテムがあンなら俺もヴァンやシャル達とも話したかったのに……!」
 連れてくる事のできなかったイェジドやワイバーンの姿が脳裏をよぎる。
「まぁ、できねぇのは仕方ねぇ」
 気を取り直したボルディアはユグディラ側に人間の助っ人が少ないのでそちらに参戦した。



●1回戦第1試合
 ユキウサギ(チャンピオン) VS ボルディア

『キャー! チャンピオーン♪』
『頼むウサよ、チャンピオン!』
 どうやらボルディアの相手は前大会のチャンピオンらしく、兎側から声援や応援が飛んでくる。
『任せておけウサー!』
 チャンピオンが歓声に応えて競技台に上がる。
 両者は身長差のあるため頭の高さを合わせる台が置かれ、いよいよ試合開始。

(パーなら盾パーなら盾)
 ボルディアは頭の中でそれを念じ続けながら【グー】を出した。
 『パーなんざ俺のグーでブチ破ってやる』作戦により全てグーを押し切るつもりなのだ。
 相手は【パー】。
 念じていた通りに体は動き、素早く盾で防ぐ
(よしいける)
 仕切り直して再びジャンケン。
 相手は【チョキ】。
 棒を掴むと同時に上に振りかぶる。
 のではなく、取ったその場からすくい上げるように振るった。
 棒先が顎をクリーンヒット。
『ぉうふっ!!』
 衝撃でチャンピオンの足が浮き、台から仰向けに落ちてゆく。
 ボルディアの勝利。
 かと思えたが。
『今のは反則ウサー!』
 兎側の審判が抗議する。
 なぜなら『たたいて・かぶって・ジャンケンポン』はその名の通り、本来なら何かを頭にかぶって庇う競技である。
 盾を使っているのはユキウサギの耳が長く、何かをかぶるのでは不利なためだ。
 しかし皆、頭上からの攻撃を防ぐ形で競技しており、下からくる攻撃は想定していない。
 想定していない攻撃を防ぐ事などできる訳がないから反則だ。
 というのが兎側審判の主張だった。
『そんなルール明確には決まってないニャ!』
 猫側の審判も負けじと抗議した。
「いや、これは振りかぶらず殴ろうとした俺が悪いよ。俺の反則負けだ」
 しかしボルディアは猫側の講義を止め、反則を受け入れた。



●1回戦第2試合
 ユキウサギ VS 三毛丸

『付き人A、今日だけ特別にバックバンドやらせてやるにゃん』
 三毛丸は保に[SA]ベースギター「キラン」で演奏させると、自身もギター「ジャガーノート」を掻き鳴らしながら競技場へ駆け出して行った。
『てみゃあら、まとめて吾輩様の演奏に酔いしれろにゃん!』
 そしてド派手に勇ましい曲を奏でてみせる。
『ふざけたマネしやがってぴょん。ぎったんぎったにしてやるウサ!』
 三毛丸の態度に憤った対戦相手のユキウサギが睨んでくる。
『ふふん、吾輩様の引き立て役にしてやるぜにゃん』
 三毛丸は不敵な笑みで応じて試合開始。
 結果は【チョキ】【グー】から一撃で、三毛丸の勝利であった。


 これ以後の試合でも仲間同士ではかち合わず、皆が順当に勝ち上がって2回戦に進んだ。
 勝者の数は兎、猫共に4人ずつ。2回戦も4試合行われる事となった。



●2回戦第1試合
 真 VS シトロン

「シトロンと戦うのも面白そうとは言ったけど、実際にそうなると妙な気分だね」
『私もですにゃ、ご主人様』
 真とシトロンが競技台の上で苦笑を浮かべ合う。
「とは言え、やるからには全力で」
『はい、お相手しますにゃ!』
 両者は表情を真剣なものに変え、互いに手を突き出した。
 【チョキ】【パー】
 両者が獲物に手を伸ばす。
(この棒でシトロンを……)
 だが相手がシトロンのためか、真の挙動が一瞬遅れた。
 シトロンが先に盾を掴む。
 棒の振りは真の方が早かったが、シトロンの防御が間に合う。
『ご主人様……』
 シトロンが真をジト目で見る。
「ぁ……いや、手を抜いた訳じゃないんだけど、躊躇ったというか何というか……。次はちゃんとするよ」
『そうしてくださいにゃ』
 仕切り直して再ジャンケン。
 【チョキ】【パー】
 再び両者が獲物に手を伸ばす。
 今度は真が圧倒的なスピードで棒を掴んだ。
 そして頭を軽く叩き、勝負が決した。
『それでこそ私の大好きなご主人様ですにゃ!』
 負けたシトロンはむしろ誇らしく主人を讃えたのだった。



●2回戦第1試合
 チャンピオン VS 保

 チャンピオンと相対しながら保はふと思った。
(もしかして……ユキウサギ陣営の方がよかったのでは?)
 そうすればユグディラ相手に競技する事になっていただろう。
(ユグディラと戯れる機会を不意にしてしまった……。とは言え実際にそうしていたら、付き人らしからぬ振る舞いにへそを曲げた三毛丸に蹴飛ばされたでしょうね)
 そんな事を考えつつ、いざ勝負。
 【パー】【パー】
 【パー】【パー】
 【チョキ】【グー】
 2度のあいこの後に勝利した保が棒に手を伸ばす。
 獲物を掴んだのは両者ほぼ同時だったが、振るった棒は木の盾を打った。
(1戦目の相手より早いですね。さすがはチャンピオンと言ったところでしょうか)
 再ジャンケン。
 【パー】【パー】
 【チョキ】【チョキ】
 【チョキ】【パー】
 今度はチャンピオンが攻手。
 獲物を掴んだのはまたほぼ同時。
 しかし振り下ろしはチャンピオンの方が早い。
(くっ!)
 急いで盾を掲げたが、棒は保の頭を打った。
『さすがはチャンピオンウサー!』
 兎陣営が歓声に沸く。
 一方、保は三毛丸に軽く蹴られた。
『だらしない奴にゃ」
「面目ないです」
『後は吾輩様に任せて、おみゃあは応援だけしてろにゃ』
 三毛丸は保を押しのけて競技台に向かった。



●2回戦第3試合
 ソナ VS 三毛丸

『ソナ、がんばってウサ』
「うん、ありがとう」
 バーニャの声援を受けてソナが競技台に上がる。
 三毛丸はまたギターを鳴らして上がってくる。
『おみゃあら盛り上がってるかぁー!』
(これ、毎回やるつもりなんでしょうか?)
 ソナは律儀に演奏が終わるのを待ち、試合開始。
 【グー】【パー】
 両者一斉に獲物に手を伸ばす。
 掴んだのは三毛丸の方が早く、棒は盾を打った。
 再ジャンケン。
 【グー】【グー】
 【パー】【パー】
 【チョキ】【グー】
 さっきとは攻守逆の獲物に手を伸ばす。
 今度も掴むのは三毛丸の方が早い。
(間に合って!)
 祈りながら盾を頭上に引き上げるソナ。
 ポカッ
 しかし三毛丸の棒が先に頭を打った。
『ソナー!』
 バーニャがソナの元に駆け寄ってくる。
『大丈夫ウサ? 痛くないウサ?』
 ソナを屈ませて打たれた頭を診る。
「大丈夫よバーニャ。ありがとう。私は負けちゃったけど、バーニャは頑張ってね」



●2回戦第4試合
 バーニャ VS ユグディラ族長

『見ててソナ。貴方の分まで勝ってみせるぴょん』
『何を言う小娘! 俺達は今1勝2敗。何としても勝たねばならんのニャー』
 気合い充分な2匹が相対し、試合開始。
 【チョキ】【チョキ】
 【チョキ】【パー】
 バーニャが棒に、族長が盾に手を伸ばす。
 掴んだのは族長の方が若干早い。
 しかしバーニャは誰よりも強い筋力でもって素早く振り上げ、一閃。
 ポカッ
 と族長の頭で音が鳴る。
『やったウサー!』
 バーニャは思わずソナに駆け寄って飛びつき、ハイタッチまで求める。
「凄いよバーニャ」
 ソナもハイタッチに応じてあげながら我が事のように喜ぶ。
『これで3勝ウサー!』
 兎達も歓声が上げる。

 一方、猫達は意気消沈していた。
『族長負けちまったにゃ~』
『これで1対3にゃ~』
『絶体絶命にゃ~』
 しかし。
『落ち着けにゃー!』
 三毛丸がギターを掻き鳴らしながら怒鳴った。
『おみゃあら吾輩様を誰だと思ってるにゃ? この三毛丸様が3人抜きしてやるから耳の穴かっぽじってよーく見てやがれニャー!』
 そして兎達に向かって宣言したのである。
『うおぉーーー!!』
 その堂々たる様に猫達は意気を取り戻した。
「あはは。調子に乗ってるねぇ」
『いい気になりおってぇ~!』
 真はその様子を楽しげに眺め、チャンピオンは憤った。 
『まずは私のやらせて欲しいウサ。ソナの仇を討ってあげたいの』
 名乗りを上げたバーニャが再び競技台に上がる。



●3回戦第1試合
 バーニャ VS 三毛丸

「頑張ってバーニャ。あなたならきっと勝てるよ」
『うん、ソナのために頑張るウサ』
 声援をくれたソナにバーニャが手を振る。
『ふん、返り討ちにしてやるニャ』
 対する三毛丸はふてぶてしい笑みで応じた。
 【チョキ】【パー】
 バーニャが先制。だが防がれる。
 【パー】【パー】
 【パー】【グー】
 再びバーニャが攻撃。また防がれた。
 【パー】【グー】
 攻撃、当たらず。
 【パー】【グー】
 当たらず。
 【パー】【パー】
 【パー】【グー】
 今大会最も長い試合となったが、バーニャの攻撃が当たらない。
(どうして……)
 バーニャの顔に焦りが浮かんだ次の瞬間。
 【グー】【パー】
 三毛丸の攻撃が来た。
 懸命に防ぐ。
 だが棒はバーニャの頭を打った。
『負けちゃったウサー! ごめんウサー!』
「ううん、いいのよバーニャ。何時も私のために頑張ってくれてありがとう。大好きよバーニャ」
 自分に抱きついて謝ってくるバーニャをソナは優しく撫でてあげた。

『うおぉー! 勝ったにゃー!』
『いいぞ三毛丸ー!』
『三毛丸様ステキー♪』
 一方、猫達からは絶え間ない歓声が起こっていた。
『クソ猫どもが調子に乗りおってぇー!! その鼻っ柱叩き折ってやるウサー!』
 息巻くチャンピオンが競技台に上がる。



●3回戦第2試合
 チャンピオン VS 三毛丸

 【グー】【パー】
 ポカッ
 瞬殺で終わった。
『ギャー!』
『チャンピオンまでぇー!』
『なんてことウサーっ!』
 兎達から絶叫が上がる。
 一方、猫側は。
『みっけまる! みっけまる!』
『あっとひとり! あっとひとり!』
 三毛丸コールと後一人コールが絶え間なく起こっていた。
『おみゃあらもっと我輩様を讃えろにゃー!』
 競技台の上では三毛丸がノリノリでギターをギュインギュイン鳴らしながら朗々と持ち歌を披露している。
『みんな気持ちで負けてちゃダメウサ! こっちも負けずに声出すぴょん』
 バーニャがユキウサギ達に呼びかける。
『くっらっまっ!! くっらっまっ!!』
 そして鞍馬コールをしながら全員でウェーブまでして声援を送った。
 そんな熱狂の中、三毛丸と真が対峙する。


●3回戦第3試合
 真 VS 三毛丸

『吾輩様は最早地上最強にゃ~。一瞬で決めてやるから覚悟するにゃ~』
 三毛丸が尊大に胸を反らしながら真を指差す。
「いやはや、標本にしたいくらい見事に図に乗ってるねえ」
 あまりの天狗っぷりに真は呆れて苦笑した。
 そしていよいよ最後の試合が開始される。
 【チョキ】【パー】
 三毛丸が盾に手を伸ばす。
 しかしその手が盾に触れる前に真の手が既に棒を掴んでいるのが見えた。
(にゃに!?)
 三毛丸が目を見張る。
(いやいやいや我輩様がこんなに遅いわけないにゃまだ間に合うにゃそうにゃ吾輩様の超速技巧で)
 ポカッ
 三毛丸の頭に軽い衝撃が走る。
『……』
 三毛丸が茫然自失の表情で顔を上げる。
 自分の頭を棒で打ち据えた真がニッコリ笑っていた。
「私の勝ちだね」
 その直後、兎と猫双方からどよめきが起こる。
『瞬殺にゃー!』
『嘘にゃー!』
『勝ったウサー!』
『やったウサー!』
『くっらっまっ! くっらっまっ!』
 そして兎側から鞍馬コールが巻き起こり、真は手を振ってそれに応えた。
『おめでとうございますにゃご主人様ー!』
 シトロンが満面の笑みで抱きついてきた。
『凄いですにゃ流石ですにゃ私のご主人様は最高ですにゃ好き好き大好きですにゃー♪』
 すりすりゴロゴロしてくるシトロンを真は優しい笑みを浮かべて撫で返してあげた。
「ありがとうシトロン。でもあまり好きを連発されると、その、照れ臭いよ……」
 こうして『たたいて・かぶって・ジャンケンポン』は真の優勝によるユキウサギ側の勝利で終わった。



『これでここは僕達の縄張りと決まったウサ。文句ないウサね』
「あ、その事だけど提案があるんだ」
 ユグディラ達に宣告するユキウサギに真が口を挟む。
「私達としては、ここがどちらの縄張りになっても良いんだけど……折角精霊の大樹がある神聖な場所なんだから、争いの種になるのは樹が悲しむんじゃないかな」
『縄張りは大事ウサ。でも、この樹は精霊様の御分霊ウサ。この樹と樹の周りは精霊様の縄張りと思うぴょん。だから、ここは猫のものでも兎のものでもないと思わない?』
 真の言葉を継いでバーニャも訴える。
『じゃあ、ここの草はもう食べちゃダメなのウサか?』
『ここの草は一番美味しいのに……』
『ネズミも狩っちゃダメにゃのか?』
『そんなご無体にゃ……』
 兎も猫も悲しげに訴えてくる。
 縄張りは彼らの生活に直結する事柄だからだ。
「いえ、食料を採る事は精霊も許してくれると思います。そもそも両者とも自分が植えたと主張をしているという事は、一緒に植えたという事じゃないでしょうか」
 保が自己の見解を述べる。
「その通りだと思います。皆さん、この精霊の木の下は皆が自由に寛げる場にしませんか?」
 ソナは保に賛同しながら荷物から こどもシャンパンや【CF】ケーキ「幻獣王の好物詰め合わせ」を取り出した。
「ここで互いに交流しましょう。そうすればもっと仲良くなれるはずです」
『そ……それはっ!!』
 ユキウサギの族長が驚愕の面持ちでソナのケーキを指差す。
『まさか幻獣王のケーキではっ!?』
「え? はい、そうですけど」
 ソナが答えるとどよめきが起こった。
『幻獣王のケーキ!』
『噂で聞いた事あるニャ』
『本物が見れるにゃんて』
『驚きウサ』
『まさか……くれるのウサか?』
「はい、どうぞ」
『おぉぉーーー!!』
 更なるどよめきが巻き起こる。
『こんな貴重な物をくれるにゃんて……』
『この人間さんは神か!?』
『神ニャ!』
『神ウサ!』
『神よー!』
 ソナはいきなり神として崇められた。
「えっ、えっ? あの私、神だなんて、そんな大層な者では……」
 ケーキ一つでこんな事になるとは思ってもいなかったソナは困惑して戸惑った。
『いただきますニャ』
『抜け駆けずるいウサ!』
『俺にも食わせろニャー!』
 そして1人が食べ始めた途端に皆が殺到してきた。
「キャー」
 ソナが兎と猫の波に飲み込まれる。
『ソナー!』
 バーニャは波に飛び込むとソナを救出してきた。
『ソナ、大丈夫ウサか?』
「うん。もふもふだったぁ~」
 ソナの顔はニヤケ、頬は上気している。
『あれ? なんか嬉しそうウサ』

 幻獣王のケーキに舌鼓を打った兎と猫達だが、ケーキの数は少なくすぐになくなってしまった。
『もうないウサか?』
『食べられなかったにゃ……』
 悲しみに暮れる者達の鼻先に良い匂いが漂ってくる。
 匂いの先にあるのはボルディアの鍋だ。
 彼女は敗退した後、持ってきた食材でシチューを作っていたのだ。
「おーい、お前ら。戦って腹減っただろ。こっち来て食えよ」
 ボルディアがシチューを盛った[CS]鍋「食いしん坊のもふら」を手に呼びかける。
『食べてもいいウサか?』
『ご馳走になるにゃー!』
 大勢の兎や猫が集まってきてモリモリ食べ始める。
「美味いか?」
『美味いにゃー』
「そっかそっか」
 美味しそうに食べる姿を嬉しそうに見ている間に鍋が空になる。
『もっと欲しいウサ』
「わりぃけど、もう食材がねぇンだ」
 すると彼らは自身で食材を持ってきた。
『作ってにゃ~』
(料理はあんまし上手じゃないんだけどなぁ……)
 見た事のない食材もあって尻込みしたが、期待を裏切りたくはない。
 なので仲間達にも手伝ってもらって料理を作り続けた。
「こんなに飯作ったの始めてだぜ。でもまぁ喜んでもらえてよかったよ」

 その頃三毛丸は。
『悔しいにゃー! もぐもぐ。悔しいにゃーん!』
 保が持参していたケーキやクッキーを奪ってやけ食いしていた。
「2人抜きでも凄いですよ三毛丸」
『うるさいにゃー!』
 保が慰めても蹴りが返ってくる。
 でも肉球で蹴られると気持ちいいので、保にはむしろご褒美だ。
『もぐもぐ。今度はそっちのケーキを寄越すにゃん。あと、紅茶も冷まして飲ませるにゃん。ごくごく』
 保は三毛丸の機嫌が戻るまで甲斐甲斐しく世話を焼いたのだった。



 こうしてハンターと打ち解けたユキウサギとユグディラは大樹の周りでは争わない事を誓った。
 そして大樹から分けてもらえたマテリアルを手に、ハンター達はケイトの待つ精霊の森に帰還した。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 6
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • エルフ式療法士
    ソナ(ka1352
    エルフ|19才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ユキウサギ
    バーニャ(ka1352unit001
    ユニット|幻獣
  • ユグディラの準王者の従者
    保・はじめ(ka5800
    鬼|23才|男性|符術師
  • ユニットアイコン
    ミケマル
    三毛丸(ka5800unit001
    ユニット|幻獣

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    シトロン
    シトロン(ka5819unit004
    ユニット|幻獣

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/12/11 02:17:25
アイコン 相談卓
保・はじめ(ka5800
鬼|23才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2018/12/15 14:23:22