ブルゲド族大会議

マスター:後醍醐

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
7日
締切
2015/01/09 12:00
完成日
2015/01/11 20:22

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 人類と歪虚の最前線、辺境。
 厳しい冬の中、春に向けて動き出そうという者達もいた。
 
 ●
 ブルゲド族 居留地
 
 居留地の中心部にいつにもなく大きなゲルが建てられている。
 それは、族長のゲルの大きさを遥かに凌ぐ大きさだ。
 
 その中では族長のカーンを含む30名近い人々が集まって会議をしていた。
 その会議は『大会議』。
 年に数度開かれる、ブルゲド族の重要な会議。
 部族の方向性を決めたり、嫁取りから支族の長の承認など様々だ。
 参加者は族長を始め、長老格に支族の人間と男女比は5:5である。
 女性であっても支族の長をしているものもあり、長老格でも女性が含まれている。
 そういう意味では極めてフェアな会議とも言える。
 但し、ブルゲド族の庇護を受けている眷属に関しては参加の資格はない。
 それが庇護を受ける条件の一つでもあるからだ。
 
「これからのことであるが……」
 カーンは現状のこと――特に最近話題の『部族会議』について話す。
「我々だけでやっていけるのではないのか?」
 一人の支族の長が疑問を呈す。
 もともと、ブルゲド族は伝統を重んじ、誇り高い部族としてやってきた。
 それは、他部族の力を借りること無く孤高を貫いてやってきたのだ。
 それ故に『部族会議』に属していなかった。
 それを今更、『部族会議』に属して他部族とともにやっていくと言うのは孤高を貫いてきた彼等にとって憤慨ものであった。
「それは――私から説明します」
 族長の嫁、エリナが『事実』を話す。
 そう、独自故に『部族会議』よりも交換比率の悪い交易についてだ。
 そもそも、『部族会議』とは距離を置いて独自の交易ルートゆえに足元を見られていた。
 だが、それしか方法がなかったのだ。
「そのような、悪逆な商人は滅するべきだ!」
 事実を知った支族の人間から怒りの声が上がる。
 足元を見られていると言うのは誇り高い彼等にとって許しがたいことだ。
「そうすれば、誰も交易してくれなくなる――どうだろう、交易の交渉をハンターに任すのは」
 かつて、ハンター達のお陰でより良い交易を出来たことを知っている人間が提案する。
「何時までも彼等に頼るのは難しいでしょう、それに支払いの問題もありますし……」
 エリナはそう答える。
 そう――否でも応でも貨幣経済に組み込まれてしまったブルゲド族は依頼の源泉となる貨幣を稼ぐのが難しい。
 何方にしても破綻が待っている。
「私としては――参加するのが良いかと思ってます」
 エリナは常日頃から思っているいることをついに公に表明した。
「だが、それでは我々としての誇りが――」
 筋骨隆々な男が声を上げる。
「誇りでは、お腹は膨れないさね! 現実を見るべきね!」
 長老格と思われる老女も声を上げる。
 議場は喧々諤々となる――属領であるカーンは腕組みしてその様子を見ている。
 議論はヒートアップしていく。
 部族会議の可否について女衆と男衆との衝突かと思いきや、賛成する男衆や反対する女衆といった様子が見て取れる。
「部族秋着に属するだけでなく、他部族との交流も図るべきだ!」
 若い、知的そうな男が持論を語る。
「いやよ! 強い我が部族の男の子供を授かるのがいいわ!」
 狩りの得意そうな女性外が反対する。
 先進的な意見と保守的な意見と言う意味でも議論はぶつかり合っていた。
 会議の様子を見ていたリーナは不安と焦りがあった。
 このままだと部族が滅んでしまうのではないかと。
 そうしてしまえば今までの生活がなくなってしまう。
 何もない辺境の地にて、リーナはハンター達とどんな依頼であれ、会うのを楽しみにしていた。
 だが、それも滅亡するようなことがあれば、家族も、知り合いも、ハンター達に会うことも全てがなくなってしまう。
 それだけは――どうしてもそれだけは避けたい。
 そんな事態を阻止したい想いが積もっていく。
 そして、喧々諤々の議論の中、リーナの積もった想いが爆発した。
「みんな聞いて!」
 悲痛な叫び越えが響き渡る――声の主はリーナだ。
 会議の観覧を許されていたリーナ、発現権はないのだが――感極まって声を上げた。
 発言が許されないはずだが、尋常でないリーナの様子から言葉の続きを聞くことにした。
「聞こうよ。他の人からも!」
 涙目になりながら声を出すリーナ。
「誰に聞くのですか?」
 当然の質問がリーナにに投げられる。
「ハンターの人達です。あの人達は色々な所に済んでいて、私達の知らないことも知っている」
 確かに依頼で合うハンター達は同じような辺境出身から王国や帝国や同盟――更にはリアルブルー出身者もいる。
 少なからずもハンター達に世話になってきたブルゲド族としては頼るべきだろうが――。
「良かろう! リーナよ、その責務はお前が負うのだ」
 カーンはリーナの言葉を聞き入れてハンター達にも意見を聞くことにした。
 自分の娘だからではない、部族を思うその気持にカーンはこたえた。
「身内の恥を晒してまですることか!」
 この出来事を端と捉えているものには耐えれないだろう。
 誇り高き部族と自負している人間にとってはなおさらだ。
「時間がないのはわかっているのだろう! ここは恥を凌ぐべきだ!」
 そう、ブルゲド族の残された時間は少ない――事実、もう恥も外見も無いのだ。
 だからと言ってすぐに恥を忍んでの『部族会議』への参加は彼等からして出来ない。
 許容ラインはハンターの招聘だろう。
 
「……助けて」
 祈るような気持ちのリーナはゲルを出て、ハンターズソサエティ支部へ向かう。
 どうしても滅亡するようなことは避けたかった。
 こうして、『大会議』にハンター達が招聘される事となった。

リプレイ本文

● ブルゲド族大会議
会議に通される前に事前にリーナ・ブルゲド(kz0039)とハンター達との情報の交換をしていた。
 
「この会議を行う上で辛いものを見るかもしれない。そこから目を逸らさないで…って、僕が言うまでもない事だと思うけど、何となくね? 辛そうに見えたから、様子を見に来たくなってさ」
 陽炎(ka0142)はリーナに賛成派に自分の立場を明かし、その上で部族会議への参入賛成を唱えたいと伝えた。

「部族会議のことを敵視しているのは『誰』なのか…」
 ルーガ・バルハザード(ka1013)は会議での参加者の立場や意見、性格などをリーナへと尋ねていた。
「お母さん……エリナは、『部族会議』への参加は賛成の立場――」
 エリナは其々の参加者の情報をハンター達へ伝える。
「嘘が嫌いで誠実な事を一番重要視する方は反対派の中にいるかい?」
 そう尋ねたのはリアム・グッドフェロー(ka2480)だ。
「はい、そういった人も反対派にも賛成派にもいます」
 リアムの言葉に答えるリーナ。
「元々嘘はつけない性格なんだ。私にできることは真摯に訴えることだけさ」
 そう答えるリアムだった。
「今の辺境と『部族会議』は――」
 エリス・ブーリャ(ka3419)は『辺境知識』で辺境の状態、部族会議のことを皆に説明した。

 こうして諸々の事前準備を行ってから大会議へと参加することになった。

 意見を述べ始めるハンター達。
 会議に参加している人々は黙ってそれを聞くことにしている。

「初めまして、エルバッハ・リオンです。よろしくお願いします」
 礼儀正しく挨拶するエルバッハ・リオン(ka2434)。
 挨拶を終えると一旦、身を引き会議に様子を観察している。

「部族会議への参加に賛成です」
 自身の意見を述べ、前に出る守原 有希弥(ka0562)。
「生きれば次へ繋がる、確かな存続を選ぶ時と存じます」
 それは守原が元CAM乗りのハンターとして蒼・紅の戰場経験から命あってこそと説く。

 そして、一度席へと守原は戻る。

 次は――リアムだ。
 皆の前に立つ。

「私も辺境の出身だ。ハンターズオフィスで辺境に関する報告書は一通り読んでいたのだけれども、どうも部族会議の方も色々紛糾しているみたいだ」
 あたりを見回して言うリアムから知らされる『部族会議』の様子。
「ブルゲド族には部族会議の力が必要なのはそうだろう。でもね、部族会議の方でもブルゲド族の力を必要としていると私は思うんだよ」
 そう、CAMの実験機材の輸送依頼や練習場の防衛など部族会議からの依頼もあった。

「だからこそ――」
 辺境が困難に見舞われている今だからこそ、辺境の部族が力を合わせ困難に立向かうべきであると語るリアム。
「少し前のオイマト族やドワーフ達のように、帝国の力に頼って生きるというのも一つの手。でも、それだと辺境は帝国の一部になってしまう」
 その言葉に明らかに嫌悪感を表す参加者の一部。
「ブルゲド族の持つ孤高の精神。それこそが今、辺境の民が辺境の民であり続ける為に必要とされているのではないかな?」
 何かを考える仕草の参加者、そうだと言わんばかりの表情の者達。
「部族会議への参加は恥ではない。むしろブルゲド族の誇りを辺境の皆に伝え勇気づけるいい機会になると、私はそう信じているよ!」
「そうだ!」
 リアムの言葉に賛同するように声を上げる賛成派と思しき参加者。
「最初は戸惑う事も多いとは思うけど、多少なりとも参加に積極的なエリナさんに外界に詳しいリーナさんが補佐につけば、心配はないと思うしね!」
 その言葉にリーナとエリナを見る参加者達。

 ここで、意見を言ったリアムが席へ戻る。

 リアムに変わって前に立つのは陽炎。

「確かに今まで続いて来た歴史を、ブルゲド族のあり方を変えてしまうという事に抵抗はあるかもしれない。けれど、君たちが本当に誇っているのは孤高なのかなって」
 そう、疑問を呈する。
「孤高の中にある本当の誇るべきものは、他の部族との関わりで薄れることなんて無い筈だよ。辺境の地で戦い続けた武勇が汚れるなんて事、決して無い」
 陽炎はそう言い切る。
 そう、誇るべきものは他部族での関わりで薄くなるはずがないと。
「それに、今この場で会議を開いているという事、これがきっと大きな分かれ道になる。今後部族会議への参入を考えよう、なんて談義が行われない可能性もあるんだ」
「そうなった時に君たちの子孫が、本当に大切な時に庇護に入れていなかったとしたら……」
 だからこそ――将来のことを考えればこそ。
「君たちは誇りを汚す事になるかもしれない、けど、未来を救えるのも君たちだろ?」
 この会議において未来をつなぐ――それを出来るのが今いる人間であることと陽炎は説いた。

 そして、席へ戻る陽炎。

 陽炎の次は紫月・海斗(ka0788)だ。

「ま、とりあえずはお歴々の言い分を聞かにゃあ始まらん」
 海斗は参加者の意見を聞くことにした――それは意見を言うために。
 海斗の態度は軽いが言葉は真剣だ。
 (っても誇りの問題が解決すりゃすんなり行けそーな気がすんなぁ。オジサン、そーいうの嫌いじゃないが状況によりけりだわな)
 様々な意見が海斗へと投げかけられる。
「オーケイ、言い分は聞いたぜ。んでもって確認だ。皆、現状を解ってねぇ訳じゃねぇ。だが、感情として納得できねぇって事だろ?」
 沈黙だが――心当たりあるのだろう、表情に出ている者もいた。
「それじゃぁ言うぜ。ちゃんと最後まで聞いてくれよ。俺は聞いただろう?」
 皆を見て言う海斗。
「先ず問うぜ。アンタ達は孤高を誇りとしている。それは『自分達だけで出来る』それが根底に在るからこそなんだろう?」
 その言葉は賛意とも取れる態度で見て取れた。
「なら、気付いてんな? 既にソレは前提が崩れている。現状自分達だけで出来ない状況になっているじゃねぇか。ハ、俺達がここにいる事がその証明だ」
 海斗のその言葉に怒りの表情を表す者もいた。
「お前さん達、孤高ってのを勘違いしてねぇか? 出来るから孤高なんじゃない」
 どういうことだ――と言う表情をする参加者たち。
「孤高で在ろうとする、その意志こそを言うんだ。何の為の孤高だ? 孤高となってどうするんだ? よく考えてくれよ」
 その言葉に考える素振をする者、深く考えるもの様々だ。
「何故、自分達で出来る事を誇りとしたのか。そして、それはそんなに簡単に失われるようなモノなのか」
 そこ言葉を巡って、参加者たちは互いの意見を言い合う――その言葉を巡って。
 海斗の言葉――誇りと孤高について外部の人間だからこそ言える意見であったと思えた。
 ブルゲド族だけではそれが当たり前として考えられていたからだ。
 しばしの間、議論が続く。

 そんな中――。
「何しろ、族長の皆々様と話をさせてもらうのだからな」
『辺境知識』と『礼儀作法』で立ち振る舞って様々な意見を聞くルーガがいた。
 ルーガもまた意見を述べるために話しを聞いていた。
(……反対派の誤解や思い込みを解きほぐせれば……)
 『話術』を使い、丁寧に、相手に対して礼を失しないように対応していく。
 ルーガは反対派の誤解や思い込みを上手いこと訂正しようとしていた。
 それ以外にもルーガは前回に起きた大規模戦闘についても語ることにした。
 皆の前に立つルーガ。
「青の星から来た者、この星の者、ヒトもエルフもドワーフも、様々な者が全力で戦い、歪虚を退けた。同じではないだろうか」
 ブルゲド族は知らなかった――そんな事があったことなど。
 そして、一致して歪虚と戦ったことに驚いていた。
「有事の際に、ともに剣を取り立ち上がるためには、仲間であるという『信頼』が必要だ」
 一呼吸おいて話しかける。
「以前、かむ練習場を私たちと共に守った時のように……」
 少なからずルーガの言葉に反応した人間がいた――そう、ルーガと共に歪虚から防衛を行った人間だ。
「それと……孤高と孤立、それは似ているようで違うものだ」
 ルーガは語る、孤高と孤立の違いについて。
 そう、周囲との関係を断ち切る孤立と他者と妥協することなく「名誉」や「誇り」といったものを重視する姿勢との違いを。

 さて、ここまで見ていたリオンがルーガの後に前に立つ。
 リオンは今まで反対派の様子を観察していた。
 リオンは反対派へと語りかける――。
「誇りは大事だと思います。しかし、滅んでしまえば、誇りを護ったことさえ語り継がれずに、ただ忘れ去られるだけ、ということになりかねないです」
 そう――滅んでしまえば忘れられてしまうそうすれば何もないのと同じだ。
「しかし――」
 頭ではわかっているのだろう、だが感情ではまだ納得いきかねないように反論する。
「忘れ去られるだけならまだしも、下手をすれば馬鹿にされる、ということもあります。その時、あなた方が滅んでいれば、反論することさえできませんが」
「ぐ――」
 これには反論できない――後世で馬鹿にされるような事になればそれこそ屈辱だ。
「このまま全員が部族会議への参加を拒否すれば、部族全滅も有りうるのだから、分散してリスクを抑えるのは一つの方策だと思います」
 リオンは本位では無いが、全員揃って滅ぶことを思えばまだましだと判断して、オプションとしてこの話を切り出した。
「部族を割るなど――」
 ありえないといった口調で反対派の人間も答えた。
 こうして、リオンは元にいた席へと戻る。

 次に現われたのはモナベン(ka3764)だ。
「俺は元辺境の部族の人間だ」
 元辺境の立場としてモナベンは話すようだ。

「今、歪虚は――」
 外から来た人間として歪虚が段々と厄介な存在になっていることについて話す。
「部族会議に入り交易ができれば――」
 交易は技術が発達したリアルブルーの物も流れていることを話し部族会議に参加する事は非常に重要だと話した。

「交易や、雑魔の被害とかどうんだ?」
 部族の交易の状況や雑魔からの被害状況を質問するモナベン。
 それに答える参加者たち。
 質問のやりとりを行うと一度、モナベンは席へ戻る。

 次は武装したアーヴィン(ka3383)だ
「折角の機会だし、他所で使う武器を見てみねえか。勉強になるぜ。つっても猟撃士向けだけだがな」
 辺境では見られないリアルブルー製の武器を見せるアーヴィン。
「最新式だ。弓とはそもそもの運用方法が違うが強力だぞ」
 丁寧に使用方法や性能を説明し、ゲルを出て実際に撃ってもらうことにした。
 弓も素材や構造が違うと思うので触ってもらう事にした。

 見慣れる武器を触ってもらった上でアーヴィンは――。
「部族会議に繋がれば、同盟や帝国と地続きになる。そうなればこういう武器も提供できるかもしれない」
 とメリットを話し。
「そりゃ、金かかるし、外交の手間はあるぜ」
 とデメリットも言う。
「リゼリオの猟撃士は良い銃と良い弓を揃えて一人前だ」
 持論を話すアーヴィン。
「ここの弓なら作りも良いし、欲しがるやつも居るんじゃねーか」
 そう、交易できれば売れるのではないかとアーヴィンは話す。

 アーヴィンの次はエリシャ・カンナヴィ(ka0140)だ。

「そうね、私からは『部族会議に参加しない場合のメリット』の説明になるわね」
 と、他のハンター達と違ったアプローチをするエリシャに困惑気味な参加者。
「部族会議に参加しないメリット、それはブルゲド族の『伝統』を現状維持することが出来るわね」
 反対はそれに頷く。
「そしてブルゲド族の『血統』と貴方達が言うところの『誇り』を守ることが出来るわ……あれ、これだけしかメリットなくない?」
 たったこれだけ、といった感じで話すエリシャ。
 そして、現状説明を始める。
「まず『伝統』、多分もう既に守れてないわよ? 他部族を受け入れた時点で、その部族の伝統が多かれ少なかれ流入してるんじゃない?」
 そんなことはない、といいたげそうな参加者も見える。
「次に『血統』、これも伝統と同じできっちり分けてないといずれは混じるわ」
 先ほどのいい炊けそうな参加者の表情が怒りに近い表情になる。
「最後に『誇り』、孤高が悪いとは言わないわ、強者が弱者に手を差し伸べるのも好感が持てるわ」
 怒りの表情のものも収まり、そうだろうという様子になる。
「でもね、年寄りどもの誇りで子供を犠牲にするな。それとも自らの子を飢えさせ苦しませることが貴方達の誇りとやらなのかしら? そんなものが誇りだというのならそんなクソ部族さっさと滅びれば良いわ」
 一気にまくし立てるエリシャ。
 複雑な雰囲気が場に流れる――そう、弱いものを犠牲にしてまで『誇り』なのだろうかという困惑だ。
 それぞれの参加者はエリシャの言葉について話し合っている。

 エリシャの後、モナベンが再び前に立つ。

「災厄の十三魔や――」
 猛威を振るっていることを話し、辺境の部族も被害にあっている事を話す。
「王国を襲って破壊をしたベリアル……」
 凶暴な歪虚の話をし、辺境の部族が一丸にならないと大変なことになると説明する。
 外の世界を見た辺境部族の一人として歪虚は侮れない相手だと力説するモナベン。
 参加者はモナベンが話す外の様子に真剣に耳を傾け、歪虚について話し合っている。

「次に『部族会議』へ参加した場合――」
 モナベンは部族会議へ参加することについてのメリットを話す。「アーヴィンが見せたような武器や食料など様々なものがリアルブルーから流れてきてる」
 彼等が知らないものや食物があること、それらが流通していることを話す。
「『部族会議』に参加すれば、リアルブルー産の物が手に入りやすくなるかもしれないし、部族としてより強い力を誇示かもな」
 モナベンは先程から仲間のハンター達の言っていたメリットを更に掘り下げる形で援護した。

 モナベンのあと、再び守原が前に立つ。

「他部族の庇護はどれぐらいですか?」
 かつて、守原は今はブルゲド族に庇護されているチュー族の経緯から、他部族の庇護について質問した。
「庇護部族数と庇護を知る外部の者はどれほどいますか?」
「他部族の庇護は――」
 チュー族を別にして1割程度、外部での知る人は少ないと答えた。
 その答えを聞いた守原は改めて言葉を紡ぐ。
 それは改めて『部族会議』への参加推奨の立場として
「先日CAMの警備への助力受諾や他部族庇護で見た強さ、孤高故に苦境を知り他者を助ける心を忘れぬ故と今日感じました」
 それは守原がブルゲド族と依頼で関わってきた事によって感じだことだった。
「庇護を受ける方が従うが筋なら身命を賭し守るが庇護者の責。合流部族が庇護を受ける決断をして守ると契ったなら、最善手を模索し誰かに手を伸ばしてでも守り生き抜くがブルゲドの行く道と思います」
 守原は庇護者という立場であるなら、責務を負って行くべきだと主張した。
「不参加時不心得者にこの点を悪評として利用される危険も心配ですしね」
 不参加故に悪評とされるのも不名誉なことだ。

 こうして、守原は自席へと戻る。

 様々な立場のハンター達が意見を言った。
 それを元に喧々諤々と意見が飛び交う。

 そして、最後――エリスの番だ。

「『部族会議』の参加について意見を教えてほしいな」
 エリスは反対派・賛成派から互いの意見を聞いた。
「エルは――」
 エリスは第三者の意見として反対派・賛成派の意見に対して誤解を生じさせないように尊重して簡潔に述べた。
「滅ぶのは仕方がないという意見があったケド――」
 反対派への説得を始めるエリス。
「考えてみてよ。今、歪虚に襲われた時、一人ならやられるのを覚悟するかもしれない。もしそれが大事な人と一緒にいたとしたら、自分を犠牲にしてでも助けるんじゃない?」
 一人ではなく――大事な人と一緒ならと言う喩え話をするエリス。
「そういう意味では部族の滅亡も同じ、皆の大切な人達にも関わる問題だよ」
 そう、一人の問題ではない――皆の、皆の大事な人間の問題であるとエリスは説いた。
「それに――部族が無事ならいくらでも立て直せられる、逆に滅んだらそこでおしまい」
 エリスは部族の誇りについても話す。
「『部族会議』の参加は「情け」でも「援助」でもない。困っている人がいれば助けてあげることは当然のことでしょ。それでも意志を貫きたいなら部族を立て直してから抜け出せばいい」
 『部族会議』についても話す――参加するのは恥でもないと説く。
「入ってからその後のことを考えたって遅くないと思うよ?」
 そう言ってエリスは言葉を止めた。

 参加した全てのハンター達の意見を述べた。
 後はブルゲド族の皆が決める事だ――。

 長い――長い、話し合いが持たれた。
 ただ――感情的なしこりから反対するというのはハンター達の意見によってなくなっていた。
 そう、全てが円満、満場一致ではないにしろ、ほぼ九割の賛成をもって『部族会議』への参加が決まった。
 反対した残りの一割も部族を離れること無く、従う事になった。
 ハンター達の想いと言葉によって世界が――部族が動いたのだ。
 ハンター達の功績は小さいものではないだろう。
 何故なら、小さいながら世界を救ったのだから。

 ブルゲド族大会議 Fin

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MVP一覧

  • 渾身一撃
    守原 有希弥ka0562

  • アーヴィンka3383
  • 混沌系アイドル
    エリス・ブーリャka3419

  • モナベンka3764

重体一覧

参加者一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士

  • 陽炎(ka0142
    人間(紅)|25才|男性|霊闘士
  • 渾身一撃
    守原 有希弥(ka0562
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • 幸運ランクE
    ルーガ・バルハザード(ka1013
    エルフ|28才|女性|聖導士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • スカートを履いたイケメン
    リアム・グッドフェロー(ka2480
    エルフ|15才|男性|魔術師

  • アーヴィン(ka3383
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
  • 混沌系アイドル
    エリス・ブーリャ(ka3419
    エルフ|17才|女性|機導師

  • モナベン(ka3764
    人間(紅)|18才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/03 23:45:41
アイコン ブルゲド族の為にできる事
守原 有希弥(ka0562
人間(リアルブルー)|19才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/01/09 02:44:28
アイコン 会議対策質問室
守原 有希弥(ka0562
人間(リアルブルー)|19才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/01/08 12:27:44