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【CF】龍園より愛を込めて~2年目~

マスター:鮎川 渓

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2018/12/20 22:00
完成日
2019/02/05 06:27

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●リゼリオから帰ってみれば
 転移門を潜った途端、乾ききった凍てつく空気が肌を刺す。それでもこの極寒の地で生まれ育った龍騎士達にとっては慣れ親しんだ故郷の空気。
「やっぱり龍園は落ち着きますね」
 胸いっぱいに吸い込んで、龍騎士隊隊長・シャンカラ(kz0226)はホッと息を吐いた。

 ハンターズ・ソサエティが企画した『ケーキバトルロイヤル』に参加するため、ここ数日シャンカラはダルマ(kz0251)はじめ数名の龍騎士とリゼリオへ赴いていた。
 聖輝節仕様に飾られたリゼリオの街は息を飲むほど美しかったし、龍園に住む自分達には想像もつかない程の大勢の人々が幸せそうに笑い合っている光景には、思わず胸が熱くなりもした。
 ――龍園にも是非、あの温かな光景を。
 そんな思いから、作ったケーキを沢山お土産に持って帰ってきた。リブとダルマはケーキを乗せた台車を引きにこにこ。
「ケーキ、皆喜んでくれると良いですねっ」
「味の保証はできねェけどなァ」
 そんなことを言い合いながら広場へ差し掛かる。シャンカラは出立前に龍園に残る龍騎士達にクリスマスの支度を手分けして頼んでおいた。
 きっと今頃広場には去年同様大きく立派なツリーが聳え、特設舞台やコケモモ酒を振る舞うテントの設営も始まっている頃だろう。
「今年はどんなツリーになっているでしょうか」
 わくわくしながらいざ広場の前へやって来ると――

「…………」
 思わず顔を見合わす。
 もう一度広場を見る。
「何も、ないですね……」
 そこには普段通りの、地面を氷に覆われた殺風景な広場があった。清々しいまでに何もない。
「隊長、カルマくんやカマラくんに準備頼んだんですよね?」
「ええ。去年ハンターさんと飾りを作った子供達にも、お手伝いをお願いしたはずなんですが……」
 シャンカラ困惑。そこへ、
「あああああ隊長おおぉぉぉーーーー!!」
「ダルマさんもホントすんませーーん!!」
 もみの木調達担当の双子・カルマとカマラがスライディング土下座で滑り込んで来た。足許が氷だけにスライディング距離が超長い。勢いつきすぎてそのままダルマの屈強な脚に激突した。
「お前ら、ツリーはどうした!?」
 びくともしないダルマに、強打した顔面をさすりながら双子は交互に言う。
「歪虚が空気読んでくれなくてッスね」
「雑魔がちまっちま出やがってッスね」
 双子が言うには、ここ数日軽微な戦闘が頻発し龍騎士達は出ずっぱり。怪我人こそないもののクリスマスの支度にまで手が回らなかったという。
「「すんませんーー!!!!」」
「あっあっ、でもここいらのは根こそぎ討伐したんで、」
「今年は隊長にもクリスマス楽しんで貰えると思うッス」
 そこへ何やら箱を抱えた子供達も駆けてきてシャンカラを取り囲む。
「隊長さん、もみの木はー?」
「ぼくたち一生懸命飾り作ったんだよー?」
 箱には子供達が手作りした素朴で可愛らしいオーナメントが詰まっていた。シャンカラ、ぐっと言葉に詰まる。クリスマス・聖輝節はもうそこだ。不安そうな子供達と視線を合わせるべく屈み込み、にっこり笑って言う。
「遅くなってごめんね。大丈夫、すぐ用意するからね。今年はケーキもたくさんあるから、楽しみにしていて?」
 子供達はたちまち笑顔になると、どこに何を飾るか楽しそうに話し始めたのだった。


●しかし限界はある
 子供達を不安にさせぬよう充分離れてから、龍騎士達は一斉にシャンカラに詰め寄る。
「しかし隊長殿よォ、去年はオーロラが見える原まで飛龍便を飛ばしたが、今から担当者のシフト組むのは無理じゃねェか?」
「つかイベントの日は雪らしいんス、オーロラは無理ッス!」
「え、じゃあアイスドームはどこに作ります?」
「ハンターさん達も来るんスよね? またコケモモ酒とジュースくらいしかないッスよ!」
 しかしシャンカラは何故か悟りきったような穏やかな微笑を浮かべ、芝居がかった仕草で胸に手を当てた。
「案ずることはありません……僕は西方で学びました。『クリスマス(聖輝節)は恋人達にとって重要なイベントである』とッ」
「いやまあ、確かにカップルや家族連れをよく見たがよォ?」
 首を捻る龍騎士達に、シャンカラは滔々と語る。
「愛する人と過ごすのに、一体何が要るでしょう? ……要りませんよね? 恋しいお方と居られれば他に何も要らない――そうですよね?」

(アッ、これ浸ってんじゃなくて現実逃避だ!)

 リブと双子はガクブルしたが、ダルマは盛大に吹き出した。
「年齢イコール恋人いない歴の隊長殿が、愛だの恋だの語るたァな!」
 すんっと真顔になったシャンカラ、佩いていた大剣をひしと抱きしめる。
「何を言ってるんです……? 僕の恋人はこの剣ですよ?」
「止せやい、火力馬鹿な隊長殿がそれ言うと危ねェ奴にしか見えねぇぞ?」
 シャンカラの額に青筋が浮かび、その手が柄にかかる。
「ははは。随分上から目線で語ってますけど、今現在お相手がいないのはダルマさんもご同様でしょう?」
「一緒にしてくれンなよ、経験が違わァ」
「経験? 数あれば良いような言い方ですね?」
「そうは言ってねェ。けど年齢イコール恋人いない歴ってこたァつまりど、」
 刹那、咄嗟にダルマが掲げた戦斧にシャンカラの大剣が激突!
「その先は刃で語っていただきましょうか?」
「いい度胸だ、お前がひよっこの時に散々泣かしてやったの忘れたかァ!?」
 膨大なマテリアルを滾らせ意地と意地のぶつけ合いを始めてしまったふたりをよそに、リブの耳を塞いだ双子はとっとと支度にかかる。
「さーもみの木調達行くッスよー」
「あー時間ないッスわー」


 ――そうして来るイベント当日。
 龍騎士達が奔走した結果、粉雪降りしきる広場には大きなツリーと特設舞台、そして飲み物とケーキを振る舞うテントが設置され、郊外には美しく磨かれたアイスドームが並んだ。氷細工のカバーをかけられた無数のキャンドルが優しくそれらを照らし出す。元々の景観の良さが幸いして、何とか体裁は整った。
 今年はホワイトクリスマス。物質的にはあまり豊かとは言えないけれど、ロケーションには恵まれた龍園に、2度目のクリスマスがやって来たのだった。

リプレイ本文


 キッチンに響く甲高い音。竜葵が首を巡らせると、藤堂研司(ka0569)が取り落としたおたまを拾おうとしていた。しかしその手は震えうまく掴めずにいる。
 視線を上げれば、洗い場には使用済みの皿や鍋が山と積まれている。そして竜葵の眼前には少量ずつ盛られた多様な料理の数々。ここ数日竜葵の食事やおやつはずっとこんな風だった。
 美味しいものを少しずつ沢山食べられるのは嬉しいけれど、研司はキッチンに篭もりっぱなし。それも難しい顔で。発端となったあの日は楽しそうだったのにと、竜葵は数日前に思いを馳せた。

「竜葵、龍園でクリスマスのイベントがあるんだって! 子どもたちもいるんだろう! こいつぁ腕によりをかけなきゃウソだぜ!」
 帰宅するなり、研司ははしゃいで竜葵に話しかけてきた。言葉は分からないが楽しげな様子を微笑ましく眺めていると、研司は勢いよく手を合わせ、
「そこで竜葵! 相談があるんだ!」
 竜葵、きょとん。
「龍騎士の皆さんの口に合うものは結構それなりに自信があるんだが、飛龍の皆さんの口に合う料理がわかんねぇ! つまりパーティ当日まで試食お願い! 皆のとびっきりの笑顔が見たいんだ!!」
 よく分からないなりに、助けが必要ならばと竜葵は首肯したのだった。

 竜葵は考える。どうしたら研司の眉間の皺が解けるだろう。目の前には沢山のご飯。悩みは尽きないが一先ず味わって頂く事にする。折角の料理だ、できたての内に頂かなくては。
 ある品を口にした途端竜葵は目を瞬いた。どれも美味しいけれど、この品は一等美味しい。拭ったように綺麗にさらえた皿を鼻先で押しやる。これ美味しい、もっと食べたいと。
「それが気に入ったのか!? オッケー……って、その皿何入ってた? ぴかぴか過ぎて分かんねぇ!」
 ほら、くるっとしたアレ、なんて竜葵に言えるはずもなく。
「確かその皿はアレだな!? よっし計算! 買い出し! うおぉぉ間に合えぇぇぇ!!」
 研ちゃんキッチンの慌ただしさは当日まで続くのだった。



 迎えたイベントの夜。
 広場に聳える巨大ツリーを、粉雪が少しずつ白に染めていく。特設舞台では神官達による演奏が始まった。正装した神官達は誇らしげに調べを奏で、子供達は憧れに満ちたた眼差しを向ける。
 そんな中、エンバディ(ka7328)は浮かぬ顔。今も青龍信仰者である彼が神殿を辞したのは、彼自身の意思ではなかった。
(……皆、キラキラしてるなぁ)
 つい今の自分と比べ溜息が漏れる。するとひとりの神官がこちらを見た。エンバディはぎょっとして仮面で顔を隠し、人混みの中へ紛れていった。

 広場の入口では、アーク・フォーサイス(ka6568)とムラクモが寒さに身を寄せ合っていた。アークはケープを手繰り寄せ、
「ああ、やっぱりこっちは特に寒いね……でもムラクモはここが故郷だし、少しは慣れっこかな?」
 ムラクモは鼻先に落ちてきた雪をぺろりと舐めた。その無邪気な仕草に微笑み、アークは広場へ目を移す。
「……人混みの中おとなしくしているより、自由に空の散歩とかして来る方がいいかな?」
 頷くが早いか、ムラクモは嬉しそうに舞い上がる。
「気をつけるんだよ」
 呼びかけたアークの頭上を旋回し、北の方角へ飛び去った。

「さっっっっむ!」
 別の入口にはミニスカサンタがいた。
 ミニスカサンタが、いた。
「誰よ龍園にまでミニスカサンタで来たの!? 私よ!! これは風邪ひくわ……」
 一瞬弱音を零したものの、彼女は頬をぺちんと叩き気合いを入れる。
「けど今の私はサンタ、プレゼントを届けるまでは死ねない……!」
 並々ならぬ気迫を滾らせたミニスカサンタが今、龍園に降臨した――!

 桜崎 幸(ka7161)は、雪を掴まえようと跳ねるやんちゃなユグディラ・キルシュにくすりと笑う。
「空気が澄んでて、すごく寒いけど、気持ちいいね。ねー、キルシュ」
 が、キルシュはつるっと滑って豪快に雪溜まりへダイブ! 雪を払いカタカタ震えだす。
「大丈夫ー!? んー、テントなら寒さしのげるかな? ケーキも配ってるみたいだし」
 それを聞いたキルシュはたちまち元気いっぱい駆け出した。
「もう……ふふっ。そんなに走ったらまた転んじゃうよー?」
 言うが早いか、再びすてんっと転んだキルシュだった。

 レナード=クーク(ka6613)はご機嫌でツリーの下を行く。
「また大好きな季節が来たやんねーっ!」
 季節の催しはつい童心に返ってはしゃいでしまう。手作りの飾りを見、
「今年も頑張って作ったんやねぇ」
 作り手である子供達の姿を探すと、家族や友達と連れ立って思い思いに楽しんでいる。
「……この日は皆、大事な人と一緒に過ごす日でもあるんやね。――それなら……俺は、」
 呟きは降る雪にかき消された。

 テントへ酒樽を運ぶ途中、シャンカラは少々不思議な光景を目にした。広場の隅で少女がひとり、小刻みに足踏みしている。少しずつ歩を進め、立ち止まっては首を傾げ、また少し進んで……
(何だか楽しそう……って、まさか迷子?)
 声をかけると、夢中になっていた彼女は驚き、
「ひゃっ! ……あっ、そこ踏まないで欲しいのです、アズラエル様の御髪なのですっ」
「え?」
 言われて足許を見れば、彼女の足跡が線のように刻まれていた。けれどこれが神官長の髪とは?
「雪を踏んで、跡でお顔を描いたのです。あちらは青龍様なのですよ」
「成程」
 先程の挙動や隅にいた理由が分かり、思わず微笑む。絵を描くため、まだ誰にも踏まれていないまっさらな雪が必要だったのだ。
「大作ですね」
「大きすぎて地上から見えにくいのですがー……あ、私ニア(ka6903)と申しますのです」
 言ってニアはぺこりとお辞儀。彼の方も名乗り改めて挨拶すると、「あとでお手伝いに行きますのです」とニアは笑顔で手を振った。

 シャンカラがまた進んでいくと、今度はブリジット(ka4843)とワイバーン・ロートに行きあった。
「来て下さったんですね」
「はい、今年はロートも一緒に。ここまで乗せてきてもらったんですよ」
 ブリジットが撫でるとロートは嬉しそうに喉を鳴らす。彼女はふと首を傾げた。
「そういえば龍園にはダンスはあるのでしょうか」
「ええ、昔から踊りや美術など様々な手法で青龍様を讃えてきましたから」
 首肯するブリジット。宗教都市の御多分に漏れず、龍園にも芸術家肌の人間が少なからずいるようだ。
「私は舞手でもありますので、ダンスも得意なのですよ。良ければあとで一緒に踊っていただけませんか?」
「僕ですか!? えっと……が、頑張り、ます」
「ふふ、そう固くならずに。では後ほど」
 ブリジットはドレスの裾を翻し、ロートと共に舞台の方へ去っていった。

 ダンスのお誘いに内心テンパるシャンカラだったが、テンパっている場合ではなかった。テントに戻ると、ケーキを求め子供達が詰めかけていたのだ。龍騎士達は大わらわ。シャンカラもカウンターの内側に入り対応していると、
「盛況だな」
 声をかけてきたのはカイン・シュミート(ka6967)。
「こんばんはカインさん。何にします?」
「コケモモ酒とケーキを」
 手渡しながらシャンカラは隣のテントを目で示し、
「あちらに卓と椅子を用意してありますよ。火も熾してありますので、良かったら」
「いや、折角だがエプイもいるし。広場の隅にいるから時間ある時にでも寄っちゃくれないか」
 シャンカラが二つ返事で頷くと、
「じゃ、後でな」
 カインは足早に戻っていった。
 入れ違いにリラ(ka5679)がやって来た。リラは興奮した様子で拳を握る。
「サッカーお疲れ様でした! 皆さんかっこよかったですよ♪」
 先の蹴球試合で、リラは帝国チームのチアガールとして参加し、可愛らしく試合を盛り上げてくれた。
「チアの皆さんとても華やかでしたね」
 シャンカラが感謝を述べると、リラはチアのポーズをキメてパチンとウインク。
「今回は帝国側でしたが、もし第2回があったら今度は皆さんの応援がしたいです♪ こんな風に!
 ふぁいとっ ふぁいとっ りゅーうーきーしーっ!」
 実はリラ、両チームに知人がいたので、帝国側だけ応援するのを心苦しく思っていたのだ。今こそはと試合時の振付けを再現し、大きく手を振り飛び跳ねる。リラの溌剌とした掛け声とダンスは周りの人々を魅了した。一頻り演技を終えるとたちまち拍手が起こり、リラは四方へお辞儀した。
「こんな可愛い応援がありゃァ、次は勝てるな!」
 とダルマ。
「その時ははりきって応援します! あ、後でまた歌いたいと思うので聞いてくださいね」
 シャンカラがブリジットと会った事を告げると、リラは楽譜を出して見せる。
「今回も準備万端です。それでは打ち合わせに行ってきますねっ」
 そう言って元気に手を振り、舞台へ駆けていった。



 きららかなツリーに、赤と緑で飾られたテント。随分様変わりした故郷の広場を、ユウ(ka6891)は軽やかに駆けていく。
「早く早くー!」
 彼女に伴走するのは呼ばわった両親ではなくワイバーンのクウだ。ユウの兄分とも言えるクウは、ユウが転んでしまわないか常に目を配っている。後からついてくる両親はその様子に目を細めていた。その眼差しにちょっぴり照れたユウは、幼い頃にしたようにふたりの間に身体を割り込ませ、それぞれの腕に腕を絡めた。
「ほら、早くシャンカラ様達の所へご挨拶しに行こう?」
 クウもユウを後押しするよう、両親の背を鼻先で軽く押しやった。

 テントにいたシャンカラは、3人を見て目を丸くした。
「おかえりなさいユウさん。えーっと?」
 ユウの両親は龍騎士。そのふたりがハンターのユウと共にいる事がなんだか不思議に思えたのだ。
「シャンカラ様、お世話になっております。こちらは私の両親です」
 シャンカラ驚愕。改めてユウの両親に頭を下げ、
「ユウさんには色々とご助力頂いてまして。先日の試合では俊足を活かし大活躍だったんですよ! 単身敵陣地へ斬り込んで行く姿は本当に格好良くて」
「そ、そんなことはっ」
 ユウの活躍を褒めちぎる彼に、眦を下げて相槌を打つ両親。隊長として憧憬を寄せる彼に褒められる事も、ハンターとしての活動を両親に知らされる事も恥ずかしく、真っ赤になったユウは別の話題を振ってみる。
「シャンカラ様は、折角のクリスマスですが恋人の方と過ごされないのですか?」
 何気なく発した問いだったが、彼は笑顔のまま固まった。代わりに通りかかったダルマが豪快に吹き出す。
「隊長殿は剣以外はからっきしだぜェ!」
「そっ、そうだったのですか!?」
 慌てて詫びるユウに、彼もまた急いでかぶりを振る。
「いえっ、僕は剣が恋人なので! ご家族と過ごされるのも素敵ですよね。ゆっくり楽しんで来てくださいね」
 "家族"と言う時、彼の視線はユウの後ろで大人しく待っているクウへも向けられていた。それが嬉しくて、ユウは微笑んで頷いた。

 そうしてテントをあとにすると、ユウは一時両親と分かれ、クウと夜間飛行へでかけた。綿のような雪が優しく降りかかる。
「見て、クウ」
 地上では今夜のために灯された明かりが、星のように瞬いている。これもまたユウが龍園にいた頃には見られなかった景色。けれど頬に当たる風は確かに懐かしい匂いで。
「ほんの少し前まで、クリスマスの事なんて何も知らなかったのに不思議な感じだね」
 感慨深く呟くと、クウは共感を示すように喉を鳴らす。
「でも何てあったかい光なんだろう……」
 ユウは目を閉じ、この幸せがいつまでも続きますようにと、青龍へ感謝と祈りを捧げた。


 件のミニスカサンタがテントを訪れると、龍騎士達は驚きのあまり固まった。
「はぁい、サンタさんよー」
「お姉様、寒くないですか!?」
 思わず叫ぶリブ。そう、ミニスカサンタの正体はお姉様ことトリエステ・ウェスタ(ka6908)だったのだ。心配する少女達にお姉様は艶っぽいポーズをキメて言う。
「おしゃれは気合い、サンタも気合へっくし」
 だかしかし風邪の魔の手が早くも伸びていた! 可愛いくしゃみで色気減かと思いきや、ギャップに萌えた少年達もいたりして。ともあれ。お姉様サンタは贈り物を取り出す。
「まずリブたち。今日はパルムのぬいぐるみよ」
「きのこ!」
「やだー可愛い!」
「前あげた人形がへっくし、好評だったっぽいからへっくし、似た方向性の物を……」
 前回のもっちゃりした人形は、全員で愛でられるよう隊の詰所に飾られている。この人形もその横へ鎮座する事になるだろう。それから少年達へ向き直る。
「ごめん、思いつかなかったからなんか欲しいもの書いといてくれたら今後参考にへっくし」
「今堪能してるんで大丈夫ッス!」
「は?」
 よく分からないが放っておいて、今度はまだ固まっている隊長へ。
「脳筋な貴方には代わりに身を護る新しい鎧と兜をへっくし」
「こんな高価なものを!?」
 鎧兜の重みに我に返った脳筋、おろおろ。
「今回はクリスマスだから関係ないけど、気になる子とか出来たらプレゼントとかで気を引へっくし」
「? えっと、じゃあ」
 彼は毛布を取り出すと、彼女をぐるぐる巻きにした。
「巻き方には物申したいけどあったかへっくち。ところで前あげたゲーム、少しは進へっくし」
「オープニング? は全部見れました!」
「ああ……何も押さなくても流れるものね、貴方的には安心よね」
 賑やかな彼らの後方で密かにわくわくしているオッサンがいたが、サンタはいい子の所にしか来ないと相場が決まっている。無事全ての贈り物を届け終えたサンタは、隊長により半ば強制的に火の傍の席へ案内された。


 賑やかな喧騒の中、ひとり感慨深げに目を細め、周囲を眺める男がいた。
「大規模作戦以来ですが……随分と綺麗になったものですね」
 元軍人らしく背筋の伸びた立ち姿。けれど眼鏡の奥の瞳は穏やかで理知的な光を湛えている。鹿東 悠(ka0725)だ。思いに耽りかけた彼を、可憐かつ明るい声が引き戻す。
「悠、悠! 見てこれ可愛い! あああんあれもこれも食べたくなっちゃうわ……!」
 ケーキを提供するカウンターの前で、ノア(ka7212)が緑の瞳をきらっきらさせている。
「本当にケーキがお好きなんですね」
「だって、女の子だものっ!!」
 握り拳を作って力説するノアは、若干可愛らしさよりも逞しさを感じさせたが、さておいて。
 コケモモの色艶やクリームの乗り具合など、ノアは並んだケーキ達を吟味しつつ皿へ盛っていく。ケーキバイキングを希望していた彼女の眼差しは、楽しげながらも真剣そのもの。
 彼女を待つ間、悠は火を借りてあるものを準備し始めた。カップを温めつつコーヒーを沸かしていく。香ばしい香りが漂い始めると、釣られたようにノアが戻ってきた。その顔は変わらず笑顔だが、膝が小刻みに震えている。今になって寒さが身にしみて来たらしい。
「寒いとは聞いてたけど、本当に寒いわねーっ」
 悠は皿の上のケーキの数に暫時度肝を抜かれたものの、何事もなかったかのようにカップにコーヒーと砂糖を入れ、ウイスキーを垂らす。最後にクリームを一絞り。
「アイリッシュコーヒーです。寒い地域のカクテルですから温まりますよ。ケーキと合わせてどうぞ」
「いいの?」
 ノアは一旦皿を置き両手でカップを受け取ると、早速口をつける。はふはふ息を吹きかける仕草が愛らしい。
「わ、あまーい。ぽかぽかするし、とってもおいしい……」
 上気した頬でふわふわ笑うノアに、悠の口角も自然と上がった。

 そうしてケーキとカクテルを手に雪の広場を散策したり、火の傍で語らったりと、ふたりは聖夜を満喫する。
 ふと会話が途切れた時、ノアは悠の横顔をそっと仰いだ。柔和な笑みを浮かべているけれど、ノアは彼の瞳の奥にどこか寂しげな色を敏感に感じ取っていた。それでも彼はいつだって先程のように気配り上手で、立ち回り方もずっと大人で、なかなかその哀しみに触れさせてくれない。
 ほんのいっときでもその色を拭えたら――そんな事を思っていると、舞台から流れ来る曲がノアの耳に届いた。思い立ち、ぐいっと悠の腕を引く。
「何です?」
 不思議そうにする悠を広けた場所へ連れ出した。粉雪が舞っているけれど、悠のお陰で心もおなかも温かだ。彼の腕に手を添えたまま、リズムに身を任せ踊りだす。
「ノアさん?」
(大丈夫、どうせ誰も見てないわ)
 そんな思いを込め片目を瞑って見せると、悠は眉尻を下げて肩を竦め、
「ただ今この一時だけは……ですね」
「何か言った?」
「いえ、何でも」
 すると彼の足も動き出した。真面目な彼が付き合ってくれた事が、そしてその口許がほんのり笑みを灯している事が嬉しくて、ノアは弾むようにステップを刻んだ。
 そうして曲が終わると、どちらからともなくお辞儀し合う。ちょっぴり照れて俯いたノアの視界に、彼の大きな手のひらがすっと差し込まれた。
「では、今度は俺にエスコートをさせて頂けますか?」
「えっ」
「この人混みではぐれては困るでしょう?」
 戸惑うノアの脳裏に、聡明な母の諭しが蘇る。
『殿方に恥をかかせてはいけませんよ』
 今がその時と察し、ノアはとびっきりの笑顔でその手を取った。
「ええ、勿論♪」
 そうしてふたりは散策の続きに出る。大きさも歩幅も違う足跡を、ぴたりと添わせ合いながら。


 子供達は何度もケーキを貰いに来ていたが、3,4個目になると流石に飽きが来たようで。カウンター前にたむろしダルマを仰ぐ。
「全部同じ味だねぇ」
「そらァ全部同じケーキだからな」
「違う味のも食べたぁい!」
「んー困ったね」
 シャンカラも弱っていると、
「でしたら私にお任せなのですよー」
 雪遊びを終えたニアがやって来た。取り出したるは蜂蜜や牛乳、無塩バターなど。それを淀みなくテキパキ鍋へ。
「ニアさんそれは?」
 尋ねるシャンカラに、ニアは鍋の中でとろりと狐色になった液体を見せて言う。
「生キャラメルソースなのですよ。トッピングに如何かと思いまして」
「くださーい!」
 子供達は大喜びで、ニア特製ソースを垂らしたケーキをぱくり。味変の効果は絶大、ケーキの消費が加速する! ホッとしたシャンカラがお礼を言おうとニアを振り向くと、何故かニアは首を傾げていた。
「……処で、このケーキ、製作者の方々はきちんと毒見をしたのでしょうかー?」
 これには製作者であるシャンカラとダルマ大慌て。
「作ったのは僕達でして、多分変な物は入れてないかとっ」
「毒味はしてねェけど味見ならしたぜ!?」
「味見済みなら大丈夫なのでしょうー。では私もひとつ……うん、コケモモは何にでも良く合うのです」
 少々パサついたスポンジをもっもっと食みしめるニアに、ふたりは顔を見合わせ安堵の息をついた。


「シャンカラ様~、ダルマ様ぁっ」
 ケーキを配っていたふたりは涙声で呼ばれ振り向いた。緑の仮面をした男がものっそい勢いで駆けてくる! ぎょっとしてる間に男はカウンターを飛び越えシャンカラにしがみついた。
「呑みましょぉ~というか呑ませて下さいぃ~!」
「ど、どちら様です?」
「ああっこれは失礼!」
 仮面の下から現れたのは、眉をハの字にしたエンバディだった。
「お前さんだったか。ンな顔してどうしたァ?」
 まさか『元同僚達との格差にヘコんで逃げてきました』とは言えないエンバディ、
「いっ、いいえ何でもぉ。ささ、お酌のひとつもさせて下さいなぁ」
 へらり笑って卓へ誘う。ふたりはその様子を不思議がり顔を見合わせたものの、言われるまま席についた。

 エンバディが注いだコケモモ酒の杯を景気よくかち合わす。
「青龍様に乾杯!」
 一息に干せば、馴染みの甘酸っぱさが喉に染みる。郷里の酒の懐かしさに、エンバディの唇に笑みが灯った。
「里帰りも悪くないですねぇ」
 それを聞いたシャンカラはホッとして微笑む。
「お友達やご同輩に会ってこなくて良いんですか?」
「えっ」
 シャンカラは焦るエンバディをじぃっと見つめ、
「元龍騎士ではなさそう、ですよね? あ、神官さん達が舞台にいますよ。一緒に行っ、」
「だだ大丈夫ですぅ! それより呑みましょうっ。ね、ダルマ様!?」
「おう! 嬉しいじゃねェか、折角の帰郷中に俺らを訪ねて来てくれるなんてよォ!」
「ふふ、本当ですね。いつでもお待ちしてますよ」
 そうして杯を重ねる内にダルマの早いペースに巻き込まれ、いつしかエンバディはくったり卓に突っ伏した。


 シャンカラ達が呑んでいる間、テントでは元新米達が頑張っていた。カウンターで対応していた双子は、お客達の向こうに懐かしい顔を見出しぶんぶん手を振る。
「レオさーんッ!」
 その名にリブも身を乗り出す。約1年ぶりに会う彼らの友人は、トレードマークのヒーロースーツではなくジャケットという出で立ちで、目が合うと少し遠慮がちに会釈したのだった。

 一通りお客がはけるのを待って、レオライザー(ka6937)は3人の許へ歩み寄る。
「龍園でクリスマスイベントをやるって聞いて、今どうしてるか……って思って」
 持参した桜餅をどこかぎこちなく差し出すレオに、3人は空いた時間をまるで感じさせない笑みで言う。
「皆元気ッスよ、顔が見れて嬉しいッス!」
「わぁ、桜餅だぁ♪」
「一緒に食いましょ!」
 双子はレオの返事も待たず包みを開け、内ひとつをレオの手に乗せた。強引さに苦笑しつつ一緒に食みつけば、待ち遠しい春の香りが口中に広がる。
「俺ら新米卒業したんスよ!」
「本当かい? おめでとう!」
 食べながらこの1年の出来事を語らっている内に、レオのぎこちなさも少しずつ解けていった。ところが、
「ケーキおかわり!」
 子供達が来ると途端にそわそわしだす。そして少し悩み、思い切って3人に切り出した。
「久しぶりに軽く覗きにきただけ、のつもりだったんだが……もし構わなければ、ケーキ配り、オレにも手伝わせてくれないか?」
 実はレオ、さっき遠目に眺めていた時も、子供達の笑顔に心が疼いて仕方なかったのだ。
「出しゃばりかもしれないけれど、オレが護りたいもの、一番大事にしたいものは子どもの笑顔だから」
 是非にと3人が頼み込むと、レオは物陰へすっ飛んでいく。出てきた時には情熱的な赤きヒーローに変身していた。歓声をあげる子供達の前へ華麗な前宙で躍り出ると、
「オレはレオライザー! 子ども達と龍騎士の友!」
「かっこいー!」
「今のもっかいやって!」
 子供達はもう大喜び。皆が皆レオの手からケーキを貰いたがるものだから、たちまち長い列ができた。マスクに隠れ表情こそ窺えないが、活き活きとしたレオの所作に3人まで嬉しくなる。ヒーローとは敵を倒す者ではない。稚い子供達を笑顔にし守る者こそ、ほんとうのヒーローなのだ。
 きっとこの行列を捌き切る頃にはお疲れだろう。3人はヒーローを労うべく、後で食事に誘おうと頷きあった。


 去年と同じ場所に立つツリーを、今年は共に見る事ができる歓びに、鞍馬 真(ka5819)はワイバーン・カートゥルの首へ抱きつく。
「里帰りだね、カートゥル。故郷のツリーはどう?」
 カートゥルはツリーを見上げた。カートゥルにはコレがどういうモノか分からない。けれど真を笑顔にしてくれるコレはきっと良いモノだ。そう思い首肯した。
 枝々には龍園の子供達お手製の飾りが下がっている。真は折り紙で作られた飾りを指す。
「ワイバーンの飾りがあるよ」
 不格好なそれは、鳥のような龍のような。自分と同じ飛龍なのかと首を傾げるカートゥルだったが、真は不器用に折られたそれへ慈しむように手を伸ばす。
「きっと子供達が一生懸命折ったんだろうね。可愛いね」
 その言葉全てが理解できるわけではないが、へちゃむくれの折り紙飛龍に何だか愛着が湧いたカートゥルは、軽く息を吹きかけ雪を払ってやった。それを見た真は目を細め、抱きしめる腕に力を込める。
 肌触りの違う肌と鱗が触れ合うと、どうしてこんなに心地良いのだろう。互いの感情や想いが温もりを通し伝わってくるようで、ひとりと1頭は人目も気にせず触れ合った。けれどここは龍園、龍と人とが古くから共存する都。むしろ人々は微笑ましげに眺めて過ぎる。
 舞台では、休憩していた神官達が演奏を再開した。曲に合わせ、真は歌を口遊む。音楽も温もり同様、種族を越え共に感じ愉しめるもの。カートゥルの身体も揺れだした。ところが、
「わっ!?」
 真はビクッと肩を跳ねさせる。建物の陰から巨大な飛龍の頭が突き出てきたのだ。カートゥルよりも一回りも二回りも大きいその飛龍は、去年飛龍便を担っていた大型飛龍。真が紡ぐ調べを気に入っていて、今宵も歌声に釣られて来たらしい。
「やあ、今にきみを探しに行こうと思ってたんだよ!」
 真は破顔して飛龍に駆け寄る。飛龍の方はその巨体ゆえ、それ以上広場に近づけないのだ。親しげな様子に驚いたカートゥルは慌てて間に割って入った。すると飛龍は不満げにカートゥルを睥睨。けれどカートゥルも退かない。真は2頭を交互に見ておろおろ。
「えっと……そうだ。広場には入れないんだし、一緒に散歩でもしようか? 空からツリーを見るのも良いかもね」
 そう提案すると、カートゥルは真を自らの背へ押し上げた。あくまで真の相棒は自分だと主張するように。飛龍は鼻を鳴らすと、真を乗せたカートゥルを尾で巻き取って背に乗せ、夜空へ羽ばたいた。
「凄い……」
 飛龍の背にカートゥル、カートゥルの背に真。ちょっと不思議な体勢のまま、降る雪に逆らい舞い上がる。地上には広場を中心に瞬く無数の灯り。あの灯りの許で人と龍が幸せな夜を過ごしているのだと思うと、真の瞳は自然と潤んだ。
「……綺麗だね」
 真の唇が感嘆を零すと、2頭も柔らかく喉を鳴らした。


 キルシュとテント前へやってきた幸は、そっくり同じ狐顔の双子を見つけ思わず笑みを零す。先達ての蹴球試合では会う事ができなかったのだ。
 けれどその時に知れた事もある。幸はふたりの反応を想像し、緩みそうになる唇を噛みながら近づいて行く。
「幸くん!」
「来てくれたんスね!」
 すぐに気付いて手を振る双子へ、幸はとっておきの一言を口にした。
「カマラくん、カルマくん、メリークリスマス♪」
 伝えそびれていた――というか双子双子と一纏めにされているためハンターで知る者はいないだろう――名で呼ばれ、双子はこれ以上ない位に驚いた。幸は堪えきれなくなりくすくす笑いだす。
「この前ダルマさんに教えてもらったんだよー。いきなり呼んだらびっくりさせちゃうかなぁって思ったんだけど、名前って大事なものでしょ? だからちゃんと呼びたいなぁって」
「さ、幸くんっ」
 個々の名を呼ばれるどころか、リブとダルマ以外の人に見分けられる事すら稀な双子は、感動に咽び泣く。
「幸くんに呼んで貰える日が来るなんて!」
 ふたりを宥めている間に、幸は極些細な髪の癖の違いからふたりの見分け方を発見して嬉しくなる。
 と、キルシュが大きなくしゃみをした。
「大丈夫キルシュ? さっき雪溜まりに突っ込んじゃってねぇ」
「大変ッス、隣に連れてってあげてください」
「あったかい飲み物持っていくッスよ」
 カマラは隣のテントを指し、カルマは毛布を差し出す。ありがたく受け取って、幸は隣へ急いだ。

 ぱちぱち爆ぜる薪に手を翳し、キルシュはほぅっと息をつく。幸はその身体を毛布で包んだ。
「良かったねぇ」
 そこへ双子がケーキと温かなコケモモジュースを持ってやって来た。
「ありが、」
 幸が言い終わるより早く、さっと飛び上がったキルシュは双子の手からケーキを取り、ちょこんと卓につく。3人は顔を見合わせ吹き出した。
「そうそう、二人にクリスマスプレゼントも用意してきたよぉ」
 幸は隠し持ってきたものを差し出し、
「じゃじゃーん、二人お揃いのブレスレット♪ 僕も付けて見てるんだけど、結構いい感じだと思うよぉ」
 思ってもみなかった贈り物に、双子はもう言葉もない。ふたりお揃いどころか幸ともお揃いだなんて。勿体なくて手を出せないふたりへ幸がつけてあげると、涙声で言う。
「一生の宝物にするッスよ」
「大袈裟だよぉ。でも喜んでくれてよかったぁ♪」
 それから双子はべそべそ泣き、幸はまた宥めるのに大忙し。そんな3人を、頬をクリームまみれにしたキルシュが楽しげに眺めていた。


 カインが広場の隅に戻ると、エプイはろくに身動ぎもせずにいたのか、雪で頭や背が白くなっていた。
「律儀だなエプイは。龍園知ってるんじゃねぇの? 里帰りになるかもと思ったんだが。もしそうなら故郷の景色の一つも楽めば良いのに」
 言いつつカインは雪を払っていく。けれどエプイの双眸は景色に向けられる事はなく、焦がれたその手にじっと見入り幸せそうに細まるのだった。
 エプイが彼の手の温もりにうっとりしていると、コリー犬のローズが苛立ったように鳴いた。見れば鈴蘭型妖精のミュゲが彼の肩に乗り、自慢げにローズを見下ろしている。
『下りてよ、ベタベタしないで!』
 大方ローズはそんな事を言っているんだろうとエプイには分かる。何故なら自分も同じ気持ちだから。エプイは勿論ローズも流石に肩には乗れない。ミュゲは分かっていてわざと見せつけているのだ。
 エプイが軽く睨めつけるとミュゲは余裕の表情で見返してきたが、すぐにその目をつり上げた。そう、全員が求めてやまない彼の手は今、エプイの背にあるのだから。乙女達の想いと視線がぶつかり合い、聖夜に激しく火花を散らす!
「ローズどうした、機嫌悪ぃな。ミュゲが悪戯でもしたのか?」
 しかしカインは気付かず、だめだぞーなんて嗜めがてら、指先でミュゲの雪を払う。肩も指も独占したミュゲ、渾身のドヤ顔でライバル達を睥睨! ローズは一層甲高く鳴いたが、
「そんなツンケンすんなよ。な?」
 彼の笑い顔に胸射抜かれ口を閉じた。雪も払ってもらってもう夢心地。そうなるとやっぱりエプイとミュゲは面白くないわけで。再びバチバチ交錯する視線。一向に気付かないカインは、そんな彼女達を微笑ましげに眺めコケモモ酒をくいっ。
「皆仲いいのな」

 その様子を、やって来たシャンカラが遠巻きに見ていた。
(え、これ修羅場ってヤツなんじゃ……?)
 彼も大概鈍感だが他人の事はよく見えるもの。乙女達の争いに慄いていると、カインが振り向いた。
「なんだ、来たなら声かけりゃいいのに」
「い、今来た所ですっ」
「?」
 ともあれ。
 カインはシャンカラの手に包みを乗せた。ほわっと甘い香りが立つ。
「開けても良いですかっ?」
「勿論」
 入っていたのは、良い色艶のナッツチョコレート。
「チョコ溶かしてナッツで固めただけなんだけど、後で龍園の皆で食って。いつもお疲れさんって思ってな、ちょっとしたもんだが差し入れ」
「いつもありがとうございます!」
 元気よく答えた後、彼はチョコに視線を落としそわそわ。すぐにピンときたカインは思わず苦笑する。
「後でっつったけど、食いたいなら今食えばいい」
「でも皆の分が減ったら怒られ……あ」
 彼は閃いた顔でひとつつまみ、カインの口へ押し込む。それから自分もひとつ食べ、
「これでカインさんも共犯です♪ 美味しいですね!」
「子供か。……ま、口にあったなら何より。また帝国に足を運んでくれよ?」
 もごもごしながら頷くシャンカラに、カインはもう一度苦笑いを零した。


「たいちょ~さぁんっ♪」
 テントへ戻ってきたシャンカラは、その声に反射的に身構えた。しかし声の主は回避の間も与えぬ光速ハグでがっちりホールドをキめ、ものっそいイイ笑顔でにっこり。
「は、ハナさん」
 そう、星野 ハナ(ka5852)である。テント脇には荷を満載したハナのワイバーン・バーンちゃんもいた。
「聞きましたよぅ、恋人募集中だそうじゃないですかぁ!」
「募集中というか、」
「いくらでも立候補しますよぅ」
「恋人がいないだけ……はい?」
 思わぬ申し出にぽかんとする彼を、ハナは上目遣いに仰ぐ。
「ダルマさんには恋人できたって言ってぇ、帰りには方向性の違い? で別れたって言っておけば問題ないですぅ。それで彼女いない歴=年齢卒業ですぅ」
「だ、ダメですよっ。それだとハナさんの経歴? にも傷をつけてしまうでしょう?」
 彼が真っ赤になってかぶりを振ると、
「傷ってあんまりじゃないですぅ? 私と付き合ったら、隊長さんにとっては傷になるとでもぉ?」
 ハナは両手で顔を覆いさめざめ。彼は青ざめおろおろ。
「誤解ですっ、ハナさんは素敵な方です! お料理上手ですし、笑顔も可愛らしいですしっ」
 するとハナ、にぱっと笑うと再び抱きついた。
「じゃあ初カノは私がいただきましたぁ♪」
「え」
 それから腕を緩め、
「やっぱり方向性の違いがぁ……別れましょぉ」
「待っ」
「はい、卒業完了ですぅ♪」
「!?」
 翻弄されまくり、彼はしんなりしゃがみ込む。追ってハナも隣へしゃがみ、
「どうしましたぁ?」
「いえ、こう、心の整理が」
「繊細さんですねぇ。私はシャンカラさんのこと好きですよぅ」
「っ!?」
「筋肉は好みだしぃ、腹減りんぼですっごくイイ顔で料理食べてくれるのもうれしいですしぃ、押しが弱くてシャイで人馴れしてなくてぇ、それでも譲れない所は譲らない悩み虫な貴方が大好きですぅ」
 所々胸抉られ、彼はますます項垂れる。
「でもぉ、それは惚れっぽい私の一方的な恋情なのでぇ」
 ハナはそんな彼の頬をつつき、くすくす笑って立ち上がった。
「本気で恋人がほしくなったら思い出して下さいねぇ。諸手を挙げて歓迎しますぅ」
 その笑顔はいつものように愉しげで、どこか本心が読めなくて。
「日本じゃケーキとツリーとプレゼントとチキンがあれば立派にクリスマスですぅ。そういうわけでぇ、腹減りんぼの貴方にプレゼントですぅ」
 そう言ってバーンちゃんから下ろしたのは、シチューの大鍋に大量のパン。テントで火を借り温め直したシチューを、くり抜いたパンへ注ぐ。
「はい、熱いから気をつけてくださいねぇ?」
「ありがとうございます」
 まだ気持ちの整理がつかずにいる彼へ、ハナはひらりと手を振る。
「子供達の分もあるので後で呼んできて下さいねぇ」
 言ってるそばから匂いを嗅ぎつけた子供達がやってきて、ハナは対応に追われる事になった。取り残されたシャンカラは、パンをシチューに浸してぱくり。優しい味に頬が綻ぶ。子供達に笑顔で応じるハナを眺め、
(本当に不思議な方だなぁ。ああしている姿は、とっても素敵なんだけど)
 深い溜息をついた。


「ケーキのお返し、どうぞやでー!」
 テントを訪れたレナードは、龍騎士達へ贈り物を手渡していく。
「オーナメント型のクッキーだぁ♪」
 可愛らしい手作りクッキーは、特に少女龍騎士に大好評。はしゃぐ彼女達にレナードはこっそりダルマの居場所を尋ねてみる。
「洗い物をしに行ってますよ」
 すぐ傍の建物だと言うので、お礼を言いそちらへ向かった。

 入口を潜ると、目の前の広間にダルマはいた。何と悠々と煙草をふかしていた。
「べべ別にサボってたワケじゃないぜェ? 作業は終えたんだ」
「僕何も言うてへんよ?」
「お、おう。で、こんなトコへどうしたァ?」
「ダルマさんに会いに来たんや」
 レナードは気恥ずかしくなり小声で告げる。
「友達同士でも『デート』って……大丈夫、やろか?」
「俺とかよ、物好きだな!」
「ヒドいっ」
 一頻り笑い飛ばすと、ダルマはレナードの手を掴む。
「ンじゃ、ちっと行ってみっか」
「ほんまに!? へへー。いざ、聖輝節の日を冒険やーっ!」
 気を持ち直したレナードは、繋いだ手をぶんぶん振って歩く。けれどダルマは外には向かわず、何故か階段を登り始めた。
「どこ行くん?」
 尋ねてもダルマはニヤリと笑うだけ。やがて上階の廊下の端までやってきた。突き当りの窓は一面霜が降りていて何も見えない。それをダルマが押し開けると――
「!」
 ツリーの天辺を飾る大きな星が、すぐ目の前にあった。思わず身を乗り出し手を伸べる。触れられはしないけれど、金色の輝きがレナードの手をほのかに染めた。
「綺麗やねぇ……」
「横から見ンのもオツだろ?」
「せやねぇ。けど、それだけじゃなくて――一緒に見る人が居るからなんだろうな」
 最後は小声で独りごちたレナード、窓枠に頬杖をつきダルマを見上げた。
「……えへへ。ダルマさんって何だかお父やんみたいな人やから、一緒にいると安心する気がする……やんね?」
「あァ!? 俺ァまだ29……もう29か」
「歳の話やないのにー」
 肘で腕を小突き、そのまま肩寄せ笑いあう。
 去年は真近で極光を、今年は真近で天辺の星を共に見た。来年もまた何か素敵なものを一緒に見られたらと、レナードは目の前の星にそっと祈った。


「わわ、アイスドームってこんな感じなんですねぇ」
 入口を潜るなり、氷雨 柊(ka6302)ははしゃいで声を大きくした。ドーム型なのに不思議と声が響かない。氷の壁に音が吸い取られていくようだった。
「……頼む、少し奥へ進んでくれないか。入れない」
「はにゃっ!?」
 入口を塞いでしまっていた柊が急いで退くと、カップを両手に持ったクラン・クィールス(ka6605)も入ってきた。外の寒さにふるりと身震い。
「……やはり此方は、また一段と冷えるな」
「はにゃあ、そうですねぇ」
 けれどふたりはすぐに揃って首を捻る。
「……案外、中は暖かいな。氷でできているのに」
「本当ですねぇ。ああ、きっとこれのお陰ですよぅ」
 柊はしゃがんで床に触れた。龍鉱石のタイルが敷かれていて、触るとじんわり温かい。壁際には小さな卓と椅子がふたつあり、座面にも同じタイルが用いられていた。
 柊は少し考え、借りてきた毛布を床に敷き腰を下ろした。クランも異を唱えるでもなく同じように隣へ座る。腕や肩が自然と触れ、柊はこっそり微笑んだ。卓を挟んで向かい合う椅子だとこうはいかない。
「ん……何だ?」
「えへへー、何でもないですよぅ。それより今年からは一緒に飲めるの嬉しいですねー」
 クランが差し出したカップを受け取ろうとすると、指が触れる間際でひょいっと高く掲げられてしまう。クランは念を押すよう一言一言しっかり告げる。
「……確かに成人したし、酒は付き合えるが……また酔ってくれるなよ……?」
「飲み過ぎ注意、ですよねぇ? ちゃんとわかってますよぅ」
 にぱっと笑う柊に対し、クランは不安気な顔になる。
 果たしてクランの不安が的中するのに、ものの数分かからなかった。

 問)クランの懸念が現実になるとどうなるか?
 答)柊が大層可愛くなる。

 酒に弱い柊は、喉を湿した程度で見事に出来上がってしまった。
 クランの腕に身体をもたせかけ、上気した頬をくったりと肩に預けている。紫水晶の瞳は今にもとろけ出しそうに潤み、上目遣いの視線がいつになく艶っぽい。
「はふ……お酒飲むとぽかぽかしますねー」
 それでいて無邪気な笑みで甘えた言葉を繰り出すものだから、クランは色々と堪らない。
「……だから酔うなと、言ったんだがな。こうも早いと止めようもない……」
 そんなクランの心も知らず、
「クランさん、お膝乗ってもいいですかー? くっつけばぬくぬくですよぅ」
「膝? いやそれは、」
 良いかと尋ねておきながら、柊は返事を待たず膝の上へちょこり。
「……おい。話を聞け」
「ふふー、思った通りぬくぬくですねぇ」
 クランはやれやれとかぶりを振り、柔らかな感触から無理やり意識を逸す。
「……距離感がまともになったと思ったら。酔うとこれだからな……まったく」
 けれど柊の視線はじぃっとクランを捉えたままいつまでも逸らされない。不思議に思い見つめ返すと、
「はにゃ、クランさんのおめめ綺麗ですねー……夜空みたい……」
 次の瞬間、膝の上から柊の重みが消えた。腰を浮かせ伸び上がった柊の顔が間近に迫り、驚き何か言いかけた唇を唇で塞がれる。濡れた唇は軽い音をたて離れていき、元通り膝に座り直した柊は悪戯っぽく微笑んだ。
「……ふふ。この前のお返し、ですよぅ」
「っ……!」
 さてここはどう返したものか。予期せぬ口付けに麻痺しそうな頭を叱咤し、やっとの事で返事をしようと顔を覗き込むと――何と柊、すよすよ寝息を立てていた。
「は、」
 クラン、脱力。どうしたものかと冷めたコケモモ酒を呷る。けれど唇に触れた熱の余韻は少しも冷める事はない。
「……本当に、……人の気も知らずに、コイツは」
 苦笑いでひとりごちると、行き場を失った熱を一欠片込め、額へ唇を落とす。
「……おやすみ」
 柊の小さな寝息と、天井に粉雪が降りかかるかすかな音に耳を澄ませながら、やがてクランも瞼を閉じた。


 雲隠れしたダルマに代わり、ケーキ配りのカウンターにはアークが入っていた。すまなさそうに頭を下げるシャンカラに、アークは笑ってかぶりを振る。
「こういうことって、あんまりしたことないから新鮮で楽しいよ」
 シャンカラは、嬉しそうな困ったような顔で息を吐く。
「敵いませんね。周りを気に病ませないような台詞をさらっと」
「そんなつもりじゃ」
「アークさんのそういう所……、」
 その時、双子がダルマを見つけ戻ってきた。
「銀髪の別嬪さんとでぇとして来た、悪ィな!」
 悪びれないダルマにシャンカラにっこり。
「なら僕もでぇとしてきます、文句ないですね」
 言い切ると、ぽかんとするアークの腕を取りその場を離れた。

 そうして隣のテント内、火の傍の席を確保すると、シャンカラはふたり分のコケモモ酒を卓に置き深々と頭を下げた。
「お手伝い頂いた上、勢い連れ出してしまってすみません」
「構わないよ。"銀髪の別嬪さん"って誰だろうね?」
 それが自分の友人だとは露知らず、アークは温かなコケモモ酒を口に含む。去年は半分こしたな、なんてしみじみ思い出す。それからケープの内側に手を差し入れ、
「構わないというか……きみに渡したいものがあったから、丁度良かったというか……プレゼント、渡したくて」
「僕に?」
「誕生日には間に合えなかったから、クリスマスプレゼントと一緒になっちゃったけど。よければ、受け取ってほしいな」
 そう言って取り出したのは、銀細工の美しい薔薇の花。炎の不規則な光を映し、息づくように艶帯びて光る。
「こんな綺麗なもの、良いんですか?」
「ん……実は、」
 アークははにかんでケープをめくって見せた。ケープで隠れていた胸元には揃いの銀の華が。
「友達とお揃いって、してみたくて。この年になってそう思うのは、おかしいかな」
 それを聞くと彼は迷わず受け取って、アークと左右対になるよう自らの胸に差した。
「似合いますか?」
 アークが頷くと、彼は指先で大事そうに銀の花弁へ触れる。
「お揃い、嬉しいです。アークさんは僕にとって友人であり、過ちを止めてくださった恩人でもありますから」
「まだそのこと、」
「もう気にしてはいません、忘れないだけです」
 彼は真っ直ぐにアークを見て微笑む。
「本当に嬉しいです。大切にしますね」


 丁度ダルマがテントへ戻り軽口を叩いた所へ、丁度木綿花(ka6927)がやって来た。
「ダルマ様はまた"別嬪さん"ですか」
 呆れたように零す彼女へ、双子はバッと頭を下げる。
「女将さん、こんばんわッス!」
 木綿花が小首を傾げると、双子は何故か得意げに胸を張る。
「前にダルマさんをぴしゃりと嗜めてたじゃないスか。それが女将さんってカンジだったんで!」
 苦笑する木綿花にダルマはニヤリと笑った。
「何だァ女将、ヤキモチか? 心配すんなぃ、女将もとびきり別嬪さんだぜェ?」
 木綿花は目を丸くし口を開こうとしたが、ダルマはするりと仕事に戻って行ってしまう。その背へ深々と溜息をついた。

「ダルマ様は何と未婚だったのですか」
 それから手伝いに入りつつ、元新米達にサッカー試合の写真を見せながら話に興じていた木綿花は、意外な事実に目を瞬く。リブはダルマがボールをスルーした瞬間を激写した写真に笑いを堪えつつ、
「ええ、ああいう人ですから奥さんになろうって方なんて……ぷぷっ、この顔!」
「はぁ……でしたら尚のこと。誰を見ても"別嬪さん"と気が多い素振りを見せていては、ダルマ様をお慕いする子はやきもき……悲しくなりますよね。勿体ないから気を付けた方が良いのです」
「そんな女神様みたいな方いますかねー?」
 すると双子が顔を上げ声を潜めた。
「前はああじゃなかったらしいッスよ。若い時は婚約者がいたみたいで」
「まあ!」
「でも随分前に亡くなったって話で」
「……そんなことが、」
 木綿花はダルマの軟派な素振りを思い返す。もしかしたら彼女の事を忘れられずにいるか気に病んでいるなりして、本気で誰かを好かぬようにああした振る舞いをしているのだろうか。何にせよ難儀な事だと、またひとつ吐息を零した。


 飲食スペースを備えたテントの一角に、一際甘いムードを漂わすふたりがいた。
 椅子をぴたりとくっつけ、椅子に負けぬほど互いの身体を寄せ合って、何とも仲睦まじい様子。
「ここに来たらコケモモジュースは忘れちゃいけないよねーっ」
「……唇、赤くなっているぞ」
 ひとりがジュースで赤く濡らした唇を、もうひとりが指の腹で拭いぺろりと舐め取る。目が合うと額を寄せクスクス笑い合った。
 片や、黒革のコートを着こなした中性的な少女。
 片や、結い上げた髪が凛々しい瑠璃の瞳の少女。
 どちらも整った容姿でただでさえ人目を引くというのにこの甘々っぷり。居合わせた人々は無粋だと承知しつつもつい目を惹かれてしまう。
 イリエスカ(ka6885)とマリナ アルフェウス(ka6934)だ。
 ふたりは視線などお構いなしで、片腕で互いの腰を抱き寄せながら、反対の手でケーキをつつく。マリナはフォークで大きめに切り取ったケーキを掬い上げ、
「……イリエスカ。あーん」
「ちょっと大きくなーい? 嬉しいけど……あーんっ」
 めいっぱい大きく口を開けたイリエスカだったが、クリームがぽってりと唇の脇についてしまう。
「うう、失敗失敗ー」
 拭おうとするイリエスカの手を素早く制したマリナは、顔を近寄せクリームに食みつく。クリームの味わいとその下の滑らかな頬の感触をたっぷり愉しんでから、そのまま唇と舌をスライドさせ口付ける。唇を離すと、かすかに湿った音がした。
「……フ、甘いな?」
 見目ではどちらかというと少年っぽいのはイリエスカの方だが、持ち前の王子ムーブを発揮したマリナに対し、イリエスカも好戦的に眉を跳ね上げる。
「やったなぁー?」
 負けじと大きなケーキの一片をマリナの口許に運び、口へ押し込むが早いか口付ける。
「私はクリームついていなかったと思うが……」
「でも"甘かった"でしょ?」
 としたり顔のイリエスカ。けれどちょっぴり真面目な顔になると、コホンと咳払い。
「去年の今頃、ここに来て恋人同士になったんだっけ」
「懐かしいな」
 頷くマリナに改めて向き直り、正面から見つめ手を握りしめる。
「あの時は驚いたけど、すごく嬉しかったよ。えっと……ボク、あんまり素敵な言葉は思いつけないけど、あの時のマリナの気持ちと勇気に応えたいなって。聞いてくれる?」
 マリナが勿論だと首肯するのを待って、イリエスカは最上級の笑みで告げる。
「大好きだよ、これからもずっと一緒にいよう!」
「……無論だ」
 そうしてどちらからともなく距離を詰め、再び唇同士が重なり合った。

 そんなふたりをこっそり物陰からガン見する者がいた。
 リブだ。マリナに呼ばれて来たものの、幸せな甘さで飽和した空気に悶絶し、とても入っていけなかったのである。
「守りたいっ、この尊い光景! 私がお邪魔するわけにはっ」
 そっとその場から駆け去ろうとしたが、ガシッと肩を掴まれた。振り返れば――マリナが。あれよあれよという間に卓へ招かれ、「去年もだったが今年もな?」と甘い囁きと共に豪華な弓とサブアームのセットを賜り、恐縮している間にまたらぶらぶし出したふたりの空気に当てられたり巻き込まれたり何だりして、つつが無く聖夜に昇天しかけたリブだった。


「遅くなっちまってすまねェ」
 休憩に入ったダルマが訪れたのは、勝手に兄者と呼び慕うリフィカ・レーヴェンフルス(ka5290)が待つアイスドームだった。
「いや私の方こそ、折角の休憩時間に呼び出してすまなかったね。ホスト側として忙しいだろうに」
 大人の気遣いを忍ばせるリフィカに、
「兄者とはゆっくり話してェと思ってたンだ。お誘い嬉しいぜェ」
 ダルマは笑って応じる。挨拶が済むと、リフィカは奥にいたワイバーンを手招いた。
「ダルマ君、紹介するよ。相棒の飛龍で名前はアイオロスという」
 翡翠めく色味を帯びた青緑の鱗のアイオロスは、リフィカの隣へ来ると品良く一礼。
「普段は優しい子だが、戦場では本当に良くサポートしてくれるんだ」
「アイオロスか。兄者を頼むぜェ?」
 風の神と同じ名を持つワイバーンは、眼を細め頷いた。

 揃って卓につくと、卓上にはダルマが見た事もない料理が並んでいた。思わず身を乗り出す彼を嗜めるでもなく、リフィカは横目で微笑むと、互いの杯に干した果実を入れた。
「それは?」
「干し杏だ」
 そこへ温めておいた葡萄酒を注いでいく。
「これは私の母が毎年醸造している葡萄酒でね。そのまま飲むのも旨いし、こうやって干した杏や無花果を入れて飲むのもお勧めだ」
 乾いた果実の表が葡萄酒を吸い解れると、得も言われぬ香りが立つ。男達は景気よく杯をかち合わせた。
 とっておきの葡萄酒で喉を湿すと、ダルマは早速丸い揚げ物にかぶりつく。アツアツほくほく、口の中が幸せになる。
「うふぁいは! ふぉふぇふぁ?」
「『うまいな! これは?』か? それはファラフェル。ひよこ豆と香辛料などを混ぜて揚げた料理だ。今回はジャガイモと溶き卵も入れて食べ応えがある様にしたよ」
「あひひゃはふふっはのは!?」
「『兄者が作ったのか』? とりあえず飲み込んだらどうだい? そうとも、これはアイオロスも大好きでね」
 リフィカが取り分けてやると、アイオロスは大好物を頬張って嬉しそうに尾を揺らした。
 別の皿に盛られたリフィカの故郷の郷土料理・ドルマデスは、肉団子を葡萄の葉で包み煮た一品。これがまた葡萄酒に良く合い、杯も会話も弾んでいく。
「今年は一族で世話になったね」
「こないだ姪子に会ったぜ。サッカー頑張ってくれてよォ」
「それはそれは」
「ケツタッチしてた」
「ん゛っ」
 そんな風にしばらく語らっていると、外でダルマを呼ぶ声が。ダルマが大声で返事をすると、ファリン(ka6844)が顔を覗かせる。
「こちらでしたか。リフィカ様こんばんは、失礼致します。ダルマ様、リブ様達が探しておいでですよ?」
 料理と会話を満喫しすぎて、休憩時間が過ぎていたのだ。
「やべッ、待て待てこれ食ってから!」
「ファリン君もおひとつどうだい?」
「まあ♪」
 急ぎかっこむダルマの横で、ファリンもファラフェルに食みつきにっこり。最後に葡萄酒を干そうとしたダルマ、リフィカへ向け杯を掲げた。
「どれも本当に旨かった、ご馳走さんだ。また呑もうぜェ」
 リフィカも応じて杯を差し出し、
「ああ。来年も宜しく頼むよ、弟殿?」
 また杯をかち合わせ、揃って一息に飲み干した。


 卓に並んだ料理の数々に、ルナ・レンフィールド(ka1565)は一瞬ここがアイスドームだという事を忘れかけた。それらを持ち込んだユリアン(ka1664)は、
「ささやかだけど」
 と微笑する。湯気の立つカブと鳥肉のシチューに温野菜サラダ、いい色に焼けたクルミパン。その上林檎のコンポートまでついて、これのどこがささやかだと言うのだろう。
「とんでもないです、とっても美味しそう」
「良かった」
 それから彼は申し訳なさそうに眉を寄せ、
「女の子を個室に誘うなんてまずいよね本当は。半透明だし大丈夫だと思うけど……ごめん。でも、付き合ってくれて嬉しい」
「いえそんなっ」
 首を横に振るのが精一杯のルナだったが、むしろ今日の日をずっと心待ちにしていた程だった。言葉にできないのがもどかしい。
 コケモモジュースで互いの杯を満たし乾杯すると、ふたりきりの食事会が始まった。
 そう、ふたりきり。 
 この事実にルナの胸は自然と弾んでしまう。彼手ずから作ってくれた料理を味わいながら、彼の穏やかな話し声に耳を傾けていると、指の先までくまなく温かな感情で満たされる。恥じらいもあるけれど、どうしようもなく幸せで。
(この気持ちをそのまま言葉にできたらいいのに) 
 たった2文字の言葉なのに、どうしても告げられない。
 まるで杯に満たした水のよう。告げてしまいたい誘惑はもう杯の縁を越えているのに、ぎりぎりの所で溢れない。いっそ溢れさせてしまえばと思うのに、この優しい時間が堪らなく愛おしく、零してしまうのが勿体ないような気もして。
(まだ早い、よね……でも、)
 口数の減ったルナに彼が首を傾げた。
「お話が楽しくて、つい夢中になってしまって」
 ルナは微笑みの内に誤魔化した。

 一方、ユリアンも同様に、胸の内に溢れそうな杯をひた隠しに抱いていた。
 話を静かに聞いてくれながら、時折つぶらな目を瞠ったり、頬をほのかに染めたりと、彼女の豊かな表情に目を奪われる。
 デザートに手を付ける前、ルナはポットへ手を伸ばした。
「お茶を淹れますね」
「誘ったのはこちらだし、俺が、」
「こんなにご馳走になっているんですから、せめてこれくらいは」
 茶器を扱う彼女の指は、楽器を扱う者らしく繊細で、ひとつひとつの所作が溜息が出るほど綺麗で。
 美味しそうにコンポートを食べてくれる彼女を眺めながら、ユリアンは同時に自らの心の内を覗き込む。
 この気持ちを打ち明けられないのは何故か。それはひとえに、戦場での彼の気質にあった。騎士の家に生まれた事や過去の体験から、己の命を擲つような戦い方をも辞さないのだ。
 親友の兄が逝くのと、自分に想いを寄せる男が逝くのとでは、彼女の心に残す疵が違いすぎる。それを思うとどうしても告げられない。
(一緒に、と言える勇気と衝動が生まれるには……どう強くなれば良いのかな)
 見つめる彼に気付いた彼女がはにかんで微笑む。気付けば、その頬へ手を伸べていた。自分自身でも驚きながら、彼女に小さな嘘をつく。
「……ついてるよ」
 ありもしない林檎の欠片を取るフリをして。
 そんな自分に内心溜息をついていると、ルナが席を立ち傍らにやって来た。
「あの、」
 彼女の瞳は熱っぽく、同じ熱を内に秘めた彼はすぐにその意図を察した。頷くと、ルナはホッとしたように隣へ腰を下ろし、そのまま肩に身を預けてくる。その温もりに胸の奥が締めつけられた。

(今は、もう少しだけこのままで――)
 ふたりは祈るように唇の内で呟いた。


 ケーキを求める列が途切れ一息ついたダルマへ、ファリンは貰ってきたコケモモ酒を差し出した。
「ダルマ様、どうぞ」
「悪ィな。そうだ、買い物の時は手間かけたなァ」
「いえ、お酒も買えて良かったです。計算頑張った甲斐がありましたねっ」
 それから改まってお辞儀をし、
「今年もお世話になりました。……ええ、本当にお世話になりました。泣いちゃった事もありましたね……」
 最後の方ははにかんでごにょごにょ口篭る。
「いちいち可愛いなオイ」
「はい? ともかく、来年はしっかり頑張りますっ」
 話していると、舞台から流れ来る演奏の曲調が変わった。見れば、舞台上には演奏に乗せ歌うリラや、寄り添い踊るブリジットとシャンカラの姿が。踊り子心を刺激されたファリン、いい笑顔でダルマの腕を掴む。
「踊りましょうダルマ様。私、ダルマ様と踊りたいです!」
「俺が踊れると思うのか!?」
「シャンカラ様も踊ってらっしゃいますし、是非! ……あ、駄目なら大丈夫です……よ?」
 しょぼんと肩落とす姿を見たダルマは、引っ込めかけたファリンの手をむんずと掴み、舞台の前へ連れ出した。
「あの、よろしいんですか?」
 戸惑うファリンに、ダルマはぶっきらぼうに言う。
「俺ァこういうのは苦手だからよ。責任取ってしっかりエスコートくれよ?」
「!」
 ファリンは見た。そっぽを向いたダルマの耳が赤くなっているのを。年上男の照れ隠しに思わず頬が綻ぶ。
「お任せくださいっ」
 武骨な手を取り、音色に合わせ気ままなステップを刻み始める。本当はもっとちゃんとした舞踏もできるけれど。
「風任せでくるくる落ちてくる雪だって、それだけで綺麗ですよね? 心の向くまま気の向くまま、自然に身体が揺れだしたらそれがもう踊りなんです」
 長い髪をなびかせ淡雪の中で舞うファリンは、いつもより大人びて見えて。またダルマの耳が赤くなっていたけれど、今度は気付かず楽しげに舞い続けるファリンだった。


 時は少し遡る。
 楽隊の神官達が賛歌を奏で終えると、舞台上にブリジットとリラが加わった。趣は違えどどちらも戦乙女をモチーフにしたドレス姿のふたりを見るや、龍園の子供達は大喜び。
「うたのおねーさん達だ!」
「はい、今年も参りました」
「楽しい時間にしましょう♪」
 その間に神官達が例の楽譜をセットすると、
「それでは、今宵は皆様に西方のダンスをお目にかけましょう」
 ブリジットの合図で演奏が始まった。リラの譜面が龍園の楽器に奏でられ、不思議な味わいの伴奏となる。そこへリラの凛と澄んだ声音が合わさると幽玄な歌曲に転じ、ブリジットが舞い踊れば風雅な舞曲へ昇華されていく。

 ブリジットは舞いながらこっそり彼の姿を探した。曲の終わり際、ようやく大勢の観客の中から見つけ手を差し伸べる。彼はおずおず彼女の許へ。シャンカラだ。突然の隊長のお出ましに、観客達は興味津々。
「とても綺麗でしたよ。……本当に僕で良いんですか?」
 まだ躊躇う彼の腕を取り、舞台へ引き上げるブリジット。
「勿論です。私と踊ってくださいますか?」
 リラは少々驚いたけれど、それならと神官達の楽譜をめくり、幼馴染のため夜の舞踏曲を紡ぎだした。甘さを増したリラの歌声に背を押され、ふたりは寄り添い踊りだす。ぎこちない彼を解そうと、ブリジットは小声で話しかけた。
「先日のリゼリオは如何でした?」
「素敵な街でしたね。飾られた街を行く人達が皆幸せそうで、僕も幸せな気持ちになれました」
 一部例外な人々にも遭遇していたが、彼の目にはそう映ったらしい。ブリジットはホッと胸を撫で下ろす。
「クリスマスは恋人と過ごす時間だそうで。シャンカラ様にはそういうお相手は?」
 何気なく、世間話の延長のように尋ねたつもりだった。
「残念ながら」
 けれど困ったように笑う彼の答えを聞いた次の瞬間、唇が動いていた。
「では、私が立候補しても構いませんか?」
「え?」
 急に彼の足が止まったために、ブリジットは勢い彼の胸へ倒れ込んでしまう。自らの言動に動揺している上に抱きつく格好になってしまい、頬も思考も朱に染まっていく。鼓動が跳ね上がり、指先も震えて――それでも気丈な彼女は真っ直ぐに彼を見つめた。
「その、もし良ければ、で……」
 声はか細くなってしまったけれど訂正はしない。彼の仲間を想う心に、その眼差しに、常に憧れてきたのは本当の事。一緒にならべたらと密かに想い続けてきた。
 彼は逡巡し口を開く。
「その……僕はまだ未熟で、今は隊を率いるだけで精一杯なんです」
「……そう、ですか」
 顔を伏せたブリジットに、再び彼の声が降る。
「いつか、僕が隊長として胸を張れるようになった時、まだそう想っていてくださったら……その時にきちんとお返事させていただけませんか?」
 弾かれたように顔を上げると、恐らく今の自分と同じように耳まで上気させた彼の顔。ブリジットは身体を離し、囁くように「はい」と頷く。
 直後、成り行きを見届けた人々は拍手や指笛、少々のやっかみなどを盛大にふたりへ注いだ。


 思い思いの夜を満喫し、人々の胸が温かな灯で満たされた頃。
「ん?」
 ダルマが異変に気付いた。粉雪舞う夜空を裂き、1頭のワイバーンが滑空してくる。その勢い、その堅牢な装甲、先陣きって敵に斬り込む戦士が如し。
「カチコミかァ!?」
 どよめく広場。シャンカラとダルマは即得物に手をかけた。居合わせたハンターにも緊張が走る……が。
「俺俺、俺だよー!」
「?」
 ウイングアーマーと化した『機動要塞藤堂号』を纏い、ブースターフル稼働で突っ込んできたワイバーン・竜葵の背にいたのは、
「みんなー! 研ちゃんサンタだよー!」
「サンタって。その飛龍の仰々しい装備は何でェ?」
 ダルマの問いに研司は胸を張る。
「機動要塞藤堂号、貨物台展開!」
 貨物台が開かれると、現れたのはアツアツ大量のロールキャベツならぬロール白菜。
「いやー頑張って作ったはいいけど、ギリギリ間に合わなさそうでさー。この量をどうやって冷まさずに現地に!? って考えたら、藤堂号の貨物台ん中ぶち込んで、断熱して飛んでくるのが一番早いなって」
「お料理運ぶためにこの凄い装備を?」
「そうだよ!」
 にっこり笑う研司に、一同がくっと肩を落とした。
 竜葵イチオシのロール白菜は、コンソメではなくおでんの出汁で煮た和風の一品。出汁をたっぷり吸った白菜が堪らない。飛龍達は勿論、子供達にも大好評だった。
「おかわりー!」
「よしきたっ!」
 飛龍と子供達が同じものを食べ喜んでいる姿に、研司の胸が熱くなる。そんな研司を労うよう、竜葵は鼻先を擦り寄せた。
「わっ、ちょっと待って!」
 そこへ真の慌てた声が飛んでくる。次いで、以前研司を空に放った大型飛龍の首がぬぅっと伸びてきて、鍋に直接顔を突っ込もうとした。
「おっとぉ、今日はちゃんと龍の分もあるよ。待ってて!」
 大きな器に飛龍とカートゥルの分、そして真の分を取り分ける。2頭は夢中で食べだした。
「美味しいね」
 さっきは喧嘩腰だった2頭が並んで食事する姿に、真もにこにこ。
 ハナのパンシチューも大人気で、
「シチューとロール白菜、どちらをいただこうかなぁ」
 既に酒で満腹間近なエンバディは真剣思案。何故こんなに呑んでしまったのか。大体ダルマのせいである。
 ハナはシャンカラを見つけると、
「まだシチューありますよぅ♪」
 パンシチュー片手に突撃! 同時に反対側からブリジットが、
「シャンカラ様、ロール白菜なるものを頂いて参りました」
「!」
 お互い何某か察し、彼を挟んで顔を見合わすハナとブリジット。けれど大食らいのシャンカラはどちらも有り難く完食した。

 場が盛り上がった頃、
「参りますよー!」
 柴犬ポチ、桜型妖精ルタと共に、子供達を交え雪遊びに興じていた木綿花が声を張る。ツリーへ向け手を振り上げると、光弾が飛びツリーの真上で弾けた。雪で隠れがちになった飾りに代わり、華やかな七色の煌きがツリーを彩る。まるで雪空の下に虹が架かったよう。
「今度は青くできる? 青龍様のお色だよ!」
「勿論です」
 木綿花は皆の幸せを願う気持ちを込め、ワンダーフラッシュで幻想的な光のショーを繰り広げる。
 相変わらず子らに大人気のレオは、
「あのきらきら触りたい!」
 とせがまれ、子らを代わる代わる肩車してやった。


 華やかに穏やかに、聖なる夜は更けていく。
 龍の園に満ちる灯りと人々の声は、東の空が白むまで絶える事はなかった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    リュウキ
    竜葵(ka0569unit003
    ユニット|幻獣
  • 粛々たる刃
    鹿東 悠(ka0725
    人間(蒼)|32才|男性|闘狩人
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 抱き留める腕
    ユリアン・クレティエ(ka1664
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 咲き初めし白花
    ブリジット(ka4843
    人間(紅)|16才|女性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    ロート
    ロート(ka4843unit002
    ユニット|幻獣
  • 兄者
    リフィカ・レーヴェンフルス(ka5290
    人間(紅)|38才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    アイオロス
    アイオロス(ka5290unit001
    ユニット|幻獣
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    カートゥル
    カートゥル(ka5819unit005
    ユニット|幻獣
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    バーンチャン
    バーンちゃん(ka5852unit005
    ユニット|幻獣
  • 一握の未来へ
    氷雨 柊(ka6302
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 決意は刃と共に
    アーク・フォーサイス(ka6568
    人間(紅)|17才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    ムラクモ
    ムラクモ(ka6568unit002
    ユニット|幻獣
  • 望む未来の為に
    クラン・クィールス(ka6605
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 夜空に奏でる銀星となりて
    レナード=クーク(ka6613
    エルフ|17才|男性|魔術師
  • 淡雪の舞姫
    ファリン(ka6844
    人間(紅)|15才|女性|霊闘士
  • 食事は別腹
    イリエスカ(ka6885
    オートマトン|16才|女性|猟撃士
  • 無垢なる守護者
    ユウ(ka6891
    ドラグーン|21才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    クウ
    クウ(ka6891unit002
    ユニット|幻獣

  • ニア(ka6903
    ドラグーン|17才|女性|聖導士
  • 龍園降臨★ミニスカサンタ
    トリエステ・ウェスタ(ka6908
    ドラグーン|21才|女性|魔術師
  • 虹彩の奏者
    木綿花(ka6927
    ドラグーン|21才|女性|機導師
  • 青き翼
    マリナ アルフェウス(ka6934
    オートマトン|17才|女性|猟撃士
  • 獅子吼のヒーロー
    レオライザー(ka6937
    オートマトン|19才|男性|機導師
  • 離苦を越え、連なりし環
    カイン・シュミート(ka6967
    ドラグーン|22才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    エプイ
    エプイ(ka6967unit002
    ユニット|幻獣
  • 香子蘭の君
    桜崎 幸(ka7161
    人間(蒼)|16才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    キルシュ
    キルシュ(ka7161unit002
    ユニット|幻獣

  • ノア(ka7212
    鬼|24才|女性|格闘士
  • 舌鋒のドラグーン
    エンバディ(ka7328
    ドラグーン|31才|男性|魔術師

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/12/19 02:54:14