ゲスト
(ka0000)
星空の下で
マスター:紫雨

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/12/22 19:00
- 完成日
- 2018/12/29 07:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
12月、空気が澄み、天体観測に適した時期。
村から少し離れた小高い丘は星が綺麗に見える場所として知られている。といっても地域住民にとっては、となるが。
「聞いたか? 最近、この丘って出るんだって」
「出るって何がさ? まさか、こんな時期にお化けが出るとかいうなよ? にーちゃん」
灯りを持って先頭を歩く青年が天体望遠鏡を抱えたもう一人の少年に声をかけた。どうやら兄弟のようだ。時刻は夜、丘までの道のりは一本道で二人にとっては通いなれた道。のはずなのに、何故か気持ちがざわつくように感じる。
「そのまさか、らしいぜ。つっても最近のことらしいから噂だけどな」
「それでも星を見に行くっていうんだからにーちゃんも怖いもの知らずだよな」
「ついてくるお前もな。さ、そろそろ頂上だな」
ちらりとついてくる弟のほうを見てから兄は前を見て、頂上へと足を踏み入れた。いつもと変わらない静かな空気。
「噂は噂だったな。さ、望遠鏡組み立てようぜ」
「ま、待って。にーちゃん、なんかいる」
弟が天体望遠鏡を抱えたまま正面を指差す。灯りは兄が持っている物だけのこの場所で彼の目線の高さに灯りがあることがあり得ないのだ。
その灯りは次第に彼らに近寄ってくる。時折、カタカタッ、カタカタッと音を立て、何かの喋り声のようなものも聞こえながら。
「え……まじかよ。逃げるぞ!」
「にーちゃん! 待ってよ!」
兄は灯りを持つ手とは逆の手で弟の腕を掴むと来た道を引き返していく。弟の腕から天体望遠鏡が落ちるも拾いあげる余裕はない。兄に引きずられるように丘を下って行った。
追いかける音は次第に遠のき、村はずれの民家が見えるころには追いかけていた何か、は感じなくなっていた。
「あれ何だったんだろうな。噂は本当だったみたいだ」
「俺の望遠鏡……」
兄は調べてもらえるよう頼むべきかと考え込む。弟の呟きは兄にも届かず、丘の方を見つめていた。
「星の見える丘にお化けですか。夏場ならきっと観光名所になりそうですよね」
受付嬢はどこか的外れな感想を呟きながら依頼書を眺めている。ハンターたちが入って来たのに気づくと軽く手を上げた。
「みなさん、今いいですか? この依頼をお願いしたいんですが」
持っていた依頼をハンターたちに見える様に机に置く。どうやら幽霊騒動の調査。もし、幽霊ではなく歪虚だった場合は討伐もしてほしい、というものだ。
「季節外れの肝試しみたいな依頼ですが、依頼者さんたちが落とした天体望遠鏡を探しに行ったら無くなってたそうなんです。なので、実体のある集団だと思います。注意してくださいね」
カタカタ音がした、喋り声のような音が聞こえたという点から複数の存在が確認されている。
「できることなら依頼者さんたちに天体望遠鏡を返してあげられるといいんですが……そこまでは難しいですよね。不穏な噂の真相を確かめてきてください。よろしくお願いします」
受付嬢は深々と頭を下げ、ハンターたちに依頼を託した。
村から少し離れた小高い丘は星が綺麗に見える場所として知られている。といっても地域住民にとっては、となるが。
「聞いたか? 最近、この丘って出るんだって」
「出るって何がさ? まさか、こんな時期にお化けが出るとかいうなよ? にーちゃん」
灯りを持って先頭を歩く青年が天体望遠鏡を抱えたもう一人の少年に声をかけた。どうやら兄弟のようだ。時刻は夜、丘までの道のりは一本道で二人にとっては通いなれた道。のはずなのに、何故か気持ちがざわつくように感じる。
「そのまさか、らしいぜ。つっても最近のことらしいから噂だけどな」
「それでも星を見に行くっていうんだからにーちゃんも怖いもの知らずだよな」
「ついてくるお前もな。さ、そろそろ頂上だな」
ちらりとついてくる弟のほうを見てから兄は前を見て、頂上へと足を踏み入れた。いつもと変わらない静かな空気。
「噂は噂だったな。さ、望遠鏡組み立てようぜ」
「ま、待って。にーちゃん、なんかいる」
弟が天体望遠鏡を抱えたまま正面を指差す。灯りは兄が持っている物だけのこの場所で彼の目線の高さに灯りがあることがあり得ないのだ。
その灯りは次第に彼らに近寄ってくる。時折、カタカタッ、カタカタッと音を立て、何かの喋り声のようなものも聞こえながら。
「え……まじかよ。逃げるぞ!」
「にーちゃん! 待ってよ!」
兄は灯りを持つ手とは逆の手で弟の腕を掴むと来た道を引き返していく。弟の腕から天体望遠鏡が落ちるも拾いあげる余裕はない。兄に引きずられるように丘を下って行った。
追いかける音は次第に遠のき、村はずれの民家が見えるころには追いかけていた何か、は感じなくなっていた。
「あれ何だったんだろうな。噂は本当だったみたいだ」
「俺の望遠鏡……」
兄は調べてもらえるよう頼むべきかと考え込む。弟の呟きは兄にも届かず、丘の方を見つめていた。
「星の見える丘にお化けですか。夏場ならきっと観光名所になりそうですよね」
受付嬢はどこか的外れな感想を呟きながら依頼書を眺めている。ハンターたちが入って来たのに気づくと軽く手を上げた。
「みなさん、今いいですか? この依頼をお願いしたいんですが」
持っていた依頼をハンターたちに見える様に机に置く。どうやら幽霊騒動の調査。もし、幽霊ではなく歪虚だった場合は討伐もしてほしい、というものだ。
「季節外れの肝試しみたいな依頼ですが、依頼者さんたちが落とした天体望遠鏡を探しに行ったら無くなってたそうなんです。なので、実体のある集団だと思います。注意してくださいね」
カタカタ音がした、喋り声のような音が聞こえたという点から複数の存在が確認されている。
「できることなら依頼者さんたちに天体望遠鏡を返してあげられるといいんですが……そこまでは難しいですよね。不穏な噂の真相を確かめてきてください。よろしくお願いします」
受付嬢は深々と頭を下げ、ハンターたちに依頼を託した。
リプレイ本文
●約束
実際に遭遇した兄弟の元へ詳しい状況や天体望遠鏡について確認しにハンター達が訪れていた。
「見かけた幽霊もついて何か覚えてるか? ついでにどのあたりで引き返したかも教えて欲しい」
「そう言われても俺達が分かったのは灯りと音くらいなんですよ。見えた場所はこの辺りです。引き返した場所だってうろ覚えなんですけど……ここだったかな」
アルト・ハーニー(ka0113)が兄の方に確認を取る。無我夢中だったせいで碌に覚えてないと困り顔の兄が机に広げている地図に灯りが見えた場所と引き返したと思われる場所に印をかき込む。丘までの道のりをメモに書き出してハンター達に渡した。弟はその隣でそっぽを向いたまま何も語らない。彼と目線を合わせる様にしゃがんだのは時音 ざくろ(ka1250)だ。安心させるように笑いかけ、言葉をかける。
「安心して、天体望遠鏡、きっとざくろ達が見つけてきてあげるから。詳しく教えてくれるかな?」
「本当? 本当に見つけてきてくれるのか?」
ざくろの言葉にすがるように弟は視線をあげた。隣にいるツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)も頷き、言葉を続ける。
「はい。状態を見て修理できるようなら、ですが。いいですしょうか?」
「えっと……トランクに入ってて、大きさがこれくらいで、俺が抱えられるんだ。全体が黒なんだけど持ち手のところがぼんやり光るんだぜ」
どこか得意げに語る弟と苦笑する兄。トランクの大きさは90センチほどで厚みと高さが15センチほど。重さはそんなにではなく、幼い彼が持ち歩ける程度。
「ありがとう。待っててね」
「おぅ。気を付けてな」
最初とは打って変わって元気にハンター達へ返事を返す弟を兄がほっとしたように見つめていた。彼らに見送られ、ハンター達は星が見える丘に向かうのだ。
●推測と戦闘
ハンター達は兄がかいてくれた地図の通りに彼らと同じ道のりを歩いている。ハンディLEDライトや魔導バイクの灯りと彼らの周りを漂う灯火の水晶球が4つ。何か痕跡が残っていないか、確認しながらゆっくりと丘を登っていた。道中は何事もなく、頂上へとたどり着くことができた。
「幽霊と歪虚どちらが怖いのかな。まあ、夢のない話ではあるが実害のある歪虚は放ってはおけないよな」
「実態のあるお化け退治……いや正体の判らない化け物退治、かな。どっちかは足跡とか何か痕跡があるかどうか、じゃないかな? 幽霊だとそういうのないかもだけど」
レイア・アローネ(ka4082)のつぶやきに十色 乃梛(ka5902)が返事をした。実体があるものならば痕跡があるはずと思い、辺りを重点的に探している。
「足跡が残ってるなら、幽霊の正体が推測できるかも?」
「かもしれないな。私の知識も役立つだろう」
ざくろと共にアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)も痕跡探しに名乗りを上げた。彼女が持っている知識も使い、地面に残った痕跡を探し始める。3人が痕跡を探している間、残る3人は周囲の警戒を担当する。痕跡探しをしている間に敵が現れた時、奇襲を受けてしまうからだ。
「これがそうかな? 人型っぽい足跡が多いけど……私だとわからないわ」
「これは……ゴブリンだろうか。一部、跡が薄いところがあるな」
「こっちはスケルトンっぽいかな? そっちのよりも数が多いから、そこそこの勢力かな」
乃梛が見つけた足跡をアルトとざくろが検分する。数多くの依頼をこなし、モンスターを知っているからこそ推測を立てることができた。詳しい種類、装備等まではわからないが、敵の種類がわかるだけでも違う。なにより、実体のある存在が騒動の主ならば、対処はしやすくなるからだ。
「どうやら答え合わせの時間らしいぞ。灯りが見えてきた」
警戒をしていたレイアが全員に声をかける。彼女が見ている先に見えてきたのは亡霊と噂されていた者たちがハンター達の目の前に現れたのだ。
距離を詰めてきたそれらは歪虚だった。スケルトンが5体、その中に混ざるようにゴブリンソルジャーが3体いる。斧を携えているそれらが次の獲物が現れたことに歓喜した。奥には杖のような物を持っているゴブリンメイジも1体いる。周囲に浮いている灯りは魔法で作られているようで不安定に揺らめいていた。
「歪虚化していたのか……そうでないならば警告をしたいところだったのだが、無念だ」
アルトが残念そうにつぶやくもすぐに気持ちを切り替え、得物を構える。ゴブリンの王を屠った者として決めたことだったからだ。人々を守るためにも今ここで排除しなければならない。
「浪漫を理解しない奴らは此れだから困るさねぇ。そんなやつらには埴輪のきついお仕置きをしてやらないとな、と」
もう一人のアルトはせっかくの星空を堪能させない、浪漫を理解しないやつらだと思いつつ、自身のマテリアルを燃やし始める。のだが、一気に燃焼させてしまったため、暴発してしまった。ボンッという音共にマテリアルを纏うことができなかった。スケルトン達はアルトの方へ視線を向けない。ゴブリン達はすべてアルトを睨み付けている。
「……あれま、失敗か。ま、骨ならハンマーで叩き壊しやすいだろ、多分。おら、壊れたいやつから来るんだぞ、と。来ないから勝手にこっちで決めていくけどな!」
マテリアルが暴発したことに驚きつつも改めてハンマーを構え直す。改めて、スケルトンに狙いを定め、駆け出した。
「……ここなら十分ですね。狙うのは奥の術者」
ツィスカはアルトが注意を引き付けようとしている間にマテリアルを噴出し、あらかじめ目を付けていた狙撃ポイントへ移動する。魔導銃を構え、奥に控えているメイジへと照準を合わせた。遠距離主体の敵は早々に排除するに限るのだ。
「狙うなら足でしょうか。他の方が狙いやすくした方がいいですね」
静かに狙いを研ぎ澄まし、確実に当たる一瞬を撃ち抜く。メイジは狙撃されたことに気づけず、避けることができずに打ち抜かれた。
「今がチャンスだね。突撃!」
ざくろが自身のマテリアルを活性化させ、全身に纏う。短期決戦に向け、出力を最大へと振り切った。攻撃は最大の防御だと、その身で体現しているかのよう。その姿を見たレイアと乃梛がサポートするように前へ出る。
「こちらは私達に任せろ」
「奥のを仕留めるんだよね? 邪魔をさせないから」
盾で目の前のスケルトンを殴り飛ばし、隣にいたスケルトンにぶつける。もつれあう2体を魔導剣で断ち切った。乃梛が追撃とばかりに魔力を込めた鞭の一撃でスケルトン達を殴りつける。その威力、衝撃でスケルトン達はばらばらに砕け散った。
「鞭で叩ける相手でよかったわ~」
「ありがとう。じゃ、これで思いっきり行ける!」
防御としてのマテリアルを脚部から噴出させ、前衛となっている敵を飛び越える。マテリアルの噴出を止め、それを自らの魔導剣に流し込んだ。武器にマテリアルが満ちた瞬間、魔導剣が巨大化。
「超重剣縦一文字斬り!」
巨大化した魔導剣を落下の勢いと共にメイジへと叩き込んだ。メイジは先の攻撃で動きが鈍くなっていたのと巨大な剣に避けることができず、潰されてその姿を消滅させる。
「厄介なところは倒せたか。ならば、まとめて始末してしまうか」
アルトは抜刀の構えをとる。集中力を高め、マテリアルを活性化させてゆく。脚部へ活性化させたマテリアルを注ぎ、一瞬で密集しているゴブリンソルジャーとスケルトンの間を駆け抜けていった。すれ違いざまに無数の斬撃を叩き込み、すれ違った2体のゴブリンソルジャー達と1体のスケルトンを切り捨てたのだ。自分達に何が起きたのかわからぬまま、彼らは切り刻まれたその姿を塵へと変え消滅していった。
この時点で6体の敵が倒された。残っているゴブリンソルジャー2体とスケルトン2体はハンター達に攻撃を仕掛ける。
スケルトン達は自らの肋骨を抜き取るとそれぞれ、アルトと乃梛へ骨を投擲するのだ。ただ、自らの骨を1本だけ投げつけるのであって特筆すべき点は欠片もない。
「リアルブルーのホームラン王の俺に骨を舐めて貰っては困るな。…もちろん嘘だが」
そう言いながらもハンマーをバットに見立てて構えるアルト。迫り来る骨を完全なタイミングでハンマーを振り抜くと、骨は投げたカコーンと音を響かせスケルトンの頭へクリーンヒットした。その衝撃で頭がい骨の一部に罅が入ったのがわかるだろう。
「鞭の扱いを極めるためにもここは挑戦すべきよね」
乃梛は飛んでくる骨の軌道を予想し鞭を振るう。鞭の技量を磨くためにも迎撃を試みたのだ。見事、鞭は飛んでくる骨に命中し、撃ち落とすことに成功した。
残るゴブリンソルジャー達は近くにいるレイアとメイジを倒したざくろへ攻撃を仕掛ける。それぞれ手にしている大き目の斧を振り上げると力の限り叩きつけるのだ。
「真向勝負といこうじゃないか」
盾を構え直し、レイアは挑発的に笑う。全身をばねのように使い、振り下ろされた斧を盾で受けきると返すお返しと言わんばかりに魔導剣を逆袈裟に振り抜いた。反撃されると思っていなかったゴブリンソルジャーは攻撃を避ける隙も無く、切り裂かれる。無防備な体勢で切り裂かれたゴブリンソルジャーはそのまま後ろへ倒れ伏し、消滅していった。
「負けてられないね! 超機動パワーオン、弾け跳べ」
纏っているマテリアルの一部を光の障壁へと変え、雷撃を纏わせるざくろ。彼はそれでゴブリンソルジャーの斧を受け止めると勢いよく、弾き返した。弾き返された威力にゴブリンソルジャーはたまらず後ろへ弾き飛ばされる。雷撃の威力が強く、ゴブリンソルジャーは片膝をついたまま動けずにいた。
アルトは腰のあたりにハンマーを構えるとマテリアルをハンマーへ注ぎ始める。先ほどの暴発をしないよう注意し、ゆっくり確実にマテリアルを、力を込めていった。狙うは一直線に並んだ敵目掛けての攻撃。
「一気に片づけるかね。早く探して帰らねぇとな」
早く望遠鏡を探して返してやりたいと、思うアルトは溜めた力を解放させ、ハンマーを振り抜く。マテリアルを込められ、力強く振り抜かれたハンマーは空気を振動させるとそれは衝撃波となり、全ての敵を襲うのだ。スケルトン達は脆くも衝撃波で崩れさるが、ゴブリンソルジャーはしぶとく、どうにか衝撃波を耐え抜いた。
「これでお仕舞いですね」
スコープ越しにゴブリンソルジャーへ狙いを定めたツィスカはゆっくりと引き金を引いた。魔導銃から走る弾丸が正確にゴブリンソルジャーの胸を射抜く。その一撃でゴブリンソルジャーは二度と動くことなく、消滅していった。
●さいかい
すべての敵を倒したことで丘の上に平和が戻る。だが、ハンマー達のもう一つの目的のために探索を再開させたのだ。
「向こうから来たならあっちの方にあるのかな?」
ざくろが敵の足跡をたどることを提案すると、異論は上がらなかった。他にも敵がいた場合を考え、根城を確認したほうがいいとも思ったからだ。
丘の反対側へ向け歩き出したハンマー達。道中は何事もなく、また、先ほど倒した歪虚以外がいるような痕跡はどこにも見当たらなかった。そして、たどり着いたのは小さな洞窟。奥行きも狭く入り口からざっと中の様子がわかる程度だ。
「お、これがそうじゃないか? 黒いトランクだし」
それぞれ灯りで照らしながら探しているとアルトが見つけたのは黒いトランク。大きさも事前に聞いていたサイズと合致する。ところどころ汚れてしまっているが、目立った損傷はない。
「念のため私が確認してみます。ケースが無事でも望遠鏡が壊れてしまっているかもしれませんから」
アルトから受け取ったツィスカが中身の点検確認をしていく。機導師としての知識、技術を応用し、天体望遠鏡の状態を確認していく。幸い、望遠鏡そのものにも目立った傷はなく、内部構造にも異変は見られなかった。
「……大丈夫です。中身も無事でした」
安堵の表情でツィスカは望遠鏡をトランクへ仕舞うと優しくトランクを綺麗にしていく。見守っていた他のハンター達も嬉しそうに緊張を緩めた。
「早くあの子のところへ持って行ってあげなきゃ」
ざくろが口にすると誰もが賛同する。大切な宝物である天体望遠鏡が無事に見つかったのだ。不安そうにしていた少年を早く安心させてやりたいと全員が足早に村への道をゆく。
兄弟の家に行くと二人とも起きて待っていたようだ。眠そうにしている弟もツィスカがトランクを差し出すと嬉しさのあまり目が覚めたのか、トランクに抱き着いた。その姿を見ていた兄も破顔し、頭を下げた。少年も満面の笑みで彼らに礼を告げる。
「本当にありがとうございました。よかったな」
「うん! ありがとうな! にーちゃん、ねーちゃんたち!」
ハンター達は少年との約束を果たすことができた。星が綺麗に見える丘の平和は護られ、少年の宝物も取り戻せた。小さな平和、小さな幸せだが、とても大事なこと。
ハンター達はどこか誇らしい気持ちを胸に村を後にした。彼らの頭上、一つの星が空を駆け巡る。これからも平和であるように、と誰かが呟いた。
実際に遭遇した兄弟の元へ詳しい状況や天体望遠鏡について確認しにハンター達が訪れていた。
「見かけた幽霊もついて何か覚えてるか? ついでにどのあたりで引き返したかも教えて欲しい」
「そう言われても俺達が分かったのは灯りと音くらいなんですよ。見えた場所はこの辺りです。引き返した場所だってうろ覚えなんですけど……ここだったかな」
アルト・ハーニー(ka0113)が兄の方に確認を取る。無我夢中だったせいで碌に覚えてないと困り顔の兄が机に広げている地図に灯りが見えた場所と引き返したと思われる場所に印をかき込む。丘までの道のりをメモに書き出してハンター達に渡した。弟はその隣でそっぽを向いたまま何も語らない。彼と目線を合わせる様にしゃがんだのは時音 ざくろ(ka1250)だ。安心させるように笑いかけ、言葉をかける。
「安心して、天体望遠鏡、きっとざくろ達が見つけてきてあげるから。詳しく教えてくれるかな?」
「本当? 本当に見つけてきてくれるのか?」
ざくろの言葉にすがるように弟は視線をあげた。隣にいるツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)も頷き、言葉を続ける。
「はい。状態を見て修理できるようなら、ですが。いいですしょうか?」
「えっと……トランクに入ってて、大きさがこれくらいで、俺が抱えられるんだ。全体が黒なんだけど持ち手のところがぼんやり光るんだぜ」
どこか得意げに語る弟と苦笑する兄。トランクの大きさは90センチほどで厚みと高さが15センチほど。重さはそんなにではなく、幼い彼が持ち歩ける程度。
「ありがとう。待っててね」
「おぅ。気を付けてな」
最初とは打って変わって元気にハンター達へ返事を返す弟を兄がほっとしたように見つめていた。彼らに見送られ、ハンター達は星が見える丘に向かうのだ。
●推測と戦闘
ハンター達は兄がかいてくれた地図の通りに彼らと同じ道のりを歩いている。ハンディLEDライトや魔導バイクの灯りと彼らの周りを漂う灯火の水晶球が4つ。何か痕跡が残っていないか、確認しながらゆっくりと丘を登っていた。道中は何事もなく、頂上へとたどり着くことができた。
「幽霊と歪虚どちらが怖いのかな。まあ、夢のない話ではあるが実害のある歪虚は放ってはおけないよな」
「実態のあるお化け退治……いや正体の判らない化け物退治、かな。どっちかは足跡とか何か痕跡があるかどうか、じゃないかな? 幽霊だとそういうのないかもだけど」
レイア・アローネ(ka4082)のつぶやきに十色 乃梛(ka5902)が返事をした。実体があるものならば痕跡があるはずと思い、辺りを重点的に探している。
「足跡が残ってるなら、幽霊の正体が推測できるかも?」
「かもしれないな。私の知識も役立つだろう」
ざくろと共にアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)も痕跡探しに名乗りを上げた。彼女が持っている知識も使い、地面に残った痕跡を探し始める。3人が痕跡を探している間、残る3人は周囲の警戒を担当する。痕跡探しをしている間に敵が現れた時、奇襲を受けてしまうからだ。
「これがそうかな? 人型っぽい足跡が多いけど……私だとわからないわ」
「これは……ゴブリンだろうか。一部、跡が薄いところがあるな」
「こっちはスケルトンっぽいかな? そっちのよりも数が多いから、そこそこの勢力かな」
乃梛が見つけた足跡をアルトとざくろが検分する。数多くの依頼をこなし、モンスターを知っているからこそ推測を立てることができた。詳しい種類、装備等まではわからないが、敵の種類がわかるだけでも違う。なにより、実体のある存在が騒動の主ならば、対処はしやすくなるからだ。
「どうやら答え合わせの時間らしいぞ。灯りが見えてきた」
警戒をしていたレイアが全員に声をかける。彼女が見ている先に見えてきたのは亡霊と噂されていた者たちがハンター達の目の前に現れたのだ。
距離を詰めてきたそれらは歪虚だった。スケルトンが5体、その中に混ざるようにゴブリンソルジャーが3体いる。斧を携えているそれらが次の獲物が現れたことに歓喜した。奥には杖のような物を持っているゴブリンメイジも1体いる。周囲に浮いている灯りは魔法で作られているようで不安定に揺らめいていた。
「歪虚化していたのか……そうでないならば警告をしたいところだったのだが、無念だ」
アルトが残念そうにつぶやくもすぐに気持ちを切り替え、得物を構える。ゴブリンの王を屠った者として決めたことだったからだ。人々を守るためにも今ここで排除しなければならない。
「浪漫を理解しない奴らは此れだから困るさねぇ。そんなやつらには埴輪のきついお仕置きをしてやらないとな、と」
もう一人のアルトはせっかくの星空を堪能させない、浪漫を理解しないやつらだと思いつつ、自身のマテリアルを燃やし始める。のだが、一気に燃焼させてしまったため、暴発してしまった。ボンッという音共にマテリアルを纏うことができなかった。スケルトン達はアルトの方へ視線を向けない。ゴブリン達はすべてアルトを睨み付けている。
「……あれま、失敗か。ま、骨ならハンマーで叩き壊しやすいだろ、多分。おら、壊れたいやつから来るんだぞ、と。来ないから勝手にこっちで決めていくけどな!」
マテリアルが暴発したことに驚きつつも改めてハンマーを構え直す。改めて、スケルトンに狙いを定め、駆け出した。
「……ここなら十分ですね。狙うのは奥の術者」
ツィスカはアルトが注意を引き付けようとしている間にマテリアルを噴出し、あらかじめ目を付けていた狙撃ポイントへ移動する。魔導銃を構え、奥に控えているメイジへと照準を合わせた。遠距離主体の敵は早々に排除するに限るのだ。
「狙うなら足でしょうか。他の方が狙いやすくした方がいいですね」
静かに狙いを研ぎ澄まし、確実に当たる一瞬を撃ち抜く。メイジは狙撃されたことに気づけず、避けることができずに打ち抜かれた。
「今がチャンスだね。突撃!」
ざくろが自身のマテリアルを活性化させ、全身に纏う。短期決戦に向け、出力を最大へと振り切った。攻撃は最大の防御だと、その身で体現しているかのよう。その姿を見たレイアと乃梛がサポートするように前へ出る。
「こちらは私達に任せろ」
「奥のを仕留めるんだよね? 邪魔をさせないから」
盾で目の前のスケルトンを殴り飛ばし、隣にいたスケルトンにぶつける。もつれあう2体を魔導剣で断ち切った。乃梛が追撃とばかりに魔力を込めた鞭の一撃でスケルトン達を殴りつける。その威力、衝撃でスケルトン達はばらばらに砕け散った。
「鞭で叩ける相手でよかったわ~」
「ありがとう。じゃ、これで思いっきり行ける!」
防御としてのマテリアルを脚部から噴出させ、前衛となっている敵を飛び越える。マテリアルの噴出を止め、それを自らの魔導剣に流し込んだ。武器にマテリアルが満ちた瞬間、魔導剣が巨大化。
「超重剣縦一文字斬り!」
巨大化した魔導剣を落下の勢いと共にメイジへと叩き込んだ。メイジは先の攻撃で動きが鈍くなっていたのと巨大な剣に避けることができず、潰されてその姿を消滅させる。
「厄介なところは倒せたか。ならば、まとめて始末してしまうか」
アルトは抜刀の構えをとる。集中力を高め、マテリアルを活性化させてゆく。脚部へ活性化させたマテリアルを注ぎ、一瞬で密集しているゴブリンソルジャーとスケルトンの間を駆け抜けていった。すれ違いざまに無数の斬撃を叩き込み、すれ違った2体のゴブリンソルジャー達と1体のスケルトンを切り捨てたのだ。自分達に何が起きたのかわからぬまま、彼らは切り刻まれたその姿を塵へと変え消滅していった。
この時点で6体の敵が倒された。残っているゴブリンソルジャー2体とスケルトン2体はハンター達に攻撃を仕掛ける。
スケルトン達は自らの肋骨を抜き取るとそれぞれ、アルトと乃梛へ骨を投擲するのだ。ただ、自らの骨を1本だけ投げつけるのであって特筆すべき点は欠片もない。
「リアルブルーのホームラン王の俺に骨を舐めて貰っては困るな。…もちろん嘘だが」
そう言いながらもハンマーをバットに見立てて構えるアルト。迫り来る骨を完全なタイミングでハンマーを振り抜くと、骨は投げたカコーンと音を響かせスケルトンの頭へクリーンヒットした。その衝撃で頭がい骨の一部に罅が入ったのがわかるだろう。
「鞭の扱いを極めるためにもここは挑戦すべきよね」
乃梛は飛んでくる骨の軌道を予想し鞭を振るう。鞭の技量を磨くためにも迎撃を試みたのだ。見事、鞭は飛んでくる骨に命中し、撃ち落とすことに成功した。
残るゴブリンソルジャー達は近くにいるレイアとメイジを倒したざくろへ攻撃を仕掛ける。それぞれ手にしている大き目の斧を振り上げると力の限り叩きつけるのだ。
「真向勝負といこうじゃないか」
盾を構え直し、レイアは挑発的に笑う。全身をばねのように使い、振り下ろされた斧を盾で受けきると返すお返しと言わんばかりに魔導剣を逆袈裟に振り抜いた。反撃されると思っていなかったゴブリンソルジャーは攻撃を避ける隙も無く、切り裂かれる。無防備な体勢で切り裂かれたゴブリンソルジャーはそのまま後ろへ倒れ伏し、消滅していった。
「負けてられないね! 超機動パワーオン、弾け跳べ」
纏っているマテリアルの一部を光の障壁へと変え、雷撃を纏わせるざくろ。彼はそれでゴブリンソルジャーの斧を受け止めると勢いよく、弾き返した。弾き返された威力にゴブリンソルジャーはたまらず後ろへ弾き飛ばされる。雷撃の威力が強く、ゴブリンソルジャーは片膝をついたまま動けずにいた。
アルトは腰のあたりにハンマーを構えるとマテリアルをハンマーへ注ぎ始める。先ほどの暴発をしないよう注意し、ゆっくり確実にマテリアルを、力を込めていった。狙うは一直線に並んだ敵目掛けての攻撃。
「一気に片づけるかね。早く探して帰らねぇとな」
早く望遠鏡を探して返してやりたいと、思うアルトは溜めた力を解放させ、ハンマーを振り抜く。マテリアルを込められ、力強く振り抜かれたハンマーは空気を振動させるとそれは衝撃波となり、全ての敵を襲うのだ。スケルトン達は脆くも衝撃波で崩れさるが、ゴブリンソルジャーはしぶとく、どうにか衝撃波を耐え抜いた。
「これでお仕舞いですね」
スコープ越しにゴブリンソルジャーへ狙いを定めたツィスカはゆっくりと引き金を引いた。魔導銃から走る弾丸が正確にゴブリンソルジャーの胸を射抜く。その一撃でゴブリンソルジャーは二度と動くことなく、消滅していった。
●さいかい
すべての敵を倒したことで丘の上に平和が戻る。だが、ハンマー達のもう一つの目的のために探索を再開させたのだ。
「向こうから来たならあっちの方にあるのかな?」
ざくろが敵の足跡をたどることを提案すると、異論は上がらなかった。他にも敵がいた場合を考え、根城を確認したほうがいいとも思ったからだ。
丘の反対側へ向け歩き出したハンマー達。道中は何事もなく、また、先ほど倒した歪虚以外がいるような痕跡はどこにも見当たらなかった。そして、たどり着いたのは小さな洞窟。奥行きも狭く入り口からざっと中の様子がわかる程度だ。
「お、これがそうじゃないか? 黒いトランクだし」
それぞれ灯りで照らしながら探しているとアルトが見つけたのは黒いトランク。大きさも事前に聞いていたサイズと合致する。ところどころ汚れてしまっているが、目立った損傷はない。
「念のため私が確認してみます。ケースが無事でも望遠鏡が壊れてしまっているかもしれませんから」
アルトから受け取ったツィスカが中身の点検確認をしていく。機導師としての知識、技術を応用し、天体望遠鏡の状態を確認していく。幸い、望遠鏡そのものにも目立った傷はなく、内部構造にも異変は見られなかった。
「……大丈夫です。中身も無事でした」
安堵の表情でツィスカは望遠鏡をトランクへ仕舞うと優しくトランクを綺麗にしていく。見守っていた他のハンター達も嬉しそうに緊張を緩めた。
「早くあの子のところへ持って行ってあげなきゃ」
ざくろが口にすると誰もが賛同する。大切な宝物である天体望遠鏡が無事に見つかったのだ。不安そうにしていた少年を早く安心させてやりたいと全員が足早に村への道をゆく。
兄弟の家に行くと二人とも起きて待っていたようだ。眠そうにしている弟もツィスカがトランクを差し出すと嬉しさのあまり目が覚めたのか、トランクに抱き着いた。その姿を見ていた兄も破顔し、頭を下げた。少年も満面の笑みで彼らに礼を告げる。
「本当にありがとうございました。よかったな」
「うん! ありがとうな! にーちゃん、ねーちゃんたち!」
ハンター達は少年との約束を果たすことができた。星が綺麗に見える丘の平和は護られ、少年の宝物も取り戻せた。小さな平和、小さな幸せだが、とても大事なこと。
ハンター達はどこか誇らしい気持ちを胸に村を後にした。彼らの頭上、一つの星が空を駆け巡る。これからも平和であるように、と誰かが呟いた。
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相談卓 ツィスカ・V・A=ブラオラント(ka5835) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/12/21 22:27:47 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/12/21 10:46:07 |