【王戦】戦略物資搬出鉱山、モグラとムカデ

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/12/22 19:00
完成日
2018/12/31 00:17

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国西方リベルタース地方、ハルトフォート砦──
 砦司令ラーズスヴァンが『趣味』とする大砲制作の為の個人的な工房から始まったそれは、王女による富国政策への転換(【繭国】)による転炉の設置と工廠化を経て、今や王国でも一二を争う『工業地帯』となっていた。
 かつて荒野が広がるばかりであった砦の東城壁の外には、『工作機械』(刻令術で動くギアとピストンからなる)が導入された工場群が立ち並び。それらを鉄条網と塹壕と盛り土とが三方を囲んで守っている。……建てられた煙突群から立ち昇る白い水蒸気と鳴り響く槌の音── これだけの規模の工場群はここと王都の2箇所のみ。そして、ここの生産量は王都のそれを上回る。
 その理由はここがハルトフォート『工廠』であることある。民生品も手掛ける王都のそれとは違い、ハルトフォートで生産されるものは全て軍需物資── 扱う品目は剣や槍、盾や鎧と言った昔ながらの(それでいて、リアルブルーの技術や概念を可能な限り取り入れた)武器防具に加えて、リアルブルーでは旧式だが王国では最新鋭となるボルトアクション式ライフルや、刻令術式駐退復座機を装備した新式の施条砲など銃砲関係や、ゴーレムとその装備品といった数々の正面装備の他、弾薬や装具、工具、建材その他諸々の消耗品等を、昼夜の別なく(これが王都だとこうはいかない。騒音問題に発展する)大量に生産し続けているからだ。

「急げ、急げ! まだ今日のノルマに達していないぞ! 口を動かすより手を動かせ! 歪虚の王は待ってはくれんのだからな!」
「ただし、製品の質は落とすことは罷りならん。自身が王国の防衛に係わっているという自覚と誇りを持つのじゃ」
「でも、安全第一での。怪我でもしたらつまらんからの。痛いし、生産効率は落ちるし、良い事なぞ何もないぞい」
 ダニム、デール、ドゥーン──ラーズスヴァンにより最初に招聘された3人のドワーフの技師たちが、各工場を直接見回り、工員たちに発破をかけて回る。工員たちは内心で(いったいどうしろと)と矛盾したことを言う3人にツッコミを入れつつ、目の前の作業に集中する……
「ふむ。やはり人間はひ弱でいかんわ。わし等の若い頃など三日三晩徹夜で作業とか日常茶飯事であったがな!」
「無理を言ってやるな、ダニム。人族はわしらドワーフほど頑健ではないのじゃ」
 視察を終えての帰り道── 水路の脇を三人揃って歩きながら止まらぬ会話を続けるダニムとデール。……この水路もまた、Gnomeの大規模工事によって大河ティベリスから引かれたもので、工業用水の取水と水運──物資の搬入と製品の搬出といった用途に使われていた。これら急速とも言えるこの工廠の発展は、二つに分かれて争ってきた王家派と貴族派の『和解』と『統合』──政争の終結(【羽冠】)によって実現したものだった。これまで貴族派によって分捕られてきた貴族関係予算の多くを、王女や大司教といった一つの目的と意志の下、集中的に運用できるようになったことが大きかった。
「ここも随分と大きくなったものじゃのう。最初はちっぽけな城とばっちい街があるだけじゃったが……」
「これも全て『歪虚の王』に備える為、か……」
 ダニムの呟きに、デールとドゥーンも足を止めた。
 『歪虚の王』の存在── 本来、知り得るはずもなかったその情報の入手を以って、王国はその襲来に対する覚悟と貴重な準備期間を得た。この工廠の存在と発展は、先の王家派と貴族派の統合だけでなく。富国の前提となった刻令術の導入と研究、および刻令ゴーレムの生産と運用など── これまでの王国の、そして、王女の成長と選択の結実なのだ。
「……大丈夫じゃ。出来得ることはやった。わしらも、王国の人間たちも」
「そして、勿論、これからも。『その日』が来るまで、いや、来てからも全力でわしらはやれるだけのことをする」
 力強く頷くデールとダニム。話を聞いていたドゥーンがほんわかとした表情で小首を傾げた。
「でも、その『歪虚の王』が来なかったらどうするのかの。かなり大量に作っちまったぞい?」
 その言葉に「お前は……」とげんなり呟き…… ダニムとデールはドゥーンにポカポカとツッコミを入れた。


 王国北東部・フェルダー地方。ダフィールド侯爵領── この地には、各種の鉱物を産する多数の鉱山群がある。
 自領の鉱物資源の多くを取り尽くし、『革命騒ぎ』を経て周辺諸侯領を事実上の『保護領』化した侯爵家であったが、かの王女の婚約騒ぎに端を発した政争により、『貴族派』であった侯爵家の立場は危ういものとなった。
 事前に王家派に渡りはつけていたものの、それでも『暴挙』の清算は免れ得ず…… それでも、侯爵家は新規に得た鉱山の半分を王家に譲渡することで現状の維持に成功した。この地で800年の長きに亘って領地を永らえて来た侯爵家には鉱山開発と経営に関する豊富なノウハウがあり、その技術をも渡すことでその条件を取り付けたのだ。
 王家が要求した鉱山は全て鉄鉱石やマテリアル鉱石等の──即ち、軍事に関するものだった。表面上、『現状を維持』できたように見える侯爵家ではあったが、実質的には王家に『身ぐるみ剥がされる一歩手前』程度と言ってよかった。

 そんなダフィールド侯爵家から王家に献上された新規鉱山の一つにオーレム鉱山というものがあった。侯爵家保護下のフィンチ子爵家領内の、今は無きユトと言う村に程近いオーレム山にある鉱山だ。とても古い時代の街道が通っている山で、未探索の魔法遺跡が存在することでも知られている。
 古代にも採掘が行われていたと思しきこの鉱山は、古代王国崩壊後の採掘技術の喪失により長い間放置されてきたが、保護領化と同時に侯爵家の手が入り、1000年以上ぶりに採掘が再開された。
 算出する鉱石は、良質のマテリアル鉱石に魔法金属── 王国が『歪虚の王』に対抗する為にはぜひとも必要とする物資であり、Gnomeや最新の刻令術式工具が投入され、一気に開発が始められた。
(ああ、本来なら侯爵領に莫大な利益をもたらすはずだったのに……)
 王家に譲渡された後も継続して開発を任された侯爵領出身の鉱山技師が、今日も嘆息しながら作業を続ける。
 そこへけたたましい警報のベルが鳴り響き…… 鉱山の奥から多数の鉱員が飛び出して来た。
「きょっ……!」
「きょ?」
「きょ、巨大モグラと巨大ムカデがくんずほぐれつの大乱闘で……ッ!」
 瞬間、ドォンと轟音と共に、坑道の壁を突き破って、身体に絡みつかれた巨大ムカデを引きはがそうと鉤爪を掛けた巨大モグラが飛び出して来て……
 暫くもみ合いを続けた2体がふとこちらを見つめる人間たちに気付き…… 互いに相争うのを止めて、改めて逃げ出した鉱員たちに襲い掛かっていった。

リプレイ本文

 巨大なモグラとムカデが出現した第四層に行く方法は2つある。螺旋状に掘られたスロープを徒歩かトロッコで下る方法と、排水用の竪坑を拡張して設置されたエレベーターで直接下りる方法だ。
 ハンターたちは班を二つに分け、両ルートで下へ潜った。手分けをして手早く坑内の探索を行う為だ。

「鉱山にトラブルは付き物だろうが、こういうケースは初めて聞くな……」
 トロッコ1台が入る程度の狭い鉄檻の様なエレベーターの中で。ケージのすぐ横を流れる岩肌を間近に見やりつつ、ロニ・カルディス(ka0551)は呟いた。
 そのすぐ傍ら、煤塗れの坑内にあってなお凛とした佇まいで、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)も告げる。
「気に入らんな。場所が場所だけに単なる魔法生物の仕業とは思えん」
 いつか来るであろう『歪虚の王』──その脅威に対抗する為の鉱物を産出する鉱山で、作業を妨害する巨大生物が出現した。偶然か、それとも計画的な襲撃か。その真相を暴かねばならない。そこに僅かでも歪虚の臭いを感じたならば、彼女はそれを逃がすわけにはいかない。
「後方支援、兵站確保──重要任務だよなぁ。何とかして助けてやらないと」
 気合の拳を握ってコクコク頷くミリア・ラスティソード(ka1287)。コーネリアが歪虚の殲滅を胸に抱いているように、彼女はこの暗く狭い穴倉で人知れず人類の為に働いている作業員たちことを想っている。
「……おしゃべりはそのくらいで。そろそろ下に着くようです」
 ハンス・ラインフェルト(ka6750)は仲間にそう告げて、聖罰刀の柄に手をやり、身構えた。狭いケージの中、長物を抜くだけのスペースは無い。エレベーターはとても静穏とは言い難く、最悪、到着した瞬間、目の前にモグラが待ち構えていることもあり得る。
 ハンターたちがそれぞれ明かりを点灯する。到着を報せるチーンというベルの音と共にエレベーターが停止する。
 扉を開けて、ハンターたちが外へと飛び出し、武器を抜く。
 敵影は……その場に存在しなかった。ハンターたちはとりあえずホッと息を吐くと、隊列を組み、比較的広いメインの坑道から捜索を開始した。

 一方、スロープ班──
 最初はゆっくりと、だが、徐々にその速度を上げて…… 最終的に物凄いスピードへと到達したトロッコは。その淵に足を掛けたシレークス(ka0752)がどりゃあぁぁ! と剛力でブレーキを引いて、激しい火花と金属音を撒き散らしながら無事(?)第四層で停止した。
「トロッコ……! とっても楽しかったの……!」
 生まれたての小鹿の様にトロッコから降りたディーナ・フェルミ(ka5843)が瞳をキラキラさせながらシレークスに礼を言い。一方、金目(ka6190)とサクラ・エルフリード(ka2598)は淡々と周囲の様子を確認する。
「レールの反響音を聞いた限り、どうやらレールに破損個所は無いようだ。いざという時は鉱員の避難に使えるな」
「ここから先は歩きですね…… しかし、ムカデとモグラのでっかいのが絡まり合って暴れてる、とは、何と言うか……」
 絶叫マシンの如きトロッコに乗りながら、眠たげで気だるげな様子はそのままで、金目。サクラもまた無表情──ではあるのだが、その実、心臓がバクバクなのは内緒だ。
「この空気っ! 子供の頃を思い出しやがりますねぇっ!」
 狭い坑内の圧迫感もなんのその。むしろ胸を逸らして大きく深呼吸をしながら、シレークス。
「……そう言えば、シレークスさんってドワーフだったんですよね……」
 すっかり忘れてました、というサクラに「をぃ」とツッコミを入れつつ、シレークスはは改めて鉱山内活動における諸注意を仲間に伝えた。そう、場所こそ違えど鉱山は魂の故郷──故にそれを荒すものは許せない。
「通常、土竜や百足は嗅覚や振動を感知している筈でやがります。そこで、モグラ好みなこのミミズパウダーを振り掛けて誘引を……」
「いや、粉塗れはちょっと……(ミミズ臭いのもちょっと……)」
 シレークスの案は謝絶し、探索を開始するスロープ班。金目は手にした戦斧にナイフを叩きつけて音を立てつつ、坑内に取り残されているはずの鉱員たちに向かって避難を呼びかけながら進む。
「……この鉱石を王都やハルトフォートの工廠まで運ぶのか。あのドワーフの親方たちがこれをどう使うのか、気になるとこだが……」
 途中、広目の空間で取った小休止。休みも取らずせっせとマッピングセットに自分たちの進んだ経路を記録していくディーナを見ながら、採りかけの魔法鉱石を見つけた金目がそれを拾い上げ、懐かしさと共にそう呟く。
 そんなハンターたちの気配を察したのだろう。彼らが休憩する広間から脇へと伸びた枝道の奥から、何者かを問う声がした。互いに目配せをしてハンターたちが身元を明かすと、奥から憔悴しきった2人の男が現れた。逃げ遅れた鉱員の一部だろう。
「無事で良かったの。まずは飴玉をどうぞなの」
 ディーナは労わる様な笑顔で彼らを迎えると、甘い飴玉を手渡した。ただそれだけの親切で、鉱員たちは涙を流した。サクラはその背をさすりながら、「よく頑張りましたね……」と声を掛けつつ、回復魔法で彼らの傷を癒してやった。
 坑道の奥からバアン! という破裂音が響いてきたのはそんな折の事だった。ビクリと身体を震わせた鉱員たちに大丈夫だと声を掛けつつ……残響に耳を済ませながらハンターたちが状況を確認する。
「銃声ですね…… エレベーター班が接敵したのでしょう。その事実と位置を伝える意図があるかと」
 サクラの言葉にシレークスが立ち上がる。金目とディーナが不安そうな鉱員たちにそう言い聞かせた。
「俺たちは敵をやっつけてきます。あなたたちはこの先のスロープから地上へ逃げてください」
「大丈夫なの。モグラは私たちの行く手にいるから、スロープまでは安全なの!」


 その少し前──
 坑内に点在するはずの鉱員たちに助けが来たことを大きな声で呼び掛けながら、隊列の先頭に立って進んでいたロニとミリアは、前方に感じた何かの気配に足を止め、目配せしてから呼び掛けた。
「そこに誰かいるのですか?」
「僕たち、皆を助けに来たんだよ!」
 その言葉に3人の鉱員たちが姿を現した。足を引きずった男を他の2人が左右から抱えている。
 ミリアは自らそちらへ駆け寄ると怪我人に『ヒール』を施した。ロニは、坑内の状況を聞き出す前に、まずは甘いもの──桜餅を彼らに食べさせ、一息つかせようとした。
「落ち着いて、まずはこちらを……」
「っ! ロニ・カルディス!」
 周囲の警戒に当たっていたコーネリアが叫んだ。
 それは完全な不意打ちだった。闇の帳の向こうから。蛇の攻撃動作の様に瞬間的に伸ばされたムカデの顎が、鉱員の一人に噛みついた。即座に反応したコーネリアが咄嗟に左手に引き抜いた魔導拳銃で、伸び切った百足の胴へ横から銃弾を浴びせ掛け。それを嫌って再び闇の中へ引っ込んだその先へ、居合抜きに抜刀したハンスが見えざる斬撃の数閃を闇の向こうへ斬り放つ。
「来ます! モグラです!」
 刀を正眼に構えて警告を発するハンス。闇の中から染み出すように、ムカデに巻き付かれたモグラが姿を現し──瞬間、コーネリアが右の魔導銃を撃ち放ち、強化した制圧射撃で敵の接近を押し留める。
「このぉ……!」
 そこへ『ソウルトーチ』を焚いたミリアが真正面から突っ込んだ。後衛に敵を近づけぬよう神速で間合いを詰め、「根性ぉぉぉ!」と共に引き出した魔力を大身槍の穂先に乗せて、目にも止まらぬ速さで敵を貫き、切り払う。
 その痛撃に怒りの形相でモグラが振るう踏み込み鉤爪二連撃。斜めに振り下ろされたそれを躱し、横からの薙ぐ二撃目を槍の柄で受け止めるミリアの直上──鎌首もたげて死角から襲い掛からんとしたムカデの顎を、続いて前に出て来たハンスが籠手で払いつつ、流れるような動きで直後に刃を切り払う。
 その間に、ロニはムカデに噛まれて悲鳴を上げる鉱員の元へと駆け寄った。仰向けでビクビクと痙攣する身体を引っ繰り返して背中の傷を確認し、回復の光を手に纏わせてそれを傷口へと押し当てる。
 傷口が癒され、出血もどうにか止まった。だが、痙攣は収まらず、それどころか口から泡を吹き始めた。
「毒か……!」
 間髪入れず、ロニは『ゴッドブレス』──不浄を払い、抵抗力を強力に高める高位法術を施術した。……間もなく、鉱員の呼吸が安定し、ホッと息を吐くロニ。そこへ再びコーネリアの警告が届き、ロニは鉱員たちの眼前に立ちはだかって、再び放たれたムカデの一撃を光の障壁で受け弾く……

 その戦場へスロープ班が到着した。それはメインの坑道の前後からモグラを挟撃する態勢となり── 同時に、互いの照明が目に入る形となってしまった。
「皆、明かりは床に!」
 手で光を遮りながら叫ぶロニ。目くらましの隙をついて襲い掛からんとするモグラたちへ、乱立する闇の刃を放って敵をその場に固着する。
 シレークスは暗視ゴーグルを下げつつミミズパウダーを頭からぶっかけると、仲間たちに先駆けて土竜の背後へ踏み込んだ。光の聖印の浮かんだ拳槌でモグラの横原に抉るように拳を突き上げ、魔脚のローで膝を打つ。
 モグラは振り返らなかった。代わりに、モグラの身に巻き付いたムカデがその接近を牽制。顎をカチカチ鳴らして威嚇する。だが……
「わああぁぁ……!」
 大きな声を上げながらその懐まで飛び込んでいったディーナが『セイクリッドフラッシュ』──自身から噴き出す光の波動にモグラとムカデを巻き込んだ。プロテクションを掛けてて一拍遅れたサクラが「無茶をしますね……!」と続けて飛び込み、同様に光の波動を放ち。「大丈夫、痛くないの!」と回復魔法の準備を整え、ディーナが長柄の聖鎚をえいえい振ってムカデの頭をパコンと殴る。
 そのスロープ班の背後から、「あっ」と言う声がした。戦いの喧噪に気づいて様子を見に来た新たな鉱員たちが、枝道から出て来てその身を硬直させていた。
「逃げろ!」
 叫ぶ金目の傍らを、気づいたムカデの『ジャブ』が彼らに飛んだ。金目はチィッと舌を打つと、『ジェットブーツ』を噴射させて鉱員たちの眼前にその身を捻じ込んだ。
(間に合え……ッ!)
 マテリアルを噴射する脚を振って姿勢制御。『ガウスジェイル』で鉱員へ向かうはずだった攻撃を捻じ曲げ、斧の柄でムカデの顎を空中で受け止め、接地。靴底を滑らせつつ力を込めて、毒液滴るムカデの顎を目一杯押し返す……
 ハンターたちが攻勢に出た。
 トンビコートを棚引かせ、すり足で円を描く様にモグラの側面へと回り込んだハンスが縦横無尽に刀を振るって敵の別なく切り捲り。振るわれたモグラの鉤爪を刀に滑らせるように受け流しつつ逆に肉薄して、斬撃。敵の分厚い皮膚に止まった刀の峰に手を押し当て、肉を圧し切る。その横でポニーテールを振るって長槍を繰り出すミリアも尽き掛けた根性に気合を乗せて二連撃。改めて振り絞った根性を得物に込めつつ、神速の突きでムカデごとモグラの身体に幾つもの穴を穿っていく。
「まずは比較的小さなムカデから倒すの……!」
 ディーナの手の中で輝き始める斧状の星神器── 敵の反撃にも怯まずケープを浮かせて前に出たディーナはそのまま雷光を纏いしその得物を上半身ごと振り抜いた。
 身体を貫く雷電にムカデの動きを阻害される。「今です!」と仲間に呼びかけながら、雷光の斧を振るディーナ。金目は『デルタレイ』でその長いムカデの身体の二点とモグラの一点を蠍の毒針の如く撃ち貫き。その攻勢にのた打ち回ったムカデはモグラを見捨てて逃げ出そうとした。
 モグラの身体を土台に天井へと張り付き、そのまま戦場を離脱しようとするムカデ。だが、それはサクラが天井に乱立させた闇の刃によって阻まれた。
「逃がしませんよ……? 枝道や小さい穴…… そうそう、エレベーターに潜り込まれても面倒ですからね……」
 天井に張り付けたままのムカデを太刀でつつきながら、サクラ。そうして落ちて来たところを今度は光の杭で地面へ張り付けて。そこへ歩み寄ったシレークスがドッカとムカデを踏み付け、剛力でメキッと押さえつける。
「ドワーフがいる鉱山で、好き勝手できると思うんじゃねぇぞごらぁ!!」
 ゲシゲシストンピングを食らわせた後、その『頸』を掴んで持ち上げて。そのまま装甲の割れた部分をメキョっと握り潰して止めを刺す。気色悪かろうが気にしない。そんな感性はミミズパウダーを被った時点でうっちゃった。

 スロープ班がモグラの背後を襲う。
 後方から膝の裏をサクラに斬りつけられてガクリと膝を落とすモグラ。そこをタコ殴りにされて不利を悟ったモグラは逃走に転じようとした。
 だが、前後を挟まれた身に逃げ場は無く、モグラはその巨体を突進させてエレベーター班を突破しようとして…… しかし、ロニが張った不可侵の結界によってその突進を阻まれた。
 反転し、今度はスロープ班を突破しようとしたモグラだったが、金目が放った『炎の帯』に驚き、思わずたたらを踏んだところを、コーネリアが背後からもう一方のモグラの膝へ銃弾を浴びせて砕いた。
「その巨体で暴れ回るには身が重すぎたようだな。大人しく弾を喰らっていろ」
 膝立ちで棒立ちになったモグラへ容赦なく銃弾を叩き込んでいくコーネリア。ハンターたちの攻撃が次々とモグラの身体に喰い込み……ついに坑道内へと倒れ込む。
 コーネリアはまだ息のあるモグラへ歩み寄ると、拳銃の銃口をその額へ向けた。
「貴様に飼い主はいるのか? いるならそいつもすぐに葬ってやるぞ」
 銃声が鳴り響き……モグラはそれきり動かなくなった。

 敵を殲滅したハンターたちは、疲れた体に鞭打って坑内を探索し、逃げ遅れていた全ての鉱員を連れて地上へ戻った。
 遺跡と繋がってしまった横坑は他の鉱員たちによって埋め戻された。遺跡には地上にも正規の入口があるとのことで、コーネリアは本件の原因を探る為、後日の探索を希望しておいた。
「今回の件で鉱員がいなくなる……? 俺はそうは思わない」
 鉱山経営者の杞憂を、金目はそう笑い飛ばした。危険があるというなら対策をすればいい。退避ルートの設定や避難訓練──自分に出来ることがあるなら引き続き協力させてもらう。
「石と共に生きる男は、石と共にある事が誇りだ。危険が伴うのは当然のこと。石と大地に向き合うには安寧には代え難いものがある。……そうだろ?」
 金目の言葉にシレークスが大きく頷いた。
 その彼女が目下に抱える問題は、鉱山に風呂がないということで──
 シレークスは近くの古い街道の水飲み場で、寒空の下、ミミズパウダー塗れの身体を洗うこととなった。
 見張りに立ったサクラがそれを見ながら、苦笑交じりに小さく息を吐いた。

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参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 細工師
    金目(ka6190
    人間(紅)|26才|男性|機導師
  • 変わらぬ変わり者
    ハンス・ラインフェルト(ka6750
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/12/22 01:51:06
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サクラ・エルフリード(ka2598
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/12/22 17:07:11