ゲスト
(ka0000)
辺境へWELCOME!
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/17 22:00
- 完成日
- 2014/06/20 23:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
辺境、と一言で言ってもその実情は様々である。
数多くの部族が点在し、ドワーフが住まう場所。そして同時に、歪虚との戦いの最前線となっており、帝国の要塞都市も存在する。
そう、ここにおいて歪虚との戦いは日常茶飯事。
そしてそこに住まう人々は一枚岩とはとてもではないが言えない、それが辺境の実情。
……とはいえ、戦いに明け暮れる毎日というわけではない。
ごく普通の日常だって、当然ながら存在するのだ。
●
「皆サン、辺境ユニオン『ガーディナ』へ、welcomeなのデース!」
そう言って微笑むのは、白竜を連れた少女――『ガーディナ』のリーダーで、大霊堂の巫女であるリムネラ(kz0018)である。
「ハンターの皆サンには、これからもヨロシクお願いしますネ。まずはワタシたちが出入りをする辺境を知ってもらうコト、それが大事だと思うのデース♪」
独特な口調はさておき、言っていることは非常に納得のできることである。
知らない場所での活動は、誰しもが不安。
リムネラは年若いが、ユニオンリーダーとしての責任は十分に理解していた。
「そ、こ、で。皆サンには、ちょっとした探しモノをお願いしたいのデース!」
少女はニコッと微笑んで、ひょいと何か、花のようなきれいな石を見せる。
「コレは、辺境によくみられる石の結晶で、砂の花と呼ばれていますネ。前線ヨリももっと手前、歪虚の報告がないエリアで採集が可能デース。つまりどういうコトかというと、皆サンが辺境を訪れたという記念の意味も込めて、コレを皆サンも見つけてきてクダサーイ!」
砂の花――似たものはリアルブルーにもある。砂漠の薔薇、と呼ばれるものだ。そんな奇妙な相似性につい笑顔を浮かべてしまうものもいるが、リムネラはいかにも楽しそうに頷いた。
「皆サンと、そうやって笑顔で会話ができるように。ワタシは、これからのハンターと辺境の関係も良くしたいと思うのデース。ぜひ素敵な経験になりますよう、お祈りしていますネ♪」
辺境、と一言で言ってもその実情は様々である。
数多くの部族が点在し、ドワーフが住まう場所。そして同時に、歪虚との戦いの最前線となっており、帝国の要塞都市も存在する。
そう、ここにおいて歪虚との戦いは日常茶飯事。
そしてそこに住まう人々は一枚岩とはとてもではないが言えない、それが辺境の実情。
……とはいえ、戦いに明け暮れる毎日というわけではない。
ごく普通の日常だって、当然ながら存在するのだ。
●
「皆サン、辺境ユニオン『ガーディナ』へ、welcomeなのデース!」
そう言って微笑むのは、白竜を連れた少女――『ガーディナ』のリーダーで、大霊堂の巫女であるリムネラ(kz0018)である。
「ハンターの皆サンには、これからもヨロシクお願いしますネ。まずはワタシたちが出入りをする辺境を知ってもらうコト、それが大事だと思うのデース♪」
独特な口調はさておき、言っていることは非常に納得のできることである。
知らない場所での活動は、誰しもが不安。
リムネラは年若いが、ユニオンリーダーとしての責任は十分に理解していた。
「そ、こ、で。皆サンには、ちょっとした探しモノをお願いしたいのデース!」
少女はニコッと微笑んで、ひょいと何か、花のようなきれいな石を見せる。
「コレは、辺境によくみられる石の結晶で、砂の花と呼ばれていますネ。前線ヨリももっと手前、歪虚の報告がないエリアで採集が可能デース。つまりどういうコトかというと、皆サンが辺境を訪れたという記念の意味も込めて、コレを皆サンも見つけてきてクダサーイ!」
砂の花――似たものはリアルブルーにもある。砂漠の薔薇、と呼ばれるものだ。そんな奇妙な相似性につい笑顔を浮かべてしまうものもいるが、リムネラはいかにも楽しそうに頷いた。
「皆サンと、そうやって笑顔で会話ができるように。ワタシは、これからのハンターと辺境の関係も良くしたいと思うのデース。ぜひ素敵な経験になりますよう、お祈りしていますネ♪」
リプレイ本文
●
「初めての依頼、幸先良く終わらせたいな」
宇都宮 祥子(ka1678)は、そんなことを口にする。
リムネラに快く見送られたハンターたちは今、辺境の城塞都市『ノアーラ・クンタウ』から少し離れた所まで来ていた。
「そうだ、折角だし自己紹介もしましょうか?」
この依頼はリムネラがレクリエーションも兼ねたものだと説明していた。同じ依頼に同行している仲間と面識を深めるのは悪い話ではない。瀬織 怜皇(ka0684)の提案は、納得のいくものだった。
「俺は瀬織 怜皇といいます。よろしくお願いします」
青年が微笑むと、緊張もいくらかほぐれる。
「わたしはエテ(ka1888)。砂のお花のことは今回初めて知って……とっても素敵なものなんでしょうね!」
エルフの少女は、長いピンク色の髪をなびかせる。
「手のひらサイズでも、綺麗なものを見つけたいです」
確かに『砂の花』という響きはいかにも少女好みしそうだ。
「自分は綺麗で大きなものを持って帰りたいと思いますね」
そう言いながら笑うのは、鞍馬 馬頭鬼(ka0740)。名前がリアルブルー風の彼は転移者の子孫だという。人当たりの良さそうな青年だが、背負うものはなかなかに大きい。
「それにしてもここらは昔から砂漠だったのか? もしや何かの影響で砂漠化してしまったとか、そんなことは……」
気にはなるが、実際のところはわからない。まあ、辺境が全体的に土地が痩せているのは事実だが。
「砂の花って、植物の方ではありませんのね……そうそう、持ち帰るためにこんなものを用意しましたわ」
エジヴァ・カラウィン(ka0260)が見せたのは、真綿が詰まった小さな巾着。
「砂の花は脆いものと思ったので」
エジヴァがそう言うと、それまで口数の多くなかった少女――メリルメルリア(ka1315)が、口を開いた。
「私も、緩衝材用のマントがあるの。砂の花……石探しなんて、これ以上ない、良い依頼なの」
そしてふふ、と小さく口元を綻ばせる。メリルメルリアは、石の類を好んでいるのだ。
「でも砂の花って、どんなものなんですかね? それも楽しみなんです……」
エフィルロス・リンド(ka0450)はそう言いながら、うっとりとした顔で今にも夢の世界に落ちていきそう。彼女はいつでもどこでも気が付くと眠ってしまうタイプなのだ。慌てて近くにいたアマリ・ユーナ (ka0218)がぺしぺしとエフィルロスの頬を叩く。
「油断は禁物よ。でも砂の花……ね。こういうの、リアルブルーじゃレアよねぇ」
サルヴァトーレ・ロッソとは同時期に転移してきたという彼女、本人は自称サディストだが実態はかなりのヘタレで行動が伴っていない。
「そういえば、転移してからこんなに自由に外を出歩くのは初めてかしら。ハンターとしての第一歩だわ!」
アマリは嬉しそうに笑った。
●
辺境の環境というのは、地域によってかなりの差異があると思っていい。
今回ハンターたちが訪れたのは、砂地のエリア。乾いた風が時折彼らに向かって吹いて、砂を巻き上げる。
「今回はレクリエーションも兼ねたということだったし、探索中に部族の人に会えたりしたら、話しかけてみたいわよねえ」
アマリが言えば、他の人も似たようなことは考えていたようで、
「そういう方に会えたなら、砂の花についても教えていただきましょう」
怜皇も頷いて、その意見に同調する。
また、リアルブルーで砂漠の薔薇と呼ばれる鉱物とよく似ている――ということで、その採取方法を調べたものも少なくなかった。今回のためにスコップを用意してきた人は少なくないし、壊さずに運ぶための緩衝材を持ってきた人もいるのは前述のとおりである。
「でも、リアルブルーなんてお伽話みたいなものと思っていましたけど、実際にリアルブルーの人に会うと面白いですわね」
エジヴァがカラカラと笑う。妖艶な雰囲気の彼女だが、自ら多種族との行動を望んだくらいだから、やはりこういった依頼で様々な人に会うのが面白いのだ。
クリムゾンウェストとリアルブルーの違い――それはやはり、文化の発達というのもあるが、リアルブルーでは夢のような存在とされていたエルフやドワーフなんて言う種族がごく当たり前に歩いているのも大きいだろう。
きっと互いが互いの世界のことを夢物語と思う――そんな関係なのだ。
そんな一方、
「私は早くに馬、それもできれば軍馬がほしいと思っています。自分の足で進める場所も増えますし、荷物も多く運べますから」
祥子はハンターとしての当座の目標を口にした。目標なくだらだらと過ごすわけにも行かないので、それは正しい意見である。アウトドア派の彼女としては、やはり足を重視したいのだろう。
●
――と。
「あら、あそこに人がいるみたいですわね……?」
目ざとく見つけたのはエジヴァである。目を凝らせば、なるほど確かにそこにいるのは人らしい。
「この辺りの部族の方でしょうかね。砂の花のことも伺わないと……」
エフィルロスがほんのり寝ぼけたような声で、でもどこか楽しそうに言う。馬頭鬼も頷いた。
「このあたりのことにも詳しければ、いろいろ情報が聞けるかもしれない。砂の花が存在する……ということは、かつてこの周辺に自然があったはずだからな」
馬頭鬼はこの乾燥地帯も何らかの影響で砂漠化したのではないかと認識していた。理由は、砂の花の発生条件にある。
リアルブルーで「砂漠の薔薇」と呼ばれるものは、地底からしみだした水が周囲のミネラル分を溶かして形成したとされている。つまり、砂漠の薔薇のある場所というのは、かつて水があったということになるのだ。
(もしかしたら、この荒涼とした大地すら、ヴォイドの影響があるのかもしれない)
そう考えるのもハンターとしては当然だろう。
しかしとりあえずは見かけた現地の人間に詳しい話を聞きたいところだ。思わず全員で悩む。
「誰が行きましょうか?」
すると
「わたし、話してみたいわ」
アマリが挙手をした。いや、むしろ誰もが話してみたいと思っていたから、結果的に全員で向かった。
「こんにちは」
はじめに声をかけたのは怜皇だ。慣れないながらも言葉を巧みに操って、彼は挨拶をする。
「ん……あんたら、ハンターかい?」
褐色色の肌をしたその人物は三十がらみの男性。服装は、リアルブルーのとある少数民族のそれにどことなく似ていた。
「ええ。俺はリアルブルーの出身ですし、この辺りの地理について詳しいものもいないんです。少しお話を伺えたらと思って」
すると相手の男は目を一瞬丸くした。
「リアルブルーだって! あのリアルブルーかい!」
「私は折角なのでこちらに土産の料理を持ってきたんです……Zzz」
眠い目をこすりながらエフィルロスが言えば、そのそばでちょこんと立っていたメリルメルリアも、
「リムネラさんから、この辺りで採取できる砂の花を採ってきてって言われたなの。砂の花だけじゃなく、珍しい石も教えてくれたら嬉しいの」
そんなことを言ってじぃっと男を見つめる。男はメリルメルリアの言葉にさらに驚いたようだった。
「リムネラ様直々の依頼か! そういうことなら大歓迎さ! 砂の花が多く採れる場所もここいらには多いから、道すがら教えてやるよ!」
人付き合いは得意ではないが、必要な情報のためならきちんと話すメリルメルリア。そして何より、リムネラの名前が大きく影響を与えたようだ。
「辺境のユニオンをまとめてらっしゃるだろう。若いけれど大したもんだと思うね」
彼は名前をアンジーと名乗った。近くの部族に所属するのだという。
「ここいらはヴォイドの被害もまだ少なくてね。おかげで随分助かってるよ――ハンター志願者も最近は内外で増えているから、もしものときはハンターズソサエティに頼ることも多くて。ヴォイドの被害を食い止めてくれている部族もいるが、ハンターだって同じさ。本当に助かるよ」
そう表立って褒められると、駆け出しハンターとしてはやや照れてしまう。しかし裏を返せば、それだけヴォイドの脅威にさらされやすい土地なのだ――この辺境という場所は。
「このへんは砂地が多いけど、結構前から乾燥はしているみたいだな。なんせ植物は根付かないし、そういう意味では苦労は絶えないね。それでも以前よりは随分流通するようになったんだぜ、同盟の商人なんかが時々来てくれるようになったからな」
……隣接した帝国について言わないのは、思うところがあるのだろう。実際その辺りは随分デリケートな問題になっているらしいので、触れないほうが賢明だとハンターたちは認識した。
「そうだ。せっかくならうちの部族で少し休んでいきませんか? 大したものは出せないけれど」
アンジーの提案は願ってもなかった。休憩という意味でも大事だが、辺境の部族との交流も彼らの目下の課題の一つであるからだ。
「袖触れ合うも他生の縁、ですね」
祥子がこっくり頷いた。
●
ハンターたちが招かれた集落は大きくない。部族と言ってもアンジーのそれはどちらかと言うと小規模なのだろう。
「普段はこのへんで狩りをして、それを同盟の商人に売ったり、自分たちで食べたりして暮らしているんだ」
狩猟民族という言葉が一番しっくり来る。そんな中にやってきたハンターたちは、当然だが思いがけない来訪者として歓迎された。ハンターであること、そしてリムネラの依頼で訪れたことがここでも大きく影響しているらしい。
「リゼリオって、どんなところ?」
「リアルブルーから来た人もいるって本当?」
「リムネラ様はお元気なの?」
リゼリオではあまりわからなかったリムネラの立場もうっすらとわかる。辺境でも巫女というのは特別な存在なのだ。どの部族にも属さず、しかしひとつの勢力として意見を出すことができる。だからこそ、ユニオンのリーダーを任されるのだろう。
「そういえば、砂の花なのですが」
祥子が所在や採り方などについて尋ねると、
「この辺りの地面をいくらか掘れば見つかるよ。大きさはまちまちだがね」
気をつけるべきはスコップなどで誤って傷つけたリしないことだ、とアドバイスも貰った。
「どうもありがとう」
夕方になったらまたここに来ますから、ささやかな宴をやりましょう。
そう言って、彼らは再び砂の花探しに出かけたのだった。
●
砂の花についてはだいたい事情がわかった。この地域では珍しいものではないらしいので、思い思いのポイントでそれぞれが砂を掘っていく。ある者は手で、ある者はスコップで。
「素敵な砂のお花、見つかるかなぁ……」
エテなどは砂に足を取られつつも、夢中になって探す。
やがて――
「あ、これか!」
馬頭鬼が声をあげた。彼の手のひらに乗っているのは決して大きくはないものの、確かにリムネラが教えてくれた『砂の花』。
砂の中に混じった石英がキラキラと、西に傾いた太陽が砂の花をいっそう輝かせている。ひとつ発見されれば俄然ハンターたちもやる気が沸き起こり、あちらこちらを掘り返す。
もちろん、元からある自然を傷つけないよう、そして砂の花にもダメージを与えないよう、気をつけながら。
地上に露出しているものもあるが、それは全体的に小ぶり。それもだいぶわかってきたハンターたちは、風のたまり場や岩のそばを確認する。
「人の大きさほどもあるものもあるらしいですわね」
エジヴァが言えば、石にはこだわりを持つメリルメルリアもこっくり頷く。と
「おお……これは、大物なの……」
彼女が発見したのは人の頭よりも大きな、見事な砂の花だった。
一方、大きさよりも美しさを重視していたのはエテ。そろそろとスコップを使い、親指ほどの大きさながら、花弁のような広がりの美しい砂の花を掘り出す。他の仲間が掘り出したものとはわずかに色合いの違うそれは、珍しいのではなかろうか。
他の仲間も、思い思いに砂の花を発見する。
「砂の花と言っても、砂から離しても大丈夫そうですね。とはいえ何か変化があるかもしれないと思いましたけれど」
やや小ぶりなものの、見事な砂の花を見つけた怜皇がふむふむと頷きながら、それを丁寧に風呂敷に包む。
「どうなるかわかりませんが、これでいくつか持って行きましょう」
ちなみにエフィルロスはと言うと――砂を掘りながら夢の世界にまっしぐらであった。それでもそこそこの大きさの砂の花を見つけるあたり、ラッキーガールなのかもしれない。
「とりあえずこれで崩れないように、注意しなくちゃね」
アマリが悩みつつも、そう言いながら鞄にしまった。
●
集落に戻ると、当然ながら大歓迎だった。やはりこの地においてハンターの存在は珍しいのだろう。
加えて、ハンターたちが土産にと持ち込んだ酒や保存食なども、期待に拍車をかけているのかもしれない。
シードルやワイン、ウィスキーを大人たちは飲み交わし、ジュースを楽しそうに飲む子ども達と食事をしながら語らい合えば、それは直ぐに宴の席と相変わる。
「辺境と言っても、地域によりけりですよ。ここいらは比較的あたたかいけれど、雨が少ない。まあ、生活するのに不便なほどじゃないからこの辺りに住んでいるわけですけどね」
そんなことをいう集落の女性。男性はヴォイドとの戦いに出向くので、女性が村を支えることも多いらしい。一方子ども達はハンターの話を興味深げに聞いていたが、誰かがふとつぶやいた。
「あ、おねえちゃん寝てる?」
言われたエフィルロスはきょとんとして、
「え、ねてました……? 面白いことを言うのですね」
本人にはあまり自覚がないのが面白い。
「でも、皆とご一緒できるのはなんだか楽しいのでs……Zzz」
「あ、お姉ちゃんまたねたー」
子ども達にからかわれつつもそのそばで話をしているアマリやエテがそっと肩を貸してやる。
「こういう、何かをしたあとの語らいもまた楽しいものですね」
怜皇がワインで少し頬を染めながら、目を細める。
「……ええ、いいものですね。ハンターというのは」
馬頭鬼も頷く。駆け出しとはいえハンターである自分たちをこうやって迎え入れてくれる環境はまだ慣れない。しかし出来ることを出来る限りやるのは自分たちにとっても相手にとっても、きっと幸せなことなのだ。
――翌日。
ハンターたちは集落に別れを告げた。
提供した食糧は当然ながら喜ばれたが、何より嬉しかったのは
「また来てね」
という眼差し。
すぐに来ることは難しかろうが、もし何かあれば助けに来たいな――アマリはそんなことを思う。
砂の花という、小さな石を追いかけた結果。
ハンターたちは、辺境の実態のほんの一部でも知ることができたろうか。
もしそうであれば――ハンターにも、辺境の民にも、僥倖なことである――。
「初めての依頼、幸先良く終わらせたいな」
宇都宮 祥子(ka1678)は、そんなことを口にする。
リムネラに快く見送られたハンターたちは今、辺境の城塞都市『ノアーラ・クンタウ』から少し離れた所まで来ていた。
「そうだ、折角だし自己紹介もしましょうか?」
この依頼はリムネラがレクリエーションも兼ねたものだと説明していた。同じ依頼に同行している仲間と面識を深めるのは悪い話ではない。瀬織 怜皇(ka0684)の提案は、納得のいくものだった。
「俺は瀬織 怜皇といいます。よろしくお願いします」
青年が微笑むと、緊張もいくらかほぐれる。
「わたしはエテ(ka1888)。砂のお花のことは今回初めて知って……とっても素敵なものなんでしょうね!」
エルフの少女は、長いピンク色の髪をなびかせる。
「手のひらサイズでも、綺麗なものを見つけたいです」
確かに『砂の花』という響きはいかにも少女好みしそうだ。
「自分は綺麗で大きなものを持って帰りたいと思いますね」
そう言いながら笑うのは、鞍馬 馬頭鬼(ka0740)。名前がリアルブルー風の彼は転移者の子孫だという。人当たりの良さそうな青年だが、背負うものはなかなかに大きい。
「それにしてもここらは昔から砂漠だったのか? もしや何かの影響で砂漠化してしまったとか、そんなことは……」
気にはなるが、実際のところはわからない。まあ、辺境が全体的に土地が痩せているのは事実だが。
「砂の花って、植物の方ではありませんのね……そうそう、持ち帰るためにこんなものを用意しましたわ」
エジヴァ・カラウィン(ka0260)が見せたのは、真綿が詰まった小さな巾着。
「砂の花は脆いものと思ったので」
エジヴァがそう言うと、それまで口数の多くなかった少女――メリルメルリア(ka1315)が、口を開いた。
「私も、緩衝材用のマントがあるの。砂の花……石探しなんて、これ以上ない、良い依頼なの」
そしてふふ、と小さく口元を綻ばせる。メリルメルリアは、石の類を好んでいるのだ。
「でも砂の花って、どんなものなんですかね? それも楽しみなんです……」
エフィルロス・リンド(ka0450)はそう言いながら、うっとりとした顔で今にも夢の世界に落ちていきそう。彼女はいつでもどこでも気が付くと眠ってしまうタイプなのだ。慌てて近くにいたアマリ・ユーナ (ka0218)がぺしぺしとエフィルロスの頬を叩く。
「油断は禁物よ。でも砂の花……ね。こういうの、リアルブルーじゃレアよねぇ」
サルヴァトーレ・ロッソとは同時期に転移してきたという彼女、本人は自称サディストだが実態はかなりのヘタレで行動が伴っていない。
「そういえば、転移してからこんなに自由に外を出歩くのは初めてかしら。ハンターとしての第一歩だわ!」
アマリは嬉しそうに笑った。
●
辺境の環境というのは、地域によってかなりの差異があると思っていい。
今回ハンターたちが訪れたのは、砂地のエリア。乾いた風が時折彼らに向かって吹いて、砂を巻き上げる。
「今回はレクリエーションも兼ねたということだったし、探索中に部族の人に会えたりしたら、話しかけてみたいわよねえ」
アマリが言えば、他の人も似たようなことは考えていたようで、
「そういう方に会えたなら、砂の花についても教えていただきましょう」
怜皇も頷いて、その意見に同調する。
また、リアルブルーで砂漠の薔薇と呼ばれる鉱物とよく似ている――ということで、その採取方法を調べたものも少なくなかった。今回のためにスコップを用意してきた人は少なくないし、壊さずに運ぶための緩衝材を持ってきた人もいるのは前述のとおりである。
「でも、リアルブルーなんてお伽話みたいなものと思っていましたけど、実際にリアルブルーの人に会うと面白いですわね」
エジヴァがカラカラと笑う。妖艶な雰囲気の彼女だが、自ら多種族との行動を望んだくらいだから、やはりこういった依頼で様々な人に会うのが面白いのだ。
クリムゾンウェストとリアルブルーの違い――それはやはり、文化の発達というのもあるが、リアルブルーでは夢のような存在とされていたエルフやドワーフなんて言う種族がごく当たり前に歩いているのも大きいだろう。
きっと互いが互いの世界のことを夢物語と思う――そんな関係なのだ。
そんな一方、
「私は早くに馬、それもできれば軍馬がほしいと思っています。自分の足で進める場所も増えますし、荷物も多く運べますから」
祥子はハンターとしての当座の目標を口にした。目標なくだらだらと過ごすわけにも行かないので、それは正しい意見である。アウトドア派の彼女としては、やはり足を重視したいのだろう。
●
――と。
「あら、あそこに人がいるみたいですわね……?」
目ざとく見つけたのはエジヴァである。目を凝らせば、なるほど確かにそこにいるのは人らしい。
「この辺りの部族の方でしょうかね。砂の花のことも伺わないと……」
エフィルロスがほんのり寝ぼけたような声で、でもどこか楽しそうに言う。馬頭鬼も頷いた。
「このあたりのことにも詳しければ、いろいろ情報が聞けるかもしれない。砂の花が存在する……ということは、かつてこの周辺に自然があったはずだからな」
馬頭鬼はこの乾燥地帯も何らかの影響で砂漠化したのではないかと認識していた。理由は、砂の花の発生条件にある。
リアルブルーで「砂漠の薔薇」と呼ばれるものは、地底からしみだした水が周囲のミネラル分を溶かして形成したとされている。つまり、砂漠の薔薇のある場所というのは、かつて水があったということになるのだ。
(もしかしたら、この荒涼とした大地すら、ヴォイドの影響があるのかもしれない)
そう考えるのもハンターとしては当然だろう。
しかしとりあえずは見かけた現地の人間に詳しい話を聞きたいところだ。思わず全員で悩む。
「誰が行きましょうか?」
すると
「わたし、話してみたいわ」
アマリが挙手をした。いや、むしろ誰もが話してみたいと思っていたから、結果的に全員で向かった。
「こんにちは」
はじめに声をかけたのは怜皇だ。慣れないながらも言葉を巧みに操って、彼は挨拶をする。
「ん……あんたら、ハンターかい?」
褐色色の肌をしたその人物は三十がらみの男性。服装は、リアルブルーのとある少数民族のそれにどことなく似ていた。
「ええ。俺はリアルブルーの出身ですし、この辺りの地理について詳しいものもいないんです。少しお話を伺えたらと思って」
すると相手の男は目を一瞬丸くした。
「リアルブルーだって! あのリアルブルーかい!」
「私は折角なのでこちらに土産の料理を持ってきたんです……Zzz」
眠い目をこすりながらエフィルロスが言えば、そのそばでちょこんと立っていたメリルメルリアも、
「リムネラさんから、この辺りで採取できる砂の花を採ってきてって言われたなの。砂の花だけじゃなく、珍しい石も教えてくれたら嬉しいの」
そんなことを言ってじぃっと男を見つめる。男はメリルメルリアの言葉にさらに驚いたようだった。
「リムネラ様直々の依頼か! そういうことなら大歓迎さ! 砂の花が多く採れる場所もここいらには多いから、道すがら教えてやるよ!」
人付き合いは得意ではないが、必要な情報のためならきちんと話すメリルメルリア。そして何より、リムネラの名前が大きく影響を与えたようだ。
「辺境のユニオンをまとめてらっしゃるだろう。若いけれど大したもんだと思うね」
彼は名前をアンジーと名乗った。近くの部族に所属するのだという。
「ここいらはヴォイドの被害もまだ少なくてね。おかげで随分助かってるよ――ハンター志願者も最近は内外で増えているから、もしものときはハンターズソサエティに頼ることも多くて。ヴォイドの被害を食い止めてくれている部族もいるが、ハンターだって同じさ。本当に助かるよ」
そう表立って褒められると、駆け出しハンターとしてはやや照れてしまう。しかし裏を返せば、それだけヴォイドの脅威にさらされやすい土地なのだ――この辺境という場所は。
「このへんは砂地が多いけど、結構前から乾燥はしているみたいだな。なんせ植物は根付かないし、そういう意味では苦労は絶えないね。それでも以前よりは随分流通するようになったんだぜ、同盟の商人なんかが時々来てくれるようになったからな」
……隣接した帝国について言わないのは、思うところがあるのだろう。実際その辺りは随分デリケートな問題になっているらしいので、触れないほうが賢明だとハンターたちは認識した。
「そうだ。せっかくならうちの部族で少し休んでいきませんか? 大したものは出せないけれど」
アンジーの提案は願ってもなかった。休憩という意味でも大事だが、辺境の部族との交流も彼らの目下の課題の一つであるからだ。
「袖触れ合うも他生の縁、ですね」
祥子がこっくり頷いた。
●
ハンターたちが招かれた集落は大きくない。部族と言ってもアンジーのそれはどちらかと言うと小規模なのだろう。
「普段はこのへんで狩りをして、それを同盟の商人に売ったり、自分たちで食べたりして暮らしているんだ」
狩猟民族という言葉が一番しっくり来る。そんな中にやってきたハンターたちは、当然だが思いがけない来訪者として歓迎された。ハンターであること、そしてリムネラの依頼で訪れたことがここでも大きく影響しているらしい。
「リゼリオって、どんなところ?」
「リアルブルーから来た人もいるって本当?」
「リムネラ様はお元気なの?」
リゼリオではあまりわからなかったリムネラの立場もうっすらとわかる。辺境でも巫女というのは特別な存在なのだ。どの部族にも属さず、しかしひとつの勢力として意見を出すことができる。だからこそ、ユニオンのリーダーを任されるのだろう。
「そういえば、砂の花なのですが」
祥子が所在や採り方などについて尋ねると、
「この辺りの地面をいくらか掘れば見つかるよ。大きさはまちまちだがね」
気をつけるべきはスコップなどで誤って傷つけたリしないことだ、とアドバイスも貰った。
「どうもありがとう」
夕方になったらまたここに来ますから、ささやかな宴をやりましょう。
そう言って、彼らは再び砂の花探しに出かけたのだった。
●
砂の花についてはだいたい事情がわかった。この地域では珍しいものではないらしいので、思い思いのポイントでそれぞれが砂を掘っていく。ある者は手で、ある者はスコップで。
「素敵な砂のお花、見つかるかなぁ……」
エテなどは砂に足を取られつつも、夢中になって探す。
やがて――
「あ、これか!」
馬頭鬼が声をあげた。彼の手のひらに乗っているのは決して大きくはないものの、確かにリムネラが教えてくれた『砂の花』。
砂の中に混じった石英がキラキラと、西に傾いた太陽が砂の花をいっそう輝かせている。ひとつ発見されれば俄然ハンターたちもやる気が沸き起こり、あちらこちらを掘り返す。
もちろん、元からある自然を傷つけないよう、そして砂の花にもダメージを与えないよう、気をつけながら。
地上に露出しているものもあるが、それは全体的に小ぶり。それもだいぶわかってきたハンターたちは、風のたまり場や岩のそばを確認する。
「人の大きさほどもあるものもあるらしいですわね」
エジヴァが言えば、石にはこだわりを持つメリルメルリアもこっくり頷く。と
「おお……これは、大物なの……」
彼女が発見したのは人の頭よりも大きな、見事な砂の花だった。
一方、大きさよりも美しさを重視していたのはエテ。そろそろとスコップを使い、親指ほどの大きさながら、花弁のような広がりの美しい砂の花を掘り出す。他の仲間が掘り出したものとはわずかに色合いの違うそれは、珍しいのではなかろうか。
他の仲間も、思い思いに砂の花を発見する。
「砂の花と言っても、砂から離しても大丈夫そうですね。とはいえ何か変化があるかもしれないと思いましたけれど」
やや小ぶりなものの、見事な砂の花を見つけた怜皇がふむふむと頷きながら、それを丁寧に風呂敷に包む。
「どうなるかわかりませんが、これでいくつか持って行きましょう」
ちなみにエフィルロスはと言うと――砂を掘りながら夢の世界にまっしぐらであった。それでもそこそこの大きさの砂の花を見つけるあたり、ラッキーガールなのかもしれない。
「とりあえずこれで崩れないように、注意しなくちゃね」
アマリが悩みつつも、そう言いながら鞄にしまった。
●
集落に戻ると、当然ながら大歓迎だった。やはりこの地においてハンターの存在は珍しいのだろう。
加えて、ハンターたちが土産にと持ち込んだ酒や保存食なども、期待に拍車をかけているのかもしれない。
シードルやワイン、ウィスキーを大人たちは飲み交わし、ジュースを楽しそうに飲む子ども達と食事をしながら語らい合えば、それは直ぐに宴の席と相変わる。
「辺境と言っても、地域によりけりですよ。ここいらは比較的あたたかいけれど、雨が少ない。まあ、生活するのに不便なほどじゃないからこの辺りに住んでいるわけですけどね」
そんなことをいう集落の女性。男性はヴォイドとの戦いに出向くので、女性が村を支えることも多いらしい。一方子ども達はハンターの話を興味深げに聞いていたが、誰かがふとつぶやいた。
「あ、おねえちゃん寝てる?」
言われたエフィルロスはきょとんとして、
「え、ねてました……? 面白いことを言うのですね」
本人にはあまり自覚がないのが面白い。
「でも、皆とご一緒できるのはなんだか楽しいのでs……Zzz」
「あ、お姉ちゃんまたねたー」
子ども達にからかわれつつもそのそばで話をしているアマリやエテがそっと肩を貸してやる。
「こういう、何かをしたあとの語らいもまた楽しいものですね」
怜皇がワインで少し頬を染めながら、目を細める。
「……ええ、いいものですね。ハンターというのは」
馬頭鬼も頷く。駆け出しとはいえハンターである自分たちをこうやって迎え入れてくれる環境はまだ慣れない。しかし出来ることを出来る限りやるのは自分たちにとっても相手にとっても、きっと幸せなことなのだ。
――翌日。
ハンターたちは集落に別れを告げた。
提供した食糧は当然ながら喜ばれたが、何より嬉しかったのは
「また来てね」
という眼差し。
すぐに来ることは難しかろうが、もし何かあれば助けに来たいな――アマリはそんなことを思う。
砂の花という、小さな石を追いかけた結果。
ハンターたちは、辺境の実態のほんの一部でも知ることができたろうか。
もしそうであれば――ハンターにも、辺境の民にも、僥倖なことである――。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 アマリ・ユーナ (ka0218) 人間(リアルブルー)|18才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/06/17 21:17:59 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/14 18:13:39 |