ゲスト
(ka0000)
強盗団のアジトを追え!
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/13 09:00
- 完成日
- 2015/01/19 02:10
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●クリスマスの日、港町ガンナ・エントラータのある場所で
「金がいるが……効率良く稼げねぇかな……」
その者は、元ハンターだった。
今から十数年前のある出来事をきっかけに、ハンターを止めた。
今は、身に付けた力と技術を悪用し、誘拐や強盗稼業を生業としている。
「CAM……あれが、あれば……」
噂で聞いた、リアルブルーの対歪虚兵器。
それさえあれば、目的が達成できる。
しかし、その為には莫大な金がいるのだ。
CAMは金だけでは手に入れる事はできないのは分かっている。だが、なににせよ、莫大な金がいる。
「どうするか……」
思案しながら、街中を歩く。
この港町は、グラズヘイム王国の中でも比較的治安が悪い方の街だ。
小悪党が街の中に紛れても、そうそう、分かるものではない。
彼は金になる情報を探しに、この街へ仲間と共にやってきたのだった。
その時、彼の行く先にローブに身を包んだ人物が、忽然と現れる。
警戒しながら、その人物の脇を通り過ぎようとした際に、声をかけられた。
「金を稼げる手段の道具を、私は用意できるぞ」
その手の話は、いくらでも転がっている。騙し合い。詐欺。そんなもの慣れきっている。
無視するつもりだったが、擦れ違い様に見たローブの人物の瞳を見て気が変わった。
「ガセなら、お前は死ぬぞ」
ドスをきかせる。もちろん、本気だ。
「己に自信があるようだな」
「当たり前だ」
「なら、口で説明するより、直で身体を動かした方が分かりやすいだろう」
大きめの壺を投げつけてきた。
素早く剣を抜くと、壺を叩き割る。
壺が割れたと思った瞬間、中身の液体の様な物が宙で広がる。
だが、男は慌てる様子なく、剣を返して、切りつける。
「スライムか!」
男は驚く。
それでいながら、続けて斬撃を繰り返す。考えるよりも先に剣が出る。
身体に沁み込まれた幾つもの戦闘経験の賜物だ。
あっという間にスライムは活動を停止して、無残な残骸となる。
「お前は何者なんだ」
「そうだな……貴様の『ノゾミ』とやらを叶える者という事かな」
「つまり、効率良く金を稼げるという望みをか?」
ローブの人物は、男の質問に答えず、踵を返すと歩き出した。
「着いてくるといい。先程の壺と、活動する為の拠点を与えよう」
男は迷う事なく、その後を追った。
●運命の針と縁の糸
縁とは不思議なもの。
偶然なのか、必然なのか、再び重なろうとしている縁の糸に、新しい糸が交わる……。
ソルラは、港町ガンナ・エントラータにある母方の実家に、1人で帰省する事が毎年の恒例であった。
「そういえば、言付け先の方は見つかったのかな?」
祖父の質問にソルラは頷いた。
この港町に来る前に、ゴブリンの一団に襲われていた馬車を助けたのだが、その時、犠牲者から言付けを頼まれていたのだ。
「ずっと不在でしたが、なんとか」
「それは良かった。最近は、この辺も物騒でな。商売にも響くのじゃ」
母方の実家は、この街である商会を営んでいる。
さすがに、第六商会程、規模は大きくはないが、主に、同盟の商人達と取引していた。
ソルラの家は、保守派であるが、財政的な意味で、母方の家は、貴族との繋がりを持つ事で商売を有利にするという意味で、お互いの利害の一致が生んだ繋がりだ。
「長期の休みと聞いたぞ」
「所属していた隊が壊滅状態ですから」
王都を襲った歪虚の追撃戦で、彼女の所属する隊は、半数以上が戦死し、生き残った者もまだ治療中で、事実上の壊滅状態になった。
そういう事なので、隊は活動を休止になり、唯一、無傷だった彼女は長期の休暇というわけだ。
ソルラ自身は復興作業を手伝いたかったのだが……。
「そこでだ。どうだ、儂の手伝いをしてくれんかの?」
「私にできる事であれば」
少し不安そうに返事をするソルラ。
性格的な問題なのか、それとも、経験や知識が足りないだけなのか、どうも、商売は苦手なのだ。
「安心しなさい。商売じゃない。『鉄壁の騎士』に相応しい仕事だ」
「なんでしょうか?」
「ある御方から頼まれての。年明けから金貨や宝石等の強盗が数件あるのだが、その調査じゃ」
資料をソルラは受け取った。
一枚一枚、丁寧に確認しながら読み込む。
「……同一犯の可能性が高いですね」
「手口はいずれも一緒だ。貴金属を扱う商店で、突然、スライムが発生。混乱する店内から、金貨や宝石類が奪われおる」
火事場泥棒というより、スライムを使った強盗というべきだろうか。
しかし、人間が、スライムを自在に扱えるという話を、ソルラは聞いた事がなかった。
「どういう手段でスライムを扱っているかわからん。だが、それは、犯人を捕まえればわかる事だ」
「つまり、私に犯人を探せという事ですね」
「その通り。近いうちに、囮の店を用意する。出現したスライムを討伐。同時に、犯人を追跡し、根城の場所を確認するまでが仕事だ」
祖父はそう言いながら、ハンターオフィスに出す依頼書をソルラに手渡した。
「根城の場所を確認するだけでいいのですね?」
「それが、ある御方からの意向であるからな。これは厳命じゃ。決して、踏み込んではならぬ」
なにか意図があるという事なのだろうが、ソルラには考えても、その理由が思いつかなかった。
祖父がそこまで言うのだ、きっと、重大な意味があるのだろう。
「私は、追跡は苦手なんですけどね」
「役割はハンター達と決めてくれ。保守派の中でも、ハンター寄りだと、お前の父が嘆いておったぞ」
その祖父の言葉にソルラは苦笑を浮かべるしかできなかったのであった。
「金がいるが……効率良く稼げねぇかな……」
その者は、元ハンターだった。
今から十数年前のある出来事をきっかけに、ハンターを止めた。
今は、身に付けた力と技術を悪用し、誘拐や強盗稼業を生業としている。
「CAM……あれが、あれば……」
噂で聞いた、リアルブルーの対歪虚兵器。
それさえあれば、目的が達成できる。
しかし、その為には莫大な金がいるのだ。
CAMは金だけでは手に入れる事はできないのは分かっている。だが、なににせよ、莫大な金がいる。
「どうするか……」
思案しながら、街中を歩く。
この港町は、グラズヘイム王国の中でも比較的治安が悪い方の街だ。
小悪党が街の中に紛れても、そうそう、分かるものではない。
彼は金になる情報を探しに、この街へ仲間と共にやってきたのだった。
その時、彼の行く先にローブに身を包んだ人物が、忽然と現れる。
警戒しながら、その人物の脇を通り過ぎようとした際に、声をかけられた。
「金を稼げる手段の道具を、私は用意できるぞ」
その手の話は、いくらでも転がっている。騙し合い。詐欺。そんなもの慣れきっている。
無視するつもりだったが、擦れ違い様に見たローブの人物の瞳を見て気が変わった。
「ガセなら、お前は死ぬぞ」
ドスをきかせる。もちろん、本気だ。
「己に自信があるようだな」
「当たり前だ」
「なら、口で説明するより、直で身体を動かした方が分かりやすいだろう」
大きめの壺を投げつけてきた。
素早く剣を抜くと、壺を叩き割る。
壺が割れたと思った瞬間、中身の液体の様な物が宙で広がる。
だが、男は慌てる様子なく、剣を返して、切りつける。
「スライムか!」
男は驚く。
それでいながら、続けて斬撃を繰り返す。考えるよりも先に剣が出る。
身体に沁み込まれた幾つもの戦闘経験の賜物だ。
あっという間にスライムは活動を停止して、無残な残骸となる。
「お前は何者なんだ」
「そうだな……貴様の『ノゾミ』とやらを叶える者という事かな」
「つまり、効率良く金を稼げるという望みをか?」
ローブの人物は、男の質問に答えず、踵を返すと歩き出した。
「着いてくるといい。先程の壺と、活動する為の拠点を与えよう」
男は迷う事なく、その後を追った。
●運命の針と縁の糸
縁とは不思議なもの。
偶然なのか、必然なのか、再び重なろうとしている縁の糸に、新しい糸が交わる……。
ソルラは、港町ガンナ・エントラータにある母方の実家に、1人で帰省する事が毎年の恒例であった。
「そういえば、言付け先の方は見つかったのかな?」
祖父の質問にソルラは頷いた。
この港町に来る前に、ゴブリンの一団に襲われていた馬車を助けたのだが、その時、犠牲者から言付けを頼まれていたのだ。
「ずっと不在でしたが、なんとか」
「それは良かった。最近は、この辺も物騒でな。商売にも響くのじゃ」
母方の実家は、この街である商会を営んでいる。
さすがに、第六商会程、規模は大きくはないが、主に、同盟の商人達と取引していた。
ソルラの家は、保守派であるが、財政的な意味で、母方の家は、貴族との繋がりを持つ事で商売を有利にするという意味で、お互いの利害の一致が生んだ繋がりだ。
「長期の休みと聞いたぞ」
「所属していた隊が壊滅状態ですから」
王都を襲った歪虚の追撃戦で、彼女の所属する隊は、半数以上が戦死し、生き残った者もまだ治療中で、事実上の壊滅状態になった。
そういう事なので、隊は活動を休止になり、唯一、無傷だった彼女は長期の休暇というわけだ。
ソルラ自身は復興作業を手伝いたかったのだが……。
「そこでだ。どうだ、儂の手伝いをしてくれんかの?」
「私にできる事であれば」
少し不安そうに返事をするソルラ。
性格的な問題なのか、それとも、経験や知識が足りないだけなのか、どうも、商売は苦手なのだ。
「安心しなさい。商売じゃない。『鉄壁の騎士』に相応しい仕事だ」
「なんでしょうか?」
「ある御方から頼まれての。年明けから金貨や宝石等の強盗が数件あるのだが、その調査じゃ」
資料をソルラは受け取った。
一枚一枚、丁寧に確認しながら読み込む。
「……同一犯の可能性が高いですね」
「手口はいずれも一緒だ。貴金属を扱う商店で、突然、スライムが発生。混乱する店内から、金貨や宝石類が奪われおる」
火事場泥棒というより、スライムを使った強盗というべきだろうか。
しかし、人間が、スライムを自在に扱えるという話を、ソルラは聞いた事がなかった。
「どういう手段でスライムを扱っているかわからん。だが、それは、犯人を捕まえればわかる事だ」
「つまり、私に犯人を探せという事ですね」
「その通り。近いうちに、囮の店を用意する。出現したスライムを討伐。同時に、犯人を追跡し、根城の場所を確認するまでが仕事だ」
祖父はそう言いながら、ハンターオフィスに出す依頼書をソルラに手渡した。
「根城の場所を確認するだけでいいのですね?」
「それが、ある御方からの意向であるからな。これは厳命じゃ。決して、踏み込んではならぬ」
なにか意図があるという事なのだろうが、ソルラには考えても、その理由が思いつかなかった。
祖父がそこまで言うのだ、きっと、重大な意味があるのだろう。
「私は、追跡は苦手なんですけどね」
「役割はハンター達と決めてくれ。保守派の中でも、ハンター寄りだと、お前の父が嘆いておったぞ」
その祖父の言葉にソルラは苦笑を浮かべるしかできなかったのであった。
リプレイ本文
●開店前
「依頼が終わるまでしばらく禁煙だなァ……」
煙草に伸ばそうとした手が、物足りなさそうな動きをし、シガレット=ウナギパイ(ka2884)は開店前の店の中を見渡す。
スライムを使った強盗団のアジトを突き止める為に用意された囮の店だ。
「こちらは、準備完了だ」
クローディア(ka3392)が武器を店内に隠し込んでいた。
一方、店の片隅で用心棒役のソルラに変装を施しているのは、シエラ・ヒース(ka1543)だ。
リアルブルーでいう所の警備員の様な制服を着込んだソルラの髪型を、楽しそうに結い上げている。
「ソルラの地元だしね。これ位、しておかないと。それにしても、指の通りが良いわね」
「あ、ありがとうございます。いつも、シエラさんには助けられっぱなしですね」
思えば、昨年の秋頃からなにかと縁がある。
シエラが気にしないでと笑顔で答えながら、結い上げの仕上げに入った所で、勝手口から十色 エニア(ka0370)が入ってきた。
「ソルラさんは、あの時以来だね~。騎士たちの容態はどうですか?」
あの時とは、王国を襲った歪虚の追撃戦の事だ。助け出した騎士達は瀕死の重傷だった。
「十色さん、お久しぶりです。おかげさまで、回復に向かっています」
「それは、よかったよ」
安堵した表情を向ける。
再び、裏の勝手口が開き、今度は、瀬織 怜皇(ka0684)とUisca Amhran(ka0754)が仲睦まじく現れた。
二人は強盗犯が逃げ込むかもしれない路地を下見していた様だ。
「以前にも、強盗犯を追う依頼を受けましたが、今回もですか……。王国の治安はかなり悪くなっている様ですね……」
「尾行するにも、気をつけた方がいいかもしれませんね」
心配するUiscaの言葉に、瀬織が答える。
後は、各自が武器を隠し、あるいは変装を終えて、開店を待つだけだ。
強盗にわざと奪わせる香りがついたレプリカも用意した。
その香りを、正式な捜査犬ではない、ペットの犬がどこまで追跡できるかはやってみないとわからないが。
「強盗犯にはいつもの手口で気持ちよく強盗してもらうかァ」
不敵に笑うシガレット。
強盗が踏み込んでこないと、そもそも依頼にもならない。
「それにしても、街中に突然雑魔とか……流行ってるのかしらね」
彼女が最近、この街で関わった事件は、いずれも、街中で雑魔が出現している。
そんな流行りは御免こうむりたいものだ。
●強盗襲来
店内が、香水のあまい香りに包まれている。
依頼主が他の地方と取引をしている商会なだけあって、装飾品のレプリカや数種類の香水など必要な物を一通り用意してくれたのだ。
店が開店すると、大通りに面しているだけあって、それなりにお客が入ってくる。
そこへ、瀬織とUiscaが腕を組みながら、客を装い、店の中に入ってきた。
「あれいいなぁ~。これもいいっ!」
ショーケースの中の豪華な装飾品を見て、無邪気な声をあげるUisca。
「はいはい、それも良いですね」
落ち着かせる様に、恋人の頭を優しく撫でる瀬織。
あしらわれている様な気がして、ぷくっと頬を膨らませた彼女の肩を引き寄せると、耳元で「どれか一つだけだよ」と囁く。
そんなイチャラブカップルの様子を見て、用心棒役のソルラが真っ赤な顔をしていた。
怒っているわけではない。
あまりのラブラブっぷりを見せつけられ、彼女の方が照れてしまっているのだ。
「デ、デートって、あ、あんな感じなんですか?」
手を繋いで歩くだけじゃないんだと心の中で思いながら、店員を扮していたシガレットとクローディアに思わず話掛ける。
「あァ? あんなもんじゃねぇかァ」
特段、珍しくもないだろうともいわんばかりのシガレット。
「クローディアさんも、そう思います?」
「……」
なにか、上の空の様だ。もう一度、彼女を名を呼ぶ。
「……あ、あぁ! そうだとも!」
気のせいか、彼女の頬も少し赤みがかっている様に見えた。クローディアは姿勢を正し、カウンターの裏側に入っていく。
ふと、ガラスの窓から外をみたシガレットの視界の中に、向かいの喫茶店で犬と一緒にくつろいでいるシエラと十色の姿が見た。
「このケーキ、なかなかいい味」
「張り込みもこうしていれば、自然ですね」
シエラがケーキを美味しそうに口に運べば、十色は紅茶の香りを楽しんでいる。
重ねて言うが、サボっているわけでも、デートしているわけでもない。
これは、張り込みなのだ。
「店員さん」
呼び掛けられて、振り返ると小太りの男が話しかけてきた。
営業スマイルでそれを迎えるシガレット。
「あれは非売品なのですか?」
指差した先には、ディスプレイに飾られている装飾品のレプリカ。
「はい。申し訳ありませんが、あちらは非売品になっております」
「なら、あれも、もらうよ」
小太りと思ったら、その腹の中から壺を取りだすと、シガレットの足元に投げつけた。
壺が割れると同時に、半透明の液体が彼を包み込むように広がる。
もう一度、別の所でも壺が割れる音が響いた。
既に犯人達はバラバラで店に来店していた様だ。
店内に響き渡る悲鳴。客が出入り口に向かって殺到する。
ソルラがなにか叫んでいるが、この喧騒で聞こえない。
「こいつはァ!」
スライムが覆いかぶさってきたのを避けず、シガレットが両手を突き出して飲み込まれるのを防いだ。
避ける事もできたが、一般人に危険が及ぶ可能性があるからだ。
強盗と思わしき男が、手当たり次第に袋に商品を詰め込んでいく。
クローディアが混乱する店内に紛れて、香り付けの為に置いてあった香水が入った皿を強盗の衣服に投げつけた。
「避難口はこちらにもございます!」
そして、凛とした声で呼び掛ける。
強盗は乱雑に手の付く所からひたすら商品を奪っていて、香水をかけられた事は、分からなかった様だ。
「てめぇのも、渡せ!」
不幸にも商品を買ったばかりの客からも奪うと、次の標的を探す。
目に付いたのは一組のカップル。
健気にも、恋人を護ろうとしているのか、両手を広げ、後ろの女性を庇うように立ち塞がる。
後ろの女性は、彼氏の衣服を掴んでいた。
「イチャイチャしてるんじゃねぇ!」
強盗の拳が男の顔に叩きこまれたが、そのまま耐えきる。
「ずらかるぞ!」
別の強盗犯から声がかかり、舌打ちしながら、他の客を押しのけて、表の出入り口から逃げ出す。
「追いかけますね」
「……さて、行きます、か」
尾行する為、隠していた外套を素早く羽織ったUiscaと、覚醒状態に入り、髪と瞳の色を変化させた瀬織が店から出て行った。
●追跡開始
大通りには多くの人が行き交っている状態だった。
ぶつかり、はねのけ、逃げる強盗3人。
静かに、そして、確実に強盗を見逃さず追いかけるのは、マントを身につつみ、帽子を深く被ったおさげ姿の十色。
華麗に人混みを避けて追跡する。
その後ろを、十色を目印に尾行するシエラ。
更にその後ろから、瀬織とUiscaが追跡していた。人混みの中を冷静についてきている。
やがて、強盗団は、分かれて路地に入っていった。
シエラは十色の後につくかどうか迷ったが、連れてきた犬が路地の方に行こうとするので、それに従う事にした。
(そっちは任せたわ)
心の中で十色に呼び掛ける。
路地の先に強盗が待ち伏せしていたり、もしくは、逃亡を手助けする強盗の仲間がいないか気をつける。
「グラッセ、頼むわ」
いくつかの路地を進み、やがて、ある場所に辿りついた。
そこには、強盗犯と思わしき者が身に着けていた服や靴が脱ぎ捨ててあった。
「やられたわ」
大きくため息をつくシエラ。
強盗も手慣れている様だ。目に付くように大通りを逃げた理由が解った。
逃げた時の服装を強く記憶に残した上で、変装して逃亡していたのだろう。
「そういえば……強盗事件について、詳しく内容を聞かなかったかもね……」
後は他の仲間が無事に追跡できる事を祈るだけだ。
とりあえず、店にいる仲間と合流すべく、来た道を戻るシエラだった。
瀬織とUiscaも別の路地に入っていた。
前だけではなく、後ろや上にも気を配り、尾行がバレない様に気を配る。
連れてきた犬の嗅覚を頼りにしたかったが、犬は困った様な雰囲気をしていた。
(そういえば、捜査犬や警察犬って相当な訓練をするって聞いた気がする)
転移者である瀬織は、故郷の事を思い出していた。
それでも、事前に路地を確認していた甲斐があったのか、二人は路地の中を進んでいく。
やがて、路地から抜けた先に通用門が見えた。
「レオ……」
髪留めで髪型をサッと変えたUiscaがぐっと彼の身体を引き寄せた。
先程、彼を殴った強盗がいたのだ。服装は変わっているものの、間違いない。
警戒しているのか、その強盗は、辺りを見渡している。
その時、Uiscaが仲間から預かった珠水晶が地面に落ちたのは幸運だったかもしれない。
珠水晶を拾おうとした二人の動きが、偶然にも強盗の視界の中で、顔を見られずに済んだ。
だが、二人がそっと通用門を見た時、そこには既に強盗の姿はなかった。
十色が強盗の1人を追跡し、路地を抜け、通用門付近の塀に音もなく登る。
振り返ると、シエラの姿も見えないので、きっと、彼女は途中で追跡を断念したのだろう。
もしくは、他の道に逃げ込んだ強盗を追っているのだろうか。
Uiscaと瀬織から、別の通用門付近で強盗を見失ったと報告が入った。
シガレットとクローディアは店内でスライムを退治中なはずだ。
「そっちの方向だね」
森の中に逃げ込む強盗の姿を確認し、十色は呟いた。
追跡を再開しようとした所で思い留まり、おさげにしていた髪を解いた。マントも帽子も外す。
髪が風に流れる。ここまでこれば、もはや、変装は不要だろう。
「強盗団のアジトの近くまで来たよ。皆が来るのをここで待ちながら、引き続き監視してる」
魔導短伝話で仲間に呼びかけた。
●囮の店で
一般人の避難が完了し、ソルラが外で怪我をした人がいないか、確認して回っている。
そして、店内ではシガレットとクローディアがスライム2体を相手にしていた。
いつもなら、苦戦する程ではないだろう。だが、店員に扮していたので、身につけているのは普通の衣服だし、武器も店内に隠せる物と制限があった。
「油断したわけじゃねぇがなァ!」
いささか、傲慢だったかもしれない。
飛びかかって来たスライムをギリギリの所で避けるシガレット。
反撃に、光の球を打ちこむが、家具の隙間などに入り込んで、思う様にダメージが与えられない。
「厄介な事だ」
避け損ねた酸によって、火傷の様な痛みを感じながら、クローディアが小型の銃の弾を装填する。
店内の備品や設備に気を配りながらの戦闘でもある。
思う様に回避行動が取れないのも苦戦している理由だ。
彼女の衣服は酸によって部分的に溶け、下着が少し顔を出しているが、彼女は気にもしない。
「強盗がここまで想定していたとは思わないが……」
射出された酸を避けながら、スライムに向かって銃を放つ。
既に数発も打ち込んでいるが、耐久力だけは無駄にある様だ。
「いい加減にくたばりやがれやァ!」
シガレットが8発目となる光の球を打ちこんで、ようやく、対峙していたスライムの活動が停止した。
彼もクローディアと同様に、身体のあちこちにダメージを受けている。
それでも、クローディアに向かって回復や援護の魔法をかける動作に入る。
戦闘に加わるのもいいが、店内が狭い中、支援にまわった方が良いと判断したからだ。
光が彼女を包み込んだ。
「感謝する!」
聖導士から、魔法の支援を受け、防御を捨てて攻撃に専念するクローディア。
もはや、二人が苦戦する条件はなくなった。
一般人に怪我人がいないと確認したソルラが店内に戻った時には、戦闘は終了していた。
●集合
店の片付けをソルラに任せ、店に戻ってきたシエラと共に、シガレットとクローディアが十色が待つ通用門付近に到着したのは、それからすぐの事だ。
既にUiscaと瀬織も十色に合流している。
「ごめんね。途中で見失ってしまったわ」
「そんな事ないよ。シエラさんや、ウィスカさん、瀬織さんと手分けして追えた結果だから」
十色が爽やかな笑顔を向ける。
「気にする事はないだろ。私はスライムとしか戦ってない」
「そう言って貰えると……って、クローディアさん!」
戦闘の影響で少し破けた服の隙間から下着が見えていた事に驚いたUiscaが慌ててマントを彼女にかけた。
そして、目元を暗くして瀬織に振り返る。
「……見てたでしょ」
「な、なにを!?」
どうやら、この二人のイチャラブは店を出てもまだ続きそうだ。
必死に弁解する青年を横目にシガレットが十色に訊ねる。
「で、他の強盗はどうなんだァ?」
十色は頷き、森のある方角に向かって指差した。
「全員、同じ方角に入っていったよ」
「地面がむき出しだから、足跡を追えそうね」
シエラが地面に残った跡を確認しながら言った。
「では、追跡再開だな」
クローディアが宣言する。
この先に、強盗団のアジトがあるはずだ。
●強盗団のアジト
「あれじゃないかしら?」
「あれだと思うわ」
十色の言葉にシエラが追随する。
足跡を目印に、辺りを慎重に警戒しながら追跡したハンター達の視線の先に、強盗団のアジトがあった。
絶壁の崖に洞窟があり、その入り口に強盗犯の仲間と思わしき者が見張りに立っている。
「一人、出てきた」
「やっぱり、ここなのですね」
瀬織の言葉通り、洞窟から現れたのは、彼を殴った強盗だ。殴られた箇所にUiscaの手が優しく触れる。
その強盗は見張りとなにか言葉を交わしている様にも見えるが、遠すぎて、内容まではわからない。
「強盗団のアジトを確認するまでが依頼だったな」
「そうだなァ」
クローディアとシガレットが音を立てない様に慎重に下がる。
他の仲間も、それに見習って引き上げを開始した。
「一気に踏み込めない理由があるのかな?」
そう言ったのは十色だ。
「そうね。でも、依頼主の言う事だしね。なにか考えがあるんじゃないかしら」
シエラが自分達のいた痕跡を隠す為に、地面を均したり、枯葉等を敷いたりしている。
「泳がしている可能性は十分にあるなァ」
先頭を行くシガレットが振り返ってそんな予想を口にしたのであった。
スライムを強盗の道具に使ってくる連中だ。背後があるかもしれない。
「そろそろ、吸ってもいいかァ」
煙草に火をつけようとした所に、報告するまでが依頼ですと仲間達から一斉に制止の声が掛り、煙草をくわえたまま帰るシガレットであった。
強盗のアジトは、ハンター達の追跡により判明した。
そして、数日間の張り込みが行われ、規模や活動が判明されるのであった。
おしまい。
「依頼が終わるまでしばらく禁煙だなァ……」
煙草に伸ばそうとした手が、物足りなさそうな動きをし、シガレット=ウナギパイ(ka2884)は開店前の店の中を見渡す。
スライムを使った強盗団のアジトを突き止める為に用意された囮の店だ。
「こちらは、準備完了だ」
クローディア(ka3392)が武器を店内に隠し込んでいた。
一方、店の片隅で用心棒役のソルラに変装を施しているのは、シエラ・ヒース(ka1543)だ。
リアルブルーでいう所の警備員の様な制服を着込んだソルラの髪型を、楽しそうに結い上げている。
「ソルラの地元だしね。これ位、しておかないと。それにしても、指の通りが良いわね」
「あ、ありがとうございます。いつも、シエラさんには助けられっぱなしですね」
思えば、昨年の秋頃からなにかと縁がある。
シエラが気にしないでと笑顔で答えながら、結い上げの仕上げに入った所で、勝手口から十色 エニア(ka0370)が入ってきた。
「ソルラさんは、あの時以来だね~。騎士たちの容態はどうですか?」
あの時とは、王国を襲った歪虚の追撃戦の事だ。助け出した騎士達は瀕死の重傷だった。
「十色さん、お久しぶりです。おかげさまで、回復に向かっています」
「それは、よかったよ」
安堵した表情を向ける。
再び、裏の勝手口が開き、今度は、瀬織 怜皇(ka0684)とUisca Amhran(ka0754)が仲睦まじく現れた。
二人は強盗犯が逃げ込むかもしれない路地を下見していた様だ。
「以前にも、強盗犯を追う依頼を受けましたが、今回もですか……。王国の治安はかなり悪くなっている様ですね……」
「尾行するにも、気をつけた方がいいかもしれませんね」
心配するUiscaの言葉に、瀬織が答える。
後は、各自が武器を隠し、あるいは変装を終えて、開店を待つだけだ。
強盗にわざと奪わせる香りがついたレプリカも用意した。
その香りを、正式な捜査犬ではない、ペットの犬がどこまで追跡できるかはやってみないとわからないが。
「強盗犯にはいつもの手口で気持ちよく強盗してもらうかァ」
不敵に笑うシガレット。
強盗が踏み込んでこないと、そもそも依頼にもならない。
「それにしても、街中に突然雑魔とか……流行ってるのかしらね」
彼女が最近、この街で関わった事件は、いずれも、街中で雑魔が出現している。
そんな流行りは御免こうむりたいものだ。
●強盗襲来
店内が、香水のあまい香りに包まれている。
依頼主が他の地方と取引をしている商会なだけあって、装飾品のレプリカや数種類の香水など必要な物を一通り用意してくれたのだ。
店が開店すると、大通りに面しているだけあって、それなりにお客が入ってくる。
そこへ、瀬織とUiscaが腕を組みながら、客を装い、店の中に入ってきた。
「あれいいなぁ~。これもいいっ!」
ショーケースの中の豪華な装飾品を見て、無邪気な声をあげるUisca。
「はいはい、それも良いですね」
落ち着かせる様に、恋人の頭を優しく撫でる瀬織。
あしらわれている様な気がして、ぷくっと頬を膨らませた彼女の肩を引き寄せると、耳元で「どれか一つだけだよ」と囁く。
そんなイチャラブカップルの様子を見て、用心棒役のソルラが真っ赤な顔をしていた。
怒っているわけではない。
あまりのラブラブっぷりを見せつけられ、彼女の方が照れてしまっているのだ。
「デ、デートって、あ、あんな感じなんですか?」
手を繋いで歩くだけじゃないんだと心の中で思いながら、店員を扮していたシガレットとクローディアに思わず話掛ける。
「あァ? あんなもんじゃねぇかァ」
特段、珍しくもないだろうともいわんばかりのシガレット。
「クローディアさんも、そう思います?」
「……」
なにか、上の空の様だ。もう一度、彼女を名を呼ぶ。
「……あ、あぁ! そうだとも!」
気のせいか、彼女の頬も少し赤みがかっている様に見えた。クローディアは姿勢を正し、カウンターの裏側に入っていく。
ふと、ガラスの窓から外をみたシガレットの視界の中に、向かいの喫茶店で犬と一緒にくつろいでいるシエラと十色の姿が見た。
「このケーキ、なかなかいい味」
「張り込みもこうしていれば、自然ですね」
シエラがケーキを美味しそうに口に運べば、十色は紅茶の香りを楽しんでいる。
重ねて言うが、サボっているわけでも、デートしているわけでもない。
これは、張り込みなのだ。
「店員さん」
呼び掛けられて、振り返ると小太りの男が話しかけてきた。
営業スマイルでそれを迎えるシガレット。
「あれは非売品なのですか?」
指差した先には、ディスプレイに飾られている装飾品のレプリカ。
「はい。申し訳ありませんが、あちらは非売品になっております」
「なら、あれも、もらうよ」
小太りと思ったら、その腹の中から壺を取りだすと、シガレットの足元に投げつけた。
壺が割れると同時に、半透明の液体が彼を包み込むように広がる。
もう一度、別の所でも壺が割れる音が響いた。
既に犯人達はバラバラで店に来店していた様だ。
店内に響き渡る悲鳴。客が出入り口に向かって殺到する。
ソルラがなにか叫んでいるが、この喧騒で聞こえない。
「こいつはァ!」
スライムが覆いかぶさってきたのを避けず、シガレットが両手を突き出して飲み込まれるのを防いだ。
避ける事もできたが、一般人に危険が及ぶ可能性があるからだ。
強盗と思わしき男が、手当たり次第に袋に商品を詰め込んでいく。
クローディアが混乱する店内に紛れて、香り付けの為に置いてあった香水が入った皿を強盗の衣服に投げつけた。
「避難口はこちらにもございます!」
そして、凛とした声で呼び掛ける。
強盗は乱雑に手の付く所からひたすら商品を奪っていて、香水をかけられた事は、分からなかった様だ。
「てめぇのも、渡せ!」
不幸にも商品を買ったばかりの客からも奪うと、次の標的を探す。
目に付いたのは一組のカップル。
健気にも、恋人を護ろうとしているのか、両手を広げ、後ろの女性を庇うように立ち塞がる。
後ろの女性は、彼氏の衣服を掴んでいた。
「イチャイチャしてるんじゃねぇ!」
強盗の拳が男の顔に叩きこまれたが、そのまま耐えきる。
「ずらかるぞ!」
別の強盗犯から声がかかり、舌打ちしながら、他の客を押しのけて、表の出入り口から逃げ出す。
「追いかけますね」
「……さて、行きます、か」
尾行する為、隠していた外套を素早く羽織ったUiscaと、覚醒状態に入り、髪と瞳の色を変化させた瀬織が店から出て行った。
●追跡開始
大通りには多くの人が行き交っている状態だった。
ぶつかり、はねのけ、逃げる強盗3人。
静かに、そして、確実に強盗を見逃さず追いかけるのは、マントを身につつみ、帽子を深く被ったおさげ姿の十色。
華麗に人混みを避けて追跡する。
その後ろを、十色を目印に尾行するシエラ。
更にその後ろから、瀬織とUiscaが追跡していた。人混みの中を冷静についてきている。
やがて、強盗団は、分かれて路地に入っていった。
シエラは十色の後につくかどうか迷ったが、連れてきた犬が路地の方に行こうとするので、それに従う事にした。
(そっちは任せたわ)
心の中で十色に呼び掛ける。
路地の先に強盗が待ち伏せしていたり、もしくは、逃亡を手助けする強盗の仲間がいないか気をつける。
「グラッセ、頼むわ」
いくつかの路地を進み、やがて、ある場所に辿りついた。
そこには、強盗犯と思わしき者が身に着けていた服や靴が脱ぎ捨ててあった。
「やられたわ」
大きくため息をつくシエラ。
強盗も手慣れている様だ。目に付くように大通りを逃げた理由が解った。
逃げた時の服装を強く記憶に残した上で、変装して逃亡していたのだろう。
「そういえば……強盗事件について、詳しく内容を聞かなかったかもね……」
後は他の仲間が無事に追跡できる事を祈るだけだ。
とりあえず、店にいる仲間と合流すべく、来た道を戻るシエラだった。
瀬織とUiscaも別の路地に入っていた。
前だけではなく、後ろや上にも気を配り、尾行がバレない様に気を配る。
連れてきた犬の嗅覚を頼りにしたかったが、犬は困った様な雰囲気をしていた。
(そういえば、捜査犬や警察犬って相当な訓練をするって聞いた気がする)
転移者である瀬織は、故郷の事を思い出していた。
それでも、事前に路地を確認していた甲斐があったのか、二人は路地の中を進んでいく。
やがて、路地から抜けた先に通用門が見えた。
「レオ……」
髪留めで髪型をサッと変えたUiscaがぐっと彼の身体を引き寄せた。
先程、彼を殴った強盗がいたのだ。服装は変わっているものの、間違いない。
警戒しているのか、その強盗は、辺りを見渡している。
その時、Uiscaが仲間から預かった珠水晶が地面に落ちたのは幸運だったかもしれない。
珠水晶を拾おうとした二人の動きが、偶然にも強盗の視界の中で、顔を見られずに済んだ。
だが、二人がそっと通用門を見た時、そこには既に強盗の姿はなかった。
十色が強盗の1人を追跡し、路地を抜け、通用門付近の塀に音もなく登る。
振り返ると、シエラの姿も見えないので、きっと、彼女は途中で追跡を断念したのだろう。
もしくは、他の道に逃げ込んだ強盗を追っているのだろうか。
Uiscaと瀬織から、別の通用門付近で強盗を見失ったと報告が入った。
シガレットとクローディアは店内でスライムを退治中なはずだ。
「そっちの方向だね」
森の中に逃げ込む強盗の姿を確認し、十色は呟いた。
追跡を再開しようとした所で思い留まり、おさげにしていた髪を解いた。マントも帽子も外す。
髪が風に流れる。ここまでこれば、もはや、変装は不要だろう。
「強盗団のアジトの近くまで来たよ。皆が来るのをここで待ちながら、引き続き監視してる」
魔導短伝話で仲間に呼びかけた。
●囮の店で
一般人の避難が完了し、ソルラが外で怪我をした人がいないか、確認して回っている。
そして、店内ではシガレットとクローディアがスライム2体を相手にしていた。
いつもなら、苦戦する程ではないだろう。だが、店員に扮していたので、身につけているのは普通の衣服だし、武器も店内に隠せる物と制限があった。
「油断したわけじゃねぇがなァ!」
いささか、傲慢だったかもしれない。
飛びかかって来たスライムをギリギリの所で避けるシガレット。
反撃に、光の球を打ちこむが、家具の隙間などに入り込んで、思う様にダメージが与えられない。
「厄介な事だ」
避け損ねた酸によって、火傷の様な痛みを感じながら、クローディアが小型の銃の弾を装填する。
店内の備品や設備に気を配りながらの戦闘でもある。
思う様に回避行動が取れないのも苦戦している理由だ。
彼女の衣服は酸によって部分的に溶け、下着が少し顔を出しているが、彼女は気にもしない。
「強盗がここまで想定していたとは思わないが……」
射出された酸を避けながら、スライムに向かって銃を放つ。
既に数発も打ち込んでいるが、耐久力だけは無駄にある様だ。
「いい加減にくたばりやがれやァ!」
シガレットが8発目となる光の球を打ちこんで、ようやく、対峙していたスライムの活動が停止した。
彼もクローディアと同様に、身体のあちこちにダメージを受けている。
それでも、クローディアに向かって回復や援護の魔法をかける動作に入る。
戦闘に加わるのもいいが、店内が狭い中、支援にまわった方が良いと判断したからだ。
光が彼女を包み込んだ。
「感謝する!」
聖導士から、魔法の支援を受け、防御を捨てて攻撃に専念するクローディア。
もはや、二人が苦戦する条件はなくなった。
一般人に怪我人がいないと確認したソルラが店内に戻った時には、戦闘は終了していた。
●集合
店の片付けをソルラに任せ、店に戻ってきたシエラと共に、シガレットとクローディアが十色が待つ通用門付近に到着したのは、それからすぐの事だ。
既にUiscaと瀬織も十色に合流している。
「ごめんね。途中で見失ってしまったわ」
「そんな事ないよ。シエラさんや、ウィスカさん、瀬織さんと手分けして追えた結果だから」
十色が爽やかな笑顔を向ける。
「気にする事はないだろ。私はスライムとしか戦ってない」
「そう言って貰えると……って、クローディアさん!」
戦闘の影響で少し破けた服の隙間から下着が見えていた事に驚いたUiscaが慌ててマントを彼女にかけた。
そして、目元を暗くして瀬織に振り返る。
「……見てたでしょ」
「な、なにを!?」
どうやら、この二人のイチャラブは店を出てもまだ続きそうだ。
必死に弁解する青年を横目にシガレットが十色に訊ねる。
「で、他の強盗はどうなんだァ?」
十色は頷き、森のある方角に向かって指差した。
「全員、同じ方角に入っていったよ」
「地面がむき出しだから、足跡を追えそうね」
シエラが地面に残った跡を確認しながら言った。
「では、追跡再開だな」
クローディアが宣言する。
この先に、強盗団のアジトがあるはずだ。
●強盗団のアジト
「あれじゃないかしら?」
「あれだと思うわ」
十色の言葉にシエラが追随する。
足跡を目印に、辺りを慎重に警戒しながら追跡したハンター達の視線の先に、強盗団のアジトがあった。
絶壁の崖に洞窟があり、その入り口に強盗犯の仲間と思わしき者が見張りに立っている。
「一人、出てきた」
「やっぱり、ここなのですね」
瀬織の言葉通り、洞窟から現れたのは、彼を殴った強盗だ。殴られた箇所にUiscaの手が優しく触れる。
その強盗は見張りとなにか言葉を交わしている様にも見えるが、遠すぎて、内容まではわからない。
「強盗団のアジトを確認するまでが依頼だったな」
「そうだなァ」
クローディアとシガレットが音を立てない様に慎重に下がる。
他の仲間も、それに見習って引き上げを開始した。
「一気に踏み込めない理由があるのかな?」
そう言ったのは十色だ。
「そうね。でも、依頼主の言う事だしね。なにか考えがあるんじゃないかしら」
シエラが自分達のいた痕跡を隠す為に、地面を均したり、枯葉等を敷いたりしている。
「泳がしている可能性は十分にあるなァ」
先頭を行くシガレットが振り返ってそんな予想を口にしたのであった。
スライムを強盗の道具に使ってくる連中だ。背後があるかもしれない。
「そろそろ、吸ってもいいかァ」
煙草に火をつけようとした所に、報告するまでが依頼ですと仲間達から一斉に制止の声が掛り、煙草をくわえたまま帰るシガレットであった。
強盗のアジトは、ハンター達の追跡により判明した。
そして、数日間の張り込みが行われ、規模や活動が判明されるのであった。
おしまい。
依頼結果
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【相談卓】調査は得意ですか? 十色・T・ エニア(ka0370) 人間(リアルブルー)|15才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/01/12 23:37:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/08 20:31:05 |