ゲスト
(ka0000)
【初夢】密着、年末年始
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/01/01 09:00
- 完成日
- 2019/01/14 18:20
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
エトファリカ連邦国ではなく、リアルブルーかもしれない。
そもそも夢だから、いろいろ混じっているのかもしれない。
年末年始の夢。夢の中の年末年始。
その時、あなたはどこにいますか? 何をしていますか?
こたつでごろごろ?
仕事で起きている?
もう寝ている?
歪虚は歪虚?
●大江神社
初日の出が楽しめるといわれる言われる大江神社。
大江神社があるところは島であるけれども橋でつながっているため交通の便は悪くない。最寄りの交通機関を利用することが望ましい。
神社はこんもりと木々が生える島にある。橋を渡る前、陸地側から見る方が初日の出はじっくり楽しめる。だから、大江神社への初もうでは初日の出のついでかもしれない。
橋を渡ると分かれ道になっており、神社または島一周コースになっていた。
神社につながる道は縁日が出ている。道の両脇には出店が出ており、準備が終わってのんびりしている店主や急いで準備をしている店主まで様々だ。客は暇を持て余してきていたり、気が早い人はいる。
ラカ・ベルフ(kz0240)はなんとなくここにいた。そして、縁日を見て気づいたことがあった。
「あ、あれは、青龍さま! ど、どうすればよいのでしょうか?」
射的という字が書いてある。一回、いくらとい値段提示もある。ビッグなぬいぐるみ推定青龍を見て、そわそわする。すべすべの生地にフカフカの綿が入ったぬいぐるみ。
「お嬢ちゃん、やってくかい(いいかもがきたぞ。あの大きなのを取るのは無理だからな、へっへー)」
ラカは自分の射撃の腕とお財布と、青龍への気持ちを天秤どころかばねばかりに載せて必死に考えをまとめようとしていた。
神社に続く道は掃き清められきれいである。そこを神主姿の大江 紅葉がとぼとぼ歩いている。一応、神社内の見回りである。
「縁結びもあるのに、最近は学問の神様目当ての方が多いのですよね」
紅葉は呟く。提供しているお守りや絵馬を見ているとよくわかる。祈祷もそちらを目当てにやってくる。
紅葉は足を止めて正月三が日の日程表を思い出そうとする。
「あれ? 除夜の鐘見張りするんでしたっけ」
たぶん、それは別の職員がする。
道の途中で出店が途切れる。その先に小さな道がある。そちらも今夜は明かりがともされている。
住職はいないことになっている寺があり、鐘があるのだ。神社側が整え、除夜の鐘を準備するのである。
鐘はつるしたままであり、その掃除も適宜してはいる。
「大晦日前になるとピカピカで、周囲にゴミもなくなるんですよね……理由は知っていますけれど」
紅葉は溜息を洩らした。
住職はいないが、何かはいるのだ。
人形寺として奉納する棚もあるが、紅葉たちが回収する前にそれらは消えている。
「まあ、悪さをするわけではないので良いのですが」
嫉妬の歪虚が住み着いているのである。それにくっついている人形たちもいるため、結構な数がいる。メーンなのは少年の姿をしているが、後は三十センチから四十センチの人形である。
住み着いている少年が言うには「神様になるために頑張って修行しているんだ」とのこと。接触し、いることを認めたら、時々茶を飲みにやってくるようになっていた。
どうやって神になるかというと、お願いをする人の願いをかなえていくとなれるらしい。ただし、対価はもらうとのこと。対価は菓子やパンなど食べ物や服飾だという。
「神様って……ええと夢なので、あのあたりはわきに置きます」
紅葉は何か箱のような物を右から左に置くしぐさをした。それがなりたがっているのは学問の神様とか食べ物の神様など八百万の神のことである。
「まあ、悪さをしなければいいのです……そういえば、夜、どこかで人形たちが円陣組んで踊っていたり、ラインダンスをしていると聞いたことがあるのですよね……まあ、あの人形たちなら……」
紅葉は独り言を終えて、嵐の前の静けさの神社に戻っていった。
●人形寺
噂の人形寺では人形たちは鐘をせっせと磨き、境内をきれいにしている。
「年末は忙しいんだぞ! 神様になるには頑張らないと! で、神様になってどうするんだろう? ま、いっか」
プエル(kz0127)はせっせと箒で廊下を掃き清める。
「お賽銭入るといいな」
賽銭箱もきちんときれいにした。いつもは現物支給であるが、買い物も好きである。
「えっと、除夜の鐘はいつからだっけ。その間は大江神社の人が来るから僕たちはこっそりしていないとね」
人形たちがプエルの言葉に「了解」と動作で示した。
プエルは知っている、これがあまり信用できないということを。それはそれで仕方がないということも。
「ま、仕方がないよね、歪虚だもんね」
よくわからない納得の仕方をしていたのだった。
●テレビ局
ルゥルはグラズヘイムテレビのドキュメンタリーの撮影のため「神社、七十時間」という企画を作った。大江神社側との交渉を経て、実行される。
何班かに分かれて撮影をする。
神社の入り口やその先などでインタビューをすることもある。
「テーマは新しい年にやりたいことは何ですか、なのです」
ありきたりといえばありきたりだけれども、新年なのだから一番しっくりくる。
撮影班は時間もシフト制。きちんと休む時間も作る。そのシフト表を肝心のルゥルは見ていなかった。
「深夜の撮影は楽しみなのですー。なぞの除夜の鐘も楽しみです」
目がキラキラ輝くルゥルに慌てて周囲の人がシフト表を見せた。その瞬間、ルゥルの顔は絶望に変わった。
「嫌なのですううう、除夜の鐘、突きたいです! みぎゃあああああ」
グラムヘイズテレビの会議室に絶叫が響いたのだった。
そもそも夢だから、いろいろ混じっているのかもしれない。
年末年始の夢。夢の中の年末年始。
その時、あなたはどこにいますか? 何をしていますか?
こたつでごろごろ?
仕事で起きている?
もう寝ている?
歪虚は歪虚?
●大江神社
初日の出が楽しめるといわれる言われる大江神社。
大江神社があるところは島であるけれども橋でつながっているため交通の便は悪くない。最寄りの交通機関を利用することが望ましい。
神社はこんもりと木々が生える島にある。橋を渡る前、陸地側から見る方が初日の出はじっくり楽しめる。だから、大江神社への初もうでは初日の出のついでかもしれない。
橋を渡ると分かれ道になっており、神社または島一周コースになっていた。
神社につながる道は縁日が出ている。道の両脇には出店が出ており、準備が終わってのんびりしている店主や急いで準備をしている店主まで様々だ。客は暇を持て余してきていたり、気が早い人はいる。
ラカ・ベルフ(kz0240)はなんとなくここにいた。そして、縁日を見て気づいたことがあった。
「あ、あれは、青龍さま! ど、どうすればよいのでしょうか?」
射的という字が書いてある。一回、いくらとい値段提示もある。ビッグなぬいぐるみ推定青龍を見て、そわそわする。すべすべの生地にフカフカの綿が入ったぬいぐるみ。
「お嬢ちゃん、やってくかい(いいかもがきたぞ。あの大きなのを取るのは無理だからな、へっへー)」
ラカは自分の射撃の腕とお財布と、青龍への気持ちを天秤どころかばねばかりに載せて必死に考えをまとめようとしていた。
神社に続く道は掃き清められきれいである。そこを神主姿の大江 紅葉がとぼとぼ歩いている。一応、神社内の見回りである。
「縁結びもあるのに、最近は学問の神様目当ての方が多いのですよね」
紅葉は呟く。提供しているお守りや絵馬を見ているとよくわかる。祈祷もそちらを目当てにやってくる。
紅葉は足を止めて正月三が日の日程表を思い出そうとする。
「あれ? 除夜の鐘見張りするんでしたっけ」
たぶん、それは別の職員がする。
道の途中で出店が途切れる。その先に小さな道がある。そちらも今夜は明かりがともされている。
住職はいないことになっている寺があり、鐘があるのだ。神社側が整え、除夜の鐘を準備するのである。
鐘はつるしたままであり、その掃除も適宜してはいる。
「大晦日前になるとピカピカで、周囲にゴミもなくなるんですよね……理由は知っていますけれど」
紅葉は溜息を洩らした。
住職はいないが、何かはいるのだ。
人形寺として奉納する棚もあるが、紅葉たちが回収する前にそれらは消えている。
「まあ、悪さをするわけではないので良いのですが」
嫉妬の歪虚が住み着いているのである。それにくっついている人形たちもいるため、結構な数がいる。メーンなのは少年の姿をしているが、後は三十センチから四十センチの人形である。
住み着いている少年が言うには「神様になるために頑張って修行しているんだ」とのこと。接触し、いることを認めたら、時々茶を飲みにやってくるようになっていた。
どうやって神になるかというと、お願いをする人の願いをかなえていくとなれるらしい。ただし、対価はもらうとのこと。対価は菓子やパンなど食べ物や服飾だという。
「神様って……ええと夢なので、あのあたりはわきに置きます」
紅葉は何か箱のような物を右から左に置くしぐさをした。それがなりたがっているのは学問の神様とか食べ物の神様など八百万の神のことである。
「まあ、悪さをしなければいいのです……そういえば、夜、どこかで人形たちが円陣組んで踊っていたり、ラインダンスをしていると聞いたことがあるのですよね……まあ、あの人形たちなら……」
紅葉は独り言を終えて、嵐の前の静けさの神社に戻っていった。
●人形寺
噂の人形寺では人形たちは鐘をせっせと磨き、境内をきれいにしている。
「年末は忙しいんだぞ! 神様になるには頑張らないと! で、神様になってどうするんだろう? ま、いっか」
プエル(kz0127)はせっせと箒で廊下を掃き清める。
「お賽銭入るといいな」
賽銭箱もきちんときれいにした。いつもは現物支給であるが、買い物も好きである。
「えっと、除夜の鐘はいつからだっけ。その間は大江神社の人が来るから僕たちはこっそりしていないとね」
人形たちがプエルの言葉に「了解」と動作で示した。
プエルは知っている、これがあまり信用できないということを。それはそれで仕方がないということも。
「ま、仕方がないよね、歪虚だもんね」
よくわからない納得の仕方をしていたのだった。
●テレビ局
ルゥルはグラズヘイムテレビのドキュメンタリーの撮影のため「神社、七十時間」という企画を作った。大江神社側との交渉を経て、実行される。
何班かに分かれて撮影をする。
神社の入り口やその先などでインタビューをすることもある。
「テーマは新しい年にやりたいことは何ですか、なのです」
ありきたりといえばありきたりだけれども、新年なのだから一番しっくりくる。
撮影班は時間もシフト制。きちんと休む時間も作る。そのシフト表を肝心のルゥルは見ていなかった。
「深夜の撮影は楽しみなのですー。なぞの除夜の鐘も楽しみです」
目がキラキラ輝くルゥルに慌てて周囲の人がシフト表を見せた。その瞬間、ルゥルの顔は絶望に変わった。
「嫌なのですううう、除夜の鐘、突きたいです! みぎゃあああああ」
グラムヘイズテレビの会議室に絶叫が響いたのだった。
リプレイ本文
●下準備
大みそかの夕方、メイム(ka2290)は大きな荷物を持ち出かける。
「大きなネズミ捕り、鳥かご、饅頭と落雁……かさばるし、重い。でも、年末年始のイベントは楽しまないとー」
メイムは道を急いだ。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)はプエル(kz0127)が神を目指しているという噂を聞き、様子を見に行く。
「神とは泰然自若なもの。金銭ばかりに目をむけてはありがたみも薄くなるだろう。だがまあ、神酒と屠蘇くらいは準備しておくか」
まとまった量の酒類などを持って出かけた。
ステラ・フォーク(ka0808)は母親の手伝いをした後、兄と友達との待ち合わせのため出かけた。
神社の回りはまだ人はまばらである。
「うふふ……♪ お兄様と初日の出を! ウキウキしますわ♪」
自然と足は速くなる。人が少ないうちに大江 紅葉(kz0163)にあいさつをしようと考えていた。
一方で、ステラの兄・仙道・宙(ka2134)は正月は妹のステラや遊びに来る友人とともに過ごすことを考え、当日食べる為の雑煮の下ごしらえの手伝いに入るがステラがいない。
「急きょ買いものかな……言ってくれれば――ん?」
不意にインターフォンが鳴った。
田舎から出てきた多由羅(ka6167)はステラと宙の家に向かい無事到着した。
「都会は人が多いです」
たどり着いた家から出汁などの香りが漂っており、多由羅はほっとした。
星野 ハナ(ka5852)は巫女のアルバイトにいそしむ。
「巫女のバイトも未婚のうちでないと難しいですしぃ、お参りもしたいですしぃ、一石二鳥かと思いましてぇ」
忙しいことも含め、正月らしさはここが一番だ。
夢の中は何でもなれる――エルバッハ・リオン(ka2434)は吸血鬼であった。
この国に流れ着いた妖魔の類を組織し、支配している【鮮血の吸血鬼】と言う二つ名まで得てしまった。
本人はひっそり暮らしたいのだが、降りかかる火の粉を払っているうちに周囲にヒトが増えていった。彼女の考えに同調するモノもいる一方で、大きくなった組織の中では自然と派閥争いや権力争いなどが始まっていた。そうなると、この国の存在にも目をつけられているだろう。
「ああ、もう……」
少し、一人になりたかった。
組織には「この国の神の偵察」と言いくるめ、出かけた。護衛が隠れているのは気付き、溜息が漏れた。
キヅカ・リク(ka0038)は外の寒さに身を震わせる。本当はこたつに入りながらゲームをしたかった。しかし、その誘惑を断ち切らないと、正月は何もしないで過ぎるだろう。
「今出れば、色々見られて一石何鳥」
まずは腹ごしらえでもしようと出店を見る。
●薔薇?
マリィア・バルデス(ka5848)はシフト表を見て、ルゥル(kz0210)の思考と行動から夜に出没するだろうと目星はつけた。
「それはそれよね……。見つけたら温かいものでも差し入れてあげようかしらね」
グラズヘイムテレビ「ドキュメント70時間」の取材のため、マリィアは質問事項や班のメンバーとのすり合わせをして仕事の開始となる。
その予想通り、ルゥルは夜の神社に出没していた。ワクワクとした第一歩、石畳に足をとられ転んだ。
「みぎゃあ」
レイア・アローネ(ka4082)は薔薇をぶわっと撒いて、現れた。
「お困りのようだな、少女よ!」
颯爽と膝を折って手を差し出すが、ルゥルは転んだまま黙り込んだ。
起き上がったルゥルはレイアの荷物が薔薇だらけなのに気づいた。
「私はルゥルのストーカー……仮にストーカーであっても淑女たるストーカーだ」
レイアの心の声が漏れているころ、マリィアが通りがかった。
「ルゥル……ストーカーとか聞こえたけど?」
ルゥルはじりじりとマリィアの方に移動していく。
「待て! 違う、いや違わない!?」
レイア、自分で言いながら混乱していく。
「キャラが違うわね?」
「夢の中だから!」
マリィアはうなずいておいた。
「私のことは異世界から来たルゥルの味方、戦士Lとでも呼んでくれ。レイアお姉ちゃん、でも構わないない!」
レイアはきりっとした表情で、きっぱりと言い切った。
ルゥルは口を一文字に結び、マリィアの後ろに隠れた。
「ルゥルは何故ここにいるのかしら?」
「みぎゃあああ」
「ふふっ。除夜の鐘は108回つくのよ。一人でつくなら1分に2回くらいじゃないかなと思うのよ。もしも、参拝者に交代でつかせるならば、1回突くのに40秒くらいかかるかもしれないわ」
現実を説くマリィア。
「なるほど! ここは私に任せて君は除夜の鐘を思う存分につくがいい!」
除夜の鐘が何か知らないがレイアはマリィアとルゥルを引き離して言う。
「彼女の楽しみを奪うものはこの私が許さない。ルゥルの笑顔はまさに神のごとき可愛さ、それを守るためなら私は悪魔を砕き、神をも滅ぼす修羅となろう。邪魔をするなら、クリムゾンウェストに代わってお仕置きだ」
レイアの長台詞の間に除夜の鐘の列への誘導が始まっていた。
「子供は夜仕事をしてはいけないからシフトには入っていないのだから、一般参拝者としていけばいいのよ」
マリィアはさりげなく、レイアを抑え込み、ルゥルには笑顔で告げる。
「痛っ! そ、それより仕事があるのか? なら私が片づけておこう」
「ほら、行ってらっしゃい」
マリィアは言葉でルゥルの背中を押したのだった。
●怪しげな商人?
メイムは人形寺にある灌木の茂みに落雁を入れたネズミ捕りを置き、隠れた。
目標の人形たちはここを通ると判断したのだった。
目論見通り来た。人形たちはしゃべらないが、動作から会話は想像できそうだった。
(仕掛けに気づいているということなのかな? お菓子を取ろうとしているのかな? 届かないよ。知恵を絞っているね……)
人形たちは菓子を取ろうと試行錯誤している。仕掛けが動かないように二体の人形が乗り、別の一体が入り込む。
人形の力はたかが知れており、動かないよう抑えていたものごと扉は閉じた。
救出しようとする人形や落雁を持っておろおろする人形、挟まってもがく人形の計五体のプエル人形をメイムは捕獲した。鳥かごに入れると、それらは固まってふるふると震えてメイムを見上げる。
「ふふふ、怯えても助けは来ないよー」
メイムは出店を開くため移動した。
この様子を見ていたプエル人形たちは仲間と相談した。結果、助けに向かうが、綿あめ、リンゴ飴、焼きそば、たこ焼き……と言うふうに罠にとらわれていくのだった。
しばらくするとメイムの出店が開かれる。
人形自体は愛らしいし、動くということもあり足を止める人も多い。
「この人形は動くのよ。でも、満月の夜は外に出すと危険だよー。紅茶とお菓子を与えると増える(かもしれない)よー。普段は猫と変わらないけど」
時間が経つと籠の鳥のプエル人形たちは飽きたのか、外に出せ出せコールを始めたのだった。
●千客万来
エルバッハは大江神社の活気のある沿道を見て、ふと表情が緩んだ。
温かそうな飲み物を購入し、人混みをゆっくり歩く。
「おい、お前、この辺りの者じゃないな!」
「待ってください。私は戦うつもりはありませんよ」
プエルに対し、エルバッハは軽く両手を上げて説得し、しばらく対峙する。
「分かったよ。僕は神様になるんだから、領域は守る義務あるし」
「神になる?」
「お前は知らないのか?」
プエルはこの国の神のなり方を説明をした。
「……色々あるのですね」
「そうだぞ。これから僕はお茶の時間だ。おまえを招待してやってもいいぞ」
エルバッハは一服してからこの場を後にした。
ルベーノが寺に着くと境内は除夜の鐘を突く人やテレビの撮影でにぎやかだ。
ルベーノは寺の裏手に回ると食器の片づけをしているプエルを発見した。
「プエル、聞いたぞ。歪虚が神を目指す、剛毅なことだとな、ハハハハ」
プエルは眉間にしわを寄せた。
「寺や神社が初もうで客に邪気払いの神酒や屠蘇をふるまって心づけを頂くのだ」
「いろいろなことは神社の人がやってくれるから……僕はこっそりしているのが年末年始のお約束なんだ」
「なら、こっちはこっちで配ればいいではないか。どうせ、神社の人もいるのなら」
ルベーノは神酒と屠蘇や道具を見せたとき、プエルの顔は輝いていた。場所が確保できるかはこれからの相談だった。
マリィアは目の前にいるレイアに溜息をもらしながら、仕事を教える。
「これでルゥルを撮っていればいいのか!」
「撮ってもい……よくはないわ……いえ、そこは、クルーも参拝……んー」
マリィアが構成について一瞬深く考えてしまった。その間にカメラを持ったレイアは人混みに消えた。
「こらあああ」
マリィアは追いかける。寺の隅でおやつを食べるプエルを発見する。
「あら? どうしたのかしら? お手伝いをしているのかしら?」
「それはまだ、お願いも叶えるのは難しいか検討中」
「偉いわね」
マリィアは複雑そうな表情でプエルの頭を思わず撫でたところ、プエルは唇を尖らせていた。
除夜の鐘の列に並ぶルゥルを発見し、温かいおしるこドリンクの差し入れをした。レイアを捕獲して普通の撮影に向かったのだった。
ハナは同じ場所に寺にある噂も聞いていた。
寺の表は除夜の鐘の後の参拝者がいるが、裏手に回ると人形が踊っている。
「あるぇ? 子どもと人形ばっかですぅ?」
「なんか、千客万来なんだけど……」
「手伝いに行かないのですぅ?」
「願いをかなえるとき以外することはないよ」
「ちょっと待っていてくださいね」
ハナは走っていき、おやつを買い込んで戻った。
「御願いを聞く気があるのですね? 頑張っている子にはお年玉ですよぅ。昔はお餅だったて聞きましたしぃい、おやつで十分ですぅ」
プエルは受け取りきょとんとする。
「御願い? 神様になりたいから考えるよ?」
「一杯頑張らないとですねぇ。無事、神様になったらぁ、私をバイトで雇ったりぃ、お願いをかなえたりしてくださいねぇ」
にこにことハナが言う。
「雇う?」
「そうですぅ。そして、私の願いは今年こそ彼氏ができますようにぃ! 本当にお願いします!」
最後は本気で祈っていた。
プエルは「僕には難しいかも」と思った。
「とはいえ、無理しないでのんびり頑張ってくださいねぇ」
ハナは神社に戻っていった。
●波乱?
ステラは神社の社務所裏あたりで、火鉢に当たる紅葉を発見した。
「こんばんは、紅葉さん」
「あら、こんばんは。寒いですね」
「夜と朝はぐっと冷え込みますわね。紅葉さん、今年はお世話になりました」
「いえ、こちらこそお世話になりました」
雑談後、ステラは待ち合わせ場所に向かう。
そんな中、宙と多由羅はステラに連絡を取ろうとした。電波が悪いのかつながらない。
「どどどうしましょう」
ステラの母が言うには、初詣の後、初日の出予定だと出かけたという。
「多由羅は着替えておいて。私が連絡を取るから」
宙の言葉に多由羅はうなずき、晴れ着に着替える。
日付が変わる寸前に連絡はついた。その結果、ステラは時間をつぶして待つことになる。
「待ち合わせの時間ですわね……」
鳥居の方を見ると宙と多由羅がやってきた。
「ステラ、すまなかった」
ステラはぷいっと顔をそむける。
「ステラ、すみませんでした。てっきり、初日の出が先かと……」
多由羅がしおれて謝る。
「お兄様と初詣ということで私も、浮かれすぎていましたわ。多由羅さん、きれいですわ」
ステラはにこりと微笑んで多由羅を褒めた。
「ステラ、明けましておめでとう」
宙は挨拶の後、朝の挨拶のキスをする。
「お兄様っ! まだ、許していませんわ」
ステラの言葉は怒ってはいるが、表情は違った。
抱擁の後、二人は逸れないように手をつなぐ。
(割って入るつもりはありませんが、割って入る余地がないほど仲がの良い兄妹です)
多由羅は人の多さにおっかなびっくりしながら、二人とはぐれないようについて行った。
●毒を吐く宮司
リクが焼きそばを食べた後、射的のところに漂う緊張感に気づいた。
青い服の女性ラカ・ベルフ(kz0240)は半泣きかつ一生懸命、おもちゃの銃を構えて狙いを定めている。狙っているはその店で一番の目玉と一目でわかる青龍のぬいぐるみ。
気になってスマホのカメラを入れ、撮っておく。映像を外に出すなら許可を取る。
(不正? 商品が固定されているのか、弾が軽すぎるのか……んっ! わからない!)
全弾、明後日の方向に飛んでいく。ラカは落ち込み、財布の中身と相談を始めている。
リクは自分で試してみる。小さな菓子は取れたが青龍のぬいぐるみはびくともしなかった。射的の道具は多少弾が軽いようだが、通常なら問題にならないだろう。
「残念ですねー」
眼光鋭い店主は笑顔だ。
「ぬいぐるみ、落とせるの?」
「それは言いがかりってもんですよ」
リクは残念だなというふうにその場を後にし、さりげなく裏側に回る。
(一見止めてないように見えるけど、こっちから見ると柱に微妙についているし……)
商品棚を見るの状況をしっかり録画して、ここの元締めに急いで向かった。
大江神社の裏で暇なのは宮司の紅葉だった。紅葉はリクの動画を見た瞬間、走った。
そのあとラカだけでなくリクも怯えるほど、笑顔の紅葉が丁寧なのに毒を大量にまぶした言葉で対応を始めたのだった。保安係に射的屋の店主は連れていかれた。
嵐が過ぎ去った後、リクはラカに青龍のぬいぐるみを渡した。
「でも」
「いくら、使ったの? あの宮司に確認すればいいよ。どうせ、あの調子ならもらっていいっていうよ」
ラカはぬいぐるみを受け取ると、嬉しそうに顔をうずめていた。
リクは初詣も終え帰ろうとしたとしたが、視界の隅に動く人形を発見し、スマホのカメラを向けた。人形たちと戯れた後、賽銭を渡した。
「お金、理解してるのかな……ちゃんと賽銭箱に入れてくれるかな」
人形たちがはしゃいで消えて行った方向をみつめた。
●店仕舞い
神酒等の振る舞いが終わった後、ルベーノはプエルと雑談をする。
「ちなみにプエルはどんな神をめざすのかだ。神と一口に言っても色々あろう?」
「かっこいい神様」
「また抽象的だな……でもまあ、焦ることもないのだろう?」
ルベーノは笑った。
人形たちが戻ってくる。どうやら朝になると隠れるらしかった。
「そろそろ俺もお暇する時間だな」
ルベーノは別れを告げるとプエルはそっぽを向いた。
エルバッハはしばらく島でのんびりしていた。
「そろそろ帰りましょうか。厄介ごとはあちらからやってくるかもしれませんしね」
ここは異界を受け入れる懐の広い場所であり、護衛はともかくくつろげそうだった。
風が一吹きした後、エルバッハの姿はなかった。
朝日が差し始めたところで、メイムは店をたたむ。
「ほら、お駄賃だよ」
鳥籠を開けて、落雁やまんじゅうをプエル人形たちに渡した。
人形たちはキョトンとして受け取り、両手に持っていいのと首をかしげる。
「遊んだから」
人形たちは万歳の格好で立ち去りながらメイムに手を振っていた。
「器用だよね……」
●ご来光
「本日はどちらからいらっしゃいました? なるほど、どなたと? このあとどちらに行かれますか?」
初日の出が迫る中、マリィアは取材する。
寒くて暗くても、元気漂う人々の顔が収録される。
「ルゥルはどこにいるのだろうか」
「そろそろそっちと交代よね」
「なっ!」
レイアはそわそわしたが、マリィアが彼女の持つカメラを冷静に太陽の方に向けた。無事、朝日も撮れたのでマリィアの班の仕事はひとまず休憩になるのだった。
太陽はまぶしかったが、しっかり動画は撮ったとリクは確信し、家に戻る。
「これをアップして再生回数を稼げるといいな……」
あくびを一つして暖かいこたつを目指した。
初日の出ごろになると神社から人が消える。
「ご一緒に厄除けのご祈祷はいかがですか? お守りもお札も効果があると評判ですよぅ」
というようなセールスをしていたハナも休憩時間だ。そして、社殿の正面に立って自身について祈る。何度目か知らないが祈る。
「彼氏ができますように! このぬくもりを共に見る彼氏を!」
太陽の光に包まれ祈る彼女はキラキラ輝いていた。
多由羅の口から「明けましておめでとうございます。これからもよろしくお願いします」という言葉が自然と漏れる。ステラと宙も応える。
「……何を祈りました? こちらでは私は皆が健やかで過ごせるようにで、神社では血沸き肉踊る戦いに臨めるようにと言うことです」
「矛盾のようですが、多由羅さんらしいですわね。私は去る年への感謝、そして、知人や友人の幸せです」
ステラはにこりと微笑んだ後、宙を見る。
「私? 自分のことはできるからね。ステラのことだよ」
ステラが宙の腕に腕を絡める。
「さて、帰ろうか。おせちや雑煮があるから」
宙が告げると、多由羅は昨日の匂いを思い出し美味だろうと想像し大きくうなずく。おなかもぐんぐん減ってくる。
「そうですわね。あ、でも、帰り道でも、ゆっくりのんびり歩いて、何か食べません?」
「それもいいですね。お二人に合わせますよ」
それぞれの新しい年が来た。
今年もよろしくお願いします、とあちこちで声が聞こえる。
大みそかの夕方、メイム(ka2290)は大きな荷物を持ち出かける。
「大きなネズミ捕り、鳥かご、饅頭と落雁……かさばるし、重い。でも、年末年始のイベントは楽しまないとー」
メイムは道を急いだ。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)はプエル(kz0127)が神を目指しているという噂を聞き、様子を見に行く。
「神とは泰然自若なもの。金銭ばかりに目をむけてはありがたみも薄くなるだろう。だがまあ、神酒と屠蘇くらいは準備しておくか」
まとまった量の酒類などを持って出かけた。
ステラ・フォーク(ka0808)は母親の手伝いをした後、兄と友達との待ち合わせのため出かけた。
神社の回りはまだ人はまばらである。
「うふふ……♪ お兄様と初日の出を! ウキウキしますわ♪」
自然と足は速くなる。人が少ないうちに大江 紅葉(kz0163)にあいさつをしようと考えていた。
一方で、ステラの兄・仙道・宙(ka2134)は正月は妹のステラや遊びに来る友人とともに過ごすことを考え、当日食べる為の雑煮の下ごしらえの手伝いに入るがステラがいない。
「急きょ買いものかな……言ってくれれば――ん?」
不意にインターフォンが鳴った。
田舎から出てきた多由羅(ka6167)はステラと宙の家に向かい無事到着した。
「都会は人が多いです」
たどり着いた家から出汁などの香りが漂っており、多由羅はほっとした。
星野 ハナ(ka5852)は巫女のアルバイトにいそしむ。
「巫女のバイトも未婚のうちでないと難しいですしぃ、お参りもしたいですしぃ、一石二鳥かと思いましてぇ」
忙しいことも含め、正月らしさはここが一番だ。
夢の中は何でもなれる――エルバッハ・リオン(ka2434)は吸血鬼であった。
この国に流れ着いた妖魔の類を組織し、支配している【鮮血の吸血鬼】と言う二つ名まで得てしまった。
本人はひっそり暮らしたいのだが、降りかかる火の粉を払っているうちに周囲にヒトが増えていった。彼女の考えに同調するモノもいる一方で、大きくなった組織の中では自然と派閥争いや権力争いなどが始まっていた。そうなると、この国の存在にも目をつけられているだろう。
「ああ、もう……」
少し、一人になりたかった。
組織には「この国の神の偵察」と言いくるめ、出かけた。護衛が隠れているのは気付き、溜息が漏れた。
キヅカ・リク(ka0038)は外の寒さに身を震わせる。本当はこたつに入りながらゲームをしたかった。しかし、その誘惑を断ち切らないと、正月は何もしないで過ぎるだろう。
「今出れば、色々見られて一石何鳥」
まずは腹ごしらえでもしようと出店を見る。
●薔薇?
マリィア・バルデス(ka5848)はシフト表を見て、ルゥル(kz0210)の思考と行動から夜に出没するだろうと目星はつけた。
「それはそれよね……。見つけたら温かいものでも差し入れてあげようかしらね」
グラズヘイムテレビ「ドキュメント70時間」の取材のため、マリィアは質問事項や班のメンバーとのすり合わせをして仕事の開始となる。
その予想通り、ルゥルは夜の神社に出没していた。ワクワクとした第一歩、石畳に足をとられ転んだ。
「みぎゃあ」
レイア・アローネ(ka4082)は薔薇をぶわっと撒いて、現れた。
「お困りのようだな、少女よ!」
颯爽と膝を折って手を差し出すが、ルゥルは転んだまま黙り込んだ。
起き上がったルゥルはレイアの荷物が薔薇だらけなのに気づいた。
「私はルゥルのストーカー……仮にストーカーであっても淑女たるストーカーだ」
レイアの心の声が漏れているころ、マリィアが通りがかった。
「ルゥル……ストーカーとか聞こえたけど?」
ルゥルはじりじりとマリィアの方に移動していく。
「待て! 違う、いや違わない!?」
レイア、自分で言いながら混乱していく。
「キャラが違うわね?」
「夢の中だから!」
マリィアはうなずいておいた。
「私のことは異世界から来たルゥルの味方、戦士Lとでも呼んでくれ。レイアお姉ちゃん、でも構わないない!」
レイアはきりっとした表情で、きっぱりと言い切った。
ルゥルは口を一文字に結び、マリィアの後ろに隠れた。
「ルゥルは何故ここにいるのかしら?」
「みぎゃあああ」
「ふふっ。除夜の鐘は108回つくのよ。一人でつくなら1分に2回くらいじゃないかなと思うのよ。もしも、参拝者に交代でつかせるならば、1回突くのに40秒くらいかかるかもしれないわ」
現実を説くマリィア。
「なるほど! ここは私に任せて君は除夜の鐘を思う存分につくがいい!」
除夜の鐘が何か知らないがレイアはマリィアとルゥルを引き離して言う。
「彼女の楽しみを奪うものはこの私が許さない。ルゥルの笑顔はまさに神のごとき可愛さ、それを守るためなら私は悪魔を砕き、神をも滅ぼす修羅となろう。邪魔をするなら、クリムゾンウェストに代わってお仕置きだ」
レイアの長台詞の間に除夜の鐘の列への誘導が始まっていた。
「子供は夜仕事をしてはいけないからシフトには入っていないのだから、一般参拝者としていけばいいのよ」
マリィアはさりげなく、レイアを抑え込み、ルゥルには笑顔で告げる。
「痛っ! そ、それより仕事があるのか? なら私が片づけておこう」
「ほら、行ってらっしゃい」
マリィアは言葉でルゥルの背中を押したのだった。
●怪しげな商人?
メイムは人形寺にある灌木の茂みに落雁を入れたネズミ捕りを置き、隠れた。
目標の人形たちはここを通ると判断したのだった。
目論見通り来た。人形たちはしゃべらないが、動作から会話は想像できそうだった。
(仕掛けに気づいているということなのかな? お菓子を取ろうとしているのかな? 届かないよ。知恵を絞っているね……)
人形たちは菓子を取ろうと試行錯誤している。仕掛けが動かないように二体の人形が乗り、別の一体が入り込む。
人形の力はたかが知れており、動かないよう抑えていたものごと扉は閉じた。
救出しようとする人形や落雁を持っておろおろする人形、挟まってもがく人形の計五体のプエル人形をメイムは捕獲した。鳥かごに入れると、それらは固まってふるふると震えてメイムを見上げる。
「ふふふ、怯えても助けは来ないよー」
メイムは出店を開くため移動した。
この様子を見ていたプエル人形たちは仲間と相談した。結果、助けに向かうが、綿あめ、リンゴ飴、焼きそば、たこ焼き……と言うふうに罠にとらわれていくのだった。
しばらくするとメイムの出店が開かれる。
人形自体は愛らしいし、動くということもあり足を止める人も多い。
「この人形は動くのよ。でも、満月の夜は外に出すと危険だよー。紅茶とお菓子を与えると増える(かもしれない)よー。普段は猫と変わらないけど」
時間が経つと籠の鳥のプエル人形たちは飽きたのか、外に出せ出せコールを始めたのだった。
●千客万来
エルバッハは大江神社の活気のある沿道を見て、ふと表情が緩んだ。
温かそうな飲み物を購入し、人混みをゆっくり歩く。
「おい、お前、この辺りの者じゃないな!」
「待ってください。私は戦うつもりはありませんよ」
プエルに対し、エルバッハは軽く両手を上げて説得し、しばらく対峙する。
「分かったよ。僕は神様になるんだから、領域は守る義務あるし」
「神になる?」
「お前は知らないのか?」
プエルはこの国の神のなり方を説明をした。
「……色々あるのですね」
「そうだぞ。これから僕はお茶の時間だ。おまえを招待してやってもいいぞ」
エルバッハは一服してからこの場を後にした。
ルベーノが寺に着くと境内は除夜の鐘を突く人やテレビの撮影でにぎやかだ。
ルベーノは寺の裏手に回ると食器の片づけをしているプエルを発見した。
「プエル、聞いたぞ。歪虚が神を目指す、剛毅なことだとな、ハハハハ」
プエルは眉間にしわを寄せた。
「寺や神社が初もうで客に邪気払いの神酒や屠蘇をふるまって心づけを頂くのだ」
「いろいろなことは神社の人がやってくれるから……僕はこっそりしているのが年末年始のお約束なんだ」
「なら、こっちはこっちで配ればいいではないか。どうせ、神社の人もいるのなら」
ルベーノは神酒と屠蘇や道具を見せたとき、プエルの顔は輝いていた。場所が確保できるかはこれからの相談だった。
マリィアは目の前にいるレイアに溜息をもらしながら、仕事を教える。
「これでルゥルを撮っていればいいのか!」
「撮ってもい……よくはないわ……いえ、そこは、クルーも参拝……んー」
マリィアが構成について一瞬深く考えてしまった。その間にカメラを持ったレイアは人混みに消えた。
「こらあああ」
マリィアは追いかける。寺の隅でおやつを食べるプエルを発見する。
「あら? どうしたのかしら? お手伝いをしているのかしら?」
「それはまだ、お願いも叶えるのは難しいか検討中」
「偉いわね」
マリィアは複雑そうな表情でプエルの頭を思わず撫でたところ、プエルは唇を尖らせていた。
除夜の鐘の列に並ぶルゥルを発見し、温かいおしるこドリンクの差し入れをした。レイアを捕獲して普通の撮影に向かったのだった。
ハナは同じ場所に寺にある噂も聞いていた。
寺の表は除夜の鐘の後の参拝者がいるが、裏手に回ると人形が踊っている。
「あるぇ? 子どもと人形ばっかですぅ?」
「なんか、千客万来なんだけど……」
「手伝いに行かないのですぅ?」
「願いをかなえるとき以外することはないよ」
「ちょっと待っていてくださいね」
ハナは走っていき、おやつを買い込んで戻った。
「御願いを聞く気があるのですね? 頑張っている子にはお年玉ですよぅ。昔はお餅だったて聞きましたしぃい、おやつで十分ですぅ」
プエルは受け取りきょとんとする。
「御願い? 神様になりたいから考えるよ?」
「一杯頑張らないとですねぇ。無事、神様になったらぁ、私をバイトで雇ったりぃ、お願いをかなえたりしてくださいねぇ」
にこにことハナが言う。
「雇う?」
「そうですぅ。そして、私の願いは今年こそ彼氏ができますようにぃ! 本当にお願いします!」
最後は本気で祈っていた。
プエルは「僕には難しいかも」と思った。
「とはいえ、無理しないでのんびり頑張ってくださいねぇ」
ハナは神社に戻っていった。
●波乱?
ステラは神社の社務所裏あたりで、火鉢に当たる紅葉を発見した。
「こんばんは、紅葉さん」
「あら、こんばんは。寒いですね」
「夜と朝はぐっと冷え込みますわね。紅葉さん、今年はお世話になりました」
「いえ、こちらこそお世話になりました」
雑談後、ステラは待ち合わせ場所に向かう。
そんな中、宙と多由羅はステラに連絡を取ろうとした。電波が悪いのかつながらない。
「どどどうしましょう」
ステラの母が言うには、初詣の後、初日の出予定だと出かけたという。
「多由羅は着替えておいて。私が連絡を取るから」
宙の言葉に多由羅はうなずき、晴れ着に着替える。
日付が変わる寸前に連絡はついた。その結果、ステラは時間をつぶして待つことになる。
「待ち合わせの時間ですわね……」
鳥居の方を見ると宙と多由羅がやってきた。
「ステラ、すまなかった」
ステラはぷいっと顔をそむける。
「ステラ、すみませんでした。てっきり、初日の出が先かと……」
多由羅がしおれて謝る。
「お兄様と初詣ということで私も、浮かれすぎていましたわ。多由羅さん、きれいですわ」
ステラはにこりと微笑んで多由羅を褒めた。
「ステラ、明けましておめでとう」
宙は挨拶の後、朝の挨拶のキスをする。
「お兄様っ! まだ、許していませんわ」
ステラの言葉は怒ってはいるが、表情は違った。
抱擁の後、二人は逸れないように手をつなぐ。
(割って入るつもりはありませんが、割って入る余地がないほど仲がの良い兄妹です)
多由羅は人の多さにおっかなびっくりしながら、二人とはぐれないようについて行った。
●毒を吐く宮司
リクが焼きそばを食べた後、射的のところに漂う緊張感に気づいた。
青い服の女性ラカ・ベルフ(kz0240)は半泣きかつ一生懸命、おもちゃの銃を構えて狙いを定めている。狙っているはその店で一番の目玉と一目でわかる青龍のぬいぐるみ。
気になってスマホのカメラを入れ、撮っておく。映像を外に出すなら許可を取る。
(不正? 商品が固定されているのか、弾が軽すぎるのか……んっ! わからない!)
全弾、明後日の方向に飛んでいく。ラカは落ち込み、財布の中身と相談を始めている。
リクは自分で試してみる。小さな菓子は取れたが青龍のぬいぐるみはびくともしなかった。射的の道具は多少弾が軽いようだが、通常なら問題にならないだろう。
「残念ですねー」
眼光鋭い店主は笑顔だ。
「ぬいぐるみ、落とせるの?」
「それは言いがかりってもんですよ」
リクは残念だなというふうにその場を後にし、さりげなく裏側に回る。
(一見止めてないように見えるけど、こっちから見ると柱に微妙についているし……)
商品棚を見るの状況をしっかり録画して、ここの元締めに急いで向かった。
大江神社の裏で暇なのは宮司の紅葉だった。紅葉はリクの動画を見た瞬間、走った。
そのあとラカだけでなくリクも怯えるほど、笑顔の紅葉が丁寧なのに毒を大量にまぶした言葉で対応を始めたのだった。保安係に射的屋の店主は連れていかれた。
嵐が過ぎ去った後、リクはラカに青龍のぬいぐるみを渡した。
「でも」
「いくら、使ったの? あの宮司に確認すればいいよ。どうせ、あの調子ならもらっていいっていうよ」
ラカはぬいぐるみを受け取ると、嬉しそうに顔をうずめていた。
リクは初詣も終え帰ろうとしたとしたが、視界の隅に動く人形を発見し、スマホのカメラを向けた。人形たちと戯れた後、賽銭を渡した。
「お金、理解してるのかな……ちゃんと賽銭箱に入れてくれるかな」
人形たちがはしゃいで消えて行った方向をみつめた。
●店仕舞い
神酒等の振る舞いが終わった後、ルベーノはプエルと雑談をする。
「ちなみにプエルはどんな神をめざすのかだ。神と一口に言っても色々あろう?」
「かっこいい神様」
「また抽象的だな……でもまあ、焦ることもないのだろう?」
ルベーノは笑った。
人形たちが戻ってくる。どうやら朝になると隠れるらしかった。
「そろそろ俺もお暇する時間だな」
ルベーノは別れを告げるとプエルはそっぽを向いた。
エルバッハはしばらく島でのんびりしていた。
「そろそろ帰りましょうか。厄介ごとはあちらからやってくるかもしれませんしね」
ここは異界を受け入れる懐の広い場所であり、護衛はともかくくつろげそうだった。
風が一吹きした後、エルバッハの姿はなかった。
朝日が差し始めたところで、メイムは店をたたむ。
「ほら、お駄賃だよ」
鳥籠を開けて、落雁やまんじゅうをプエル人形たちに渡した。
人形たちはキョトンとして受け取り、両手に持っていいのと首をかしげる。
「遊んだから」
人形たちは万歳の格好で立ち去りながらメイムに手を振っていた。
「器用だよね……」
●ご来光
「本日はどちらからいらっしゃいました? なるほど、どなたと? このあとどちらに行かれますか?」
初日の出が迫る中、マリィアは取材する。
寒くて暗くても、元気漂う人々の顔が収録される。
「ルゥルはどこにいるのだろうか」
「そろそろそっちと交代よね」
「なっ!」
レイアはそわそわしたが、マリィアが彼女の持つカメラを冷静に太陽の方に向けた。無事、朝日も撮れたのでマリィアの班の仕事はひとまず休憩になるのだった。
太陽はまぶしかったが、しっかり動画は撮ったとリクは確信し、家に戻る。
「これをアップして再生回数を稼げるといいな……」
あくびを一つして暖かいこたつを目指した。
初日の出ごろになると神社から人が消える。
「ご一緒に厄除けのご祈祷はいかがですか? お守りもお札も効果があると評判ですよぅ」
というようなセールスをしていたハナも休憩時間だ。そして、社殿の正面に立って自身について祈る。何度目か知らないが祈る。
「彼氏ができますように! このぬくもりを共に見る彼氏を!」
太陽の光に包まれ祈る彼女はキラキラ輝いていた。
多由羅の口から「明けましておめでとうございます。これからもよろしくお願いします」という言葉が自然と漏れる。ステラと宙も応える。
「……何を祈りました? こちらでは私は皆が健やかで過ごせるようにで、神社では血沸き肉踊る戦いに臨めるようにと言うことです」
「矛盾のようですが、多由羅さんらしいですわね。私は去る年への感謝、そして、知人や友人の幸せです」
ステラはにこりと微笑んだ後、宙を見る。
「私? 自分のことはできるからね。ステラのことだよ」
ステラが宙の腕に腕を絡める。
「さて、帰ろうか。おせちや雑煮があるから」
宙が告げると、多由羅は昨日の匂いを思い出し美味だろうと想像し大きくうなずく。おなかもぐんぐん減ってくる。
「そうですわね。あ、でも、帰り道でも、ゆっくりのんびり歩いて、何か食べません?」
「それもいいですね。お二人に合わせますよ」
それぞれの新しい年が来た。
今年もよろしくお願いします、とあちこちで声が聞こえる。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/12/31 15:01:36 |
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相談 ステラ・フォーク(ka0808) 人間(リアルブルー)|12才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/12/31 21:41:02 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/12/29 21:17:00 |