ゲスト
(ka0000)
【幻想】振り返らずに歩けるように
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/01/26 07:30
- 完成日
- 2019/01/28 06:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)が準備を進めていた策を実現する。
その為にパシュパティ砦を出たのは、部族会議首長バタルトゥ・オイマト(kz0023)の出立よりも少し遅れての事だった。
事前に策を準備していたものの、斥候からもたらされる情報に戦士達が混乱したのが大きな原因であった。それでもヴェルナーは怯える一部の戦士達を鼓舞して馬車で進路を北へ取る。
目指す場所は聖地リタ・ティトより北の地点。
ここである存在と待ち合わせをしている。
その存在は、この策にとって必須と言っても過言ではない。ハンターからの情報を得てヴェルナーなりに終末の正体に辿り着き、その上で考えに考えて練った策である。
――いや、あれを『策』と言っても良いのかは今も悩んでいるのだが。
「バタルトゥさん達がどこまで持ちこたえてくれるか。あまり待たせる訳にはいきません」
ヴェルナーは、馬車を急がせる。
既にハンターの調査で終末の正体は強力な怠惰の感染だと判明している。さらに斥候の情報では対怠惰の感染用結界もすぐに破られる程との報告もある。答えが判明していても、それに対抗する策が見つからなければ無力にも等しい。
そのギリギリの最前線でバタルトゥやハンター達が戦い続けている。
表情は平穏のままであるが、ヴェルナーは内心不安を抱いていた。
「あとどれくらいかかりそうですか?」
「巨龍の背骨が見えてきます。もうちょっとでさぁ」
巨龍の背骨――聖地リタ・ティトを擁するビャスラグ山の別名である。
そこまで到達しているのであれば、それ程時間はかからない。
バタルトゥ達の奮戦に応える意味もあるが、それ以上に『あの存在』はちょっとした事でヘソを曲げる。何とか予定通り話を進めたい所だが……。
「うわっ!」
突然、悲鳴の声を上げる行者。
馬車の手綱を引き、荷台を引く馬が嘶く。
ヴェルナーの前に姿を見せたのは、ある歪虚であった。
「お待ちしておりました、反逆の天使。あなたは必ず動くと知っていましたよ」
ブラッドリー。
神父のような姿であるが、その内実は独自路線を行く狂信的な高位歪虚である。
この辺境に終末をもたらし、信者を楽園『フロンティア』へ誘おうとしているようだが――。
「やはり来ましたか」
「終末を前に抗うのは無駄です。何を企んでいるかは分かりませんが、ここは通しませんよ」
ブラッドリーの背後から姿を現すのは、歪虚へ墜ちたジャイアントの群れ。
2メートルを超える巨躯で棍棒を武器に戦う亜人であるが、一体当たりの戦力はそれ程高くはない。それでも後方から次々と現れるジャイアントが壁になれば馬車の進路を塞ぐ事ができるだろう。
「妨害は想定済みです」
ヴェルナーの合図で護衛のハンター達が荷台から飛び出した。
その様子にブラッドリーは、思わず鼻で笑う。
「それで私達を撃退した後でその馬車を通り抜けるのですか? 試してみなさい。神はすべてご覧になっています」
ブラッドリーの余裕。
それはヴェルナーの馬車を足止めすれば、ヴェルナーの策が成功しない事を直感的に理解していたのだ。いざとなれば馬車に戦力を集めればいい。ブラッドリーにとって、それはあまりにも有利な戦いのはずだった。
だが、ヴェルナーはブラッドリーの言葉をあっさり否定する。
「いいえ」
「!」
「ハンターの皆さん、馬車はこのまま前進します。馬車の行く手を開けて下さい。その為に、ドワーフへ依頼して馬車の防御力を上げたのですから」
ヴェルナーは馬車の強行突破を試みる。
馬車を破壊されれば、怠惰王と戦うバタルトゥへの負担は一気に増大する。
その負担を少しでも軽くする為、無茶であっても馬車の進路を確保して先に進む決断をしたのだ。出発を遅らせてまで馬車の防御を底上げした理由もここにある。
「時間がありません。無茶なお願いは承知しています。少しの間、敵の攻撃を押さえ込んで下さい」
●
「うーん、ちゃんと来るといいのだけど……帰りたいなぁ」
聖地の少し北の地点でイクタサ(kz0246)は、一人空を見上げていた。
ヴェルナーから大事なお願いがあると何度も念押しされて来てみたのだが、ヴェルナーは未だに現れない。
だが、イクタサは分かっている。
北からやってくる不穏な空気。
無理矢理ヴェルナーに連れ出される形となったイクタサにも、それが如何に厄介な物か――。
「きっとあれの対応かな。まったく、気が進まないなぁ。
でも、今回は仕方ないか。あれは人の手に余るから」
その為にパシュパティ砦を出たのは、部族会議首長バタルトゥ・オイマト(kz0023)の出立よりも少し遅れての事だった。
事前に策を準備していたものの、斥候からもたらされる情報に戦士達が混乱したのが大きな原因であった。それでもヴェルナーは怯える一部の戦士達を鼓舞して馬車で進路を北へ取る。
目指す場所は聖地リタ・ティトより北の地点。
ここである存在と待ち合わせをしている。
その存在は、この策にとって必須と言っても過言ではない。ハンターからの情報を得てヴェルナーなりに終末の正体に辿り着き、その上で考えに考えて練った策である。
――いや、あれを『策』と言っても良いのかは今も悩んでいるのだが。
「バタルトゥさん達がどこまで持ちこたえてくれるか。あまり待たせる訳にはいきません」
ヴェルナーは、馬車を急がせる。
既にハンターの調査で終末の正体は強力な怠惰の感染だと判明している。さらに斥候の情報では対怠惰の感染用結界もすぐに破られる程との報告もある。答えが判明していても、それに対抗する策が見つからなければ無力にも等しい。
そのギリギリの最前線でバタルトゥやハンター達が戦い続けている。
表情は平穏のままであるが、ヴェルナーは内心不安を抱いていた。
「あとどれくらいかかりそうですか?」
「巨龍の背骨が見えてきます。もうちょっとでさぁ」
巨龍の背骨――聖地リタ・ティトを擁するビャスラグ山の別名である。
そこまで到達しているのであれば、それ程時間はかからない。
バタルトゥ達の奮戦に応える意味もあるが、それ以上に『あの存在』はちょっとした事でヘソを曲げる。何とか予定通り話を進めたい所だが……。
「うわっ!」
突然、悲鳴の声を上げる行者。
馬車の手綱を引き、荷台を引く馬が嘶く。
ヴェルナーの前に姿を見せたのは、ある歪虚であった。
「お待ちしておりました、反逆の天使。あなたは必ず動くと知っていましたよ」
ブラッドリー。
神父のような姿であるが、その内実は独自路線を行く狂信的な高位歪虚である。
この辺境に終末をもたらし、信者を楽園『フロンティア』へ誘おうとしているようだが――。
「やはり来ましたか」
「終末を前に抗うのは無駄です。何を企んでいるかは分かりませんが、ここは通しませんよ」
ブラッドリーの背後から姿を現すのは、歪虚へ墜ちたジャイアントの群れ。
2メートルを超える巨躯で棍棒を武器に戦う亜人であるが、一体当たりの戦力はそれ程高くはない。それでも後方から次々と現れるジャイアントが壁になれば馬車の進路を塞ぐ事ができるだろう。
「妨害は想定済みです」
ヴェルナーの合図で護衛のハンター達が荷台から飛び出した。
その様子にブラッドリーは、思わず鼻で笑う。
「それで私達を撃退した後でその馬車を通り抜けるのですか? 試してみなさい。神はすべてご覧になっています」
ブラッドリーの余裕。
それはヴェルナーの馬車を足止めすれば、ヴェルナーの策が成功しない事を直感的に理解していたのだ。いざとなれば馬車に戦力を集めればいい。ブラッドリーにとって、それはあまりにも有利な戦いのはずだった。
だが、ヴェルナーはブラッドリーの言葉をあっさり否定する。
「いいえ」
「!」
「ハンターの皆さん、馬車はこのまま前進します。馬車の行く手を開けて下さい。その為に、ドワーフへ依頼して馬車の防御力を上げたのですから」
ヴェルナーは馬車の強行突破を試みる。
馬車を破壊されれば、怠惰王と戦うバタルトゥへの負担は一気に増大する。
その負担を少しでも軽くする為、無茶であっても馬車の進路を確保して先に進む決断をしたのだ。出発を遅らせてまで馬車の防御を底上げした理由もここにある。
「時間がありません。無茶なお願いは承知しています。少しの間、敵の攻撃を押さえ込んで下さい」
●
「うーん、ちゃんと来るといいのだけど……帰りたいなぁ」
聖地の少し北の地点でイクタサ(kz0246)は、一人空を見上げていた。
ヴェルナーから大事なお願いがあると何度も念押しされて来てみたのだが、ヴェルナーは未だに現れない。
だが、イクタサは分かっている。
北からやってくる不穏な空気。
無理矢理ヴェルナーに連れ出される形となったイクタサにも、それが如何に厄介な物か――。
「きっとあれの対応かな。まったく、気が進まないなぁ。
でも、今回は仕方ないか。あれは人の手に余るから」
リプレイ本文
「いはやはヴェルナー卿も無茶をなさる」
エアルドフリス(ka1856)は、率直な感想を口にした。
怠惰王オーロラのニガヨモギは、死の抱擁で赤き大地を穢していく。削られていく命を実感しながら戦う戦士達を救うべく、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は一計を案じる。
その為に必須な事はある存在と合流する事。
歪虚側も妨害を試みると考えていたのだが、ヴェルナーはその妨害を馬車で強行突破する方法を選択していた。
「無茶は承知の上です。無茶を押し通す為に皆さんをお呼びしたのですから」
「なるほど。それで……その策が成功すれば怠惰王に抗っている皆を助けられるのですね?」
「おそらく」
ヴェルナーから出た言葉に、エアルドフリスはその真意を察した。
確実に助けられるかは分からないが、ニガヨモギを前に試す策は他にない。だが、可能性が僅かにでもあるならそれに賭ける。
「……! 早速来ましたね」
馬車の行く手を阻む三体のジャイアント。
大きな棍棒を手に馬車の進路上に立っている。このままでは馬車は急停止、馬車が敵に包囲される可能性もある。
「此処を抜けなけりゃ我々の勝ちもないという訳ですな、結構。ご期待にお応えしますとも。
……我均衡を以て破らんと欲す。理に叛く代償の甘受を誓約せん――灰燼に帰せ!」
エアルドフリスは馬車から乗り出して堕杖「エグリゴリ」を前方へ掲げる。
ジャイアント達の周囲を囲むように蒼い炎が現出。次の瞬間、ジャイアントに向かって無数の炎の矢が降り注ぐ。
燃えるジャイアントを尻目に馬車は北へ進路を取る。
「ヴェルナさん。どんなにむちゃな事でも……ヴェルナーさんのお願いなら、全力で、頑張って成し遂げてみせるの……」
桜憐りるか(ka3748)は前方より向かってくるジャイアントに向けてライトニングボルトを放った。
りるかからすれば、ヴェルナーらしくない方法だと考えていたが、それは他に選択肢がない証左でもあった。もっとスムーズに事を進められたのかもしれないが、ニガヨモギの正体が判明したとしても対ビックマーで使われていた対怠惰の感染用結界も通用しないのであればその術は無い。
唯一の作戦と言われるものがどんな物かは分からないが、今はヴェルナーを信じて共に進む他無い。
「ありがとうございます。ですが、決して無理をしてはいけません。
特に……後方から迫る『アレ』には注意して下さい」
――アレ。
そう言われてりるかは振り返った。
そこには神父姿の歪虚が馬車を追跡している。光の球を消費して磁力でも生み出しているのだろうか、走るとしても異常な速度で馬車に近づいてくる。
「神を信じなさい。神を信じる者は、死んでも生きるのです。そして、生きて神を信じる者は、決して死ぬ事がありません」
神の御遣いを名乗るブラッドリー(kz0252)は、馬車を追跡する。
ヴェルナーの動きを警戒して多数のジャイアントに馬車の行く手を阻むよう準備していた。
辺境――赤き大地に、ニガヨモギをもたらした歪虚。
終末を唱え、苦しみも悲しみもない楽園『フロンティア』へ誘おうとする者。
「大丈夫です、りるかさん」
ヴェルナーは優しく声をかける。
行者を荷台へ移してヴェルナー自身が手綱を握って馬車を進ませる。その視線はりるかには向けられていないが、戦闘の最中にヴェルナーの優しさに触れる。
そんな中、この事態を招いた存在を前にハンターは連携をもって対応する。
「アルマ、歓迎してやってくれ」
「わふー! ドリーさんですー」
馬車の荷台後方から姿を見せるアルマ・A・エインズワース(ka4901)。
幾度となくブラッドリーと対峙してきた歴戦のハンター。浅からぬ因縁が再び二人を引き合わせる。
ブラッドリーは、アルマを見据える。
「受け入れますよ、駄犬さん。
人は、神が結び合わせたものを引き離してはなりません」
●
ブラッドリーがアルマに対峙する間、馬車は強引に突き進んでいく。
「チッ、まさかこんな所で曲撃ちを披露させられるとは思ってなかったわよ」
魔導バイク「バンダースナッチ」のタイヤを滑らせて方向転換。
振り返り様にマリィア・バルデス(ka5848)が黄金拳銃をジャイアントへ向けて放つ。馬車の進路を塞ごうとするジャイアントを銃弾によって牽制。馬車への接近を阻む。
「……たくっ。今度は、そっちね」
マリィアは再びバンダースナッチのタイヤを走らせて馬車の側面へ回り込む。
バンダースナッチの機動力を生かして馬車周辺のジャイアントを迎撃していたが、ジャイアントの数が多い為にバンダースナッチで移動しては銃撃を繰り返す羽目になっていた。
「敵を少し蹴散らした方がいい。包囲される前に馬車の道をこじ開ける」
マリィアと同様、魔導バイク「ソーペルデュ」を走らせる八島 陽(ka1442)は旗槍「レ・タオ」でジャイアントを突き刺した。
八島もマリィアのように各個撃破を心がけていたが、ジャイアントの襲来ペースは比較的早い。動作が遅い事から八島と対峙しても苦労する事はないが、反面進路を塞ぐように立たれると壁として十分に機能してしまう。
「……! 馬車前方に敵影。こちらで対応するので、側面のジャイアントを!」
「了解。長丁場の戦いになりそうだから無理しないようにね」
八島はマリィアに後を託してソーペルデュから降りてシールド「セラフィム・ルアハ」を握り締める。
八島の背後を守るように黄金拳銃による制圧射撃を発動する。
後方から迫るジャイアントを牽制すると同時に、八島が移動する道を確保。
マリィアにも八島が攻撃を仕掛ける場所を察知していた。
「敵の包囲網が弱い箇所……そこへ突撃を仕掛ける」
八島はセラフィム・ルアハを前に立て、狙った場所に攻性防壁へ突撃を敢行。光の障壁に雷撃を纏わせながらジャイアントを吹き飛ばす。それに巻き込まれる形で周辺のジャイアントも倒れていく。ソウルトーチが効果を発揮すればもっと簡単だったが、ジャイアントは目視で敵を捉えるタイプである為、敵を誘導する事が叶わなかった。
「マリィアさん、八島さん」
ヴァルナーからの呼び掛け。
二人の行動で馬車の進路は塞がれず、多少強引でも前に進む事ができる。
「馬車が抜けられれば、私達の勝ちなんでしょう! 走り抜ける事に集中して!」
マリィアの呼び掛け。
その呼び掛けに応えるように、馬車はひたすら前へと進んでいく。
●
「私は託す。馬車前方の障害排除を」
雨を告げる鳥(ka6258)は、エアルドフリスにそう告げた。
馬車前方と側面から迫るジャイアントを開闢の爆炎で吹き飛ばし、時折虚空の魔眼でジャイアントの移動を制限して馬車の進路を確保していた。
だが、今雨を告げる鳥の抱く懸念は馬車後方。前方をエアルドフリスへ任せなければならない自体が、後方で発生しようとしている。
雨を告げる鳥はそう直感したのだ。
「ブラッドリー……そう簡単には止まらない、か」
エアルドフリスも雨を告げる鳥と同意見だった。
これが馬車を降りての足止めであれば違ったかもしれないが、馬車に乗った状態でブラッドリーと対峙するとなれば勝手も違う。ましてや、相手は高位歪虚――油断して良い存在ではない。
一方、アルマの方は自らの役目をしっかり果たしていた。
ブラッドリーの注意を馬車から自分に向ける事。
「あの、ドリーさん。すっごい矛盾してるの気付いてるです?」
「?」
「本当に終末に抗うのが無駄なら、貴方達はここにいなくてもいいはずですよね?」
「…………」
アルマの言葉にブラッドリーは反応を示さない。
言葉に耳を傾けている。
言い返さないのは図星だろうか。アルマはそのまま言葉を続ける。
できる限り、挑発的に。
「あははっ、ヴェルナーさんの策が致命的かもしれないですもんね! ……って考えると、実は神様って大した事ないですー? 僕らを阻止しないと終末運んで来られない程度なんでしょう?」
「……なんですって?」
ブラッドリーの顔色が変わる。
ブラッドリー周辺に漂っていた光の球が、激しくスパークし始める。
怒っている。
それも静かに、深く。
「配下任せの王様って、すごくカッコ悪いですー。お膳立てがないとなーんにもできないです!」
「神への侮辱は許しません。駄犬さん、少々口が過ぎるようですね」
アルマの狙いは的中した。
ブラッドリーの注目を集める為にスキルは不要。ただ、ブラッドリーの信じる神を罵り、怒らせればいい。
その予想が的中した為、ブラッドリーの狙いはアルマ一人に向けられる。
しかし、ブラッドリーの抱いた怒りは想像以上に激しい。
危険を察知した雨を告げる鳥は、アルマの背後についてレジストをかける。
「峻厳より慈悲へ。我が祈りよ、力となれ」
アルマが予期したのは、以前の依頼でかけた怠惰の感染であった。
それに対抗する意味でのレジストだったが、ブラッドリーが放ったのは怒りを込めた別の攻撃――。
「ブラッドリーの光球が増えてます! 何か来ます!」
異変を察知した八島が馬車と並走する。
雨を告げる鳥の目には先程まで三つ程度だった光球が、倍に増えている事。
移動中にジャイアントを使って光球を増やしていたようだ。
その光球のいくつかが馬車に向かって飛来する。
「もー、邪魔ですってば、ドリーさん!」
アルマも何かを察したのだろう。
デルタレイで光球を迎撃。
強力な一撃は光球を即座に消滅させる。
だが、こうしている間にもブラッドリーはジャイアントを光球へと変えて次々と馬車に向かって飛来させる。
「ジャイアントです! 先にジャイアントを片付けないと……」
八島は馬車周辺のジャイアントを駆除する為にタイヤを滑らせる。
旗槍「レ・タオ」で可能な限り素早くジャイアントを駆逐していく。
「ヴェルナーさんのじゃまはさせない、です。丁重にお帰り願うの」
りるかも馬車から顔を出して側面のジャイアントに向けてファイアーボールを叩き込む。
爆炎が周囲のジャイアントを巻き込み、吹き飛ばしていく。
だが、それ以上の早さでブラッドリーは光の球を生成。馬車の上にいるアルマに向けて飛来させる。
「私は気付く。この攻撃は、レッドスプライトではない」
「何よ、そのレッドスプライトって」
雨を告げる鳥の言葉に、制圧射撃でジャイアントを片付けていたマリィアが問いかける。
「赤い稲妻が地面から天へと突き抜ける魔法。設置型と罠と推察する」
レッドスプライトを目撃していた雨を告げる鳥の答え。
それが事実だとすれば、罠は馬車の前方へ仕掛けるべきだ。
だが、ブラッドリーの攻撃は馬車の後方に向けての飛来させている。
別の攻撃――そう考えるのが妥当だろう。
「ヴェルナー卿、もっと速度を」
危険を予期したエアルドフリスは、ヴェルナーに向かって叫ぶ。
何かが、来る。
それはブラッドリーが放つ負のマテリアルからも感じ取れる。
「分かりました。馬車の進路はお任せします」
ヴェルナーは、馬の速度を上げる。
荷馬車を揺らしながら、馬は必死に走り続ける。
●
ブラッドリーが怠惰の感染を使わなかったのは、アルマのおかげだろう。
だが、それによって別の可能性を生じさせる。
怒れるブラッドリー。
彼が放つ光の球は、馬車の後方で複数に重なり合う。
次の瞬間、激しい光を生じさせる。
「カタトゥンボ」
ブラッドリーの言葉に続いて、光球に目掛けて落ちる雷。
空気が振動して激しい轟音が鳴り響く。
だが、それで終わらない。
幾度もの雷が光球に目掛けて落下する。
その激しさは徐々に増していく。
「ちょっと、無差別同然じゃないの」
マリィアはバンダースナッチを走らせる。
馬車周辺に降り注ぐ雷がジャイアントを巻き込んで爆発。
激しい雷撃の雨が容赦なく降り注ぐ。
馬車が移動している為にこのような状態だが、仮に移動していなければ同じ場所に何度も雷撃が落ちていただろう。
「ブラッドリーよ。青木燕太郎にビックマーを倒させ、力を奪い、そして怠惰王オーロラを唆し、終末を到来させる。その上で、青木とオーロラと、そして私達に何を望む。怠惰と終末の果てに心理を得ようとでもいうのか」
雨を告げる鳥は怒れるブラッドリーへ敢えて問いかけた。
怒れるからこそ、真実を溢すかもしれない。
「終末ですべてが終わるならそれで構いません。ニガヨモギで倒れても苦しみも悲しみも無い世界へ誘われます。ですが、我が友コーリアスの言うように貴方方がその終末を乗り越えるならば……その時こそ本当の楽園へ。神の御座す場所へ私達は還る事ができる」
「きみの言う神ってファナティックブラッド?」
「……!」
ソーベルデュに乗った八島の一言。
その言葉にブラッドリーは瞳孔を開く。
「神の名をそのまま口にするとは。不遜ですね」
「図星、か。言っておくけど、全てに終わりがあるなら邪神にも終わりはあるよ」
「楽園へ還る事を抗いますか。それは神に逆らう行為です。貴方は神の力を知らない」
「ああ、知らないさ。個々の人間は決して強くない。でも、喩え終わりが来てもタレかが延々と語り継ぎ研鑽し続ける。それが人間だよ」
八島は雷鳴の中、ブラッドリーへ言葉を投げつけた。
更にエアルドフリスが言い放つ。
「俺はこの赤き大地で生きて、最後まで生きようと抗って死ぬ。
そうして大いなる円環へと還る。終末を受け入れるなんざ真っ平御免だ、一昨日来やがれという奴だ。楽園なんざ、こっちからお断りだ」
「愚かな。神を侮辱した挙げ句、あくまで神に逆らうと。天使達……ならば神の御遣いたる私も力を示しましょう」
ブラッドリーの声と共に飛来する一際大きな雷撃。
爆発にも似た一撃が、周囲を白に塗り替える。
周辺のジャイアントは吹き飛ばされ、光の中へと消えていく。
――そして。
馬車は辛うじて無事。北へと進み続ける。
「じゃ、ばいばいですー。今ドリーさんの相手をしてる暇ないです。また今度ってことで!」
馬車の後方から手を振るアルマ。
その様子をブラッドリーは黙って見つめていた。
●
「え。策って……」
りるかの前に姿を見せたのは、イクタサ(kz0246)であった。
四大精霊の一人であり、辺境に住む変わり者の精霊だ。
「遅かったね。帰ろうかと思ったよ」
「嘘が下手ですね。貴方は帰らない。北の脅威を感じ取っていたのでしょうから」
「どういう事? イクタサに何かさせるつもり?」
マリィアはヴェルナーへ問いかける。
ハンターのおかげで馬車を防衛できたが、マリィアはまだヴェルナーの策を聞いていなかった。
そして、ヴェルナーの口から告げられた策はあまりにも直球な作戦であった。
「はい。イクタサさんにオーロラを止めていただきます」
エアルドフリス(ka1856)は、率直な感想を口にした。
怠惰王オーロラのニガヨモギは、死の抱擁で赤き大地を穢していく。削られていく命を実感しながら戦う戦士達を救うべく、ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は一計を案じる。
その為に必須な事はある存在と合流する事。
歪虚側も妨害を試みると考えていたのだが、ヴェルナーはその妨害を馬車で強行突破する方法を選択していた。
「無茶は承知の上です。無茶を押し通す為に皆さんをお呼びしたのですから」
「なるほど。それで……その策が成功すれば怠惰王に抗っている皆を助けられるのですね?」
「おそらく」
ヴェルナーから出た言葉に、エアルドフリスはその真意を察した。
確実に助けられるかは分からないが、ニガヨモギを前に試す策は他にない。だが、可能性が僅かにでもあるならそれに賭ける。
「……! 早速来ましたね」
馬車の行く手を阻む三体のジャイアント。
大きな棍棒を手に馬車の進路上に立っている。このままでは馬車は急停止、馬車が敵に包囲される可能性もある。
「此処を抜けなけりゃ我々の勝ちもないという訳ですな、結構。ご期待にお応えしますとも。
……我均衡を以て破らんと欲す。理に叛く代償の甘受を誓約せん――灰燼に帰せ!」
エアルドフリスは馬車から乗り出して堕杖「エグリゴリ」を前方へ掲げる。
ジャイアント達の周囲を囲むように蒼い炎が現出。次の瞬間、ジャイアントに向かって無数の炎の矢が降り注ぐ。
燃えるジャイアントを尻目に馬車は北へ進路を取る。
「ヴェルナさん。どんなにむちゃな事でも……ヴェルナーさんのお願いなら、全力で、頑張って成し遂げてみせるの……」
桜憐りるか(ka3748)は前方より向かってくるジャイアントに向けてライトニングボルトを放った。
りるかからすれば、ヴェルナーらしくない方法だと考えていたが、それは他に選択肢がない証左でもあった。もっとスムーズに事を進められたのかもしれないが、ニガヨモギの正体が判明したとしても対ビックマーで使われていた対怠惰の感染用結界も通用しないのであればその術は無い。
唯一の作戦と言われるものがどんな物かは分からないが、今はヴェルナーを信じて共に進む他無い。
「ありがとうございます。ですが、決して無理をしてはいけません。
特に……後方から迫る『アレ』には注意して下さい」
――アレ。
そう言われてりるかは振り返った。
そこには神父姿の歪虚が馬車を追跡している。光の球を消費して磁力でも生み出しているのだろうか、走るとしても異常な速度で馬車に近づいてくる。
「神を信じなさい。神を信じる者は、死んでも生きるのです。そして、生きて神を信じる者は、決して死ぬ事がありません」
神の御遣いを名乗るブラッドリー(kz0252)は、馬車を追跡する。
ヴェルナーの動きを警戒して多数のジャイアントに馬車の行く手を阻むよう準備していた。
辺境――赤き大地に、ニガヨモギをもたらした歪虚。
終末を唱え、苦しみも悲しみもない楽園『フロンティア』へ誘おうとする者。
「大丈夫です、りるかさん」
ヴェルナーは優しく声をかける。
行者を荷台へ移してヴェルナー自身が手綱を握って馬車を進ませる。その視線はりるかには向けられていないが、戦闘の最中にヴェルナーの優しさに触れる。
そんな中、この事態を招いた存在を前にハンターは連携をもって対応する。
「アルマ、歓迎してやってくれ」
「わふー! ドリーさんですー」
馬車の荷台後方から姿を見せるアルマ・A・エインズワース(ka4901)。
幾度となくブラッドリーと対峙してきた歴戦のハンター。浅からぬ因縁が再び二人を引き合わせる。
ブラッドリーは、アルマを見据える。
「受け入れますよ、駄犬さん。
人は、神が結び合わせたものを引き離してはなりません」
●
ブラッドリーがアルマに対峙する間、馬車は強引に突き進んでいく。
「チッ、まさかこんな所で曲撃ちを披露させられるとは思ってなかったわよ」
魔導バイク「バンダースナッチ」のタイヤを滑らせて方向転換。
振り返り様にマリィア・バルデス(ka5848)が黄金拳銃をジャイアントへ向けて放つ。馬車の進路を塞ごうとするジャイアントを銃弾によって牽制。馬車への接近を阻む。
「……たくっ。今度は、そっちね」
マリィアは再びバンダースナッチのタイヤを走らせて馬車の側面へ回り込む。
バンダースナッチの機動力を生かして馬車周辺のジャイアントを迎撃していたが、ジャイアントの数が多い為にバンダースナッチで移動しては銃撃を繰り返す羽目になっていた。
「敵を少し蹴散らした方がいい。包囲される前に馬車の道をこじ開ける」
マリィアと同様、魔導バイク「ソーペルデュ」を走らせる八島 陽(ka1442)は旗槍「レ・タオ」でジャイアントを突き刺した。
八島もマリィアのように各個撃破を心がけていたが、ジャイアントの襲来ペースは比較的早い。動作が遅い事から八島と対峙しても苦労する事はないが、反面進路を塞ぐように立たれると壁として十分に機能してしまう。
「……! 馬車前方に敵影。こちらで対応するので、側面のジャイアントを!」
「了解。長丁場の戦いになりそうだから無理しないようにね」
八島はマリィアに後を託してソーペルデュから降りてシールド「セラフィム・ルアハ」を握り締める。
八島の背後を守るように黄金拳銃による制圧射撃を発動する。
後方から迫るジャイアントを牽制すると同時に、八島が移動する道を確保。
マリィアにも八島が攻撃を仕掛ける場所を察知していた。
「敵の包囲網が弱い箇所……そこへ突撃を仕掛ける」
八島はセラフィム・ルアハを前に立て、狙った場所に攻性防壁へ突撃を敢行。光の障壁に雷撃を纏わせながらジャイアントを吹き飛ばす。それに巻き込まれる形で周辺のジャイアントも倒れていく。ソウルトーチが効果を発揮すればもっと簡単だったが、ジャイアントは目視で敵を捉えるタイプである為、敵を誘導する事が叶わなかった。
「マリィアさん、八島さん」
ヴァルナーからの呼び掛け。
二人の行動で馬車の進路は塞がれず、多少強引でも前に進む事ができる。
「馬車が抜けられれば、私達の勝ちなんでしょう! 走り抜ける事に集中して!」
マリィアの呼び掛け。
その呼び掛けに応えるように、馬車はひたすら前へと進んでいく。
●
「私は託す。馬車前方の障害排除を」
雨を告げる鳥(ka6258)は、エアルドフリスにそう告げた。
馬車前方と側面から迫るジャイアントを開闢の爆炎で吹き飛ばし、時折虚空の魔眼でジャイアントの移動を制限して馬車の進路を確保していた。
だが、今雨を告げる鳥の抱く懸念は馬車後方。前方をエアルドフリスへ任せなければならない自体が、後方で発生しようとしている。
雨を告げる鳥はそう直感したのだ。
「ブラッドリー……そう簡単には止まらない、か」
エアルドフリスも雨を告げる鳥と同意見だった。
これが馬車を降りての足止めであれば違ったかもしれないが、馬車に乗った状態でブラッドリーと対峙するとなれば勝手も違う。ましてや、相手は高位歪虚――油断して良い存在ではない。
一方、アルマの方は自らの役目をしっかり果たしていた。
ブラッドリーの注意を馬車から自分に向ける事。
「あの、ドリーさん。すっごい矛盾してるの気付いてるです?」
「?」
「本当に終末に抗うのが無駄なら、貴方達はここにいなくてもいいはずですよね?」
「…………」
アルマの言葉にブラッドリーは反応を示さない。
言葉に耳を傾けている。
言い返さないのは図星だろうか。アルマはそのまま言葉を続ける。
できる限り、挑発的に。
「あははっ、ヴェルナーさんの策が致命的かもしれないですもんね! ……って考えると、実は神様って大した事ないですー? 僕らを阻止しないと終末運んで来られない程度なんでしょう?」
「……なんですって?」
ブラッドリーの顔色が変わる。
ブラッドリー周辺に漂っていた光の球が、激しくスパークし始める。
怒っている。
それも静かに、深く。
「配下任せの王様って、すごくカッコ悪いですー。お膳立てがないとなーんにもできないです!」
「神への侮辱は許しません。駄犬さん、少々口が過ぎるようですね」
アルマの狙いは的中した。
ブラッドリーの注目を集める為にスキルは不要。ただ、ブラッドリーの信じる神を罵り、怒らせればいい。
その予想が的中した為、ブラッドリーの狙いはアルマ一人に向けられる。
しかし、ブラッドリーの抱いた怒りは想像以上に激しい。
危険を察知した雨を告げる鳥は、アルマの背後についてレジストをかける。
「峻厳より慈悲へ。我が祈りよ、力となれ」
アルマが予期したのは、以前の依頼でかけた怠惰の感染であった。
それに対抗する意味でのレジストだったが、ブラッドリーが放ったのは怒りを込めた別の攻撃――。
「ブラッドリーの光球が増えてます! 何か来ます!」
異変を察知した八島が馬車と並走する。
雨を告げる鳥の目には先程まで三つ程度だった光球が、倍に増えている事。
移動中にジャイアントを使って光球を増やしていたようだ。
その光球のいくつかが馬車に向かって飛来する。
「もー、邪魔ですってば、ドリーさん!」
アルマも何かを察したのだろう。
デルタレイで光球を迎撃。
強力な一撃は光球を即座に消滅させる。
だが、こうしている間にもブラッドリーはジャイアントを光球へと変えて次々と馬車に向かって飛来させる。
「ジャイアントです! 先にジャイアントを片付けないと……」
八島は馬車周辺のジャイアントを駆除する為にタイヤを滑らせる。
旗槍「レ・タオ」で可能な限り素早くジャイアントを駆逐していく。
「ヴェルナーさんのじゃまはさせない、です。丁重にお帰り願うの」
りるかも馬車から顔を出して側面のジャイアントに向けてファイアーボールを叩き込む。
爆炎が周囲のジャイアントを巻き込み、吹き飛ばしていく。
だが、それ以上の早さでブラッドリーは光の球を生成。馬車の上にいるアルマに向けて飛来させる。
「私は気付く。この攻撃は、レッドスプライトではない」
「何よ、そのレッドスプライトって」
雨を告げる鳥の言葉に、制圧射撃でジャイアントを片付けていたマリィアが問いかける。
「赤い稲妻が地面から天へと突き抜ける魔法。設置型と罠と推察する」
レッドスプライトを目撃していた雨を告げる鳥の答え。
それが事実だとすれば、罠は馬車の前方へ仕掛けるべきだ。
だが、ブラッドリーの攻撃は馬車の後方に向けての飛来させている。
別の攻撃――そう考えるのが妥当だろう。
「ヴェルナー卿、もっと速度を」
危険を予期したエアルドフリスは、ヴェルナーに向かって叫ぶ。
何かが、来る。
それはブラッドリーが放つ負のマテリアルからも感じ取れる。
「分かりました。馬車の進路はお任せします」
ヴェルナーは、馬の速度を上げる。
荷馬車を揺らしながら、馬は必死に走り続ける。
●
ブラッドリーが怠惰の感染を使わなかったのは、アルマのおかげだろう。
だが、それによって別の可能性を生じさせる。
怒れるブラッドリー。
彼が放つ光の球は、馬車の後方で複数に重なり合う。
次の瞬間、激しい光を生じさせる。
「カタトゥンボ」
ブラッドリーの言葉に続いて、光球に目掛けて落ちる雷。
空気が振動して激しい轟音が鳴り響く。
だが、それで終わらない。
幾度もの雷が光球に目掛けて落下する。
その激しさは徐々に増していく。
「ちょっと、無差別同然じゃないの」
マリィアはバンダースナッチを走らせる。
馬車周辺に降り注ぐ雷がジャイアントを巻き込んで爆発。
激しい雷撃の雨が容赦なく降り注ぐ。
馬車が移動している為にこのような状態だが、仮に移動していなければ同じ場所に何度も雷撃が落ちていただろう。
「ブラッドリーよ。青木燕太郎にビックマーを倒させ、力を奪い、そして怠惰王オーロラを唆し、終末を到来させる。その上で、青木とオーロラと、そして私達に何を望む。怠惰と終末の果てに心理を得ようとでもいうのか」
雨を告げる鳥は怒れるブラッドリーへ敢えて問いかけた。
怒れるからこそ、真実を溢すかもしれない。
「終末ですべてが終わるならそれで構いません。ニガヨモギで倒れても苦しみも悲しみも無い世界へ誘われます。ですが、我が友コーリアスの言うように貴方方がその終末を乗り越えるならば……その時こそ本当の楽園へ。神の御座す場所へ私達は還る事ができる」
「きみの言う神ってファナティックブラッド?」
「……!」
ソーベルデュに乗った八島の一言。
その言葉にブラッドリーは瞳孔を開く。
「神の名をそのまま口にするとは。不遜ですね」
「図星、か。言っておくけど、全てに終わりがあるなら邪神にも終わりはあるよ」
「楽園へ還る事を抗いますか。それは神に逆らう行為です。貴方は神の力を知らない」
「ああ、知らないさ。個々の人間は決して強くない。でも、喩え終わりが来てもタレかが延々と語り継ぎ研鑽し続ける。それが人間だよ」
八島は雷鳴の中、ブラッドリーへ言葉を投げつけた。
更にエアルドフリスが言い放つ。
「俺はこの赤き大地で生きて、最後まで生きようと抗って死ぬ。
そうして大いなる円環へと還る。終末を受け入れるなんざ真っ平御免だ、一昨日来やがれという奴だ。楽園なんざ、こっちからお断りだ」
「愚かな。神を侮辱した挙げ句、あくまで神に逆らうと。天使達……ならば神の御遣いたる私も力を示しましょう」
ブラッドリーの声と共に飛来する一際大きな雷撃。
爆発にも似た一撃が、周囲を白に塗り替える。
周辺のジャイアントは吹き飛ばされ、光の中へと消えていく。
――そして。
馬車は辛うじて無事。北へと進み続ける。
「じゃ、ばいばいですー。今ドリーさんの相手をしてる暇ないです。また今度ってことで!」
馬車の後方から手を振るアルマ。
その様子をブラッドリーは黙って見つめていた。
●
「え。策って……」
りるかの前に姿を見せたのは、イクタサ(kz0246)であった。
四大精霊の一人であり、辺境に住む変わり者の精霊だ。
「遅かったね。帰ろうかと思ったよ」
「嘘が下手ですね。貴方は帰らない。北の脅威を感じ取っていたのでしょうから」
「どういう事? イクタサに何かさせるつもり?」
マリィアはヴェルナーへ問いかける。
ハンターのおかげで馬車を防衛できたが、マリィアはまだヴェルナーの策を聞いていなかった。
そして、ヴェルナーの口から告げられた策はあまりにも直球な作戦であった。
「はい。イクタサさんにオーロラを止めていただきます」
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 雨を告げる鳥(ka6258) エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/01/26 03:35:13 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/01/24 15:57:05 |