• 幻想

【幻想】─華に沈む、未来

マスター:凪池シリル

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
3日
締切
2019/01/24 09:00
完成日
2019/01/28 06:29

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ──それは『楽園』だと、歪虚は言った。


 死が、広がっていく。
 死の腕は逃げる者の背を掴み取るのではなく、包み込むように迫ってくる。
 そこにいた者たちを撫でていくその腕は──冷たいものではなく、暖かかった。
 ……もう、頑張らなくても良いじゃない、と。
 苦しいことなどやめて、全て投げ出してしまえばいい。逆らって、戻って、その先に何があるの? どうでも良いものばかり……。

(違う)

 囁く声に、抗う意志、一つ。
 だがそんな彼にも怠惰は伸びる。白い霧がかかるように、思考を鈍らせていく。
 どうでもいい。何もかも面倒だ。
 支配されそうになる意識を振りほどくように、帰る理由を思い出す。
 共に駆け抜けた戦場があった。
 笑いあった日々があった。
 鮮やかな光景を見た。
 救ってくれた言葉があった。
 それらが。
 ──それらすら。
(……でも、身体が、怠い……何だかもう……面倒くさい……)
 それはもはや。
 外から囁きかける声ではなく、内より浮かぶ思いとなって……──

「う、う、うああああああああああっ!?」

 叫びを上げた。
 戦士として幾度と戦場を駆けてきて初めて、本気の恐怖を覚えた。
 生きたい思い──大切なもの。
 それを、己自身が取るに足らないものとして、白く霞む意識の向こうへと追いやろうとしている。
 嫌だ。
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!?
 心で喚きながら彼は──チィ=ズヴォーはしかし不意に、その場に膝を折った。
 崩れ落ちる身体に、怠惰が舞い降りる。まるで優しく布団を掛けるように。抗う意志を、蕩ろかしていく。
 倦怠が塗りつぶしていく。思い出すら。憧れすら。怒りすら。恐怖でさえも……──!
 これが──真なる怠惰王の、『怠惰の大感染』。
(嫌……でさあ。手前どもは……)
 意識が白くぼやけていく中、それでも抗おうとする。きっと、助けは向かっているはずだと。
 ……そんなに頑張らなくても良いじゃない、と、声がした気がした。
 否、と、指先だけでも力を込める──ああ何て面倒くさいんだ、という心と身体の不平を聞きながら。
 ……もう我慢しなくても良いじゃない、と、声がした気がした。
(……我慢?)
 その単語に、薄れかかる思考が反応した。我慢? 自分が? 何を我慢しているというのだ?
 ……それは。
 彼自身が知らなかった心の奥。錆び付いたかのように固く閉ざされた扉の向こうにあった。
 怠惰の手は、そこに伸びて。
 容赦なく、抉じ開けて。
(そん……な。手前どもは……手前どもが……そん、な、こと)
 そこにあった、想いに。
 ──指先に込めていた力が、抜けた。
 もう……どうでも、良いのかもしれない。
 自分の命など助からなくても──助からない方が。
 頭が、重い。
 面倒だ。面倒になった。
 ……何も、考えたく、ない。


 ──それは『楽園』だと、歪虚は言った。

 あらゆる苦悩、罪悪から解き放ってくれる楽園。
 眠る戦士たちの顔を見てみると良い。とても安らかな表情をしているだろう?
 もうしばらくで。全ての抵抗が終われば。彼だって、きっと。




 緊急依頼。
 怠惰王の出現により、怠惰の大感染の影響下にある者たちで、まだ助かる可能性のあるものの救出。
 対怠惰の感染用結界を支給して現場に向かってもらうが、長くは持たないことが分かっている。また、怠惰の大感染を受けた者はただ動けないのみならずやがて自発呼吸すらやめてしまうという。故に可能な限り早く現場に急行し、救助対象を保護して戻る必要がある……──。
 そんな依頼を受けて、幾つかのチームが決死の覚悟で現場の森へと突入していく。
 ……だがもちろんそれを、黙って見ていてくれる怠惰軍ではない。
 森の奥から現れる気配、三つ。ジャイアントがそれぞれ別の方向から迫ってくる。全員、弓と、それから剣と盾を携えている。
 その動きは緩慢だった。だが、明確な殺意と悪意を持って立ちはだかってくる。時間をかけさえすれば勝利だと、理解しているのだろう。
「邪魔を……するなッ……!」
 伊佐美 透(kz0243)の声はかつてないほどに重く、震えていた。
 いつもは防御寄りに構えていた刀が、冷えた光を放っている。怒りで全てを切り裂こうとするばかりに。

リプレイ本文

 駆け抜ける景色に、今はまだ生きた森が広がっている。それでも、結界越しから感じる空気に、これまでの比ではない歪虚の力を鳳城 錬介(ka6053)は感じていた。
(……これが、怠惰の世界ですか)
 もたらされた情報を反芻する。生きるための当然の活動すら放棄してしまい、死に至る怠惰に抱かれる。
(真の力がこれ程恐ろしいものだったとは……猶予はあまり無さそうですね)
 ちらり。共に駆ける仲間を見る。皆、間に合わせるべく必死で走っている。
(チィさん、今から真さん達が迎えに行きますよ。もう少しだけ頑張ってください。……目を閉じるには早いですよ。まだまだこれからです。だから、皆で無事に帰りましょうね)
 視線を、前に戻す。死の世界が待つ、先へと向けて。
 増していく怠惰の気配に、その脚を緩める者は、誰も居なかった。

 ──ところで。
 大感染の情報は、当然、それから生還した戦士からもたらされた。
 彼らは何故、戻れたのだろうか。
 逆に。今なお大感染に命を奪われようとするものが居るのは、何故なのだろう。


 ……そうして彼らは、行く手を阻む巨人たちと会敵した。
「……ッ!」
 一瞬、苛立ちにも似た呼気を吐きながら、鞍馬 真(ka5819)はそのまま、突破すべく走り続ける。
 当然、阻むべく真に視線を向ける巨人。それが行動を開始する前に、エルシス・ファルツ(ka4163)がその間に身体を割り込ませる。
 更に。
「射抜け。遠矢」
 淡白な詠唱と共に、エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)の産み出した魔法の矢が三体の巨人を纏めて叩いた。
 怯む巨人の様子に。
「ごめん、ここは任せたよ。行こう、透!」
 恐れず躊躇わず、巨人の横をすり抜けながら真が叫んだ。
 信頼する戦友の態度に、透の躊躇は一瞬。巨人へ向けていた怒りの視線を外し、真を追うように駆け出す。
(……それで良い)
 背中を通りすぎる気配に、エルシスは思う。
 冷静になれとは言わない。
 でも怒りに身を任せるにはまだ早いから。
「……細かい事は全員で帰還してからって事で、ちゃちゃっと通らせてもらおっか」
 呟きに、応えるかのように。
 錬介が動いた。
 締め付けた法術縛鎖の感触を確かめながら腕を前に伸ばす。
「――邪魔をする者は全て串刺しです」
 漆黒の杭が巨人の胴を貫いた。杭は一瞬で消え失せるが、その場に留める魔力は残っている。先に動いたが故に、範囲に居たのはまだ一体だけだったが、一先ず、救助に向かうものを追わせないのが最優先だ。
 機先を制した彼らの活躍もあって、真と透の背中が遠ざかっていく。
「殴ってでも“息させて”連れて帰って来て!」
 その背に向けて、エルシスが叫んだ。
 この緊迫した場面だからこそ、敢えて勝気に笑って。
 送り出す言葉は、指示ではなくエールを。
 ──少しでも迷いなく助けに向かえる様に。
 ……応える言葉は無い。駆ける様子にも全く変化は無い。その間を惜しむことこそが彼女の言葉への返事なのだと思うことにして、この場に残るものたちは、向かい来る敵へと視線を向ける。
 エラは巨人の横をすり抜けるまでは透に随伴し、彼が通り抜けるのを確認すると巨人の動きを監視する。
 気持ちは一致していた。足止めに残る者は、救助に向かう者から注意を引き剥がそうと、敵がそちらに意識を向けた気配を見せるなり猛撃する。走り抜けるものはそうして、ただ信じて駆け抜けた。
 やがて二人が、木々の向こうへと消える。それを見届けると。
「こちとらケツに火ィついとるんだ。疾く死ぬか逃げるかしろ」
 エラは、青筋を浮かべ、地を這うような低音で、告げた。

「エルシス様、援護いたします。どうぞご無理はなさらずに」
 アティエイル(ka0002)が、一人巨人の前に立つエルシスを援護するように、魔法で炎の矢を生み出して敵を攻撃する。
 その言葉の前で正に今、怒りの巨人の剣が彼女へと振り上げられて。
「だーれが」
 唸りを上げる剣はしかしそのまま、空を切る。
「無理してるって!?」
 更にそのまま、迅雷の如く身を繰り出すと、反撃の刃が巨人の胸を切り裂いた。
 次いで別の一体が放つ矢も、軽く後ろに飛んで避ける。
 風圧が、彼女の身体を撫でて。
(……まあ、当たったらやばそうではあるけどね)
 静かに彼女は、その事も認めていた。だが。
 ちらり、錬介へと視線を送る。その意図を理解して、彼は力強く頷いて見せた。負傷についてはいつでも彼が、即座に治癒できるよう待ち構えていてくれている。死にさえしなければなんとかなるだろう。それよりも。
(盾で止められるとかなり硬い、ね)
 どちらかと言えばそっちの方が彼女にとって大きな問題だった。
 出来れば、救助組が戻る前に一体は倒しておきたい。……救助された戦士の状態が分からないから。
 走り去る彼らへと向けた言葉。意図通りに伝わっただろうか。殴るくらいで“生きさせる”事が出来るなら安いものだけど。現実問題そんな簡単じゃない事も分かっている。絶望の淵を知ったならば、そこから離れるには時間が必要で。それでも、“息して”戻ってきてくれたなら。その、必要な時間、守ることは出来る。
(要は、防がれなければいいってこと)
 踏み込む。右……と見せかけて左! 短剣の持ち手も鮮やかに切り替えて、逆方面に盾を掲げてがら空きになった脇腹めがけて、連撃を叩き込む!
 それを見てアティエイルは静かに、杖を構え直した。
「失礼いたしました。お見事でございます」
 意識を研ぎ澄まし、今度は純粋に、目の前の敵を討つ為の意識で魔力を練り上げる。
(お二方……救出をお任せ致しました、必ずや連れ戻り下さいませ)
 想うは、救出への願い。真がこの場を皆に託したように、彼女も救助を彼らに託した。
(……助けるための道を、お任せくださいませ)
 炎が渦巻く。盾に防がれてなお、その衝撃は巨人の身体を激しく叩く。
 攻撃を集中される一体を庇う為だろうか。別方向から迫っていた二体が矢を放ちつつ前に出る。……が、包囲が縮まったことで、今度こそ全ての相手が錬介のプルガトリオの射程圏内となった。錬介に笑みが浮かぶ。向こうが距離を詰めてくれた、その状態で足止めができたお陰で……望む位置に立てる。全員を回復し、護れる位置に。
 距離を詰められなくなった巨人が弓で狙いを付けるのは、高い魔力を見せてかつ脆そうに見えるアティエイル……なのは予測済みと、エラがその射線を切るように動く。
 愚鈍な巨人は、面倒くさいとばかりにそのままエラを射抜いた。庇うために前に出たエラは、当然避けられない……のではなく。そうして生まれた光の障壁が愚かな巨人に反撃を与えた。ショックを受けて、その動きが鈍った。矢はそのままエラに命中するが、彼女の防御力ならすぐに問題にはならない。
 だが、敵は逆方向からもう一体来る。
「させませんよ」
 放たれた矢は……吸い寄せられるように錬介へと向かった。やはり高い防御力に、矢は突き立つことなく折れて弾けた。それでも岩をも射ぬく矢の一撃が無視できる訳ではないが、この分なら、回復は十分に追い付く。
 エルシスの回避力も含め、防御面では問題なかった。攻撃力は……それも決して、不足では無い。エラの指揮の元一体に攻撃を集中させる。炎が、風がアティエイルの魔力から生み出される。エルシスは連撃と反撃、手数で短時間にダメージを蓄積させていた。錬介の足止めもあって、集中といいつつエラの魔法の矢は全ての敵をその標的に収めていた。
 順調に、思えた。
 ──そこに、救助班から連絡が入る。
 そして。
「それは……はあ。成程。……まあ、そのまま戻ってきて貰うより、無いでしょう──何とかします」
 聞かされた内容に、エラが答える。そうしながら、思考の修正を開始した。
 状況を俯瞰する。戦力分析。撤収路は……現状では、確保できてるとは言えなくなった。
 ……今敵に対応するのは、救助の迅速化の手段の一つとしてだ。撃破は目的ではない。退いてくれるなら追撃の必要はないが、今のところその気配はない。
 さっきの話の対応を考えると、必要なことは……──
 倒しかけている敵の一体がその時、怒りの咆哮を上げた。矢の一撃が彼女に向かって。
「じゃかあしい!」
 再び攻性防壁を張った盾を掲げながら、彼女は叫び返した。
 そして、
「死に急がんでもお前の死はこれで確定事項じゃい! さっさと沈め!」
 一先ずの目標を、そう定めた。


 背後の全てを信じて、真と透は一心不乱に走り抜ける。
 凡その方角は聞いていた。二人注意しながら進むと、少なくとも感染が巻き起こっているのだろう場所はすぐに検討が付いた。立ち枯れた木々が立てる、軋む音──静かな死の悲鳴。
 嫌な想像が透の頭を巡る前に、割り込んで来るものがあった。
 歌声。
 それだけを聴かせながら、真は先を進んでいく。
 心を安らげ抵抗力を上げる星影の唄は、大感染に効果があるとは……実感は出来なくて。それでも。大丈夫、という言葉の代わりなのだろうということは、透には分かっていた。
 落ち着けとも焦るなとも言わない真に、透もまた、大丈夫や有難うと答える代わりに、戦いの中幾度となく聞いてきたその唄に、己の声を重ねた。歌詞が、余計な思考を上書きしてくれる。
 そうやって進む。
 ……そうして、たどり着く。
 歌声が、同時に止まった。
 そこは正に死の世界を想像する有り様だった。草木がしおれ、葉は枯れ落ち。彩を失っていくその中で。
 微動だにせず、倒れる、戦友の姿。
 覚悟していても、心臓が跳ねて、嫌な感触が全身に伝播していく。……確かめるのは、恐怖だった。
 それでも、駆け寄る。助かると信じて。助けると決意して。圧倒的な歪虚の波動に圧される結界を感じながら。それと共に近づいていくと。
「う……あ……?」
 声がした気がした。微かに動いた、気が!
「チィ!」
 その名を叫んで、透が彼を抱き起こす。
「無事なんだな!? 助けに来たぞ!」
 呼び声に……返事はない。重たそうに僅かに開いた瞳は、気だるげで意志を感じさせない。
 何らか、精神に影響があるだろうことは、真は覚悟はしていた。これだけ強い感染を受けて死にかけたのだ。ただ、混乱や錯乱と言うわけではなく、ただ無気力。
「チィさん? 大丈夫だよ……」
 怠惰を受け入れようとするようにも見える彼に、真は語りかける。
「きみが死の淵で何を思ったとしても。私は、生きていてくれて良かったと思っているよ」
 その言葉に、チィの瞼がピクリと動く。悲しみに歪んだようにも見えたそれは、だがしかし紛れもなく感情の動きだった。結界の効果は少しずつ出ているのだ。呼吸を止める気配もない。
「だから、生きて一緒に帰ろう」
 続く真の言葉に、反応したのは透だった。動けないチィをそれならいいとばかりに担ぎ上げる。抵抗は、されなかった。
 その時だった。
「うう……」
 側に倒れていた別の戦士が、呻き声を上げたのは。
「!?」
 真と透は顔を見合わせる。慌てて周囲を捜索して。
 発見する。少し離れていた場所に、倒れていたもう一人。
「がはっ!」
 近付くとその一人は……呼吸を止めはじめていたらしい。その復活と共に肺に流れ込んだ空気に軽く噎せて……意識を回復する。
 ……どうする?
 問うまでもない。迷っている時間も──迷う余地も無い。視線をもう一度交わし合うと二人はどうするかを即座に決めた。互いに筋力と体力はあるのだ。三人になった救助者を、どうにかして運べるように工夫する。
 ……その選択が間違いじゃないと確かめるように、一度だけ振り向いた。背にした死の世界、そちらへと。
 倒れ行く木々、舞い散る落ち葉の向こう──微睡むオーロラの姿が、霞んで見えた。


 不意討ちされれば自分たちはともかく救助者は終わる。そんな、ある意味行きより緊張する帰路を、行きと同じように二人、死角を補いあいながら行く。幸いにして新手が現れることはなく、彼らは合流を果たした。
 その時点で、エラの防壁によって鈍ったところを集中攻撃したことにより、巨人の一体は撃破されていた。
 エルシスが一撃離脱を繰り返しながら残る一体を誘導、退路を更にこじ開ける。
 錬介が真たち駆け寄ると救助者の一名を引き受けた。
「撤収!」
 エラが叫ぶと、真が星神器から大魔術を発動させる。断絶の理に、追撃の矢は大きくその進路を逸らせて行く。
 救助者を背負った三人を護れる位置にエルシスが寄り、エラが殿となって全力でその場を離れていく。
 予定よりもさらに慌ただしくなった撤退劇。その中で……この可能性を考慮してきたアティエイルは、凪いだ心で思っていた。
(怠惰、ですか……彼女の楽園)
 前を行く救われた戦士の元へ視線を向ける。
(人の笑顔が見たい、わたくしには受け入れがたいものなのでしょうね)
 その戦士の帰還を待ち望んだ者に想いを向ける。
(そんな自分勝手な望みを抱くわたくしは、汚い欲にまみれているのですわ……きっと)
 思いながら。
 怠惰の世界から彼らを救いだした二人を送り出したことに。
 今、その彼らを守るために必死で魔術での牽制を繰り返す己に。
 ──後悔は、無い。


 完全に離脱する頃、救助されたものたちは少しずつその思考と気力を取り戻していった。
 大感染を受けていたときのことは覚えているし、その事自体に恐怖は覚えるが、死にたい、死んでもいいという想いはもう無いらしい。
 ……そうして、落ち着きを取り戻し始めた彼らは語り出す。
「怠惰の大感染は、二度発生しました。……いえ、一度途切れた、というべきでしょうか」
 まず戦士たちがオーロラの姿を認めたとき。それだけで戦士たちは次々と倒れていき……やはり一度、生命を放棄しかけた。
「しかし、その死の腕から、我々は突如解放されました」
 だがその時点で。オーロラの近くに居た者、非覚醒者であった者は既に絶命していた。急ぎこの事態を伝えるべく彼らは離脱を決意し……しかしそこに、巨人が立ちはだかった。そうして……戦うために残ると言った者が、再び大感染に巻き込まれた──
 気力を取り戻した戦士の一人が、しっかりと語る中。
「……チィ? お前大丈夫か?」
 やけに静かなままの相棒に、透は話しかける。
「何か……おかしな事があるならちゃんと言えよ。お前だけの問題じゃない」
 その言葉に、チィは首を横に振った。
「違いまさあ。……もう怠惰の感染の影響はねぇですよ」
 チィには分かっている。これは……怠惰の大感染とは無関係だ。
 ……気付くきっかけにはなっても。これは元々、己の中にあった物。
「透殿」
 そう。これは関係ないのだ。これはただの──

「透殿はもう、辺境の戦いには関わらねえでくだせえ」

 ただの、二人の終わりに向けた物語の、その、始まり。

依頼結果

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MVP一覧

  • ふたりで歩む旅路
    アティエイルka0002

重体一覧

参加者一覧

  • ふたりで歩む旅路
    アティエイル(ka0002
    エルフ|23才|女性|魔術師
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • 不撓不屈の黒き駒
    エルシス・ヴィーノ(ka4163
    人間(紅)|24才|女性|疾影士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/01/23 08:21:58
アイコン 質問卓
鞍馬 真(ka5819
人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2019/01/21 20:15:48
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/01/21 11:14:55