カカオ争奪戦

マスター:ザント

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/02/11 09:00
完成日
2019/02/16 01:33

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「諸君、ようやくだ。ようやく我らの計画が成就する日がやってきた」
 夜の建物の一室。
 ロウソクに照らされたその部屋には、影で顔までは分からないが6人の男女がテーブルを囲み、集まっていた。
 1人の男性が感極まったのか立ち上がり、両手を高く掲げながら天を仰ぐ。
「ようやくだ。我らAVUの長きに渡る雌伏の時は、今、終わる!」
「AVUって何ですか。というか、何で集めたんですか?」
「明日にはハンターオフィスに着くから、早目に寝ないと……」
 集まっていた人物からの冷静なツッコミが耳に入っていないのか、その場で無駄にクルクルと回りだすのを他の5人は冷めた様子で見ている。
「この計画が成就すれば、今は亡き同胞たちの無念は晴らされるだろう!」
「今は亡き同胞って、もしかして執事長のセバスさんのことですか?」
「彼はぎっくり腰を理由に来れなくなっただけですよね」
「とにかく!」
 回っていた男性がテーブルを強く叩き、ロウソクが倒れる。
 何度もあったのか周りは慣れた手つきでロウソクを戻し、男性は全く反省していないようでもう一度テーブルを強く叩く。
「とにかく、実行は明日からだ!」
「はいはい、分かりました」
「明日は早いですから早く寝ましょう」
「では、各々の役目を果たすこと……解散!」
 相手にしていない5人によってロウソクの火が消され、早々に解散していった。

 次の日。
 ハンターオフィス職員のエルリア・ベルソー(kz0267)は依頼の整理などの通常業務を行っていた。
「えーと、これは緊急性が無いので……」
「ハンターオフィス職員エルリア・ベルソーに告ぐ! 出て来い!」
 それは突如としてやってきた。
「……次の依頼はっと」
「エルリア・ベルソー! 出て来ぉい!」
 無視をしようとしたエルリアだが、再度呼ばれたことで大きくため息をつくと外へと出る。
 オフィスの向かいの建物の前。
 そこに胸を張って堂々と立つ男性が居た。
「我はアンチ・バレンタインデイ・ユニオン……略称はAVU総帥カルチオーネ!」
 呆然とするエルリアを尻目に男性は無駄に手を回してポーズを取る。
「ジェオルジにある全てのカカオ豆は我らが買い占めた!」
「初めまして、エルリア・ベルソー様。私はカカオの栽培をしているレヴァン家の使用人でございます」
「レヴァン家……あぁ、サルバトーレさんの」
 男性が喚いているのを無視して使用人と名乗る男性が自己紹介をすると、エルリアは誰からの使いなのか、そして喚いている男性が何故自分の名を知っているのかを悟る。
「我々はバレンタインで女性からチョコを貰えぬ同士たちの無念を! 嘆きを! 悲しみを! 怒りを! 晴らすことが目的である!」
「あそこで喚いているのはレヴァン家の次期当主であるカルチオーネ・ル・レヴァン様です」
「そ、そうなんですか」
 エルリアの顔にあれが、と書かれているのを見ずとも分かっているようで使用人は申し訳なさそうに頭を下げる。
「それでですね。レヴァン家が所有する農園でカカオの収穫を頼んでいた村で少し問題が起こり、予定通り収穫が行われていないのです」
「はぁ……」
 何が目的がはっきりとせず、今は少し忙しいのでさっさと戻りたいエルリアは空返事をしているとカルチオーネが演説を締めくくる。
「よって、我らがAVUの威光を世界へ示す為。ハンターへと宣戦布告する!」
「……えーと」
「当主が良い機会だからと、後学の為にカルチオーネ様にハンターへ依頼を命じられ、来た次第です。あ、坊ちゃんは外に出てはしゃいでるだけですので無視してください」
 カルチオーネの宣言に戸惑うエルリアだったが、使用人からカルチオーネの言葉を全く気にせず依頼の旨を伝えられるとすぐさま頭を切り替えて頷いた。
「畏まりました」

「どんな依頼でも受ける。それがハンターオフィスですので、少々カルチオーネさんのわがままにお付き合いください」
 エルリアは咳払いをするとレヴァン家について説明してくれた。
「レヴァン家というのはカカオ栽培とカカオ豆の生産で富を築いた家で、カカオ豆の生産量は多く、レヴァン家からカカオ豆が出荷されないとなるとチョコレートの生産にも影響が出るかもしれません。ご当主のサルバトーレさんは、私がハンター時代にお世話になったことがありますが、しっかりとした人でした。次期当主があれでは行く末が不安ではありますが、我々が口を出すわけにも行きませんし、どうしようもありませんね」
 エルリアは諦観すると、意識を切り替えたのか真剣な口調で依頼内容を説明し始める。
「依頼主はカルチオーネさん。内容はカカオの収穫ですが、依頼主はレヴァン家所有のカカオ林で同人数での勝負をご所望との事です。ご本人はAVUの計画だとか聖戦だとか言っているので、話を合わせて上げて下さい。あ、そうそう」
 説明を終えたエルリアは疲れたような笑みを浮かべ。
「カカオは買い占められたわけではないようなのでご安心を」
 と、言った。

リプレイ本文


 レヴァン家所有のカカオ林。
 等間隔にカカオの木が植えられ、その全てにいくつもの立派なカカオの実が生っているそこへ来たハンターたちを出迎えたのは今回のお騒がせお坊ちゃまカルチオーネ・ル・レヴァンと参加するらしい使用人たち。
「逃げずによく来たな。ハンター共!」
「ようこそおいでくださいました。お待ちしておりました」
 カルチオーネの挨拶代わりの言葉に、これで次期当主なのかとレイア・アローネ(ka4082)は思ってしまう。
 レイアが心の中で頭を抱える中、星野 ハナ(ka5852)はカルチオーネへと詰め寄ると笑顔を浮かべた。
「背負子と籠と軍手と鋏4人分を準備してくれますぅ?」
「それくらい自分たちで……」
「雇い主なんですからぁ、可愛い女の子達にそのくらい準備して下さいぃ」
 その迫力に押されたカルチオーネは頷き、後ろに控えていた使用人に要求された物を用意するよう命じると何やらブツブツと呟き始めた。
「あの……」
「そう、ハンデを……なんだ」
「収穫方法についてと、生っているカカオの実は全て獲ってしまっていいのですか……?」
「そ、それは……セバス!」
「はい、お坊ちゃま」
「聞きたいことは全てセバスに聞け。私は勝負の準備を始める!」
 サクラ・エルフリード(ka2598)がした質問には答えられないのか、カルチオーネは白髪交じり初老の男性を呼ぶと全てを任せて逃げるように3人の使用人たちと共に少し離れた場所へと移動していった。
「では、お坊ちゃまに代わりまして私が質問にお答えいたします。収穫方法はお貸しする鋏でへたを切って収穫してください。生っているカカオの実は全て収穫していただいて構いません」
「分かりました……。後、花火と見せかけの雪を使っても問題ないでしょうか……」
「ワンダーフラッシュとスノーホワイトですね。問題ございません」
 話だけで何を使おうとしているのか察知し、問題ないと頷くセバスの知識にサクラが舌を巻いていると百鬼 一夏(ka7308)が心配そうに尋ねる。
「カカオの木に防衛機能がついてて従業員以外が取ろうとすると攻撃してくるとかないですよね?」
「そうですよねぇ」
 ハナも同じことを思っていたのか同意の声を上げる。
「今年カカオが豊作過ぎたとかご領地で人手不足とか特に聞いた記憶なくてぇ。なんで今年はお手伝いが必要ですぅ? それにぃ、バカと…あわわ、カルチオーネ様以外の方はぁ、元騎士か私達の先輩ですよねぇ? なんでそういう方で収穫するんですぅ? 実を取られるのを嫌がってカカオの木が邪魔したりぃ、実が自力で逃げ出したりする特殊性質でもおありですぅ?」
「ほっほっほっ」
 ハナのまくし立てるような問いにセバスは朗らかに笑った。
 ひとしきり笑ったセバスは失礼と言って咳払いをしてから質問に答える。
「カカオの木に防衛機能がついているかどうかのご質問ですがついておりません。至って普通のカカオの木で、実も自力で逃げたりはいたしません。我々が収穫することと今年貴女がたにお手伝いを依頼するよう指示したのは、実はご当主なのです」
「ご当主って、確かサルバトーレさんでしたよね」
 一夏の言葉にセバスは頷き、離れた場所にいるカルチオーネと3人の使用人たちを見る。
「こう言ってはなんですが、お坊ちゃまはバカです」
 ハナがせっかく誤魔化したことをハッキリと言ったセバスに4人だけでなく残っていた使用人たちも思わず吹き出した。
 セバスはまた笑うと、ですがと前置きをする。
「バカではありますが家を継ぐ意志はあり、自分なりに努力もしております。バカですが」
 大事なことなので二度言いましたとまた笑うセバスにそんなことを言ってもいいのかとサクラが心配してカルチオーネの様子を伺うが、聞こえてないようなので胸を撫で下ろす。
「そして未だに人の使い方というものが分かっていないご様子ですので、ご当主が人の使い方も学ばせようとお考えになられて今年の収穫はこのような形を取らせていただきました。このことはお坊ちゃまはご存知ではありません。勝負はお坊ちゃまの独断です」
「なるほど、そういうことだったのか」
 事の真相が分かり、納得した4人は使用人から装備一式を受け取るとふとハナが思い出したかのように尋ねる。
「ところで収穫物の置場はどこですぅ? そこまで運んでカウントですぅ?」
「収穫物は私の方へ持ってきてくだされば、それでカウントとなります。もちろんご当主に誓って不正は致しません」
「わかりましたぁ」
 返事に納得し、他に質問もなかったので4人は勝負の前に打ち合わせを始めた。
 その結果サクラとレイア、ハナと一夏の二人一組で作業をすることにした。
 諸々の準備を終えた頃、カルチオーネがばばばっと素人が格闘家の動きを真似したような無駄に腕を動かしてからポーズを決める。
「負ける準備は出来たか!」
「私たちは負けませんよ!」
「ぬっ……」
 カルチオーネに対抗するように一夏が元気よく言うと、素直に返されると思っていなかったのかカルチオーネは言葉に詰まった。
「セ、セバスの合図で勝負開始だ!」
 そう捨て台詞を吐くと使用人たちが並ぶ方へと歩いていった。
「僭越ながら私が合図を出させていただきます。この笛の音が鳴ったら終了でございます」
 背負子などを担いだ8人に顔を向け、再度確認を取ったセバスは笛を手に取る。
「では、勝負開始!」
 宣言の直後に笛の音が鳴り、8人がカカオ林に向かって走り出した。


 カカオ林の中程まで来たサクラとレイアは、ここで収穫をしようと足を止めるとざっとカカオの実の確認をする。
「なるほど……。カカオとはこんな風になっていたのですね……。知らなかったです……」
 チョコは知っているがカカオが初めてだったサクラはちょっと驚きつつ周囲を警戒しながら収穫を始める。
「まずは取りやすい下に生っている物から取るとするか」
「結構大きいうえに数も多いですし収穫は大変そうですね……。勝負はさておき、チョコの為に頑張って収穫していきましょうか……」
 そう言うや否やレイアは丁寧にカカオの実を収穫していき、サクラもレイアが収穫している木のカカオの実を収穫する。
(しかし、なんの勝負だこれは……。まあ依頼というのであればやむを得まい。結局やる事はただのカカオ収穫だしな)
 レイアはそんなことを考えながら収穫の手を進めていき、手の届く範囲のカカオの実を取り終えるとサクラは背負子を下ろすと木に登ってそこにあったカカオの実を1つ取る。
「高い所のは獲ったら放り投げた方が効率的ですかね……。射程内なら見えていなくても入れられるので他の木に行っててください……」
「了解だ」
 レイアはサクラの指示に従い、別の木へと先程までよりも素早く移動すると手に届く高さのカカオの実を収穫しては籠へと放り込んでいく。
 サクラは高いところにあるカカオの実を収穫するとレイアの籠へと向かって投げたところで、次のカカオの実へと目を向ける。
 投げられたカカオの実は寸分違わずにレイアの籠へと入り、レイアはその衝撃と音に一瞬籠に目を向けるが、すぐに収穫へと戻る。
 それが何度か繰り返され、サクラが登っている木になっているカカオの実を取り終え、残った実が無いか確認している時にそれは突然現れた。
「っ!?」
 空間に青白い雲状のガスが一瞬で広がってサクラとレイアを包み込んだ。
 ガスは一瞬で晴れてサクラとレイアの身には何も起きていないが、ガスを生み出した相手とその狙いはすぐに分かった。
「私が対応します……!」
「頼む!」
 木から飛び降り、サクラはぐるりと見回して犯人をすぐに見つけると行動へと移る。
「邪魔するのは感心出来ませんね……。あまり酷いとお仕置きしますよ……?」
「な、なんだ?」
「目をつぶった方がいいですよ……」
 雪の幻影を降らせ、戸惑う使用人より少し手前辺りまで光弾を飛ばしたサクラは、注告すると同時に目を覆った。
 そして光弾が爆発するように眩く広がる。
「まぶしっ!」
 サクラの注告も虚しく防ぐことが出来なかった使用人は目が眩ませる。
「あっ目が見えるまで動かない方が……」
 そんな中でも使用人は動き続けていたが、目が眩んでいる最中に動けば当然何かにぶつかる。
 予想通り、鈍い音を立てて木に頭をぶつけ合った使用人はその場に倒れた。
(驚かせるだけのつもりでしたが、こうなってしまうとは……すみません……)
 心の中で謝罪し、使用人がしばらく動けないのを確認したサクラはレイアの手伝いへと向かった。


「普通のカカオの実なら成人男性の拳2つ分くらいの大きさですしぃ、カラフルな色で見分けやすくて木に数個しかつかないはずですけどぉ……」
「ハナさん! 次に行きましょう!」
「はいぃ、行きましょうかぁ」
 ハナたちが収穫をしていたカカオの木から取れた実は十数個にも及んでいたが、それ以外は概ねハナの言葉通りだ。
 元気いっぱいの一夏の言動にハナはそこで考えるのをやめて次の木へと移動する。
 2人の行っているカカオの実の収穫方法は、木の実を1つずつ確実に収穫し、1人は籠を背に採取優先、もう1人は籠を前に回して運搬や採取妨害の阻止をし、1列収穫し終えたら役割を交代を繰り返していくという方法だ。
 この方法で3列目の中ほどまで収穫をし終える頃には2人の籠はカカオの実いっぱいとなった。
「そろそろセバスさんのところにカカオの実を置きに行きましょうかぁ」
「はい!」
「ははははは! この時を待っていたぞ!」
 収穫物を置きに行こうと話した時、少し離れたカカオの木の陰からカルチオーネが現れた。
「お前たちが収穫したカカオは、このAVU総帥カルチオーネがいただく!」
「このカカオの実は渡しませんよ!」
「ならば力ずくで奪うまでだ!」
「御霊符ぅ」
「させません!」
 ハナは大量の符を消費して紙で出来た式神を召喚してその式神に籠を預けると一緒に移動を始め、一夏はカルチオーネに向かって光弾を放った。
「ん、なんだこれ」
 光弾を物珍しそうに見つめるカルチオーネの目の前で、光弾が爆発したかのように広がった。
「め、目潰しかぁああああ!」
 目を押さえて叫ぶカルチオーネの脇を一夏たちが走り抜ける。
 このまま行けると2人は確信して走り続け、カカオの木を避けようとした時に視界の隅から符が飛び出した。
「きゃっ!」
 瞬間、一夏の視界いっぱいに桜吹雪が映り込む。
 思わずブレーキをかけた一夏は隙を突かれ、突然目の前に現れた使用人によって籠が奪われてしまった。
「すいませんね、命令なもんで」
 籠を奪った使用人は手短に謝罪すると、そのままセバスが居る方向とは逆の方向へと走り出す。
「はっはっはっ! 私が現れて注意を引いた後に簡単に出し抜かれた後にマテリアルのオーラで隠れたあいつの近くに相手が来たら、運搬の邪魔をするという作戦だ!」
「わ、私はいいのでカカオの実をー!」
「ははははは!」
 高笑いするカルチオーネを捨て置いて、一夏の言葉通りに逃げた使用人を追う為にハナが走り出し、そして。
「返してもらいますねぇ」
「えっ」
 あっという間に使用人に追いついて籠を奪い返し、その場でハナは顔を腕で覆うのと同時に使用人とハナの間に一夏が飛び込んできた。
 その手には光弾。
「まずっ」
 慌てて使用人が目を塞ごうとするが間に合わず、爆発的に広がった光弾によって目を眩ませた。
「格闘士なめんなよ! です!」
 使用人に向かって一夏がそう言うと、目が眩んでいる2人を置いてハナたちはセバスの下へと走り出した。
 途中で妨害などは一切なく、やや拍子抜けしながらセバスの下へ着いたハナと一夏は籠の置き場所を尋ねる。
「これはどこに置けばいいですかぁ?」
「こちらの方に置いてください」
「こっちですね!」
「置いた籠はそのままで、空の籠をお持ちください」
「はい!」
「戻る前に少し休憩しましょうかぁ」
 セバスの指示した場所に籠を置くと、ハナが休憩を提案するとそれに一夏は元気いっぱいに頷いた。
 水分補給としてハナがポーションを一気し、流石に一気はしないが一夏もポーションを飲み始める。
 安心したように深い溜息をついたハナは、ちらりと少し離れた場所にある籠に目を向けた。
(こっちが籠4つ分のカカオの実、あっちは1つですかぁ)
 こちらが優勢なのを確認したハナは飲み終わった一夏に声をかけるとカカオ林へと歩を進めた。
「ぜはーっ……ぜはーっ……」
 そしてそれと入れ替わるようにカカオ林から肩で息をする使用人が現れて離れた場所に籠を置く。
「少し休みますか?」
「い、いえっ」
 セバスの声かけに使用人はすぐに首を横に振った。
「結構」
 それを見てセバスは笑顔で頷き、空の籠を持ってカカオ林へと戻る使用人を見送る。
「ふーむ。今回の依頼で向かうべき方向性が見えればと思ったのですが……いやはや、人を育てるというのは難しいものですな」
 セバスの言葉は風に乗り、木の葉の囀りの中に消えていった。


 かん高い笛の音がカカオ林に響き渡り、収穫していた面々はセバスの下へと戻る。
 レイアたちは涼しい顔をしている反面、カルチオーネたちは滝のように汗を掻いている。
 途中でカルチオーネが何度も作戦を変え、最後は取りやすい部分の収穫に専念したからだ。
 レイアたちは1本ずつ丁寧に全ての実を取りきってから移動していたので取りやすい場所には残っておらず……結果。
「お坊ちゃまの負けでございます」
「ぬ、ぬぐぐっ」
「まぁ当然だな」
「はい……」
 当然カルチオーネの敗北であり、レイアもサクラも納得の結果だ。
 セバスから隠されていた今回の目的を知らされ、カルチオーネは唇を噛んで俯く。
 そこに追い討ちをかけるようにハナが口を開いた。
「貴族なら婚約者さんが居るのではぁ? その方差し置いて遊んじゃ駄目ですぅ」
「ぐっ」
「そうです!」
 一夏も声を上げ、用意しておいたチョコレートをカルチオーネへと差し出す。
「アンチ・バレンタインデイ・ユニオンなんてやめましょう? ここのカカオで作られたチョコはこんなに美味しくて、皆を幸せにしてくれる味ですよ!」
「ぐはぁっ!」
 一夏のチョコレートのプレゼントが決定打となり、カルチオーネは地面に倒れ伏した。
 AVU総帥カルチオーネ・ル・レヴァン、カカオ林にて散る。
「全員、整列しなさい」
 倒れた次期当主をそのままにセバスの号令で使用人たちは横一列に並ぶ。
「では、ハンターの皆様。我々のわがままにお付き合いくださりありがとうございました」
「ありがとうございました」
 次期当主の独断で始まった勝負は、使用人たちの一糸乱れぬ一礼によって終わりを告げた。

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    サクラ・エルフリードka2598
  • ヒーローを目指す炎娘
    百鬼 一夏ka7308

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参加者一覧

  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • ヒーローを目指す炎娘
    百鬼 一夏(ka7308
    鬼|17才|女性|格闘士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/02/10 09:13:01
アイコン ちょこれーと戦争♪
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2019/02/11 01:15:26