奴の名は魔法少女 その恋を祝福編

マスター:瀬川綱彦

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~2人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2015/01/12 22:00
完成日
2015/01/15 22:56

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●奴の名は魔法少女
「ううん、どうしよう、大丈夫かな……」
「そう心配するなって、きっと上手く行くさ。これまでだって仲良くやれてたじゃないか」
 陽も落ち、辺りに暗く夜の帳が落ちた頃、公園のベンチに座った二人組の青年が何事かを話し合っていた。
 一方は人の良さそうな、悪く言えば弱気そうな青年である。線の細い彼は、隣にいるもうひとりに何事かを打ち明けている様子だった。
 相談を受けている青年の方は、不安そうな相談相手を必死に勇気づけようとしていた。
「お前なら上手く行くさ、ショーン。告白のためにわざわざ指輪まで買ったんだろ?」
 ショーンと呼ばれた青年は懐から小箱を取り出す。そこの中には指輪が収められていた。近いうちに彼は、長いこと交際をしていた相手に結婚を申し出ようとしていたのだ。どのように切り出すかも考えて意気揚々と指輪は買ったは良いものの、いざ言い出そうという場面で彼は尻込みしてしまったのである。
「そうだけど、これだけで本当に大丈夫か不安なんだ」
「かといって、もうお前が勇気を出す以外に出来ることなんてないぞ。あとはせいぜい神頼みくらいだ」
「勇気か……」
 指輪の入った小箱を掌で包みながら、ぽつりとショーンはつぶやく。
「あのお守りがあったら、もしかしたら――」

「その悩み、ちょーーーと待ったあああああ――ッ!!!」

 瞬間、鋭い声が闇夜を切り裂いた。
 はっ、とふたりの青年が頭を上げる。その視線がむかう先は、あたりでひときわ高い木の上、月をバックにたつ少女。
 二条に結われた桃色の髪が尾を引いて、白いリボンが風に揺れる。花のように開いたスカートはためいて、チェーンソーが月明かりにきらめいた。
 その姿はまごうことなき魔法少女。
「恋のお悩み、この魔法少女マジカル☆エリカがすぱっと解決してあげちゃうわ!」
「え、だれ……」
 だが悲しいかな、青年ふたりの目に映るのは、まごうことなき不審者である。
 そんな冷たい視線も、旗持・エリカ(kz0068)は気にしない。何故なら彼女は魔法少女、最初は理解を得られないのがお約束だからだ。
「待っててね、その恋、このマジカル☆エリカがしっかり成就させてあげる!」
 ――そうして、この日も彼女は地道な営業活動で依頼を手に入れてくるのであった。

●その恋をかなえろ
「えっほー☆ エリカだよ! そういうわけでみんなには彼を勇気づけるためのお守りを手に入れてもらいます!」
 ハンターオフィスのカウンターでポーズを決めてそう言い放ったのは、その場に集まった者たちと同じくハンターの旗持・エリカだった。
 依頼の内容を説明しているエリカの姿に、ハンターたちの反応は様々である。ただ全体的な雰囲気の総括を述べるなら、なんとも形容しがたい微妙な空気がただよっている。いかにも不自然に作り物めいた、俗っぽくリアルブルーの世界の言葉でいうならコスプレのような服装は、どう見ても周りからは浮いている。
 しかしそんな視線にエリカは気づかない。何故なら魔法少女だからだ。感覚が麻痺しているだけかもしれないが。
「というわけで、みんなには依頼人の彼を勇気づけるためのお守りを取ってきてもらいます。ある渓谷にあるクローバーね」
「……なるほど、いかにも人が好みそうなものですね」
 エリカの説明に口を挟んだのは、このオフィスにいた受付嬢だった。エリカの異様さで目立っていなかった無愛想な受付嬢は、眼鏡を中指で押し上げる。
「そうだよ、そこにたくさんクローバーがあるからみんなに採ってきてもらいたいの」
「四つ葉のクローバーというやつですね」
「いや、五つ葉」
 五つ葉。
「葉もたくさんあった方がいいよね!」
 それはそれでどうかと思う。
 と、誰かにツッコミをいれられる前にエリカは手早く資料を取り出した。どうやら彼女がまとめたものであるらしい。
「えーと、これから行ってもらう渓谷は日差しが強い場所で、そこにあるクローバーは突然変異したもので五つ葉なんだって。たくさん生えてるから、それを採ってきてほしいの。ただ、そこはワイバーンの巣になってて、倒さないと手に入れられないんだ」
 よく見ると、彼女の衣装は所々が破れて、腕にも生傷が残っていた。どうやら自分で調査におもむいて返り討ちにあったようだった。足をつかっての探索をおこなっていたのは、けなげというかイメージにあわないというべきか。
「そのワイバーンは渓谷付近を通る旅行者を襲うってことで話にあがってたものだから、遠慮無く倒しちゃってね!」
 こほん、と咳払いをしてエリカの言葉を眼鏡の受付嬢が継いだ。
「事の導入はともかく、相手は近隣への被害が報告されている幻獣です。気を付けて退治してきてください」
「あ、依頼人のショーンさんからはばっちり報酬も受け取れるように話はつけてあるから、安心して行ってきてね!」
 はあ、と受付嬢はため息をひとつ。
「……それでは、よろしくお願いします」

リプレイ本文

「はーいっ、今日はみんな集まってくれてありがとー! それじゃあ、みんなで恋のお悩みをバッチリかなえてあげちゃいましょー!」
 依頼のために集まったハンターたちを見て、旗持・エリカ(kz0068)が笑顔でそう腕を振り上げた。
 チェーンソーを持った手で。
「魔法少女って、チェーンソーなんて持ってたっけ?」
 その手に握られた明かな凶器を見て、時音 ざくろ(ka1250)が遠い目になった。黒光りする無骨な鋼鉄と乱杭歯のような刃は、どう見てもリアルブルーで見知った魔法少女とはイメージが違う。
「エリカが持っているということは、つまり魔法少女の武器ということで同義だよ! ほら、ちゃんとファンシーなマークだって付いてるし☆」
 人それを焼け石に水という。
「むむっ、こんなライバルがいただなんて……私、ちっとも知りませんでした」
 青峰 らずり(ka3616)はそんなことは気にせずただ自分と同じ魔法少女がいたことに唸っていた。魔法少女を志す彼女は、しかしクリムゾンウェスト出身ゆえにその違和感には気づかなかった。
「ふつう、こんな風に剣とか杖で、機導天使マジカル☆ざくろ、ここに光臨! とかやるんじゃ……て、ざくろが好きとかそういうわけじゃなくて!」
「はっ、ここにもライバルが!?」
 剣を構えてポーズを決めたざくろにらずりが目を見開く。対抗心を混じりの視線にざくろは慌てるが、否定するよりも先に感心したテトラ・ティーニストラ(ka3565)が声を上げていた。
「魔法少女って、あのリアルブルーの英雄的存在!? 何度も世界を救ったって伝記、あたし持ってます! いやーっ、そんな魔法少女が何人もいるなんて、この依頼であたしも魔法少女の仲間入り……!?」
「ふむ、年端のいかぬ魔術師をそう呼ぶのならば、わしも魔法少女じゃな」
 と、ユニ=アウロラ(ka3329)が口にすると、シエラ・R・スパーダ(ka3139)もまたつぶやく。
「そうなると、私は魔女といったところかしら? ……それは嫌な響きね」
「はいはい、お話はそこまで。お仕事のことも忘れちゃダメよ」
 そこでセリス・アルマーズ(ka1079)が手を打ってハンターたちの注目を集めた。
「五つ葉のクローバーの採取と、ワイバーンの撃破ですか。四つ葉のクローバーなら聞いたことはありますが」
 水雲 エルザ(ka1831)は物珍しそうな様子であった。
「うんうん、エティもはじめて聞いたよ! エティも見てみたいなあ」
 まだ見ぬクローバーの姿を想像して、エティ・メルヴィル(ka3732)は目を輝かせていた。
 ただ、シエラは半信半疑といった様子である。
「事実なら驚きだけれど、五つ葉のクローバーなんて本当にここにあるというの?」
「もちろん、それはバッチリと! ……エリカが採ろうとしたら尻尾ではたき落とされちゃったけど。崖から」
 生きてたことに驚きである。
「さ、そうとなればワイバーンをやっつけて、五つ葉のクローバーを手に入れちゃいましょうよ!」
 話が逸れたのでほっと胸をなで下ろして、ざくろもまたうなずいた。
「それにクローバーを手に入れて、恋の力にもなってあげたいですし」
「そんなの当たって砕けろの精神で十分じゃん。この依頼人の男もさー、勇気出なくてジンクス頼りなんてなっさけないよ」
 テトラの言葉に何故かエリカの目が泳いだが、咳払いをひとつすると引きつった笑顔をつくった。
「そ、それじゃあ、みんな頑張ってきてねー!」
 そうして、一行はワイバーン退治とクローバーの採取に赴くのであった。

●ワイバーンもクローバーもあるんだよ
 エリカに教えられた道を通り、ハンターたちはワイバーンがいるという渓谷地帯に足を伸ばしていた。
 森林の先を行くと、木々を抜けた先の高台に出る。そこに件のワイバーンは身を横たえていた。
「お、いたいた。呑気にひなたぼっこしてるわ」
 セリスがワイバーンの姿を確認しつつ、ここまで牽いてきた荷台を手放した。ハンターオフィスから借りてきたもので、荷物くらいは載せられるだろうという判断だ。
「ワイバーン……飛竜ですか。竜殺し、一度くらい体験してみたかったところです」
 ワイバーンの姿に興味津々といった様子のエルザはリアルブルーの出身者だ。彼女は竜の一種を前にして楽しげな様子である。
「うむうむ、ワイバーン退治、なかなか楽しませてくれそうじゃ。此度はクローバーに魔法少女とやらのおまけつき、まったく興味深いことじゃな」
 その隣でユニも同意を示すように頷いた。幼い外観ながら言葉ほどには浮き足立っているようには見えない。見た目とは裏腹に、その外見年齢の何倍もの経験を積んでいるような雰囲気だった。
「でも、このまま戦ったら、クローバーが本当に何もなくなっちゃいそうだね」
 エティがワイバーンの躯の下にしげる緑を指さす。その体躯の下には、いくつものクローバーが群生しているのが見えた。
「まずはあそこから引き離すとしましょうか」
 杖を手にしているシエラの言葉にハンターたちは頷いて、八人は各々の行動に取りかかった。

 ワイバーンをクローバーの下から引き離そうと動いたのはざくろ、テトラ、ユニ、エルザの四人だった。
 四人は全員の攻撃の射程にワイバーンが収まるギリギリまで接近すると、お互い目配せをして武器を構える。
 テトラが魔導銃を構えて、ワイバーンに狙いを定め始めた。
「こんな気持ちの良いお日様の日に寝てるのが悪いんだからね……っと」
 彼女は静かに覚醒し、目が碧色にかがやいた。同じ光をまとったマフラーがふわりと浮き上がる。
 ワイバーンも、もっと接近されれば、或いは風上にハンターたちがいれば気配を感じ取っただろう。だが、ハンターたちは風下にいた。風向きが変わるまで注意していたエルザの判断で、ワイバーンは無防備な躯を晒していた。
 一斉に攻撃は放たれ、無数の攻撃がワイバーンの躯を撃ち抜いた。
 ――オオオオォン!!!
 咆吼が空気を震わせる。静けさを切り裂く大音声であった。
 日光浴を邪魔されて怒り心頭といった様子で、ワイバーンは長い首をもたげて四人をにらみ付けた。
 喉を鳴らす相手に、ざくろは二の矢をつがえる。
「さあ、お前の相手はざくろだ! マジカル☆アロー! ……なんてね!」
 矢を放って相手の注意を惹く。完全にワイバーンの注意は遠方より自分に牙を剥く人間四人に集められていた。
 ワイバーンが吠えながら翼を開き、突風が高台を吹き抜けた。クローバーや雑草が風に乗って飛び散り、その勢いでワイバーンは宙に飛び上がっていた。
 陽を背負って空に君臨したワイバーンは、細く鋭い瞳孔で地を睥睨する。その威圧感は、まがりなりにも竜の重圧。
「平和で青い空を、我が物顔で大暴れしようとするの……ムカつくんだよね!」
 空中のワイバーンに向けて魔導銃の銃爪をひきながら、テトラは後退を始める。彼女にとっては気に入らない相手だったが、さすがに四人では分が悪い相手だ。このまま後方に待機した味方と合流し、叩く。これがハンターたちの作戦だった。
 テトラの動きは素早い。疾影士としての俊敏さは空を飛ぶワイバーンとほぼ同等。しかし、他の三人は合流するよりはやくに追いつかれる――。
 襲いかかる飛び道具の雨、そこへワイバーンは飛び込んでいった。
 空を引き裂き、鱗で矢を弾き飛ばして落下するワイバーンは一箇の砲弾。その爪牙が一歩出遅れていたエルザに振り抜かれた。
「こちらですか……!」
 覚醒し狐の耳や尾をはやしたエルザは、とっさに日本刀を引き抜いた。
 黄色い尾を引きながら躯ごと刀を振るい、迫る巨体の爪を受け止める。巨躯の一撃にエルザの躯がみしりと音を立て、足元で地面がはじけ土塊が巻き上がった。
 止めた――のは一瞬。ワイバーンが躯をひねり、人の躯ほどはあろうかという太さの尾をエルザの躯に叩きつけた。
 圧倒的質量の激突、エルザの躯がピンボールのように吹き飛んだ。
 だが、すぐさま宙で躯を反転、地面を靴底で削りながら着地。
「みなさん、こちらが盾になります。いまのうちに!」
 エルザの躯に霊の力が駆け巡る。躯がより打たれ強くなるのを感じる。盾として攻撃と引き受けようとしていた自分にとってこれは好都合だ。
「ならば援護はこちらに任せるのじゃ」
 ユニが杖を突き出しマテリアルの矢でワイバーンの頭を撃ち抜く。もうもうと煙る爆風をワイバーンは頭を振って払うと、また大きく吠えた。
 ビリビリと震える空気に、後方で待機していたらずりが遠い目になっていた。
「……いやー、こういう敵をバッタバッタと倒さなきゃいけないなんて、やっぱり魔法少女って大変なんですね」
「まあ、テトラも世界を救った英雄、なんて言っていたから、そうなんでしょうね」
 と、シエラが相槌を打つ。残念ながら後方待機の四人に魔法少女の知識はない。
「くっ、こうなったら早く私もバンバンと敵を打ち落とせる魔法を覚えて、立派な魔法少女にならなければ……!」
 よりいっそう使命感を固め、らずりはユナイテッド・ドライブ・ソードの柄を握りしめる。それもまた明かにマジカルの欠片もない凶器だった。
「はいはい、それじゃあ決意も新たにしたところで行くわよ!」
 自身の胸に手を当ててプロテクションをかけると、セリスはサーベルと盾を手にして一歩前に踏み出した。

「さあ、ここからが本番ですよ!」
 ハンターたちが合流し、エルザが号令とばかりに声をあげた。
 エルザはセリスのヒールを受けながらもじりじりと後退し、それと入れ違いにセリスが前に飛び出た。
「お次はこっちよ!」
 盾でドラゴンの爪を受け止める。体重の乗った重い一撃もセリスの防御を突き崩すことはかなわない。
 当初は激昂のままに暴れていたワイバーンも、ハンターが集まったここに至ってようやく危機を感じ取っていた。竜といえどもその知能は獣と変わらぬ身であった。
 危機に陥ったとき、獣も人もすがるものがあれば即座にすがりつく。ワイバーンの場合、それは自身の圧倒的アドバンテージ――即ち、空であった。
 ワイバーンは翼を大きく広げる。ハンター全員がすっぽり覆い隠せるほどの巨大な翼で羽撃き、宙に舞おうとする。
「今じゃ! 翼を狙え、空に逃がすでない」
 ウィンドスラッシュがワイバーンの翼を切り裂く。翼も地上で折りたたんでいるときは面積も小さく、また外側には強固な鱗がびっしりとこびりついていて鎧のようだったが、翼を広げればそれはまさに的である。
「――風よ」
 シエラが呪を唱え、続く烈風がワイバーンの翼を切り裂き、巨体がよろめいた。
 さらにその隙に一気に距離をつめたのはエティだった。物陰から飛び出した少女は、アルケミストタクトを叩き込み――瞬間、雷撃がワイバーンの躯を貫いた。
「飛ばれると、大変だけど……そうでなければ、ただの巨大な敵。だよね」
「こっちももういっちょ!」
 ざくろの魔法剣も雷撃をまとってワイバーンに斬りつければ、度重なる攻撃にワイバーンは悲鳴をあげた。
「ここは私にお任せください!」
 体勢を崩したワイバーンに向けて深く踏み込んだらずりが武器を振りかぶる。
「マテリアルよ、正義を成すため我が刃とならん……二つに分かて!」
 刀身に貫かれるようにして幾重もの魔方陣が出現し、まばゆく光りを放ち。
「切断魔法――エアリアル・スラッシュ!」
 大上段に振り下ろした刃がワイバーンの片翼を裂いた。
 ――ィオオオオン!!!
 ワイバーンが悲鳴をあげる。切断とまではいかずとも、ワイバーンは痛みに苦しみ飛ぶことは既にかなわない。
「どうですか! あんな威勢がいいだけの魔法少女とは違うのです!」
「そのようなことを言うておる場合ではなかろうに。窮鼠猫を噛むとも言うであろう」
「鼠というほどの可愛げは感じないのだけれど」
「漫才より先にこっちを助けんかーい!」
 暴れ回って振り回される尾を受け止めながらセリスは声を張り上げた。
「ワイバーンさんには悪いけど、トドメの……ふぁいあーっ!」
 腕と尾を振り回して暴れるワイバーンに、エルザの魔導銃が火を噴いた。


「わーっ、クローバーたくさんあるね!」
 ワイバーンを倒し、巣であった場所に駆け寄ってエティが歓声を上げた。そこにはいくつものクローバーがあり、しかも目に見えて物珍しかった。半分以上は五つ葉のクローバーなのである。
「ふぅん、結構あるものね。誤魔化す手間がなくて何よりだけど……四つ葉はないのかしら?」
 幸運といえばやはり四つ葉である。シエラは四つ葉はないものかと調べ始める。
 その近くではテトラが五つ葉のクローバーを摘んでいた。
「ついでだし、あたしの分もひとつ、っと。やはっ、これも役得役得ぅ♪」
「ふむ、これもわしの日頃のおこないが良かったといううことか。要らんツッコミをせんかったからのう」
「くっ、エリカさんの探索魔法との精度の違いを見せるはずが……!」
「いいじゃないですか、のんびりクローバー摘みを楽しめるのですから」
 らずりに苦笑しつつ、エルザは地面に腰をおろして指先でクローバーを摘み取る。
「これだけあるなら、みんなの分とエリカの分を採っても大丈夫そうだね」
 ざくろもクローバーを摘み取る。これだけたくさんあるのも、戦闘にクローバーを巻き込まなかったお陰だろう。
「金目の物がない……私のモノも幻獣のモノも神のモノなのよー!」
 セリスは巣を見渡すも、クローバーくらいしか珍しいものは見当たらなかったのであった。
 

「わー! みんなありがとー! これだけたくさんあったらきっと大丈夫だよ!」
 オフィスにてクローバーを受け渡すと、エリカは満面の笑みだった。
「たくさんあったから、みんなとエリカの分も採ってきたんだ。はい、これからも頑張ってね、魔法少女さん」
 それとは別に、ざくろが笑顔を浮かべて五つ葉のクローバーをエリカに手渡した。
「わあ……ありがとう、大事にするね! それに、これで恋愛成就間違いなしだよ。はい、ショーンさん、約束のお守りだよ!」
 オフィスで待っていた依頼人に、エリカはお守り用のクローバーの束を渡した。
 しかし、依頼人の表情は困惑気味である。
「いや、僕はただエクラ教のお守りが欲しかっただけで……」
「えっ」
「……なんで固まっておるんじゃ、あの娘は」
 ぴしり、とエリカの笑顔が固まっていた。
「まさか聞いてなかったんですか!?」
 今はじめて知った、という顔のエリカにらずりも思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
「く、クローバーなら縁起も良いよねって思っただけで」
 聞かずに独走していたらしい。
「こ、告白が成功すれば、いいんだもーん!」
 ……気合が入りすぎるのも考え物である。

 余談だが、告白は無事成功したという。
 いくつものクローバーが敷き詰められた小箱で渡される指輪は、結構ロマンチックだったそうだ。

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MVP一覧


  • 水雲 エルザka1831

重体一覧

参加者一覧

  • 歪虚滅ぶべし
    セリス・アルマーズ(ka1079
    人間(紅)|20才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師

  • 水雲 エルザ(ka1831
    人間(蒼)|18才|女性|霊闘士

  • シエラ・R・スパーダ(ka3139
    エルフ|26才|女性|魔術師

  • ユニ=アウロラ(ka3329
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 飴玉お姉さん
    テトラ・ティーニストラ(ka3565
    エルフ|14才|女性|疾影士

  • 青峰 らずり(ka3616
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 笛の音が奏でるハーモニー
    エティ・メルヴィル(ka3732
    エルフ|12才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/09 22:28:44
アイコン そうだん!
セリス・アルマーズ(ka1079
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/01/12 11:43:42