ゲスト
(ka0000)
精霊の森の翼なき鷲獅子
マスター:真太郎

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/03/18 19:00
- 完成日
- 2019/03/24 12:31
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境の森の奥には精霊の宿る大樹がある。
しかし一人の堕落者の手によって大樹からマテリアルが奪われ、精霊は力の大半を失ってしまった。
負のマテリアルの影響の強い辺境で精霊からのマテリアル供給を失った森は死を意味しているに等しい。
精霊は残された僅かなマテリアルを使って新芽を生やし、人間に願った。
森のために手を貸して欲しいと。
精霊の大樹を再生させる手立ては、大昔に株分けした自身の分け木からマテリアルを譲って貰う事。
しかし問題もある。
マテリアルを分けた分け木は一時的にではあるが力が弱まってしまう事。
分け木はその木を植えた生き物の子孫が守っているだろうが、快くマテリアルを分けてもらえるかは分からない事だ。
少なくとも説明や説得は必要になるため、精霊は動物と念話ができる枝木を作った。
精霊の分け木に精霊は宿ってはいないが精霊の大樹と同じだけの力がある。
精霊の枝木は分け木に同調し、周囲の生き物同士が分け木を介して念話を行えるようにする物である。
それため分け木の周囲でしか効果はなく、枝木に込められたマテリアルが尽きれば効果も切れる。
効果時間はおよそ2時間。
その時間内で交渉する必要があった。
今回ハンター達が訪れた分け木の森にはリーリーとグリフォンの2種族が暮らしていた。
だが両者は分け木を中心して東西に分かれて反目し合っていた。
それは過去の出来事に由来している。
かつてこの森にはリーリーだけが暮らしていた。
しかしある時、森が歪虚の大群に襲われた。
リーリー達は奮戦したが敗北し、森を離れざるを得なくなったのである。
数年後、リーリー達は他の土地に住むリーリーに強力を求め、森を奪還しに戻ってきた。
しかしその時にはグリフォンの一族が既に歪虚を駆逐してそこに住み着いていた。
リーリー達は森を取り戻してくれたグリフォンに感謝し、元の暮らしを始めようとしたが、グリフォンは異を唱えた。
歪虚から取り戻した自分達こそが森に住む権利があると主張したのだ。
リーリーも元々は自分達の森なのだから住む権利はあると主張した。
食い違う主張から両者は対立する事となる。
互いに高い知性を有する幻獣であるため抗争には発展しなかったが、話し合いは平行線が続き、両者の関係は険悪になっていった。
両者はこれ以上の関係の悪化を防ぐため、森で最も大きな木を中心に左右に分かれて暮らす事で一応の合意をした。
しかし巨体の幻獣が2種族も同じ森で暮せば食い扶持は当然減ってしまう。
そのため時が経つ毎に両者の関係は徐々に悪くなっていた。
しかも両者はもう1つ問題を抱えてもいた。
それは、リーリーが歪虚から逃れる時に残してきた卵の事である。
卵はグリフォンが森から歪虚を駆逐した際に保護され、孵化していた。
そのリーリーの雛はグリフォン達によって育てられた。
他のグリフォンの雛と同じように育てられたリーリーの雛は自身をグリフォンだと思い、育っていった。
しかし他の雛達が成長して空を飛び始める中、彼だけは何時までたっても翼が伸びず、飛ぶ事ができなかった。
彼はその事を不思議に思い、大人達に相談した。
『お前は飛ぶ事のできぬ身として生まれてきたのだよ。だから飛べずとも気にする事はない。どんな姿であろうともワシらの家族であり仲間だ』
大人は彼にそう教えて聞かせた。
彼は皆と同じように飛べない事を寂しく思いながらも、自身が彼らの仲間である事を一切疑う事なく成長していった。
だが彼は出会ってしまった。
自分と同じように飛べず、自身と同じような身姿のリーリー達と。
そして当然の疑念を抱いた。
自分はグリフォンではなくリーリーなのではないかと。
だから大人達に尋ねた。
『そうだ。お前はリーリーだ』
大人達は正直に全てを話してくれた。
『だが生まれはどうであれ、お前がワシらの家族である事に変わりはない。お前はワシらの仲間だ。何も変わりはしない』
彼は真実を知ったが、彼自身のグリフォンの仲間であリ家族であるという気持ちは変わらなかった。
しかし自分がグリフォンとは別の生き物だという事を意識するようにはなった。
飛べないので皆と共に狩りにはいけない。
狩りをする時は何時も1人だ。
仲間のために子孫も残せない。
『お前はそれでいい。気にする事はない』
大人達はそう言ってくれる。
しかし自分は仲間のために何もできる事がない。
彼は役立たずな自分がグリフォンの群れにいる事に後ろめたさを感じるようになった。
そんな折、リーリーの側から彼を自分達の群れに引き入れたいという申し出があった。
リーリーの群れで生まれた卵から孵化したのだから、当然群れの一員だという認識だったからだ。
しかしグリフォン側は拒否し、自分達の仲間で家族だと主張した。
嬉しかった。
それと同時に心苦しかった。
彼らの愛に何も報いる事のできない自身が辛かった。
グリフォン達はそれでもいいと言ってくれるだろう。
しかし彼自身はグリフォン達の愛に甘えるだけの自身ではいたくなかった。
だから『考えさせて欲しい』と、リーリーからの申し出を保留にしてしまった。
もしかしたらリーリーと共に暮らす方が皆が幸せになれるんじゃないか?
と、心の中で迷いが生じてしまったからだ。
その返事にグリフォン達は驚いた。
リーリー達は『色好い返事を待っている』と嬉しそうに帰っていった。
グリフォン達は驚いたものの、彼を攻めはしなかった。
『自分が良いと思う答えを出しなさい』
そう言ってくれた。
ハンター達が森を訪れたのは、ちょうどそんな時であった。
精霊の分け木を使い、グリフォンの長の事情を話してマテリアルを分けてもらえないかとお願いする。
長からの返事はこうだった。
『今この森にはグリフォンとリーリーの2種族が住んでいてちょっとした食糧難になっている。マテリアルを分けて森が弱ってしまうのは困る。だが別の問題も抱えておってな。その手助けをしてくれるなら考えてもいい』
その手助けとは、リーリーの息子の進退についての事だった。
『息子の悩みを聞いてやってくれ。多くの他種族と暮らすお前達ならワシらとは違う視点での助言ができるじゃろ。もちろん決断するのは息子自身じゃがな』
次にリーリー長の元へ行って話をした。
『森が弱ってしまうのは困る……が、そうだな。1つ相談に乗ってくれならマテリアルを分ける件、考えてもいい。この森は我らの故郷だ。だが今ではグリフォン達の森でもある。そのため互いに対立した。事は食糧問題だ。簡単に解決する事ではなく、いずれ抗争に発展するとも限らない。なぁ人間よ。正しいのは我らと彼ら、どちらだと思う? どちらもはなしだ。ここに住めるのは片方だけなのだから。そして我らは今後どうすればいいか、お前達の意見を聞かせて欲しい』
しかし一人の堕落者の手によって大樹からマテリアルが奪われ、精霊は力の大半を失ってしまった。
負のマテリアルの影響の強い辺境で精霊からのマテリアル供給を失った森は死を意味しているに等しい。
精霊は残された僅かなマテリアルを使って新芽を生やし、人間に願った。
森のために手を貸して欲しいと。
精霊の大樹を再生させる手立ては、大昔に株分けした自身の分け木からマテリアルを譲って貰う事。
しかし問題もある。
マテリアルを分けた分け木は一時的にではあるが力が弱まってしまう事。
分け木はその木を植えた生き物の子孫が守っているだろうが、快くマテリアルを分けてもらえるかは分からない事だ。
少なくとも説明や説得は必要になるため、精霊は動物と念話ができる枝木を作った。
精霊の分け木に精霊は宿ってはいないが精霊の大樹と同じだけの力がある。
精霊の枝木は分け木に同調し、周囲の生き物同士が分け木を介して念話を行えるようにする物である。
それため分け木の周囲でしか効果はなく、枝木に込められたマテリアルが尽きれば効果も切れる。
効果時間はおよそ2時間。
その時間内で交渉する必要があった。
今回ハンター達が訪れた分け木の森にはリーリーとグリフォンの2種族が暮らしていた。
だが両者は分け木を中心して東西に分かれて反目し合っていた。
それは過去の出来事に由来している。
かつてこの森にはリーリーだけが暮らしていた。
しかしある時、森が歪虚の大群に襲われた。
リーリー達は奮戦したが敗北し、森を離れざるを得なくなったのである。
数年後、リーリー達は他の土地に住むリーリーに強力を求め、森を奪還しに戻ってきた。
しかしその時にはグリフォンの一族が既に歪虚を駆逐してそこに住み着いていた。
リーリー達は森を取り戻してくれたグリフォンに感謝し、元の暮らしを始めようとしたが、グリフォンは異を唱えた。
歪虚から取り戻した自分達こそが森に住む権利があると主張したのだ。
リーリーも元々は自分達の森なのだから住む権利はあると主張した。
食い違う主張から両者は対立する事となる。
互いに高い知性を有する幻獣であるため抗争には発展しなかったが、話し合いは平行線が続き、両者の関係は険悪になっていった。
両者はこれ以上の関係の悪化を防ぐため、森で最も大きな木を中心に左右に分かれて暮らす事で一応の合意をした。
しかし巨体の幻獣が2種族も同じ森で暮せば食い扶持は当然減ってしまう。
そのため時が経つ毎に両者の関係は徐々に悪くなっていた。
しかも両者はもう1つ問題を抱えてもいた。
それは、リーリーが歪虚から逃れる時に残してきた卵の事である。
卵はグリフォンが森から歪虚を駆逐した際に保護され、孵化していた。
そのリーリーの雛はグリフォン達によって育てられた。
他のグリフォンの雛と同じように育てられたリーリーの雛は自身をグリフォンだと思い、育っていった。
しかし他の雛達が成長して空を飛び始める中、彼だけは何時までたっても翼が伸びず、飛ぶ事ができなかった。
彼はその事を不思議に思い、大人達に相談した。
『お前は飛ぶ事のできぬ身として生まれてきたのだよ。だから飛べずとも気にする事はない。どんな姿であろうともワシらの家族であり仲間だ』
大人は彼にそう教えて聞かせた。
彼は皆と同じように飛べない事を寂しく思いながらも、自身が彼らの仲間である事を一切疑う事なく成長していった。
だが彼は出会ってしまった。
自分と同じように飛べず、自身と同じような身姿のリーリー達と。
そして当然の疑念を抱いた。
自分はグリフォンではなくリーリーなのではないかと。
だから大人達に尋ねた。
『そうだ。お前はリーリーだ』
大人達は正直に全てを話してくれた。
『だが生まれはどうであれ、お前がワシらの家族である事に変わりはない。お前はワシらの仲間だ。何も変わりはしない』
彼は真実を知ったが、彼自身のグリフォンの仲間であリ家族であるという気持ちは変わらなかった。
しかし自分がグリフォンとは別の生き物だという事を意識するようにはなった。
飛べないので皆と共に狩りにはいけない。
狩りをする時は何時も1人だ。
仲間のために子孫も残せない。
『お前はそれでいい。気にする事はない』
大人達はそう言ってくれる。
しかし自分は仲間のために何もできる事がない。
彼は役立たずな自分がグリフォンの群れにいる事に後ろめたさを感じるようになった。
そんな折、リーリーの側から彼を自分達の群れに引き入れたいという申し出があった。
リーリーの群れで生まれた卵から孵化したのだから、当然群れの一員だという認識だったからだ。
しかしグリフォン側は拒否し、自分達の仲間で家族だと主張した。
嬉しかった。
それと同時に心苦しかった。
彼らの愛に何も報いる事のできない自身が辛かった。
グリフォン達はそれでもいいと言ってくれるだろう。
しかし彼自身はグリフォン達の愛に甘えるだけの自身ではいたくなかった。
だから『考えさせて欲しい』と、リーリーからの申し出を保留にしてしまった。
もしかしたらリーリーと共に暮らす方が皆が幸せになれるんじゃないか?
と、心の中で迷いが生じてしまったからだ。
その返事にグリフォン達は驚いた。
リーリー達は『色好い返事を待っている』と嬉しそうに帰っていった。
グリフォン達は驚いたものの、彼を攻めはしなかった。
『自分が良いと思う答えを出しなさい』
そう言ってくれた。
ハンター達が森を訪れたのは、ちょうどそんな時であった。
精霊の分け木を使い、グリフォンの長の事情を話してマテリアルを分けてもらえないかとお願いする。
長からの返事はこうだった。
『今この森にはグリフォンとリーリーの2種族が住んでいてちょっとした食糧難になっている。マテリアルを分けて森が弱ってしまうのは困る。だが別の問題も抱えておってな。その手助けをしてくれるなら考えてもいい』
その手助けとは、リーリーの息子の進退についての事だった。
『息子の悩みを聞いてやってくれ。多くの他種族と暮らすお前達ならワシらとは違う視点での助言ができるじゃろ。もちろん決断するのは息子自身じゃがな』
次にリーリー長の元へ行って話をした。
『森が弱ってしまうのは困る……が、そうだな。1つ相談に乗ってくれならマテリアルを分ける件、考えてもいい。この森は我らの故郷だ。だが今ではグリフォン達の森でもある。そのため互いに対立した。事は食糧問題だ。簡単に解決する事ではなく、いずれ抗争に発展するとも限らない。なぁ人間よ。正しいのは我らと彼ら、どちらだと思う? どちらもはなしだ。ここに住めるのは片方だけなのだから。そして我らは今後どうすればいいか、お前達の意見を聞かせて欲しい』
リプレイ本文
グリフォンとリーリー両方の長から頼み事をされたハンター達。
「まずはギィさんの悩み相談から行いませんか。それも私達とギィさんだけで」
ソナ(ka1352)の提案により、ハンター達とギィだけの会談の場が持たれた。
(俺様ちゃん、なんでこんな依頼受けちまったのかにゃー)
そこまでの道すがら、荒事のない依頼には興味がないゾファル・G・初火(ka4407)はつまらなそうに歩きながら考えていた。
(正直、グリフォンとリーリーの縄張り争いなんか勝手にやってろって感じじゃん。マテリアルを分けてもらうって依頼じゃなきゃ絶対に関わり合いを持ちたくない話だぜ)
ゾファルはかつて、精霊の大樹と守り人のケイトを守るため戦った事はある。
(因縁か何か感じての事なのかにゃー……)
『初めまして人間の皆さん。ボク人間に会うのは初めてなので嬉しいです。あ! その耳、その角、エルフや鬼もいるんだね。それにみんな聞いてた通り身体に布を纏ってる。どうしてそんなの着けてるの?』
ギィは好奇心が強いのか、興味津々な様子で色々と尋ねてくる。
「それはですね……」
本当は質問には全て答えてあげたいが、精霊の枝木の効果時間は2時間しかなく、後にはリーリーの長との会談も控えている。
なので応答は適当なところで切り上げ、ソナは本題に入った。
「ギィさんの身の上は長から拝聴しています。そして何か悩みを抱えているようだと伺いました。よければ私達にその悩みを話していただけませんか?」
『……はい、そうですね。聞いてくれますか』
ギィは自分は飛べないのでグリフォンの仲間と一緒に狩りもできず、種族が違うため子孫も残せず、群れに何の貢献もできない事。
そんな自分はリーリーの群れで暮らした方が皆が幸せになるんじゃないかと考えた事。
本当はグリフォンの群れにいたいが、自分が仲間のために何ができるか思いつけないで悩んでいる事などを話してくれた。
ギィの悩みを聞き終えた保・はじめ(ka5800)は、ギィの帰属先を巡る問題が新たな火種となり得るので、いっその事両者の架け橋となる事を目指すという路線で助言する事にした。
「群れの中で自分にしかできない事、自分だからできる事を見つけて貢献するのが良いと思いますよ」
『ボクもそう思いますけど、具体的に自分に何ができるのかが分からないんです。それを教えて下さい』
「リーリーに何ができるかを具体的に知っているのはリーリー自身です。なのでここはリーリーの群れの者達に学ぶのが一番でしょう」
『う~ん……。でもリーリー達だってグリフォンと一緒に狩りをした事はないよ。そんなリーリーからグリフォンに貢献できる狩りの仕方や技術を本当に学べるかな?』
ギィが知りたいのは自分の力をグリフォンの群れに活かす方法なので、『リーリーから学べ』というアドバイスだけでは不満だし不安だった。
「ギィさんの身体はリーリーです。狩りの仕方は自己流よりも、リーリーとしての知識や技能を身につけた方がグリフォンとの狩りへの貢献度も上がるかと。そうして成長してグリフォンの群れに貢献したい等を皆さんに素直に伝えてはどうでしょう」
『……うん、知識と技術を身につけるのは確かに無駄じゃないね』
ソナがフォローを入れるとギィも一応は納得してくれた。
しかしこれだけではまだグリフォンの群れに貢献できるようになれる確証や自信を持ててはいない。
「子孫を残す話はぁ、ギィさんの本能によりますねぇ」
星野 ハナ(ka5852)は本人がどうしたいかをかなり突っ込んで聞く事にした。
『本能?』
「はい。ギィさんの家族もギィさんが1番幸せになることを望んでいると思いますからぁ。ギィさんがぁ、自分の子を産み育てたいって思うならぁ、やっぱり番う相手が必要じゃないですかぁ。リーリーの奥さんと子供さんにぃ、いかに自分が幸せに育てられたかを語るだけでぇ、今のご家族は充分幸せになれると思いますぅ」
『自分が番いたいかどうかまでボクは考えた事はないよ。子孫を作る事は群れを大きくするという事で、ボクはその方面で貢献する事ができないって話です』
「それならぁ、今のご家族の下、皆が狩りに行ってる間に残った子供達の面倒を見たりぃ、巣穴の繕いを手伝ったり子供達に自分がいかに幸せかを伝えたりでぇ、充分ご家族を幸せにできると思うんですぅ」
『なるほどぉ……それは自分では思いつきませんでした。それなら確かにボクでも貢献できます。ありがとうございます!』
ギィはいたく感心した様子でハナに礼を言った。
「ところであんた、グリフォンの若鳥たちの間で居場所はあるのか?」
それまでやり取りを見ていただけだったゾファルが不意に気になって尋ねた。
「もし仲間として認められてないんなら親世代が交代することになった時に結局は出ていかざるを得ないじゃん。そこんとこどうなのさ?」
『同世代の子とは仲がいいですよ。一緒に狩り行く事はできませんけど兄弟みたいに育ちましたから、ボクに翼がなかったり毛並みが違う事も気にする子はいません』
「じゃあ逆に、今リーリーについていけばしばらくは裏切り者扱いされるかもしれないが……まぁ、真摯に付き合っていけばいずれは受け入れてもらえるかもしれないか。あんた次第だな」
『え~と……すみません。なんでリーリーについて行くと裏切り者扱いされるのでしょう?』
ギィが不可解そうな声音が尋ねてくる。
「だって今までグリフォンとして生きてたんじゃん。それなのに今日からリーリーとして生きますから仲間にしてーなんて、すぐに受けいられるないどころか裏切り者扱いされてもおかしくない話じゃん」
『受け入れられない……ですか? え~と……何故でしょう? 理由が分かりません』
リーリーとグリフォンは食料問題でギスギスしてはいたが敵対はしていない。
裏切るも何もないのだ。
仮に敵対していたとしても、彼らは群れに加わりたいという者を拒みはしない。
仲間の数が増えればそれだけ群れが強くなるという事だからだ。
なので群れのために力を尽くせばそれだけで受け入れて貰えるのである。
「いや、そういうのがないなら別にいいんだ、気にすんな」
ゾファルの気がかりは杞憂に終わった。
『皆さん、これからリーリーの長の所へ行くんですよね。ボクも一緒に行っていいですか?』
「いいですよ。もし先程の件を言い出しづらいようなら私たちも一緒にお話してあげますね」
ソナは快諾するとギィと一緒にリーリーの長の元へ向かった。
リーリーの長はハンター達と共にギィも来た事に驚いた。
『一緒に来るとは思っていなかった。両者とも保留にしていた答えをしにきてくれたのかな?』
「はい。返事をしに来ました」
『ではまず人間達から聞かせてくれ。我らと彼ら、どちらが正しいと思う』
「私は……やはり『正しい』ことなどどこにもないと思うのです」
まずソナが答えた。
「より公平で、より思いやりがあり、より多くの生命に福を齎すか。何より、皆が納得できるか、折り合いをつけられるか。一時的ではなく、継続的に又は汎用性があるか。そういったことが何かを決めたり、実行するときに気に留めておくべき大切なことかなと思います」
『ふむ、そこまで言うのであれば、我らとグリフォンが共に幸福になり、公平で思いやりに満ちていて皆が納得した上で折り合いのつけられる解決策があるのだな。是非それを聞かせてくれ』
「棲家が十分なら、狩りの範囲を森の外へ広げるのはどうでしょう? リーリーとグリフォンが一緒に狩りをすれば効率も上がるかもです」
『今でも狩りの範囲はギリギリまで広げている。それ以上広げると他種族の縄張りを犯してしまうのだ。グリフォンと争わないため他種族と争うのでは本末転倒ではないか』
「では、各群れを2分割して以前の土地と両方に住むのはどうでしょうか?」
『その場合、どうやって元の土地に戻る者を選ぶのだ? 皆、今の裕福な土地に暮らしたがるのではないか? どうやって皆を納得させて折り合いをつければいい? その方法がなくば今度はリーリー同士で諍いが起こるやもしれぬぞ』
「それは……」
ソナが言葉に詰まる。
「それならリーリーとグリフォンの食べる物の内訳をお互いに確認して、重複しない物を融通し合えないでしょうか?」
保が代案を出す。
『我らもグリフォンも肉食だ。動物でも虫でも喰らえるものは何だろうと狩る。食い物を選り好みにしていてはこの身体は維持できんからな。グリフォンも恐らく同じであろう。最初に言ったで通り食糧問題は簡単に解決する事ではない。融通はできんだろうな』
「そうですか……」
『他にはないのか?』
「……」
ソナにも保にも他の案はなかった。
そもそも保は自然の摂理に則ると、歪虚を倒して縄張り争いを制したグリフォン陣営に権利があると考えていた。
しかしその理屈で行くと両陣営の直接対決で雌雄を決すべしという結論に至ってしまう可能性がある。
なので当面は現状を維持したまま活路を見出すのが妥当だと思っていたのだ。
『ないのであれば、先程のエルフの言葉は単に理想を語っただけか……』
長の声音には失望の響きがあった。
「それならハッキリ言ってやるよ! あんたらリーリーが間違っている」
それまでつまらなそうに両者の話を聞いていたゾファルが声を張り上げた。
「あんたらは自分の住処を守れなかった。全滅するまで戦うこともできたが、命の大事をとってここを放棄したんだから、素直に新天地を探せばよかったのさ。違うか?」
『確かに我らは一度ここを放棄した。だが新天地を目指すのではなく力を蓄えた後に取り戻しに来る、その行為を間違っていると思うか?』
「それは間違ってねーけど、それならなんであんたらはグリフォンとは戦争しなかったんだよ? 歪虚もグリフォンもリーリーの縄張りを荒らす敵じゃん。戦うことを放棄して話し合いで出て行ってもらおうなんて虫が良すぎだよ。歪虚を駆逐して実際に血を流したのはグリフォンなんだからここは彼らが勝ち取ったものさ」
『人間とは自分と対立するものは全て敵で、殺してしまっても良いと思っているのだか? 先のエルフとは随分と違うのだな』
リーリーの長は恐ろしい猛獣を見るような目でゾファルとハナで見た。
「人間の全てが過激思想者じゃないですよぉ。人間は個人個人で色々な考えを持っているんですぅ。誤解しないでくださいねぇ」
ハナが一応フォローをいれる。
『では、お前はどう思うのだ?』
「どちらか一方って言われて選べば最終的には抗争になって弱い方が追い出される展開になりますよぉ。奪還経緯考えて戦力差でグリフォンが上と分かってますよねぇ。それでもいいんですかぁ? 強い仲間にオフィスに出稼ぎに行って貰ってお互い適正数を調整するとかぁ、共存問題にして下さいぃ」
『オフィス、とは何だ?』
ハナはハンターズソサエティの仕組みを簡単に説明してあげた。
『ふむ……我らは人を知らずに暮らしてきた。いきなり人間の世界での暮らしに志願する者も順応できる者も少ないであろうな』
「あれもダメこれもイヤなんて言ってたら何も解決しませんよぉ」
『いいや。答えはもう出ている。その人間が答えをくれた』
リーリーの長が嘴でゾファルを指す。
「え? 俺様ちゃん?」
ゾファルは意外そうな顔で自分を指差した。
「まさかグリフォンと戦争する気ですか!?」
それは保が想定していた最も最悪のシナリオだ。
『ハハハッ、我々はそこまで愚かではないよ。しかし……間違っていたのはやはり我々なのだ。実際に血を流して歪虚より土地を取り戻したグリフォン、彼らが住むのが正しい。本当は我らもその事に気付いてはいたのだよ』
「それなら何故今までその決断をしなかったのですか?」
『それは気がかりが残っていたからだよ』
長はソナの疑問に答えながらギィを見た。
『かつて歪虚から土地を追わさた際、我々は卵を残して去る事になってしまった。持ち運ぶ事ができず仕方のない事だったとはいえ、その事はずっと心の傷となっていた。しかし故郷に戻ってくるとその卵の子は生き残っていてくれたのだ。我々はその奇跡に歓喜したよ。だがグリフォンはその子を手放さず、その子もグリフォンと共に生きる事を良しとしていた。なので我らはその子を遠くから見守る事としたのだ』
『そうだったんだ……』
初めて聞く真相に驚くギィに、長は優しい眼差しを向ける。
『しかし食糧難でグリフォンとの関係は悪くなってゆき、遠くから見守る事も難しくなってしまった。去るべきは我々の方だと分かってはいても、その子を2度も置き去りにする事はどうしてもできなかったのだ。それが決断を先延ばしにしていた理由だ』
長は改めてギィを見た。
『本当はこの事を君に伝える気はなかった。この事が君の想いや決意を惑わせるかもしれないと思ったからだ。だが……やはり伝えずにはいられなかった。すまない』
『いえ、聞けて良かったです』
『そうか、では改めて君の答えを聞かせて欲しい』
『ボクは……』
ギィは少し口ごもったがハッキリ答えた。
『グリフォンと共に生きます』
『……そうか』
長の声音は落胆に響きが滲んでいて重かった。
『ごめんなさい……』
『いいんだ。それが君の選んだ道なのならそれを尊重する。ただ、君はグリフォンの子かもしれないが我々リーリーの子でもある。それを忘れないでおいて欲しい』
『はい、決して忘れません』
「この森を去ってしまうのですか、それは何時?」
保は本音を言えば、精霊の大樹へ移住して欲かった。
今森の守り人をしているケイトはいずれリアルブルーに帰すつもりでいる。
そうなると新しい守り人が必要になるからだ。
しかし今それをしてしまうと、歪虚が狙う獲物が増える事になって、今以上に目を付けられる。
移住してもらうならもっと世情が安定してからの方がいいのだ。
『準備ができ次第すぐにでも』
「待って下さい、その前にギィさ――」
ソナがギィの頼みを口にしかけたが、ギィ自身がそれを止めた。
『お願いします。行く前にボクにリーリーの知識と技術を教えて下さい』
『もちろんいいとも。むしろ嬉しいぐらいだ。我々の全てを知っておいてくれ』
長は移住はギィが習熟するまで伸ばす事に決めた。
こうして精霊の分け木の森でのリーリーとグリフォンの問題は解決を見た。
リーリーの長との話を終えたギィはグリフォンの長の元へも行き、群れに残る事を告げた。
グリフォンの長は大喜びし、ハンターに礼を言う。
『息子の相談に乗ってくれただけでなく、リーリーとの問題も解決してくれて本当に感謝する』
そして約束通り精霊の分け木からマテリアルを分けてくれた。
ハンター達はリーリーとグリフォンと、翼はないがグリフォンの魂を持つリーリーの子に見送られ、精霊の分け木の森を後にした。
「まずはギィさんの悩み相談から行いませんか。それも私達とギィさんだけで」
ソナ(ka1352)の提案により、ハンター達とギィだけの会談の場が持たれた。
(俺様ちゃん、なんでこんな依頼受けちまったのかにゃー)
そこまでの道すがら、荒事のない依頼には興味がないゾファル・G・初火(ka4407)はつまらなそうに歩きながら考えていた。
(正直、グリフォンとリーリーの縄張り争いなんか勝手にやってろって感じじゃん。マテリアルを分けてもらうって依頼じゃなきゃ絶対に関わり合いを持ちたくない話だぜ)
ゾファルはかつて、精霊の大樹と守り人のケイトを守るため戦った事はある。
(因縁か何か感じての事なのかにゃー……)
『初めまして人間の皆さん。ボク人間に会うのは初めてなので嬉しいです。あ! その耳、その角、エルフや鬼もいるんだね。それにみんな聞いてた通り身体に布を纏ってる。どうしてそんなの着けてるの?』
ギィは好奇心が強いのか、興味津々な様子で色々と尋ねてくる。
「それはですね……」
本当は質問には全て答えてあげたいが、精霊の枝木の効果時間は2時間しかなく、後にはリーリーの長との会談も控えている。
なので応答は適当なところで切り上げ、ソナは本題に入った。
「ギィさんの身の上は長から拝聴しています。そして何か悩みを抱えているようだと伺いました。よければ私達にその悩みを話していただけませんか?」
『……はい、そうですね。聞いてくれますか』
ギィは自分は飛べないのでグリフォンの仲間と一緒に狩りもできず、種族が違うため子孫も残せず、群れに何の貢献もできない事。
そんな自分はリーリーの群れで暮らした方が皆が幸せになるんじゃないかと考えた事。
本当はグリフォンの群れにいたいが、自分が仲間のために何ができるか思いつけないで悩んでいる事などを話してくれた。
ギィの悩みを聞き終えた保・はじめ(ka5800)は、ギィの帰属先を巡る問題が新たな火種となり得るので、いっその事両者の架け橋となる事を目指すという路線で助言する事にした。
「群れの中で自分にしかできない事、自分だからできる事を見つけて貢献するのが良いと思いますよ」
『ボクもそう思いますけど、具体的に自分に何ができるのかが分からないんです。それを教えて下さい』
「リーリーに何ができるかを具体的に知っているのはリーリー自身です。なのでここはリーリーの群れの者達に学ぶのが一番でしょう」
『う~ん……。でもリーリー達だってグリフォンと一緒に狩りをした事はないよ。そんなリーリーからグリフォンに貢献できる狩りの仕方や技術を本当に学べるかな?』
ギィが知りたいのは自分の力をグリフォンの群れに活かす方法なので、『リーリーから学べ』というアドバイスだけでは不満だし不安だった。
「ギィさんの身体はリーリーです。狩りの仕方は自己流よりも、リーリーとしての知識や技能を身につけた方がグリフォンとの狩りへの貢献度も上がるかと。そうして成長してグリフォンの群れに貢献したい等を皆さんに素直に伝えてはどうでしょう」
『……うん、知識と技術を身につけるのは確かに無駄じゃないね』
ソナがフォローを入れるとギィも一応は納得してくれた。
しかしこれだけではまだグリフォンの群れに貢献できるようになれる確証や自信を持ててはいない。
「子孫を残す話はぁ、ギィさんの本能によりますねぇ」
星野 ハナ(ka5852)は本人がどうしたいかをかなり突っ込んで聞く事にした。
『本能?』
「はい。ギィさんの家族もギィさんが1番幸せになることを望んでいると思いますからぁ。ギィさんがぁ、自分の子を産み育てたいって思うならぁ、やっぱり番う相手が必要じゃないですかぁ。リーリーの奥さんと子供さんにぃ、いかに自分が幸せに育てられたかを語るだけでぇ、今のご家族は充分幸せになれると思いますぅ」
『自分が番いたいかどうかまでボクは考えた事はないよ。子孫を作る事は群れを大きくするという事で、ボクはその方面で貢献する事ができないって話です』
「それならぁ、今のご家族の下、皆が狩りに行ってる間に残った子供達の面倒を見たりぃ、巣穴の繕いを手伝ったり子供達に自分がいかに幸せかを伝えたりでぇ、充分ご家族を幸せにできると思うんですぅ」
『なるほどぉ……それは自分では思いつきませんでした。それなら確かにボクでも貢献できます。ありがとうございます!』
ギィはいたく感心した様子でハナに礼を言った。
「ところであんた、グリフォンの若鳥たちの間で居場所はあるのか?」
それまでやり取りを見ていただけだったゾファルが不意に気になって尋ねた。
「もし仲間として認められてないんなら親世代が交代することになった時に結局は出ていかざるを得ないじゃん。そこんとこどうなのさ?」
『同世代の子とは仲がいいですよ。一緒に狩り行く事はできませんけど兄弟みたいに育ちましたから、ボクに翼がなかったり毛並みが違う事も気にする子はいません』
「じゃあ逆に、今リーリーについていけばしばらくは裏切り者扱いされるかもしれないが……まぁ、真摯に付き合っていけばいずれは受け入れてもらえるかもしれないか。あんた次第だな」
『え~と……すみません。なんでリーリーについて行くと裏切り者扱いされるのでしょう?』
ギィが不可解そうな声音が尋ねてくる。
「だって今までグリフォンとして生きてたんじゃん。それなのに今日からリーリーとして生きますから仲間にしてーなんて、すぐに受けいられるないどころか裏切り者扱いされてもおかしくない話じゃん」
『受け入れられない……ですか? え~と……何故でしょう? 理由が分かりません』
リーリーとグリフォンは食料問題でギスギスしてはいたが敵対はしていない。
裏切るも何もないのだ。
仮に敵対していたとしても、彼らは群れに加わりたいという者を拒みはしない。
仲間の数が増えればそれだけ群れが強くなるという事だからだ。
なので群れのために力を尽くせばそれだけで受け入れて貰えるのである。
「いや、そういうのがないなら別にいいんだ、気にすんな」
ゾファルの気がかりは杞憂に終わった。
『皆さん、これからリーリーの長の所へ行くんですよね。ボクも一緒に行っていいですか?』
「いいですよ。もし先程の件を言い出しづらいようなら私たちも一緒にお話してあげますね」
ソナは快諾するとギィと一緒にリーリーの長の元へ向かった。
リーリーの長はハンター達と共にギィも来た事に驚いた。
『一緒に来るとは思っていなかった。両者とも保留にしていた答えをしにきてくれたのかな?』
「はい。返事をしに来ました」
『ではまず人間達から聞かせてくれ。我らと彼ら、どちらが正しいと思う』
「私は……やはり『正しい』ことなどどこにもないと思うのです」
まずソナが答えた。
「より公平で、より思いやりがあり、より多くの生命に福を齎すか。何より、皆が納得できるか、折り合いをつけられるか。一時的ではなく、継続的に又は汎用性があるか。そういったことが何かを決めたり、実行するときに気に留めておくべき大切なことかなと思います」
『ふむ、そこまで言うのであれば、我らとグリフォンが共に幸福になり、公平で思いやりに満ちていて皆が納得した上で折り合いのつけられる解決策があるのだな。是非それを聞かせてくれ』
「棲家が十分なら、狩りの範囲を森の外へ広げるのはどうでしょう? リーリーとグリフォンが一緒に狩りをすれば効率も上がるかもです」
『今でも狩りの範囲はギリギリまで広げている。それ以上広げると他種族の縄張りを犯してしまうのだ。グリフォンと争わないため他種族と争うのでは本末転倒ではないか』
「では、各群れを2分割して以前の土地と両方に住むのはどうでしょうか?」
『その場合、どうやって元の土地に戻る者を選ぶのだ? 皆、今の裕福な土地に暮らしたがるのではないか? どうやって皆を納得させて折り合いをつければいい? その方法がなくば今度はリーリー同士で諍いが起こるやもしれぬぞ』
「それは……」
ソナが言葉に詰まる。
「それならリーリーとグリフォンの食べる物の内訳をお互いに確認して、重複しない物を融通し合えないでしょうか?」
保が代案を出す。
『我らもグリフォンも肉食だ。動物でも虫でも喰らえるものは何だろうと狩る。食い物を選り好みにしていてはこの身体は維持できんからな。グリフォンも恐らく同じであろう。最初に言ったで通り食糧問題は簡単に解決する事ではない。融通はできんだろうな』
「そうですか……」
『他にはないのか?』
「……」
ソナにも保にも他の案はなかった。
そもそも保は自然の摂理に則ると、歪虚を倒して縄張り争いを制したグリフォン陣営に権利があると考えていた。
しかしその理屈で行くと両陣営の直接対決で雌雄を決すべしという結論に至ってしまう可能性がある。
なので当面は現状を維持したまま活路を見出すのが妥当だと思っていたのだ。
『ないのであれば、先程のエルフの言葉は単に理想を語っただけか……』
長の声音には失望の響きがあった。
「それならハッキリ言ってやるよ! あんたらリーリーが間違っている」
それまでつまらなそうに両者の話を聞いていたゾファルが声を張り上げた。
「あんたらは自分の住処を守れなかった。全滅するまで戦うこともできたが、命の大事をとってここを放棄したんだから、素直に新天地を探せばよかったのさ。違うか?」
『確かに我らは一度ここを放棄した。だが新天地を目指すのではなく力を蓄えた後に取り戻しに来る、その行為を間違っていると思うか?』
「それは間違ってねーけど、それならなんであんたらはグリフォンとは戦争しなかったんだよ? 歪虚もグリフォンもリーリーの縄張りを荒らす敵じゃん。戦うことを放棄して話し合いで出て行ってもらおうなんて虫が良すぎだよ。歪虚を駆逐して実際に血を流したのはグリフォンなんだからここは彼らが勝ち取ったものさ」
『人間とは自分と対立するものは全て敵で、殺してしまっても良いと思っているのだか? 先のエルフとは随分と違うのだな』
リーリーの長は恐ろしい猛獣を見るような目でゾファルとハナで見た。
「人間の全てが過激思想者じゃないですよぉ。人間は個人個人で色々な考えを持っているんですぅ。誤解しないでくださいねぇ」
ハナが一応フォローをいれる。
『では、お前はどう思うのだ?』
「どちらか一方って言われて選べば最終的には抗争になって弱い方が追い出される展開になりますよぉ。奪還経緯考えて戦力差でグリフォンが上と分かってますよねぇ。それでもいいんですかぁ? 強い仲間にオフィスに出稼ぎに行って貰ってお互い適正数を調整するとかぁ、共存問題にして下さいぃ」
『オフィス、とは何だ?』
ハナはハンターズソサエティの仕組みを簡単に説明してあげた。
『ふむ……我らは人を知らずに暮らしてきた。いきなり人間の世界での暮らしに志願する者も順応できる者も少ないであろうな』
「あれもダメこれもイヤなんて言ってたら何も解決しませんよぉ」
『いいや。答えはもう出ている。その人間が答えをくれた』
リーリーの長が嘴でゾファルを指す。
「え? 俺様ちゃん?」
ゾファルは意外そうな顔で自分を指差した。
「まさかグリフォンと戦争する気ですか!?」
それは保が想定していた最も最悪のシナリオだ。
『ハハハッ、我々はそこまで愚かではないよ。しかし……間違っていたのはやはり我々なのだ。実際に血を流して歪虚より土地を取り戻したグリフォン、彼らが住むのが正しい。本当は我らもその事に気付いてはいたのだよ』
「それなら何故今までその決断をしなかったのですか?」
『それは気がかりが残っていたからだよ』
長はソナの疑問に答えながらギィを見た。
『かつて歪虚から土地を追わさた際、我々は卵を残して去る事になってしまった。持ち運ぶ事ができず仕方のない事だったとはいえ、その事はずっと心の傷となっていた。しかし故郷に戻ってくるとその卵の子は生き残っていてくれたのだ。我々はその奇跡に歓喜したよ。だがグリフォンはその子を手放さず、その子もグリフォンと共に生きる事を良しとしていた。なので我らはその子を遠くから見守る事としたのだ』
『そうだったんだ……』
初めて聞く真相に驚くギィに、長は優しい眼差しを向ける。
『しかし食糧難でグリフォンとの関係は悪くなってゆき、遠くから見守る事も難しくなってしまった。去るべきは我々の方だと分かってはいても、その子を2度も置き去りにする事はどうしてもできなかったのだ。それが決断を先延ばしにしていた理由だ』
長は改めてギィを見た。
『本当はこの事を君に伝える気はなかった。この事が君の想いや決意を惑わせるかもしれないと思ったからだ。だが……やはり伝えずにはいられなかった。すまない』
『いえ、聞けて良かったです』
『そうか、では改めて君の答えを聞かせて欲しい』
『ボクは……』
ギィは少し口ごもったがハッキリ答えた。
『グリフォンと共に生きます』
『……そうか』
長の声音は落胆に響きが滲んでいて重かった。
『ごめんなさい……』
『いいんだ。それが君の選んだ道なのならそれを尊重する。ただ、君はグリフォンの子かもしれないが我々リーリーの子でもある。それを忘れないでおいて欲しい』
『はい、決して忘れません』
「この森を去ってしまうのですか、それは何時?」
保は本音を言えば、精霊の大樹へ移住して欲かった。
今森の守り人をしているケイトはいずれリアルブルーに帰すつもりでいる。
そうなると新しい守り人が必要になるからだ。
しかし今それをしてしまうと、歪虚が狙う獲物が増える事になって、今以上に目を付けられる。
移住してもらうならもっと世情が安定してからの方がいいのだ。
『準備ができ次第すぐにでも』
「待って下さい、その前にギィさ――」
ソナがギィの頼みを口にしかけたが、ギィ自身がそれを止めた。
『お願いします。行く前にボクにリーリーの知識と技術を教えて下さい』
『もちろんいいとも。むしろ嬉しいぐらいだ。我々の全てを知っておいてくれ』
長は移住はギィが習熟するまで伸ばす事に決めた。
こうして精霊の分け木の森でのリーリーとグリフォンの問題は解決を見た。
リーリーの長との話を終えたギィはグリフォンの長の元へも行き、群れに残る事を告げた。
グリフォンの長は大喜びし、ハンターに礼を言う。
『息子の相談に乗ってくれただけでなく、リーリーとの問題も解決してくれて本当に感謝する』
そして約束通り精霊の分け木からマテリアルを分けてくれた。
ハンター達はリーリーとグリフォンと、翼はないがグリフォンの魂を持つリーリーの子に見送られ、精霊の分け木の森を後にした。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/03/17 22:56:38 |
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相談卓 保・はじめ(ka5800) 鬼|23才|男性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2019/03/17 23:00:42 |