ゲスト
(ka0000)
【血断】根こそぎ
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2019/03/20 19:00
- 完成日
- 2019/03/24 22:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「お前も呼ばれたのか」
「母国語で貴様と話せるのは妙な感じだな」
肌の色も国籍も何もかもが違う老若男女が旧交を温めている。
「奴は?」
「地球だよ」
「崑崙行きの切符を渡されただろうに」
この場にいる全員が高度な技術を持っている。
リアルブルー凍結という特級の異常事態でなければ、絶対に企業や国が手放さない研究者であり技術者だ。
「お集まりの皆さん」
血の気の引いた女が壇上に立つ。
私語は消え、代わって餓狼の如き視線が女1人に集中する。
「準備が整いました。出発は明日の午前8時です」
立体画像が隣に投影される。
エバーグリーンだ。
ただし、稼働可能な自動兵器やオートマトンボディの保管施設ではない。
「計画を改めて説明します。標的は生産プラント。これを使って自動兵器またはオートマトンボディを作成し持ち帰るが目的です」
自らの力量を弁えない愚者の計画である。
歪虚と時間という脅威によりエバーグリーンは消え去る寸前だ。
プラントが復活可能ならトマーゾが既に指示を出している。
彼は最高の才能と複数世界の知識全てを兼ね備えた技術の神とも呼べる存在だ。
故にこの計画は無意味な浪費であるはずなのだ。
「待っていたぜ」
皆が笑った。
憤怒と自負が不可分なまでに混ざり合った、禍々しくも力強い魂の表出だ。
「新たに分かった情報はこれだけです」
電子化された情報が各人の携帯端末へ。
エバーグリーンの記憶を微かに残すオートマトンが連れてこられ、邪悪な視線に怯えて悲鳴を漏らす。
「皆さんの護衛として聖堂戦士団とハンターが同行します。私を含めた聖堂戦士団は自由に使って構いませんが」
双方の口角が吊り上がる。
「ハンターの皆さんに失望されない働きと、リソースの消費を上回る成果を期待します」
殺し合いの最中としか思えない雰囲気で、作戦の準備が最終段階に入った。
●1日目
現地への転移に成功。
当初計画していた全ての試みは失敗した。
●2日目
現地に残されていた整備マニュアルから新たな再起動手順を立案実行する。
無事だった生産設備の3割が崩壊。
●3日目
歪虚に発見される。ハンターが活躍するも聖堂戦士団の負傷者多数。
崩壊進行。生産開始。
●4日目
正午の時点で低性能兵器の歩留まりが8割を超えた。
聖堂戦士団部隊の1つが戦闘力を失いクリムゾンウェストへ帰還。
●5日目
残存施設3割。オートマトンボディ生産開始。
聖堂戦士団部隊が2つに再編される。
●現在
戦いに向かおうとした自動兵器が山賊担ぎで抱え上げられ、ぽいっとマットに向かって放られた。
兵器が起き上がる前にクリムゾンウェスト側の精霊が仕事をする。
エバーグリーンの技術の粋を集めた戦闘兵器が、自世界防衛の役目を奪われ異世界へ送られる。
「12番通路に蜘蛛型兵器が侵入!」
「戦士団は撤退させろ。ハンターは」
「到着には後3分必要です!」
「撤退次第爆破しろっ」
鈍い振動が遅れて届き、半ば風化した天井から粉塵が落ちてくる。
「第21次、組み上がりました」
幹線道路じみたコンベアに載り兵器が流れてくる。
高い移動力と敏捷性を感じさせる洗練された足腰に、1発被弾しただけで誘爆しそうな対歪虚ミサイル発射筒が4つ。
リアルブルーでなら設計を公表した時点で失職が確定する駄作機だ。
「使い捨てにするならこれでも使える。送り出せ!」
片腕を三角巾で吊った聖堂戦士達が神輿のように担いで運んでいく。
対邪神戦を考えるとこんなものでも貴重な戦力だ。
「材料持って来たぞー!」
未だ戦闘力を残した聖堂戦士達が、昨日まではプラントの一部だった金属塊を運んで来る。
「報告する暇があるなら入れろ、入れたな! 動かせ!!」
稀少な資源が雑に砕かれ汎用パーツに加工される。
ほとんど勘で設定された通りに組み上げられていき、極一部がオートマトンボディとして、少数がまともな兵器として、大部分が産廃じみた機械として組み上げられる。
「新たな敵増援を確認っ」
「戦士団の乙部隊が戦闘に入りました。責任者も巻き込まれていますっ」
「放って置け!」
ここ1週間で5時間も寝ていない科学者兼技術者が吼え、そこで限界だったらしく白目を剥いてコンソールに突っ伏した。
当初計画通りに指揮権が移行する。
彼の次は、ハンターだ。
「次はどうします?」
尋ねてくる聖堂戦士はぼろぼろだ。
安全を優先するなら撤退すべきだ。
防戦中の部隊を見捨てても賞賛はされても避難はされない。
「第22次の中間報告です。オートマトンボディが2割を越えそうです!」
だが再稼働したプラントは快調だ。
後半日あれば帰還後に部隊1つを作れるようになる。
接近戦しかできない聖堂戦士団部隊とは違う、最新の火器や兵器を扱う部隊が編成できるのだ。
あなたは指揮官として非常の決断をしてもよいし、死中に活を求めてもよい。
あるいは……。
「外部センサーに反応あり。……狂気です。低速で全高20メートル以上の個体が接近っ。東から2、西から1っ、計3体ですっ!」
鍛えに鍛えた武力で、あらゆる障害を排除してしまってもよい。
・地図
原料搬入口―――――――――生産プラント
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(20メートル) |
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指揮所――(50メートル)――完成品出口――(50メートル)――マットとお布団(上に乗るとCWへ転送)
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(50メートル)
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大ホール(実質野戦病院。重傷者30。他に聖堂戦士団が60名が待機中)
|
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(250メートル。凄く蛇行)
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クレーターの底――(100メートル)――崩壊した通路とプラント(未回収の希少資源あり)
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|
(200メートル。凄く蛇行。イコニア以下50名が後退しつつ防戦中)
|
|
大ホール(オートマトンボディ20体が並べられている)
|
|
(50メートル)
|
|
小型プラント(生産中)
・地形
指揮所。元は三叉路。持ち込んだ端末が大量に並んでいる。防御設備皆無。
大ホール。直径50メートルの半球状。
通路。説明がない場合、幅10メートル高さ15メートルの直線状。
通路(蛇行)。幅と高さは通常通路と同じで、直線が10メートル続かないほど曲がりくねっている
クレーターの底。地上まで100メートル。底付近に、通路に繋がる3つの横穴有り
大型プラント。7日目午前10時まで生産し続けます
小型プラント。7日目午前7時まで生産し続けます
「母国語で貴様と話せるのは妙な感じだな」
肌の色も国籍も何もかもが違う老若男女が旧交を温めている。
「奴は?」
「地球だよ」
「崑崙行きの切符を渡されただろうに」
この場にいる全員が高度な技術を持っている。
リアルブルー凍結という特級の異常事態でなければ、絶対に企業や国が手放さない研究者であり技術者だ。
「お集まりの皆さん」
血の気の引いた女が壇上に立つ。
私語は消え、代わって餓狼の如き視線が女1人に集中する。
「準備が整いました。出発は明日の午前8時です」
立体画像が隣に投影される。
エバーグリーンだ。
ただし、稼働可能な自動兵器やオートマトンボディの保管施設ではない。
「計画を改めて説明します。標的は生産プラント。これを使って自動兵器またはオートマトンボディを作成し持ち帰るが目的です」
自らの力量を弁えない愚者の計画である。
歪虚と時間という脅威によりエバーグリーンは消え去る寸前だ。
プラントが復活可能ならトマーゾが既に指示を出している。
彼は最高の才能と複数世界の知識全てを兼ね備えた技術の神とも呼べる存在だ。
故にこの計画は無意味な浪費であるはずなのだ。
「待っていたぜ」
皆が笑った。
憤怒と自負が不可分なまでに混ざり合った、禍々しくも力強い魂の表出だ。
「新たに分かった情報はこれだけです」
電子化された情報が各人の携帯端末へ。
エバーグリーンの記憶を微かに残すオートマトンが連れてこられ、邪悪な視線に怯えて悲鳴を漏らす。
「皆さんの護衛として聖堂戦士団とハンターが同行します。私を含めた聖堂戦士団は自由に使って構いませんが」
双方の口角が吊り上がる。
「ハンターの皆さんに失望されない働きと、リソースの消費を上回る成果を期待します」
殺し合いの最中としか思えない雰囲気で、作戦の準備が最終段階に入った。
●1日目
現地への転移に成功。
当初計画していた全ての試みは失敗した。
●2日目
現地に残されていた整備マニュアルから新たな再起動手順を立案実行する。
無事だった生産設備の3割が崩壊。
●3日目
歪虚に発見される。ハンターが活躍するも聖堂戦士団の負傷者多数。
崩壊進行。生産開始。
●4日目
正午の時点で低性能兵器の歩留まりが8割を超えた。
聖堂戦士団部隊の1つが戦闘力を失いクリムゾンウェストへ帰還。
●5日目
残存施設3割。オートマトンボディ生産開始。
聖堂戦士団部隊が2つに再編される。
●現在
戦いに向かおうとした自動兵器が山賊担ぎで抱え上げられ、ぽいっとマットに向かって放られた。
兵器が起き上がる前にクリムゾンウェスト側の精霊が仕事をする。
エバーグリーンの技術の粋を集めた戦闘兵器が、自世界防衛の役目を奪われ異世界へ送られる。
「12番通路に蜘蛛型兵器が侵入!」
「戦士団は撤退させろ。ハンターは」
「到着には後3分必要です!」
「撤退次第爆破しろっ」
鈍い振動が遅れて届き、半ば風化した天井から粉塵が落ちてくる。
「第21次、組み上がりました」
幹線道路じみたコンベアに載り兵器が流れてくる。
高い移動力と敏捷性を感じさせる洗練された足腰に、1発被弾しただけで誘爆しそうな対歪虚ミサイル発射筒が4つ。
リアルブルーでなら設計を公表した時点で失職が確定する駄作機だ。
「使い捨てにするならこれでも使える。送り出せ!」
片腕を三角巾で吊った聖堂戦士達が神輿のように担いで運んでいく。
対邪神戦を考えるとこんなものでも貴重な戦力だ。
「材料持って来たぞー!」
未だ戦闘力を残した聖堂戦士達が、昨日まではプラントの一部だった金属塊を運んで来る。
「報告する暇があるなら入れろ、入れたな! 動かせ!!」
稀少な資源が雑に砕かれ汎用パーツに加工される。
ほとんど勘で設定された通りに組み上げられていき、極一部がオートマトンボディとして、少数がまともな兵器として、大部分が産廃じみた機械として組み上げられる。
「新たな敵増援を確認っ」
「戦士団の乙部隊が戦闘に入りました。責任者も巻き込まれていますっ」
「放って置け!」
ここ1週間で5時間も寝ていない科学者兼技術者が吼え、そこで限界だったらしく白目を剥いてコンソールに突っ伏した。
当初計画通りに指揮権が移行する。
彼の次は、ハンターだ。
「次はどうします?」
尋ねてくる聖堂戦士はぼろぼろだ。
安全を優先するなら撤退すべきだ。
防戦中の部隊を見捨てても賞賛はされても避難はされない。
「第22次の中間報告です。オートマトンボディが2割を越えそうです!」
だが再稼働したプラントは快調だ。
後半日あれば帰還後に部隊1つを作れるようになる。
接近戦しかできない聖堂戦士団部隊とは違う、最新の火器や兵器を扱う部隊が編成できるのだ。
あなたは指揮官として非常の決断をしてもよいし、死中に活を求めてもよい。
あるいは……。
「外部センサーに反応あり。……狂気です。低速で全高20メートル以上の個体が接近っ。東から2、西から1っ、計3体ですっ!」
鍛えに鍛えた武力で、あらゆる障害を排除してしまってもよい。
・地図
原料搬入口―――――――――生産プラント
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指揮所――(50メートル)――完成品出口――(50メートル)――マットとお布団(上に乗るとCWへ転送)
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クレーターの底――(100メートル)――崩壊した通路とプラント(未回収の希少資源あり)
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(200メートル。凄く蛇行。イコニア以下50名が後退しつつ防戦中)
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大ホール(オートマトンボディ20体が並べられている)
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小型プラント(生産中)
・地形
指揮所。元は三叉路。持ち込んだ端末が大量に並んでいる。防御設備皆無。
大ホール。直径50メートルの半球状。
通路。説明がない場合、幅10メートル高さ15メートルの直線状。
通路(蛇行)。幅と高さは通常通路と同じで、直線が10メートル続かないほど曲がりくねっている
クレーターの底。地上まで100メートル。底付近に、通路に繋がる3つの横穴有り
大型プラント。7日目午前10時まで生産し続けます
小型プラント。7日目午前7時まで生産し続けます
リプレイ本文
●イコニア救出
「参ったな」
カイン・A・A・マッコール(ka5336)の声がコクピットに響く。
前方からのレーザーの密度は相変わらずだ。
展開中の光の壁に一切影響を与えられないのも今まで通り。
人間程度の知性を持つ歪虚なら異常に気づくこと程度はできただろうが、この場にいるのは動物未満の思考しか持たないVOIDでありブラストハイロゥが絶大な効力を発揮し続ける。
元バリケードの瓦礫に時折当たって粉微塵になっているがそれだけだ。
かがれた空気を矢が貫いた。
材質も形状も特筆に値することがない普通の矢だ。
狙いは飛び抜けて素晴らしく、受け流す形の装甲に垂直に着弾して貫き、矢羽根まで蜘蛛型VOIDの中に消える。
「この程度なら覚醒する必要もないけど」
次の矢を番えながらリアリュール(ka2003)が独りごちる。
敵は同属が壊されてもその場から動かず負マテリアルの水鉄砲を撃ち続けている。
それは半端なレーザー兵器よりも威力はるのだけれども、光の壁を貫けず無駄に力を使うだけだ。
「無茶をするわね」
曲がりくねる通路の奥を一瞥する。
そこから聞こえる怒号やメイスと装甲がぶつかる音の中に、異様に上機嫌な声が1人分混じっている。
「兵力増強の為といっても、代わりに命を落とすのでは意味がないのに」
怒号の勢いが徐々に衰えている。
光の壁から出ずに撃ち続ければ無傷で勝利可能だが、リスクを覚悟で攻めるしかないだろう。
「汚れた土地では寝ても完全回復とはいかんのだ。忘れているのではないか」
言葉の内容とは逆にルベーノ・バルバライン(ka6752)は上機嫌だ。
生身故の身軽さでバリケード後を通り抜け、前と左右から飛んでくるレーザーを繊細な進路変更で躱す。
高笑いをする。
数秒前で通り過ぎた蜘蛛型がレーザーを放つ。ルベーノの後頭部に直撃する直前に、一瞬展開したマテリアル障壁によって威力を弱められる。
「俺を倒すには1桁足りんなぁ!」
重体で追い込むだけなら5倍で済むがわざわざ説明してやるつもりはない。
冥土の土産を持たせるに値する敵ではないし、何より今は忙しい。
血の臭いと殺気に満ちた気配が濃くなる。
原形をとどめたバリケードが多くなり、人の気配が近くなる。
「そこか」
飛び抜けて乱れた息づかいへと走り、全高2メートル近いバリケードを飛び越える。
白い歯を剥き出しにした女性司祭と蜘蛛型VOIDが、至近距離で命の削りあいをしているところだった。
「勤勉だな、司祭」
問答無用で抱え上げる。
暴れられるのを予想した、俵担ぎだ。
蜘蛛型と司祭があっけにとられたのは1秒に満たない。
VOIDは背を向けたルベーノに向けこれまでと変わらないレーザーを照射。ルベーノはイコニアを庇うため回避をせず防御を選択した。
「おい馬鹿娘また飛び出しやがったな!」
ほぼ無傷だったバリケードが揺れた。
よく見れば蜘蛛型の残骸がめりこみ変形したのに気付けるだろうが、知性の足りない蜘蛛型も消耗の激しい聖堂戦士団も気付けない。
ただ、圧倒的な戦力が近づいてるのは分かる。
「簀巻きにしてクリムゾンウェストへ戻してやる」
CAMが使うようなサイズの斧がちらりと見えて、司祭が微かに狼狽する。
それまでの聖堂教会司祭以外の要素が皆無の顔とは異なり、人間性と年齢相応の未熟さが滲んでいる。
「大事に思われているではないか」
聖堂戦士達が集まってくる。
全員が司祭に好意的な訳ではない。
出世の速度を妬む者もいるし単純に反りが合わない者も大勢いる。
そういう者達も司祭の歪虚への戦意は疑わないし、危険を現場に押しつける上司と同一視しない。
「お前ほど使命に命を掛けるなら、神の覚えも目出度かろう」
ルベーノが来た道を戻る。
VOIDは残骸に変わっているが負の気配に変化は無い。
VOIDが減っても命は増えないのだ。
「だが早死にしない程度に手を抜くことを俺は勧めるがな」
茶化す要素が皆無の真顔であった。
「イコニアさん!」
無事で良かったという思いを押し隠し、楽しみを邪魔するようで気がひけるとでも言いたげな雰囲気を装うカイン。
通路の奥では戦闘が続いているがこの場は安全と判断して光の壁を解き、R7のハッチを開けて直接イコニアと顔をあわす。
「イコニアさんさえ良ければなんですが、外からここへ向かってくる歪嘘を索敵して座標と射撃の指示をお願いしたいのですが、僕らが出来る限り対応します、いや僕がイコニアさんの代わりに奴らを殺す、だから遠慮なく使い潰して下さい」
トランシーバーの周波数を添えたマッピングセットを投げ渡す。
カインの予想よりイコニアの反射神経が鈍く、ルベーノが補助しなければ取り落としていた。
「ああもう」
八原 篝(ka3104)が呆れてため息をついた。
反対側から現れた蜘蛛型を1矢で仕留め、連れてきたオートソルジャーに来た道を戻らせ新手の蜘蛛型群に突入させる。
「敵の新手です。警戒をっ」
この時点でようやく指揮所から情報が届く。
声に怯えがないので指揮所にはまだ敵は向かっていないのだろう。
「こんな状況でも救援が来ないってことは、そういうことね」
司祭は以前会った時より顔色は酷くそれでいて嫌な感じに凄みが増している。作戦に参加した技術陣も、危険な作戦の割に豪華すぎる顔ぶれだった。
つまり独断専行とも言える連合軍の関知しない作戦なのだろう。
「出口まで押し戻すわよ。バジン、この程度ならライフリンク抜きでやれるわ。蹂躙しなさい」
オートソルジャーは魔法的能力にエネルギーを集中させ、ガンポッドを駆使して敵勢を押し始めた。
「全ての任務が大事であることは間違いない。それでもだ」
司祭が下ろされる。
「俺は大してお前のことを知らぬ。それでもだ。この俺にそこまで苦言を呈させるほど、今のお前の行動は危うい。そう簡単に命を懸けるな。お前を愛する者たちにとって、お前が考えるほど、お前の命は軽くない」
言葉を濁さず断定する。
そこに誠意を感じとり、司祭は人間としての要素を隠さず本音を口にする。
「それは認めます。ですが今は別の理由と事情がある。あなたもそれに気付いているから、その程度の苦言で済ませてくれているのでしょう?」
ルベーノの口角がわずかに上を向く。
不敵ではあるが苦みも混じっている。
ハンターと大精霊が力を結集しても邪神の一部にすら勝てなかった。
あれからハンターが力を増しハンター以外の人類も戦力をかき集めているとはいえ、全く足りない。
唐突に、ベルトが締まる金具の音がした。
「構わず続けろ」
うなずくイェジドの鎧からリードが伸び、司祭の首輪に繋がっていた。
「ちょっとボルディアさんいくらなんでも酷くないですかっ」
付き合いの深さ故の気安さで、過激派司祭と超高位ハンターではなく戦友に対する言葉遣いになる。
「お前さぁ。上司に先に死なれると困るのは部下って事分かってるよな? ここまでしても部下が止めに来ない理由を考えろ。俺もさっきのザマを見るまでここまでする気は無かったよ」
追いついてきた聖堂戦士達が勢いよく首を上下に振る。
信仰も戦闘も単体では給料に繋がらない。
実際に集めて現場に運んで来るのはイコニア達管理職だ。
「今は簀巻きは許してやる。ヴァン、暴走したら首根っこ咥えてクリムゾンウェストへ通じる布団に飛び込め」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)はそう言い残し、敵の襲撃がないわずかな時間を活用するため元中規模プラント兼資源保管庫、現瓦礫の山へ向かうのだった。
●蜘蛛型護衛軍
鉄の荒野を巨大な蟹が揺らす。
ゆっくりと1歩踏み出すだけで文明の残骸が砕け、しかし鉄触手でできた柔軟で強固な蟹足には微かな傷もつかない。
立ち止まる。
対歪虚の兵器として開発され、実戦に投入される前に文明が滅んだ新型兵器が、VOIDに取り込まれてようやく完成して人類に牙を剥く。
大量のエネルギーが注ぎ込まれるにつれて微かな唸りが生じ、閾値を超えた瞬間爆発する。
大気が押し退けられ嵐の如く。
ビルじみた巨体が後ろに向かってずるりとずれる。
そして、1発の鉄塊が超音速で天を目指した。
「北北東の地平線っ」
時音 ざくろ(ka1250)の言葉は異様なほどの早口だ。
セレスティア(ka2691)は何を言われたか認識するよりも速く、声の緊張感に背を蹴り飛ばされるように動き出す。
太股の力が微かに増す。
微細な変化から緊急事態であることを理解し、ペガサスは主を乗せたまま真下に向かって全力で飛ぶ。
その丁度1秒後。
頭上数十メートルを鉄塊が通過し、わずかに遅れてソニックブームの暴風がセレスティア達に到着した。
「ありがとうございます。助かりました」
はるか遠く生じた巨大土煙を横目で見ながら、セレスティアは通信機を使ってざくろに礼を述べた。
ひょっとしたら聞こえていないかもしれない。
何故なら、地上に展開する数十数百の蜘蛛型の戦闘音が大き過ぎるのだ。
ざくろのルクシュヴァリエが、全高3メートルのほどの蜘蛛型VOIDに取り囲まれている。
CAM並の巨体で高位覚醒者並の戦闘力という、ロッソ以後のクリムゾンウェスト軍事業界が追い求めていた理想が現実になっている。
剣の一振りで人間より大きな雑魔が砕け。
四方八方から飛んでくる攻撃を9割は躱し残りの1割も浮遊盾で受ける。
機体本体の防御性能も十分に高く、長時間戦闘では必然的に発生する紛れ当たりを浴びても小破にすらならない。
そう、長時間戦闘なのだ。
「駄目だよ!」
刻騎ゴーレムを我が身として扱いながら、ざくろは魂に語りかけてくるものへ返事をする。
「ここにいるのは敵の主力じゃ無ない。必殺わ……スキルは温存しなきゃ」
1つ倒すと2つの増援が現れる状況だ。
集まりすぎたら移動力と身のこなしを活かして引き離してはいるが、これではいくら戦っても勝ちきれない。
魔法的に繋がった相棒からの急報。
味方に警戒を促しながら南へ駆け抜け、数秒後に凶悪な着弾による衝撃で2桁後半の蜘蛛型が微塵に砕ける。
「Lo+っ、直接クレーターへ向かって。コクピットに入れる余裕がないっ」
色つきの負マテリアルがルクシュヴァリエを取り囲む。
回避はできるし防ぐのも容易。
しかし非戦闘員を守りながら戦うほどの余裕はなかい
サイボーグ鳥Lo+の横に、ペガサスがゆったりと降りてきて相対速度を0にする。
「セレスティアと申します。よろしくおねがいしますね」
ハンターもペガサスも疲れているようだが非戦闘員のLo+ほどではない。
「大丈夫です。予定通りではありませんが既に手はうちました」
敵を誘き寄せるために改めて降下し地面に足をつける。
ざくろ機と比べると弱く見えたのか、蜘蛛型の鉄の眼球からレーザーじみた負マテリアルが放たれる。
それは擬似的な連続攻撃であり、高度な体術の使い手でもなぶり殺し確実な必殺技である。
だが超高度な体術の使い手には通じない。
セレスティアのペガサスは空でも強いが地上ではさらに強い。
治癒術を使っていないのにかすり傷1つなく、近距離だけで100近い蜘蛛型を引きつけ非戦闘員の撤退を援護する。
「お元気で」
漆黒のサイボーグ鳥を見送りながら、セレスティアは後1時間であれば耐えられると判断した。
●カニ
砲の大きさと比較して、再装填に必要な時間が短すぎる。
20秒かかるので左右のレールガンを交互に撃って10秒に1発。
異様な射程と威力を兼ね備えた、1国を物理的に滅ぼせる大砲だ。
「転移能力がありゃぁ、王国なら3日で落ちるかもな」
魔斧が旋回する。
絶対に叶わないと悟り、我が身を文字通り盾にしてボルディアを防ごうとした蜘蛛型部隊がレールガンに直撃されたかのように砕け散る。
そこへ本物のレールガンが撃ち込まれる。
高度技術世界の兵器らしく射程の下限など存在しない。
そして技術のみに頼った兵器らしく、超高位の覚醒者の存在を考慮に入れていない欠陥兵器であった。
「塵が目に入るじゃねぇか」
赤毛を風になびかせながら、ボルディアは地獄の戦場を軽い足取りで歩く。
人間の足とは思えない速度でさらに接近。
先程の5割増しの密度の壁を、大斧の一線で先程と同じように削り取る。
合図を送る必要はない。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)もボルディアも、即興で最適な戦術を組み立てられる実力者だ。
「1機と数百体で1部隊か。砲戦ではサルバトーレ・ロッソも危ないだろうが」
ボルディアが破壊した防衛線を踏み越え、大きさでいれば倍、重量でいえば数百倍の蜘蛛型の間をすり抜け砦じみた大きさのそれに近づく。
残り15メートルで、蜘蛛型が密着し作り上げた最後の壁に阻まれる。
「私にここまで近づかれるようではな」
蟹型の巨体からレーザーの速射が始まる。
光速には遠いが音速の数倍に達し、射程内であればリアルブルーの軍用機にも必中する凶悪なマテリアルレーザーだ。
だがその程度ではアルトに届かない。
気配を観て躱し、動きともいえぬ微かな予備動作から予測して回避し、連携して蜘蛛型が放ったレーザー豪雨もするりと避ける。
「先に倒してくれてもいいぜ?」
「一太刀では無理だ」
軽く笑ってオーラを纏う。
初手は加速だ。
防御力のわずかな低下と引き替えに手数を倍ほどに増やし、アルト個人に対して作られた蜘蛛壁を大回りしてすり抜ける。
極限まで効率化された動作は美と禍々しさを兼ね備え、深紅の騎士刀がより一層華やかにアルトを彩る。
半秒遅れて蜘蛛の装甲に亀裂が入る。
亀裂に終わりはなく、両断されたVOIDが機能を失い唐突に消滅して何も残らない。
「脆いのはそこか」
これほどの高速白兵戦では国を崩せる大砲も単なる荷物だ。
足を防御に回そうとしても、動き出すより速くアルトと刃が足と腹の隙間に入り込んでいる。
アルトが刃を突き入れる。
己のレールガン相手でも数発は耐えるはずの装甲が、元から存在しないとでもいうように存在を否定され内部の回路まで切り裂かれる。
攻撃は一度では終わらない。
アルトと紅刃が進み踊るたびに装甲が消え内部がえぐり取られ、その度に鉄触手が欠損を埋め全体の大きさが減っていく。
「これに耐えるか」
スキルの効果が切れた時点で斜め後ろへ跳躍。
アルトが悠々と去った後の空間に、巨大蟹の脚が突き刺さって地面に数メートル埋まった。
レーザーが空間を埋め尽くす。
ざくろ機とセレスティアが引きつけていた蜘蛛部隊も蟹型へ救援に向かおうとして、背後から1機と2人と1体に討たれる。
「こりゃ強ぇな。王級が出てくる戦場にいたらスキルを使わされちまう」
斧が鼻面を粉砕する。
自動的に回路が予備のものに切り替わり、それでも足りない分は負マテリアルを不可逆に消費することで補われ戦闘能力が維持される。
存在の一割を消費しても滅びまでの時間が10秒伸びるだけなのが分かっていても、蟹型VOIDはひたすら耐えて無意味な攻撃を繰り返すことしかできなかった。
●砲撃戦
「引き留めて正解か」
カインがため息をついた。
二度目の蟹討伐に参加したのだが、レールガンの脅威は予想以上だった。
あの威力を相手に無傷で済ませる防御力か超絶の回避能力がないのなら、途中で退却することもできず一方的に撃たれて死ぬ。
ブラストハイロゥでは短時間しか守り切れないのだ。
「正解、か」
イコニア1人であれば彼の手で守れたかもしれない。だが彼にはそうするだけの大義名分がない。
夫でも恋人でもないのだから。
大量の弾がばらけていく独特の音が響いている。
炸裂弾だ。
10や20固まって向かって来る蜘蛛型VOIDの上で炸裂し、無数の子弾により穴だらけになる。
全滅することもあれば数体数体残ることもある。
残ったそれにカインのR7が向かい斬艦刀で仕留める。
個々の生き残りは少なくても蜘蛛型隊の数が多すぎるため、弾数に制限があるプラズマライフルは使えない。
なお、刻令ゴーレム崩天丸の主は何をしていたかというと、砲撃担当ユニットの前でひたすら待機である。
灰色の空を背景に極小の点が迫ってくる。
今回は数分ぶりの命中コースだ。
鳳城 錬介(ka6053)の経験と計算能力が最適な防御を指し示す。
音速越え鉄塊の前に生身で立ち、鉄塊の芯を巨大な盾でそっと押す。
衝撃を半ば返された鉄塊が崩壊。
膨大な数の破片が錬介を襲うが和風の全身甲冑を貫けない。
わずかに遅れて衝撃波が到着する。
あの鉄塊を防いだ錬介にとってはそよ風に等しいが、Volcaniusにとっては地面にしがみつかないと倒れるかもしれない暴風だった。
「焦らず急ごう」
崩天丸が錬介に続く。
Volcaniusの広範囲殲滅力を評価するべきか、錬介ほどの強者が専属で守らねば確実に全壊する脆さを嘆くべきか、人により評価は異なるだろう。
「この距離だと当たらないと思うのだけど」
希にとはいえ何故当たるか分からないと言うリアリュールに、セレスティアがヒーリングスフィアを使いつつ推測を述べる。
「私達の知らない技術があるでしょうか」
ハンターに知る術のないことだが、たまたま条件が重なった偶然の産物だ。
仮に資源を投じて技術として確立しても、対人類でしか効果のない徒花だ。
リアリュールのグリフォンが目で感謝を示す。
フルリカバリーは必要なくてもかすり傷を受けることは何度もあり、複数人をまとめて回復可能なヒーリングスフィアは大活躍だった。
「護衛の蜘蛛型は2人に向かっているようですが」
錬介が崩天丸に指示を与える。
砲が外れないよう固定を再確認。崩天丸は全ての準備を終えた後、どこで覚えたのかを不明な見得を切る。
「いい覚悟だ。走るぞ」
地面が揺れ始める。
地平線を5割を覆う狂気残党軍に向かい、10人に満たないハンターとユニットが突撃を開始した。
●レールガン4
何の変哲も無い矢が、蟹型VOIDにとってはあり得ない速度と技で装甲に突き立った。
3本だ。
蜘蛛が1つずつ放つ無数のレーザーと比べると数は0に等しく、しかし負属性レーザーに数倍する威力の威力の矢は確実に蟹型の命を削る。
蟹型が新たな指令を作成する。
予備の蜘蛛型隊を左右からリアリュールへけしかけ殺害は無理でも攻撃を邪魔するつもりだ。
しかしその思考は空から吸収してきたグリフォンにより邪魔される。
ソラヴァスが風を切って着地する。
優しい風をまとい四方八方から来るレーザーを回避。
防御の風を残した上で風の魔法を解き放つ。
体格相応の装甲を持つ蟹型には通じないが蜘蛛型には効果絶大だ。
威力はそこそこで一撃撃破は滅多にない。だが爆撃じみた突風により壁を作っていた蜘蛛型隊がまとめて吹き飛ばされた。
つまり、CAM何も巨体が侵攻可能な場所ができたということだ。
魔動冒険王『グランソード』が、黄金の鍔で彩られたと白銀の剣を掲げる。
生気の消えた空に微かな光が滲む。
滅びを待つしかなかった中小の精霊達が、冒険王に宿る精霊に呼びかけられざくろに引きつけられ集まってくる。
「汝グランソード」
漫画やアニメと違って集中線も派手な特殊効果もない。
弱り切った精霊が助け合い支え合いながら、冒険王の形として集まり安定する。
光あれ。
超高位の覚醒者であるざくろから力が放たれ、そこに精霊の力が重なり上限を突破する。
存在感が極限まで増した冒険王にとっては蜘蛛型などいないも同然で、苦し紛れのレーザーも自ら避けるかのように外れていく。
「一刀両断」
柄を握る拳に力が入る。
小さな精霊達が重なり合ったまま可愛らしい雄叫びをあげる。
「リヒトカイザー!」
刃が光と化し直線に伸びる。
蟹型が両腕のレールガンを盾として扱い、しかし異音と共に亀裂が発生して砲身が歪む。
光は止まらない。
散々人と精霊を食らった巨体を光が切り裂き、地面に刃が到達した瞬間半身が砕ける爆発が起きる。
精霊のテンションが高くなる。
ざくろも一気に倒してしまおうと力を込める。
「魔動超重斬」
今度は超重練成だ。
単純に大きく重くした剣を再度振りかぶり、一気に振り落として上半身を潰してしかしそこで止まる。
光あれに比べると威力が控えめだった。
蟹型歪虚が内側から崩れていく。
放置しても消え去るだろうがすぐにではない。
「しまっ」
グランソードに組み付かれ、強固ではあるが常識的な範囲でしか無いフレームに巨大な亀裂が入った。
「た?」
だが一瞬で回復する。
返す刀で今度は光あれを使い脚と腕を斬り飛ばす。
蟹の胴が震え、地面に落ちることも出来ずに空気に溶けて消滅した。
「戦場ではこれがあるから怖い」
回復させた錬介が安堵の息を吐く。
もちろん油断など皆無だ。
もう1機の蟹型によるレールガン斉射を盾で受けてゴーレムを守る。
「拙いな」
ボルディア達が足止めされている。
蜘蛛型VOID相手なら1000相手でも必ず勝てる。
しかしスキルが尽きれば一度に1体しか倒せない。
蟹型がかき集めにかき集めた2000近い大群に足止めされていた。
「くっ」
魔動冒険王も同じように足止めされている。
こちらは蜘蛛型の数が1桁少なく短時間で突破はできそうだ。
しかし最後の蟹型の到着の方が早かった。
レールガンを地面に突き刺し機体を安定させる。
先端が潰れ二度と使えなくなるが、ハンターに通用しなかった武器を惜しむ気は全くない。
蟹の形が崩れていく。
甲羅を形作っていた触手が伸びて先端の鉄眼球に負マテリアルが集まる。
「耐えなさい!」
セレスティアが祈りと共に剣を掲げる。
マテリアルの光が集まり純白の翼となり、ペガサスごとセレスティアを優しく包む。
直後、負マテリアルで出来た針の山脈が出現した。
速射レーザーによる連射なのだが負マテリアルの密度が濃すぎて固体同然だ。
避けにくいレーザーを大部分避け、強力な守りの力に包まれているのにペガサスは何度も被弾する。
それだけ敵が強く、しかも必死なのだ。
「っ」
蟹型の増援がまた増えた。
総数の0.1パーセントでも凄まじい数で、これだけ数が多いと不運に不運が重なり急所に被弾することも珍しくない。
だが問題ない。
錬介が問題でなくする。
ファーストエイドと回復術に組み合わせによる即時回復が事故発生率を0に限りなく近づける。
「騎士が剣で仕留めるのが英雄譚の流行だろうけど」
グリフォンの足下に空の矢筒が転がり落ちる。もう何十個目か覚えていない。
「手加減して倒せる相手ではないからね」
イヤリングに仕込んだ通信機で別の班と連絡をとりながら、残り少ないスキルを惜しみなく使う。
3連の矢は、光あれや魔斧や騎士剣ほどではないが十分に威力がありしかも遠くまで届く。
左右からそれぞれ30越えの蜘蛛型に囲まれても、リアリュールは回避と防御を相棒に任せて攻撃に専念できる。
飛ぶと被弾確率が急上昇するので飛んで逃げることはできないとはいえ、だいたいリアリュールの予想通りに戦況が推移していた。
「後は任せてください」
錬介がマテリアルを放出して空間を歪める。
直径6メートルの範囲内にいる味方に対する攻撃を全て引き受ける危険な技だ。
高位覚醒者の中でも飛び抜けた防御能力を持つ彼ですら、使用タイミングを間違えれば削り殺されるのがこの戦場だ。
レールガンを喪失した蟹型を含め、全てのレーザーが錬介の構える盾へ集中した。
「ペガサス、錬介さんの援護を。私はっ」
セレスティアが相棒から飛び降り、見上げると首が痛くなる巨体へ駆け寄る。
装備は剣の盾だ。
剣は治癒術使用に向いたものなので、この戦場においては並程度の威力しかない。
「引きつけます」
龍鉱石で覆われた刃が清らかな光を放つ。
全長が1メートルを超えているのに、レイピアとして扱い分厚い装甲を貫き通す。
それで終わらず攻撃と同速度で剣を引き抜き、上からの負レーザを盾で受け流し角度を変えた刺突を繰り出す。
蟹がセレスティアに意識を集中する。身を乗り出すようにして無防備な背中を晒す。
どんな武器も使い手次第という好例だ。
「っ」
矢から指を離した瞬間、リアリュールが無意識に息を漏らす。
当たった。
1本が装甲で弾かれもう1本が半ばまで埋まって止まり、最後の1本が細い亀裂をすり抜け奥深くに突き刺さる。
レールガンの直撃に似た爆発が発生。
原因はエネルギー保管装置の爆発。
右半身が砕けてばらばらに。
甲羅の右端が叩きつけられるようにして地面に落ち、けれど異様に優れた姿勢制御装置により即座に安定する。
「プラントで見たものと同じですか」
錬介が静かに歩み寄る。
蟹型から吹いてくる負マテリアルも360度から飛んでくる負レーザーも受けてもかすり傷未満しか負わず、聖盾剣「アレクサンダー」に勢いをつけて振り下ろす。
CPUが押し潰され、VOIDの意思もエバーグリーン人に命じられた命令も揮発する。
決戦兵器になれなかった兵器が、ようやく終わりを迎えることができた。
●前倒しされた決戦
森の午睡の前奏曲が聖堂戦士団の命綱だった。
「邪魔よどきなさい!」
酷い顔色の戦士達を通路で追い返す。
「全くどいつもこいつも」
特に戦士団に恨みがあるわけでは無いが、実力以上のことをしよう者達の面倒を見続けるのはストレスがたまる。
「バジン、ハンター2人とあなたで守ることになるわ。小型プラントは放棄する前提で動くわよ」
希少資源の回収は既に諦めている。
いつ崩れるか分からない穴にいるときクレーター経由で蜘蛛型が来たら、篝もバジンも本気を出せず倒れるか本気を出して蜘蛛型ごと土砂に埋もれて死にかねない。
クレーターへ向かう通路から強烈な風と爆発じみた砲声が向かって来る。
一般的聖堂戦士にとっては体調に止めを刺す攻撃に等しく、篝にとってはちょっと五月蠅いだけの慣れた音だ。
「ばかもーん!」
拡声器を使っていないのにミグ・ロマイヤー(ka0665)の声はよく響く。
「中身はほとんど爆薬じゃ。もっと丁寧に扱え死にたいのか!」
ゾンビじみた聖堂戦士の動きがほんの少しだけましになる。
クレーターの底、頼もしいを通り越して禍々しくすらあるダインスレイブ改造機が、2門の滑空砲を120度回転させぴたりと静止させた。
「耳を押さえて口を開けろ!」
大気が震え地形が揺れた。
超重量とハンターの身のこなしを兼ね備えたヤクト・バウ・PCでも発射の際に砲身を保持するので精一杯だ。
大型の爆薬を追加しブースターによる加速を加えて撃ち出すという、有能な技術者なら誰でも一度は考えリスクを考慮し諦める超絶砲撃。
そんなものを、既存の技術のみで無理なく成立させた開発者の能力と執念は実に凄まじい。
「奴等しくじったか?」
予測より敵の襲撃が頻繁だ。
あのメンバーが王級未満のVOIDに破れるとは思えない。
おそらく、迎撃に間に合わないVOID全てにここへの襲撃が命令されたのだ。
「どのくらいもつ?」
単機か2機ごと転がり落ちてくる蜘蛛型を篝が矢で仕留める。
最後まで転がってくるなら結構な脅威になるが、負マテリアルに存在をすり減らされたそれは数メートル転がることも出来ずに次々消えていく。
「グランドスラムなら後10発よ。弾薬はハンターズソサエティーから分捕って来たがこれ以上は機体がもたぬ」
追加弾薬を滑空砲に仕込みながらプラズマライフルの引き金を引く。
射程も威力も効果範囲も先程の砲撃に比べればささやかではあるが、蜘蛛型程度ならこれで十分だ。
たまに仕留め損なってもバジンが足止めして篝が確実に仕留めてくれる。
「新規生産のオートマトンボディの転送終わりました」
「すごいですねっ、その機体が量産されたら勝利は……」
通信機から聞こえてくる浮ついた声に、ミグは頭痛を堪える表情になる。
「扱いを誤れば物資を無駄にするだけの機体じゃ。はしゃぐ暇があるなら外に出したセンサから情報を拾え。1キロ圏内に敵は何体じゃ!」
「は、はい……えっ」
息を呑む音が不吉に響く。
「計測不明っ、VOIDが多すぎ通信障害発生、多数のセンサから情報が届きませんっ」
「VOIDも無能ではないな!」
対照的にミグは燃えている。
「ほほう、そろそろ最終決戦か」
ルベーノが通路から出て来る。これで内部の戦力はほぼ0だ。
「来るぞ!」
クレーターの端360度が盛り上がる。
全て、蜘蛛型の、大軍勢だ。
「引きつけるだけ引きつける。なぁに、崩れてふさがっても上の連中なら転送開始まで生き延びるわい」
「あの司祭を見たときから嫌な予感はしてたのよっ」
地形を壊す動きを見せた蜘蛛隊にのみ矢を撃ち込み後は放置。
クレータの底から半ばまで蜘蛛型が貯まった時点でライフルグレネードで撃ち出し、異様な爆発が積もり積もったVOIDを焼いてメインプラント以外に通じる通路を壊す。
短時間で、4桁中盤のスコアが記録された。
●帰還
「お疲れ様です」
笑顔を浮かべたまま後頭部から倒れそうになったイコニアをカインが支えた。
駆け寄って来る職員に、篝がみっしり書き込まれた目録を渡す。
「何割届いてその何割が使えそう?」
職員は困った顔になる。
「全部届いてはいますが、どの程度使えるかは……」
「作った連中、最後の方寝てたからね。暴走しそうな機械があるなら止めるけど」
「いえ、長期間の遠征お疲れ様でした。人員は既に配置についていますので休息を優先して下さい」
「了解。今回作ったのが次の大規模戦に間に合えばいいんだけどね」
迎えに来た職員だけでなく、多くの人と精霊が深くうなずいていた。
「参ったな」
カイン・A・A・マッコール(ka5336)の声がコクピットに響く。
前方からのレーザーの密度は相変わらずだ。
展開中の光の壁に一切影響を与えられないのも今まで通り。
人間程度の知性を持つ歪虚なら異常に気づくこと程度はできただろうが、この場にいるのは動物未満の思考しか持たないVOIDでありブラストハイロゥが絶大な効力を発揮し続ける。
元バリケードの瓦礫に時折当たって粉微塵になっているがそれだけだ。
かがれた空気を矢が貫いた。
材質も形状も特筆に値することがない普通の矢だ。
狙いは飛び抜けて素晴らしく、受け流す形の装甲に垂直に着弾して貫き、矢羽根まで蜘蛛型VOIDの中に消える。
「この程度なら覚醒する必要もないけど」
次の矢を番えながらリアリュール(ka2003)が独りごちる。
敵は同属が壊されてもその場から動かず負マテリアルの水鉄砲を撃ち続けている。
それは半端なレーザー兵器よりも威力はるのだけれども、光の壁を貫けず無駄に力を使うだけだ。
「無茶をするわね」
曲がりくねる通路の奥を一瞥する。
そこから聞こえる怒号やメイスと装甲がぶつかる音の中に、異様に上機嫌な声が1人分混じっている。
「兵力増強の為といっても、代わりに命を落とすのでは意味がないのに」
怒号の勢いが徐々に衰えている。
光の壁から出ずに撃ち続ければ無傷で勝利可能だが、リスクを覚悟で攻めるしかないだろう。
「汚れた土地では寝ても完全回復とはいかんのだ。忘れているのではないか」
言葉の内容とは逆にルベーノ・バルバライン(ka6752)は上機嫌だ。
生身故の身軽さでバリケード後を通り抜け、前と左右から飛んでくるレーザーを繊細な進路変更で躱す。
高笑いをする。
数秒前で通り過ぎた蜘蛛型がレーザーを放つ。ルベーノの後頭部に直撃する直前に、一瞬展開したマテリアル障壁によって威力を弱められる。
「俺を倒すには1桁足りんなぁ!」
重体で追い込むだけなら5倍で済むがわざわざ説明してやるつもりはない。
冥土の土産を持たせるに値する敵ではないし、何より今は忙しい。
血の臭いと殺気に満ちた気配が濃くなる。
原形をとどめたバリケードが多くなり、人の気配が近くなる。
「そこか」
飛び抜けて乱れた息づかいへと走り、全高2メートル近いバリケードを飛び越える。
白い歯を剥き出しにした女性司祭と蜘蛛型VOIDが、至近距離で命の削りあいをしているところだった。
「勤勉だな、司祭」
問答無用で抱え上げる。
暴れられるのを予想した、俵担ぎだ。
蜘蛛型と司祭があっけにとられたのは1秒に満たない。
VOIDは背を向けたルベーノに向けこれまでと変わらないレーザーを照射。ルベーノはイコニアを庇うため回避をせず防御を選択した。
「おい馬鹿娘また飛び出しやがったな!」
ほぼ無傷だったバリケードが揺れた。
よく見れば蜘蛛型の残骸がめりこみ変形したのに気付けるだろうが、知性の足りない蜘蛛型も消耗の激しい聖堂戦士団も気付けない。
ただ、圧倒的な戦力が近づいてるのは分かる。
「簀巻きにしてクリムゾンウェストへ戻してやる」
CAMが使うようなサイズの斧がちらりと見えて、司祭が微かに狼狽する。
それまでの聖堂教会司祭以外の要素が皆無の顔とは異なり、人間性と年齢相応の未熟さが滲んでいる。
「大事に思われているではないか」
聖堂戦士達が集まってくる。
全員が司祭に好意的な訳ではない。
出世の速度を妬む者もいるし単純に反りが合わない者も大勢いる。
そういう者達も司祭の歪虚への戦意は疑わないし、危険を現場に押しつける上司と同一視しない。
「お前ほど使命に命を掛けるなら、神の覚えも目出度かろう」
ルベーノが来た道を戻る。
VOIDは残骸に変わっているが負の気配に変化は無い。
VOIDが減っても命は増えないのだ。
「だが早死にしない程度に手を抜くことを俺は勧めるがな」
茶化す要素が皆無の真顔であった。
「イコニアさん!」
無事で良かったという思いを押し隠し、楽しみを邪魔するようで気がひけるとでも言いたげな雰囲気を装うカイン。
通路の奥では戦闘が続いているがこの場は安全と判断して光の壁を解き、R7のハッチを開けて直接イコニアと顔をあわす。
「イコニアさんさえ良ければなんですが、外からここへ向かってくる歪嘘を索敵して座標と射撃の指示をお願いしたいのですが、僕らが出来る限り対応します、いや僕がイコニアさんの代わりに奴らを殺す、だから遠慮なく使い潰して下さい」
トランシーバーの周波数を添えたマッピングセットを投げ渡す。
カインの予想よりイコニアの反射神経が鈍く、ルベーノが補助しなければ取り落としていた。
「ああもう」
八原 篝(ka3104)が呆れてため息をついた。
反対側から現れた蜘蛛型を1矢で仕留め、連れてきたオートソルジャーに来た道を戻らせ新手の蜘蛛型群に突入させる。
「敵の新手です。警戒をっ」
この時点でようやく指揮所から情報が届く。
声に怯えがないので指揮所にはまだ敵は向かっていないのだろう。
「こんな状況でも救援が来ないってことは、そういうことね」
司祭は以前会った時より顔色は酷くそれでいて嫌な感じに凄みが増している。作戦に参加した技術陣も、危険な作戦の割に豪華すぎる顔ぶれだった。
つまり独断専行とも言える連合軍の関知しない作戦なのだろう。
「出口まで押し戻すわよ。バジン、この程度ならライフリンク抜きでやれるわ。蹂躙しなさい」
オートソルジャーは魔法的能力にエネルギーを集中させ、ガンポッドを駆使して敵勢を押し始めた。
「全ての任務が大事であることは間違いない。それでもだ」
司祭が下ろされる。
「俺は大してお前のことを知らぬ。それでもだ。この俺にそこまで苦言を呈させるほど、今のお前の行動は危うい。そう簡単に命を懸けるな。お前を愛する者たちにとって、お前が考えるほど、お前の命は軽くない」
言葉を濁さず断定する。
そこに誠意を感じとり、司祭は人間としての要素を隠さず本音を口にする。
「それは認めます。ですが今は別の理由と事情がある。あなたもそれに気付いているから、その程度の苦言で済ませてくれているのでしょう?」
ルベーノの口角がわずかに上を向く。
不敵ではあるが苦みも混じっている。
ハンターと大精霊が力を結集しても邪神の一部にすら勝てなかった。
あれからハンターが力を増しハンター以外の人類も戦力をかき集めているとはいえ、全く足りない。
唐突に、ベルトが締まる金具の音がした。
「構わず続けろ」
うなずくイェジドの鎧からリードが伸び、司祭の首輪に繋がっていた。
「ちょっとボルディアさんいくらなんでも酷くないですかっ」
付き合いの深さ故の気安さで、過激派司祭と超高位ハンターではなく戦友に対する言葉遣いになる。
「お前さぁ。上司に先に死なれると困るのは部下って事分かってるよな? ここまでしても部下が止めに来ない理由を考えろ。俺もさっきのザマを見るまでここまでする気は無かったよ」
追いついてきた聖堂戦士達が勢いよく首を上下に振る。
信仰も戦闘も単体では給料に繋がらない。
実際に集めて現場に運んで来るのはイコニア達管理職だ。
「今は簀巻きは許してやる。ヴァン、暴走したら首根っこ咥えてクリムゾンウェストへ通じる布団に飛び込め」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)はそう言い残し、敵の襲撃がないわずかな時間を活用するため元中規模プラント兼資源保管庫、現瓦礫の山へ向かうのだった。
●蜘蛛型護衛軍
鉄の荒野を巨大な蟹が揺らす。
ゆっくりと1歩踏み出すだけで文明の残骸が砕け、しかし鉄触手でできた柔軟で強固な蟹足には微かな傷もつかない。
立ち止まる。
対歪虚の兵器として開発され、実戦に投入される前に文明が滅んだ新型兵器が、VOIDに取り込まれてようやく完成して人類に牙を剥く。
大量のエネルギーが注ぎ込まれるにつれて微かな唸りが生じ、閾値を超えた瞬間爆発する。
大気が押し退けられ嵐の如く。
ビルじみた巨体が後ろに向かってずるりとずれる。
そして、1発の鉄塊が超音速で天を目指した。
「北北東の地平線っ」
時音 ざくろ(ka1250)の言葉は異様なほどの早口だ。
セレスティア(ka2691)は何を言われたか認識するよりも速く、声の緊張感に背を蹴り飛ばされるように動き出す。
太股の力が微かに増す。
微細な変化から緊急事態であることを理解し、ペガサスは主を乗せたまま真下に向かって全力で飛ぶ。
その丁度1秒後。
頭上数十メートルを鉄塊が通過し、わずかに遅れてソニックブームの暴風がセレスティア達に到着した。
「ありがとうございます。助かりました」
はるか遠く生じた巨大土煙を横目で見ながら、セレスティアは通信機を使ってざくろに礼を述べた。
ひょっとしたら聞こえていないかもしれない。
何故なら、地上に展開する数十数百の蜘蛛型の戦闘音が大き過ぎるのだ。
ざくろのルクシュヴァリエが、全高3メートルのほどの蜘蛛型VOIDに取り囲まれている。
CAM並の巨体で高位覚醒者並の戦闘力という、ロッソ以後のクリムゾンウェスト軍事業界が追い求めていた理想が現実になっている。
剣の一振りで人間より大きな雑魔が砕け。
四方八方から飛んでくる攻撃を9割は躱し残りの1割も浮遊盾で受ける。
機体本体の防御性能も十分に高く、長時間戦闘では必然的に発生する紛れ当たりを浴びても小破にすらならない。
そう、長時間戦闘なのだ。
「駄目だよ!」
刻騎ゴーレムを我が身として扱いながら、ざくろは魂に語りかけてくるものへ返事をする。
「ここにいるのは敵の主力じゃ無ない。必殺わ……スキルは温存しなきゃ」
1つ倒すと2つの増援が現れる状況だ。
集まりすぎたら移動力と身のこなしを活かして引き離してはいるが、これではいくら戦っても勝ちきれない。
魔法的に繋がった相棒からの急報。
味方に警戒を促しながら南へ駆け抜け、数秒後に凶悪な着弾による衝撃で2桁後半の蜘蛛型が微塵に砕ける。
「Lo+っ、直接クレーターへ向かって。コクピットに入れる余裕がないっ」
色つきの負マテリアルがルクシュヴァリエを取り囲む。
回避はできるし防ぐのも容易。
しかし非戦闘員を守りながら戦うほどの余裕はなかい
サイボーグ鳥Lo+の横に、ペガサスがゆったりと降りてきて相対速度を0にする。
「セレスティアと申します。よろしくおねがいしますね」
ハンターもペガサスも疲れているようだが非戦闘員のLo+ほどではない。
「大丈夫です。予定通りではありませんが既に手はうちました」
敵を誘き寄せるために改めて降下し地面に足をつける。
ざくろ機と比べると弱く見えたのか、蜘蛛型の鉄の眼球からレーザーじみた負マテリアルが放たれる。
それは擬似的な連続攻撃であり、高度な体術の使い手でもなぶり殺し確実な必殺技である。
だが超高度な体術の使い手には通じない。
セレスティアのペガサスは空でも強いが地上ではさらに強い。
治癒術を使っていないのにかすり傷1つなく、近距離だけで100近い蜘蛛型を引きつけ非戦闘員の撤退を援護する。
「お元気で」
漆黒のサイボーグ鳥を見送りながら、セレスティアは後1時間であれば耐えられると判断した。
●カニ
砲の大きさと比較して、再装填に必要な時間が短すぎる。
20秒かかるので左右のレールガンを交互に撃って10秒に1発。
異様な射程と威力を兼ね備えた、1国を物理的に滅ぼせる大砲だ。
「転移能力がありゃぁ、王国なら3日で落ちるかもな」
魔斧が旋回する。
絶対に叶わないと悟り、我が身を文字通り盾にしてボルディアを防ごうとした蜘蛛型部隊がレールガンに直撃されたかのように砕け散る。
そこへ本物のレールガンが撃ち込まれる。
高度技術世界の兵器らしく射程の下限など存在しない。
そして技術のみに頼った兵器らしく、超高位の覚醒者の存在を考慮に入れていない欠陥兵器であった。
「塵が目に入るじゃねぇか」
赤毛を風になびかせながら、ボルディアは地獄の戦場を軽い足取りで歩く。
人間の足とは思えない速度でさらに接近。
先程の5割増しの密度の壁を、大斧の一線で先程と同じように削り取る。
合図を送る必要はない。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)もボルディアも、即興で最適な戦術を組み立てられる実力者だ。
「1機と数百体で1部隊か。砲戦ではサルバトーレ・ロッソも危ないだろうが」
ボルディアが破壊した防衛線を踏み越え、大きさでいれば倍、重量でいえば数百倍の蜘蛛型の間をすり抜け砦じみた大きさのそれに近づく。
残り15メートルで、蜘蛛型が密着し作り上げた最後の壁に阻まれる。
「私にここまで近づかれるようではな」
蟹型の巨体からレーザーの速射が始まる。
光速には遠いが音速の数倍に達し、射程内であればリアルブルーの軍用機にも必中する凶悪なマテリアルレーザーだ。
だがその程度ではアルトに届かない。
気配を観て躱し、動きともいえぬ微かな予備動作から予測して回避し、連携して蜘蛛型が放ったレーザー豪雨もするりと避ける。
「先に倒してくれてもいいぜ?」
「一太刀では無理だ」
軽く笑ってオーラを纏う。
初手は加速だ。
防御力のわずかな低下と引き替えに手数を倍ほどに増やし、アルト個人に対して作られた蜘蛛壁を大回りしてすり抜ける。
極限まで効率化された動作は美と禍々しさを兼ね備え、深紅の騎士刀がより一層華やかにアルトを彩る。
半秒遅れて蜘蛛の装甲に亀裂が入る。
亀裂に終わりはなく、両断されたVOIDが機能を失い唐突に消滅して何も残らない。
「脆いのはそこか」
これほどの高速白兵戦では国を崩せる大砲も単なる荷物だ。
足を防御に回そうとしても、動き出すより速くアルトと刃が足と腹の隙間に入り込んでいる。
アルトが刃を突き入れる。
己のレールガン相手でも数発は耐えるはずの装甲が、元から存在しないとでもいうように存在を否定され内部の回路まで切り裂かれる。
攻撃は一度では終わらない。
アルトと紅刃が進み踊るたびに装甲が消え内部がえぐり取られ、その度に鉄触手が欠損を埋め全体の大きさが減っていく。
「これに耐えるか」
スキルの効果が切れた時点で斜め後ろへ跳躍。
アルトが悠々と去った後の空間に、巨大蟹の脚が突き刺さって地面に数メートル埋まった。
レーザーが空間を埋め尽くす。
ざくろ機とセレスティアが引きつけていた蜘蛛部隊も蟹型へ救援に向かおうとして、背後から1機と2人と1体に討たれる。
「こりゃ強ぇな。王級が出てくる戦場にいたらスキルを使わされちまう」
斧が鼻面を粉砕する。
自動的に回路が予備のものに切り替わり、それでも足りない分は負マテリアルを不可逆に消費することで補われ戦闘能力が維持される。
存在の一割を消費しても滅びまでの時間が10秒伸びるだけなのが分かっていても、蟹型VOIDはひたすら耐えて無意味な攻撃を繰り返すことしかできなかった。
●砲撃戦
「引き留めて正解か」
カインがため息をついた。
二度目の蟹討伐に参加したのだが、レールガンの脅威は予想以上だった。
あの威力を相手に無傷で済ませる防御力か超絶の回避能力がないのなら、途中で退却することもできず一方的に撃たれて死ぬ。
ブラストハイロゥでは短時間しか守り切れないのだ。
「正解、か」
イコニア1人であれば彼の手で守れたかもしれない。だが彼にはそうするだけの大義名分がない。
夫でも恋人でもないのだから。
大量の弾がばらけていく独特の音が響いている。
炸裂弾だ。
10や20固まって向かって来る蜘蛛型VOIDの上で炸裂し、無数の子弾により穴だらけになる。
全滅することもあれば数体数体残ることもある。
残ったそれにカインのR7が向かい斬艦刀で仕留める。
個々の生き残りは少なくても蜘蛛型隊の数が多すぎるため、弾数に制限があるプラズマライフルは使えない。
なお、刻令ゴーレム崩天丸の主は何をしていたかというと、砲撃担当ユニットの前でひたすら待機である。
灰色の空を背景に極小の点が迫ってくる。
今回は数分ぶりの命中コースだ。
鳳城 錬介(ka6053)の経験と計算能力が最適な防御を指し示す。
音速越え鉄塊の前に生身で立ち、鉄塊の芯を巨大な盾でそっと押す。
衝撃を半ば返された鉄塊が崩壊。
膨大な数の破片が錬介を襲うが和風の全身甲冑を貫けない。
わずかに遅れて衝撃波が到着する。
あの鉄塊を防いだ錬介にとってはそよ風に等しいが、Volcaniusにとっては地面にしがみつかないと倒れるかもしれない暴風だった。
「焦らず急ごう」
崩天丸が錬介に続く。
Volcaniusの広範囲殲滅力を評価するべきか、錬介ほどの強者が専属で守らねば確実に全壊する脆さを嘆くべきか、人により評価は異なるだろう。
「この距離だと当たらないと思うのだけど」
希にとはいえ何故当たるか分からないと言うリアリュールに、セレスティアがヒーリングスフィアを使いつつ推測を述べる。
「私達の知らない技術があるでしょうか」
ハンターに知る術のないことだが、たまたま条件が重なった偶然の産物だ。
仮に資源を投じて技術として確立しても、対人類でしか効果のない徒花だ。
リアリュールのグリフォンが目で感謝を示す。
フルリカバリーは必要なくてもかすり傷を受けることは何度もあり、複数人をまとめて回復可能なヒーリングスフィアは大活躍だった。
「護衛の蜘蛛型は2人に向かっているようですが」
錬介が崩天丸に指示を与える。
砲が外れないよう固定を再確認。崩天丸は全ての準備を終えた後、どこで覚えたのかを不明な見得を切る。
「いい覚悟だ。走るぞ」
地面が揺れ始める。
地平線を5割を覆う狂気残党軍に向かい、10人に満たないハンターとユニットが突撃を開始した。
●レールガン4
何の変哲も無い矢が、蟹型VOIDにとってはあり得ない速度と技で装甲に突き立った。
3本だ。
蜘蛛が1つずつ放つ無数のレーザーと比べると数は0に等しく、しかし負属性レーザーに数倍する威力の威力の矢は確実に蟹型の命を削る。
蟹型が新たな指令を作成する。
予備の蜘蛛型隊を左右からリアリュールへけしかけ殺害は無理でも攻撃を邪魔するつもりだ。
しかしその思考は空から吸収してきたグリフォンにより邪魔される。
ソラヴァスが風を切って着地する。
優しい風をまとい四方八方から来るレーザーを回避。
防御の風を残した上で風の魔法を解き放つ。
体格相応の装甲を持つ蟹型には通じないが蜘蛛型には効果絶大だ。
威力はそこそこで一撃撃破は滅多にない。だが爆撃じみた突風により壁を作っていた蜘蛛型隊がまとめて吹き飛ばされた。
つまり、CAM何も巨体が侵攻可能な場所ができたということだ。
魔動冒険王『グランソード』が、黄金の鍔で彩られたと白銀の剣を掲げる。
生気の消えた空に微かな光が滲む。
滅びを待つしかなかった中小の精霊達が、冒険王に宿る精霊に呼びかけられざくろに引きつけられ集まってくる。
「汝グランソード」
漫画やアニメと違って集中線も派手な特殊効果もない。
弱り切った精霊が助け合い支え合いながら、冒険王の形として集まり安定する。
光あれ。
超高位の覚醒者であるざくろから力が放たれ、そこに精霊の力が重なり上限を突破する。
存在感が極限まで増した冒険王にとっては蜘蛛型などいないも同然で、苦し紛れのレーザーも自ら避けるかのように外れていく。
「一刀両断」
柄を握る拳に力が入る。
小さな精霊達が重なり合ったまま可愛らしい雄叫びをあげる。
「リヒトカイザー!」
刃が光と化し直線に伸びる。
蟹型が両腕のレールガンを盾として扱い、しかし異音と共に亀裂が発生して砲身が歪む。
光は止まらない。
散々人と精霊を食らった巨体を光が切り裂き、地面に刃が到達した瞬間半身が砕ける爆発が起きる。
精霊のテンションが高くなる。
ざくろも一気に倒してしまおうと力を込める。
「魔動超重斬」
今度は超重練成だ。
単純に大きく重くした剣を再度振りかぶり、一気に振り落として上半身を潰してしかしそこで止まる。
光あれに比べると威力が控えめだった。
蟹型歪虚が内側から崩れていく。
放置しても消え去るだろうがすぐにではない。
「しまっ」
グランソードに組み付かれ、強固ではあるが常識的な範囲でしか無いフレームに巨大な亀裂が入った。
「た?」
だが一瞬で回復する。
返す刀で今度は光あれを使い脚と腕を斬り飛ばす。
蟹の胴が震え、地面に落ちることも出来ずに空気に溶けて消滅した。
「戦場ではこれがあるから怖い」
回復させた錬介が安堵の息を吐く。
もちろん油断など皆無だ。
もう1機の蟹型によるレールガン斉射を盾で受けてゴーレムを守る。
「拙いな」
ボルディア達が足止めされている。
蜘蛛型VOID相手なら1000相手でも必ず勝てる。
しかしスキルが尽きれば一度に1体しか倒せない。
蟹型がかき集めにかき集めた2000近い大群に足止めされていた。
「くっ」
魔動冒険王も同じように足止めされている。
こちらは蜘蛛型の数が1桁少なく短時間で突破はできそうだ。
しかし最後の蟹型の到着の方が早かった。
レールガンを地面に突き刺し機体を安定させる。
先端が潰れ二度と使えなくなるが、ハンターに通用しなかった武器を惜しむ気は全くない。
蟹の形が崩れていく。
甲羅を形作っていた触手が伸びて先端の鉄眼球に負マテリアルが集まる。
「耐えなさい!」
セレスティアが祈りと共に剣を掲げる。
マテリアルの光が集まり純白の翼となり、ペガサスごとセレスティアを優しく包む。
直後、負マテリアルで出来た針の山脈が出現した。
速射レーザーによる連射なのだが負マテリアルの密度が濃すぎて固体同然だ。
避けにくいレーザーを大部分避け、強力な守りの力に包まれているのにペガサスは何度も被弾する。
それだけ敵が強く、しかも必死なのだ。
「っ」
蟹型の増援がまた増えた。
総数の0.1パーセントでも凄まじい数で、これだけ数が多いと不運に不運が重なり急所に被弾することも珍しくない。
だが問題ない。
錬介が問題でなくする。
ファーストエイドと回復術に組み合わせによる即時回復が事故発生率を0に限りなく近づける。
「騎士が剣で仕留めるのが英雄譚の流行だろうけど」
グリフォンの足下に空の矢筒が転がり落ちる。もう何十個目か覚えていない。
「手加減して倒せる相手ではないからね」
イヤリングに仕込んだ通信機で別の班と連絡をとりながら、残り少ないスキルを惜しみなく使う。
3連の矢は、光あれや魔斧や騎士剣ほどではないが十分に威力がありしかも遠くまで届く。
左右からそれぞれ30越えの蜘蛛型に囲まれても、リアリュールは回避と防御を相棒に任せて攻撃に専念できる。
飛ぶと被弾確率が急上昇するので飛んで逃げることはできないとはいえ、だいたいリアリュールの予想通りに戦況が推移していた。
「後は任せてください」
錬介がマテリアルを放出して空間を歪める。
直径6メートルの範囲内にいる味方に対する攻撃を全て引き受ける危険な技だ。
高位覚醒者の中でも飛び抜けた防御能力を持つ彼ですら、使用タイミングを間違えれば削り殺されるのがこの戦場だ。
レールガンを喪失した蟹型を含め、全てのレーザーが錬介の構える盾へ集中した。
「ペガサス、錬介さんの援護を。私はっ」
セレスティアが相棒から飛び降り、見上げると首が痛くなる巨体へ駆け寄る。
装備は剣の盾だ。
剣は治癒術使用に向いたものなので、この戦場においては並程度の威力しかない。
「引きつけます」
龍鉱石で覆われた刃が清らかな光を放つ。
全長が1メートルを超えているのに、レイピアとして扱い分厚い装甲を貫き通す。
それで終わらず攻撃と同速度で剣を引き抜き、上からの負レーザを盾で受け流し角度を変えた刺突を繰り出す。
蟹がセレスティアに意識を集中する。身を乗り出すようにして無防備な背中を晒す。
どんな武器も使い手次第という好例だ。
「っ」
矢から指を離した瞬間、リアリュールが無意識に息を漏らす。
当たった。
1本が装甲で弾かれもう1本が半ばまで埋まって止まり、最後の1本が細い亀裂をすり抜け奥深くに突き刺さる。
レールガンの直撃に似た爆発が発生。
原因はエネルギー保管装置の爆発。
右半身が砕けてばらばらに。
甲羅の右端が叩きつけられるようにして地面に落ち、けれど異様に優れた姿勢制御装置により即座に安定する。
「プラントで見たものと同じですか」
錬介が静かに歩み寄る。
蟹型から吹いてくる負マテリアルも360度から飛んでくる負レーザーも受けてもかすり傷未満しか負わず、聖盾剣「アレクサンダー」に勢いをつけて振り下ろす。
CPUが押し潰され、VOIDの意思もエバーグリーン人に命じられた命令も揮発する。
決戦兵器になれなかった兵器が、ようやく終わりを迎えることができた。
●前倒しされた決戦
森の午睡の前奏曲が聖堂戦士団の命綱だった。
「邪魔よどきなさい!」
酷い顔色の戦士達を通路で追い返す。
「全くどいつもこいつも」
特に戦士団に恨みがあるわけでは無いが、実力以上のことをしよう者達の面倒を見続けるのはストレスがたまる。
「バジン、ハンター2人とあなたで守ることになるわ。小型プラントは放棄する前提で動くわよ」
希少資源の回収は既に諦めている。
いつ崩れるか分からない穴にいるときクレーター経由で蜘蛛型が来たら、篝もバジンも本気を出せず倒れるか本気を出して蜘蛛型ごと土砂に埋もれて死にかねない。
クレーターへ向かう通路から強烈な風と爆発じみた砲声が向かって来る。
一般的聖堂戦士にとっては体調に止めを刺す攻撃に等しく、篝にとってはちょっと五月蠅いだけの慣れた音だ。
「ばかもーん!」
拡声器を使っていないのにミグ・ロマイヤー(ka0665)の声はよく響く。
「中身はほとんど爆薬じゃ。もっと丁寧に扱え死にたいのか!」
ゾンビじみた聖堂戦士の動きがほんの少しだけましになる。
クレーターの底、頼もしいを通り越して禍々しくすらあるダインスレイブ改造機が、2門の滑空砲を120度回転させぴたりと静止させた。
「耳を押さえて口を開けろ!」
大気が震え地形が揺れた。
超重量とハンターの身のこなしを兼ね備えたヤクト・バウ・PCでも発射の際に砲身を保持するので精一杯だ。
大型の爆薬を追加しブースターによる加速を加えて撃ち出すという、有能な技術者なら誰でも一度は考えリスクを考慮し諦める超絶砲撃。
そんなものを、既存の技術のみで無理なく成立させた開発者の能力と執念は実に凄まじい。
「奴等しくじったか?」
予測より敵の襲撃が頻繁だ。
あのメンバーが王級未満のVOIDに破れるとは思えない。
おそらく、迎撃に間に合わないVOID全てにここへの襲撃が命令されたのだ。
「どのくらいもつ?」
単機か2機ごと転がり落ちてくる蜘蛛型を篝が矢で仕留める。
最後まで転がってくるなら結構な脅威になるが、負マテリアルに存在をすり減らされたそれは数メートル転がることも出来ずに次々消えていく。
「グランドスラムなら後10発よ。弾薬はハンターズソサエティーから分捕って来たがこれ以上は機体がもたぬ」
追加弾薬を滑空砲に仕込みながらプラズマライフルの引き金を引く。
射程も威力も効果範囲も先程の砲撃に比べればささやかではあるが、蜘蛛型程度ならこれで十分だ。
たまに仕留め損なってもバジンが足止めして篝が確実に仕留めてくれる。
「新規生産のオートマトンボディの転送終わりました」
「すごいですねっ、その機体が量産されたら勝利は……」
通信機から聞こえてくる浮ついた声に、ミグは頭痛を堪える表情になる。
「扱いを誤れば物資を無駄にするだけの機体じゃ。はしゃぐ暇があるなら外に出したセンサから情報を拾え。1キロ圏内に敵は何体じゃ!」
「は、はい……えっ」
息を呑む音が不吉に響く。
「計測不明っ、VOIDが多すぎ通信障害発生、多数のセンサから情報が届きませんっ」
「VOIDも無能ではないな!」
対照的にミグは燃えている。
「ほほう、そろそろ最終決戦か」
ルベーノが通路から出て来る。これで内部の戦力はほぼ0だ。
「来るぞ!」
クレーターの端360度が盛り上がる。
全て、蜘蛛型の、大軍勢だ。
「引きつけるだけ引きつける。なぁに、崩れてふさがっても上の連中なら転送開始まで生き延びるわい」
「あの司祭を見たときから嫌な予感はしてたのよっ」
地形を壊す動きを見せた蜘蛛隊にのみ矢を撃ち込み後は放置。
クレータの底から半ばまで蜘蛛型が貯まった時点でライフルグレネードで撃ち出し、異様な爆発が積もり積もったVOIDを焼いてメインプラント以外に通じる通路を壊す。
短時間で、4桁中盤のスコアが記録された。
●帰還
「お疲れ様です」
笑顔を浮かべたまま後頭部から倒れそうになったイコニアをカインが支えた。
駆け寄って来る職員に、篝がみっしり書き込まれた目録を渡す。
「何割届いてその何割が使えそう?」
職員は困った顔になる。
「全部届いてはいますが、どの程度使えるかは……」
「作った連中、最後の方寝てたからね。暴走しそうな機械があるなら止めるけど」
「いえ、長期間の遠征お疲れ様でした。人員は既に配置についていますので休息を優先して下さい」
「了解。今回作ったのが次の大規模戦に間に合えばいいんだけどね」
迎えに来た職員だけでなく、多くの人と精霊が深くうなずいていた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 カイン・A・A・カーナボン(ka5336) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2019/03/20 08:57:10 |
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質問卓 ボルディア・コンフラムス(ka0796) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2019/03/19 21:05:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/03/17 10:36:32 |