ゲスト
(ka0000)
【幻想】侵撃の黒
マスター:猫又ものと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/03/23 22:00
- 完成日
- 2019/04/06 08:09
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ベスタハ遺跡
――ベスタハ。
歪虚に仲間達を売り、『怠惰』に魅入られたオイマト族の男が、『災厄の十三魔』と呼ばれる存在となった場所。
オイマト族の者が引き起こした災禍により、沢山の辺境の戦士達が死んだ悲劇の地。
この地にやって来てきてから、バタルトゥ・オイマト(kz0023)の表情がいつにも増して硬い。
元々、責任感が強すぎる男だ。この地について思うところがあるのだろうけれど……。
「バタルトゥさん、大丈夫?」
「……無論。問題ない」
ハンターの問いかけに淡々と答えるバタルトゥ。
思うところはあれど、仕事に私情は挟まない――と言ったところだろうか。
先日、神霊樹の記憶を辿り、怠惰王による災厄への対抗策を探したハンター達。
彼らの調査の結果、過去に『ニガヨモギ』に対抗する為に作られたオートマトンが存在し、それがベスタハの地に眠っていることが判明した。
その対抗策であるオートマトンを迎えに行こうとしたところ、怠惰の歪虚達も動き出したという報せが入ったのだ。
そこで急遽、バタルトゥはヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)と辺境部族の戦士達を伴いベスタハ入りした。
ヴェルナーとハンター達にオートマトンの探索を頼み、自分は歪虚の襲撃に備える為だ。
そのオートマトンの存在は、確実に怠惰王オーロラの動きの妨げとなる。
その事実を、青木 燕太郎(kz0166)が見逃すはずがない――。
――奴は必ず現れる。
そんな確信もあり、バタルトゥはベスタハの遺跡に多くの兵を布陣していた。
「なあ、バタルトゥ。こんな正面に兵を集めちまっていいのか?」
「青木を警戒するなら、遺跡を包囲した方がいいんじゃない?」
「……いや、あえて手薄なところを作る。そうすれば、青木はそこを狙うだろう……」
ハンターの言葉に淡々と答えるバタルトゥ。
あえて手薄な場所を作り、そこに数名のハンターを配置。
そこにやってきた青木を足止めし、バタルトゥ率いる戦士達で挟撃するということらしい。
「ふーん。悪くない策だが、あいつこんな簡単な策に引っ掛かるかね」
「大丈夫じゃない? 最近の青木、ビックマー吸収したせいか頭悪くなってる気がするし」
「……どちらにせよ、あいつは対抗策を潰しに来ざるを得ない。……お前達に負担の多い策になってしまうのが申し訳ないが……」
「なーに。そこを何とかするのが俺達の仕事だろ」
「そうね。バタルトゥ。青木を見つけたらすぐに連絡できるように通信機の手配をお願い出来るかしら」
「……勿論だ。……今回の俺達の使命は、ニガヨモギの対抗策であるオートマトンの保護だ。青木は撃退するだけでいい。くれぐれも無理はするな……」
バタルトゥの指示に、頷くハンター達。
通信機を受け取ると、準備を開始する。
本隊から離れ、見回りの体をとって遺跡後方を歩いていたハンター達。
その異変に気付いたのは、1人のハンターだった。
「どうかしました?」
「……何か来てるぞ。負のマテリアルの気配がする」
振り返るハンターの目線の先。膨大な負のマテリアルを撒き散らしながら現れたその姿に、ハンター達は息を飲む。
「……やっぱり来たな。青木」
「やれやれ。抑えているつもりだったが、やはり隠密には向かんな」
ハンターの声に、肩を竦める青木。
どこか余裕のある様子に、ハンター達は黒い歪虚を睨みつける。
「対抗策を潰しに来たのか。お前もご苦労なこったな」
「女の子の為に必死になるなんて、随分と宗旨替えをしたものね?」
「……そんな無駄口を叩いていていいのか? 分かり易い策に敢えて乗ってやったんだが」
ハンターの問いかけにニヤリと笑い、槍を構える青木。
ハンター達は距離を取りながら、その殺気を感じ取って……。
1人のハンターが通信機を手にする。
「バタルトゥ、聞こえる? こちらハンター。今神殿後方で青木 燕太郎に接触したわ。支援をお願い」
『……バタルトゥだ。聞こえている。……急ぎそちらに向かう。それまで持ち堪えてくれ……』
「了解」
通信を終えたハンターはゆっくり青木を見据える。
「まもなく応援部隊が来るわよ。流石のあなたも部族会議の大首長率いる一個小隊を相手にするのは分が悪いんじゃない?」
「……そうだな。さっさとお前達を倒して中に入った方が良さそうだ」
言うなり、槍を振るう青木。繰り出された衝撃波で地面が抉れる。
「……さて。時間がない。そこを退いて貰おうか」
底冷えするような黒い瞳。
闇黒の魔人を前に、ハンター達は武器を構えた。
――ベスタハ。
歪虚に仲間達を売り、『怠惰』に魅入られたオイマト族の男が、『災厄の十三魔』と呼ばれる存在となった場所。
オイマト族の者が引き起こした災禍により、沢山の辺境の戦士達が死んだ悲劇の地。
この地にやって来てきてから、バタルトゥ・オイマト(kz0023)の表情がいつにも増して硬い。
元々、責任感が強すぎる男だ。この地について思うところがあるのだろうけれど……。
「バタルトゥさん、大丈夫?」
「……無論。問題ない」
ハンターの問いかけに淡々と答えるバタルトゥ。
思うところはあれど、仕事に私情は挟まない――と言ったところだろうか。
先日、神霊樹の記憶を辿り、怠惰王による災厄への対抗策を探したハンター達。
彼らの調査の結果、過去に『ニガヨモギ』に対抗する為に作られたオートマトンが存在し、それがベスタハの地に眠っていることが判明した。
その対抗策であるオートマトンを迎えに行こうとしたところ、怠惰の歪虚達も動き出したという報せが入ったのだ。
そこで急遽、バタルトゥはヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)と辺境部族の戦士達を伴いベスタハ入りした。
ヴェルナーとハンター達にオートマトンの探索を頼み、自分は歪虚の襲撃に備える為だ。
そのオートマトンの存在は、確実に怠惰王オーロラの動きの妨げとなる。
その事実を、青木 燕太郎(kz0166)が見逃すはずがない――。
――奴は必ず現れる。
そんな確信もあり、バタルトゥはベスタハの遺跡に多くの兵を布陣していた。
「なあ、バタルトゥ。こんな正面に兵を集めちまっていいのか?」
「青木を警戒するなら、遺跡を包囲した方がいいんじゃない?」
「……いや、あえて手薄なところを作る。そうすれば、青木はそこを狙うだろう……」
ハンターの言葉に淡々と答えるバタルトゥ。
あえて手薄な場所を作り、そこに数名のハンターを配置。
そこにやってきた青木を足止めし、バタルトゥ率いる戦士達で挟撃するということらしい。
「ふーん。悪くない策だが、あいつこんな簡単な策に引っ掛かるかね」
「大丈夫じゃない? 最近の青木、ビックマー吸収したせいか頭悪くなってる気がするし」
「……どちらにせよ、あいつは対抗策を潰しに来ざるを得ない。……お前達に負担の多い策になってしまうのが申し訳ないが……」
「なーに。そこを何とかするのが俺達の仕事だろ」
「そうね。バタルトゥ。青木を見つけたらすぐに連絡できるように通信機の手配をお願い出来るかしら」
「……勿論だ。……今回の俺達の使命は、ニガヨモギの対抗策であるオートマトンの保護だ。青木は撃退するだけでいい。くれぐれも無理はするな……」
バタルトゥの指示に、頷くハンター達。
通信機を受け取ると、準備を開始する。
本隊から離れ、見回りの体をとって遺跡後方を歩いていたハンター達。
その異変に気付いたのは、1人のハンターだった。
「どうかしました?」
「……何か来てるぞ。負のマテリアルの気配がする」
振り返るハンターの目線の先。膨大な負のマテリアルを撒き散らしながら現れたその姿に、ハンター達は息を飲む。
「……やっぱり来たな。青木」
「やれやれ。抑えているつもりだったが、やはり隠密には向かんな」
ハンターの声に、肩を竦める青木。
どこか余裕のある様子に、ハンター達は黒い歪虚を睨みつける。
「対抗策を潰しに来たのか。お前もご苦労なこったな」
「女の子の為に必死になるなんて、随分と宗旨替えをしたものね?」
「……そんな無駄口を叩いていていいのか? 分かり易い策に敢えて乗ってやったんだが」
ハンターの問いかけにニヤリと笑い、槍を構える青木。
ハンター達は距離を取りながら、その殺気を感じ取って……。
1人のハンターが通信機を手にする。
「バタルトゥ、聞こえる? こちらハンター。今神殿後方で青木 燕太郎に接触したわ。支援をお願い」
『……バタルトゥだ。聞こえている。……急ぎそちらに向かう。それまで持ち堪えてくれ……』
「了解」
通信を終えたハンターはゆっくり青木を見据える。
「まもなく応援部隊が来るわよ。流石のあなたも部族会議の大首長率いる一個小隊を相手にするのは分が悪いんじゃない?」
「……そうだな。さっさとお前達を倒して中に入った方が良さそうだ」
言うなり、槍を振るう青木。繰り出された衝撃波で地面が抉れる。
「……さて。時間がない。そこを退いて貰おうか」
底冷えするような黒い瞳。
闇黒の魔人を前に、ハンター達は武器を構えた。
リプレイ本文
――ベスタハ。
オイマト族の者が引き起こした災禍により、沢山の辺境の戦士達が死んだ悲劇の地が、再び戦場になろうとしている。
強烈な負のマテリアルを撒き散らしながらやってきた存在に、夜桜 奏音(ka5754)はふう、とため息をついた。
「……毎回のことながら行動が早いですね」
「ホントにね。ちょっとくらい見逃してくれてもいいのに」
「それは無理と言うものだな」
肩を竦めるアルスレーテ・フュラー(ka6148)に、不敵な笑みを返す青木 燕太郎(kz0166)。
奏音は黒い瞳でその姿を捉える。
「そうでしょうね。それでも……青木さん。ここから手を引いて貰えると嬉しいんですが」
「交渉にもなっていないぞ、ハンター。ここから手を引いて俺に何の得がある?」
「何? 得があればいいの? 折角だから私のスカートでも捲って遊んでいきなさいよ。ついでにツナサンド持ってきてるから食べていいわよ」
「要らん」
「即答!? ちょっと失礼なんじゃないの!?」
ズバッと切り捨てられて歯ぎしりするアルスレーテ。イスフェリア(ka2088)は苦笑しながら歩み出る。
「青木さんは、ニガヨモギの力をどう思っているの?」
彼女の言葉に無言を返す青木。
――イスフェリアは、出会い頭から戦うのではなく、会話で少しでも時間稼ぎをできたら……と考えていた。
彼も時間がないことは理解している。少しでも青木が反応する話題を……。
そう考えながら、言葉を選ぶ。
「この前ね、過去の世界でニガヨモギを体験してきたの。ニガヨモギは、今より強力だった。あの力は、歪虚にも影響があるし、オーロラさん本人にも影響がありそうだよね」
「そうです。オーロラさんは……」
「二人とも下がれ!」
言いかけたエステル・ソル(ka3983)。アルバ・ソル(ka4189)の短い叫びと青木の槍が振るわれたのはほぼ同時。
それを寸でのところで受け止めて、花厳 刹那(ka3984)が歪虚に冷たい目線を送る。
「何? 問答無用ですか? 随分余裕がないんですね」
「……お前達に語ることなど何もない。時間稼ぎに付き合ってやる暇はない。そこを退け」
「……!」
怒気を隠そうともしない青木に目を見開くイスフェリア。
――以前とは明らかに違う反応。
余裕がないのはそれだけ真の怠惰王たる少女が大切なのだろうと思っていたのだが――それだけではない。
彼自身に何か変化が起きている……?
エステルは一歩前に出て、橙色の瞳を青木に向けた。
「オーロラさんも記憶を失っているのですか? もしそうなら記憶は戻せないですかね。……だって忘れられたら悲しいです」
「黙れ。今更お前達に何が出来る。……どんなに祈っても願っても、人を救い続けたあの子を誰も助けなかった。俺ですらも……!」
「青木さん……」
言葉を続けようとするエステルとイスフェリアを、首を振って制止するアルバ。
――目の前の歪虚から感じる、深い憤りと哀しみ、絶望。
それは彼が、記憶を取り戻したからこそ得た感情。
青木とオーロラが、過去に何か関わりがあったことだけは間違いなさそうだが、問うたところで彼が答えるとも思えない。
言葉の断片からしか伺い知ることは出来ないが……彼自身、少女を救えなかったことを悔やんでいるのかもしれない。
「青木。君が何を考え、どういう気持ちでこの場にいるのだとしても。僕は止めるよ。君をね」
「……面白い。出来るものならやってみろ」
アルバの声に応えた青木。
ハンター達はそれぞれ武器を構え――。
「まずは少しでも長く生き残れるようにしましょうか。……行きます!」
「支援するです! 気を付けてください!」
符を投げて、防御力を高める結界で仲間達を包む奏音と精霊に祈りを捧げ、マテリアルを活性化させるエステル。
柔らかな光を受けた刹那。そのまま踏み込み、上段の構えから一気に振り下ろす。
それを寸でのところで避けた青木は刹那を一瞥する。
「随分と隙が多いな、女」
「そりゃそうでしょう。『狙って』そうしてるんですから」
「残念! 私がいるわ……って硬っ!!」
薄く笑う刹那。その後ろから現れたアルスレーテ。
風を切る音。アルスレーテの蹴りは青木の足に入ったが……鋼でも蹴ったかのような衝撃に顔を顰める。
見た目は普通の人間のそれと変わらないが、数多くの歪虚を吸収したことで能力自体が上がっているのだろう。
――だが、ダメージが全く通っていない訳ではないはずだ。
確実に攻撃を命中させて、妨害と邪魔を蓄積すれば、さすがの青木とて諦める筈……!
「アルスレーテさん! 続けて行きますよ!」
「OK! 任せといて!」
すぐさま散会する刹那とアルスレーテ。
2人同時に打ち込んだり、少しタイミングをズラして多段に仕掛けたりと、連携の取れた美しい攻撃が幾度となく撃ちこまれる。
だが、腹立たしいことに――青木は刹那やアルスレーテの攻撃を受け流すばかりで積極的に攻撃を打ち出して来なかった。
――ソードブレイカーを警戒しているのか、それともわざわざ相手をするまでもないと思っているのか。
そうであれば、攻撃を引き出してやるまでだ。
状況を冷静に見ていたアルバは、エステルに合図を送る。
「合わせろ! エステル!」
「はいです! 鳥さん、お願いします!」
短い詠唱。アルバとエステルから発せられる光の矢。
弧を描いて飛来する5羽の小鳥と5本の矢に舌打ちした青木は、槍を構えて――。
「アルスレーテさん! 下がって!」
「おっと」
刹那の声に咄嗟に踏み止まるアルスレーテ。次の瞬間、響く破裂音。
青木の振るった矢から全方位に向けて衝撃波が放たれる。
衝撃波は光の矢を打ち消すも、全てを消すまでには至らず……。
流石にこの攻撃をソードブレイカーで封じるのは無理があるな――などと考えていたアルバとアルスレーテ。
矢を数本受けた青木は苛立ちを隠さず、ハンター達を睨み付ける。
「煩い羽虫どもが……! 遺跡ごと纏めて薙ぎ払ってやる……!」
吐き捨てるように言う青木。金色に変化する目。
右手をまっすぐに。そして左手を折り曲げて……まるで、矢を番えるような姿勢になる。
その手に、じわじわと形を成す黒い大きな弓。
その上空。ぐにゃりと歪む空間。水の波紋のような波……その中心から、3本の黒い槍が出現して――。
「それは発動されると困りますね……!」
呟く奏音。
彼女は仲間を支援しつつ、ずっとこの瞬間を待っていた。
「呪符封印! 急ぎ律令の如くせよ!」
投げられる符。発動した封印術。
力を抑え込まれ、消えて行く黒い弓に青木が舌打ちする。
奏音の黒曜封印符は見事黒弓を封じることに成功したが……。
スキルを封印し続ける為には、集中が必要になる。
要するに、術を行使している間奏音は能動的な行動を一切取れないのだ。
――この状態を青木に狙われると非常に厄介である。
「また貴様か。本当に厄介だな。ここで死ね」
「黙って行かせる訳ないでしょ……?」
奏音に狙いを定めた青木に大地を強く踏みしめ、高速移動で相手の間合いに飛び込むアルスレーテ。
そのまま怪力無双で黒い歪虚を抑え込もうとするが――その作戦は、現実的ではないとすぐに覚る結果となった。
青木は怠惰の感染こそ撒き散らさないが、至近距離にいればそれなりの影響を受ける。
濃密な負のマテリアルで息苦しい。
強烈な寒気と力が抜けて行くような感覚に、アルスレーテは眉を顰める。
「……ちょっと何これ。聞いてないわよ。力比べは分が悪いみたいね」
「身の程を知れ、女」
「それはこっちの台詞ですよ!」
不意聞こえた声。背後から出現した刹那。
赤い光が炎のように吹き出した刀身が青木の肩口を切り裂く。
「あらやだ。本当に硬いですね。何食べたらこんなになるんです?」
「ん? やっぱりそこはビックマーってことになるのかな?」
「ビックマーさん、柔らかそうでしたのに……」
煽るような刹那の台詞に、アルスレーテを癒しながら首を傾げるイスフェリアとズレた返答をするエステル。
それは青木の苛立ちを煽るには十分だったらしい。
彼はアルスレーテを振り切ると、奏音に迫ろうと行動を開始する。
「先に行かせるな!」
「はいです!」
アルバの声に応じて、青木の進む先、誰もいない空間目掛けてグラビティフォールを放つエステル。
紫色の光を伴う重力波が出るも、一瞬で消失し……何の効果もないことを覚って彼女は目を丸くする。
エステルとしては、移動させたくない空間に術をかけ、移動先を制限するような効果を期待していたのだが……そもそもグラビティフォールの効果時間は一瞬で、持続する訳ではない。
残念ながら、対象がいない空間にかけてもそういった効果が得られるものではないのだ。
「エステル! 切り替えろ!」
青木の進行方向に土壁を生成し、叫ぶアルバ。
エステルはハッとして、振り返って奏音を見る。
――こうしている間も彼女は意識を集中し、寡黙な戦いを続けている。
黒弓の他にもう一つ、黒い鎖を放つ攻撃を見せていたが……あれは見るだに反動が強く、そう簡単には使って来ないだろうと思う。
ともなれば、今回のカギは長距離に届き、広範囲での破壊が可能な黒弓ということになる。
地味ではあるが、奏音がこの戦いの命運を握っていると言っても過言ではない。
そうです。失敗は成功のお母さんです。次に活かせばいいのです!
この地での戦いに複雑な思いを抱いているであろうあの人の為にも、ここで防がなくては……!
「……分かってるです、お兄様!」
顔を上げるエステル。続く詠唱。守護精霊の力を借り、奏音を羽の幻影で包み込む。
――奏音は、集中しながらも仲間達から必死に守られていることを感じていた。
何だか申し訳ないような気もするが……これも立派な仕事と割り切って、術の継続に全意識を集中させる。
何としてでも、援軍の到着まで持たせなくては……!
そうしている間も、青木の行く手を阻むように攻撃を続けていた刹那。
青木の衝撃波の範囲が思ったより広く、飛ばされた岩が遺跡に当たっているのが気になるが……出来ることをやるしかない。
命中させることを重視した刹那の攻撃は確実に妨害に役立っていたが――その分幾度となく闇黒の魔人の攻撃を受け、既に動くのがやっとの状態になっていた。
勿論、アルバやアルスレーテも攻撃には加わっているが、青木が狙うのは刹那ばかり。
どうやらソードブレイカーを使える者を警戒しているようにも見える。
「……イスフェリア、刹那を連れて一旦下がって貰っていいか? 回復を頼みたい」
「分かったよ」
「むう。こんなモテ方嬉しくないですね……!」
アルバの言葉に頷くイスフェリア。刹那がむくれる一方で……青木は、不意に距離を取るように跳躍する。
「ようやくお帰り戴けるのかしら」
「……いや。まだのようだ」
鉄扇を構え直したアルスレーテの横で目を細めるアルバ。
次の瞬間、感じる寒気。周囲のマテリアルが急激に吸い取られるような、奇妙な感覚――。
ハンター達はこの攻撃を知っている。あれは投擲槍だ……!
青木の狙いは奏音だと悟り、再び土壁を呼び出すアルバ。
しかし、この壁だけではあの槍は防ぎきれまい。
……あんなもの何度も撃たれたら厄介だし。ソードブレイカー狙った方が得策かしらね。
幸い縮地瞬動の使用回数は残っている。ここからなら十分割り込めるだろう。
そう考えたアルスレーテは、足にぐっと力を入れた。
「ちょっとあれ止めて来るわ。あとお願いね」
「アルスレーテ……!?」
聞こえたアルバの声は一瞬で後ろへ遠ざかり……奏音の前に立ちふさがるアルスレーテ。
投げられた槍は黒い気を纏い、土壁を破壊し、そして彼女の身体を貫いた。
「チッ。仕損じたか……!」
「……青木さん。これ以上はダメだよ」
すぐさま槍を構え直す青木。両手を広げて立ち塞がるイスフェリア。
目を見開いた青木。槍が動きを止め――。
口の端から血を滲ませながら青木を見上げるアルスレーテ。
この距離であればイスフェリアを押し退けて、自分を人質に取ろうと思えば簡単な筈。
なのに動こうとしない歪虚に違和感を覚えて、彼女は口を開く。
「……何よ。人質に取らないの?」
「……その必要はない」
「何でよ。うら若い乙女が身体張ってあげたんだから質問くらい答えなさいよね……」
「以前はそうした方が有利だからしていたが……今は違う。力を得たからな。そんな手間をかけるより、全員討ち倒した早い」
「ああ、そういう事……」
青木の返答にげんなりする彼女。
――要するに、これまで積極的に人質を取っていたのは「そうしなければハンターに敗れる」可能性があったからだ。
これほどまでにハンター達の攻撃を受けても戦い続けられる程の力を得た今は、その必要がないという訳だ。
深い傷を負った刹那とアルスレーテに代わり、エステルがイスフェリアの隣に立って壁となる。
「……青木さん。援軍が来ました。ここまでです!」
ふと後方に目線を送るエステル。そこには、駆け付けて来るバタルトゥ・オイマト(kz0023)と辺境の戦士達が見えて――。
「……潮時か。仕方ない。引こう」
その姿に早々に判断を下し、短くため息をついて踵を返す青木。その背に、イスフェリアが声をかける。
「待って、青木さん。……わたしごと攻撃しようと思えば出来たはずなのに。何でしなかったの?」
「……さてな」
背を向けたまま答える青木。
――揺れる金色の長い髪。
あの子ではないと頭では理解している。
それでも……。
闇黒の魔人は振り返ることもなく、ベスタハ遺跡を後にした。
刹那とアルスレーテは立てない程の怪我を負ったが、それ以外の者は無事であったし、遺跡の壁が衝撃波の煽りを受けて一部壊れた程度で、大した損傷は受けなかった。
「……良くこれだけの人数で持ち堪えてくれた。部族会議の大首長として礼を言わせてくれ……」
「あっ。あの! 当たり前のことしただけです! バタルトゥさんの助けになれて良かったです!」
青木が去った後、満身創痍のハンター達を見て深く頭を下げるバタルトゥに笑みを返すエステル。
ベスタハの地に降り立って、色々思うところはあるだろうに……こういう礼儀正しいところが、指導者として慕われる一つの理由なのだろうと思う。
「バタルトゥさん。ニガヨモギの対抗策は?」
「……ああ、無事に確保したとヴェルナーから連絡があった」
「良かった……」
奏音の問いに頷くバタルトゥ。その返答に、イスフェリアが胸を撫で下ろす。
――これで、怠惰の王と戦う準備は出来た。
それを守る歪虚達との戦いも、次が佳境となるだろう。
「……ひとまず、次の作戦まで ゆっくり怪我を癒してくれ」
気遣いを見せるバタルトゥに、ハンター達は頷き返した。
オイマト族の者が引き起こした災禍により、沢山の辺境の戦士達が死んだ悲劇の地が、再び戦場になろうとしている。
強烈な負のマテリアルを撒き散らしながらやってきた存在に、夜桜 奏音(ka5754)はふう、とため息をついた。
「……毎回のことながら行動が早いですね」
「ホントにね。ちょっとくらい見逃してくれてもいいのに」
「それは無理と言うものだな」
肩を竦めるアルスレーテ・フュラー(ka6148)に、不敵な笑みを返す青木 燕太郎(kz0166)。
奏音は黒い瞳でその姿を捉える。
「そうでしょうね。それでも……青木さん。ここから手を引いて貰えると嬉しいんですが」
「交渉にもなっていないぞ、ハンター。ここから手を引いて俺に何の得がある?」
「何? 得があればいいの? 折角だから私のスカートでも捲って遊んでいきなさいよ。ついでにツナサンド持ってきてるから食べていいわよ」
「要らん」
「即答!? ちょっと失礼なんじゃないの!?」
ズバッと切り捨てられて歯ぎしりするアルスレーテ。イスフェリア(ka2088)は苦笑しながら歩み出る。
「青木さんは、ニガヨモギの力をどう思っているの?」
彼女の言葉に無言を返す青木。
――イスフェリアは、出会い頭から戦うのではなく、会話で少しでも時間稼ぎをできたら……と考えていた。
彼も時間がないことは理解している。少しでも青木が反応する話題を……。
そう考えながら、言葉を選ぶ。
「この前ね、過去の世界でニガヨモギを体験してきたの。ニガヨモギは、今より強力だった。あの力は、歪虚にも影響があるし、オーロラさん本人にも影響がありそうだよね」
「そうです。オーロラさんは……」
「二人とも下がれ!」
言いかけたエステル・ソル(ka3983)。アルバ・ソル(ka4189)の短い叫びと青木の槍が振るわれたのはほぼ同時。
それを寸でのところで受け止めて、花厳 刹那(ka3984)が歪虚に冷たい目線を送る。
「何? 問答無用ですか? 随分余裕がないんですね」
「……お前達に語ることなど何もない。時間稼ぎに付き合ってやる暇はない。そこを退け」
「……!」
怒気を隠そうともしない青木に目を見開くイスフェリア。
――以前とは明らかに違う反応。
余裕がないのはそれだけ真の怠惰王たる少女が大切なのだろうと思っていたのだが――それだけではない。
彼自身に何か変化が起きている……?
エステルは一歩前に出て、橙色の瞳を青木に向けた。
「オーロラさんも記憶を失っているのですか? もしそうなら記憶は戻せないですかね。……だって忘れられたら悲しいです」
「黙れ。今更お前達に何が出来る。……どんなに祈っても願っても、人を救い続けたあの子を誰も助けなかった。俺ですらも……!」
「青木さん……」
言葉を続けようとするエステルとイスフェリアを、首を振って制止するアルバ。
――目の前の歪虚から感じる、深い憤りと哀しみ、絶望。
それは彼が、記憶を取り戻したからこそ得た感情。
青木とオーロラが、過去に何か関わりがあったことだけは間違いなさそうだが、問うたところで彼が答えるとも思えない。
言葉の断片からしか伺い知ることは出来ないが……彼自身、少女を救えなかったことを悔やんでいるのかもしれない。
「青木。君が何を考え、どういう気持ちでこの場にいるのだとしても。僕は止めるよ。君をね」
「……面白い。出来るものならやってみろ」
アルバの声に応えた青木。
ハンター達はそれぞれ武器を構え――。
「まずは少しでも長く生き残れるようにしましょうか。……行きます!」
「支援するです! 気を付けてください!」
符を投げて、防御力を高める結界で仲間達を包む奏音と精霊に祈りを捧げ、マテリアルを活性化させるエステル。
柔らかな光を受けた刹那。そのまま踏み込み、上段の構えから一気に振り下ろす。
それを寸でのところで避けた青木は刹那を一瞥する。
「随分と隙が多いな、女」
「そりゃそうでしょう。『狙って』そうしてるんですから」
「残念! 私がいるわ……って硬っ!!」
薄く笑う刹那。その後ろから現れたアルスレーテ。
風を切る音。アルスレーテの蹴りは青木の足に入ったが……鋼でも蹴ったかのような衝撃に顔を顰める。
見た目は普通の人間のそれと変わらないが、数多くの歪虚を吸収したことで能力自体が上がっているのだろう。
――だが、ダメージが全く通っていない訳ではないはずだ。
確実に攻撃を命中させて、妨害と邪魔を蓄積すれば、さすがの青木とて諦める筈……!
「アルスレーテさん! 続けて行きますよ!」
「OK! 任せといて!」
すぐさま散会する刹那とアルスレーテ。
2人同時に打ち込んだり、少しタイミングをズラして多段に仕掛けたりと、連携の取れた美しい攻撃が幾度となく撃ちこまれる。
だが、腹立たしいことに――青木は刹那やアルスレーテの攻撃を受け流すばかりで積極的に攻撃を打ち出して来なかった。
――ソードブレイカーを警戒しているのか、それともわざわざ相手をするまでもないと思っているのか。
そうであれば、攻撃を引き出してやるまでだ。
状況を冷静に見ていたアルバは、エステルに合図を送る。
「合わせろ! エステル!」
「はいです! 鳥さん、お願いします!」
短い詠唱。アルバとエステルから発せられる光の矢。
弧を描いて飛来する5羽の小鳥と5本の矢に舌打ちした青木は、槍を構えて――。
「アルスレーテさん! 下がって!」
「おっと」
刹那の声に咄嗟に踏み止まるアルスレーテ。次の瞬間、響く破裂音。
青木の振るった矢から全方位に向けて衝撃波が放たれる。
衝撃波は光の矢を打ち消すも、全てを消すまでには至らず……。
流石にこの攻撃をソードブレイカーで封じるのは無理があるな――などと考えていたアルバとアルスレーテ。
矢を数本受けた青木は苛立ちを隠さず、ハンター達を睨み付ける。
「煩い羽虫どもが……! 遺跡ごと纏めて薙ぎ払ってやる……!」
吐き捨てるように言う青木。金色に変化する目。
右手をまっすぐに。そして左手を折り曲げて……まるで、矢を番えるような姿勢になる。
その手に、じわじわと形を成す黒い大きな弓。
その上空。ぐにゃりと歪む空間。水の波紋のような波……その中心から、3本の黒い槍が出現して――。
「それは発動されると困りますね……!」
呟く奏音。
彼女は仲間を支援しつつ、ずっとこの瞬間を待っていた。
「呪符封印! 急ぎ律令の如くせよ!」
投げられる符。発動した封印術。
力を抑え込まれ、消えて行く黒い弓に青木が舌打ちする。
奏音の黒曜封印符は見事黒弓を封じることに成功したが……。
スキルを封印し続ける為には、集中が必要になる。
要するに、術を行使している間奏音は能動的な行動を一切取れないのだ。
――この状態を青木に狙われると非常に厄介である。
「また貴様か。本当に厄介だな。ここで死ね」
「黙って行かせる訳ないでしょ……?」
奏音に狙いを定めた青木に大地を強く踏みしめ、高速移動で相手の間合いに飛び込むアルスレーテ。
そのまま怪力無双で黒い歪虚を抑え込もうとするが――その作戦は、現実的ではないとすぐに覚る結果となった。
青木は怠惰の感染こそ撒き散らさないが、至近距離にいればそれなりの影響を受ける。
濃密な負のマテリアルで息苦しい。
強烈な寒気と力が抜けて行くような感覚に、アルスレーテは眉を顰める。
「……ちょっと何これ。聞いてないわよ。力比べは分が悪いみたいね」
「身の程を知れ、女」
「それはこっちの台詞ですよ!」
不意聞こえた声。背後から出現した刹那。
赤い光が炎のように吹き出した刀身が青木の肩口を切り裂く。
「あらやだ。本当に硬いですね。何食べたらこんなになるんです?」
「ん? やっぱりそこはビックマーってことになるのかな?」
「ビックマーさん、柔らかそうでしたのに……」
煽るような刹那の台詞に、アルスレーテを癒しながら首を傾げるイスフェリアとズレた返答をするエステル。
それは青木の苛立ちを煽るには十分だったらしい。
彼はアルスレーテを振り切ると、奏音に迫ろうと行動を開始する。
「先に行かせるな!」
「はいです!」
アルバの声に応じて、青木の進む先、誰もいない空間目掛けてグラビティフォールを放つエステル。
紫色の光を伴う重力波が出るも、一瞬で消失し……何の効果もないことを覚って彼女は目を丸くする。
エステルとしては、移動させたくない空間に術をかけ、移動先を制限するような効果を期待していたのだが……そもそもグラビティフォールの効果時間は一瞬で、持続する訳ではない。
残念ながら、対象がいない空間にかけてもそういった効果が得られるものではないのだ。
「エステル! 切り替えろ!」
青木の進行方向に土壁を生成し、叫ぶアルバ。
エステルはハッとして、振り返って奏音を見る。
――こうしている間も彼女は意識を集中し、寡黙な戦いを続けている。
黒弓の他にもう一つ、黒い鎖を放つ攻撃を見せていたが……あれは見るだに反動が強く、そう簡単には使って来ないだろうと思う。
ともなれば、今回のカギは長距離に届き、広範囲での破壊が可能な黒弓ということになる。
地味ではあるが、奏音がこの戦いの命運を握っていると言っても過言ではない。
そうです。失敗は成功のお母さんです。次に活かせばいいのです!
この地での戦いに複雑な思いを抱いているであろうあの人の為にも、ここで防がなくては……!
「……分かってるです、お兄様!」
顔を上げるエステル。続く詠唱。守護精霊の力を借り、奏音を羽の幻影で包み込む。
――奏音は、集中しながらも仲間達から必死に守られていることを感じていた。
何だか申し訳ないような気もするが……これも立派な仕事と割り切って、術の継続に全意識を集中させる。
何としてでも、援軍の到着まで持たせなくては……!
そうしている間も、青木の行く手を阻むように攻撃を続けていた刹那。
青木の衝撃波の範囲が思ったより広く、飛ばされた岩が遺跡に当たっているのが気になるが……出来ることをやるしかない。
命中させることを重視した刹那の攻撃は確実に妨害に役立っていたが――その分幾度となく闇黒の魔人の攻撃を受け、既に動くのがやっとの状態になっていた。
勿論、アルバやアルスレーテも攻撃には加わっているが、青木が狙うのは刹那ばかり。
どうやらソードブレイカーを使える者を警戒しているようにも見える。
「……イスフェリア、刹那を連れて一旦下がって貰っていいか? 回復を頼みたい」
「分かったよ」
「むう。こんなモテ方嬉しくないですね……!」
アルバの言葉に頷くイスフェリア。刹那がむくれる一方で……青木は、不意に距離を取るように跳躍する。
「ようやくお帰り戴けるのかしら」
「……いや。まだのようだ」
鉄扇を構え直したアルスレーテの横で目を細めるアルバ。
次の瞬間、感じる寒気。周囲のマテリアルが急激に吸い取られるような、奇妙な感覚――。
ハンター達はこの攻撃を知っている。あれは投擲槍だ……!
青木の狙いは奏音だと悟り、再び土壁を呼び出すアルバ。
しかし、この壁だけではあの槍は防ぎきれまい。
……あんなもの何度も撃たれたら厄介だし。ソードブレイカー狙った方が得策かしらね。
幸い縮地瞬動の使用回数は残っている。ここからなら十分割り込めるだろう。
そう考えたアルスレーテは、足にぐっと力を入れた。
「ちょっとあれ止めて来るわ。あとお願いね」
「アルスレーテ……!?」
聞こえたアルバの声は一瞬で後ろへ遠ざかり……奏音の前に立ちふさがるアルスレーテ。
投げられた槍は黒い気を纏い、土壁を破壊し、そして彼女の身体を貫いた。
「チッ。仕損じたか……!」
「……青木さん。これ以上はダメだよ」
すぐさま槍を構え直す青木。両手を広げて立ち塞がるイスフェリア。
目を見開いた青木。槍が動きを止め――。
口の端から血を滲ませながら青木を見上げるアルスレーテ。
この距離であればイスフェリアを押し退けて、自分を人質に取ろうと思えば簡単な筈。
なのに動こうとしない歪虚に違和感を覚えて、彼女は口を開く。
「……何よ。人質に取らないの?」
「……その必要はない」
「何でよ。うら若い乙女が身体張ってあげたんだから質問くらい答えなさいよね……」
「以前はそうした方が有利だからしていたが……今は違う。力を得たからな。そんな手間をかけるより、全員討ち倒した早い」
「ああ、そういう事……」
青木の返答にげんなりする彼女。
――要するに、これまで積極的に人質を取っていたのは「そうしなければハンターに敗れる」可能性があったからだ。
これほどまでにハンター達の攻撃を受けても戦い続けられる程の力を得た今は、その必要がないという訳だ。
深い傷を負った刹那とアルスレーテに代わり、エステルがイスフェリアの隣に立って壁となる。
「……青木さん。援軍が来ました。ここまでです!」
ふと後方に目線を送るエステル。そこには、駆け付けて来るバタルトゥ・オイマト(kz0023)と辺境の戦士達が見えて――。
「……潮時か。仕方ない。引こう」
その姿に早々に判断を下し、短くため息をついて踵を返す青木。その背に、イスフェリアが声をかける。
「待って、青木さん。……わたしごと攻撃しようと思えば出来たはずなのに。何でしなかったの?」
「……さてな」
背を向けたまま答える青木。
――揺れる金色の長い髪。
あの子ではないと頭では理解している。
それでも……。
闇黒の魔人は振り返ることもなく、ベスタハ遺跡を後にした。
刹那とアルスレーテは立てない程の怪我を負ったが、それ以外の者は無事であったし、遺跡の壁が衝撃波の煽りを受けて一部壊れた程度で、大した損傷は受けなかった。
「……良くこれだけの人数で持ち堪えてくれた。部族会議の大首長として礼を言わせてくれ……」
「あっ。あの! 当たり前のことしただけです! バタルトゥさんの助けになれて良かったです!」
青木が去った後、満身創痍のハンター達を見て深く頭を下げるバタルトゥに笑みを返すエステル。
ベスタハの地に降り立って、色々思うところはあるだろうに……こういう礼儀正しいところが、指導者として慕われる一つの理由なのだろうと思う。
「バタルトゥさん。ニガヨモギの対抗策は?」
「……ああ、無事に確保したとヴェルナーから連絡があった」
「良かった……」
奏音の問いに頷くバタルトゥ。その返答に、イスフェリアが胸を撫で下ろす。
――これで、怠惰の王と戦う準備は出来た。
それを守る歪虚達との戦いも、次が佳境となるだろう。
「……ひとまず、次の作戦まで ゆっくり怪我を癒してくれ」
気遣いを見せるバタルトゥに、ハンター達は頷き返した。
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青木さんの能力共有卓 エステル・ソル(ka3983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/03/17 23:34:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/03/22 00:00:10 |
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相談卓 アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2019/03/23 19:53:18 |