ゲスト
(ka0000)
戦慄く教会
マスター:奈華里

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~5人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2019/03/25 07:30
- 完成日
- 2019/04/04 01:16
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「うっ…うう、う」
「ダメだ…そんな、もうやめてくれ…」
「もう、許して…私、こんな、何もしてないのに…」
そんな声を聞いたと旅人から聞くようになったのはいつからだったでしょうか。
村にはいる少し手前の林からだったと。村人達はとにかくこの噂に不安を募らせます。
声の正確な出所は多分ここ。裏山の林のその奥、丁度昔教会があった場所だと年配の村人は推測します。
そして、その教会はただならぬ過去を持っているとも。それは語り部の老人の二代か三代前の話です。
その教会のエルフの牧師は気さくな人で村の者達からも慕われていました。
しかし、ある時、村が歪虚に襲われます。
村の者達は命からがら逃げ出して、その教会に助けを求め、牧師もそれを受け入れました。
しかし、受け入れたとて頑丈な防御壁がある訳ではありません。牧師も一般人でありましたから村人達を隠すことで精一杯。一部の若者は鍬や斧を持って対抗しましたが、歪虚相手では歯が立ちません。
ハンターらが派遣され駆け付けるまでの間に多くの村人の命が奪われ、教会自体も半壊状態。
牧師もその時命を落としてしまった為か、その後は建物はそのまま放置されているというのです。
今では半分しか形を残さないその教会は今や植物が覆い茂り、自然と一体化したようなそんな場所…。
そこからの呻き声となれば皆が考える事は一つでした。
そう、きっとあの時の村人達の無念が声となっているのではないかと。
遺体は当時その教会の裏に土葬されたとの事ですが、正確な場所を知っている者はもうほとんどいません。
それにそんな場所でありますから、皆もう忘れかけていた…そんな折の出来事です。
「この村、祟られちまうのかなぁ」
その歴史を聞いた村人の一人が呟きます。
「そう言ったって俺らにはもう関係ないだろに、襲われたりしたらたまったもんじゃないって」
もう一人がビクビクしながらもそう呟きます。
「しかし、確かめないとこのまま怖いだけだろ? まあ、今は誰も祟られてないけどさ」
相手に何かを促す様にもう一人がそう言ったところで、彼らの傍を細身の青年が通りました。
彼の名はビジュウ。少し前にこの村に妹と共に移住してきた青年です。両親を既に失くしているとかで二人暮らし。彼が十八、妹が十六という事もあり、村の年配陣からはとてもちやほやされています。だからという訳ではないですが、村の若者とは余り仲がよくありません。
「なあ、だったらあいつに確かめて来て貰おうぜ」
通り過ぎていくビジュウを見取り、村の青年が言います。
「へへ、それいいな。あんな可愛い妹連れてさ。それに周りからも優しくされて腹立つし」
もう一人もそれに賛同します。そして、彼らは物影でごにょごにょ。
よからぬ密談の結果がこれです。
「なあ、あんたビジュウだよな。大変だぜ!」
青年が息を切らし走ってきて言います。
「えっ、大変って何がですか!」
ビジュウはそれに反応して慌てた様子。青年の次の言葉を待ちます。
「ほら、あんたの妹…なんてったっけか。あの娘が裏山の崩れた教会に」
「えっ、ユリが? しかし、またなんでそんなとこに」
流石の彼ですがいきなりの事に首を傾げます。
「なんでもあんたへのプレゼントを取りに行ったんだとか。確かあそこには珍しい花が咲いてるからな」
「そうそう、滋養強壮になる花だったか。けど、あそこは駄目だって、あそこはまずいよ」
誕生日でもないのに、プレゼントとはおかしな。そう思うも二人の言葉に疑問は動揺に打ち消されます。
「まずいって、何が…」
「あんた知らねーのか! あそこは怨霊が出るって噂だぜ!」
「えっ、怨霊!!」
その言葉を聞くや否やビジュウの顔が蒼褪めたのは無理のない事。その様子に青年は内心したり顔。
(妹ちゃんには悪いが、こいつからの言付けって事で隣り町へ行って貰ったし…面白くなってきたぜ)
とさらなる言葉を続けます。
「早く行った方がいいぜ。確かあそこの怨霊は生娘を食うって噂だからな」
「ッ!?」
完全なでたらめでしたが、言われた方はたまったものではありません。
唯一無二の妹の一大事にビジュウは早速裏山へと駆け出します。そして辿り着いた先で彼は目を疑います。
「ここは、一体…俺は夢でも見ているのか?」
聞いた話では崩れている筈だった教会ですが、彼の前にはそれはありません。
代わりにあったのは屋根も窓も普通のきれいな教会。何処も崩れているようには見えません。
そして、そこからゆっくりと姿を現したのは一人の美少年。
「おやおや、今日は男の方ですか? でも、ヤングなイケメン…これはこれで楽しめそうですねぇ」
銀髪の美少年が意味ありげにくすくす笑います。
「あ、あの…俺は妹を探しに。き、来て、いません…か?」
警戒しつつも武器のない事に今更気付いた彼の声は震えます。
「さて、どなたの事でしょうか…? でも心配はいりません。中にいらっしゃると思いますから」
にこやかに少年が言います。しかし、彼はその少年の手を見て驚きました。
その両腕は真っ赤に染まっているではありませんか。そして何か嗅いだ事にない香りもします。
(や、ヤバい…帰らなくては。けど、そうしたら妹は)
ビジュウの中で葛藤が始まります。しかし、その間にも少年は彼に近付いていたようで次の瞬間。
「折角来たのですからね…帰るなんて野暮は許しませんから」
月明かりの下だったからでしょうか。少年の瞳が怪しく光って見えました。そして、
「ンッ、あ…いや、だ…やめて、くれ――!」
連れ込まれたビジュウのくぐもった声が漏れ聞こえる中、教会の裏には土を掘り返した痕が残っているだけ。
後をつけて様子を見ていた青年達は蒼褪めます。
何故なら、中に入ったビジュウは一日経っても二日経っても出てこないのです。
しかし、毎夜何故だか声だけは聞こえていて…その中には確かにビジュウの声も混じっているとか。
「お兄ちゃん…」
何も知らずに戻ってきたユリが呟きます。
そこで青年達はやらかしてしまった事を打ち明けると、慌ててハンターに助けを求めるのでした。
「ダメだ…そんな、もうやめてくれ…」
「もう、許して…私、こんな、何もしてないのに…」
そんな声を聞いたと旅人から聞くようになったのはいつからだったでしょうか。
村にはいる少し手前の林からだったと。村人達はとにかくこの噂に不安を募らせます。
声の正確な出所は多分ここ。裏山の林のその奥、丁度昔教会があった場所だと年配の村人は推測します。
そして、その教会はただならぬ過去を持っているとも。それは語り部の老人の二代か三代前の話です。
その教会のエルフの牧師は気さくな人で村の者達からも慕われていました。
しかし、ある時、村が歪虚に襲われます。
村の者達は命からがら逃げ出して、その教会に助けを求め、牧師もそれを受け入れました。
しかし、受け入れたとて頑丈な防御壁がある訳ではありません。牧師も一般人でありましたから村人達を隠すことで精一杯。一部の若者は鍬や斧を持って対抗しましたが、歪虚相手では歯が立ちません。
ハンターらが派遣され駆け付けるまでの間に多くの村人の命が奪われ、教会自体も半壊状態。
牧師もその時命を落としてしまった為か、その後は建物はそのまま放置されているというのです。
今では半分しか形を残さないその教会は今や植物が覆い茂り、自然と一体化したようなそんな場所…。
そこからの呻き声となれば皆が考える事は一つでした。
そう、きっとあの時の村人達の無念が声となっているのではないかと。
遺体は当時その教会の裏に土葬されたとの事ですが、正確な場所を知っている者はもうほとんどいません。
それにそんな場所でありますから、皆もう忘れかけていた…そんな折の出来事です。
「この村、祟られちまうのかなぁ」
その歴史を聞いた村人の一人が呟きます。
「そう言ったって俺らにはもう関係ないだろに、襲われたりしたらたまったもんじゃないって」
もう一人がビクビクしながらもそう呟きます。
「しかし、確かめないとこのまま怖いだけだろ? まあ、今は誰も祟られてないけどさ」
相手に何かを促す様にもう一人がそう言ったところで、彼らの傍を細身の青年が通りました。
彼の名はビジュウ。少し前にこの村に妹と共に移住してきた青年です。両親を既に失くしているとかで二人暮らし。彼が十八、妹が十六という事もあり、村の年配陣からはとてもちやほやされています。だからという訳ではないですが、村の若者とは余り仲がよくありません。
「なあ、だったらあいつに確かめて来て貰おうぜ」
通り過ぎていくビジュウを見取り、村の青年が言います。
「へへ、それいいな。あんな可愛い妹連れてさ。それに周りからも優しくされて腹立つし」
もう一人もそれに賛同します。そして、彼らは物影でごにょごにょ。
よからぬ密談の結果がこれです。
「なあ、あんたビジュウだよな。大変だぜ!」
青年が息を切らし走ってきて言います。
「えっ、大変って何がですか!」
ビジュウはそれに反応して慌てた様子。青年の次の言葉を待ちます。
「ほら、あんたの妹…なんてったっけか。あの娘が裏山の崩れた教会に」
「えっ、ユリが? しかし、またなんでそんなとこに」
流石の彼ですがいきなりの事に首を傾げます。
「なんでもあんたへのプレゼントを取りに行ったんだとか。確かあそこには珍しい花が咲いてるからな」
「そうそう、滋養強壮になる花だったか。けど、あそこは駄目だって、あそこはまずいよ」
誕生日でもないのに、プレゼントとはおかしな。そう思うも二人の言葉に疑問は動揺に打ち消されます。
「まずいって、何が…」
「あんた知らねーのか! あそこは怨霊が出るって噂だぜ!」
「えっ、怨霊!!」
その言葉を聞くや否やビジュウの顔が蒼褪めたのは無理のない事。その様子に青年は内心したり顔。
(妹ちゃんには悪いが、こいつからの言付けって事で隣り町へ行って貰ったし…面白くなってきたぜ)
とさらなる言葉を続けます。
「早く行った方がいいぜ。確かあそこの怨霊は生娘を食うって噂だからな」
「ッ!?」
完全なでたらめでしたが、言われた方はたまったものではありません。
唯一無二の妹の一大事にビジュウは早速裏山へと駆け出します。そして辿り着いた先で彼は目を疑います。
「ここは、一体…俺は夢でも見ているのか?」
聞いた話では崩れている筈だった教会ですが、彼の前にはそれはありません。
代わりにあったのは屋根も窓も普通のきれいな教会。何処も崩れているようには見えません。
そして、そこからゆっくりと姿を現したのは一人の美少年。
「おやおや、今日は男の方ですか? でも、ヤングなイケメン…これはこれで楽しめそうですねぇ」
銀髪の美少年が意味ありげにくすくす笑います。
「あ、あの…俺は妹を探しに。き、来て、いません…か?」
警戒しつつも武器のない事に今更気付いた彼の声は震えます。
「さて、どなたの事でしょうか…? でも心配はいりません。中にいらっしゃると思いますから」
にこやかに少年が言います。しかし、彼はその少年の手を見て驚きました。
その両腕は真っ赤に染まっているではありませんか。そして何か嗅いだ事にない香りもします。
(や、ヤバい…帰らなくては。けど、そうしたら妹は)
ビジュウの中で葛藤が始まります。しかし、その間にも少年は彼に近付いていたようで次の瞬間。
「折角来たのですからね…帰るなんて野暮は許しませんから」
月明かりの下だったからでしょうか。少年の瞳が怪しく光って見えました。そして、
「ンッ、あ…いや、だ…やめて、くれ――!」
連れ込まれたビジュウのくぐもった声が漏れ聞こえる中、教会の裏には土を掘り返した痕が残っているだけ。
後をつけて様子を見ていた青年達は蒼褪めます。
何故なら、中に入ったビジュウは一日経っても二日経っても出てこないのです。
しかし、毎夜何故だか声だけは聞こえていて…その中には確かにビジュウの声も混じっているとか。
「お兄ちゃん…」
何も知らずに戻ってきたユリが呟きます。
そこで青年達はやらかしてしまった事を打ち明けると、慌ててハンターに助けを求めるのでした。
リプレイ本文
●教会
「ブッハッ…」
突如聞こえた異質な音にルカ(ka0962)他事情聴取していたハンターらが振り返る。
とそこには依頼書片手に鼻から熱い血潮を垂れ流している腐術…いや符術師の星野 ハナ(ka5852)の姿がある。
「あ、あの…大丈夫、ですか?」
自分のハンカチを取り出しルカが彼女を心配する。
だが、鼻血を流して尚ハナは笑顔だから不気味な事この上ない。
(こ、この人…ちょっと怖いです…)
そう思うもルカは一人ではなく、ペットの鼠がいるから大丈夫。
「あら、可愛いねずみさんですね。あちらのモフロウもあなたのですか?」
とそんな彼女に声をかけたのはソナ(ka1352)だ。困っている人を見過ごせないらしい。
「あ、はい。今回の事件で、お手伝い…して、貰おうかと思って」
ペットを褒められ笑みを見せるルカにソナも微笑む。
歳は近いように見えてもソナはエルフ。ずっとお姉さんなのだ。
「まずは問題の教会行ってみませんか? 場所は判っている事ですし」
書類を見つめて思考を巡らせていたらしい穂積 智里(ka6819)が提案する。
「そうですね。教会が幻影であるか否かを確認しなくては」
ソナの言葉に二人は頷く。
「幻影? そんな訳ないじゃないですか…きっと、敵は夜に生きるバンパイアなんですよぉ。そしてそして、よなよな美形の殿方を捕まえて酒池肉林…」
ハナが妄想全開の推測を披露する。だが、この推理には穴があって…。
「話によると中にいると思われる人物は男だけとは限らないようですよ」
依頼人である若者から聞いた事を思い出しソナが言う。
「あ…はい。旅人の噂では女の声も聞いたとか言ってましたし」
「そんなのどっちでもいいですよぉ~。この手の敵なら男も女も無問題? 美少年なら女相手の方が普通と言うか…って事は、私も狙われちゃうかもv」
相変わらず興奮冷めやらぬ様子でハナが暴走する。
「あーとにかく落ち着いて下さい、ハナさん。どんな理由があったとしても教会を不法占拠している。あるいは成人男性を誘拐したとするとこれは立派な犯罪です。つまりは逮捕しなきゃならない…そう言う事です」
智里がそうきっぱり断言する。
(誘拐…ですか? 果たして、連れ込みは誘拐になるのでしょうか?)
ちょっとした疑問――それはさておき、まずは現場だ。
裏山の林に隠れた教会はちゃんと実在した。太陽の光を浴びて、窓に張られたステンドグラスの光が地面を彩る。天辺には十字架が掲げられており、いかにもな造りで全く崩れた様子はない。
「忘れ去られていたという事は知らないうちに誰かが目をつけ、修復して住み着いたとも考えられますよね」
真新しいとまでは言わないものの、そこまで汚れた様子のない壁を前にソナが言う。
「私は裏口を探してみますね。ルカさんは上をお願いします」
モフロウの同行を知って、智里がルカにお願いする。
元々そのつもりであったから彼女も早速ファミリアズアイを発動。夜の鳥であるから昼の光は眩しいだろうが、そこは仕方がない。ふわりと地面から浮き上がると、見る見るうちに高度を上げてゆく。
(付近にもこれといった不審な点はないですね。あそこは…お墓でしょうか? 石碑がいっぱい…でも、墓は確か教会の裏にあった筈じゃあ…)
判らない。
そう思うルカと同時刻、教会の裏に回り掘り返された土を調べていたソナも首を捻っていた。
「どうかしたんです?」
ビジュウの匂いのついたものを狛犬に嗅がせて周囲を探索していたハナが尋ねる。
「この土です。棺桶が埋まっていたようには思えない位ふかふかなんです」
「ふかふかですぅ?」
素人目に見れば多少土の色が濃い位にしか判らない。だが、植物採集が好きな彼女が見れば一目瞭然。手入れされて無ければなりえないであろう栄養豊かな土になっているのだ。
「もしかして、ここに棺など埋まっていないのではないでしょうか?」
彼女がそんな推論を立てる。
「判りました。だったら、この際掘ってみましょう」
ハナがそう言い、狛犬に土掘りを命じた。けれど、流石に犬一匹では限界があって…服が汚れるのも構わずに土掘り作業が行われたのだが、そこから棺が出てくる事はなかった。
●調査報告
午前の調査を終えて、ハンター達は一旦それぞれの成果を報告する。
まずは教会の裏口を念入りに探していた智里だったが、正直これと言った収穫はない。
「裏口は発見できませんでした。しかし、やはりあの教会は怪しいですね。正面の扉には鍵がかかり、尚且つ魔術を使ったような痕跡があります」
ピッキングの技術があったならば鍵を開けてみる事も出来ただろうが、無闇に侵入するのも危険が伴う。もし仮に相手が人の姿をした歪虚の類いであれば、それなりの実力を兼ね備えている筈だからだ。
「こちらは…墓地を確認しました。しかし、墓地である筈の場所に棺はなく、負のマテリアルがある感じもしませんでした」
土の件についてはまだ引っかかっているソナがとりあえず明確になっている事だけを報告する。
「私はですねぇ、ダウジングをしてみました。内容は行方不明者の所在についてです。そうしたところ、やっぱりあの教会が怪しいと出ました。狛犬も頻りに周囲を歩いていたので、間違いないと思いますぅ」
ハナはこれまでにも何度かダウジングで成果を上げている。
一度のみならず、回数をする事で確率を上げて、皆にも納得して貰う。
「で問題の中の方ですが…どうでしたか?」
智里が期待の眼差しをルカを見る。
「そ…それがですね。私にも何が何やら…」
ルカが少し困り顔で言う。彼女が言うには中は教会のそれとは全然違ったらしい。
「つまり教会の中が区切られていたと?」
「はい。普通なら長椅子があってその先に祭壇とかあると思うんですが…中央の道を除いて左右に個室があるようでした。しかもなんか、天蓋べッドなんかもありまして…でも、人はいませんでした」
「やはり地下があるのでしょうか?」
智里がぽつりと呟く。
「こ、これは面白くなってきましたよぅ」
一方、ハナは恋に悶える乙女の様にやる気を出す。
「こうなると後は直接行ってみるしかないですね。問題は歓迎してくれるかどうかですが」
「うまくいくでしょうか?」
今は閉ざされているが、夜ならばビジュウのように招き入れてくれるかもしれないが確実とは言い難い。
「あの、もう一度、私に行かせて下さい。今度はこの子で」
そこでルカが鼠での潜入を申し出る。幸い、扉は開かずとも教会全体に結界がある訳でなく、小さな体なら窓の隙間を抜けられる。
「気を付けて下さいね」
何も出来ないもどかしさを抱きつつ、三人は彼女に全てを託す。
「う…ううぅ」
「あっ、ちょっ…まっ、て」
夜、区切られている個室のそれぞれから僅かな声がに漏れ聞こえる。そして、その次に感じたのは甘い匂い。お菓子やフルーツの甘さではなく、これはそう…花の匂い。その匂いの発生源を突き止めようと辺りを見回すと、遥か先に香炉らしきモノが見える。とそこでルカに近付く足音を察知し、慌てて近くの個室に滑り込む。
そして、彼女がそこで見たのは更なる光景。鼠の視力故一瞬何が起こっているのか判らなかった。しかし、少しずつ近付くにつれ、全貌が明らかになってゆく。一人の男は天蓋ベッドでうつ伏せになり両手を手摺に縛られている。そして、もう一人はその男の背で怪しげな動き。思わずルカが鼠の目で瞬きを繰り返す。
「も、やだ…こんなの、耐えられない」
うつぶせの男が辛そうな声で言う。
「何言ってるんですか、もう少しですから我慢して下さい」
そう言うのはもう一人だ。相手を宥めるように、優しい声でそう言い聞かせる。
(大丈夫。これはきっとマッサージかなんかの…は、っ!?!!?)
がここで見たのはそれだけでなく、ベッドの縁を上った先で目に入ったのは片方の男の異常な手だ。ぼんやりとしているが、何か滑っているように見えてピンクな展開から一転、猟奇的な儀式を連想させる。
そうなるともうパニックだ。鼠の目では色の判断がつかないが、モノクロでも違いは判る。
(うそ…私、どうしたら?)
ルカが慌てて鼠を戻らせる。スキルを解除すれば済むのだが、動揺でそこまで気が回らない。
「ちょっと、どうしたんです! ルカさん!」
茂みではその動揺に仲間が気付いて、思わず声を荒らげる。とその時だった。
「誰かいるんですか?」
教会の扉が開いて、出てきたのは話にあった銀髪美少年。しまったと思うも、ハンターらはこれを好機と見る。
「すみません。大きな声を出してしまって」
一番お姉さんという事もあって、すくっと立ち上がるとソナが彼の前に出る。
「おや、同族ですね。しかし、こんな所に何用ですか?」
が少年の態度はビジュウの時とは違うようだ。歓迎しているようには思えない。
「少しここの話を聞きまして…中で何をされているのですか?」
智里も立ち上がり、ソナの言葉に続ける。
「……さて、何をと言われましても、僕はただ」
「血を、血を見ました! だから早く中へ」
そこでルカが自分に意識を戻し、そう言い放つ。
「え、血ってそんな…」
バンッ
少年の言葉を聞かず四人が教会のドア圧し開ける。その音に思わず、中の者達が騒めく。
「さぁて、お楽しみはこれからですよぅ」
妙に張り切った様子でハナが近くの個室の天蓋を開く。とそこには確かに濡れた手の男はいた。
そしてベッドに縛られた男も……しかし、どうやら状況は少し違う。
「こ、これは一体…」
飛び込んだ四人が呆気にとられる中、ルカの鼠が彼女の元へと駆け寄った。
●実体
「ええっと、つまりはここはマッサージ店だと」
少年から全てを聞き終えてもハンター達は未だ半信半疑。しかし、状況からしてそれは間違いないらしい。
「でもあなたまだ子供じゃあ…」
「違いますよ。もう充分な大人です。見た目がこんなだからここにひっそり開店したのに、何だかなぁ」
少年改め彼の名はトーン。エルフではまだ若く、四十三だときっぱりと言う。
「しかしですねー。許可は取ってあるんですか! 勝手にこんな所を使ったら不法占拠ですよ」
何処か居心地が悪くて、智里がそう尋ねる。が、その辺は既にカバー済み。この教会は彼の先祖のモノらしく、それを受け継いだだけでどこにも違法な部分は見当たらない。
「では、なぜ夜だけに?」
そこで昼営業すればいいものをわざわざ夜の意味があるのかと尋ねてみる。すると、彼はこう主張する。
「月明かりです。僕の施術にはこの明かりがとても重要なんです。けど、人間とはこれ程本堪え性がないなんて! ちょっとツボを押しただけで泣き言を延々と…健康になりたいならその位我慢すべきです!」
客の悲鳴の事を言っているのだろう。彼はこの件に関してご立腹のようだ。ちなみにあの赤い液体は彼特製のマッサージオイルらしく、施術の後に塗り込む事で効果がアップするらしい。お香はリラックスさせる為だという。
「あの、もう一つだけ確認しても良いですか? 裏の墓地のことな…」
「ああ、あれは引っ越しさせました。だってそうでしょう? マッサージ店の裏に墓標があったら、どう思いますか? それに丁度あそこにオイルに使う花が育っていたので採取して…次の花を植える花壇を作ろうとしていた所です」
成程、栄養のある土はその為か。よくよく考えると、あの若者達もここに『滋養強壮になる花』があると言っていたではないか。どうやら全てがでたらめではなかったようだ。
「じゃあ、それはそれとしてビジュウさんは…」
連れ込まれた筈のビジュウの姿をハナが探す。
「あの、呼びました? 今、名前が聞こえた気が…」
すると最奥の床下からエプロンをつけた青年が出てきて…その姿にハンターは再び呆気にとられる事となる。
「あなた、一体…」
「へ? あれ、何かおかしいですか?」
ビジュウが帰らなかった、否帰れなかった理由、それはこうだ。
「この店長さんがお金に厳しくて…成り行きとは言え、入っちゃった手前施術をお願いしたんです。それで料金を払おうと思ったら、持ち合わせがほぼなくて」
ビジュウが苦笑いをしつつ、財布を取り出し言う。
つまりは施術代が支払えず、今まで働かされていたという事らしい。
「いやー、この店長。いつも厳しくて…指導の時も容赦ないんですよ」
へらっとした顔でそう言うものだから、ハンター達はついイラついてしまう。
がここは堪えて、返済までの残り期間を聞いてみる。すると、これがまた驚きの回答。
「あ~と、後二週間くらいでしょうかね、店長?」
ビジュウがあっさりとそう言ってのける。
「ビジュウさん! あなた妹さんをそんな待たせる気だったんですか! だったら手紙の一つでもっ」
「え、俺手紙出しましたけど…」
その言葉に一同三度目の硬直タイム。
そして、はたと気が付く。彼女達が話を聞いたのは依頼人である青年達だけだ。ハナはユリに会ったようだが、ビジュウの私物を受け取るや否や走って来たらしく、会話をしていなかったという。
「嘘でしょー…」
「お騒がせ依頼でしたね…」
ぐったりとした様子でハンター達が項垂れる。
「フフ、もし宜しければ特別に施術させて下さいな。ハンターの皆さんの健康状態も知りたいですし」
その様子を前にトーンが提案する。
「けど、お代は…」
「タダで良いですよ。普通なら初回十万Gですが」
『ええっーーー!!?』
サラッと言ったその額に今日一のハンターの叫びが木霊した。
「じゅ、十万って……それ、完全なぼったくりなんじゃあ」
智里がずり落ちそうになった眼鏡を押し上げつつ言葉する。
「何を言うんですか! これだって安い位ですよ。なんたって僕の施術はトータルケアだ。初回はカウンセリングの後一人一人のプランを立てて、施術を開始しする。その際の衣食住はここでして頂く。食料の輸送とか大変なんですからね」
自信ありと言わんばかりに仰け反って、彼が言う。
「あの、もしかしてあの施錠って…」
「逃げ出し防止ですよ。弱音を吐く方が多いもので。手荒な事はしたくないんですが、施術中暴れられても困るので、やむなく鎖や縄も用意しました」
ベッドに縛られていたのはその為だったか。けれど、どう見てもこれはやり過ぎだが、変える気はなさそうだ。
「他とは違うサービスの提供こそがこの業界を勝ち残っていく秘訣なんです。でお試しされますか? 勿論されますよね?」
にこやかに笑ってはいるが、逃がさないという目で四人に詰め寄る。
その晩はとびきりの悲鳴が上がったが、翌日はすこぶる身体は軽かったとか。
これにて祟りの件もトーンの店だったという事が判り村の皆も一安心。という事で、万事めでたしめでたし。
「ブッハッ…」
突如聞こえた異質な音にルカ(ka0962)他事情聴取していたハンターらが振り返る。
とそこには依頼書片手に鼻から熱い血潮を垂れ流している腐術…いや符術師の星野 ハナ(ka5852)の姿がある。
「あ、あの…大丈夫、ですか?」
自分のハンカチを取り出しルカが彼女を心配する。
だが、鼻血を流して尚ハナは笑顔だから不気味な事この上ない。
(こ、この人…ちょっと怖いです…)
そう思うもルカは一人ではなく、ペットの鼠がいるから大丈夫。
「あら、可愛いねずみさんですね。あちらのモフロウもあなたのですか?」
とそんな彼女に声をかけたのはソナ(ka1352)だ。困っている人を見過ごせないらしい。
「あ、はい。今回の事件で、お手伝い…して、貰おうかと思って」
ペットを褒められ笑みを見せるルカにソナも微笑む。
歳は近いように見えてもソナはエルフ。ずっとお姉さんなのだ。
「まずは問題の教会行ってみませんか? 場所は判っている事ですし」
書類を見つめて思考を巡らせていたらしい穂積 智里(ka6819)が提案する。
「そうですね。教会が幻影であるか否かを確認しなくては」
ソナの言葉に二人は頷く。
「幻影? そんな訳ないじゃないですか…きっと、敵は夜に生きるバンパイアなんですよぉ。そしてそして、よなよな美形の殿方を捕まえて酒池肉林…」
ハナが妄想全開の推測を披露する。だが、この推理には穴があって…。
「話によると中にいると思われる人物は男だけとは限らないようですよ」
依頼人である若者から聞いた事を思い出しソナが言う。
「あ…はい。旅人の噂では女の声も聞いたとか言ってましたし」
「そんなのどっちでもいいですよぉ~。この手の敵なら男も女も無問題? 美少年なら女相手の方が普通と言うか…って事は、私も狙われちゃうかもv」
相変わらず興奮冷めやらぬ様子でハナが暴走する。
「あーとにかく落ち着いて下さい、ハナさん。どんな理由があったとしても教会を不法占拠している。あるいは成人男性を誘拐したとするとこれは立派な犯罪です。つまりは逮捕しなきゃならない…そう言う事です」
智里がそうきっぱり断言する。
(誘拐…ですか? 果たして、連れ込みは誘拐になるのでしょうか?)
ちょっとした疑問――それはさておき、まずは現場だ。
裏山の林に隠れた教会はちゃんと実在した。太陽の光を浴びて、窓に張られたステンドグラスの光が地面を彩る。天辺には十字架が掲げられており、いかにもな造りで全く崩れた様子はない。
「忘れ去られていたという事は知らないうちに誰かが目をつけ、修復して住み着いたとも考えられますよね」
真新しいとまでは言わないものの、そこまで汚れた様子のない壁を前にソナが言う。
「私は裏口を探してみますね。ルカさんは上をお願いします」
モフロウの同行を知って、智里がルカにお願いする。
元々そのつもりであったから彼女も早速ファミリアズアイを発動。夜の鳥であるから昼の光は眩しいだろうが、そこは仕方がない。ふわりと地面から浮き上がると、見る見るうちに高度を上げてゆく。
(付近にもこれといった不審な点はないですね。あそこは…お墓でしょうか? 石碑がいっぱい…でも、墓は確か教会の裏にあった筈じゃあ…)
判らない。
そう思うルカと同時刻、教会の裏に回り掘り返された土を調べていたソナも首を捻っていた。
「どうかしたんです?」
ビジュウの匂いのついたものを狛犬に嗅がせて周囲を探索していたハナが尋ねる。
「この土です。棺桶が埋まっていたようには思えない位ふかふかなんです」
「ふかふかですぅ?」
素人目に見れば多少土の色が濃い位にしか判らない。だが、植物採集が好きな彼女が見れば一目瞭然。手入れされて無ければなりえないであろう栄養豊かな土になっているのだ。
「もしかして、ここに棺など埋まっていないのではないでしょうか?」
彼女がそんな推論を立てる。
「判りました。だったら、この際掘ってみましょう」
ハナがそう言い、狛犬に土掘りを命じた。けれど、流石に犬一匹では限界があって…服が汚れるのも構わずに土掘り作業が行われたのだが、そこから棺が出てくる事はなかった。
●調査報告
午前の調査を終えて、ハンター達は一旦それぞれの成果を報告する。
まずは教会の裏口を念入りに探していた智里だったが、正直これと言った収穫はない。
「裏口は発見できませんでした。しかし、やはりあの教会は怪しいですね。正面の扉には鍵がかかり、尚且つ魔術を使ったような痕跡があります」
ピッキングの技術があったならば鍵を開けてみる事も出来ただろうが、無闇に侵入するのも危険が伴う。もし仮に相手が人の姿をした歪虚の類いであれば、それなりの実力を兼ね備えている筈だからだ。
「こちらは…墓地を確認しました。しかし、墓地である筈の場所に棺はなく、負のマテリアルがある感じもしませんでした」
土の件についてはまだ引っかかっているソナがとりあえず明確になっている事だけを報告する。
「私はですねぇ、ダウジングをしてみました。内容は行方不明者の所在についてです。そうしたところ、やっぱりあの教会が怪しいと出ました。狛犬も頻りに周囲を歩いていたので、間違いないと思いますぅ」
ハナはこれまでにも何度かダウジングで成果を上げている。
一度のみならず、回数をする事で確率を上げて、皆にも納得して貰う。
「で問題の中の方ですが…どうでしたか?」
智里が期待の眼差しをルカを見る。
「そ…それがですね。私にも何が何やら…」
ルカが少し困り顔で言う。彼女が言うには中は教会のそれとは全然違ったらしい。
「つまり教会の中が区切られていたと?」
「はい。普通なら長椅子があってその先に祭壇とかあると思うんですが…中央の道を除いて左右に個室があるようでした。しかもなんか、天蓋べッドなんかもありまして…でも、人はいませんでした」
「やはり地下があるのでしょうか?」
智里がぽつりと呟く。
「こ、これは面白くなってきましたよぅ」
一方、ハナは恋に悶える乙女の様にやる気を出す。
「こうなると後は直接行ってみるしかないですね。問題は歓迎してくれるかどうかですが」
「うまくいくでしょうか?」
今は閉ざされているが、夜ならばビジュウのように招き入れてくれるかもしれないが確実とは言い難い。
「あの、もう一度、私に行かせて下さい。今度はこの子で」
そこでルカが鼠での潜入を申し出る。幸い、扉は開かずとも教会全体に結界がある訳でなく、小さな体なら窓の隙間を抜けられる。
「気を付けて下さいね」
何も出来ないもどかしさを抱きつつ、三人は彼女に全てを託す。
「う…ううぅ」
「あっ、ちょっ…まっ、て」
夜、区切られている個室のそれぞれから僅かな声がに漏れ聞こえる。そして、その次に感じたのは甘い匂い。お菓子やフルーツの甘さではなく、これはそう…花の匂い。その匂いの発生源を突き止めようと辺りを見回すと、遥か先に香炉らしきモノが見える。とそこでルカに近付く足音を察知し、慌てて近くの個室に滑り込む。
そして、彼女がそこで見たのは更なる光景。鼠の視力故一瞬何が起こっているのか判らなかった。しかし、少しずつ近付くにつれ、全貌が明らかになってゆく。一人の男は天蓋ベッドでうつ伏せになり両手を手摺に縛られている。そして、もう一人はその男の背で怪しげな動き。思わずルカが鼠の目で瞬きを繰り返す。
「も、やだ…こんなの、耐えられない」
うつぶせの男が辛そうな声で言う。
「何言ってるんですか、もう少しですから我慢して下さい」
そう言うのはもう一人だ。相手を宥めるように、優しい声でそう言い聞かせる。
(大丈夫。これはきっとマッサージかなんかの…は、っ!?!!?)
がここで見たのはそれだけでなく、ベッドの縁を上った先で目に入ったのは片方の男の異常な手だ。ぼんやりとしているが、何か滑っているように見えてピンクな展開から一転、猟奇的な儀式を連想させる。
そうなるともうパニックだ。鼠の目では色の判断がつかないが、モノクロでも違いは判る。
(うそ…私、どうしたら?)
ルカが慌てて鼠を戻らせる。スキルを解除すれば済むのだが、動揺でそこまで気が回らない。
「ちょっと、どうしたんです! ルカさん!」
茂みではその動揺に仲間が気付いて、思わず声を荒らげる。とその時だった。
「誰かいるんですか?」
教会の扉が開いて、出てきたのは話にあった銀髪美少年。しまったと思うも、ハンターらはこれを好機と見る。
「すみません。大きな声を出してしまって」
一番お姉さんという事もあって、すくっと立ち上がるとソナが彼の前に出る。
「おや、同族ですね。しかし、こんな所に何用ですか?」
が少年の態度はビジュウの時とは違うようだ。歓迎しているようには思えない。
「少しここの話を聞きまして…中で何をされているのですか?」
智里も立ち上がり、ソナの言葉に続ける。
「……さて、何をと言われましても、僕はただ」
「血を、血を見ました! だから早く中へ」
そこでルカが自分に意識を戻し、そう言い放つ。
「え、血ってそんな…」
バンッ
少年の言葉を聞かず四人が教会のドア圧し開ける。その音に思わず、中の者達が騒めく。
「さぁて、お楽しみはこれからですよぅ」
妙に張り切った様子でハナが近くの個室の天蓋を開く。とそこには確かに濡れた手の男はいた。
そしてベッドに縛られた男も……しかし、どうやら状況は少し違う。
「こ、これは一体…」
飛び込んだ四人が呆気にとられる中、ルカの鼠が彼女の元へと駆け寄った。
●実体
「ええっと、つまりはここはマッサージ店だと」
少年から全てを聞き終えてもハンター達は未だ半信半疑。しかし、状況からしてそれは間違いないらしい。
「でもあなたまだ子供じゃあ…」
「違いますよ。もう充分な大人です。見た目がこんなだからここにひっそり開店したのに、何だかなぁ」
少年改め彼の名はトーン。エルフではまだ若く、四十三だときっぱりと言う。
「しかしですねー。許可は取ってあるんですか! 勝手にこんな所を使ったら不法占拠ですよ」
何処か居心地が悪くて、智里がそう尋ねる。が、その辺は既にカバー済み。この教会は彼の先祖のモノらしく、それを受け継いだだけでどこにも違法な部分は見当たらない。
「では、なぜ夜だけに?」
そこで昼営業すればいいものをわざわざ夜の意味があるのかと尋ねてみる。すると、彼はこう主張する。
「月明かりです。僕の施術にはこの明かりがとても重要なんです。けど、人間とはこれ程本堪え性がないなんて! ちょっとツボを押しただけで泣き言を延々と…健康になりたいならその位我慢すべきです!」
客の悲鳴の事を言っているのだろう。彼はこの件に関してご立腹のようだ。ちなみにあの赤い液体は彼特製のマッサージオイルらしく、施術の後に塗り込む事で効果がアップするらしい。お香はリラックスさせる為だという。
「あの、もう一つだけ確認しても良いですか? 裏の墓地のことな…」
「ああ、あれは引っ越しさせました。だってそうでしょう? マッサージ店の裏に墓標があったら、どう思いますか? それに丁度あそこにオイルに使う花が育っていたので採取して…次の花を植える花壇を作ろうとしていた所です」
成程、栄養のある土はその為か。よくよく考えると、あの若者達もここに『滋養強壮になる花』があると言っていたではないか。どうやら全てがでたらめではなかったようだ。
「じゃあ、それはそれとしてビジュウさんは…」
連れ込まれた筈のビジュウの姿をハナが探す。
「あの、呼びました? 今、名前が聞こえた気が…」
すると最奥の床下からエプロンをつけた青年が出てきて…その姿にハンターは再び呆気にとられる事となる。
「あなた、一体…」
「へ? あれ、何かおかしいですか?」
ビジュウが帰らなかった、否帰れなかった理由、それはこうだ。
「この店長さんがお金に厳しくて…成り行きとは言え、入っちゃった手前施術をお願いしたんです。それで料金を払おうと思ったら、持ち合わせがほぼなくて」
ビジュウが苦笑いをしつつ、財布を取り出し言う。
つまりは施術代が支払えず、今まで働かされていたという事らしい。
「いやー、この店長。いつも厳しくて…指導の時も容赦ないんですよ」
へらっとした顔でそう言うものだから、ハンター達はついイラついてしまう。
がここは堪えて、返済までの残り期間を聞いてみる。すると、これがまた驚きの回答。
「あ~と、後二週間くらいでしょうかね、店長?」
ビジュウがあっさりとそう言ってのける。
「ビジュウさん! あなた妹さんをそんな待たせる気だったんですか! だったら手紙の一つでもっ」
「え、俺手紙出しましたけど…」
その言葉に一同三度目の硬直タイム。
そして、はたと気が付く。彼女達が話を聞いたのは依頼人である青年達だけだ。ハナはユリに会ったようだが、ビジュウの私物を受け取るや否や走って来たらしく、会話をしていなかったという。
「嘘でしょー…」
「お騒がせ依頼でしたね…」
ぐったりとした様子でハンター達が項垂れる。
「フフ、もし宜しければ特別に施術させて下さいな。ハンターの皆さんの健康状態も知りたいですし」
その様子を前にトーンが提案する。
「けど、お代は…」
「タダで良いですよ。普通なら初回十万Gですが」
『ええっーーー!!?』
サラッと言ったその額に今日一のハンターの叫びが木霊した。
「じゅ、十万って……それ、完全なぼったくりなんじゃあ」
智里がずり落ちそうになった眼鏡を押し上げつつ言葉する。
「何を言うんですか! これだって安い位ですよ。なんたって僕の施術はトータルケアだ。初回はカウンセリングの後一人一人のプランを立てて、施術を開始しする。その際の衣食住はここでして頂く。食料の輸送とか大変なんですからね」
自信ありと言わんばかりに仰け反って、彼が言う。
「あの、もしかしてあの施錠って…」
「逃げ出し防止ですよ。弱音を吐く方が多いもので。手荒な事はしたくないんですが、施術中暴れられても困るので、やむなく鎖や縄も用意しました」
ベッドに縛られていたのはその為だったか。けれど、どう見てもこれはやり過ぎだが、変える気はなさそうだ。
「他とは違うサービスの提供こそがこの業界を勝ち残っていく秘訣なんです。でお試しされますか? 勿論されますよね?」
にこやかに笑ってはいるが、逃がさないという目で四人に詰め寄る。
その晩はとびきりの悲鳴が上がったが、翌日はすこぶる身体は軽かったとか。
これにて祟りの件もトーンの店だったという事が判り村の皆も一安心。という事で、万事めでたしめでたし。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/03/23 22:06:49 |
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BとLがおアツい時代カムヒア? 星野 ハナ(ka5852) 人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2019/03/23 22:33:43 |