ゲスト
(ka0000)
龍園のフェレ、春の散歩?
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/03/26 22:00
- 完成日
- 2019/04/04 16:49
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●フェレットと花
龍園の自宅にて、ラカ・ベルフはペットのフェレット・モニを遊ばせていた。丸めた靴下を放り投げると楽しそうに運んでいく。
「ある程度重さがある方が運ぶようですわね」
ラカはモニの隠し場所から靴下を回収しようとすると、モニは見ている。
「……私が遊んであげていると思っているのは実は幻想で、モニにとってみれば『あそこから靴下を取るのが楽しいに違いない』だったら……」
ラカはモニを見つめるが、モニは特に語らない。
「ところで、フェレットの飼い方という本を見たのですが……結構、外出もできるそうですね」
紐をつけておけば逃亡防止となるという。
「雪でも遊ぶそうですわ……まだ、雪ありますが……」
普段考えが少ないと思われているラカでも考えた、たぶん、フェレットも耐えられる寒さと言うのがあるに違いないと。以前逃げたとき、無事だったのはたまたまであり、下手をすれば凍死するかもしれない。
「花と写真を撮るというのがあるそうですわね」
花を愛でるフェレットは可愛いかもしれない。魔導カメラは手元にある。試しにモニを撮ったことがあったが、謎の物体または部屋の一角が撮れただけだった。
「……花……ですの……」
龍園は寒い。
本人は普通と思ってきていたが、相当寒いということが分かってきた。
春が来るのはいつなのか。
来ているという話もあるけれども、花が咲く暖かさではない。
寒くても咲くという花はあろうとも、たぶん、違う。モニ用ではない。モニが愛で、モニを引き立てる美しさや可憐さはないだろうとラカは理解した。
「……探してみます? 春」
ラカはなんとなくモニに話しかける。
モニは「行くよ」と言ったに違いないとラカは勝手に思った。
寒くて嫌だと思っただけかもしれないがラカは考えないことにした。
そして、きちんとモニ用の防寒具を用意し、ラカは出かけることにしたのだった。
●春は遠いか近いのか?
針葉樹林をとぼとぼラカは歩く。この場所は、寒かった。吐く息は白くなる。
池に氷も張っていた。
雪も積もっている。
「春はまだです……わね」
ラカはモニを下ろす。
モニには靴も履かせている。手引書に靴を履かせるとはなかったが、さすがに氷の上に肉球はまずかろうと考えた。
モニは地面の匂いを嗅ぎ、周囲の匂いを嗅ぎ、雪をなめて跳ねた。靴が邪魔で転ぶ。靴を脱ごうと必死になっていた。
「……やはり、苦手ですの? 雪をどう思ったのでしょう?」
モニはラカのコートに飛びかかった。後ろ足で立って、前足でコートをつかもうとしたが、靴で何もできない。ひっくり返り暴れる。
「だっこですわね」
ラカはのほほんと抱き上げた。ラカの肩に前足を載せたモニはほっとしていた。
「ホワイトデーとは結局なんだったのでしょうか?」
ラカはハンターの間で聞いた言葉を思い出して首を傾げた。
「白い日ですわね」
目の前にある景色は白いと言って過言ではない。
「……まさかっ! 寒さ、我慢大会でしょうか!?」
言った直後、違うと考えたが、ハンターや西方の人が考えることはわからない。
「のんびりするのでもいいんですわね……寒いですわね……」
ラカはぼんやり風景を見渡した。ホワイトデーも春もひとまずどうでもよくなった。
龍園の自宅にて、ラカ・ベルフはペットのフェレット・モニを遊ばせていた。丸めた靴下を放り投げると楽しそうに運んでいく。
「ある程度重さがある方が運ぶようですわね」
ラカはモニの隠し場所から靴下を回収しようとすると、モニは見ている。
「……私が遊んであげていると思っているのは実は幻想で、モニにとってみれば『あそこから靴下を取るのが楽しいに違いない』だったら……」
ラカはモニを見つめるが、モニは特に語らない。
「ところで、フェレットの飼い方という本を見たのですが……結構、外出もできるそうですね」
紐をつけておけば逃亡防止となるという。
「雪でも遊ぶそうですわ……まだ、雪ありますが……」
普段考えが少ないと思われているラカでも考えた、たぶん、フェレットも耐えられる寒さと言うのがあるに違いないと。以前逃げたとき、無事だったのはたまたまであり、下手をすれば凍死するかもしれない。
「花と写真を撮るというのがあるそうですわね」
花を愛でるフェレットは可愛いかもしれない。魔導カメラは手元にある。試しにモニを撮ったことがあったが、謎の物体または部屋の一角が撮れただけだった。
「……花……ですの……」
龍園は寒い。
本人は普通と思ってきていたが、相当寒いということが分かってきた。
春が来るのはいつなのか。
来ているという話もあるけれども、花が咲く暖かさではない。
寒くても咲くという花はあろうとも、たぶん、違う。モニ用ではない。モニが愛で、モニを引き立てる美しさや可憐さはないだろうとラカは理解した。
「……探してみます? 春」
ラカはなんとなくモニに話しかける。
モニは「行くよ」と言ったに違いないとラカは勝手に思った。
寒くて嫌だと思っただけかもしれないがラカは考えないことにした。
そして、きちんとモニ用の防寒具を用意し、ラカは出かけることにしたのだった。
●春は遠いか近いのか?
針葉樹林をとぼとぼラカは歩く。この場所は、寒かった。吐く息は白くなる。
池に氷も張っていた。
雪も積もっている。
「春はまだです……わね」
ラカはモニを下ろす。
モニには靴も履かせている。手引書に靴を履かせるとはなかったが、さすがに氷の上に肉球はまずかろうと考えた。
モニは地面の匂いを嗅ぎ、周囲の匂いを嗅ぎ、雪をなめて跳ねた。靴が邪魔で転ぶ。靴を脱ごうと必死になっていた。
「……やはり、苦手ですの? 雪をどう思ったのでしょう?」
モニはラカのコートに飛びかかった。後ろ足で立って、前足でコートをつかもうとしたが、靴で何もできない。ひっくり返り暴れる。
「だっこですわね」
ラカはのほほんと抱き上げた。ラカの肩に前足を載せたモニはほっとしていた。
「ホワイトデーとは結局なんだったのでしょうか?」
ラカはハンターの間で聞いた言葉を思い出して首を傾げた。
「白い日ですわね」
目の前にある景色は白いと言って過言ではない。
「……まさかっ! 寒さ、我慢大会でしょうか!?」
言った直後、違うと考えたが、ハンターや西方の人が考えることはわからない。
「のんびりするのでもいいんですわね……寒いですわね……」
ラカはぼんやり風景を見渡した。ホワイトデーも春もひとまずどうでもよくなった。
リプレイ本文
●ホワイトデーとは
星野 ハナ(ka5852)はたまたま針葉樹林の中を歩いていた。ラカ・ベルフ(kz0240)の声を聞き思わず、「うあー、ラカさんが怖いこと言っていますぅ」と独り言が漏れた。
ラカはホワイトデーは我慢大会をする日かなど言っているのだ。
「ラカさん……」
ハナはラカに声をかけた。ラカはびくっと身を震わせる。
「こ、こんにちは」
「……こんにちは。ところでラカさん、ホワイトデーについて知識が何やら不安気だったので解説いたします」
ハナがまじめに言うため、ラカはうなずいた。
「リアルブルーのある地域では二月十四日のバレンタインデーのお返しをするのが三月十四日のホワイトデーなんです……けどぉ、元々二月十四日自体が宗教がらみなので地方によって内容に差がありますしぃ、三月十四日なんてリアルブルーでもやらないところのほうが多いですぅ」
ラカは一応理解したとうなずく。
「だから、いっそのこと、龍園仕様の新しい面白い行事を作っちゃえばいいと思いますぅ」
「……は?」
ラカはキョトンとした。
天央 観智(ka0896)は針葉樹林を散策していた。
(まだ、龍園付近は……寒いですね。でも、さすがは、青龍さんのおひざ元……ですか。穏やかでもありますね)
クリムゾンウェスト各地で大きな戦いがある中、このような穏やかな場所や時は貴重だった。
立ち止まって話をしているラカとハナが見えた。ラカの肩にはフェレットが見える。そのフェレットは服を着ている。観智はそちらに足を向けた。
ラカとは初対面だが、服装の雰囲気から龍園在住の人物だとなんとなくわかる。
サクサク音がするため、自然と進行方向の二人が顔を向けた。
「こんにちは。防寒着に、靴まで……愛されているペットのようですね。なんという名前なんでしょうか」
挨拶の後「モニですわ」とラカが答える。
「モニさんですか。可愛いですね」
観智の連れのパルムもうなずく。
「ありがとうございます」
ラカは微笑んだ。
●それぞれ
エステル・ソル(ka3983)はペットのペルシャ猫のスノウと散歩していた。スノウは白いため、赤いリボンを巻いておく。
「雪で見失うと大変なのです」
もっふとしている白いペルシャ猫の首に赤いリボンは映えた。
「たくさん写真を撮るのです」
手には魔導カメラ。
スノウは雪の上に下りた瞬間、バッと跳ねた。そのあと、雪が毛にまとわりつくに任せ、氷の塊を前足で叩き、それと戦っている。
「こ、これは! 駄目なのです、魔導カメラのシャッタースピードでは追いつかないのです! でも、激写するのです」
エステルはいかに躍動感あふれるスノウの写真を撮るのか戦いが始まったのだった。
レイア・アローネ(ka4082)は散歩していたところ、ラカ達に遭遇した。
「モニと遊んでいる最中か?」
「……そのはずだったのですが、ホワイトデーとは何かうかがっていたところですわ」
「なるほど……知らん。雪遊びの日か?」
レイアは知らないため、字のイメージから真っ直ぐ問う。
「リアルブルー由来の……よくわからない日ですわ」
ラカは説明にならない説明をした。
「アウトプットは重要ですが……」
「説明しがいがないくらいの砕かれっぷりですぅ」
観智の横でハナが溜息をもらしていた。
木綿花(ka6927)は龍園出身であり、里帰り中で、ペットの散歩の途中だった。このころの季節はわかっているし、散歩でちょっとくつろぐには何が必要かも理解している。そのため、用意したのは温かいお茶が飲める道具とペットたちのおやつだ。
連れは柴犬のポチと桜型妖精アリスのルタである。
「あれは、ラカ様?」
木綿花は駆けよる。
「こんにちは、ラカ様」
「こんにちは、木綿花さん」
「お散歩ですか?」
「そうですわ」
「ご一緒してかまいませんか?」
「むろん、かまいませんよ?」
木綿花は暖かそうな格好をしているモニを見た。モニは前足をラカにこすりつけ、必死に何かを訴えているようだった。
●にゃん・わん・にょろ
「モニちゃんの服、可愛いですね。手作りですか?」
木綿花は尋ねた。
「いえ……その、リゼリオに行ったとき見つけました」
「なるほど」
やはりモニは前足や後ろ足をラカにこすりつけている。
「あの、ラカ様、モニちゃん、靴は脱ぎたそうです」
木綿花の指摘にラカは困惑する。
「ポチは靴はなくとも大丈夫ですし、モニちゃんも動けば温まります。それに服も着ていますし」
「そうですね……しもやけしそうですけれど……」
ラカがしぶしぶモニの靴を取ると、モニはあきらかにほっとした様子を見せた。
「そうです。モニちゃん、ポチとルタです。お友達になってね」
木綿花はモニに話しかけた。モニはじっと木綿花を見つめ、鼻をスンスンと動かしていた。
「お名前の由来はあるのですか」
観智の質問にラカは「ありますわ」と胸を張って答える。
「こういう毛むくじゃらなのを『もふもふ』というそうですし、長いのをにょろにょろと言います。そのため『もふっとしてにょろり』からつけました」
「……形状からついたんですね」
観智はうなずく。
「スノウさん、待ってくださいです」
エステルの声が遠くから聞こえる中、どどどと白い生き物が一行の前に現れた。
「わふっ」
「しゃああああ」
木綿花のポチが飛び掛かり、白い猫・スノウが足を止める。しかし、足元は滑った。もっふとポチにのめり込みスノウが止まる。
「……猫が滑ってきましたわね」
「いや、ラカさん、飼い主の声、響いていたですよぉ」
ハナが淡々とツッコミを入れた。
「ポチ、よく止めてあげましたね」
木綿花がポチを褒める。
「はあはあ、助かりましたぁ……こんにちはです……。駄目です、スノウさん!」
エステルは追いついたところで、スノウをたしなめた。
スノウはごろりと横になり、上目遣いに「ごめんなさい」と言ったようだった。
「す、スノウさん、ずるいです。ひっくりかえって上目遣いは」
エステルはシャッターチャンスとばかりにカメラを向けた。
「可愛いなー」
レイアはにこにことエステルの行動を見ていた。
スノウは謝ったところで、立ち上がると、よじ登り易そうなラカのコートに前足を掛けた。
「あっ、スノウさん」
エステルは再度シャッターを切るため、カメラを向ける。
スノウは動きが鈍いラカを登った。途中で、モニが「何をするでち!」とばかりに威嚇をした。一応、前足で二度攻撃のパンチを繰り出すが、ラカの腕から滑り落ちる。スノウは回避したが落ちる。
「……モニ、モニ!」
ラカは慌ててしゃがむ。モニとスノウの動きが明らかに速く、モニは威嚇しながら後退し、スノウは高いところに登った。高いところ、すなわち、ラカの頭の上。
「ちょっとうらやましいですけれど、これは」
エステルはシャッターを切る。スノウは視線の先にいたルタに飛び掛かるが、ルタは危険を察知して避けた。
「ルタ、すごいです」
木綿花がルタを褒めていると、遊んでいると理解したポチがスノウに飛び掛かる。
「ワンワン」
「しゃっ」
「しゃああああああ」
犬は尻尾を振り猫を見て、猫は犬を寄せつけないよう威嚇し、フェレットは威嚇しながら後退していった。
「……モニっ」
「キャン」
ラカが慌てて追いかけるが、ポチに躓き転ぶ。木綿花はポチを引き離す。
「ん? 追いかければいいな」
「はい」
レイアはモニを追いかけた。モニは楽しそうに「ククク」と言いながら逃げた。
起き上がろうとしているラカの上をポチとスノウが駆け抜けた。
「ラカ様!?」
「ラカさん!?」
飼い主たちが悲鳴を上げる。ただ、どこか笑顔なのはラカが無事だと分かるし、状況が滑稽に見えたからだ。
「生きていますぅ……」
ハナはしゃがむとラカに声をかけた。
「だ、大丈夫です。お願いですから、モニを止めてください」
「確かに重要ですね」
観智がとりあえず走って追いかけ、池の上を滑っていくモニを回収したのだった。
●どたばた
「で、ラカは何故このようなところにいたのかと聞いていか」
レイアは尋ねた。
「フェレットと花が写った写真を見て、いいなと思ったわけではありませんけれど、春らしさも可愛らしいかと思ったり……し、していませんわ」
「花とモニちゃん、可愛いでしょうね。でも、まだ花は雪の花。それならば撮れますね」
木綿花はしゃべりながら温かいお茶の用意とペットたちのおやつの準備をする。休憩である。
ラカが魔導カメラを持っている理由も理解した。
「駄目です、スノウさん、これはお茶です。こちらのリンゴをどうぞ。モニさんも食べますか?」
エステルは持参のアップルティーを飲みながら、スノウに干しリンゴを上げていた。
「ラカさん、コップに首伸ばしていますっ!」
観智が慌てて言う。ラカが目を離している隙に、伸びるだけ伸びて首をコップに入れようとしている。礼を述べながら、ラカはコップからモニを離す。すると、より一層のびる。
「カフェインは危険ですね。それにしてもよく伸びますね……」
観智が食べさせてはいけないものについて説明をする。一方で、フェレットの伸びぷりに感嘆する。
「体が柔らかかくてよく伸びるのですわ」
ラカが説明をした。
「スノウさんが伸び始めました!?」
スノウは言葉を理解し、対抗意識があるのかエステルの膝の上で伸び、地面に向けて落ち始める。
「猫も伸びますね」
観智が感心して伸びる生き物たちを見つめた。
「ラカ様、雪だるまを作って、そこで遊ぶモニちゃんと撮るのはいかがでしょうか?」
「なるほど」
「ん? カマクラを作るのか、雪だるまを作るのか? 任せろ」
レイアが立ち上がった。
「どのくらいのを作ればいいか?」
ペットたちの状況を見て、柴犬サイズとフェレットサイズを作ることになる。
「どうだ、モニ」
レイアの力作の前にラカがモニを置いた。ポチとスノウも寄ってきた。
エステル、木綿花とラカがカメラを構えた。
出来事は一瞬。モニがポチの鼻に噛みつこうとして、驚いたポチが下がってスノウを突き飛ばし、怒ったスノウがラカに飛び掛かった。
写真は白い毛玉、茶色い毛玉、真っ白と言ったものとなった。
「……ら、ラカ様、一匹ずつとりましょう」
「先ほどから見ていると、モニちゃんがとりあえず、大きな生き物に威嚇するという構図ですぅ」
「そうですね。大きさから逃げたくなるのかもしれません」
木綿花に対しハナと観智が分析結果を告げた。
試しに、一匹つずつ撮る。エステルと木綿花はきちんとペットの写真を撮れた。
ラカがドキドキしながら雪だるまのそばにモニを置き、シャッターを切る。
できた写真は、ブレブレだった。
「ラカさんの技術力ではないですね」
「モニちゃん、止まらないのですね……」
観智と木綿花はモニを見る。じっとした瞬間、首が動く。
「おやつとかで釣ってみればいいのでは?」
「そうだ、私が抑えておこう」
ハナが犬用のクッキーを振ってみたが、動く。レイアが前足の裏あたりで抑えた。その手と戦おうとするモニ。
「パルムを見せるとどうなりますか?」
観智がモニの前に連れのパルムを置いてみた。大きさが同じくらいのお友達なら少し動きが違うかもしれない。
パルム、モニをじっと見る。
モニ、パルムをじっと見る。
「シャッターチャンスです」
ラカは木綿花たちに言われるままシャッターを切ったとき、モニはパルムの首根っこに食らいついていた。
「あああ、パルム!」
「きゅうううう」
首根っこ咥えられどこかに連れ去られるパルム救出のために観智が走り出し、状況をようやく理解したラカが観智を追いかけた。
結局、モニのまともな写真は一枚も撮れなかった。
ペットたちが「寒い」をそれそれ訴え始めたため、町に向かう人間たちだった。
●春はまだまだ
「ところで、ラカさんは龍騎士隊にお知り合いはいますぅ? ホワイトデーですが、ちょっと考えてみました。告白イベントとかどうでしょう?」
ハナは提案する。
「龍騎士に知り合いはおりますけれど……告白? 例えば『ワイバーンの餌の分量間違ってしまいました、隠していてごめんなさい』ということですか?」
「……ラカ……様……」
木綿花はちょっと生温かい目で見つめる。
「確かに告白ですがぁ、それではないですぅ」
ハナは望みが薄いと悟った。
「白い料理のコンテストでも、白いペット自慢での日でもいいですしぃ、何か面白い行事の日を作りませんか?」
ハナの本音は見えないまま、ラカは首をかしげる。
「ペット自慢……白限定……。もし、パルムしかペットにいないならば……」
「白いパルムしか出られません」
「……流通用に栽培されたエノキダケみたいな……パルム……」
観智は想像した。想像したけれどエノキダケみたいな白いパルムはどう考えてもひょろ長い。連れのパルムを見つめる。
「……ひょろ長い……」
「きゅ?」
さすがに頭や足を持ってひっぱりはしなかった。可愛い顔で何かを訴えるパルムにいたずらはできない。
「白いペット自慢……スノウさんが一番です」
エステルはスノウの毛に顔をうずめる。
「そうだな、エステルのスノウさんはきれいだな」
レイアが褒めると、スノウは胸を張ったように見えた。
「……」
ラカが何か言いたげに、モニを見つめる。
「そろそろ町ですわね」
散歩は終わる。
「あ、そうか。ホワイトデーにちなんで、クッキーとかを交換すればよいのか!」
「……ハロウィンです……」
エステルが静かにツッコミを入れる。
町が近づくと動物たちが騒ぎ出す。帰り道、知っているとばかりに走り出した。
「スノウさん、どこに行くのですっ!」
「ポチ! うちはこっちです!」
追いかけたエステルと木綿花がそれぞれ町に消えていく。
「エステル? ラカ、モニ、また今度!」
レイアが追いかけて行く。
「……はあ……せっかくこうしてきたのに……出会いがぁ」
ハナがとぼとぼ中心地に消えていく。
ラカは観智をじっと見る。
「……いえ、私は何か追いかけて行かないですよ。それより、ペットがあっての出会いと言うのもありますね」
「そうですわね。ところであなたはパルムがペットなのですか?」
「そうですよ。リアルブルーの人間からすると、パルムは不思議です」
観智とラカは町に入ってから立ち話を暫くして別れた。
星野 ハナ(ka5852)はたまたま針葉樹林の中を歩いていた。ラカ・ベルフ(kz0240)の声を聞き思わず、「うあー、ラカさんが怖いこと言っていますぅ」と独り言が漏れた。
ラカはホワイトデーは我慢大会をする日かなど言っているのだ。
「ラカさん……」
ハナはラカに声をかけた。ラカはびくっと身を震わせる。
「こ、こんにちは」
「……こんにちは。ところでラカさん、ホワイトデーについて知識が何やら不安気だったので解説いたします」
ハナがまじめに言うため、ラカはうなずいた。
「リアルブルーのある地域では二月十四日のバレンタインデーのお返しをするのが三月十四日のホワイトデーなんです……けどぉ、元々二月十四日自体が宗教がらみなので地方によって内容に差がありますしぃ、三月十四日なんてリアルブルーでもやらないところのほうが多いですぅ」
ラカは一応理解したとうなずく。
「だから、いっそのこと、龍園仕様の新しい面白い行事を作っちゃえばいいと思いますぅ」
「……は?」
ラカはキョトンとした。
天央 観智(ka0896)は針葉樹林を散策していた。
(まだ、龍園付近は……寒いですね。でも、さすがは、青龍さんのおひざ元……ですか。穏やかでもありますね)
クリムゾンウェスト各地で大きな戦いがある中、このような穏やかな場所や時は貴重だった。
立ち止まって話をしているラカとハナが見えた。ラカの肩にはフェレットが見える。そのフェレットは服を着ている。観智はそちらに足を向けた。
ラカとは初対面だが、服装の雰囲気から龍園在住の人物だとなんとなくわかる。
サクサク音がするため、自然と進行方向の二人が顔を向けた。
「こんにちは。防寒着に、靴まで……愛されているペットのようですね。なんという名前なんでしょうか」
挨拶の後「モニですわ」とラカが答える。
「モニさんですか。可愛いですね」
観智の連れのパルムもうなずく。
「ありがとうございます」
ラカは微笑んだ。
●それぞれ
エステル・ソル(ka3983)はペットのペルシャ猫のスノウと散歩していた。スノウは白いため、赤いリボンを巻いておく。
「雪で見失うと大変なのです」
もっふとしている白いペルシャ猫の首に赤いリボンは映えた。
「たくさん写真を撮るのです」
手には魔導カメラ。
スノウは雪の上に下りた瞬間、バッと跳ねた。そのあと、雪が毛にまとわりつくに任せ、氷の塊を前足で叩き、それと戦っている。
「こ、これは! 駄目なのです、魔導カメラのシャッタースピードでは追いつかないのです! でも、激写するのです」
エステルはいかに躍動感あふれるスノウの写真を撮るのか戦いが始まったのだった。
レイア・アローネ(ka4082)は散歩していたところ、ラカ達に遭遇した。
「モニと遊んでいる最中か?」
「……そのはずだったのですが、ホワイトデーとは何かうかがっていたところですわ」
「なるほど……知らん。雪遊びの日か?」
レイアは知らないため、字のイメージから真っ直ぐ問う。
「リアルブルー由来の……よくわからない日ですわ」
ラカは説明にならない説明をした。
「アウトプットは重要ですが……」
「説明しがいがないくらいの砕かれっぷりですぅ」
観智の横でハナが溜息をもらしていた。
木綿花(ka6927)は龍園出身であり、里帰り中で、ペットの散歩の途中だった。このころの季節はわかっているし、散歩でちょっとくつろぐには何が必要かも理解している。そのため、用意したのは温かいお茶が飲める道具とペットたちのおやつだ。
連れは柴犬のポチと桜型妖精アリスのルタである。
「あれは、ラカ様?」
木綿花は駆けよる。
「こんにちは、ラカ様」
「こんにちは、木綿花さん」
「お散歩ですか?」
「そうですわ」
「ご一緒してかまいませんか?」
「むろん、かまいませんよ?」
木綿花は暖かそうな格好をしているモニを見た。モニは前足をラカにこすりつけ、必死に何かを訴えているようだった。
●にゃん・わん・にょろ
「モニちゃんの服、可愛いですね。手作りですか?」
木綿花は尋ねた。
「いえ……その、リゼリオに行ったとき見つけました」
「なるほど」
やはりモニは前足や後ろ足をラカにこすりつけている。
「あの、ラカ様、モニちゃん、靴は脱ぎたそうです」
木綿花の指摘にラカは困惑する。
「ポチは靴はなくとも大丈夫ですし、モニちゃんも動けば温まります。それに服も着ていますし」
「そうですね……しもやけしそうですけれど……」
ラカがしぶしぶモニの靴を取ると、モニはあきらかにほっとした様子を見せた。
「そうです。モニちゃん、ポチとルタです。お友達になってね」
木綿花はモニに話しかけた。モニはじっと木綿花を見つめ、鼻をスンスンと動かしていた。
「お名前の由来はあるのですか」
観智の質問にラカは「ありますわ」と胸を張って答える。
「こういう毛むくじゃらなのを『もふもふ』というそうですし、長いのをにょろにょろと言います。そのため『もふっとしてにょろり』からつけました」
「……形状からついたんですね」
観智はうなずく。
「スノウさん、待ってくださいです」
エステルの声が遠くから聞こえる中、どどどと白い生き物が一行の前に現れた。
「わふっ」
「しゃああああ」
木綿花のポチが飛び掛かり、白い猫・スノウが足を止める。しかし、足元は滑った。もっふとポチにのめり込みスノウが止まる。
「……猫が滑ってきましたわね」
「いや、ラカさん、飼い主の声、響いていたですよぉ」
ハナが淡々とツッコミを入れた。
「ポチ、よく止めてあげましたね」
木綿花がポチを褒める。
「はあはあ、助かりましたぁ……こんにちはです……。駄目です、スノウさん!」
エステルは追いついたところで、スノウをたしなめた。
スノウはごろりと横になり、上目遣いに「ごめんなさい」と言ったようだった。
「す、スノウさん、ずるいです。ひっくりかえって上目遣いは」
エステルはシャッターチャンスとばかりにカメラを向けた。
「可愛いなー」
レイアはにこにことエステルの行動を見ていた。
スノウは謝ったところで、立ち上がると、よじ登り易そうなラカのコートに前足を掛けた。
「あっ、スノウさん」
エステルは再度シャッターを切るため、カメラを向ける。
スノウは動きが鈍いラカを登った。途中で、モニが「何をするでち!」とばかりに威嚇をした。一応、前足で二度攻撃のパンチを繰り出すが、ラカの腕から滑り落ちる。スノウは回避したが落ちる。
「……モニ、モニ!」
ラカは慌ててしゃがむ。モニとスノウの動きが明らかに速く、モニは威嚇しながら後退し、スノウは高いところに登った。高いところ、すなわち、ラカの頭の上。
「ちょっとうらやましいですけれど、これは」
エステルはシャッターを切る。スノウは視線の先にいたルタに飛び掛かるが、ルタは危険を察知して避けた。
「ルタ、すごいです」
木綿花がルタを褒めていると、遊んでいると理解したポチがスノウに飛び掛かる。
「ワンワン」
「しゃっ」
「しゃああああああ」
犬は尻尾を振り猫を見て、猫は犬を寄せつけないよう威嚇し、フェレットは威嚇しながら後退していった。
「……モニっ」
「キャン」
ラカが慌てて追いかけるが、ポチに躓き転ぶ。木綿花はポチを引き離す。
「ん? 追いかければいいな」
「はい」
レイアはモニを追いかけた。モニは楽しそうに「ククク」と言いながら逃げた。
起き上がろうとしているラカの上をポチとスノウが駆け抜けた。
「ラカ様!?」
「ラカさん!?」
飼い主たちが悲鳴を上げる。ただ、どこか笑顔なのはラカが無事だと分かるし、状況が滑稽に見えたからだ。
「生きていますぅ……」
ハナはしゃがむとラカに声をかけた。
「だ、大丈夫です。お願いですから、モニを止めてください」
「確かに重要ですね」
観智がとりあえず走って追いかけ、池の上を滑っていくモニを回収したのだった。
●どたばた
「で、ラカは何故このようなところにいたのかと聞いていか」
レイアは尋ねた。
「フェレットと花が写った写真を見て、いいなと思ったわけではありませんけれど、春らしさも可愛らしいかと思ったり……し、していませんわ」
「花とモニちゃん、可愛いでしょうね。でも、まだ花は雪の花。それならば撮れますね」
木綿花はしゃべりながら温かいお茶の用意とペットたちのおやつの準備をする。休憩である。
ラカが魔導カメラを持っている理由も理解した。
「駄目です、スノウさん、これはお茶です。こちらのリンゴをどうぞ。モニさんも食べますか?」
エステルは持参のアップルティーを飲みながら、スノウに干しリンゴを上げていた。
「ラカさん、コップに首伸ばしていますっ!」
観智が慌てて言う。ラカが目を離している隙に、伸びるだけ伸びて首をコップに入れようとしている。礼を述べながら、ラカはコップからモニを離す。すると、より一層のびる。
「カフェインは危険ですね。それにしてもよく伸びますね……」
観智が食べさせてはいけないものについて説明をする。一方で、フェレットの伸びぷりに感嘆する。
「体が柔らかかくてよく伸びるのですわ」
ラカが説明をした。
「スノウさんが伸び始めました!?」
スノウは言葉を理解し、対抗意識があるのかエステルの膝の上で伸び、地面に向けて落ち始める。
「猫も伸びますね」
観智が感心して伸びる生き物たちを見つめた。
「ラカ様、雪だるまを作って、そこで遊ぶモニちゃんと撮るのはいかがでしょうか?」
「なるほど」
「ん? カマクラを作るのか、雪だるまを作るのか? 任せろ」
レイアが立ち上がった。
「どのくらいのを作ればいいか?」
ペットたちの状況を見て、柴犬サイズとフェレットサイズを作ることになる。
「どうだ、モニ」
レイアの力作の前にラカがモニを置いた。ポチとスノウも寄ってきた。
エステル、木綿花とラカがカメラを構えた。
出来事は一瞬。モニがポチの鼻に噛みつこうとして、驚いたポチが下がってスノウを突き飛ばし、怒ったスノウがラカに飛び掛かった。
写真は白い毛玉、茶色い毛玉、真っ白と言ったものとなった。
「……ら、ラカ様、一匹ずつとりましょう」
「先ほどから見ていると、モニちゃんがとりあえず、大きな生き物に威嚇するという構図ですぅ」
「そうですね。大きさから逃げたくなるのかもしれません」
木綿花に対しハナと観智が分析結果を告げた。
試しに、一匹つずつ撮る。エステルと木綿花はきちんとペットの写真を撮れた。
ラカがドキドキしながら雪だるまのそばにモニを置き、シャッターを切る。
できた写真は、ブレブレだった。
「ラカさんの技術力ではないですね」
「モニちゃん、止まらないのですね……」
観智と木綿花はモニを見る。じっとした瞬間、首が動く。
「おやつとかで釣ってみればいいのでは?」
「そうだ、私が抑えておこう」
ハナが犬用のクッキーを振ってみたが、動く。レイアが前足の裏あたりで抑えた。その手と戦おうとするモニ。
「パルムを見せるとどうなりますか?」
観智がモニの前に連れのパルムを置いてみた。大きさが同じくらいのお友達なら少し動きが違うかもしれない。
パルム、モニをじっと見る。
モニ、パルムをじっと見る。
「シャッターチャンスです」
ラカは木綿花たちに言われるままシャッターを切ったとき、モニはパルムの首根っこに食らいついていた。
「あああ、パルム!」
「きゅうううう」
首根っこ咥えられどこかに連れ去られるパルム救出のために観智が走り出し、状況をようやく理解したラカが観智を追いかけた。
結局、モニのまともな写真は一枚も撮れなかった。
ペットたちが「寒い」をそれそれ訴え始めたため、町に向かう人間たちだった。
●春はまだまだ
「ところで、ラカさんは龍騎士隊にお知り合いはいますぅ? ホワイトデーですが、ちょっと考えてみました。告白イベントとかどうでしょう?」
ハナは提案する。
「龍騎士に知り合いはおりますけれど……告白? 例えば『ワイバーンの餌の分量間違ってしまいました、隠していてごめんなさい』ということですか?」
「……ラカ……様……」
木綿花はちょっと生温かい目で見つめる。
「確かに告白ですがぁ、それではないですぅ」
ハナは望みが薄いと悟った。
「白い料理のコンテストでも、白いペット自慢での日でもいいですしぃ、何か面白い行事の日を作りませんか?」
ハナの本音は見えないまま、ラカは首をかしげる。
「ペット自慢……白限定……。もし、パルムしかペットにいないならば……」
「白いパルムしか出られません」
「……流通用に栽培されたエノキダケみたいな……パルム……」
観智は想像した。想像したけれどエノキダケみたいな白いパルムはどう考えてもひょろ長い。連れのパルムを見つめる。
「……ひょろ長い……」
「きゅ?」
さすがに頭や足を持ってひっぱりはしなかった。可愛い顔で何かを訴えるパルムにいたずらはできない。
「白いペット自慢……スノウさんが一番です」
エステルはスノウの毛に顔をうずめる。
「そうだな、エステルのスノウさんはきれいだな」
レイアが褒めると、スノウは胸を張ったように見えた。
「……」
ラカが何か言いたげに、モニを見つめる。
「そろそろ町ですわね」
散歩は終わる。
「あ、そうか。ホワイトデーにちなんで、クッキーとかを交換すればよいのか!」
「……ハロウィンです……」
エステルが静かにツッコミを入れる。
町が近づくと動物たちが騒ぎ出す。帰り道、知っているとばかりに走り出した。
「スノウさん、どこに行くのですっ!」
「ポチ! うちはこっちです!」
追いかけたエステルと木綿花がそれぞれ町に消えていく。
「エステル? ラカ、モニ、また今度!」
レイアが追いかけて行く。
「……はあ……せっかくこうしてきたのに……出会いがぁ」
ハナがとぼとぼ中心地に消えていく。
ラカは観智をじっと見る。
「……いえ、私は何か追いかけて行かないですよ。それより、ペットがあっての出会いと言うのもありますね」
「そうですわね。ところであなたはパルムがペットなのですか?」
「そうですよ。リアルブルーの人間からすると、パルムは不思議です」
観智とラカは町に入ってから立ち話を暫くして別れた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/03/24 01:27:32 |