• 血断

【血断】鉄の鼓動

マスター:ゆくなが

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/03/25 12:00
完成日
2019/03/29 10:14

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●イントロ
 ここはサルヴァトーレ・ネロ。すなわち、黙示騎士たちの根城だった。
 その中を、黙示騎士マクスウェルは歩いていた。何かを探している風であったので、黙示騎士ラプラスが、
『どうしたのだ、マクスウェル』
 と、抑揚のない口調で声をかけた。
 マクスウェルはラプラスの言葉で、ぴたりと足を止めた。
『……』
 マクスウェルは、少しばかり黙ってからこたえる。
『ラプラス。……クリュティエはどこへ行った? 姿が見えないようだが?』
『クリュティエ?』
 その名前が出てきたことに、ラプラスは少し驚いたようだった。
『彼女なら、グラウンド・ゼロに行った』
『何?』
 マクスウェルの声に警戒の色が乗る。
『グラウンド・ゼロに? 何故だ』
『我も詳しくは聞いていない』
『そうか……わかった』
 マクスウェルは、マントを翻し、毅然とした足取りで去って行く。
『マクスウェル、お前もどこかへ行くのか?』
『グラウンド・ゼロへ……散歩に行ってくるだけだ』

●Aメロ マクスウェルパート
 マクスウェルはグラウンド・ゼロを駆けていた。
『あの女……負の大地とはいえ、ハンター共の活動領域をひとりでふらつくとは正気なのか?』
 独り言ちて、マクスウェルは自分がクリュティエを心配していることを自覚した。
 クリュティエは、自分のことを仲間だと言った。今もはっきり思い出せる。その時覚えた感情も。
『フン……このオレを煩わせるとはいい度胸をした奴だ』
 マクスウェルは、クリュティエが何故グラウンド・ゼロに来たのかを知らないので、移動力を駆使して、やらためったらに探し回った。
 結果、時間はかかったが、遠くにクリュティエを発見する。彼女の方はマクスウェルには気付いていないらしく、ふらふらと歩いている。
 マクスウェルは彼女を見つけたこと、そして彼女が無事なことに安堵した自分を発見した。
『無事なら、まあいい。手こずらせおって……』
 さて、クリュティエの無事も見届けたし、これからどうするか、と考えていた時、マクスウェルは自らの背後に迫る気配に気がついた。

●Aメロ ハンターパート
【血断】作戦の戦域は、かつてソードオブジェクト『ダモクレス』があったあたりである。
 作戦進行の邪魔になりそうなシェオル型などを掃討していた部隊から、ある連絡が入った。
「黙示騎士マクスウェルと思われる個体が、近くにいる」
「ハンターの拠点に向かっている様子ではない」
「何が目的かはわからないが、万一のために、至急対策部隊を編成してくれ」
 あまりに緊急の用件なのでまとまった戦力を派遣するのは難しい。たまたま近くにいたあなたたちハンターは、マクスウェルの対策に駆り出されることになったのだった。
 ハンター側からすれば、マクスウェルがクリュティエを探していることを知る由もない。そもそもクリュティエがこの地にいることも知らない。
 とにかく、あなたたちはマクスウェルという脅威に備えなければならない。
 あなたたちは【血断】作戦の前線基地を守るために、基地を背にして防衛線を張る。
 マクスウェルがそのまま去っていくのなら、それで終了の依頼だった。
 けれど、マクスウェルはゆっくり振り返り、その赤い瞳でハンターたちを捉えたのだった。

●Bメロ マクスウェルパート
『ハンター共め、このタイミングで出てくるか』
 マクスウェルは、まだ遠くにいるハンターを睨んだ。
 正直言って、今ハンターと戦う理由はない。
 けれど、やはりマクスウェルが気にするのはクリュティエのこと。ハンターの位置からなら、クリュティエがいることには気がついていないだろう。マクスウェルを挟むように、ハンターとクリュティエがいるからだ。できれば、このまま、ハンターにはクリュティエの存在を、クリュティエにはハンターの存在を気取らせずにいたい。
 クリュティエには、この地を訪れた目的があるだろうから、それの邪魔になることは、したくもないし、させたくもなかった。
 だから、ハンターにこれ以上接近される前に、マクスウェルは自らハンターに近づいて行く。

●Bメロ ハンターパート
『フン、このオレをわざわざ歩かせるとは、思い上がるなよ、ハンター共ッ!』
 ハンターに近づくマクスウェルは、いつも通り傲慢な口調である。
 この少人数でハンターがマクスウェルを相手できるかと言われば、難しいと答える他ない。討伐は不可能だろう。ハンターはそれぞれ身構えるが、だがしかし、マクスウェルは腕を組んで余裕ぶった態度。
『……』
 マクスウェルは、宿敵とも言えるハンターたちと対峙しているのに、妙に落ち着いていた。その様子は、黙示騎士の中で、誰よりも速く突撃していた彼に似つかわしくない。
『…………』
 マクスウェルは大剣を抜く素ぶりも見せず、ハンターを観察しているようだった。

●サビに至る、その前に
 マクスウェルが自らハンターに近づいたことで、クリュティエの姿は遥か彼方になった。もはや、お互いに存在に気づくことはないだろう。ハンターを倒して帰ってもいいかもしれない。けれど、そうすることは少々惜しく思われた。
『……』
 マクスウェルはまじまじとハンターを見下ろす。
 ハンターが作戦を立て、大勢で行動するのは彼らが弱いからだと思っていた。実際、1人あたりの戦力はマクスウェルの方が上だ。
 彼らを叩き潰したこともあった。でも、ハンターは懲りずに立ち上がってきた。
 そして、勝てなかった時があった。
 ハンターとマクスウェルの違いを、クリュティエは「仲間と成長」と言い表した。今回もハンターは複数名であるし、何かしらのマクスウェルにとっては小癪と思える手段も考えていることだろう。
『…………』
 ハンターはむかつく存在だ。でも、今はそれ以外の感情もある。きっと、マクスウェルはハンターと関わらなければこの感情に気付かなかった。なので、今は少しだけ、ハンターと話してみたくもある。
『オイ、貴様ら』
 だから、マクスウェルは疑問を口にする。傲慢な彼からすればそれ自体が珍しいことなのだろうが、それだけハンターという存在が大きくなった証拠だろう。
『仲間とはなんだ? 成長の先に何がある?』
 大剣の柄に手をかけることなく、マスクウェルは静かに問いかける。
『聴いてやるからこたえてみろ。気まぐれの機会だ。無駄にするなよ?』

リプレイ本文

●メロディが続く
『萎縮することはない。話してみろ。聴いてやる』
 相変わらず、マクスウェルは腕を組んで、ハンターを見下ろす。
「そう言うことなら、話すけど?」
 夢路 まよい(ka1328)は杖の先を地面へと下ろす。直感的に、相手が戦いに来たのではないとわかったからだ。
「いいよね、エヴァンス」
「妙なこと聞いてきやがったと思ったが、まぁ戦う意思がないってんならそれに越したことはねぇ、ひとつ教えてやるとすっか!」
 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)も、大剣を鞘へと戻し、隣にいるまよいと同じく会話の姿勢だ。
『教えるだと? このオレの問いに対し、貴様らは謹んで聴き、謹んで答える機会に恵まれているだけだぞ?』
「あー、わかったよ。とにかく、お前も今は戦う気はないんだろ?」
『フン、わかっているならそれでよい。ほら、喋れ』
 ハンターはマクスウェルに本当に交戦の意思がないことを知る。また、ハンターの中にも敢えて交戦しようとする者もいなかった。
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)も会話に応じることにするが、どうしても思わないでいられないことがあった。
(マクスウェルの奴、尋ねる側の態度ではないな……まあ、こいつなら仕方ないか)

●サビ 仲間とは?
「その質問に答える前に、ひとつ教えて貰わなきゃいかんことがある」
 しかし、エヴァンスが口にしたのはそんな切り返しだった。
『オイ、貴様。問うているのはオレだぞ!?』
「話すにも順序ってのがあるんだよ」
『……そういうことなら、まあ良い。オレも付き合ってやるつもりでここへ来た。言ってみろ』
「お前には今、利害が一致せずとも肩を並べて戦ってやろうと思える相手は頭に浮かぶか?」
『利害……?』
 ふむ、とマクスウェルの瞳には思案の色が浮かぶ。やはり思い出されるのは、黙示騎士たちの顔だった。それは、今までも気がついていて、無視してきたものかも知れない。
「浮かんだのなら、そいつが仲間ってやつだ」
『フム……』
「黙示騎士マクスウェル。そもそもあんたはそれを聞いて、どうするのです?」
 そう言うのはGacrux(ka2726)だ。
『どうする、だと? オレが納得するかどうかはともかく、オレが貴様らの話を聴いてやる。それ以外の何があると言うのだ?』
「ならば、俺も答えます。その代わり、先に俺の質問に答えてくれますか?」
『……思い上がるなよ、貴様』
 マクスウェルの声に怒気がこもった。
『先ほども言ったが、問うているのはオレだ。それを無視して貴様の質問に答えろだと? それがオレの問いに付随するものなら許してやろう。だが、そうではないのなら後にしろ。それとも、この場で貴様たちを叩き潰さぬオレの大らかさを侮辱したいのか?』
「──いえ、そのつもりはありません。では、最後に問いましょう」
『フン、ならばよい。では、貴様は仲間をどのように考える?』
「人によって考え方は様々でしょうが、目的を共にする者。信頼出来る者。守りたい者……でしょうか」
『守る……か』
 マクスウェルにとって、戦うのも力を見せつけるのも楽しいことだ。でも、自分の行動にそれ以外の理由を感じたからこそ、ここにいる。
「俺にとっては、仲間は同じ方向を向く者だ。手を取りあい、補い合って同じ目標へと向かう、そんな関係だと思う」
 さらに続けたのはリュー・グランフェスト(ka2419)だ。
「俺は泣く人を見るのは嫌だし笑顔がみたい。それを成すにはひとりじゃ限界があるんだ」
 リューは今までの直情的なマクスウェルの行動を知っている。そっちの方が戦う上でも心情的にも楽なことはわかっている。だが、問われた以上、誠実に答えるのはリューには当然のことだった。
『ならば、何故仲間を守る? 仲間を失えば、目的へたどり着くスピードが遅くなるから守るのか?』
「そこが、利害が一致せずともっていう部分でもあったりするんだよ」
 エヴァンスが補足した。
「アナタの求める答えかどうかは、わかりませんが」
 イツキ・ウィオラス(ka6512)が静かに語り出す。
「私にとって、仲間とは家族の様なもの。共に歩み、共に在り続けるもの」
『家族……』
 マクスウェルは、誰のものかもわからない記憶の声を思い出す。
 そこで、
 ──お兄ちゃん。
 と、呼ばれた気がして。
「血縁だけが家族の全てではないと思います。今、此処には居ませんが、イェジドやグリフォンだって、私の家族の一員です。勿論、この子たちも、です」
 イツキは同行しているモフロウを優しく見つめて言う。
「他のハンターさんたちも、大切な仲間である事に変わりは有りませんが……私は、少々人付き合いが稀薄なもので、声を大きくして仲間とは言い難くも、ありまして」
 言葉の後半になるにつれてイツキはやや苦笑した。
「私の場合は、飾った言葉を取り払えば、同じ目的に対して分業でき互いを高めあうことのできる存在、だな」
 続いてアルトが語る。
『アルト・ヴァレンティーニ。大精霊に最強の守護者と称されておきながら、貴様ですら仲間を必要とするのか』
「リアルブルーでのことを覚えていてくれて嬉しいね。私にも仲間は必要だ。例えば、ある場所までの道を作りたいと思った時にひとりでやるよりは人を集め、材料を集めてくる者、材料を使い実際道を作る者――実際には他にもたくさんの役割があるだろうが――に別れ、集まった中で適材適所で割り振ったほうが効率がいいだろう?」
 マクスウェルは黙示騎士たちの顔を思い浮かべ、確かにそうだな、と思った。
「分業することにより、材料を多く集めれる、早く道を作れるといった個としての成長もしやすくなるし、道を作る労力を減らすために材料をより加工しやすいものにする、少ない材料でも多くの道が作れるように無駄のないように加工するなど自身の得意分野を極めることで相手の作業の効率を高めるといったことも考えれるようになってくる」
『フム……』
「そうやって、自身を成長させながら、互いに高めあうことができる存在が、私の考える仲間、だな」
 ともすれば、とマクスウェルは思う。近頃感じている己の変化とはやはり、仲間を意識したからなのだろう。
「結局のところ、どんなに力を持った戦士も一人では限界があるんだよ」
 マクスウェルの瞳がアルトから、喋り出したエヴァンスの方へ向く。
「俺とまよいの事を覚えているかどうかはわからんが──」
『覚えている。リアルブルーでオレを海に叩き落とした2人だ。そして……もっと前には、大剣の貴様はオレの触覚を斬り落としやがったッ!!』
「覚えてたか」
 マクスウェルは過日の屈辱を思い出し、瞋恚の炎を瞳で燃やしたが、唸るようにして怒りを鎮めた。
『ヌゥ……、自らの言葉を反故にするほどオレは落ちぶれていない。続けろ』
 そして、会話の姿勢をマクスウェルは続行する。
「俺らは少なくとも一度はお前を退かせたことがある。その時、たった2人にしてやられるなんて思ってもみなかっただろ?」
 確かに、あの時エヴァンスとまよいはマクスウェルの思惑に勘づき、企みを粉砕した。エヴァンスの戦闘能力も必要だったし、まよいの魔法も必要だった、見事な連携攻撃であった。
「マクスウェル、そもそもなんだけど」
 まよいが唇に人差し指を当てながら言う。
「仲間とは何か、それって、わざわざ深く考えなきゃいけないことかな?」
『ン?』
「直感的にこう、近くにいたいとか。もっと言えば、この人が好き! っていうのがあって、『仲間!』ってお互いに思えてたら、もうそれは仲間でいいんじゃないかな?」
 まよいは言葉の途中でちらりとエヴァンスへ視線を送った。
『貴様の言うことはとても簡単なように聴こえるが?』
「実際とても簡単なことを言ってると思うよ。マクスウェルは、黙示騎士たちのことを仲間だと思ってるんだよね? だから今私たちと話してるんでしょ? ラプラスとか、クリュティエとか、テセウスとか、クドウ・マコト、もういないシュレディンガー、……イグノラビムスは喋るかわからないけど、彼らから『仲間だ』って言われたことないの?」
『…………ある』
「じゃあそれでいいんじゃない? 誰かに対して、仲間か仲間じゃないか、なんていちいち悩むことなんてないよ。辞典にでも載ってそうな定義なんてどうでもいい。仲間かどうかは、自分達がそう思うか思わないかだよ」
 にこり、とまよいは笑った。
「自分にとってそいつらの事をどう思うのか、考えてみても良いんじゃないか?」
 マクスウェルがハンターにとっての仲間の定義ばかり気しているように見えたので、リューも、そもそもマクスウェル自身にとってどうなのか、という部分を示した。
「バカやりあう友達もいれば、いがみ合うような奴もいる。でも、仲間なら仲が悪くたってそれだけじゃない部分も見えてくる。だから面白いんだ」

●サビ 成長とは?
『貴様らはむかつくことに成長している』
「そりゃ、どうも」
 アルトがクールな顔で、マクスウェルの言葉を受けた。
『オレは自分が強いことを知っている。オレは強いから強いのだと思っていた』
 言葉遊びのようだが、マクスウェル自身戦うために戦っていたので、強さに理由や切っ掛けを求めてこなかった。
『強いものは強い。でも、ハンター、貴様らは強くはない。むしろ弱い。だが、だんだん強くなる。むかつく。そしてオレと渡りあう。やっぱりむかつく!』
 なんだかんだ、マクスウェルはハンターが強くなったことを認めている。
『しかし、オレと貴様らは何かが違う……らしい。なんの為に成長する? その先に、その果てに、何がある?』
「私は、成長とは通過点だと思います」
 イツキは切っ先を下ろした槍をぎゅっと握りしめた。
「幻獣たち、それから私が心を寄せる幾人かの方たち。彼らの隣に立ち、彼らと共に在る為の、闘う力。私はまだまだ未熟で、非力で、至らぬ事ばかりだから、特にそう感じるのかも知れません」
『ハァ〜、貴様らはいつもそうだ。弱さを自覚しながらそれでも立ち向かう。全く、バカなのか賢いのかわからんッ』
「えっと……」
 そんなマクスウェルの反応にイツキはちょっと驚いた。
「弱い私たちが戦うのを諌めてます……?」
『呆れているだけだッ。それで貴様らが止まるのだったら、とっくに邪神に取り込まれているだろうよ』
 その様子がちょっとだけおかしくて、イツキはくすりと笑った。
「はい。私はまだまだ非力ですが、力が全てだとは、想っていません。けれど、想いを貫くには、力が必要であるのも確かな事。なればこそ、大事なのは、心の在り方なのだと、私は想います」
「できなかったことができると、思いもしなかったことが見えてくる。俺はそれが成長だと思うし、先だと思う……」
 語る、リューの言葉がちょっと途切れた。
「でも果てって言うなら……わからない事だな」
 リューのその言葉にマクスウェルは即座に疑問を呈した。
『わかりもしないのに成長するのか?』
「まあな。それでも俺は、友達となら、仲間となら、更にこの先に進めると思う。その先に何があるのか、それは俺にもわからない。わからないからこそ先に行きたい。きっと何かが見える。そうなったらまた更に先を目指せる。それが、きっと楽しいんだ」
「私は、先に何が待ってるかなんて考える前に、自分が伸びてるって感じる今が楽しいよ。それに、強くなればそれだけ、私が好きなものを護れるようになるし」
 まよいは、くるりと一回転して世界を見渡した。。
「私は私の好き、っていう気持ちに従ってるだけ。私が世界の守護者になったのも、この世界の有り様が好きだから」
『好き……だと?』
「そ。マクスウェルにはそういう気持ちはないの?」
『……ちょっと考えるから、話を続けていろ』
「お前がそう言う奴だとはわかっていたが……」
 アルトは、それでもマクスウェルの態度に慣れつつあったので、構わず続けた。
「私は先ほど言ったように、仲間がいるからお互いに成長できる。道の例えで言えば、より長い道を、より早くつくることができる。ほら、お前だって、クリュティエが提案した共闘で、わかったこともあったんじゃないか?」
『確かに、クリュティエの奴はオレの力をよくわかっていたからな』
「そういうことだよ。自分じゃ気がつけなかった部分がわかったりするし、さらに活かすこともできるだろ?」
 そして、エヴァンスの言葉が続いた。
「ひとりでも成長は出来る。だが、横に自分の力を預けられる……信頼できるやつがいるってだけで、もっと自分の戦い方に磨きをかけることが出来るんだよ」
『仲間と成長、それはわかった。ならば再び問う、その先に何がある?』
「……未来、ではありませんか?」
 ぽっかり空いた穴を埋めるように、Gacruxの言葉が嵌った。
「望む未来の為に、人は向上し成長するのでは」
『未来に、好きに、心……、さらに先に何あるかわからないけど進むだと……? よくそんなふわふわしたものを理由に戦えるな』
 でも、それこそが決定的な違いなのかもしれない、とマクスウェルはようやく思い当たった。

●アウトロ
「では、俺からも質問です」
 最後にGacruxが質問する。
「クリュティエは……どのように過ごしている?」
『クリュティエ? 何故貴様からその名前が出てくる?』
「彼女の元のデータはカレンデュラだ。そしてカレンデュラは仲間だ。敵に利用されて、何も思わないわけではない。此方にも知る権利があるだろう」
『フン、奇特なことだな。クリュティエは向こうに……』
 言いかけて、マクスウェルは彼女がこの地にいることを隠すつもりだったと思い出したので、
『このオレが直々に元気なのを確認しているッ!! いや、してきたッ!!』
 と、若干投げやりに伝えた。
 だがしかし、Gacruxはその言葉に安堵した様子であった。
 それが、マクスウェルには不思議だった。
『クリュティエはあの赤髪の女とは違う。なのに、そんなに気になるのか?』
「……俺とて、彼女を心配している」
『──妙な男だな』
 そう言って、マクスウェルはマントを翻した。
「帰るのか、マクスウェル」
 アルトが声をかけた。
『満足したからな』
「自由な奴だな……」
「満足したのはお互い様だぜ、マクウスェル」
 そう言うのはエヴァンスだ。
「何を考えてるのかわからねぇやつより、こうやって俺達と同じく悩みながら戦うやつにこそ首を取る価値があるからな」
 エヴァンスは犬歯をむき出しにして、獰猛な笑いを浮かべる。
『エヴァンスと言ったか。次会うときは戦場だろうな』
「楽しみにしている」
『その時は、刃で以って語り合おう、ハンター。……テセウス、転移しろ』
 マクスウェルは意外なほど静かに、転移によって去って行った。
 こうして両者は戦闘行為に及ぶこともなく、【血断】作戦前線基地にやってきた突風のような危機は過ぎ去ったのだった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 闇を貫く
    イツキ・ウィオラス(ka6512
    エルフ|16才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
夢路 まよい(ka1328
人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2019/03/24 05:24:28
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/03/22 07:45:23