• 王戦

【王戦】見上げる先は違う空

マスター:鹿野やいと

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2019/03/28 19:00
完成日
2019/04/09 16:32

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ハルトフォートの司令官であるラーズスヴァン氏、会議で人を集めて曰く。
「もう無理! 撤退する!」
 誤解の無いように言うと意訳である。そして既定路線でもある。元から戦力に天地の開きがある。攻城に必要な戦力は3倍、などのわかりやすい優位で補える範囲ではない。むしろ想定以上に抵抗したほうだろう。会議で決定したのは敗走を前提とした今後の作戦予定に関してであり、今回は遂にハルトフォート放棄の日付が確定した。
 砦内の全部隊が撤退の仕掛けに取り掛かる中、赤の隊は一つ予定外の課題を抱えていた。砦内は小さな町のように機能している部分があり、元から軍人以外の住人が住む環境がそれなりにあった。そこには今、戦争で焼け出されて来た周辺の村落や町の住人達が身を寄せ合って住んでいる。本当はここから更に王都に向けて逃がす予定だったのだが、護衛を付ける余裕がそれほどあるわけもない。順次可能な範囲で退去を進めていたが、ここに来てその退去を急ぐ必要が出て来た。問題は彼らにつける護衛の人選にあった。
「絶対にイヤです! ここで戦わせてください!」
「そうです! 俺達はまだ戦えます!」
「戦わせてください!! 最後の最後まで歪虚どもに目に物見せてやります!」
 直談判に来た騎士達がジェフリーの執務机の前で噴きあがっている。戦意が高すぎるのは結構なことだがこれでは話が進まない。ジェフリーは一通りの説得に成果があがらず、どうすれば納得するのかと途方に暮れていた。
 彼らを人選した理由は大まかにわけて3つある。一つは政治的な配慮だ。貴族の次男三男が多く死んでも家にとって不都合の無い人間の多い赤の隊だが、それも実家の長男が存命であればの話。度重なる戦役で継承権が繰り上がった貴族の子息達を、どうにかこうにか戻せないかと有形無形に圧力があるのだ。戦後の混乱を減らすという意味ではジェフリーも異存はないのだが、問題は赤の隊で戦い続けてきた本人の気持ちである。
「そもそも家とは縁を切ってきました。今更私が戻る必要がありません。副長、お願いします! どうか一緒に戦わせてください!」
 その繰り上がった序列で配慮された筆頭が、目を潤ませながら懇願してくる騎士アリサ。彼女は兄2人を失っている。家からはせめて血を絶やしたくないとやはり同じような懇願に満ちた手紙が届いていた。本人にも同じ内容の手紙が届いたのだろう。親心で娘の生存を願った内容だが、本人にとっては恩着せがましいと読めて仕方のない内容だろう。赤の隊は遠征も長く現場での武勇を尊ぶ気風もある。このように貴族として政治的な解決をされてしまうのは誰にとっても不本意には違いない。中には家と疎遠になって騎士に残った者も居るから話は余計にややこしい。
「怪我をしてるのは誰でも一緒です。両手で槍を振り回せるように訓練もしてきました。お願いですから、どうか残してください」
 二つ目の理由は怪我人だからという至極真っ当な理由だ。代表してやってきた騎士アーノルドは負傷で利き腕が使えなくなっている。彼本人も言っている通り左腕でも武器は振るえるわけだが、両手で武器を扱う者に比べれば戦力低下は否めない。彼の他にも片目を失明していたり、左腕がもげたり、片足がなかったり、そんな連中まで気勢をあげている。こういう半端な戦力に気を遣うよりは、元気なうちに民間人の護衛に当てて帰らせたほうが面倒がない。しかしこれも本人達の気持ちは無視している。万全な状態の仲間を殿にして死なれるよりは、決戦に向けて健康な人間を残したいという考えもわからないでもない。
「俺も赤の隊の一員です。逃げるにしても、皆一緒です」
 最後に三つ目の理由。役目を終えている連中だ。別に仕事がないわけではない。だが最後まで残す必要性が薄くなった為に、先に帰って良いとそれだけの話である。しかしそれで引き下がれないのが騎士ダリウスら赤の隊でも特に獰猛な連中だ。意気消沈した者は他にいるから彼らを帰して欲しい、自分は殿として戦いたい。と、有り余った戦意の行き先を探している。ジェフリーとしてはその住民の護衛にも戦力が必要であるから彼らを配置している。それを無視されても困るが、彼らは彼らなりに今回の殿がどれほど激戦になるか理解しているのだ。残していった友とはもう会えないかもしれない。それならば自分が。3者ともに共通する焦りを、色濃く出しているのが彼らだろう。
 ジェフリーも長い間、直談判に来た騎士達と同じ程度には赤の隊に在籍している。気持ちはわからないでもない。わからないでもないが、立場上「はい」「そうですか」と彼らの要望を飲むわけにはいかない。個人の事情は斟酌しつつも、最終的には軍全体の意向を全うさせる必要がある。そういう立場の違いを、直談判に来た者達が斟酌している気配はない。
「副長!」「副長!」「副長!」
「もういい! 後にしろ!」
 思わずジェフリーは怒鳴ってしまい、はっとして口をつぐんだ。しかし怒鳴ってしまったものは仕方ない。声をなるべく抑えながら「退出しろ」とだけ命じると、3人は不承不承ながらも並んで扉を開いてその場を後にした。3人が去った後の扉の陰には、ばつの悪そうな顔をしたハンターが佇んでいた。
「っと…。見苦しいところを見せたな。だいたい聞こえていたか」
 ジェフリーは頼んでいた資料を受け取りながら、苦い顔で笑みを浮かべた。
「事情は知っての通りだ。命令だと言ってしまえば、簡単なんだが」
 そうはしたくない。彼らの言葉はただのワガママにすぎないが、内実として仲間を想っての事には違いない。終わらない戦闘で抱えた不安から自分だけ逃げてしまうことに、罪悪感を感じているのかもしれない。軍隊だからと彼らの感情を強権で押しつぶすのは、戦友の一人として躊躇われた。
「その……、こう言う事を頼むのは良くないとは思うのだが。もし彼らと話をする機会があったら、納得してもらえるように話をしてもらえないか。あるいは、もし別の理由があるのなら知りたい」
 そのハンターは少し悩んで考え込んだが「出来る範囲で良ければ」「期待はしないでほしい」という曖昧な約束を答えとした。ジェフリーとしてはそれで充分だった。用事を済ませて去っていくハンターを見送り、ジェフリーは一人になった執務室で父や兄に当てた手紙のしたため始める。先のことに不安があるのは彼自身も同じことだった。

リプレイ本文

 強く何かを願う人の気持ちを翻意させるのは難しい。理屈が通じないことが大半だからだ。あるいは理屈がわかった上でなお不合理な選択肢を選んでいる場合もある。ジェフリーの元に現れた騎士達は若手ながらもそれぞれが歴戦の騎士。完璧でないにせよ、指揮官としてそれなりに経験を積んだ人間ばかりである。
 星野 ハナ(ka5852)はまず模擬戦でもって現在のアーノルドの実力を明瞭に示し、言葉で煽って撤退に意識を向けさせようと考えた。
「言っときますけどぉ、砦を攻める歪虚は私よりしぶといですよぅ。今の貴方じゃ槍奪われて一撃殴られて終わりですぅ。
倒れた貴方を助けるために他の騎士が助けに行って戦線に穴が開くってことすら分かりませんかぁ」
「そんなことは百も承知だ。わかった上で直訴に言ったのだ。放っておいてもらおう」
 予定調和でアーノルドが破れた後の会話がこれである。アーノルドはそれ以上星野の言葉には取り合わず、残った仕事を片付けるために足早にその場を去っていった。ミグ・ロマイヤー(ka0665)はこうしてアーノルドがへそを曲げて立ち去るまでの一連のやりとりを遠巻きに眺めていた。
「無理じゃったか」
 言葉には特に落胆はない。概ね無理だろうと思っていた。説得は硬軟合わせてするもの。理屈だけでも感情だけでも収まらない。今回の場合においても、アーノルドは理屈のわからない人間でもないし、周囲の見えない人間でもない。それがあのように強硬に何かを訴えるのだから、感情的な理由が半分はあるだろう。それは事前にわかっていたことだ。
 星野の言葉は確かに正論だ。だが正論だけで彼が翻意するのならば、彼女の言葉でなくとも軍の命令で事足りる。彼女の理屈を通すには騎士達からの信頼が決定的に足りなかった。
「しかし甘やかすわけにもいかんか」
 飴と鞭方式での誘導には限界がある。そも何をもって飴となるのかが実はわかっていない。相手の言葉に同意するのは簡単だが、同意したとして信頼を得られるかはまた別の話。
「私、代わりに追いかけてきますね」
 そう進言したのはアティ(ka2729)だった。別の人間なら話を引き続き聞くことも出来るだろうと、ミグは頷いてアティを送り出した。どこまで話を聞きだせるかは不明だが、怒りは早々持続しない。普通に聞けば普通に答えてくれるだろう。
「それにしても若いのう」
 ミグの言葉には呆れたようなニュアンスと、同時にうらやむような気配があった。王国騎士団は過去に一度多くのベテランを失った為、指揮官側の人間であっても若い人間が多い。ダンテがいた頃は彼が数少ない古参として指導にあたっていたが、今や30にも満たない若造が責任者である。責任ある立場につけば相応に経験も積んで立場にふさわしい思考も身につくが、今日みたいな時に若さが悪い方向で噴出する。
「もっと大局を見て行動せねばならん者がこれではのう。いたずらに命を粗末にするような選択はおろかでしかないというのに」
 わかっててやっているのだから余計に性質が悪いともいえるが、その蛮勇が道を開く力でもあった。
 ミグは少しだけ時間を置いてから他の者の様子を見に行くことにした。若者同士の会話で片が付くなら良し。そうでないなら、老人にだけ言える言葉というものもあるからだ。



 騎士達はそれぞれがなるべく妥当に見えるように反論を展開していたが、反論しやすい題材を使っただけに過ぎない。これらの反論は全て軍の命令という前提を崩す程ではない。騎士達も以上の事は理解していたが、それでもあえて直訴するに至った理由は他にある。この本音の部分を理解しなければ彼らの説得は難しいだろう。
 ヴァルナ=エリゴス(ka2651)は手始めに直訴に至った騎士達の言葉の裏表を探ることにした。顔見知りの騎士アリサの手が空いた頃合いを見計らい、件の直訴の話を投げかける。
「此度の采配は不服ですか?」
「不服というか、なんというか」
 アリサはわかりやすく言葉を濁す。不服と言い切ってしまうほどではないが、彼女自身に引っかかることがあるのだろう。ヴァルナが言葉を待って視線を向けても、アリサはすぐに気まずそうに視線を裂けてしまう。ヴァルナは言葉を続けた。
「此度の任は負傷者や避難民といった戦えない者をまもり、送り届ける事。立派に騎士の務めだと思います」
 政治的配慮でただ安穏と後方送りになるわけではない。誰かがやらなくてはいけない大事な仕事だ。この時ヴァルナは慎重に今回の仕事の内容のみを話題にした。この少し前、ミグや星野に家の話題を出されて不満顔であったからだ。領主・貴族の責務を説かれもしたが、正確には家庭の問題だ。前提の知識を欠いたままではどう突いても藪蛇になる可能性が高い。事実、ミグや星野の言葉はアリサには届かなかった。
「敵の追撃や待ち伏せもあるでしょうし、そうなった時にアリサさんの武勇は人々を勇気付ける事に繋がるでしょう。単純にここではない所で役割がある、というだけですよ」
「わかってる。わかってるのよ。信頼されてる事も、贔屓ばかりでない事も」
 ヴァルナの言葉を遮るアリサの声は、切羽詰まった感情の湿り気に似た何かが含まれていた。アリサだけは、他の2人と比べて感情の質が違うのだ。
「あの人の立場も責任も知ってる。けどこればっかりは曲げたくないの」
「それは、どうしてですか?」
「それは……」
 最後までアリサは理由を明瞭には語らなかった。わかったのは彼女は帰りたくない訳ではなく、最後まで残りたいというのが本音だった。最後まで残って戦う事にこそ彼女の望みがある。今回の任務にも外野から政治的配慮を求められた事を利用して反発していたにすぎない。ヴァルナはそれ以上の言及をすることは出来なかった。理由に何となく察しが付くからこそ余計に何も言えなかった。
 それでもこうしてアリサに直接言葉を掛けたことは有意義だった。アリサ自身がヴァルナに説明しようと躍起になる間に、今までの愚かさを振り返る結果になったからだ。その心情の変化はアリサの溜息の回数として外野にもよくわかった。
「任務を終えてから、一度ご実家に文句を言っても良いとは思います。余計な事はしてくれるな、って。その手の話は大抵何度も来るものですから、釘を刺しておかないとまた言ってきますよ」
「そうね。この戦いが終わったら考えるわ」
 ヴァルナの提示した見えやすい逃げ道に乗っかり、アリサは罪悪感塗れの話題から目を背けた。



 感情を解きほぐすためにも娯楽は必要だ。戦場のストレスを発散させるにも同様に。しかしそれにも制限がある。軍務に支障があるようでは本末転倒だ。その点で酒はコップ1杯でも十分害悪。流石に待機中の飲酒が認められることはなかった。
「すまねえなあ。つまみぐらいしか用意できなくて」
 当ての外れたジャンク(ka4072)は食堂で譲ってもらったチーズやハムの類を机に並べていた。これはこれで貴重なのでかなり融通してくれているのだが、やはり酒精がないと締まらない。ジャンクだけで飲むわけにもいかないので今回はつまみと紅茶だけだ。申し訳なさそうにするジャンクだったが、対するダリウスらは気にした風もなく、どちらかといえば上機嫌だった。
「そんなこと気にしてたのか。酒なら戦争が無い時に好きなだけ飲むから構わん」
 ダリウスはでかい図体に似合わぬひそひそ声で言った。イリアス(ka0789)の演奏の邪魔をしないための気づかいだ。酒は無いが代わりの娯楽があった。今日はイリアス(ka0789)が思いつくままにフルートの演奏を聞かせてくれている。騎士の誰もが曲に聞き覚えが無かったが、静かな響くフルートの音色は自然と彼らを物思いへといざなっていた。
(言葉を荒らげてしまうのも、それだけ大事なものがあるということね。それはきっと素敵な事)
 勢い誰かと口論になってしまうのも致し方ないが、そのままで終わらせるのは好ましくない。先が見えずに精神的に追い詰められている今だからこそ、こうして心に余裕を持つことは大切だ。荒れた心のままでは、知らず知らずのうちに自分の大切にしているものまで汚してしまう。
 イリアスは自身も周囲の想いを受け止めながらフルートの演奏に集中した。酒はないが聞くものは十分に心を落ち着けている。ジャンクは頃合いと見て、少しばかり前の指揮官同士の口論を話題に出した。
「戦場が目の前にあるってのに撤退しろだとは、戦士からしてみりゃお払い箱みたいなもんだよなぁ。そんで、馬鹿な奴らは命惜しさに逃げ帰っただの言うかもしれねえ」
 国難の時にあればこそ最前線の苦労は尊重されるが、辛いからこそ失敗や不手際には厳しい目が向く可能性もある。情報の流通が少ない国である以上は噂話にでもなってしまえば取り返しがつかない。ダリウス達騎士一堂は、その可能性もあったなとよくよく思い返した。普段は外征ばかりで国内の様子など気遣う余裕も無かった。しかし国内の問題であればその可能性も考えなければならない。
 思った以上に単純な思考になっているなと感じたジャンクはあまりこの話題を引っ張ることはせず、茶化して話題を流してしまうことにした。
「好いた女にそう思われたら立つ瀬もねえしな」
 ジャンクの指摘にその場にいた騎士の誰かが咽た。わかりやすい反応した誰かに心当たりのある者達がくっくっと笑う声が聞こえた。ジャンクも意地悪な笑みを浮かべはしたが、それが誰かは確認しなかった。ダリウスは至極真面目くさった顔でその話は聞き流しつつ、机の上のチーズ1欠片を口に放り込んだ。
「そういうやつもいる。だが俺はそっちじゃない」
「じゃあどっちなんだ?」
「ダンテ隊長だ」
 ジャンクはすぐに得心が行った。赤の隊の隊長ダンテ・バルカザール。騎士達の望みが自身の手による彼との決着にあるのならば、最前線にしか機会はないだろう。その希望はこの上なくわがままだ。軍としては敵の将の死を選ぶ必要はない。ダリウスはそれを理解した上で、配置が最適でないものとして抗議に行ったのだ。それ以外に決定を曲げさせる理屈がなかったのだろう。
「なるほどな。隊長本人を探すならここしかねえか」
「ああ。次がいつかはわからん。これが最後かもしれない」
 だから譲れない、譲りたくない。戦士としてのその感情はジャンクにも理解できた。それならばとジャンクは話題を変えることにした。同じ理由で狙いたいであろう標的は他にもいる。
「ダンテ戦闘団とか名乗ってる奴ら、順当に考えて敗残兵狩りに来るだろうからよ。そっちと戦うのはどうかと誘うつもりだったんだが、そりゃあ代えられないわな」
 傲慢の歪虚なら砦攻略の手柄は古参の物、新参は雑用で落ち武者狩り。それが正しく歪虚の行動を予測している確証はないがそれ相応に説得力はある。有り得ないと言い切れるほどでもない。
「うーーーん。そっちも興味が引かれるのだが」
 ダリウスやその他の騎士達は腕を組んで真剣に悩み始めていた。これも感情的な話以上のことではないのだが、騎士達は自分達の誇っていた物を土足で踏まれたような気がしていた。ダンテとの戦いは葬式の続きのようなものだが、戦闘団を名乗る輩との戦いは縄張り争い、あるいはメンツの問題だ。
「おいおい、どっちもは贅沢だぜ」
「わかっているが、しかしなあ」
「どちらか一つなら」
 いつの間にか演奏は終わっており、イリアスが囲んでいた席の近くまで来ていた。
「死地に向かうよりは、大切なものの為に生きてほしいと思います」
 人・物・土地、あるいは過去や未来。誰もが大切な物の為に戦っているが、それゆえに自分の命を軽く見過ぎる。ダリウスは何か言葉を返そうとしたが、開いた口は何も言葉を発さぬまま閉じられた。視線はイリアスを一度だけ見て、すぐに足元に向けてしまう。
「むぐぐぐぐ」
 うなり始めたダリウスだが、唸ったところで真摯に向き合ってくるイリアスに返す言葉が見つかるわけもない。
「考えておこう」
 彼がそう答えたのは男のプライドが丸出しであったが、内情を見て知ってしまった後では威厳も何も無い。イリアスもそれ以上は追及することはなく、微笑みを浮かべて再び演奏へと戻っていった。



 翌朝、ダリウスがジェフリーの元に先日の謝罪に現れた。3者の中で最も強硬且つ意固地と目されていた男が真っ先に頭を下げたことで、残り二人も渋々ながら折れざるをえない空気になっていた。アリサもアーノルドもそれまでの経緯でもって既に気持ちが揺らいでいた為、意地を張る気力もなくあっさりとそれまでの言動を引っ込めた。
 戦争の結末を後悔したくない。その恐怖をぬぐえたわけではないにせよ、感情を吐き出したことで結果を受け入れる覚悟は出来た。翌日には3者は王都に向かって出立することになっていたが、その頃には平静を装う程度に心を持ち直す事が出来ていた。


依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 8
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 明敏の矛
    ジャンクka4072

重体一覧

参加者一覧

  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 金糸篇読了
    イリアス(ka0789
    エルフ|19才|女性|猟撃士
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • エクラの御使い
    アティ(ka2729
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 明敏の矛
    ジャンク(ka4072
    人間(紅)|53才|男性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談・表明卓
ジャンク(ka4072
人間(クリムゾンウェスト)|53才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2019/03/27 16:08:29
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/03/24 16:43:36