ゲスト
(ka0000)
殺して愛してあたしを知って
マスター:ことね桃

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/04/21 22:00
- 完成日
- 2019/04/25 17:13
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●カードの持ち主を求めて
普段は帝国のハンターオフィスで勤務している只埜 良人(kz0235)が
珍しく冒険都市リゼリオのハンターズソサエティ本部で情報端末を操作している。
手元には大部分が欠けたハンターのIDカード。
先日2年ぶりに姿を現した歪虚エリザベートに従う歪虚オウレルが取り残した子供に託していたものだ。
(子供にこれを託す意味はないだろう。オウレルの本音は子供がハンターへ託すのを期待していたんじゃないか)
うっすら残った番号から辛うじて読み取れた数字の候補を次々と打ち込み、
条件に「カードの紛失」「死亡」「行方不明」「失踪」などのワードを打ち込んで情報を絞り込んでいく。
すると「失踪」タグの中から「多数の犯罪を犯し除名。逃亡中」と題され、ある少女のデータが検出された。
少女の名は「エトヴェシュ・イロナ」。
顔写真を見るかぎり、大人しそうなハイティーンのそばかす娘だ。
顔立ちは整っているが、俯きがちで表情がない。
それこそその辺りで歩いていても誰も気づかないような地味な風貌も印象に拍車をかけているのだろう。
彼女のプロフィールによるとかつてリアルブルーから転移してきた人間でハンガリー出身。
ハンターとしての腕は中の上で、特筆する能力はなし。……しかし彼女の活動履歴に良人が顔を顰めた。
イロナはかつて依頼を受けた際に救助対象をも犠牲にするような過激な策を提案し、
例えその案が通らずとも敢えて大勢の人間を傷つけるような戦法をとっていたという。
そして数年前、彼女を危険視していたハンターが彼女を密かに追跡したところ――
イロナがハンター活動の裏で無数の動物や人間を捕まえては虐待・惨殺していたという事実が判明。
結果的にイロナはハンターズソサエティから追われる身となり、それ以来姿を見たものはいないという。
(エトヴェシュ・イロナ……彼女は逃走中にエリザベートや他の歪虚に殺されたのか?
もしくはここまでの素養があるなら歪虚と契約して堕ちていてもおかしくない。
とりあえず情報をできる範囲で写し、ハンター達に報告せねば)
良人は資料をノートに書き写すと急いで帝国のハンターオフィスに戻った。
●どこかの廃城で
「うっ……ぐぅ……ッ」
極太の針金を仕込んだ一条鞭がオウレルの体を幾度も打ち据える。
その度に黒い血が飛沫をあげたが、鞭の持ち主エリザベート(kz0123)はお構いなしにもう一度鞭を振り上げた。
「あんたのせいで面白くないことになったじゃない!
歪虚オウレルと吸血姫エリザベートの復活とか何とかハンターオフィスが告知したせいでぇ、
どこの集落も避難やハンターを雇用して警備をしたりでさァ……。
前のように自由に狩れなくなった。ほんっとに役立たずなんだからッ!!」
バシイィッ!
人間であれば容易く背骨が折れて死ぬほどの重みがオウレルを打ち据える。
しかし彼とてすでに強力な歪虚だ。表皮が多少抉れただけで、息を深く吐くとエリザベートを静かに見つめた。
「……これで気が晴れたか」
「そんなわけないじゃない! オルちゃんを殺した連中を皆殺しにするまであたしの怒りは収まらない。
邪神が動くとか黙示騎士がどうとか噂で聞いたけれど、
あたしは連中に関わらず自分の意志であいつらをぶっ潰すのよ!! うっ……ごほっ」
オウレルの言葉に息巻いたエリザベート。しかし突然漆黒の血を吐き出し、苦しげに息を吐いた。
「この前の赤いのの一撃か」
「くっ、うるさいッ! ……そうだわ、あんたに名誉回復の機会をあげる。
どこからでもいい、手ごろな人間を連れてきて。
できれば多少の拷問には耐えられそうな気の強いのがいい。殺し甲斐のある体の頑丈な……
それでいて、死にかけた時には必死で命乞いしてきそうな面白い奴!」
「……相変わらず無茶を言うな。そんな都合のよい獲物がいるわけがないだろう」
「そう? オルちゃんからあんた、契約されてたわよね。あたしの命令は絶対遵守って」
そう言ってエリザベートがオウレルの目をじぃっと見つめる。
魅了の瞳に呼応し、本来の主人である剣妃オルクスの言葉が——オウレルの脳内で反芻された。
「了解した、尽力しよう」
そう言って傷だらけの体に青黒い甲冑を纏い、腰に二本の剣を挿すオウレル。
その瞳に意思はなく、ただエリザベートを満足させる相手を求めようとしていた。
(拷問に耐える強い意思……丈夫な体……そして死を恐れる心……)
ただの人間では気のたったエリザベートにすぐ殺されてしまうだろう。
ならば彼女の溜飲を下す意味でもハンターを拉致するのが一番だ。
彼は駆け出しのハンターが配備されたという集落に向け、死体の群れを連れて動き出した。
●その頃、集落では
「それにしても暴食の生き残りで狂暴な奴ってのは本当に嫌だなあ。
できれば遭遇せずに無事に終わらせたいところだが……」
駆け出しのハンターが愚痴を言いながら焚火に薪をくべる。まだこの時期の夜は底冷えする。
毛布を肩に掛け、村の門の傍で一晩過ごすのは何とも心細い。
するとベテランのハンターが彼の肩を軽く叩いた。
「大丈夫だ。ここにはオフィスがあるから、万が一の場合は転移門で救援を呼べる。
とにかく俺達は歪虚が出現したらこの集落を守り、全員で協力して撃退すること。それだけだ」
「ですね。あ、連絡役は俺がやります。今の俺では戦力になりませんから、それぐらいはやらせてください」
「ああ、頼むぞ」
そう言ってベテランがコーヒーを呷った時――いくつもの奇妙な足音とともに靄が漂ってきた。
「おかしいな、朝にはまだ早いのに」
駆け出しが首を傾げた時、ベテランが声を荒げた。
「馬鹿野郎、負のマテリアルを感じねえのか!? これはおそらく歪虚オウレルの能力だ!
お前はオフィスまで走って腕利きのハンターを呼んで来い! 俺達がなんとか保っているうちに!」
「は、はいっ!」
ベテランハンター6人が武器を構え、靄の中から敵を見つけようと目を凝らす。
駆け出しは自分の力不足を実感しながら必死で駆けた。
●夢
あの日、あたしは濡れた野良犬のような格好で帰る居場所をなくしていた。
そんなあたしに手を差し伸べてくれたのが大好きなあなただった。
あの冷たい手と、私の心を理解してくれるあったかい心……今でも忘れていないよ。
気持ちのいい家と綺麗な服、そして新しい××……すごくうれしかった。
ようやく本当のあたしになれたと思った。
だから、あたしをくれたあなたの仇を必ずとるの。
絶対、絶対に……。
普段は帝国のハンターオフィスで勤務している只埜 良人(kz0235)が
珍しく冒険都市リゼリオのハンターズソサエティ本部で情報端末を操作している。
手元には大部分が欠けたハンターのIDカード。
先日2年ぶりに姿を現した歪虚エリザベートに従う歪虚オウレルが取り残した子供に託していたものだ。
(子供にこれを託す意味はないだろう。オウレルの本音は子供がハンターへ託すのを期待していたんじゃないか)
うっすら残った番号から辛うじて読み取れた数字の候補を次々と打ち込み、
条件に「カードの紛失」「死亡」「行方不明」「失踪」などのワードを打ち込んで情報を絞り込んでいく。
すると「失踪」タグの中から「多数の犯罪を犯し除名。逃亡中」と題され、ある少女のデータが検出された。
少女の名は「エトヴェシュ・イロナ」。
顔写真を見るかぎり、大人しそうなハイティーンのそばかす娘だ。
顔立ちは整っているが、俯きがちで表情がない。
それこそその辺りで歩いていても誰も気づかないような地味な風貌も印象に拍車をかけているのだろう。
彼女のプロフィールによるとかつてリアルブルーから転移してきた人間でハンガリー出身。
ハンターとしての腕は中の上で、特筆する能力はなし。……しかし彼女の活動履歴に良人が顔を顰めた。
イロナはかつて依頼を受けた際に救助対象をも犠牲にするような過激な策を提案し、
例えその案が通らずとも敢えて大勢の人間を傷つけるような戦法をとっていたという。
そして数年前、彼女を危険視していたハンターが彼女を密かに追跡したところ――
イロナがハンター活動の裏で無数の動物や人間を捕まえては虐待・惨殺していたという事実が判明。
結果的にイロナはハンターズソサエティから追われる身となり、それ以来姿を見たものはいないという。
(エトヴェシュ・イロナ……彼女は逃走中にエリザベートや他の歪虚に殺されたのか?
もしくはここまでの素養があるなら歪虚と契約して堕ちていてもおかしくない。
とりあえず情報をできる範囲で写し、ハンター達に報告せねば)
良人は資料をノートに書き写すと急いで帝国のハンターオフィスに戻った。
●どこかの廃城で
「うっ……ぐぅ……ッ」
極太の針金を仕込んだ一条鞭がオウレルの体を幾度も打ち据える。
その度に黒い血が飛沫をあげたが、鞭の持ち主エリザベート(kz0123)はお構いなしにもう一度鞭を振り上げた。
「あんたのせいで面白くないことになったじゃない!
歪虚オウレルと吸血姫エリザベートの復活とか何とかハンターオフィスが告知したせいでぇ、
どこの集落も避難やハンターを雇用して警備をしたりでさァ……。
前のように自由に狩れなくなった。ほんっとに役立たずなんだからッ!!」
バシイィッ!
人間であれば容易く背骨が折れて死ぬほどの重みがオウレルを打ち据える。
しかし彼とてすでに強力な歪虚だ。表皮が多少抉れただけで、息を深く吐くとエリザベートを静かに見つめた。
「……これで気が晴れたか」
「そんなわけないじゃない! オルちゃんを殺した連中を皆殺しにするまであたしの怒りは収まらない。
邪神が動くとか黙示騎士がどうとか噂で聞いたけれど、
あたしは連中に関わらず自分の意志であいつらをぶっ潰すのよ!! うっ……ごほっ」
オウレルの言葉に息巻いたエリザベート。しかし突然漆黒の血を吐き出し、苦しげに息を吐いた。
「この前の赤いのの一撃か」
「くっ、うるさいッ! ……そうだわ、あんたに名誉回復の機会をあげる。
どこからでもいい、手ごろな人間を連れてきて。
できれば多少の拷問には耐えられそうな気の強いのがいい。殺し甲斐のある体の頑丈な……
それでいて、死にかけた時には必死で命乞いしてきそうな面白い奴!」
「……相変わらず無茶を言うな。そんな都合のよい獲物がいるわけがないだろう」
「そう? オルちゃんからあんた、契約されてたわよね。あたしの命令は絶対遵守って」
そう言ってエリザベートがオウレルの目をじぃっと見つめる。
魅了の瞳に呼応し、本来の主人である剣妃オルクスの言葉が——オウレルの脳内で反芻された。
「了解した、尽力しよう」
そう言って傷だらけの体に青黒い甲冑を纏い、腰に二本の剣を挿すオウレル。
その瞳に意思はなく、ただエリザベートを満足させる相手を求めようとしていた。
(拷問に耐える強い意思……丈夫な体……そして死を恐れる心……)
ただの人間では気のたったエリザベートにすぐ殺されてしまうだろう。
ならば彼女の溜飲を下す意味でもハンターを拉致するのが一番だ。
彼は駆け出しのハンターが配備されたという集落に向け、死体の群れを連れて動き出した。
●その頃、集落では
「それにしても暴食の生き残りで狂暴な奴ってのは本当に嫌だなあ。
できれば遭遇せずに無事に終わらせたいところだが……」
駆け出しのハンターが愚痴を言いながら焚火に薪をくべる。まだこの時期の夜は底冷えする。
毛布を肩に掛け、村の門の傍で一晩過ごすのは何とも心細い。
するとベテランのハンターが彼の肩を軽く叩いた。
「大丈夫だ。ここにはオフィスがあるから、万が一の場合は転移門で救援を呼べる。
とにかく俺達は歪虚が出現したらこの集落を守り、全員で協力して撃退すること。それだけだ」
「ですね。あ、連絡役は俺がやります。今の俺では戦力になりませんから、それぐらいはやらせてください」
「ああ、頼むぞ」
そう言ってベテランがコーヒーを呷った時――いくつもの奇妙な足音とともに靄が漂ってきた。
「おかしいな、朝にはまだ早いのに」
駆け出しが首を傾げた時、ベテランが声を荒げた。
「馬鹿野郎、負のマテリアルを感じねえのか!? これはおそらく歪虚オウレルの能力だ!
お前はオフィスまで走って腕利きのハンターを呼んで来い! 俺達がなんとか保っているうちに!」
「は、はいっ!」
ベテランハンター6人が武器を構え、靄の中から敵を見つけようと目を凝らす。
駆け出しは自分の力不足を実感しながら必死で駆けた。
●夢
あの日、あたしは濡れた野良犬のような格好で帰る居場所をなくしていた。
そんなあたしに手を差し伸べてくれたのが大好きなあなただった。
あの冷たい手と、私の心を理解してくれるあったかい心……今でも忘れていないよ。
気持ちのいい家と綺麗な服、そして新しい××……すごくうれしかった。
ようやく本当のあたしになれたと思った。
だから、あたしをくれたあなたの仇を必ずとるの。
絶対、絶対に……。
リプレイ本文
●突然の訪問者
それは静かな夜のこと。
ハンターオフィスの転移門から年若いハンターが息せき切って飛び出した。彼の顔色は蒼白で、話す言葉は支離滅裂。
「まずは落ち着いて。ひとつずつ話すんだ」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は彼を椅子に座らせて水を飲ませる。
そして年齢の近いリリア・ノヴィドール(ka3056)が彼の目線に合わせて「何があったの?」と尋ねると、彼は堰を切ったかのように話し出した。
「歪虚オウレルが警護中の集落に現れたんです。突然南側から靄が湧いて。そしたら先輩が『靄に負のマテリアルを感じる。歪虚オウレルかもしれない。早く腕利きのハンターを呼んできてくれ』って!」
オウレル。その名を聞いた瞬間、それまでテーブルの片隅で紅茶を飲んでいたシェリル・マイヤーズ(ka0509)が大きく椅子を鳴らして立ち上がる。
アルトとリリアは早速戦場に赴くべく通信機を取り出した。
「そうか、あちらに残ったハンター達は通信機を所有しているか? もしトランシーバーがあるなら周波数を知りたい」
「は、はい。全員トランシーバーと魔導スマートフォンを持っています。周波数は……」
シェリルも周波数を合わせつつ、フードを目深に被る。2年待ち続けた機だ、これを逃すつもりは毛頭ない。
(オウレルのお兄さんを……取り戻す……)
それはリリアも同じこと。
「オウレルさんが存在するかぎり、まだチャンスはある、なの。でも……ここから先は私達が行くの。もし本当にオウレルさんがいるならあなたは危険かもしれない。お仲間には私達が事情を話すの、だからあなたはここで待機してほしいの」
「わ、わかりました。それでは僕はここで連絡役を続けます。……本当に申し訳ないです。本来は僕らだけでやらなければならないのに……」
力不足を嘆き肩を落とす彼に星野 ハナ(ka5852)が元気づけるように微笑むと力強く肩を叩いた。
「いいえぇ、大変な中でよく知らせてくれましたぁ。朗報待っててくださいぃ」
そう言って次々と転移門に向かうハンター達。少年ハンターは「どうか皆さんご無事で!」とエクラの神に祈りを捧げた。
●決意と不安と信じる心
ハンター達が到着したのは小さな集落のハンターオフィスだった。
「確か村で雇われたハンターの皆様は南で交戦中でしたね。ならば住民の皆様はご在宅かもしれません。私は避難誘導と村の警護にあたりましょう」
フィロ(ka6966)はそう言って魔導ママチャリ「銀嶺」で靄に向かい疾走する。
彼女はこちら側の戦力と疲弊したハンター達を早期に入れ替え、敵の侵入を最小限に抑えようと考えていた。
アルトはトランシーバーで村のハンターに警告を発する。
「私は援軍として派遣されたアルト・ヴァレンティーニだ。オウレルは吸血鬼型歪虚。食料もしくは玩具として人を攫いに来た可能性がある。十分に気をつけろ!」
すると疲れが滲んでいるものの6人の声が返ってくる。それに安心する反面、アルトは不穏さを感じていた。
(今回も靄の流れを見逃さなければ彼に遭遇できる筈。……これ以上の犠牲を防ぐには命を絶つのも縁ある者の役割となるだろう)
彼女は人間時代のオウレルを思い出すと心が小さく痛む。
だが踏鳴で高所に駆けあがり、渦巻く靄を見つめる頃には彼女の瞳から一切の迷いが消えていた。
アルマ・A・エインズワース(ka4901)は転移門から降りるなり、毅然とした表情を見せた。
(オウレルさん、あのカードを子供に渡したのは僕達に真実を伝えるためと未来への希望をまだ残しているからですよね? それならあなたはまだ死ぬべきではないです!)
今思えば先日のオウレルの戦ぶりは消極的だった。子供を抱えているとはいえ、基本が手加減込みの反撃と死体の召喚のみ。
それに子供も置いていったことから、彼の心は今も「人間」だとアルマは信じる。
(あなたの心がヒトならば、過ちを重ねてはいけない。僕が必ず助けてみせます!)
アルマは魔導バイクのエンジンを全開にし、靄の渦中へと飛び込んでいく。
一方、リリアはオウレルの動きを不審に思い、彼をよく知るシェリルに問いかけた。
「シェリルさん、オウレルさんって騎士の時も歪虚になってからも積極的に仕掛けるタイプじゃなかったから今回の動きは不自然なの。その辺り見聞きすれば目標が分かるかしら?」
「わからない。でも、会えばきっと」
「そうかもしれない、なの。だったら尚更諦めないの!」
リリアは気丈な娘だ。苦無を強く握りしめ、一心に駆ける。
あの優しかったオウレルが望まないであろう行為を止める、そのためだけに。
ハナは事前にフィロと打ち合わせした内容をトランシーバーに向けて囁いた。
「防衛スイッチしますぅ。南門と外の敵は私達が対処しますのでぇ、貴方達は村人の有害所への避難を手伝ってくださいぃ。これから仲間が南門に出ますのでぇ、それを確認したら後退してぇ、私達と一緒にぃ住民の皆さんを集会所に集めますぅ」
『しかし今退くわけには……』
「今回は守護者が3人、他にも守護者並みのトップランカーが来てますぅ。中の村人を最後に守るのは貴方達ですぅ、お願いしますぅ」
その囁きにハンターの存在意義を思い出したのか、村のハンター達は『了解』と快く応じた。
それまでどうか無事で――と願いながらハナは通信を切る。
その頃、シェリルは不安を抱きながら南門へまっすぐに向かった。
後方には澪(ka6002)とその親友の濡羽 香墨(ka6760)が続くが、彼女は言葉を交わさずひたすら地面を蹴る。
(お兄さん……出てきてくれるかな……)
先ほどのトランシーバーの会話を聞く限り、オウレルは前線に姿を現していないようだ。それは何故?
しかしシェリルは足を止めない。今度は絶対に手を離さないと決めたのだから。
(村には、入らせない。誰も死なせない)
澪は走りながら強い意思をもって刀に手をかけた。だがその隣で香墨が顎に手をあて考え込む。
「この前の報告書。読んだ。でもオウレルの真意が。わからない。今回の動向も……読めない。何を。考えてる?」
「それはわからない。現状で前線に出ていないあたり、単純な破壊とは別の役目が与えられているかも」
「どちらにしても。……死なせちゃいけないから。守らなきゃ」
「うん」
澪と香墨はまっすぐに走る。取り返しのつかない事態になる前に終わらせねば。今はそれだけが確かな事なのだから。
●歪虚オウレル
ここは南の戦場。数え切れないほどの死体を殴り飛ばし、格闘士が声を張り上げた。
「雑魔の物量作戦じゃ俺達は倒せねえぜ。これでも前に出て来ねぇのか、歪虚の大将さんよ!!」
何とも威勢のよい挑発。その瞬間、抑揚のない声が靄の中から響いた。
「丈夫な体、折れない心……お前でいいか」
「え?」
次の瞬間、靄の向こうから青黒い腕が格闘士の胸倉を掴んで彼を吊り上げる。その腕は慣れた様子で襟を捻り上げていく。
「何だよってめえ! 離さねえと……ブチ殺すぞ!」
意識が遠のく中、格闘士が鎧通しで相手の兜を振り抜くも相手はお構いなしだ。
他のハンターが彼を取り戻すべく次々と攻撃を繰り出すが、青黒いそれは全身に目があるかのように全ての攻撃を躱した。
そして失神した格闘士を肩に担ぐのは歪虚――オウレル。
「時間を無駄にしたくはない。帰るぞ」
彼が死体達と共に集落に背を向けた瞬間、黒い雷が彼らの背を襲う。
「……? この前の精霊か」
『私は英霊フリーデリーケ。オウレル、貴様のマテリアルを追ってきた甲斐があった。これ以上の蛮行は許さん!』
フリーデリーケ・カレンベルク(kz0254)が鋼の甲冑を纏い、斧を構える。
「フリーデ様、丁度良いところに! それでは私もいざ、参りますっ!!」
フィロはまず縮地移動を発動。オウレルの眼の反応を上回る速度で彼の背後に回り、死角の真下から腕を突き上げ格闘士を奪還した。
その時、にわかに意識を取り戻した格闘士が自分より小柄な女性に軽々と抱き上げられていることに目を白黒させる。
「あ、あんたは」
「オフィスから派遣されました、フィロと申します。格闘士様、舞刀士様、聖導士様は私と一旦村へ戻り東側の住民の避難誘導を。他の方は後程来られる星野様と西側の住民の避難誘導を願います」
その指示と同時に次々と姿を現すハンター達。村のハンター達は精鋭陣のマテリアルを察したのだろう。
「頼む、この村を守ってくれ」と言い残すとフィロやハナとともに南門へ走り去った。
そこでオウレルが不満そうに舌を打つ。
「……またお前達か」
アルト、アルマ、澪、フリーデと先日戦った面々。そしてどこかで見た覚えのある顔。
まずはシェリルとアルマが並び、シェリルが門の前で守りの術を発動させた。
「発動、ディヴァインウィル……門の守りは任せて。……オウレルのお兄さん。生きてるって、信じてた。私のこと。覚えてる?」
「生きている、だと? 歪虚が生きているわけがないだろう、娘」
名前すら呼んでもらえない。それとも忘れてしまったのか? 冷酷な声に胸が痛むがシェリルは諦めない。
今度は先の光景を元に彼の目的を推察する。
「お兄さんはさっき、格闘士を攫おうとした。一般人じゃ物足りなくて……ハンターでも探しにきた?」
「苛烈な拷問に耐えられる心身の強いものは何だ?」
「……そう。ハンターを玩具にするの。それはオウレルのお兄さん? それとも別の?」
「僕はそんな悪趣味には反吐が出る性質でね」
「でも……その悪趣味な誰かには逆らえないのね。私、村のハンターよりも頑丈で……意志も強くて……エリザベートの首、絞めたことある、よ……」
するとオウレルが顔をくしゃっと歪めた。
「なんだ、立候補か? ははっ、お前は変わった奴だな! しかし奴は最期まで抵抗し、必死で生きる人間を踏みにじるのが好きな下衆だ。お前のような娘は餌にしかならない!」
「……っ」
せめてオウレルが自分だけを狙うようになればと挑発したつもりが裏目に出たようだ。シェリルは小さく唇を噛んだ。
一方、リリアは彼の真の目的に気づくや、肩を震わせた。
(オウレルさんはこの場にいるハンターを狙っているの!? それなら陣形を組み直さないと!)
周囲を見回せば地面から不気味な音をたてて死体達が湧き出てくる。
これらを放置すれば塀の中のハンター達や一般人も危険に冒されるだろう。
だがそこをアルトは見逃さない。彼女は試作法術刀「華焔」を抜くと踏鳴と散華の合わせ技で一瞬にして死体達を解体し、オウレルの眼が追いつけないほどの速度で彼の背中に一文字の傷をつけた。
「くっ、赤いのかッ」
「やれやれ、赤いのでは寂しいな。イケメン……いや、オウレル・エルマン君? あれほど激しく絡みあったというのに」
ふたりはかつて闘技大会で武技を競った関係にある。
その頃のオウレルはアルトの技に憧れた朴訥な青年だったが、今や吸血鬼としてアルトに憎しみを向けるのは何の因果か。
しかしその隙にリリアは己の体に強化術式・紫電を施すと靄の外周から苦無「NAGATO」にマテリアルを込めて投擲した。
紐状のマテリアルがオウレルの右足に絡まり、一瞬動きが鈍る。
「ごめんなの、オウレルさん。本当のオウレルさんが戻るまでの辛抱だから!」
続けて瞬影を放ち、オウレルとその周囲の死体達に苦無を打ち込む。
(憎しみからでも構わない、ほんの少しでも私達を思い出してなのっ!)
その頃澪はシェリルのディヴァインウィルを香墨とともに掻い潜ると、尚も前に進む香墨を一瞬抱きしめた。
「託す。でも無理はしないで」
「わかってる。でも、できることはやらなきゃ」
そう言って香墨はソウルトーチを発動させた。生き残りの死体が彼女の魂の炎に惹かれ、ぞろりと動き出す。香墨は聖槍を構えた。
「……村までは行かせない。守ってみせる。私の守りたいもの全て」
●錯乱する集落
集落では先にフィロが指示した通りの人員構成で避難誘導に当たっていた。
ハナがトランシーバーで仲間に危惧していることを端的に伝える。
「敵が物量だけじゃなくてぇ、視線でゾンビの発生場所を決定できる可能性があるんですぅ。村人全員を集会所内へ避難させたらぁ、貴方達も集会所内に入って最終防衛ラインになってくださいぃ。外や北門は私とフィロさんで対処しますぅ」
互いに確認し合いながら、民家を訪ね避難を勧める。どちらも以前から村の警護にあたっていたハンターを住民に会わせ、安心させてから本題に入ることで要領よく集会所へ案内していった。
しかしそんな中、フィロの言葉に老人が竦み上がる。
「村の大群は門を破らなくても塀を乗り越えて来るかもしれません。皆様全員を守るためにも集会所へ避難してください」
「そ、そんな……避難所まで歩くのもやっとなのに、塀を乗り越える雑魔なんて……」
するとフィロが背を向けてしゃがみ込み、老人に向けて手を伸ばす。
「左様ですか、ならば私の背にお乗りください」
「えっ、お嬢さんの背中に!? そんなことできやしないよ!」
「ご安心ください。私はオートマトン。ヒトを助けるために存在するものです。どうぞ御気兼ねなく!」
そう言って微笑むフィロ。老人はオートマトンが如何なるものかわからないようだが、その優しさに絆され彼女の背に縋ると「すまないねぇ」と何度も謝った。
「いえ、人を助けることが私どもの義務であり、喜びです。どうか謝らないでくださいませ。そして無事に夜が明けた時はとびきりの笑顔を。それがこの村を守るハンターへの最大の賛辞になりましょう」
「……わかったよ。ありがとう、優しいお嬢さん」
闇の中を軽やかに駆けるフィロと周囲を警戒するハンター達。どうやら老人は最後の避難者だったらしい。
集会所の地下には住民が40名全員集まっている。皆不安そうだが、ハナが明るい声で住民たちを勇気づけた。
「今は最強クラスのハンター達が集まっているのでぇ、安心してくださいぃ。あと村のハンターさん達、終わったら呼びに来ますからぁ、改めてここの防衛をお願いしますねぇ」
その一方でフィロは声を潜めてハンター達に付け加えた。
「それと……現状では敵の増殖方法が完全究明されていません。地下カタコンベからの侵入も警戒をお願いします」
「わ、わかった。たしかこの村の墓地や遺体安置所は塀の外にあったはずだが……住民は絶対に守る。君達もどうか無事で」
真面目な顔で見送るハンターらにハナが符を手に明るく笑む。
「あはっ、大丈夫ですぅ。私達も場数を踏んでいますからぁ、必ずこの集落を守ってみせますぅ。フィロさんも一緒に頑張りましょうぅ、ねぇ?」
「ええ、ハナさん」
こうして見目麗しいふたりのハンターが集会所から颯爽と飛び出す。いつか来るであろう、蠢く影に向かって。
●混沌の闇と薄明の希望
地面から湧き出す無数の雑魔や歪虚。塀の外で戦うハンター達は少しずつ疲労と焦りを感じ始めていた。
「全く……放置もできないし、厄介なものだな!」
アルトが警戒しつつ、散華を再び繰り出す。白骨を粉砕しながら駆ける様は吹きすさぶ雪のよう。
その流れでオウレルを突こうとした瞬間――なんと2本の剣のうち1本が彼女の刃を捉え、もう1本が彼女の首筋から腹まで斜に斬り裂いた。
「ぐっ!?」
「言っただろう? 僕には無数の眼があると。何度でも斬られればお前の太刀筋ぐらい読めるようになる」
オウレルが薄く笑いつつ隣に控える雑魔を白い闇に変えると、それをすうと吸引した。
たちまち今まで受けた傷が薄くなり、彼は悠々と2本の剣を構える。アルトは口の中に広がる血を吐くと顔を引き攣らせた。
「ははっ、笑えるほど厄介になったものだな、イケメン君? 時間をかけるほど強くなるとは……あの日に助けられなかった償いだ。早々に終わらせてやる」
アルトが口元から滲んだ血を拭うことなく剣を構える。その心にはただ目の前の脅威を排除する覚悟のみがあった。
しかしそれでも死体は湧き続ける。
それまで魔導拳銃「ヘキサグラム」の力で香墨のもとに集まる雑魔どもを撃ち貫いてきたアルマが敵を北に行かせてはならないと、ストーンサークルを発動させた。
「フリーデさんは西側の敵を吹き飛ばしてください! 巻き込み注意ですよ!」
『お前は!?』
「僕は東側の死体たちを吹き飛ばしますっ。術式:ネプチューンッ! 穢れた魂を生命の源へ届けるです!!」
アルマの紡ぐ術式の中から人魚の女神が現れ、激流が死体達を砕きながら宙に消し飛ばす。
『それがお前の新たな力か、ますます負けられんな。断罪の雷、死者を灼き尽くせ!!』
恋人の活躍に微笑み、死体達の元へ飛び込むと無数の雷を落とすフリーデ。東西への大きな援軍はこうして呆気なく砕かれた。
一方、香墨はアルトに「このままじゃ危ない。倒れちゃだめ」とアンチボディを唱え、止血を施す。
しかし彼女はソウルトーチで常に雑魔どもから目をつけられている状態だ。
這い寄る死体に突然足を掴まれる。そこにスケルトン達が嗤うように顎を震わせながら武器を振り上げた。
(……しまった。このままじゃ)
盾を構えるのが精一杯という状況。その歪虚らを澪が縦横無尽で瞬時に砕いた。
「香墨、自分の役目も大事だけど。自分の命も大切にして」
「……わかった」
そう言って澪に背を預ける香墨。長らく一人旅を続けてきた身故に、背を預けられる友がいる幸せに思わず胸が熱くなる。
その頃、シェリルはふと些細な異常に気がついた。靄がディヴァインウィルの範囲内だけ入って来ない。
オウレルは高位に入りつつある歪虚、この防衛網を通り抜けられるはずなのに。
(この靄……負のマテリアルの匂いはするけど、お兄さんの匂いとは違う。……お兄さんとは違う存在? それならまだ打てる手がある!)
シェリルはディヴァインウィルを解除すると門の前で構える澪と香墨に声を放った。
「澪、門の守り……お願い!」
その切実な声に澪は何かを悟ったのだろう。じり、と香墨とともに後退しながら刀を雑魔たちに向ける。
「わかった。気をつけて」
シェリルの中にあるのはたったひとつの決意。それで自分が大きく傷つくことになっても構わないと彼女は覚悟していた。
(絶対に……取り戻してみせる!)
●空中の防衛線
南で壮絶な戦いが繰り広げられる中、他方面でも時折出現する雑魔達の執拗な攻撃にハナとフィロが立ち回りを展開していた。
何しろ相手は死体。塀を登るのにどれだけ負傷しようが一向に構わず壁を掴む。どこから壁を登り切るか内側では知りようがない。
そこでハナが魔箒に乗り、上空から集落の周辺を確認してはフィロに通信機で指示を送った。
「4時と10時の方向に結構な量の骨が来てますぅ。10時側は私が対処しますのでぇ、フィロさんは4時側をお願いしますねぇ」
「了解です。星野様、御武運を!」
フィロは全力で駆けるとそのまま縮地移動と縮地移動・虚空で宙を翔けた。そこには確かに無数の死体が壁に指を掛けている。
「生憎ここは封鎖中でございます、ご了承くださいませ。……青龍翔咬波ッ!」
フィロの手から強烈な水の氣が溢れ、死体達を地面に叩きつけた。しかしそれでも左右に壁に手を掛ける死体が群がる。
(知性がないということは恐ろしいことですね。星野様の次の指示が来るまではここを中心に守るのみです)
フィロは星神器を撫でると「頼みますよ、この戦にはあなたの力が必要となるかもしれません」と呟いた。
一方、ハナは符を5枚指に挟めると空から不敵に笑った。
「箒で飛べば一目瞭然ですぅ。そう私の目から逃れられると思わないでくださいねぇ?」
下に見えるは小虫のように壁を這い上がる死体達。彼女彼等へ憐れむように微笑み、五色光符陣を放った。
「ギャアアアッ!!?」
「ウヴァアアアアア……」
光の結界に次々と焼け落ちていく死体達。空になった指をぺろと舐め、ハナは「まだまだいますねぇ」とひとりごちた。
まだまだ符は豊富、いざとなればドローアクションで補充することもできる。
全てはこの集落の人々の幸福を取り戻すため。彼女の慈愛が歪虚を討つ修羅の心に変じた。
「汚物は消毒しなくちゃ……ふふっ。フィロさん、一緒に頑張りましょうねぇ♪」
ハナは箒を自在に操りながら次の獲物を見定めた。
●浄化
アルトとオウレルの剣の応酬は、最早誰もが手を出せないほどの神速の業のぶつかり合いとなっていた。
アルトが焔舞を纏いながら舞うように連華を放てば、オウレルが鎧で器用に威力を散らして二刀流でアルトを攻める。
当然アルトはそれを軽やかに躱したが、次の瞬間飛んでくる殺意のオーラは予想外だった。
呻くアルトに香墨が十字架を握り、アンチボディを唱える。オウレルは忌々しげに香墨を睨んだ。
(この癒し手を倒せばアルトを攫える。これだけの強靭な心身を持つ女なら主も満足するはず……ん? 主とは誰だ?)
思い返そうとするも、主が軽薄な女である事しか思い出せない。
そして強い者を差し出せば自分が赦されると、その想いだけが彼の意識を支えていた。
――これはアルトとの戦いで無意識に負のマテリアルを大きく消費したからこそ起きた記憶の混乱。
しかしその戸惑いをシェリルが見逃さなかった。ランアウトでオウレルに肉迫すると彼の肩を揺さぶる。
「お兄さんっ、思い出して! 仲間は誰か……大事な想い……。仲間を死なせた後悔の中でも……前に進むって、私の手をとった……ここで止まるなんて、許さないから……お願い……。ディヴァインウィル!!」
シェリルの周囲に生まれた拒絶の壁。しかしその中に靄がある限り、オウレルの力は衰えない。
そんな中でシェリルは精神安定剤をオウレルに打とうとするも呆気なく躱され、アンプルが落ち――砕けた。
「それは精神安定剤か? 残念ながら僕は恐慌していない。無駄な事だ」
「それでも……諦めない……。幻影なんて吹っ飛ばして。……それに今までの戦いで私達は歪虚と共闘も共生も出来るって知ったんだ……。血が必要ならあげるから……」
「お前の血など不要だ。それどころかお前がいると……何故か心が不安定になるんだよっ! 僕に触れるなッ!!」
懸命に説得するシェリルにオウレルが突然激昂し、彼女を突き飛ばす。
途端に拒絶の壁が消え、小さな体が地に叩きつけられた。しかし彼女はか細い声で繰り返す。
「……何度でも言うよ。『一緒に行こう』……帰ろう、皆の所……」
「うるさいうるさいうるさいっ! 皆って何だ。僕は歪虚、お前とは違う!!!」
その瞬間、リリアが再びマテリアルの紐でオウレルの脚を縛り付ける。
「……エリザベートのこと、身を捧げるほど好きなの?」
「そんなわけないだろう、あんな女!」
「それならオウレルさん、以前『もう戻らない』って言ってたけれど……どんな選択でもいい。オウレルさんで在ってなの! 自分の意志で、自分のために、生きてほしいの!」
「くそっ、お前も勝手な事ばかり……不愉快な女だ。皆、殺してやる……そうすればきっと心が落ち着く!」
そう言って彼は30体の雑魔を周囲に召喚した。そこで早速アルトが散華の姿勢に入ろうとしたところ、アルマが両手を広げてふたりの間に割って入る。
「わぅぅ! オウレルさん、本当は人を襲うのは嫌なんでしょ? この前の行動から考えてました。子供とカードを残してくれたこと、本当に悪い子だったらしなかったはずです。良い子が無理して嫌な事する必要ないです!」
僅かでも歪虚に「可能性」があるなら信じ、行動する。アルマのニュートラルな思考がオウレルの頑なな心に楔を入れる。
突然のことに動揺するオウレルにアルマが微笑み、機導浄化術・浄癒を発動させた。
続けて香墨も歌を捧げる。荒んだ魂を癒してきた本物の聖歌を。
「サルヴェイション。……オウレル。あなたの本当の心を。取り戻して」
その歌声に合わせ、澪は破邪顕正の刃を振るった。彼の心を縛る鎖を断つために。
「そう。諦めちゃ駄目。きっと新しい道があるはず!」
――しかしオウレルの瞳は澱んだままだ。
アルトが首を横に振り、せめて苦しまないようにと華焔を振り下ろしたその時、シェリルがオウレルを突き飛ばす。
シェリルの背から鮮血が華の如く噴き出した。
「!!?」
「まだ、駄目。ほんの少しでも可能性があるなら……私、信じる……。今度こそ、届け……レジスト……!」
シェリルの掌から生み出された柔らかな光。それがオウレルを優しく包み込み、彼から闇を消していく。
そして彼が地面に崩れ落ちると同時に死者達が……消え去った。
●取り戻した心
シェリルの応急手当てが終わった頃、オウレルも意識を取り戻した。正気に戻った彼は物腰柔らかで謝罪を口にするばかり。
しかしシェリルは彼を一切責めることなく、期待の籠った穏やかな声で問う。
「お兄さん……今なら帰れるよね? 皆のところに……」
その問いにオウレルが自嘲的に目を伏せた。
「いや、それは無理だ。僕はそこにいるだけで負のマテリアルを広めるから生物との共生ができないんだよ」
「そんな……! だったらせめて、皆に会うぐらい……」
「帝国軍は歪虚の殲滅を是としている。僕には前科があるし……謝罪の前に蜂の巣になるだろう。ヴァルターに謝りたいし、部下の墓参りもしたいけれどね」
――その無情さにシェリルの頬が涙で濡れる。人の心を取り戻しても彼は償うことさえ許されず、その命さえ拒絶されるのかと。
そこでリリアが痛む心を抑え、口を開いた。
「第二師団に……ヴァルターさんに言っておきたい事とかないの?」
「……彼は優しいから僕を案じていると思う。だから僕は消滅したことにしてくれ。それと『あの日ひどい事をしてすまなかった。こんな勝手な僕と友達でいてくれてありがとう』と言い残したとしてくれれば嬉しい」
「……わかった。ヴァルターさんにはそれが一番良いかもしれないね……」
リリアがメモ紙に走り書きする。必ず伝えようと。
一方、香墨はオウレルにまっすぐな瞳で問うた。
「これからあなたは。どうしたいの」
「それは……可能ならあの女を倒したい。剣妃の呪縛から解き放たれた今、僕は奴の魅了だけなら耐えられるから」
するとアルトが胡乱げに彼を見つめた。高位かつ頭のきれる歪虚こそ油断ならない。
もし今の言葉に嘘があれば、また厄介なことになると。
「……先ほどお前は贖罪したいと言ったな。ならば今、断罪を受けても構わないか?」
「それは当然でしょう。僕は今まで多くの人間を犠牲にしましたから。皆さんが奴を討伐してくださるなら、この首惜しくありません」
そう言って兜を脱ぐオウレル。シェリル達が「やめて!」と叫ぶ中、アルトが刃を唸らせると――オウレルの後ろ髪を一房だけ斬り落とした。
「えっ?」
「もし君がこの刃を躱すなり逃げようとしたら今頃首が落ちていただろう。君のヒトとしての心と覚悟はわかったよ、オウレル君。試してすまなかった」
納刀してオウレルに手を差し出すアルト。オウレルは微笑むと彼女の手を確と握った。
こうしてようやく落ち着いた中、アルマがふと首を傾げる。
「そういえば……こないだの子やっつければ、オウレルさん自由です?」
「こないだの子?」
「『エトヴェシュ・イロナさん』。オウレルさんが残してくれたカード、オフィスの職員さんが確認してくれました。今も指名手配中の連続猟奇殺人犯です。……あの子と顔が同じでした」
「あれは旧い拠点で見つけたものです。もし被害者のものなら遺品になると思ったのですが……それならば歪虚に堕ちる資質は十分か。本来なら僕が誅するべき存在なのに……」
その時アルトがふっと笑った。歪虚討伐はハンターの生業だと。
「奴に一矢報いたいのなら私達がやる。必ず滅ぼすと約束しよう」
「そうですー、そういうのは僕らにお任せです! あ、オウレルさんはどこから来たですか? それがわかるだけでも次に繋げられるです!」
アルマが徹底してエリザベートの名を出さないのは彼をいたずらに苦しめないためだ。その心遣いにオウレルは感謝した。
「……僕が駐留しているのは帝国の南にある廃城。奴にとっては最も気に入りの拠点です。僕は一旦帰還し、奴が移動しないよう従う素振りをして時間を稼ぎます」
具体的な場所を示したオウレルにアルトが頷いた。
「了解した。こちらは戦力を整えておく。時が来たら連絡をしよう」
そして最後に――シェリルはリリアに身体を支えられながらオウレルの元に向かう。最後の精神安定剤を渡すために。
「オウレルのお兄さん、生きるのを諦めないで。絶対……守るから」
「ありがとう。その気持ちだけで僕は生きていける。これはそのお守りとしていただくよ。また会おう、それまで……元気で」
その後、一行は全ての雑魔が消失したのを確認すると集会所を解放した。
「フィロです。敵殲滅を確認いたしました。皆さん、もう家に戻られても大丈夫ですよ」
すると住民が次々と一行へ感謝しては無傷の家に帰っていく。――これらは全てハナとフィロの奮闘の成果だ。
そんな中、格闘士の青年が皆に一礼した。
「今回は本当にありがとう。俺達だけだったら今頃どうなっていたか。少なくとも俺は喰われていただろうな」
「いいえぇ、一番の恩人は新人くんですぅ。あの子のおかげでぇ、私達が間に合ったわけですしぃ。帰ったら必ず褒めてくださいねぇ」
ハナが可憐な笑みをこぼす。昨晩の妖艶な修羅の顔とはまるで別人のようだ。星野 ハナ。やはり愛らしくも恐ろしい女性である。
――いずれにせよ、次の戦場は南方の廃城だ。ハンター達はオフィスに報告すると、地図を確認し戦支度を始めるのだった。
それは静かな夜のこと。
ハンターオフィスの転移門から年若いハンターが息せき切って飛び出した。彼の顔色は蒼白で、話す言葉は支離滅裂。
「まずは落ち着いて。ひとつずつ話すんだ」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は彼を椅子に座らせて水を飲ませる。
そして年齢の近いリリア・ノヴィドール(ka3056)が彼の目線に合わせて「何があったの?」と尋ねると、彼は堰を切ったかのように話し出した。
「歪虚オウレルが警護中の集落に現れたんです。突然南側から靄が湧いて。そしたら先輩が『靄に負のマテリアルを感じる。歪虚オウレルかもしれない。早く腕利きのハンターを呼んできてくれ』って!」
オウレル。その名を聞いた瞬間、それまでテーブルの片隅で紅茶を飲んでいたシェリル・マイヤーズ(ka0509)が大きく椅子を鳴らして立ち上がる。
アルトとリリアは早速戦場に赴くべく通信機を取り出した。
「そうか、あちらに残ったハンター達は通信機を所有しているか? もしトランシーバーがあるなら周波数を知りたい」
「は、はい。全員トランシーバーと魔導スマートフォンを持っています。周波数は……」
シェリルも周波数を合わせつつ、フードを目深に被る。2年待ち続けた機だ、これを逃すつもりは毛頭ない。
(オウレルのお兄さんを……取り戻す……)
それはリリアも同じこと。
「オウレルさんが存在するかぎり、まだチャンスはある、なの。でも……ここから先は私達が行くの。もし本当にオウレルさんがいるならあなたは危険かもしれない。お仲間には私達が事情を話すの、だからあなたはここで待機してほしいの」
「わ、わかりました。それでは僕はここで連絡役を続けます。……本当に申し訳ないです。本来は僕らだけでやらなければならないのに……」
力不足を嘆き肩を落とす彼に星野 ハナ(ka5852)が元気づけるように微笑むと力強く肩を叩いた。
「いいえぇ、大変な中でよく知らせてくれましたぁ。朗報待っててくださいぃ」
そう言って次々と転移門に向かうハンター達。少年ハンターは「どうか皆さんご無事で!」とエクラの神に祈りを捧げた。
●決意と不安と信じる心
ハンター達が到着したのは小さな集落のハンターオフィスだった。
「確か村で雇われたハンターの皆様は南で交戦中でしたね。ならば住民の皆様はご在宅かもしれません。私は避難誘導と村の警護にあたりましょう」
フィロ(ka6966)はそう言って魔導ママチャリ「銀嶺」で靄に向かい疾走する。
彼女はこちら側の戦力と疲弊したハンター達を早期に入れ替え、敵の侵入を最小限に抑えようと考えていた。
アルトはトランシーバーで村のハンターに警告を発する。
「私は援軍として派遣されたアルト・ヴァレンティーニだ。オウレルは吸血鬼型歪虚。食料もしくは玩具として人を攫いに来た可能性がある。十分に気をつけろ!」
すると疲れが滲んでいるものの6人の声が返ってくる。それに安心する反面、アルトは不穏さを感じていた。
(今回も靄の流れを見逃さなければ彼に遭遇できる筈。……これ以上の犠牲を防ぐには命を絶つのも縁ある者の役割となるだろう)
彼女は人間時代のオウレルを思い出すと心が小さく痛む。
だが踏鳴で高所に駆けあがり、渦巻く靄を見つめる頃には彼女の瞳から一切の迷いが消えていた。
アルマ・A・エインズワース(ka4901)は転移門から降りるなり、毅然とした表情を見せた。
(オウレルさん、あのカードを子供に渡したのは僕達に真実を伝えるためと未来への希望をまだ残しているからですよね? それならあなたはまだ死ぬべきではないです!)
今思えば先日のオウレルの戦ぶりは消極的だった。子供を抱えているとはいえ、基本が手加減込みの反撃と死体の召喚のみ。
それに子供も置いていったことから、彼の心は今も「人間」だとアルマは信じる。
(あなたの心がヒトならば、過ちを重ねてはいけない。僕が必ず助けてみせます!)
アルマは魔導バイクのエンジンを全開にし、靄の渦中へと飛び込んでいく。
一方、リリアはオウレルの動きを不審に思い、彼をよく知るシェリルに問いかけた。
「シェリルさん、オウレルさんって騎士の時も歪虚になってからも積極的に仕掛けるタイプじゃなかったから今回の動きは不自然なの。その辺り見聞きすれば目標が分かるかしら?」
「わからない。でも、会えばきっと」
「そうかもしれない、なの。だったら尚更諦めないの!」
リリアは気丈な娘だ。苦無を強く握りしめ、一心に駆ける。
あの優しかったオウレルが望まないであろう行為を止める、そのためだけに。
ハナは事前にフィロと打ち合わせした内容をトランシーバーに向けて囁いた。
「防衛スイッチしますぅ。南門と外の敵は私達が対処しますのでぇ、貴方達は村人の有害所への避難を手伝ってくださいぃ。これから仲間が南門に出ますのでぇ、それを確認したら後退してぇ、私達と一緒にぃ住民の皆さんを集会所に集めますぅ」
『しかし今退くわけには……』
「今回は守護者が3人、他にも守護者並みのトップランカーが来てますぅ。中の村人を最後に守るのは貴方達ですぅ、お願いしますぅ」
その囁きにハンターの存在意義を思い出したのか、村のハンター達は『了解』と快く応じた。
それまでどうか無事で――と願いながらハナは通信を切る。
その頃、シェリルは不安を抱きながら南門へまっすぐに向かった。
後方には澪(ka6002)とその親友の濡羽 香墨(ka6760)が続くが、彼女は言葉を交わさずひたすら地面を蹴る。
(お兄さん……出てきてくれるかな……)
先ほどのトランシーバーの会話を聞く限り、オウレルは前線に姿を現していないようだ。それは何故?
しかしシェリルは足を止めない。今度は絶対に手を離さないと決めたのだから。
(村には、入らせない。誰も死なせない)
澪は走りながら強い意思をもって刀に手をかけた。だがその隣で香墨が顎に手をあて考え込む。
「この前の報告書。読んだ。でもオウレルの真意が。わからない。今回の動向も……読めない。何を。考えてる?」
「それはわからない。現状で前線に出ていないあたり、単純な破壊とは別の役目が与えられているかも」
「どちらにしても。……死なせちゃいけないから。守らなきゃ」
「うん」
澪と香墨はまっすぐに走る。取り返しのつかない事態になる前に終わらせねば。今はそれだけが確かな事なのだから。
●歪虚オウレル
ここは南の戦場。数え切れないほどの死体を殴り飛ばし、格闘士が声を張り上げた。
「雑魔の物量作戦じゃ俺達は倒せねえぜ。これでも前に出て来ねぇのか、歪虚の大将さんよ!!」
何とも威勢のよい挑発。その瞬間、抑揚のない声が靄の中から響いた。
「丈夫な体、折れない心……お前でいいか」
「え?」
次の瞬間、靄の向こうから青黒い腕が格闘士の胸倉を掴んで彼を吊り上げる。その腕は慣れた様子で襟を捻り上げていく。
「何だよってめえ! 離さねえと……ブチ殺すぞ!」
意識が遠のく中、格闘士が鎧通しで相手の兜を振り抜くも相手はお構いなしだ。
他のハンターが彼を取り戻すべく次々と攻撃を繰り出すが、青黒いそれは全身に目があるかのように全ての攻撃を躱した。
そして失神した格闘士を肩に担ぐのは歪虚――オウレル。
「時間を無駄にしたくはない。帰るぞ」
彼が死体達と共に集落に背を向けた瞬間、黒い雷が彼らの背を襲う。
「……? この前の精霊か」
『私は英霊フリーデリーケ。オウレル、貴様のマテリアルを追ってきた甲斐があった。これ以上の蛮行は許さん!』
フリーデリーケ・カレンベルク(kz0254)が鋼の甲冑を纏い、斧を構える。
「フリーデ様、丁度良いところに! それでは私もいざ、参りますっ!!」
フィロはまず縮地移動を発動。オウレルの眼の反応を上回る速度で彼の背後に回り、死角の真下から腕を突き上げ格闘士を奪還した。
その時、にわかに意識を取り戻した格闘士が自分より小柄な女性に軽々と抱き上げられていることに目を白黒させる。
「あ、あんたは」
「オフィスから派遣されました、フィロと申します。格闘士様、舞刀士様、聖導士様は私と一旦村へ戻り東側の住民の避難誘導を。他の方は後程来られる星野様と西側の住民の避難誘導を願います」
その指示と同時に次々と姿を現すハンター達。村のハンター達は精鋭陣のマテリアルを察したのだろう。
「頼む、この村を守ってくれ」と言い残すとフィロやハナとともに南門へ走り去った。
そこでオウレルが不満そうに舌を打つ。
「……またお前達か」
アルト、アルマ、澪、フリーデと先日戦った面々。そしてどこかで見た覚えのある顔。
まずはシェリルとアルマが並び、シェリルが門の前で守りの術を発動させた。
「発動、ディヴァインウィル……門の守りは任せて。……オウレルのお兄さん。生きてるって、信じてた。私のこと。覚えてる?」
「生きている、だと? 歪虚が生きているわけがないだろう、娘」
名前すら呼んでもらえない。それとも忘れてしまったのか? 冷酷な声に胸が痛むがシェリルは諦めない。
今度は先の光景を元に彼の目的を推察する。
「お兄さんはさっき、格闘士を攫おうとした。一般人じゃ物足りなくて……ハンターでも探しにきた?」
「苛烈な拷問に耐えられる心身の強いものは何だ?」
「……そう。ハンターを玩具にするの。それはオウレルのお兄さん? それとも別の?」
「僕はそんな悪趣味には反吐が出る性質でね」
「でも……その悪趣味な誰かには逆らえないのね。私、村のハンターよりも頑丈で……意志も強くて……エリザベートの首、絞めたことある、よ……」
するとオウレルが顔をくしゃっと歪めた。
「なんだ、立候補か? ははっ、お前は変わった奴だな! しかし奴は最期まで抵抗し、必死で生きる人間を踏みにじるのが好きな下衆だ。お前のような娘は餌にしかならない!」
「……っ」
せめてオウレルが自分だけを狙うようになればと挑発したつもりが裏目に出たようだ。シェリルは小さく唇を噛んだ。
一方、リリアは彼の真の目的に気づくや、肩を震わせた。
(オウレルさんはこの場にいるハンターを狙っているの!? それなら陣形を組み直さないと!)
周囲を見回せば地面から不気味な音をたてて死体達が湧き出てくる。
これらを放置すれば塀の中のハンター達や一般人も危険に冒されるだろう。
だがそこをアルトは見逃さない。彼女は試作法術刀「華焔」を抜くと踏鳴と散華の合わせ技で一瞬にして死体達を解体し、オウレルの眼が追いつけないほどの速度で彼の背中に一文字の傷をつけた。
「くっ、赤いのかッ」
「やれやれ、赤いのでは寂しいな。イケメン……いや、オウレル・エルマン君? あれほど激しく絡みあったというのに」
ふたりはかつて闘技大会で武技を競った関係にある。
その頃のオウレルはアルトの技に憧れた朴訥な青年だったが、今や吸血鬼としてアルトに憎しみを向けるのは何の因果か。
しかしその隙にリリアは己の体に強化術式・紫電を施すと靄の外周から苦無「NAGATO」にマテリアルを込めて投擲した。
紐状のマテリアルがオウレルの右足に絡まり、一瞬動きが鈍る。
「ごめんなの、オウレルさん。本当のオウレルさんが戻るまでの辛抱だから!」
続けて瞬影を放ち、オウレルとその周囲の死体達に苦無を打ち込む。
(憎しみからでも構わない、ほんの少しでも私達を思い出してなのっ!)
その頃澪はシェリルのディヴァインウィルを香墨とともに掻い潜ると、尚も前に進む香墨を一瞬抱きしめた。
「託す。でも無理はしないで」
「わかってる。でも、できることはやらなきゃ」
そう言って香墨はソウルトーチを発動させた。生き残りの死体が彼女の魂の炎に惹かれ、ぞろりと動き出す。香墨は聖槍を構えた。
「……村までは行かせない。守ってみせる。私の守りたいもの全て」
●錯乱する集落
集落では先にフィロが指示した通りの人員構成で避難誘導に当たっていた。
ハナがトランシーバーで仲間に危惧していることを端的に伝える。
「敵が物量だけじゃなくてぇ、視線でゾンビの発生場所を決定できる可能性があるんですぅ。村人全員を集会所内へ避難させたらぁ、貴方達も集会所内に入って最終防衛ラインになってくださいぃ。外や北門は私とフィロさんで対処しますぅ」
互いに確認し合いながら、民家を訪ね避難を勧める。どちらも以前から村の警護にあたっていたハンターを住民に会わせ、安心させてから本題に入ることで要領よく集会所へ案内していった。
しかしそんな中、フィロの言葉に老人が竦み上がる。
「村の大群は門を破らなくても塀を乗り越えて来るかもしれません。皆様全員を守るためにも集会所へ避難してください」
「そ、そんな……避難所まで歩くのもやっとなのに、塀を乗り越える雑魔なんて……」
するとフィロが背を向けてしゃがみ込み、老人に向けて手を伸ばす。
「左様ですか、ならば私の背にお乗りください」
「えっ、お嬢さんの背中に!? そんなことできやしないよ!」
「ご安心ください。私はオートマトン。ヒトを助けるために存在するものです。どうぞ御気兼ねなく!」
そう言って微笑むフィロ。老人はオートマトンが如何なるものかわからないようだが、その優しさに絆され彼女の背に縋ると「すまないねぇ」と何度も謝った。
「いえ、人を助けることが私どもの義務であり、喜びです。どうか謝らないでくださいませ。そして無事に夜が明けた時はとびきりの笑顔を。それがこの村を守るハンターへの最大の賛辞になりましょう」
「……わかったよ。ありがとう、優しいお嬢さん」
闇の中を軽やかに駆けるフィロと周囲を警戒するハンター達。どうやら老人は最後の避難者だったらしい。
集会所の地下には住民が40名全員集まっている。皆不安そうだが、ハナが明るい声で住民たちを勇気づけた。
「今は最強クラスのハンター達が集まっているのでぇ、安心してくださいぃ。あと村のハンターさん達、終わったら呼びに来ますからぁ、改めてここの防衛をお願いしますねぇ」
その一方でフィロは声を潜めてハンター達に付け加えた。
「それと……現状では敵の増殖方法が完全究明されていません。地下カタコンベからの侵入も警戒をお願いします」
「わ、わかった。たしかこの村の墓地や遺体安置所は塀の外にあったはずだが……住民は絶対に守る。君達もどうか無事で」
真面目な顔で見送るハンターらにハナが符を手に明るく笑む。
「あはっ、大丈夫ですぅ。私達も場数を踏んでいますからぁ、必ずこの集落を守ってみせますぅ。フィロさんも一緒に頑張りましょうぅ、ねぇ?」
「ええ、ハナさん」
こうして見目麗しいふたりのハンターが集会所から颯爽と飛び出す。いつか来るであろう、蠢く影に向かって。
●混沌の闇と薄明の希望
地面から湧き出す無数の雑魔や歪虚。塀の外で戦うハンター達は少しずつ疲労と焦りを感じ始めていた。
「全く……放置もできないし、厄介なものだな!」
アルトが警戒しつつ、散華を再び繰り出す。白骨を粉砕しながら駆ける様は吹きすさぶ雪のよう。
その流れでオウレルを突こうとした瞬間――なんと2本の剣のうち1本が彼女の刃を捉え、もう1本が彼女の首筋から腹まで斜に斬り裂いた。
「ぐっ!?」
「言っただろう? 僕には無数の眼があると。何度でも斬られればお前の太刀筋ぐらい読めるようになる」
オウレルが薄く笑いつつ隣に控える雑魔を白い闇に変えると、それをすうと吸引した。
たちまち今まで受けた傷が薄くなり、彼は悠々と2本の剣を構える。アルトは口の中に広がる血を吐くと顔を引き攣らせた。
「ははっ、笑えるほど厄介になったものだな、イケメン君? 時間をかけるほど強くなるとは……あの日に助けられなかった償いだ。早々に終わらせてやる」
アルトが口元から滲んだ血を拭うことなく剣を構える。その心にはただ目の前の脅威を排除する覚悟のみがあった。
しかしそれでも死体は湧き続ける。
それまで魔導拳銃「ヘキサグラム」の力で香墨のもとに集まる雑魔どもを撃ち貫いてきたアルマが敵を北に行かせてはならないと、ストーンサークルを発動させた。
「フリーデさんは西側の敵を吹き飛ばしてください! 巻き込み注意ですよ!」
『お前は!?』
「僕は東側の死体たちを吹き飛ばしますっ。術式:ネプチューンッ! 穢れた魂を生命の源へ届けるです!!」
アルマの紡ぐ術式の中から人魚の女神が現れ、激流が死体達を砕きながら宙に消し飛ばす。
『それがお前の新たな力か、ますます負けられんな。断罪の雷、死者を灼き尽くせ!!』
恋人の活躍に微笑み、死体達の元へ飛び込むと無数の雷を落とすフリーデ。東西への大きな援軍はこうして呆気なく砕かれた。
一方、香墨はアルトに「このままじゃ危ない。倒れちゃだめ」とアンチボディを唱え、止血を施す。
しかし彼女はソウルトーチで常に雑魔どもから目をつけられている状態だ。
這い寄る死体に突然足を掴まれる。そこにスケルトン達が嗤うように顎を震わせながら武器を振り上げた。
(……しまった。このままじゃ)
盾を構えるのが精一杯という状況。その歪虚らを澪が縦横無尽で瞬時に砕いた。
「香墨、自分の役目も大事だけど。自分の命も大切にして」
「……わかった」
そう言って澪に背を預ける香墨。長らく一人旅を続けてきた身故に、背を預けられる友がいる幸せに思わず胸が熱くなる。
その頃、シェリルはふと些細な異常に気がついた。靄がディヴァインウィルの範囲内だけ入って来ない。
オウレルは高位に入りつつある歪虚、この防衛網を通り抜けられるはずなのに。
(この靄……負のマテリアルの匂いはするけど、お兄さんの匂いとは違う。……お兄さんとは違う存在? それならまだ打てる手がある!)
シェリルはディヴァインウィルを解除すると門の前で構える澪と香墨に声を放った。
「澪、門の守り……お願い!」
その切実な声に澪は何かを悟ったのだろう。じり、と香墨とともに後退しながら刀を雑魔たちに向ける。
「わかった。気をつけて」
シェリルの中にあるのはたったひとつの決意。それで自分が大きく傷つくことになっても構わないと彼女は覚悟していた。
(絶対に……取り戻してみせる!)
●空中の防衛線
南で壮絶な戦いが繰り広げられる中、他方面でも時折出現する雑魔達の執拗な攻撃にハナとフィロが立ち回りを展開していた。
何しろ相手は死体。塀を登るのにどれだけ負傷しようが一向に構わず壁を掴む。どこから壁を登り切るか内側では知りようがない。
そこでハナが魔箒に乗り、上空から集落の周辺を確認してはフィロに通信機で指示を送った。
「4時と10時の方向に結構な量の骨が来てますぅ。10時側は私が対処しますのでぇ、フィロさんは4時側をお願いしますねぇ」
「了解です。星野様、御武運を!」
フィロは全力で駆けるとそのまま縮地移動と縮地移動・虚空で宙を翔けた。そこには確かに無数の死体が壁に指を掛けている。
「生憎ここは封鎖中でございます、ご了承くださいませ。……青龍翔咬波ッ!」
フィロの手から強烈な水の氣が溢れ、死体達を地面に叩きつけた。しかしそれでも左右に壁に手を掛ける死体が群がる。
(知性がないということは恐ろしいことですね。星野様の次の指示が来るまではここを中心に守るのみです)
フィロは星神器を撫でると「頼みますよ、この戦にはあなたの力が必要となるかもしれません」と呟いた。
一方、ハナは符を5枚指に挟めると空から不敵に笑った。
「箒で飛べば一目瞭然ですぅ。そう私の目から逃れられると思わないでくださいねぇ?」
下に見えるは小虫のように壁を這い上がる死体達。彼女彼等へ憐れむように微笑み、五色光符陣を放った。
「ギャアアアッ!!?」
「ウヴァアアアアア……」
光の結界に次々と焼け落ちていく死体達。空になった指をぺろと舐め、ハナは「まだまだいますねぇ」とひとりごちた。
まだまだ符は豊富、いざとなればドローアクションで補充することもできる。
全てはこの集落の人々の幸福を取り戻すため。彼女の慈愛が歪虚を討つ修羅の心に変じた。
「汚物は消毒しなくちゃ……ふふっ。フィロさん、一緒に頑張りましょうねぇ♪」
ハナは箒を自在に操りながら次の獲物を見定めた。
●浄化
アルトとオウレルの剣の応酬は、最早誰もが手を出せないほどの神速の業のぶつかり合いとなっていた。
アルトが焔舞を纏いながら舞うように連華を放てば、オウレルが鎧で器用に威力を散らして二刀流でアルトを攻める。
当然アルトはそれを軽やかに躱したが、次の瞬間飛んでくる殺意のオーラは予想外だった。
呻くアルトに香墨が十字架を握り、アンチボディを唱える。オウレルは忌々しげに香墨を睨んだ。
(この癒し手を倒せばアルトを攫える。これだけの強靭な心身を持つ女なら主も満足するはず……ん? 主とは誰だ?)
思い返そうとするも、主が軽薄な女である事しか思い出せない。
そして強い者を差し出せば自分が赦されると、その想いだけが彼の意識を支えていた。
――これはアルトとの戦いで無意識に負のマテリアルを大きく消費したからこそ起きた記憶の混乱。
しかしその戸惑いをシェリルが見逃さなかった。ランアウトでオウレルに肉迫すると彼の肩を揺さぶる。
「お兄さんっ、思い出して! 仲間は誰か……大事な想い……。仲間を死なせた後悔の中でも……前に進むって、私の手をとった……ここで止まるなんて、許さないから……お願い……。ディヴァインウィル!!」
シェリルの周囲に生まれた拒絶の壁。しかしその中に靄がある限り、オウレルの力は衰えない。
そんな中でシェリルは精神安定剤をオウレルに打とうとするも呆気なく躱され、アンプルが落ち――砕けた。
「それは精神安定剤か? 残念ながら僕は恐慌していない。無駄な事だ」
「それでも……諦めない……。幻影なんて吹っ飛ばして。……それに今までの戦いで私達は歪虚と共闘も共生も出来るって知ったんだ……。血が必要ならあげるから……」
「お前の血など不要だ。それどころかお前がいると……何故か心が不安定になるんだよっ! 僕に触れるなッ!!」
懸命に説得するシェリルにオウレルが突然激昂し、彼女を突き飛ばす。
途端に拒絶の壁が消え、小さな体が地に叩きつけられた。しかし彼女はか細い声で繰り返す。
「……何度でも言うよ。『一緒に行こう』……帰ろう、皆の所……」
「うるさいうるさいうるさいっ! 皆って何だ。僕は歪虚、お前とは違う!!!」
その瞬間、リリアが再びマテリアルの紐でオウレルの脚を縛り付ける。
「……エリザベートのこと、身を捧げるほど好きなの?」
「そんなわけないだろう、あんな女!」
「それならオウレルさん、以前『もう戻らない』って言ってたけれど……どんな選択でもいい。オウレルさんで在ってなの! 自分の意志で、自分のために、生きてほしいの!」
「くそっ、お前も勝手な事ばかり……不愉快な女だ。皆、殺してやる……そうすればきっと心が落ち着く!」
そう言って彼は30体の雑魔を周囲に召喚した。そこで早速アルトが散華の姿勢に入ろうとしたところ、アルマが両手を広げてふたりの間に割って入る。
「わぅぅ! オウレルさん、本当は人を襲うのは嫌なんでしょ? この前の行動から考えてました。子供とカードを残してくれたこと、本当に悪い子だったらしなかったはずです。良い子が無理して嫌な事する必要ないです!」
僅かでも歪虚に「可能性」があるなら信じ、行動する。アルマのニュートラルな思考がオウレルの頑なな心に楔を入れる。
突然のことに動揺するオウレルにアルマが微笑み、機導浄化術・浄癒を発動させた。
続けて香墨も歌を捧げる。荒んだ魂を癒してきた本物の聖歌を。
「サルヴェイション。……オウレル。あなたの本当の心を。取り戻して」
その歌声に合わせ、澪は破邪顕正の刃を振るった。彼の心を縛る鎖を断つために。
「そう。諦めちゃ駄目。きっと新しい道があるはず!」
――しかしオウレルの瞳は澱んだままだ。
アルトが首を横に振り、せめて苦しまないようにと華焔を振り下ろしたその時、シェリルがオウレルを突き飛ばす。
シェリルの背から鮮血が華の如く噴き出した。
「!!?」
「まだ、駄目。ほんの少しでも可能性があるなら……私、信じる……。今度こそ、届け……レジスト……!」
シェリルの掌から生み出された柔らかな光。それがオウレルを優しく包み込み、彼から闇を消していく。
そして彼が地面に崩れ落ちると同時に死者達が……消え去った。
●取り戻した心
シェリルの応急手当てが終わった頃、オウレルも意識を取り戻した。正気に戻った彼は物腰柔らかで謝罪を口にするばかり。
しかしシェリルは彼を一切責めることなく、期待の籠った穏やかな声で問う。
「お兄さん……今なら帰れるよね? 皆のところに……」
その問いにオウレルが自嘲的に目を伏せた。
「いや、それは無理だ。僕はそこにいるだけで負のマテリアルを広めるから生物との共生ができないんだよ」
「そんな……! だったらせめて、皆に会うぐらい……」
「帝国軍は歪虚の殲滅を是としている。僕には前科があるし……謝罪の前に蜂の巣になるだろう。ヴァルターに謝りたいし、部下の墓参りもしたいけれどね」
――その無情さにシェリルの頬が涙で濡れる。人の心を取り戻しても彼は償うことさえ許されず、その命さえ拒絶されるのかと。
そこでリリアが痛む心を抑え、口を開いた。
「第二師団に……ヴァルターさんに言っておきたい事とかないの?」
「……彼は優しいから僕を案じていると思う。だから僕は消滅したことにしてくれ。それと『あの日ひどい事をしてすまなかった。こんな勝手な僕と友達でいてくれてありがとう』と言い残したとしてくれれば嬉しい」
「……わかった。ヴァルターさんにはそれが一番良いかもしれないね……」
リリアがメモ紙に走り書きする。必ず伝えようと。
一方、香墨はオウレルにまっすぐな瞳で問うた。
「これからあなたは。どうしたいの」
「それは……可能ならあの女を倒したい。剣妃の呪縛から解き放たれた今、僕は奴の魅了だけなら耐えられるから」
するとアルトが胡乱げに彼を見つめた。高位かつ頭のきれる歪虚こそ油断ならない。
もし今の言葉に嘘があれば、また厄介なことになると。
「……先ほどお前は贖罪したいと言ったな。ならば今、断罪を受けても構わないか?」
「それは当然でしょう。僕は今まで多くの人間を犠牲にしましたから。皆さんが奴を討伐してくださるなら、この首惜しくありません」
そう言って兜を脱ぐオウレル。シェリル達が「やめて!」と叫ぶ中、アルトが刃を唸らせると――オウレルの後ろ髪を一房だけ斬り落とした。
「えっ?」
「もし君がこの刃を躱すなり逃げようとしたら今頃首が落ちていただろう。君のヒトとしての心と覚悟はわかったよ、オウレル君。試してすまなかった」
納刀してオウレルに手を差し出すアルト。オウレルは微笑むと彼女の手を確と握った。
こうしてようやく落ち着いた中、アルマがふと首を傾げる。
「そういえば……こないだの子やっつければ、オウレルさん自由です?」
「こないだの子?」
「『エトヴェシュ・イロナさん』。オウレルさんが残してくれたカード、オフィスの職員さんが確認してくれました。今も指名手配中の連続猟奇殺人犯です。……あの子と顔が同じでした」
「あれは旧い拠点で見つけたものです。もし被害者のものなら遺品になると思ったのですが……それならば歪虚に堕ちる資質は十分か。本来なら僕が誅するべき存在なのに……」
その時アルトがふっと笑った。歪虚討伐はハンターの生業だと。
「奴に一矢報いたいのなら私達がやる。必ず滅ぼすと約束しよう」
「そうですー、そういうのは僕らにお任せです! あ、オウレルさんはどこから来たですか? それがわかるだけでも次に繋げられるです!」
アルマが徹底してエリザベートの名を出さないのは彼をいたずらに苦しめないためだ。その心遣いにオウレルは感謝した。
「……僕が駐留しているのは帝国の南にある廃城。奴にとっては最も気に入りの拠点です。僕は一旦帰還し、奴が移動しないよう従う素振りをして時間を稼ぎます」
具体的な場所を示したオウレルにアルトが頷いた。
「了解した。こちらは戦力を整えておく。時が来たら連絡をしよう」
そして最後に――シェリルはリリアに身体を支えられながらオウレルの元に向かう。最後の精神安定剤を渡すために。
「オウレルのお兄さん、生きるのを諦めないで。絶対……守るから」
「ありがとう。その気持ちだけで僕は生きていける。これはそのお守りとしていただくよ。また会おう、それまで……元気で」
その後、一行は全ての雑魔が消失したのを確認すると集会所を解放した。
「フィロです。敵殲滅を確認いたしました。皆さん、もう家に戻られても大丈夫ですよ」
すると住民が次々と一行へ感謝しては無傷の家に帰っていく。――これらは全てハナとフィロの奮闘の成果だ。
そんな中、格闘士の青年が皆に一礼した。
「今回は本当にありがとう。俺達だけだったら今頃どうなっていたか。少なくとも俺は喰われていただろうな」
「いいえぇ、一番の恩人は新人くんですぅ。あの子のおかげでぇ、私達が間に合ったわけですしぃ。帰ったら必ず褒めてくださいねぇ」
ハナが可憐な笑みをこぼす。昨晩の妖艶な修羅の顔とはまるで別人のようだ。星野 ハナ。やはり愛らしくも恐ろしい女性である。
――いずれにせよ、次の戦場は南方の廃城だ。ハンター達はオフィスに報告すると、地図を確認し戦支度を始めるのだった。
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質問卓 アルマ・A・エインズワース(ka4901) エルフ|26才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2019/04/20 13:18:45 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/19 12:47:13 |
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相談卓 シェリル・マイヤーズ(ka0509) 人間(リアルブルー)|14才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2019/04/21 10:59:39 |