ゲスト
(ka0000)
矢面の蟲
マスター:三田村 薫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~5人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2019/04/23 22:00
- 完成日
- 2019/04/29 01:39
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●言うとおり
「こわいこわいこわい!!!」
「しぃさん、こわいことなんて、なんにもないわぁ。わたしの言うとおりにしてねぇ」
叫び声を上げるC.J.(kz0273)の手に、藤代潤がそっと自分の手を重ねた。
「無駄な力が入ってるじゃない……駄目よぉ、こんながちがちになってたら……」
「無理無理無理!!!! 絶対無理!」
「逃げちゃ駄目」
ぐい、と顎を掴まれて顔の位置を戻された。
「うう……」
「ゆっくり息を吐いて……はい吸って……」
C.J.は目をつぶった。
「駄目よぉ、ちゃんと見てないと……ね?」
潤がゆっくりと手を離す。
「……そろそろ良いわよぉ、ゆっくり下ろして」
「ふええ……」
C.J.は情けない声を上げながら、引き分けていた弓を下ろした。
●精神鍛錬に行こう!
「ボランティアに行ったら雑魔に襲われる、叔父さんにお礼をしようと思って宝石店に行ったら強盗に巻き込まれる、教会に行ったら司祭が殺人未遂。僕はどこで徳を積んだら良いのさ!」
ある日のハンターオフィス。C.J.はバンバンとカウンターを叩いて悶絶していた。
「普通にここでお仕事してたら良いじゃないですかぁ」
と言うのは同僚の平坂みことだ。
「やだやだ! 僕は旅行に行きたいんだ! フラストレーションが溜まって死にそう。旅行に行きたい」
そもそも、二回連続旅行先で事件に巻き込まれたので徳を積もうとしているのである。その徳積みでも事件に巻き込まれているのだから世話はない。
「煩悩を滅却すれば良いのか?」
「だったら、武道なんてどうかしらぁ」
そう提案したのは、ふらりと同盟にやって来た闘狩人の藤代潤である。
「集中して、思い切り打ち込んでみるのはどうかしらぁ。わたし、剣道とか教えられるわぁ」
「え~……剣道は痛そうだから嫌」
「じゃあ弓は?」
「良いね」
「あの、潤ちゃん、弓って」
平坂が手を挙げるが、
「弓道着も用意しておくわねぇ。しぃさん、すらっとしてるから似合いそう。じゃあ、練習場探しておくわねぇ」
「え? そ、そうかな……へへ……」
「ええ……」
みことはR.J.に囁いた。
「私、弓道ちょっとやってたんですけどぉ……弓って、そんな簡単に引けるようになるものじゃないんですけど……一年生は下積みが……」
中年職員は肩を竦める。
「良い薬さ」
●ハンターの多い練習場
そして、この有様である。ひとまず弓を触って見ようと言うことで、手を離す寸前までやってみたのだが、和弓は耳の後ろまで弦を引かなくてはならない。耳に弦が当たるのではないかとC.J.は怯えていたのである。ちなみに上手くやらないと本当に当たるしビンタされるより痛い、と言うのが平坂の証言だ。眼鏡も飛ぶんですよ。
「ビンタなんて別れ話する時で充分だよ」
「それをなくすために射法八節があります」
「シャホーハッセツ」
「弓を引くときの基本ルールよぉ。ちゃんとできてないと、耳がばちん! って弦でぶたれちゃうからねぇ。まずは型の特訓よぉ。ちゃんとやりましょうねぇ」
「やります」
C.J.は板の間に正座しながら頷いた。そして思った。この弓の練習場、やたらとハンターが多いな、と。弓の練習場なので、和弓だけでなく、色んな種類の弓が使われているし、銃器にも門戸を開いているらしい。
「ところで、僕ほんとにここで練習してて良いの? ハンターが多くない? もしかして、専用?」
「うん。なんかねぇ、雑魔が出るからハンターの練習を広く受け入れてるみたいよぉ」
「……は?」
彼は目を瞬かせた。
「あー! 出た! あれです! あれが雑魔です!」
その時、スタッフの声がした。ハンターたちが三々五々、集まってくる。
「何あれ。的じゃん」
おそらく、甲虫なのだろうが、その背中の模様がどう見ても的だった。なんであんな姿で弓の練習場に来ちゃうんだろう。射貫いて下さいと言わんばかりじゃないか。
「しぃさんは安全なところにいるのよぉ」
潤はそう言うと、ゆがけを直し、弓を担いで他のハンターたちに合流した。
「こわいこわいこわい!!!」
「しぃさん、こわいことなんて、なんにもないわぁ。わたしの言うとおりにしてねぇ」
叫び声を上げるC.J.(kz0273)の手に、藤代潤がそっと自分の手を重ねた。
「無駄な力が入ってるじゃない……駄目よぉ、こんながちがちになってたら……」
「無理無理無理!!!! 絶対無理!」
「逃げちゃ駄目」
ぐい、と顎を掴まれて顔の位置を戻された。
「うう……」
「ゆっくり息を吐いて……はい吸って……」
C.J.は目をつぶった。
「駄目よぉ、ちゃんと見てないと……ね?」
潤がゆっくりと手を離す。
「……そろそろ良いわよぉ、ゆっくり下ろして」
「ふええ……」
C.J.は情けない声を上げながら、引き分けていた弓を下ろした。
●精神鍛錬に行こう!
「ボランティアに行ったら雑魔に襲われる、叔父さんにお礼をしようと思って宝石店に行ったら強盗に巻き込まれる、教会に行ったら司祭が殺人未遂。僕はどこで徳を積んだら良いのさ!」
ある日のハンターオフィス。C.J.はバンバンとカウンターを叩いて悶絶していた。
「普通にここでお仕事してたら良いじゃないですかぁ」
と言うのは同僚の平坂みことだ。
「やだやだ! 僕は旅行に行きたいんだ! フラストレーションが溜まって死にそう。旅行に行きたい」
そもそも、二回連続旅行先で事件に巻き込まれたので徳を積もうとしているのである。その徳積みでも事件に巻き込まれているのだから世話はない。
「煩悩を滅却すれば良いのか?」
「だったら、武道なんてどうかしらぁ」
そう提案したのは、ふらりと同盟にやって来た闘狩人の藤代潤である。
「集中して、思い切り打ち込んでみるのはどうかしらぁ。わたし、剣道とか教えられるわぁ」
「え~……剣道は痛そうだから嫌」
「じゃあ弓は?」
「良いね」
「あの、潤ちゃん、弓って」
平坂が手を挙げるが、
「弓道着も用意しておくわねぇ。しぃさん、すらっとしてるから似合いそう。じゃあ、練習場探しておくわねぇ」
「え? そ、そうかな……へへ……」
「ええ……」
みことはR.J.に囁いた。
「私、弓道ちょっとやってたんですけどぉ……弓って、そんな簡単に引けるようになるものじゃないんですけど……一年生は下積みが……」
中年職員は肩を竦める。
「良い薬さ」
●ハンターの多い練習場
そして、この有様である。ひとまず弓を触って見ようと言うことで、手を離す寸前までやってみたのだが、和弓は耳の後ろまで弦を引かなくてはならない。耳に弦が当たるのではないかとC.J.は怯えていたのである。ちなみに上手くやらないと本当に当たるしビンタされるより痛い、と言うのが平坂の証言だ。眼鏡も飛ぶんですよ。
「ビンタなんて別れ話する時で充分だよ」
「それをなくすために射法八節があります」
「シャホーハッセツ」
「弓を引くときの基本ルールよぉ。ちゃんとできてないと、耳がばちん! って弦でぶたれちゃうからねぇ。まずは型の特訓よぉ。ちゃんとやりましょうねぇ」
「やります」
C.J.は板の間に正座しながら頷いた。そして思った。この弓の練習場、やたらとハンターが多いな、と。弓の練習場なので、和弓だけでなく、色んな種類の弓が使われているし、銃器にも門戸を開いているらしい。
「ところで、僕ほんとにここで練習してて良いの? ハンターが多くない? もしかして、専用?」
「うん。なんかねぇ、雑魔が出るからハンターの練習を広く受け入れてるみたいよぉ」
「……は?」
彼は目を瞬かせた。
「あー! 出た! あれです! あれが雑魔です!」
その時、スタッフの声がした。ハンターたちが三々五々、集まってくる。
「何あれ。的じゃん」
おそらく、甲虫なのだろうが、その背中の模様がどう見ても的だった。なんであんな姿で弓の練習場に来ちゃうんだろう。射貫いて下さいと言わんばかりじゃないか。
「しぃさんは安全なところにいるのよぉ」
潤はそう言うと、ゆがけを直し、弓を担いで他のハンターたちに合流した。
リプレイ本文
●力のままに、飛べ石礫
「レイア、それどうしたの?」
「みつりさん! 何でそんなにぼろぼろなのぉ?」
C.J.と潤は、それぞれ知人のレイア・アローネ(ka4082)と蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)に新しい手当の様子があるのを見て目を丸くした。
「まさか直前に怪我をしてしまうとは……不覚」
レイアは渋い顔だ。
「ええ……レイアみたいな手練れをボコボコにするって一体何者なんだ……お大事にして」
「お大事にする」
「おや、潤も居ったか……そちらの殿御はご友人かの? なに、ちとばかし、な。大きな戦に出ておったのじゃ」
「あわわ」
潤は、先ほどまでC.J.にビシバシ指導していた気迫はどこへやら。数度世話になった魔術師の重体におろおろとうろたえ始める。
「だめよぅ、そんな怪我で弓なんか引いちゃ」
「なれど、怪我が有るからと立ち止まって居れる性分でも無くての」
「うーん、うーん」
レイアは疲れた顔でC.J.に微笑み掛けた。
「皆の足を引っ張らないようにしなくてはな。それにいい機会かもしれない」
「良い機会って何がさ」
「普通に戦えない時にこそ普段鍛錬していない技を磨いてみるのもいいことだ。弓か……鍛錬したことはあるが、実戦で使ったことはほとんどないな。まして雑魔相手に使うのは初めてになる」
「……その初めてもできないんじゃないのか?」
レイアが持っているのは、どう見てもおなじみのカオスウィースである。弓の気配がない。
「ふぁっ!?」
「やっぱり疲れてるんだよ……」
その後ろで、小さな白い影がごそごそと持参の如意乾坤袋を漁っている。
「私の拾ったかっこいい石が火を噴くの!」
ディーナ・フェルミ(ka5843)である。C.J.は振り返って目を剥いた。
「何してんだ」
「でやぁ~~~~」
ディーナはあろうことか、その中から石を取り出して大きく振りかぶり、甲虫に向かってぶん投げたのである。
「は?」
「人間の腕力じゃどうにもならないから、弓ができたのよぉ」
潤が困った様に言う。そもそも、今いる場所から的まで二十八メートル。ハンターオフィスのショップで買える投擲武器の射程がせいぜい十二メートル前後。ただの石ころが的まで届く筈もない。ぼてっと落ちた。
「はい、れいあさんも、でぃーなさんも、借りてきてあげたからこっち使いなさい?」
潤が備品の弓を借りてきて各々に渡す。
「ああ、すまない……潤と言ったか」
「ほら、ディーナもこれ使う」
「ずっと石を拾ったままだったのさっき思い出したの! 今こそ使う時だと思ったの!」
「石は君の頭だ」
「……オフィスで見かけたかのう? ふふ、賑やかな殿御じゃ」
腰に手を当ててディーナを威嚇するC.J.を見て、蜜鈴がくすくすと笑った。
●甲虫雑魔の狙いとは
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)はロングボウ・ホークアイを左手に持って的を見据えている。聖弓・サルンガを持参しているのはサクラ・エルフリード(ka2598)である。二人とも、こそこそと動く的を見て、いかに狙いをつけようかと思案しているところであった。
「いかにも狙ってくれとばかりな相手ですし、射撃練習にちょうどいいですね……」
サクラが呟くと、
「ただの甲虫というのならまだしも、射的みたいな紋様に、狙い撃ちしてくださいと言わんばかりの動き……いったいどういう事なのでしょうか」
ツィスカが難しい顔で唸った。
「矢取りの時を狙うんじゃないかしらぁ?」
潤が首を傾げる。的に刺さったり、惜しくも落ちた矢は、ある程度溜まったら拾いに行かないといけない。それを矢取りと言う。恐らく、的のふりをして鎮座し、矢取りのタイミングで人間が近づいてきたところを襲うのではないか。
「至近距離で弓を扱うのは難しいからのう。獲物が寄ってくるのを待つタイプの雑魔か」
蜜鈴がほうとため息を吐いた。雑魔の姑息さにではない。ままならない我が身に対してである。
「弓の感触……重み……久しいのう……なれど、斯様に傷ついた身では弓を引くも一苦労よな……潤、ちと手伝うてはくれぬか?」
「ええ、ええ、もちろんよぉ。でも無理したらいけないわぁ。ね、れいあさんも、わたしの隣にいてねぇ。ガウスジェイルあるから守ってあげられるわぁ」
「あ、ああ、すまないな」
「C.J.と言うたかの。不安なれば奉天と嚠赫と共に居ると良いよ」
蜜鈴はそう言って、自分の飼い犬と飼い猫をC.J.に寄越した。彼は再び目を剥く。
「この犬と猫で気を紛らわせろって!? こんな小さな生き物、心配で気が休まらないよ! 連中こっち来たらこの二匹抱えて逃げるからね!? お、よしよし。賢いな。はい膝に乗って……」
袴の膝の上に二匹を乗せる。そして、猫好きのディーナが嚠赫に伸ばした手をはたき落とした。
「人の猫を食おうとするな!」
「猫は食べたりしないの~! 猫は愛でるものなの~!」
「ほんとか!?」
蜜鈴はマジックアローの使用を試みたが、重体状態では覚醒ができない。魔法の使用も当然できない。
「負傷も過ぎれば覚醒も出来ず、術を放つ事すらできぬ……なんと此の身のか弱き事か。なれど一矢……弱き心を撃ち抜く為に……」
和弓・流星雨。二メートルを越す竹製の大弓である。
「あら、まぁ」
潤は目を瞬かせた。
「そんな立派な弓なのに、重体なんてもったいないわねぇ。今度、是非元気な時にじゃんじゃんばりばり使って見せてねぇ」
●両眼ホークアイ
「ちょっと、使ってみたいスキルがあるんですが試しても良いでしょうか?」
サクラは心なしかわくわくしているように見える。ツィスカは頷いて、
「ええ、折角の機会です。普段の戦いの中では、結果を気にしてなかなか使えないスキル、技術などを試す良い場かと」
「では……」
サクラはいそいそと持ち物を一つ、ぽいっと虫に向かって放り出す。これで投擲のように攻撃できないかと思ったのであるが……。
ぺしっ。
受け取りを拒否された。投げた物はそのまま地面に転がる。
「むむ、やはり、アイテムスローでは攻撃にならないようですね……」
「色んな戦い方はあって良いと思いますが……残念ですね」
ツィスカはそう所見を述べてから、ホークアイを引いた。
「敵がわざわざあのようないでたちになっているという事は、射撃武器での撃破を暗に推奨する事にもなっており、近接攻撃をしかけようとすれば、果たして何をしでかそうものか……」
やはり、矢取りの人を狙って攻撃してくるのだろうか。ならば、そんな手には乗らない。彼女は、上から槍が差し込まれたような円形の光が浮かぶ青い瞳で鋭く的……もとい甲虫を見据えた。二本の矢をつがえて引き絞る。弦がぎりぎりと音を立てた。翼を広げたような姿の弓だが、それが今、確かな緊張感を孕んで張り詰める。
ダブルシューティング。サブクラスの猟撃士で準備してきたスキルだ。この技術を用いれば、二本の矢をつがえて一度に複数攻撃することも可能。二本とも、筈にしっかりと弦がはまり込み、落ちることもなさそうだ。
ツィスカはタイミングを見て、手を離した。獲物を狙って、鋭く滑空する鷹の如く、二本の矢が放たれる。
高い音を立てて、それは的に似た甲虫を射抜いた。ツィスカはふぅ、と息を吐く。
「上手ねぇ」
潤が目を丸くした。
「ありがとうございます」
「では、次は私だな……」
レイアもまた、集中して弓を上げ、引き絞った。
「……落ち着こう、獣相手に射る時と同じことだ。獲物が逃亡より反撃を優先する事に注意を払え」
覚醒できなくてもなお強い瞳。見ているC.J.も、これはいけるのではないか。だってレイアだもん。いつもかっこよく戦ってるレイアなんだから、多少怪我してたっていけるんじゃないか──そう思っていたのだが……。
手が離された。
「あ」
その矢が、やや斜めに傾斜したまま飛んで行ったのを、C.J.は見た。
「ああ……」
惜しい。残念だ。矢はわずかについた角度に従って飛んで行き、的から外れて背後の壁面に当たり、跳ね返る。
「ううん、惜しいな。いつものレイアなら当たると思ったんだけど」
「うむ。やはり怪我が祟っているようだ……」
「じゃあ、次わたしねぇ」
潤はガウスジェイルを張って、蜜鈴とレイアの間に立った。この範囲なら、甲虫が何かしでかしても守ることができる。
「範囲攻撃だと無理だけどねぇ。でも矢取り狙いなら、なんかこう、やばい攻撃はしてこないと思うわぁ」
「なんだよ、なんかやばい攻撃って……」
「なんかやばい攻撃よぉ。どかーん! って感じのぉ」
「語彙力」
潤が弓を引いている間、ディーナは真剣な顔でC.J.の肩をぽむぽむと叩く。
「CJ、弓は下手すると耳が千切れるの。赤くなるだけで済めばいい方なの。CJは私並みにぶきっちょ? だから、石を投げた方が良いと思うの」
「えっ、嘘、千切れるの? マジ? ていうか僕は不器用ではない」
ディーナはC.J.の弁解には耳を貸さず、石を握らせる。
「昔川原で水きりしようとして、すっぽ抜けた石を隣の人の頭に全力でぶつけちゃったことがあるの……一生懸命集めてたから、まだまだあるの……」
「なぁ、ここ弓の練習場だと思ってたんだけど、弓も持って来ないでほんと君何しに来たんだ?」
甲虫がため込んでいた花粉を吐き出して飛ばしてきた。サクラは回避、ツィスカは受けたものの鎧のおかげで無傷、潤は多少痛かった模様だが倒れるほどでもない。
「では次、また使いたいスキルを試させてもらいます……」
サクラが厳かに言う。そして……。
●的中
その爆発は、甲虫にはやや届かなかったが、巻き込む事には成功した。ただし、それは……花火である。
「綺麗ねぇ」
「綺麗だがすこし背景がアレなのではないか」
「ええ……折角美しい光の芸術なのにもったいないのでは」
「ほんに……サクラや、これが終わってからまた見せておくれ」
「むむ、ちょっと派手にしてみたかった……と思ったのも事実ですが、やっぱり効きませんか……」
「ワンダーフラッシュがファイアーボールの同型だったら世も末だよ。爆弾魔の輝紅士とか嫌すぎない?」
「しぃさんは変なところで語彙力発揮しないのぉ」
「では、次、参ります」
ツィスカはクイックリロードを試していた。見ていたC.J.は、矢筒から素早く取り出す様を見て地味にテンションが上がっている。彼女は矢をつがえ、再び引き絞る。マテリアルが集まった。
手を離した瞬間、そのマテリアルで加速する……高加速射撃だ。
重い破裂音。甲虫の的じみた模様。その真ん中を、ツィスカの矢は貫いていた。
「え? 嘘でしょ? 真ん中? すごいね、ツィスカ。ほら見たか? わんこ、にゃんこ。すごかったぞ」
「やったぁ! つぃすかさんすごい! 真ん中よぉ! 大当たりだわぁ!」
「当たるものですね」
当のツィスカが一番驚いているようでもある。
「勇気づけられるものじゃ。潤の貫徹の矢で防御の下がった所になれば只の矢であれど仕留めるも出来よるかのう?」
「いいわね。やってみる?」
蜜鈴の言葉を聞くと、潤は早速貫徹の矢の構えだ。弓が大きく湾曲し、矢が射られる。しかし……。
「なんでわたしのだけ避けるのかしらぁ!? 虫型と相性が悪くて仕方ないわぁ!」
「前にもあったのう、このような」
蜜鈴はくすりと笑いながらも、大きく呼吸をして体の調子を整えながら弓を持った。弓を引くのには呼吸も大事な要素になる。ゆっくりと、焦らず。的は走り回る様子もない。
金の蝶も、炎を吹き上げる魔法陣も、今は纏わない。だが、それでもどこか腹の据わったような蜜鈴はゆっくりと弓を引いた。ぎぃ、と弦が、竹がしなる。
重くも乾いた音を立てて、弓が跳ねた。痛みでも走ったか、蜜鈴は少し顔をしかめた。だが、彼女の表情に反して、流星のように飛んだ矢は中心と縁の中間あたりに命中する。
「やったぁ!」
「同じ重体として負けていられんな」
レイアが気を取り直して弓を引くが、今日は残念なことに奮わなかった。
「レイア、僕と一緒に観戦しよう?」
C.J.が隣を叩く。潤が振り返って、
「じゃあ、でぃーなさん貸してぇ。わたしと一緒に盾になってちょうだい」
占有スクエアを形成して、蜜鈴とレイアの盾になる算段である。ガウスジェイルには限りがある。
●サルンガの火矢
「む、最後はこれで行きましょう…。せっかくですし弓も使ってみないとです…。的の中心を狙い撃てるといいのですが…」
ショットガンとオートマチック銃の二挺撃ちを試そうとしたサクラだが、やはりダブルファイアでもないと難しいようだった。彼女は最終的に、聖弓・サルンガを取り出して左手に持つ。
「まあ素敵な弓。羽根飾りが可愛いわねぇ」
潤がおっとりと感想を述べる。サクラは集中して的に向かった。的を見据える。きりきりとつがえた矢を引き、弓を押し出す。
誰もが固唾を呑んで見守り……そしてサクラは手を離した。
その瞬間、羽根飾りが輝いた。放たれた矢は炎の幻影を纏う。火矢を射かけるようにも見える。
中心にやや近いところに命中。安定した射であった。
「良いわよ、良いわよ。ナイスよ!」
「迫力があるね。色んな弓が見られるから、案外見てるだけでも楽しいよ」
「試合や弓の博覧会ではなかった気がするが……そうだな。様々な種類の弓があって興味深い。今後の糧にするとしよう」
「そう言えばこれ雑魔討伐だったね……」
レイアの言葉に、C.J.が思い出した様に呟く。嚠赫があくびをして、膝の上で丸くなった。
●夕陽が落ちる帰り道
多少時間は掛かったものの、どうにか甲虫は討伐できた。終わった頃には日が傾いていて、皆帰り支度を始める。C.J.も、すっかりいつもの洋服に着替えて靴を履いた。
「結局全然精神鍛錬にならなかった……」
「やっぱり大人しくお仕事するのが一番よぉ」
「事情はわかりませんが……真面目にやっていれば鍛錬になるのでは……」
「ふふ、生き物を大事に抱いておったからね、善行は積めたのではないかえ?」
「やっぱり石」
「石はもう良い」
借りていた弓も返却し、ハンターたちとC.J.はのんびりと帰路につく。
「それにしても、良い経験ができました」
真ん中を射抜いたツィスカは達成感に満ちた表情で呟く。
「ああ。見事だったな。私も次はあの様に射抜いてみたいものだ」
「レイアと蜜鈴はまず身体治してね」
夕陽に照らされる帰り道。世界では色んなことがあるけれど、少しだけ、今は平和を享受しよう。
僕たちは生きているのだから。
「レイア、それどうしたの?」
「みつりさん! 何でそんなにぼろぼろなのぉ?」
C.J.と潤は、それぞれ知人のレイア・アローネ(ka4082)と蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)に新しい手当の様子があるのを見て目を丸くした。
「まさか直前に怪我をしてしまうとは……不覚」
レイアは渋い顔だ。
「ええ……レイアみたいな手練れをボコボコにするって一体何者なんだ……お大事にして」
「お大事にする」
「おや、潤も居ったか……そちらの殿御はご友人かの? なに、ちとばかし、な。大きな戦に出ておったのじゃ」
「あわわ」
潤は、先ほどまでC.J.にビシバシ指導していた気迫はどこへやら。数度世話になった魔術師の重体におろおろとうろたえ始める。
「だめよぅ、そんな怪我で弓なんか引いちゃ」
「なれど、怪我が有るからと立ち止まって居れる性分でも無くての」
「うーん、うーん」
レイアは疲れた顔でC.J.に微笑み掛けた。
「皆の足を引っ張らないようにしなくてはな。それにいい機会かもしれない」
「良い機会って何がさ」
「普通に戦えない時にこそ普段鍛錬していない技を磨いてみるのもいいことだ。弓か……鍛錬したことはあるが、実戦で使ったことはほとんどないな。まして雑魔相手に使うのは初めてになる」
「……その初めてもできないんじゃないのか?」
レイアが持っているのは、どう見てもおなじみのカオスウィースである。弓の気配がない。
「ふぁっ!?」
「やっぱり疲れてるんだよ……」
その後ろで、小さな白い影がごそごそと持参の如意乾坤袋を漁っている。
「私の拾ったかっこいい石が火を噴くの!」
ディーナ・フェルミ(ka5843)である。C.J.は振り返って目を剥いた。
「何してんだ」
「でやぁ~~~~」
ディーナはあろうことか、その中から石を取り出して大きく振りかぶり、甲虫に向かってぶん投げたのである。
「は?」
「人間の腕力じゃどうにもならないから、弓ができたのよぉ」
潤が困った様に言う。そもそも、今いる場所から的まで二十八メートル。ハンターオフィスのショップで買える投擲武器の射程がせいぜい十二メートル前後。ただの石ころが的まで届く筈もない。ぼてっと落ちた。
「はい、れいあさんも、でぃーなさんも、借りてきてあげたからこっち使いなさい?」
潤が備品の弓を借りてきて各々に渡す。
「ああ、すまない……潤と言ったか」
「ほら、ディーナもこれ使う」
「ずっと石を拾ったままだったのさっき思い出したの! 今こそ使う時だと思ったの!」
「石は君の頭だ」
「……オフィスで見かけたかのう? ふふ、賑やかな殿御じゃ」
腰に手を当ててディーナを威嚇するC.J.を見て、蜜鈴がくすくすと笑った。
●甲虫雑魔の狙いとは
ツィスカ・V・アルトホーフェン(ka5835)はロングボウ・ホークアイを左手に持って的を見据えている。聖弓・サルンガを持参しているのはサクラ・エルフリード(ka2598)である。二人とも、こそこそと動く的を見て、いかに狙いをつけようかと思案しているところであった。
「いかにも狙ってくれとばかりな相手ですし、射撃練習にちょうどいいですね……」
サクラが呟くと、
「ただの甲虫というのならまだしも、射的みたいな紋様に、狙い撃ちしてくださいと言わんばかりの動き……いったいどういう事なのでしょうか」
ツィスカが難しい顔で唸った。
「矢取りの時を狙うんじゃないかしらぁ?」
潤が首を傾げる。的に刺さったり、惜しくも落ちた矢は、ある程度溜まったら拾いに行かないといけない。それを矢取りと言う。恐らく、的のふりをして鎮座し、矢取りのタイミングで人間が近づいてきたところを襲うのではないか。
「至近距離で弓を扱うのは難しいからのう。獲物が寄ってくるのを待つタイプの雑魔か」
蜜鈴がほうとため息を吐いた。雑魔の姑息さにではない。ままならない我が身に対してである。
「弓の感触……重み……久しいのう……なれど、斯様に傷ついた身では弓を引くも一苦労よな……潤、ちと手伝うてはくれぬか?」
「ええ、ええ、もちろんよぉ。でも無理したらいけないわぁ。ね、れいあさんも、わたしの隣にいてねぇ。ガウスジェイルあるから守ってあげられるわぁ」
「あ、ああ、すまないな」
「C.J.と言うたかの。不安なれば奉天と嚠赫と共に居ると良いよ」
蜜鈴はそう言って、自分の飼い犬と飼い猫をC.J.に寄越した。彼は再び目を剥く。
「この犬と猫で気を紛らわせろって!? こんな小さな生き物、心配で気が休まらないよ! 連中こっち来たらこの二匹抱えて逃げるからね!? お、よしよし。賢いな。はい膝に乗って……」
袴の膝の上に二匹を乗せる。そして、猫好きのディーナが嚠赫に伸ばした手をはたき落とした。
「人の猫を食おうとするな!」
「猫は食べたりしないの~! 猫は愛でるものなの~!」
「ほんとか!?」
蜜鈴はマジックアローの使用を試みたが、重体状態では覚醒ができない。魔法の使用も当然できない。
「負傷も過ぎれば覚醒も出来ず、術を放つ事すらできぬ……なんと此の身のか弱き事か。なれど一矢……弱き心を撃ち抜く為に……」
和弓・流星雨。二メートルを越す竹製の大弓である。
「あら、まぁ」
潤は目を瞬かせた。
「そんな立派な弓なのに、重体なんてもったいないわねぇ。今度、是非元気な時にじゃんじゃんばりばり使って見せてねぇ」
●両眼ホークアイ
「ちょっと、使ってみたいスキルがあるんですが試しても良いでしょうか?」
サクラは心なしかわくわくしているように見える。ツィスカは頷いて、
「ええ、折角の機会です。普段の戦いの中では、結果を気にしてなかなか使えないスキル、技術などを試す良い場かと」
「では……」
サクラはいそいそと持ち物を一つ、ぽいっと虫に向かって放り出す。これで投擲のように攻撃できないかと思ったのであるが……。
ぺしっ。
受け取りを拒否された。投げた物はそのまま地面に転がる。
「むむ、やはり、アイテムスローでは攻撃にならないようですね……」
「色んな戦い方はあって良いと思いますが……残念ですね」
ツィスカはそう所見を述べてから、ホークアイを引いた。
「敵がわざわざあのようないでたちになっているという事は、射撃武器での撃破を暗に推奨する事にもなっており、近接攻撃をしかけようとすれば、果たして何をしでかそうものか……」
やはり、矢取りの人を狙って攻撃してくるのだろうか。ならば、そんな手には乗らない。彼女は、上から槍が差し込まれたような円形の光が浮かぶ青い瞳で鋭く的……もとい甲虫を見据えた。二本の矢をつがえて引き絞る。弦がぎりぎりと音を立てた。翼を広げたような姿の弓だが、それが今、確かな緊張感を孕んで張り詰める。
ダブルシューティング。サブクラスの猟撃士で準備してきたスキルだ。この技術を用いれば、二本の矢をつがえて一度に複数攻撃することも可能。二本とも、筈にしっかりと弦がはまり込み、落ちることもなさそうだ。
ツィスカはタイミングを見て、手を離した。獲物を狙って、鋭く滑空する鷹の如く、二本の矢が放たれる。
高い音を立てて、それは的に似た甲虫を射抜いた。ツィスカはふぅ、と息を吐く。
「上手ねぇ」
潤が目を丸くした。
「ありがとうございます」
「では、次は私だな……」
レイアもまた、集中して弓を上げ、引き絞った。
「……落ち着こう、獣相手に射る時と同じことだ。獲物が逃亡より反撃を優先する事に注意を払え」
覚醒できなくてもなお強い瞳。見ているC.J.も、これはいけるのではないか。だってレイアだもん。いつもかっこよく戦ってるレイアなんだから、多少怪我してたっていけるんじゃないか──そう思っていたのだが……。
手が離された。
「あ」
その矢が、やや斜めに傾斜したまま飛んで行ったのを、C.J.は見た。
「ああ……」
惜しい。残念だ。矢はわずかについた角度に従って飛んで行き、的から外れて背後の壁面に当たり、跳ね返る。
「ううん、惜しいな。いつものレイアなら当たると思ったんだけど」
「うむ。やはり怪我が祟っているようだ……」
「じゃあ、次わたしねぇ」
潤はガウスジェイルを張って、蜜鈴とレイアの間に立った。この範囲なら、甲虫が何かしでかしても守ることができる。
「範囲攻撃だと無理だけどねぇ。でも矢取り狙いなら、なんかこう、やばい攻撃はしてこないと思うわぁ」
「なんだよ、なんかやばい攻撃って……」
「なんかやばい攻撃よぉ。どかーん! って感じのぉ」
「語彙力」
潤が弓を引いている間、ディーナは真剣な顔でC.J.の肩をぽむぽむと叩く。
「CJ、弓は下手すると耳が千切れるの。赤くなるだけで済めばいい方なの。CJは私並みにぶきっちょ? だから、石を投げた方が良いと思うの」
「えっ、嘘、千切れるの? マジ? ていうか僕は不器用ではない」
ディーナはC.J.の弁解には耳を貸さず、石を握らせる。
「昔川原で水きりしようとして、すっぽ抜けた石を隣の人の頭に全力でぶつけちゃったことがあるの……一生懸命集めてたから、まだまだあるの……」
「なぁ、ここ弓の練習場だと思ってたんだけど、弓も持って来ないでほんと君何しに来たんだ?」
甲虫がため込んでいた花粉を吐き出して飛ばしてきた。サクラは回避、ツィスカは受けたものの鎧のおかげで無傷、潤は多少痛かった模様だが倒れるほどでもない。
「では次、また使いたいスキルを試させてもらいます……」
サクラが厳かに言う。そして……。
●的中
その爆発は、甲虫にはやや届かなかったが、巻き込む事には成功した。ただし、それは……花火である。
「綺麗ねぇ」
「綺麗だがすこし背景がアレなのではないか」
「ええ……折角美しい光の芸術なのにもったいないのでは」
「ほんに……サクラや、これが終わってからまた見せておくれ」
「むむ、ちょっと派手にしてみたかった……と思ったのも事実ですが、やっぱり効きませんか……」
「ワンダーフラッシュがファイアーボールの同型だったら世も末だよ。爆弾魔の輝紅士とか嫌すぎない?」
「しぃさんは変なところで語彙力発揮しないのぉ」
「では、次、参ります」
ツィスカはクイックリロードを試していた。見ていたC.J.は、矢筒から素早く取り出す様を見て地味にテンションが上がっている。彼女は矢をつがえ、再び引き絞る。マテリアルが集まった。
手を離した瞬間、そのマテリアルで加速する……高加速射撃だ。
重い破裂音。甲虫の的じみた模様。その真ん中を、ツィスカの矢は貫いていた。
「え? 嘘でしょ? 真ん中? すごいね、ツィスカ。ほら見たか? わんこ、にゃんこ。すごかったぞ」
「やったぁ! つぃすかさんすごい! 真ん中よぉ! 大当たりだわぁ!」
「当たるものですね」
当のツィスカが一番驚いているようでもある。
「勇気づけられるものじゃ。潤の貫徹の矢で防御の下がった所になれば只の矢であれど仕留めるも出来よるかのう?」
「いいわね。やってみる?」
蜜鈴の言葉を聞くと、潤は早速貫徹の矢の構えだ。弓が大きく湾曲し、矢が射られる。しかし……。
「なんでわたしのだけ避けるのかしらぁ!? 虫型と相性が悪くて仕方ないわぁ!」
「前にもあったのう、このような」
蜜鈴はくすりと笑いながらも、大きく呼吸をして体の調子を整えながら弓を持った。弓を引くのには呼吸も大事な要素になる。ゆっくりと、焦らず。的は走り回る様子もない。
金の蝶も、炎を吹き上げる魔法陣も、今は纏わない。だが、それでもどこか腹の据わったような蜜鈴はゆっくりと弓を引いた。ぎぃ、と弦が、竹がしなる。
重くも乾いた音を立てて、弓が跳ねた。痛みでも走ったか、蜜鈴は少し顔をしかめた。だが、彼女の表情に反して、流星のように飛んだ矢は中心と縁の中間あたりに命中する。
「やったぁ!」
「同じ重体として負けていられんな」
レイアが気を取り直して弓を引くが、今日は残念なことに奮わなかった。
「レイア、僕と一緒に観戦しよう?」
C.J.が隣を叩く。潤が振り返って、
「じゃあ、でぃーなさん貸してぇ。わたしと一緒に盾になってちょうだい」
占有スクエアを形成して、蜜鈴とレイアの盾になる算段である。ガウスジェイルには限りがある。
●サルンガの火矢
「む、最後はこれで行きましょう…。せっかくですし弓も使ってみないとです…。的の中心を狙い撃てるといいのですが…」
ショットガンとオートマチック銃の二挺撃ちを試そうとしたサクラだが、やはりダブルファイアでもないと難しいようだった。彼女は最終的に、聖弓・サルンガを取り出して左手に持つ。
「まあ素敵な弓。羽根飾りが可愛いわねぇ」
潤がおっとりと感想を述べる。サクラは集中して的に向かった。的を見据える。きりきりとつがえた矢を引き、弓を押し出す。
誰もが固唾を呑んで見守り……そしてサクラは手を離した。
その瞬間、羽根飾りが輝いた。放たれた矢は炎の幻影を纏う。火矢を射かけるようにも見える。
中心にやや近いところに命中。安定した射であった。
「良いわよ、良いわよ。ナイスよ!」
「迫力があるね。色んな弓が見られるから、案外見てるだけでも楽しいよ」
「試合や弓の博覧会ではなかった気がするが……そうだな。様々な種類の弓があって興味深い。今後の糧にするとしよう」
「そう言えばこれ雑魔討伐だったね……」
レイアの言葉に、C.J.が思い出した様に呟く。嚠赫があくびをして、膝の上で丸くなった。
●夕陽が落ちる帰り道
多少時間は掛かったものの、どうにか甲虫は討伐できた。終わった頃には日が傾いていて、皆帰り支度を始める。C.J.も、すっかりいつもの洋服に着替えて靴を履いた。
「結局全然精神鍛錬にならなかった……」
「やっぱり大人しくお仕事するのが一番よぉ」
「事情はわかりませんが……真面目にやっていれば鍛錬になるのでは……」
「ふふ、生き物を大事に抱いておったからね、善行は積めたのではないかえ?」
「やっぱり石」
「石はもう良い」
借りていた弓も返却し、ハンターたちとC.J.はのんびりと帰路につく。
「それにしても、良い経験ができました」
真ん中を射抜いたツィスカは達成感に満ちた表情で呟く。
「ああ。見事だったな。私も次はあの様に射抜いてみたいものだ」
「レイアと蜜鈴はまず身体治してね」
夕陽に照らされる帰り道。世界では色んなことがあるけれど、少しだけ、今は平和を享受しよう。
僕たちは生きているのだから。
依頼結果
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ツィスカ・V・A=ブラオラント(ka5835)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/04/21 12:18:35 |