開拓は一日にしてならず・二

マスター:四月朔日さくら

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/01/24 12:00
完成日
2015/01/28 23:19

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 CAM奪還ゲーム――
 そんな話でハンターズソサエティが右や左の大騒ぎとなっている頃。
 辺境ユニオン『ガーディナ』の一室で、リムネラ(kz0018)は各所から送られてきた報告書を読んでいた。

 状況はなかなか好転しない。
 いや、このままでは――辺境に大きな犠牲が出るのも時間の問題か。
 実験施設のあるマギア砦南部はまだ被害の少ない地域だ。
 しかし――いや、だからこそ、こんな時は『ひとを集める』ことのできる場所を、作る必要があるだろう。
(……ソウ言えば、アノあたりは立地的に医療設備が……)
 人を集める口実となる施設づくり、まだ余地はありそうだ。


(ソレにしても、皆サンに迷惑をかけてハ駄目ネ……)
 リムネラは痛感する。
 周囲も今回の件で胸を傷ませていることに気づいていたらしく、随分とフォローをしてくれていた。
(ソノ恩にも、報いないト)
 そう胸に刻んだリムネラがハンターたちを呼んだのは、翌日のことであった。


「……集会所と、医療施設……ですか?」
 呼び出したハンターに尋ねられて、リムネラはコクリと頷く。
「ハイ。辺境の医療ハ、とても遅れてマス。せっかくの実験場をコレカラも活かすなら、そういう『ひとの集まる場所』にして、辺境の部族やキャラバンの人たちが集いやすいようにスレバ……進んだ医療を受けたり、珍しいものを入手できるような場所にナルかな、と思いマシタ」
 リムネラの意見はもっともだ。
 せっかく作った実験施設をこのまま腐らせてしまうのももったいない話だ。
 リムネラの話は非常に納得の行くもので、同意する声は所々からも上がっているらしい――と聞いたこともある。
 特に医療もそうだし、また集会所のような場所があればちょっとした市を開くことだって不可能ではないだろう。
「……また、手助け……オ願い、デキマスか?」
 おずおずと尋ねるリムネラに、ハンターたちはこっくりと頷いたのだった。

リプレイ本文


 開拓地に診療所と集会所を――
 リムネラ(kz0018)は、そうハンターたちに託した。
 開拓地というのは、『CAM実験施設』と暫定的に呼ばれている場所だ。ここにはまだ、最低限寝泊まりできるくらいの環境しかない。
 しかし、そこを拡大すれば、交流や経済の要所となり得る可能性もある。
 八人のハンターたちは、それぞれに思いを胸に秘め、開拓地へやってきたのだった――。

「市場の整備などは腕が鳴りますわね」
 そう言ってみせるのはとあるキャラバンで秘書も務めるコルネ(ka0207)、メガネを時折持ち上げては手元の紙束と見比べる。
 その紙束というのは、以前実験施設を作った際の報告書だ。
「ええ。それに皆が皆、転移門を使えるわけではないですし」
 距離と交通手段を考慮すれば、こういう場所はきっと辺境には複数必要だろう。天央 観智(ka0896)は地図を見ながらため息をつく。リムネラの理念は実現して欲しいものの、現状では難しい問題が山積している。辺境は他の地域に比べても様々なことが難しい状態なのは変わりない。交通の便も、確かに必要な問題だ。
「そういえばドワーフの方々は、ここの建築にも携わったとか」
 レイス(ka1541)がそう尋ねると、ドワーフの大工たちは頷いた。
「あのときはゼロからだったもんだから大変だったが、今回も難しそうですなあ」
 ドワーフの一人がそういうと、レイスは大きな紙を広げる。
「一応、図面の案だ」
 見ると大きめの建物を中心にして、露店のスペースをしっかり確保できるようにしてあったり、馬車置き場や厩舎などの整備までもを考慮されている。
「いずれ街道や標識なども整備したいが……あと、トラブルを収めるための自警団や管理事務所など」
 そう言ってみせると、ジークは頷いた。
「うん、ゆくゆくはそちらの方にも手を出していかないとね」
 インフラや自治のための施設は、現状のままでもずいぶん助かっているらしい。元々人の住まう場所というわけでもなかったことが、ある意味で助けになっているのだ。

「医療設備の方も考えなきゃね……リムネラちゃんは辺境の医療について『遅れている』って表現を使ったけど……おそらく手法も違うと思うの」
 カミーユ・鏑木(ka2479)はリアルブルー出身者だ。思うところが少なからずあるのだろう、そう言って首をかしげるとジークも小さく頷いた。
「そう、ですね……リムネラ様は仰いませんでしたが、いわゆる西洋医学よりももっとプリミティブな手法がとられていることが多いんです。この辺境は」
 ジークもリアルブルー出身者だけに、カミーユの言わんとすることがわかるのだろう。「遅れている」と言うよりも、「発想や手法が違う」というほうが正しい気がする。
「僕も、ハンター兼医者として、多くの人を救えるようになりたい……だから力になれればと思って」
 そう言いながらなにやら取り出したのは、リアルブルー出身だが医術の心得がある少年、カール・フォルシアン(ka3702)。
「こう見えても手先は器用なんです。簡易診療所のイメージを持ってきたんですけど」
 それはイメージ図に近い図面と、それを立体化した模型だった。
「このほうがイメージしやすいかなと思って」
 建築物の中に待合室、診療室、休養室――最低三室、更に加えれば感染症対策の出来る個室も欲しいところだ。更に誰でも受け入れられることを示すために、各部族やユニオンの旗を掲げることを提案する。
「とりあえずは、今ある建物で代用できれば。いずれは別棟を作って、移転の出来るように――と思っています」
 カールの説明に、ジークもゆるく頷く。
「確かに今すぐ大がかりな建物を複数作るよりは良いかも知れないね。あとで、必要そうな資材もピックアップしてくれないかな」
「はい。あと……可能なら、辺境の医療に詳しい人をお招きしたいんですが」
「ああ。それは何とか交渉してみるよ」
 カールの提案は具体的で明確。ジークも好感を持ったようだった。


「ところで」
 ふいと声をかけたのは宮地 楓月(ka3802)、リアルブルー出身の青年だ。
「人を集めるというのは、ちょっとした齟齬から起きるトラブルも増えると言うことだ。笑い話ですめば良いが、深刻な問題に発生することも少なくなかろうし、そうなれば人足も遠のくだろう」
 複雑な家庭環境で育った青年は、年齢よりも大人びてみえる。そんな過去を思い出しての発言だろうか。ジークは彼の言葉を、静かに聞く。
「相互の理解をした上でトラブルを解決する場所があれば良いが、場を設けても当事者が集まるとは限らないし、場合によってはかえって拗れることもあるだろう……というわけで、ここを拠点とした、新聞作りというのは出来ないだろうか?」
 新聞。
 つまり、情報発信源だ。リアルブルーではやや廃れた感のあるメディアではあるが根強い存在感があり、災害の時などは人々の支えにもなったのだ――颯月は力説する。
「なるほど、辺境で各地のニュースを手に入れるのも難しいですしね」
 今まで、余所の話題を聞くのはもっぱらキャラバンたちの口からだった。集会所の一角でそう言うものが作られ、読めるようになれば、認識の共有も難しくなくなるだろう。
「良いアイデアですね。すぐには難しいかも知れませんが、検討してみます」
 ジークも似たような発想自体は持っていたらしい。力強く頷いて、そして微笑んだ。


「そういえば、ユニオンの人たちにも聞いてみたんだけどね」
 エリス・ブーリャ(ka3419)も事前調査をしてきたらしい。辺境の居心地や、定住している人たちの根拠を聞いてきたのだとか。キャラバンを持つ商店などにも、今回の話をそれとなく耳に入れたり、下準備はばっちりと言えよう。
「とりあえず辺境っていうのは、部族のるつぼでしょ? 多民族の集まりなんだし、お互いを知った上での異文化交流は必要だよね」
 それについては颯月の新聞案は優れたものだろう。エリスはそう言って賛同する。
「それに加えて、各部族の簡単な説明があったら、きっと便利だよね」
 部族同士で誤解をしている部分は少なからずあるだろう。そのフォローにもなる。
「あと、人が居心地良くするには、くつろげる環境も必要でしょ?」
 集会所の近くにベンチを置いたり、危険の少ない場所に子どもでも遊べる広場をこしらえたりというのも大事だろう。エリスの力説はまだ続く。しかし、そのどれもが納得いく話だから、大工たちも真剣に聞き入っているのだ。
「あと、美味しくて手軽に食事とか出来るものや場所があれば居座るだろうし会話も弾むでしょー? 名産品や特産品ってどうだろ。あと、まめし」
 まめしとは同盟で見つかった、米のような実をつける植物だ。既にハンターたちの間では話題になっている。
「まめしは、リムネラ様もいずれ栽培できればと思ってらっしゃるようですよ? ハンターからも意見が上がったとなれば、きっとスムーズに開拓も進むのではないかと思います」
 ジークが嬉しそうに言う。既に水面下では同盟ユニオンにも協力を得ているのだとか。植物の根付きにくい環境である辺境でまめしが栽培されれば、きっと大きな変化が生まれるだろう。
「んー……俺は火事や防災を視野に入れて、井戸や物見櫓を作ってもいいかなと考えてるんですけど」
 金欠を何とかするためにと依頼に入ったGacrux(ka2726)は、そう言いながらもどこか物憂げな態度を取っている。人付き合いは形式的にこなす程度の青年であった。
「資材の調達は俺も手伝います。建築の知識もないし、たいした案もないですからね」
 そう言って目を伏せるが、ドワーフ大工たちはとんでもない、と首を横に振った。
「防災に気をかけるのは、自分たちの仕事を残しておくためには大切なことじゃよ。お前さんの心遣い、今すぐは無理でも絶対に活かせるようにしておくからの」
 そう言われて瞬きをくりかえすガクルックス。大工たちからの言葉が胸にしみた。
「無論、手伝いは大歓迎じゃよ」
 豪快に笑う大工たち。
 そろそろ、話し合いも終わる頃合いだ。


 そのころ、ジークに紹介されてやってきた辺境の医師と、カミーユ、そしてカールは、お互いの持っている情報を交換した。
 結果は予想通り。辺境の医療というのは、本当にプリミティブで、そしてリアルブルーから見ればいくつかの過ちも存在していた。
「辺境の子と、各国側の医師が、協力して医療に従事する方が良いかも知れないわね」
 それは辺境の患者が持つ不安を和らげることも出来るし、各国の医療技術を提供することで相互理解を深め、さらなる医療の発展につなげることが出来るかも知れない。
「必要と思われる備品はリストアップしておきました」
 カールが提出した書類には帝国の医療レベルにあわせた医療品が一通り記載されている。すぐにすべてを集めるのは難しいかも知れないが、これだけあれば一通りの治療を行うことが出来るだろう。
「この事業は医学の発展にも役立つはずです。まだ勉強中のではありますが、僕も尽力を尽くしたいです」
 瞳に輝く光は、力強い。辺境の医師も、最初こそ尻込みしていたが、だんだん考え方を改めてきたようだった。
「これが辺境のためになるのだったら、我々も手伝わせて欲しい」
 その部族はかつて、疫病で壊滅の危機に瀕したことがあったのだという。進んだ医療があれば、そのような事態に陥ることも少なかろう――そういう、長い目で見たらしい。その若い男性は、協力することを約束してくれた。


「まずは町としての機能を整えること、それが優先だな」
 レイスはそういうと、ジークに声をかけた。
「ジーク、会員でも何でもいいんだが、あらゆる伝手を使って『拠点での定期市の開催』や『リムネラ嬢がこの辺境地域の皆のためにこの拠点を発達させようとしていること』を噂で良いから流せないか? 地域や種族を問わず」
 つまり、人の集まる場所をリムネラが提供しようとしていることを広めようと言うことだ。商人や好事家に興味をわかせるのはもちろんだし、心ある人ならば参入しやすくなる土台にもなるだろう。更にその中から若手の、各方面の専門家をいずれ連れてこれるようになれば……夢は膨らむ。
「……新しい場所には、新しい風が必要だからな」
 リムネラはその地位で君主に座ると言うつもりはない。あくまで、辺境の活性化――これを目指しているのだ。そのためなら、様々なことをするだろう。無論、リムネラにもなにがしかのもくろみが全くないわけではない。しかし、その実現にどれほど時間がかかるかは、まだ見当もつかないのだ。
「リムネラ様は、いつも辺境のためを思ってくれますしね。疲れてしまわなければ良いんですが」
「まったくだ」
 リムネラをよく思う二人の青年は、笑いあった。


「でも定期市、と言っても……民俗や交通、認識の違いなどから問題が生まれる可能性はありますよね。壁新聞なども大いに使えると思いますけれど、何かそれ以外にも色々考えないと。たとえば、定期市の期間とか」
 ふむ。観智はそう言いながらあごに手を当てる。
「近くならば良いけれど、遠くの人は、ある程度の期間で交代しながら……出張みたいな状態になることも視野に入れないといけませんし。間隔が長ければそれはそれで滞在日数は減るけれど、文化交流の進む機会は……」
 悩みはつきない。やはり、道や宿泊施設の整備も、今後の課題になるだろう。そうなれば、防犯などの施設も一層必要性が増す。つまり段階を踏めばふむほど、やることが増えていくのだ。
「難しく考えすぎなさんな。まずは『場所』がないと何にも始まらん」
 仕事中のドワーフ大工に言われ、観智は苦笑した。
 そう、何をするにもまずは場所が必要なのだ。


「そういえばレイスさんも仰ってますけど、使える伝手は使えるだけ使って、商人を集める準備もしなくてはなりませんわね」
 コルネはてきぱきと資料を集めて話す。
 貨幣流通が浸透していない辺境地域もあることから、商いに長けたものたちには特に説明会を行わなくてなならないだろうと指摘した。貨幣価値に疎いことを良いことに、詐欺が発生したりしたら大問題だからだ。同時に辺境の住人たちには、『だまされたりしないようにするための勉強会』を開く必要もあるだろう。
 そして説明会にすべての商人が参加すると限らない。持ち回りで定期的に行うことで、商人と辺境の住民たちの間に交流が生まれるかも知れないし、相互理解を高める良い機会だろう。
「あと、これは提案なのですが」
 そう切り出して話したのは『開拓のための基金の設立』だ。
 最初は有志からの寄付でかまわないが、最終的にはこの開拓地を自ら回すための簡単な税制のようなかたちにしたい――と。たしかに、いまはまだユニオンなどの協力が必須だが、町として機能するためにはそういう自治の力が必要だ。金勘定については疎いリムネラの補佐を任されているジークも、なるほどとうなる。
「了解しました。また、リムネラ様に相談させてもらいますね」


 アイデアを出し合い、町の発展のための礎を築く――今回はそれが十二分に出来、ハンターたちの協力も相まって、期日内には予定通りの建築物が出来た。
 集会所の脇には談話の出来るベンチなども設置され、簡単ながら厩舎なども作られている。
 既にあった宿泊所を改造して作った診療所にはガクルックスの作ったベッドなども準備され、数日中にはキャラバン商人たちに頼んだ医療器具などもそろうだろう。
 近くの街道にも、開拓地への目印をつけておいた。キャラバンたちもこれで訪れやすくなったはずだ。
「物見櫓なんぞはまたわしらが作っておくぞい。辺境の大工仕事もこれでなかなか需要が多くないからのう」
 ドワーフたちも満足そうに呵々と笑う。
「ずいぶんりっぱなものになりましたね」
 そして誰もが笑顔を浮かべている。
「ここまでくると、この場所もただの開拓地、と呼ぶのにはふさわしくないかも知れません。もちろんまだ手を加えるべき所はあるでしょう。でも、もうただの『開拓地』ではないんです。医療機関や、市場がたつだけの場所は既に確保してある。あとは、認知度を高めること――これですから」
 そう、ここは既に小さいながらも『町』に発展しようとしている。あちらこちらで、その息吹が聞こえてくる。
「リムネラ様にも相談しておきます。ユニオンで、何かしら呼びかけることもできるかも知れませんから――」
 ジークが言った。

 この地は確実に、一歩踏み出した。
 次にその一歩を進めるのは、いつになるのか。
 そう考えると、ハンターたちの胸も震えるのだった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • キャラバンの美人秘書
    コルネ(ka0207
    エルフ|23才|女性|霊闘士
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 愛しい女性と共に
    レイス(ka1541
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 黒豹の漢女
    カミーユ・鏑木(ka2479
    人間(蒼)|28才|男性|闘狩人
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 混沌系アイドル
    エリス・ブーリャ(ka3419
    エルフ|17才|女性|機導師
  • はじめての友達
    カール・フォルシアン(ka3702
    人間(蒼)|13才|男性|機導師

  • 宮地 楓月(ka3802
    人間(蒼)|16才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 開拓会議(相談卓)
カール・フォルシアン(ka3702
人間(リアルブルー)|13才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/01/24 00:29:53
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/20 17:51:49