ゲスト
(ka0000)
知追う者、バンジーする
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/05/27 07:30
- 完成日
- 2019/05/30 17:58
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●観光客を呼び込む?
エトファリカ連邦国、天ノ都から徒歩で二日くらいの場所にある地域・師岬。畑作りも動きだし商売も始める人も出てきた。
「外からのお客様用の宿があっても、それほど人がきませんね」
大江 紅葉は宿を運営したいという人もいた為、それを考える。この先にどこか道があればいいのだが、他に集落があるわけではない。
紅葉は師匠が都に入ったのと入れ替えに戻ってきた。
そこで、里の今後についてなど工程を考えたり、承認したりとする必要のあることを対処する運びになっていた。
「潮干狩りもいいですが、そんなに干潟がありませんし、たくさん取れません」
紅葉は試しに掘って、全部逃がした。
「温泉が出るわけでもありませんし、釣り場など論外、里で食べるものがなくなります」
紅葉は温泉が出ればいいのにと少し考えた。温泉の原理を考えると悩ましい。冷泉ならあるかもしれないが、温泉とするには燃料もいる。それをどこから調達するかの問題が生じる。
「リアルブルーの観光と言うのを考えてみましょう」
集めた情報から何かよい物はないかと探す。今ここにあるものを使い、初期投資が少なくて済むものが良い。
「とりあえず、できそうなのは、トレッキングやアスレチックですね……アスレチックはよさそうですね……子どもの遊び場にもなり、大人も体力をつけることができるかもしれません」
これならば、木や竹、ロープや滑車があればできそうだ。
「あとは、バンジージャンプ」
これも、流用できそうなものがあった。
「行けます、これで行けます! 高いところ探して、パーンと飛び降りるだけ! そして、安全対策費や人件費を頂けば!」
現実的な計算を始める。
早速、紅葉は建設用地を探しに出かけることにした。しかし、単独で歩くなと口酸っぱく言われているため、玄関で足止めを食らった。
頬を膨らませて待っているとやってきたのは松永 光頼とその弟の光月。
「……その顔はやめましょう……。紅葉どの、散歩と聞きましたので」
光頼は紅葉の表情に飽きれていた。さすがに紅葉はすぐにやめる。
「……いや、兄上だけいけばいいと思うんですが」
「なぜだい? 光月も一緒に行こう?」
光月が紅葉のことを異性として気にしていると光頼が勘違いは解消されていない。一方で、光頼の心は松永家の跡取りである自分が紅葉が好きかもしれないという気持ちで揺れている。
「お二人がいれば、心強いです!」
紅葉は問答無用で出かける。
(なぜかお二人、ギクシャクしているのです)
紅葉は二人の様子のおかしいことには気づいている。理由が自分だとは思わない。
そして、師岬の一番隅っこまでやってきた。そこは切り立った崖になっており、眼下には海が広がる。
「崖です!」
「紅葉どの、端まで行くと危ないですよ!」
光頼は紅葉に声をかけるが、登る途中で止まる。崖の下が見えそうなところには近づいていない。
「大丈夫ですよ」
紅葉はわくわくしながら四つん這いになって崖の端まで向かった。
「……ん?」
光月は気付いた、兄が真っ青だということに。紅葉を止めたいと思っているのと、逃げたいと思っているのが同居している態勢だ。
「……兄上……まさか、高いところ、駄目ですか?」
「……ぐっ」
「ああ……」
紅葉の方は松永兄弟の会話など海の音で消され気づかないまま、覗き込んでいる。
「あああ、こ、このくぼみ、この高さ! バンジージャンプに良いと思います!」
キラキラとした顔で紅葉が光頼たちを見た。
「決定です! バンジージャンプ台を作ります! 観光の目玉にするのです」
目玉も何も、それしかないけれど。
「へ?」
「は?」
松永兄弟は意味が分からないため、紅葉の様子をうかがうだけだった。そもそも、紅葉が歩き回りたいと言った理由を聞いていないのだ。
●試し
バンジージャンプ台は紅葉の指示できちんとしたものが作られた。くぼみがあるとはいえ、崖に激突は恐ろしいため、張り出しを作る。そこに、伸び縮するロープを括り付け、人に括り付ける。むろん、装備についてはリアルブルーの内容を確認して、制作した。
「安全確認のためにやってみましょう!」
紅葉がワクワクしながら装着する。
「ま、待ってください! 宗主、何やっているんですか!」
家臣たちが慌てて止める。
光頼は止めたいが止められない自分を責め、光月は考えすぎて行動できない。
「なぜ、やってはいけないのです! 危なくないものを作ったのです。だからこそ、初バンジーは作った私が飛ぶべきです!」
安全という自負があるから正しい意見。
ここの地域の代官なり何か任される可能性がある、偉い人となる人物がいきなりやることでもないという意見もある。
煮え切らない家臣と松永兄弟を前に、紅葉は解決策を考えた。
「あ、あれは!」
紅葉は見ていた方向を指さした。家臣はつられて見る。
光頼はそっちを向きかけたが、はっとして紅葉の方を見た。しかし、すでに紅葉はひょいと飛んでいる。
「紅葉どのっ!」
「きゃああああああ、あはははははははははははは」
「宗主っ!?」
家臣たちの悲鳴が響き渡る。
無事初バンジーは終わる。
紅葉がひっくり返ってぷらーんとなっているのを、下で待っていた人たちが回収する。
下で待機していた人たちも、まさか紅葉が降ってくるとは思っていなかった。でも、本人が楽しそうなので良かったが、見ているほうは怖かった。
「……すまない、光月……わ、私が……」
「いえ、兄上……人間、得手不得手があるのです……まさか、この年まで兄上が高所恐怖症だと知らなかったです」
「私だって知らなかった……意識したことなかったんだが……」
これまで意識的に高いところに登ったことはなかった。戦いで高いところに登っても勢いがあって気づいていないだけだったかもしれない。
「もっと早く……私が言い出せば……」
「すまない」
松永兄弟は互いに現実を見て、しおれていたのだった。
●ポスター
「師岬で、叫べ」
というキャッチフレーズの字まみれのポスターがハンターオフィスに貼られた。
バンジージャンプについての説明や、師岬へのルートなどが記載されている。
宿の数は限りがあるため、キャンプ場の整備もしているという。
「ハンターなんて、切った張ったの世界だし、今じゃ世界を股にかけ、空を飛んでますもんね! こんな、バンジージャンプなんていうのは子供だましの遊具でしょう」
「そうよね……あたしたちみたいな一般人ならともかく……」
職員たちは話し合っていた。
「それこそ、プロポーズしたりするんでしょ?」
「地域によっては大人になった証しとしてするって聞いたわよ」
「勇気のしるしだとか!」
職員たちの話は広がっていった。
ハンターだって人間で、恐怖の対象はそれぞれで、バンジージャンプも命がけの大変なものだと気づいていなかった。
エトファリカ連邦国、天ノ都から徒歩で二日くらいの場所にある地域・師岬。畑作りも動きだし商売も始める人も出てきた。
「外からのお客様用の宿があっても、それほど人がきませんね」
大江 紅葉は宿を運営したいという人もいた為、それを考える。この先にどこか道があればいいのだが、他に集落があるわけではない。
紅葉は師匠が都に入ったのと入れ替えに戻ってきた。
そこで、里の今後についてなど工程を考えたり、承認したりとする必要のあることを対処する運びになっていた。
「潮干狩りもいいですが、そんなに干潟がありませんし、たくさん取れません」
紅葉は試しに掘って、全部逃がした。
「温泉が出るわけでもありませんし、釣り場など論外、里で食べるものがなくなります」
紅葉は温泉が出ればいいのにと少し考えた。温泉の原理を考えると悩ましい。冷泉ならあるかもしれないが、温泉とするには燃料もいる。それをどこから調達するかの問題が生じる。
「リアルブルーの観光と言うのを考えてみましょう」
集めた情報から何かよい物はないかと探す。今ここにあるものを使い、初期投資が少なくて済むものが良い。
「とりあえず、できそうなのは、トレッキングやアスレチックですね……アスレチックはよさそうですね……子どもの遊び場にもなり、大人も体力をつけることができるかもしれません」
これならば、木や竹、ロープや滑車があればできそうだ。
「あとは、バンジージャンプ」
これも、流用できそうなものがあった。
「行けます、これで行けます! 高いところ探して、パーンと飛び降りるだけ! そして、安全対策費や人件費を頂けば!」
現実的な計算を始める。
早速、紅葉は建設用地を探しに出かけることにした。しかし、単独で歩くなと口酸っぱく言われているため、玄関で足止めを食らった。
頬を膨らませて待っているとやってきたのは松永 光頼とその弟の光月。
「……その顔はやめましょう……。紅葉どの、散歩と聞きましたので」
光頼は紅葉の表情に飽きれていた。さすがに紅葉はすぐにやめる。
「……いや、兄上だけいけばいいと思うんですが」
「なぜだい? 光月も一緒に行こう?」
光月が紅葉のことを異性として気にしていると光頼が勘違いは解消されていない。一方で、光頼の心は松永家の跡取りである自分が紅葉が好きかもしれないという気持ちで揺れている。
「お二人がいれば、心強いです!」
紅葉は問答無用で出かける。
(なぜかお二人、ギクシャクしているのです)
紅葉は二人の様子のおかしいことには気づいている。理由が自分だとは思わない。
そして、師岬の一番隅っこまでやってきた。そこは切り立った崖になっており、眼下には海が広がる。
「崖です!」
「紅葉どの、端まで行くと危ないですよ!」
光頼は紅葉に声をかけるが、登る途中で止まる。崖の下が見えそうなところには近づいていない。
「大丈夫ですよ」
紅葉はわくわくしながら四つん這いになって崖の端まで向かった。
「……ん?」
光月は気付いた、兄が真っ青だということに。紅葉を止めたいと思っているのと、逃げたいと思っているのが同居している態勢だ。
「……兄上……まさか、高いところ、駄目ですか?」
「……ぐっ」
「ああ……」
紅葉の方は松永兄弟の会話など海の音で消され気づかないまま、覗き込んでいる。
「あああ、こ、このくぼみ、この高さ! バンジージャンプに良いと思います!」
キラキラとした顔で紅葉が光頼たちを見た。
「決定です! バンジージャンプ台を作ります! 観光の目玉にするのです」
目玉も何も、それしかないけれど。
「へ?」
「は?」
松永兄弟は意味が分からないため、紅葉の様子をうかがうだけだった。そもそも、紅葉が歩き回りたいと言った理由を聞いていないのだ。
●試し
バンジージャンプ台は紅葉の指示できちんとしたものが作られた。くぼみがあるとはいえ、崖に激突は恐ろしいため、張り出しを作る。そこに、伸び縮するロープを括り付け、人に括り付ける。むろん、装備についてはリアルブルーの内容を確認して、制作した。
「安全確認のためにやってみましょう!」
紅葉がワクワクしながら装着する。
「ま、待ってください! 宗主、何やっているんですか!」
家臣たちが慌てて止める。
光頼は止めたいが止められない自分を責め、光月は考えすぎて行動できない。
「なぜ、やってはいけないのです! 危なくないものを作ったのです。だからこそ、初バンジーは作った私が飛ぶべきです!」
安全という自負があるから正しい意見。
ここの地域の代官なり何か任される可能性がある、偉い人となる人物がいきなりやることでもないという意見もある。
煮え切らない家臣と松永兄弟を前に、紅葉は解決策を考えた。
「あ、あれは!」
紅葉は見ていた方向を指さした。家臣はつられて見る。
光頼はそっちを向きかけたが、はっとして紅葉の方を見た。しかし、すでに紅葉はひょいと飛んでいる。
「紅葉どのっ!」
「きゃああああああ、あはははははははははははは」
「宗主っ!?」
家臣たちの悲鳴が響き渡る。
無事初バンジーは終わる。
紅葉がひっくり返ってぷらーんとなっているのを、下で待っていた人たちが回収する。
下で待機していた人たちも、まさか紅葉が降ってくるとは思っていなかった。でも、本人が楽しそうなので良かったが、見ているほうは怖かった。
「……すまない、光月……わ、私が……」
「いえ、兄上……人間、得手不得手があるのです……まさか、この年まで兄上が高所恐怖症だと知らなかったです」
「私だって知らなかった……意識したことなかったんだが……」
これまで意識的に高いところに登ったことはなかった。戦いで高いところに登っても勢いがあって気づいていないだけだったかもしれない。
「もっと早く……私が言い出せば……」
「すまない」
松永兄弟は互いに現実を見て、しおれていたのだった。
●ポスター
「師岬で、叫べ」
というキャッチフレーズの字まみれのポスターがハンターオフィスに貼られた。
バンジージャンプについての説明や、師岬へのルートなどが記載されている。
宿の数は限りがあるため、キャンプ場の整備もしているという。
「ハンターなんて、切った張ったの世界だし、今じゃ世界を股にかけ、空を飛んでますもんね! こんな、バンジージャンプなんていうのは子供だましの遊具でしょう」
「そうよね……あたしたちみたいな一般人ならともかく……」
職員たちは話し合っていた。
「それこそ、プロポーズしたりするんでしょ?」
「地域によっては大人になった証しとしてするって聞いたわよ」
「勇気のしるしだとか!」
職員たちの話は広がっていった。
ハンターだって人間で、恐怖の対象はそれぞれで、バンジージャンプも命がけの大変なものだと気づいていなかった。
リプレイ本文
●準備万端
大江 紅葉(kz0163)はバンジージャンプの台のオープン日を華々しく迎える準備をしていた。華々しくというけれども、手作りの旗が入り口に掲げられているだけであるが、それを作成するのを一人でしたらしい。
「どれだけ皆さんが楽しんでくれるのが一番大切です」
ワクワクしている紅葉の側で、高所恐怖症が露呈した松永 光頼は青い顔で一応同意している。
「私は下で警備の仕事に就きます」
光頼は高所に引っ張られる前に自分で役割を見つけておいた。
「私がその他手伝いをします」
光頼の弟の光月が立候補する。
「よろしくお願いしますね。あ、お二人はやってみないのですか?」
紅葉が話を向けた。
「ひっ!?」
「あっ!」
二人の反応に紅葉が目を瞬く。
「あ、いや、そろそろ時間ですね」
光頼が逃げた。
確かに時間だったため、紅葉は追及はしなかった。
●サクラ・エルフリード(ka2598)のジャンプ
サクラ・エルフリードは変わった観光名所ができたということでやってきた。
師岬はあちこちで家を建てたり、道を補強したり、農作業をしたりということで、せわしない。観光地の雰囲気はない。
「活気には満ちているのですよね」
バンジージャンプをやっている場所に向かった。
非常に殺風景だった。
岩場、組まれた足場があるだけ。
見晴らしはいいけれども、見えるのは青い空、青い海。陸地を見れば、緑豊かな土地とは程遠く、土や岩が見える。
やる気のある紅葉と困惑気味に手伝う里の人がいた。
「いらっしゃいましたー。ささ、どうぞ、こちらで準備をしてくださいね」
「これが観光名所ですか……」
「……」
「ん?」
「……あ、いえ、何でもないです」
「んーーーーー」
紅葉がじっと見つめる。
考えていることを見透かされるようで気をそらさないといけない気がするかもしれない。
「いえ、何でもないです……。ものは試しですし、やってみないとですね」
「はい、是非ともお試しください!」
紅葉がいそいそと準備を始める。
サクラはジャケットを羽織り、足にがっちりと固定されるロープや伸縮性に富んだ紐。
安全装置は足の方が主らしい。ジャケットの方もきちんと紐に固定されており、もしもの時の設計はしっかりしているとわかる。
「ここから飛ぶんですね」
そこから見て、飛び降りることについていろいろ思うことはあった。それは飲み込んでおく。
もし、紐が切れても大丈夫なのだろうと考える。海の深さがどの程度か分からないが、安全を考えていないわけはないだろう。
「それでは行きます……」
サクラは躊躇なく飛んだ。
静かに飛んだ。安全が確保されているのだから騒ぐことはないと考えていた。
なお、それを言ってくれると紅葉は絶対喜ぶ。
途中で見えた風景は特に来るまでに見た風景とも変わらない。
ただ、何も考えないで落下するというのは、音や、体にかかる力が違うとう感じることはあった。
「……なるほど」
逆さ吊りでぶらーんとなっている。
「……ぁ、意外と面白いかもです……」
係の人がサクラを回収してくれ、地面に降り立った。
「……後でもう一回……」
周囲が殺風景なのはあれだけど、バンジージャンプ自体は面白いかもしれないと思ったのだった
●高瀬 未悠(ka3199)とユメリア(ka7010)のジャンプ
高瀬 未悠とユメリアは大親友。珍しいもがあるということで足を伸ばしてきた。
実際を見るまでは特に怖くはなかった。しかし、バンジージャンプ台があるところに向かうと、さすがに震えてくる。
「大丈夫よ、ユメリア、私がついているから」
「ええ、まだこのような所だというのに怯えている場合ではないですね」
未悠は励ますように微笑み、ユメリアと手をつないで上がっていく。
紅葉が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませー。お二人様ですねー」
出迎えられ、ジャンプのための準備が整っていく。
逃げ道が見えない。いや、断ればいいのだが、せっかく来たからという気持ちもあったり複雑だ。
「そ、そうでした。この辺りで甘味処はありますか?」
未悠の確認に、紅葉は「一応、里にできました」と教えてくれる。
それぞれ準備を始める。戦闘のための防具を付けることもある二人だが、安全のための簡素な道具がずっしり重いようにも、異様に軽いようにも思えた。
「飛ぶ時はバラバラですよ、危ないですから」
「え」
思わず二人は反応した。
「いや、だって、二人で一緒に飛んだ場合、絡まったり、ぶつかったりしますよ? だから、一名さま用です」
説明された二人はほっとする。ほっとするが、これから飛ぶことには変わりがない。
二人は試しに、飛び出し台に寄る。
(た、高いて……海に吸い込まれそうだわ)
未悠の微笑は凍った。
ユメリアは硬直した。そして、静かに震える。
未悠はそれに気づいてそっと抱きしめた。ユメリアはしっかり未悠を抱きしめ震える。
二人で震える。
「ユメリア……私も怖い……すごく怖い」
「そうですよね、恐いものは怖いですよね」
未悠とユメリアは互いに状況を認める。
「でも、あなたと一緒なら、頑張れる。見ていてね、私がお手本になるわ……!」
未悠は意を決する。
「あなたの勇気が私は大好きです。その気持ちで私も頑張れる」
「うん、ありがとう! 勇気を出すわ!」
未悠は台の先端に一歩、また一歩と進む。
風の音、波の音、紅葉が心配している声、その他雑音が聞こえてくる。その中で未悠にはユメリアからの応援はしっかりと聞こえた。
「女は度胸!」
未悠は飛んだ。
「ひぃやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっつ!!!!」
未悠は悲鳴とともに無事ジャンプを終えた。魂の抜けたような状況の彼女は保護され、地面に座る。
飛び出し台の上に残ったユメリアは唾を飲み込む。未悠の励ましの言葉はしっかりと胸の奥に刻まれている。
悲鳴に上書きされそうだったけれども。
「そうです、未悠さんは、もっと怖く辛い思いをしてきたというのに……これくらいでっ!」
未悠の勇気を見たのだから、次に頑張るのは自分だと強く考え、一歩、また一歩と踏み出し――たつもりで実際は一歩も動いていなかった。
「無理はしてはいけませんよ」
紅葉が監視員らしくきちんと助言をした。
「ユメリア、大丈夫?」
下の方からユメリアを呼ぶ声がする。風と波の音がすごいけれど、未悠の声はよく聞こえる。
ユメリアはカッと目を見開いた。
「怖いですけれども、勇気の証です。未悠さんからもらった勇気があれば……」
ユメリアは足を前に出した。
だっと走ると飛んだ。
「未悠さんの幸せを私も作る! 幸せな姿を見届ける! 独りにさせないーーーーーーっ!!」
叫び、落下し、逆さ吊りになった。
ユメリアのジャンプを見つめていた未悠は固唾をのみ、こぶしを握り締める。彼女の決意に感激を覚えた。
地面に立ったユメリアに、未悠は駆けよる。
そして、地面に降りたすがすがしい顔をしているユメリアを抱きしめる。
「ユメリア、とっても素敵だったわ。頑張ったご褒美に甘いものを食べに……」
「もう一回やっていいですか?」
「え? ま、またやるの?」
未悠の声が、裏返る。
「はい」
ユメリアはキラキラ輝く笑顔だった。
未悠は止めるためにどうするか、でも止めるのもよくないと色々考えている間に、二度目に突入するのだった。
「いーーーーいやああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃーーーーーーーーーーーほーーーーーーーーーーー♪」
それぞれ気持ちの現れた声とともに落下した。
甘味どころではなかった。
●レイア・アローネ(ka4082)のジャンプ
「バンジーか……実はやったことないんだよな……」
レイア・アローネも興味はあった。
里の様子を眺めた上で、バンジー台に上がっていく。バンジーをする人を見ていると、無言だったり、激しい悲鳴だったり、それぞれの心情が詰まった落下がある。
「割と高いところから飛び降りることはあるんだが……」
レイアはこれまでの人生を振り返り、ここまで高いところはないかと考える。
軽やかに道を登っていく。
「いらっしゃいませ!」
「うむ。元気そうだな」
「おかげさまです。レイアさんもお元気そうで良かったです」
挨拶を交わした後、バンジージャンプの準備に入る。
ジャケットや足につける紐を見ながら、これに命を預けると考えると怖くもある。一方でこの最低限度の装備に最大限の安全が詰め込まれていると考えるとすごい作りだと感心する。
見下ろすと海だ。高い波が上がることは特になく、穏やかな海だ。
「それにしても……ここまで高いところから垂直落下か……」
ぶつからないことということも考えられているため、飛び出し台の真下には崖も壁も何もない。
台の先端でまっすぐ立つと、青い空と海が目に入る。むしろ、それしかないが、山育ちには珍しい景色。
「……やってみよう」
レイアは飛び出した。
安全のために腕はこうしろと言われたポーズのまま落下する。その間に、何か言った方がいいのかなど考えるが、考えている間に落下の止まる衝撃が来た。
「……うわぁ! え? もう、おしまい?」
考えている間に終わってしまった。
レイアは陸地に上がってから体がぞくぞくしていた。
怖いとともに爽快感はあった。
安全が担保されているから楽しめるのだと感じる。
「……まずい、これはくせになるかも……ちょっと怖いけど楽しい……!」
レイアの表情がパァと輝く。
「もう一回する? どうする?」
スタート地点を見上げ、考えるのだった。
●穂積 智里(ka6819)のジャンプ
「なんでこんなもの、作ったんですか、紅葉さん……」
穂積 智里は現地にやってきたけれども、恐怖で足が止まってしまう。
「やはり、珍しさは重要だと思います」
きっぱりと言う紅葉。
「確かに珍しかもしれません! しかし、もっと他の何かがあるじゃないですか」
「ありますか?」
智里は「ある」と答えてもなかなかいい答えが出せない。
「だいたい、バンジージャンプと言えば、世界の怖い映像で、紐が抜けて地面に激突したり、その人の体重が重すぎてロープが伸びすぎて地面に激突したり……。そんな怖い映像がリアルブルーじゃゴロゴロあったんですよ!」
「大丈夫です。下は海です、水深しっかりある海です。私の計算ではここから落ちても地面に激突する確率はありません」
「水面も落ちれば十分痛いです」
紅葉は何も言わず笑顔のまま口を一文字に結んだ。
「なんで、なんでこんな怖いものをここに作ったんですか、紅葉さん!」
智里に対して、紅葉は何か言いかけた後、妙な笑顔で「大丈夫ですよー」と言う。
「待ってください、その表情!」
智里は涙目で揺さぶる、安全具の装着手伝っていた紅葉の腕をつかんで。
「紅葉さんっ! 下で下着と古着を売りましょう! 私、私……無事に下りられる未来が浮かびません!」
紅葉が智里の言った意味を吟味する。
「なるほど! 粗相をしてしまった人のために、着替えを用意しておけば……それはよいサービスです!」
「え? あれ?」
智里が何を言ったか思い出そうとした。頭の中が真っ白になり、思考が空回りし始める。
「さてさて、智里さん……助言は嬉しいですが、ここにきて、ここまで装着してくださって、結局、飛ぶのですか、飛ばないのですか?」
「うっ……で、でも……」
「どうするのです? やめる、という選択も大切です。無理強いはしませんよ。ただ、私が作った道具に対して風評被害だけはやめていただけますか?」
動揺する智里に紅葉がじりじりと迫る、笑顔で。
「そそそその件は、そういう映像があるということで……ごめんなさい!」
智里は逃げるように飛んだ。
紅葉は上から見下ろしている。まるで、被害者を突き落とした犯人が確認するかのように……。
「ひ、あ、あああああ……むむむ、無理、無理ですーーーーーーーーーーーー!」
智里は途中で【ジェットブーツ】と【アルケミックフライト】で逃亡を試みた。
なお、安全のための道具を外すことをしないと逃げられない。結局、スキル効果時間内にうまくできず逆さ吊りになった。
下してもらった後、ぺたりと地面に座り込む。
「飛行ならどんな高さでも行けますけど……落下は……無理」
その姿を光頼が同情の視線で見つめているのだった。
●結論
「はまる人ははまるようですね」
紅葉がハンターの動向で分析した。何度かしていく人もいた。
来てくれるだけでも観光地化に何が必要かもわかってくる。
「これはこのまま続行しましょう。あとは、観光地ぽくするだけですね」
もらった案を考え、紅葉は嬉しそうだった。
「あ、兄上、人それぞれですから」
「う、うむ」
ぼそぼそと光月は光頼を慰める。
「ところで、光頼殿は飛びませんか?」
紅葉が大変いい笑顔で尋ねてきた。
光頼は答えられず、冷や汗を滝のように流し、光月は言葉を探して右往左往していた。
とりあえず、柴犬が「撫でていいぞ」と紅葉に押し売りに来たため、うやむやになった。
「……あ、兄上……正直に早く言ったほうがいいと思います」
「う、うむ……」
師岬のとある日は穏やかに過ぎるのだった。
大江 紅葉(kz0163)はバンジージャンプの台のオープン日を華々しく迎える準備をしていた。華々しくというけれども、手作りの旗が入り口に掲げられているだけであるが、それを作成するのを一人でしたらしい。
「どれだけ皆さんが楽しんでくれるのが一番大切です」
ワクワクしている紅葉の側で、高所恐怖症が露呈した松永 光頼は青い顔で一応同意している。
「私は下で警備の仕事に就きます」
光頼は高所に引っ張られる前に自分で役割を見つけておいた。
「私がその他手伝いをします」
光頼の弟の光月が立候補する。
「よろしくお願いしますね。あ、お二人はやってみないのですか?」
紅葉が話を向けた。
「ひっ!?」
「あっ!」
二人の反応に紅葉が目を瞬く。
「あ、いや、そろそろ時間ですね」
光頼が逃げた。
確かに時間だったため、紅葉は追及はしなかった。
●サクラ・エルフリード(ka2598)のジャンプ
サクラ・エルフリードは変わった観光名所ができたということでやってきた。
師岬はあちこちで家を建てたり、道を補強したり、農作業をしたりということで、せわしない。観光地の雰囲気はない。
「活気には満ちているのですよね」
バンジージャンプをやっている場所に向かった。
非常に殺風景だった。
岩場、組まれた足場があるだけ。
見晴らしはいいけれども、見えるのは青い空、青い海。陸地を見れば、緑豊かな土地とは程遠く、土や岩が見える。
やる気のある紅葉と困惑気味に手伝う里の人がいた。
「いらっしゃいましたー。ささ、どうぞ、こちらで準備をしてくださいね」
「これが観光名所ですか……」
「……」
「ん?」
「……あ、いえ、何でもないです」
「んーーーーー」
紅葉がじっと見つめる。
考えていることを見透かされるようで気をそらさないといけない気がするかもしれない。
「いえ、何でもないです……。ものは試しですし、やってみないとですね」
「はい、是非ともお試しください!」
紅葉がいそいそと準備を始める。
サクラはジャケットを羽織り、足にがっちりと固定されるロープや伸縮性に富んだ紐。
安全装置は足の方が主らしい。ジャケットの方もきちんと紐に固定されており、もしもの時の設計はしっかりしているとわかる。
「ここから飛ぶんですね」
そこから見て、飛び降りることについていろいろ思うことはあった。それは飲み込んでおく。
もし、紐が切れても大丈夫なのだろうと考える。海の深さがどの程度か分からないが、安全を考えていないわけはないだろう。
「それでは行きます……」
サクラは躊躇なく飛んだ。
静かに飛んだ。安全が確保されているのだから騒ぐことはないと考えていた。
なお、それを言ってくれると紅葉は絶対喜ぶ。
途中で見えた風景は特に来るまでに見た風景とも変わらない。
ただ、何も考えないで落下するというのは、音や、体にかかる力が違うとう感じることはあった。
「……なるほど」
逆さ吊りでぶらーんとなっている。
「……ぁ、意外と面白いかもです……」
係の人がサクラを回収してくれ、地面に降り立った。
「……後でもう一回……」
周囲が殺風景なのはあれだけど、バンジージャンプ自体は面白いかもしれないと思ったのだった
●高瀬 未悠(ka3199)とユメリア(ka7010)のジャンプ
高瀬 未悠とユメリアは大親友。珍しいもがあるということで足を伸ばしてきた。
実際を見るまでは特に怖くはなかった。しかし、バンジージャンプ台があるところに向かうと、さすがに震えてくる。
「大丈夫よ、ユメリア、私がついているから」
「ええ、まだこのような所だというのに怯えている場合ではないですね」
未悠は励ますように微笑み、ユメリアと手をつないで上がっていく。
紅葉が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませー。お二人様ですねー」
出迎えられ、ジャンプのための準備が整っていく。
逃げ道が見えない。いや、断ればいいのだが、せっかく来たからという気持ちもあったり複雑だ。
「そ、そうでした。この辺りで甘味処はありますか?」
未悠の確認に、紅葉は「一応、里にできました」と教えてくれる。
それぞれ準備を始める。戦闘のための防具を付けることもある二人だが、安全のための簡素な道具がずっしり重いようにも、異様に軽いようにも思えた。
「飛ぶ時はバラバラですよ、危ないですから」
「え」
思わず二人は反応した。
「いや、だって、二人で一緒に飛んだ場合、絡まったり、ぶつかったりしますよ? だから、一名さま用です」
説明された二人はほっとする。ほっとするが、これから飛ぶことには変わりがない。
二人は試しに、飛び出し台に寄る。
(た、高いて……海に吸い込まれそうだわ)
未悠の微笑は凍った。
ユメリアは硬直した。そして、静かに震える。
未悠はそれに気づいてそっと抱きしめた。ユメリアはしっかり未悠を抱きしめ震える。
二人で震える。
「ユメリア……私も怖い……すごく怖い」
「そうですよね、恐いものは怖いですよね」
未悠とユメリアは互いに状況を認める。
「でも、あなたと一緒なら、頑張れる。見ていてね、私がお手本になるわ……!」
未悠は意を決する。
「あなたの勇気が私は大好きです。その気持ちで私も頑張れる」
「うん、ありがとう! 勇気を出すわ!」
未悠は台の先端に一歩、また一歩と進む。
風の音、波の音、紅葉が心配している声、その他雑音が聞こえてくる。その中で未悠にはユメリアからの応援はしっかりと聞こえた。
「女は度胸!」
未悠は飛んだ。
「ひぃやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっつ!!!!」
未悠は悲鳴とともに無事ジャンプを終えた。魂の抜けたような状況の彼女は保護され、地面に座る。
飛び出し台の上に残ったユメリアは唾を飲み込む。未悠の励ましの言葉はしっかりと胸の奥に刻まれている。
悲鳴に上書きされそうだったけれども。
「そうです、未悠さんは、もっと怖く辛い思いをしてきたというのに……これくらいでっ!」
未悠の勇気を見たのだから、次に頑張るのは自分だと強く考え、一歩、また一歩と踏み出し――たつもりで実際は一歩も動いていなかった。
「無理はしてはいけませんよ」
紅葉が監視員らしくきちんと助言をした。
「ユメリア、大丈夫?」
下の方からユメリアを呼ぶ声がする。風と波の音がすごいけれど、未悠の声はよく聞こえる。
ユメリアはカッと目を見開いた。
「怖いですけれども、勇気の証です。未悠さんからもらった勇気があれば……」
ユメリアは足を前に出した。
だっと走ると飛んだ。
「未悠さんの幸せを私も作る! 幸せな姿を見届ける! 独りにさせないーーーーーーっ!!」
叫び、落下し、逆さ吊りになった。
ユメリアのジャンプを見つめていた未悠は固唾をのみ、こぶしを握り締める。彼女の決意に感激を覚えた。
地面に立ったユメリアに、未悠は駆けよる。
そして、地面に降りたすがすがしい顔をしているユメリアを抱きしめる。
「ユメリア、とっても素敵だったわ。頑張ったご褒美に甘いものを食べに……」
「もう一回やっていいですか?」
「え? ま、またやるの?」
未悠の声が、裏返る。
「はい」
ユメリアはキラキラ輝く笑顔だった。
未悠は止めるためにどうするか、でも止めるのもよくないと色々考えている間に、二度目に突入するのだった。
「いーーーーいやああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃーーーーーーーーーーーほーーーーーーーーーーー♪」
それぞれ気持ちの現れた声とともに落下した。
甘味どころではなかった。
●レイア・アローネ(ka4082)のジャンプ
「バンジーか……実はやったことないんだよな……」
レイア・アローネも興味はあった。
里の様子を眺めた上で、バンジー台に上がっていく。バンジーをする人を見ていると、無言だったり、激しい悲鳴だったり、それぞれの心情が詰まった落下がある。
「割と高いところから飛び降りることはあるんだが……」
レイアはこれまでの人生を振り返り、ここまで高いところはないかと考える。
軽やかに道を登っていく。
「いらっしゃいませ!」
「うむ。元気そうだな」
「おかげさまです。レイアさんもお元気そうで良かったです」
挨拶を交わした後、バンジージャンプの準備に入る。
ジャケットや足につける紐を見ながら、これに命を預けると考えると怖くもある。一方でこの最低限度の装備に最大限の安全が詰め込まれていると考えるとすごい作りだと感心する。
見下ろすと海だ。高い波が上がることは特になく、穏やかな海だ。
「それにしても……ここまで高いところから垂直落下か……」
ぶつからないことということも考えられているため、飛び出し台の真下には崖も壁も何もない。
台の先端でまっすぐ立つと、青い空と海が目に入る。むしろ、それしかないが、山育ちには珍しい景色。
「……やってみよう」
レイアは飛び出した。
安全のために腕はこうしろと言われたポーズのまま落下する。その間に、何か言った方がいいのかなど考えるが、考えている間に落下の止まる衝撃が来た。
「……うわぁ! え? もう、おしまい?」
考えている間に終わってしまった。
レイアは陸地に上がってから体がぞくぞくしていた。
怖いとともに爽快感はあった。
安全が担保されているから楽しめるのだと感じる。
「……まずい、これはくせになるかも……ちょっと怖いけど楽しい……!」
レイアの表情がパァと輝く。
「もう一回する? どうする?」
スタート地点を見上げ、考えるのだった。
●穂積 智里(ka6819)のジャンプ
「なんでこんなもの、作ったんですか、紅葉さん……」
穂積 智里は現地にやってきたけれども、恐怖で足が止まってしまう。
「やはり、珍しさは重要だと思います」
きっぱりと言う紅葉。
「確かに珍しかもしれません! しかし、もっと他の何かがあるじゃないですか」
「ありますか?」
智里は「ある」と答えてもなかなかいい答えが出せない。
「だいたい、バンジージャンプと言えば、世界の怖い映像で、紐が抜けて地面に激突したり、その人の体重が重すぎてロープが伸びすぎて地面に激突したり……。そんな怖い映像がリアルブルーじゃゴロゴロあったんですよ!」
「大丈夫です。下は海です、水深しっかりある海です。私の計算ではここから落ちても地面に激突する確率はありません」
「水面も落ちれば十分痛いです」
紅葉は何も言わず笑顔のまま口を一文字に結んだ。
「なんで、なんでこんな怖いものをここに作ったんですか、紅葉さん!」
智里に対して、紅葉は何か言いかけた後、妙な笑顔で「大丈夫ですよー」と言う。
「待ってください、その表情!」
智里は涙目で揺さぶる、安全具の装着手伝っていた紅葉の腕をつかんで。
「紅葉さんっ! 下で下着と古着を売りましょう! 私、私……無事に下りられる未来が浮かびません!」
紅葉が智里の言った意味を吟味する。
「なるほど! 粗相をしてしまった人のために、着替えを用意しておけば……それはよいサービスです!」
「え? あれ?」
智里が何を言ったか思い出そうとした。頭の中が真っ白になり、思考が空回りし始める。
「さてさて、智里さん……助言は嬉しいですが、ここにきて、ここまで装着してくださって、結局、飛ぶのですか、飛ばないのですか?」
「うっ……で、でも……」
「どうするのです? やめる、という選択も大切です。無理強いはしませんよ。ただ、私が作った道具に対して風評被害だけはやめていただけますか?」
動揺する智里に紅葉がじりじりと迫る、笑顔で。
「そそそその件は、そういう映像があるということで……ごめんなさい!」
智里は逃げるように飛んだ。
紅葉は上から見下ろしている。まるで、被害者を突き落とした犯人が確認するかのように……。
「ひ、あ、あああああ……むむむ、無理、無理ですーーーーーーーーーーーー!」
智里は途中で【ジェットブーツ】と【アルケミックフライト】で逃亡を試みた。
なお、安全のための道具を外すことをしないと逃げられない。結局、スキル効果時間内にうまくできず逆さ吊りになった。
下してもらった後、ぺたりと地面に座り込む。
「飛行ならどんな高さでも行けますけど……落下は……無理」
その姿を光頼が同情の視線で見つめているのだった。
●結論
「はまる人ははまるようですね」
紅葉がハンターの動向で分析した。何度かしていく人もいた。
来てくれるだけでも観光地化に何が必要かもわかってくる。
「これはこのまま続行しましょう。あとは、観光地ぽくするだけですね」
もらった案を考え、紅葉は嬉しそうだった。
「あ、兄上、人それぞれですから」
「う、うむ」
ぼそぼそと光月は光頼を慰める。
「ところで、光頼殿は飛びませんか?」
紅葉が大変いい笑顔で尋ねてきた。
光頼は答えられず、冷や汗を滝のように流し、光月は言葉を探して右往左往していた。
とりあえず、柴犬が「撫でていいぞ」と紅葉に押し売りに来たため、うやむやになった。
「……あ、兄上……正直に早く言ったほうがいいと思います」
「う、うむ……」
師岬のとある日は穏やかに過ぎるのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/05/27 06:29:11 |