おっさんとおじいさん

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~5人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2019/06/10 09:00
完成日
2019/06/12 20:41

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●リゼリオ
 棺桶のように大きな“魔装鞘”を背負ったオキナが、リゼリオの港に降り立った。
 太陽の日差しが容赦なく降り注ぎ、老体には堪える。
「まったく、ちょっとは遠慮というものがないのかの」
 白髪の頭を掻きながらオキナはため息をつくと、キョロキョロと周りを見渡す。
 とりあえず“拠点”までは距離があるので、馬車を捉まえようと思ったのだ。
「おーい。そこの若いの」
 ブンブンと腕を振って、走り出そうとした一台の馬車を止めた。
「私は若くはない、おっさんですが」
「なぁに。儂からすれば、おっさんも若者も同じよ」
 御者は人が好さそうな30代後半の男性だった。
 若そうに見えたのは、新緑を思わせるような鮮やかな緑髪のせいなのかもしれない。
「何か用ですか?」
「ちょいと、郊外まで運んで貰いたいのじゃ。謝礼は弾むからの」
 ドンと“魔装鞘”を置いてオキナは言った。
 幾ら覚醒者とはいえ、歳を重ねたオキナには大変なものだ。またぎっくり腰になっても困るし。
「良いですよ。ここで逢ったのも何かの縁ですし」
「すまんの。おぉ、そうそう。ハンターオフィスの前を通ってくれ。ハンターに護衛の依頼を出しておってな」
「護衛? この街の郊外に行くだけなのに?」
 男性は驚いた様子で尋ねた。
 この世界の中で一番安全なのは、リゼリオだと思っていただけに意外なのだろう。
「まぁ……護衛という名の、あれじゃ、最近の話を聞こうと思ってな」
「なるほど。ハンターの皆さんは色々と知っている事が多いですからね」
 納得した様子で、男性は馬車から降りると“魔装鞘”を荷台に乗せるオキナを手伝う。
「すまんの、助かるわ。儂はオキナと呼んでくれ」
「いえいえ。私はルストと言います。よろしくお願いします、オキナさん」
 その出会いは、一期一会となるになる……はずだった。

●ハンターオフィス前
 ギルド区画の前で馬車は止まった。
 依頼を受けたハンター達を乗せる為だ。
「オキナさんは大富豪か何かなのですか?」
「まさかの。ただの使いっぱしり……いや、執事とでもいうかの」
 正確に言うと“魔装”が残した資産を使っているだけに過ぎない。
 それは本来、グラズヘイム王国のフレッサという街の住民のものなのだが……もっとも、オキナがあの街で稼いだ金であるので、一概に誰のかと言われると難しい所ではあるが。
 また、遺す子もいない為、使わないと勿体ないというのもある。
(全部をノゾミ嬢ちゃんに譲るというのもアリかの……)
 そんな事がふと、脳裏に浮かんだ。
 あの子はオキナにとって希望となった。多くの別れと出逢いを経て、緑髪の少女は成長した。
 後、数年もすれば、全盛期だった自分すらも越える覚醒者になるだろう。
 それだけではない。少女と繋いだ頼もしい仲間達は、きっと、この世界の行く末すらも左右できるはずだ。
「ルストさんは、行商には見えんが……何をやってるんじゃ?」
「技術屋ですよ。魔導機械とか東方の絡繰りとか、そういうのをちょちょっと」
「ほぉ。それは大したものじゃ」
 オキナは機導師であるので、ルストの話が少し気になった。
「そうじゃ、折角じゃから、色々と話がしたいの。機械談義でも良いし」
「良いですね! ちょうど、そんな話がしたかった所だったのです」
 意気投合した二人はハンター達が集まる前から、そんな予定を立ててしまうのであった。
 なお――ハンター達が、拘束時間が夜にまでなると知ったのは、この後、合流してからであった。

●???
 何かを感じた――。
 危険度は低いかもしれない。しかし、無視していいのか判断がつかない。
 そこで、考えた。

 ちょっと、けしかけてみようと。
 その反応を見て決めよう。
 だって、あれが敵か味方か分からないのだから。

 もし、敵だったとしても、自分に関わらなければ、どうでもいい。
 兎に角、確認しないと――確認しないと――確認しないと――。

 誰も生きている人はいないというのに、何かが動きだした。
 それらは無造作に一斉に起き出すと意思をもった何かのように、一斉に歩き出すのであった。

●リゼリオ郊外
 ハンター達を乗せて馬車は、リゼリオ郊外にポツンと立つ古屋敷へと向かっていた。
 そこが新しい“拠点”だ。王国内を転々と移動するより楽なはずである。
「あの屋敷じゃ」
「古い建物のようですが……なかなか立派じゃないですか」
「まぁ、掃除しないと入れないらしいからの。今日は野宿になりそうじゃが」
 苦笑を浮かべたオキナに、ルストは笑う。
 たまにはベッドで寝るよりかは、気分転換になっていいのかもしれない。
「……あれ? オキナさん、あれはなんでしょうか? こちらに向かって来るようですが……」
 丘の上に姿を現した人影に気が付いて、ルストは指差した。
 何の冗談かと思って視線を向けるオキナ。
「……歪虚じゃな。しかし、なぜ、こんな所に!?」
「ど、どうしましょう!?」
 慌てるおっさんにオキナはチチチと指を動かした。
「なぁに、心配はいらんぞ。“こういう時の”ハンター達じゃろ」
「あ、なるほど!」
 おっさんとおじいさんが、馬車に乗り合わせているハンターに顔を向けるのであった。

リプレイ本文


 それぞれ、武器を構えるハンター達に金属のようなもので造られた人型の歪虚が迫る。
 怪訝な表情を浮かべて、Uisca Amhran(ka0754)が言った。
「またこの人形たち……主がどこかにいるのでしょうか?」
 先月、リゼリオ郊外で討伐した歪虚と同じだったからだ。
 単発の出現ではなかったという事は、嫉妬人形共の親玉がどこかにいるのだろうか。
「なんじゃい、知っているのか? これは変な事に巻き込まれたの」
 既に腰を抑えながらオキナがハンター達に向かって言うと、それでもなんとか動こうとしたオキナに、時音 ざくろ(ka1250)が片手を突き出して制止した。
「オキナ、ぎっくり腰になっちゃ大変だもんね……」
「うむ。そうじゃな。これから屋敷の掃除もあるし……任していいのかの?」
「そのつもりだよ。それに……あの人形の力は、もっと調べないと行けないって思ってたから」
 蒼機盾を構えてざくろは爽やかに宣言した。
「“鞘”の話も色々聞きたいし、まずは邪魔者の排除をしないとですね」
 ソフィア =リリィホルム(ka2383)がざくろの宣言に頷いて同意しつつ、星神器を両手で確りと握る。
 嫉妬人形との戦いはこれで二度目になるので、サクッと倒してしまいたい所だ。
 敵の能力は侮れないが、集まった面々は誰もが一騎当千のハンター達だ。その筆頭ともいえるようなアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が法術刀とナイフをそれぞれ握っていた。
「なぜ、こんなところに居るのかは気になるが、倒してから考えるか」
 普通に考えれば、ハンター達の本拠地であるリゼリオ周辺は安全なはずだ。
 それにも関わらず、こんな敵が出現するのだ。隠された何かがあるのかもしれない。
 マテリアルのオーラを吹き出すアルトの横にUiscaが並ぶ。
「今日は剣士として戦います……あの嫉妬人形には属性攻撃は通りにくいので注意を」
「分かった。まずはどれだけ通るかやってみるさ」
 敵に立ち向かう仲間の背を後方から眺めながら、星野 ハナ(ka5852)は符を手にする。
 新しい屋敷への引っ越しという事で折角なので色々と手伝おうと思った矢先にこの事態だ。
 戦闘自体は危惧すべき事ではないだろうが……。
「……嫉妬歪虚って、本当にどこでも出て来ますねぇ。黒光りの虫ですぅ?」
 ぷくっと頬を膨らませるハナ。
 彼女には困る事があった。
「符術って無属性攻撃ないんですよねぇ」
「星神器の力を解放すれば、少しの間は属性攻撃も通じたはずだから」
 ソフィアがフォローするように言うと、敵がまとまっているうちにと、星神器を高く掲げた。
 様々なマテリアルの流れが、ソフィアと星神器を包み込むと、放たれた光撃が嫉妬人形共に降りかかった。
 渾身の攻撃だったはずだが、やはり、属性攻撃はダメージの通りが悪いようだった。だが、この星神器の力の真髄は、相手の防御力を無効にさせる事が出来る事だ。
「貫け、カオスウィース! そして、超機導ヨーヨー・大回転フィニッシュ!」
 絶好の攻撃のチャンスにざくろが機導術で魔導剣を操りつつ、超重練成で巨大化させた蒼機盾を振るう。
 属性攻撃は通り難い敵ではあるが、機導剣・操牙で引き出した武器の力は属性攻撃とは関係ない。あくまでも、攻撃に用いる武器の属性が関係するので、ざくろの狙いは的確だった。
「防御力も無い状態なら、大きなダメージを与えられる!」
「やはり、無属性攻撃の方が有効という事ですね」
 マテリアルを込めた強力な一撃を繰り出すUisca。
 そこへ、ハナが投げつけた幾枚もの符が光り輝く結界を構築した。
「色々と敵の能力を確認したいですぅ」
 例えば、防御力の有無による通りの具合や属性種類による差なのだ。
 問題があるとすれば……仲間達の攻勢が強すぎて敵が先に殲滅してしまうのではないかという事ぐらいだろうか。
 その心配を予感させるほどに、恐ろしい程の斬撃を見舞うアルト。
「これは、硬いというか……なんだろうね」
 敵の間をアクロバティックな動きで駆け抜けながら法術刀を振り続けたアルトは眉をひそめる。
 防御力が皆無になっているはずなのに、いつもよりも手応えが半分程の気がするのだ。
 それをもう一度確かめる為、マテリアルのオーラを残しながら、アルトは再び法術刀を構えて駆け出し、続いてハナが再び五色光符陣を形成して、敵を焼く。
 今度はソフィアの星神器の効果は切れている。その“差”を感じやすいかもしれない。
「なるほど。確かに属性攻撃は通り難いな。手応えの感じ方が全然違う」
「属性攻撃が弱まっているようですねぇ」
 アルトとハナの感想にソフィアは考えながらマテリアル結晶を展開した。
 前回の戦いを思い出しながら、今回、二人が試みた事も合わせる。
「バッドステータスも属性攻撃も通じにくく、防御力も高い……だけど、個々の耐久力や攻撃力は高くない……なにより、発せられる負のマテリアルは、そんなに強くない。これは、一体!?」
 考え過ぎて隙を作ったようだ。幾体かの嫉妬人形に押されるように敵の1体が突進してきた。
「危ない! 超機導バリアーオン!」
 ざくろがガウスジェイルで嫉妬人形の攻撃ベクトルを強引に捻じ曲げて、その攻撃を受け止めた。
 サッと、Uiscaもフォローに入って回復魔法を唱える。
「まるで同一個体みたいな連続攻撃ですね。油断できません」
「まさか……いや、でも……歪虚なら可能なのか?」
 Uiscaの台詞に何かに気が付いたソフィアはオキナに振り返った。
 それに応えるようにオキナは頷く。
「嫉妬の歪虚は人形を操る能力を持つものがおる。操り方は色々じゃろ。つまり、“本体”の嫉妬歪虚の能力が、その人形を包む事で、操っている可能性はあるはずじゃ」
「話が難しいですよぉ」
 符を持ったままハナがオキナに言った。
 オキナはすまんすまんと頭を掻きながら応えて、ソフィアに告げる。
「ほら、“鞘”も包んでいるじゃろ」
「……人形歪虚を操っている親玉が自身のマテリアルで人形を覆っているというようなもの?」
 負のマテリアルの“膜”みたいなもので人形の皮膚や表層となっているとすれば、ハンター達の攻撃はまず“膜”に当たる。
 そこで、属性攻撃の通りが半減していたとすれば、後は人形自体の高い防御力により、属性攻撃が効きにくくなる……という推測だ。
「結局は、威力の高い無属性の攻撃手段で戦えって事か……それが分かれば、やる事は変わらない」
「属性が効きにくいのはお見通しだったし、なら、こいつで!」
 アルトが剛刀を構え、ざくろは蒼機盾をヨーヨーのように操った。
 要は純然なる力でねじ伏せて戦えばいいだけのようだ。それが難しい場合もあるが、少なくとも、今日、ここに集まったメンバーであれば問題ないだろう。
「……する事がないですぅ」
「まぁ、儂の護衛じゃな」
 ぎっくり腰になりそうなオキナと共に、前衛で戦う仲間達の姿を見守るハナであった。


 嫉妬人形を全て排除し、一行は目的地となるリゼリオ郊外のとある屋敷へとやって来た。
「幾つかある屋敷の中でも人目から離れているからのぉ」
「周辺に他の建物は見当たらない訳か」
 オキナの説明にアルトは応えた。
 出来れば調査しておきたいと思ったのだが、一面、長閑な光景が続いているだけだった。
 遠くにリゼリオの街がよく見える。ハナが馬車に積んである色々な物を降ろしながら尋ねた。
「新しいおうちに引越しですぅ?」
「まぁ、そんな所じゃ。もっとも、今日は屋敷の中に入らず、外で野営じゃな」
 適当な場所に腰を下ろすオキナ。
 馬車の中から緑髪のおっさんが、顔を出して周囲を見渡す。
「一時はどうなるかと思いましたが、さすが、ハンターの皆さんですね」
「もう、降りても平気よ」
 ソフィアの台詞に、そうみたいですねと答えて、おっさんは馬車から降りる。
 その動作は――洗練されている訳ではなく、年相応の普通のおっさんだった。
「助かりましたよ。私も昔はハンターに憧れていたんですよ」
 おっさんはルストと名乗った。
 オキナとは偶然知り合っただけのようで、戦闘中も大人しく馬車の中にいたようだった。
「旅をされているのですか?」
 そう尋ねたのはUiscaだった。
 ルストは緑髪を揺らしながら、首を横に振った。
「いえいえ、リゼリオで魔導機械や絡繰りをいじっている技術者です。この馬車は仕事道具を運ぶためのものですから」
「そうだったのですね」
 おっさんの話に微笑を浮かべて応え……少し首を傾げた。
 どこかで会った事があるような、そんな気がしたからだ。
「野営しながら、機械談義! そうそう、オキナさんには“魔装鞘”の事も聞きたいし!」
 ポンと手を叩くソフィア。馬車に積んだままの“魔装鞘”の試作は、紡伎 希(kz0174)から依頼された彼女が行ったものだ。
「そういえば、ソフィア嬢ちゃんの力作じゃったの。色々と話したい事はあるわい」
 オキナが頷きながら返事をすると、ハナが宣言するように両手を大きく広げる。
「それでは、さっそく、テント設営と食事を作りましょう」
 応えるように一斉に動きだした面々の中、ざくろだけがハッとなった。
 慌てて、メモのようなものを書き出す。ペットを伝書鳩代わりにでもするつもりのようだ。
「す、すぐ帰るって言ってあったから、みんなに、夕ご飯いらないって連絡をしないと!」
 どうやら、ざくろはマメな男のようだ。

 ハナが作った特製スープの香りが、やさしく一帯を包んでいた。
 時折、周囲の状況を見渡すが、どうやら敵の存在は確認できない。
「歪虚がでたばっかりの場所で野宿不寝番なしは流石に危なすぎますよぅ」
「朝まで機械談義で盛り上がれば問題ないって」
 心配するハナにソフィアが軽く笑い返す。
 それは別の意味で大変な事でもあるのだが……。
「ところで、“魔装鞘”とは、あの大きな棺桶みたいなものですか?」
 ルストの問いにソフィアは頷いた。
 補足するようにオキナが簡単な説明をする。もっとも、全てを話す訳にはいかなかったようで機導浄化術のものという話だったが。
「なるほど。中に入れた不浄なものを浄化術で抑え込むものですか。興味深いですね」
 説明を受けたルストが真剣な表情で応える。
 それを見るとどうやら根っからの技術者のようだ。
「まぁ、儂からすれば、もう少し小型化できないかって所じゃな。重すぎて腰に悪いわい」
「そこは……まぁ、なんとか考えてみようかな」
 オキナからの要望にソフィアはそう答えた。
 そういえば、希もあれを持ち運ぶ時は背負っていた。装備の鞘としては、いささか大きいかもしれない。
「大きくする事とかできるけど、小型化か……」
 機導師らしく、ざくろも機械談義に交じっていた。
「あ。君、男の子だったのか。いや~、気が付かなかったよ」
「うぅ……だ、大丈夫です。そういえば、ルストさんも突然、野営で平気なのですか?」
「ここで独り身だからね」
 乾いたような笑顔を浮かべるルスト。
 Uiscaはスープの入ったカップを手にしたまま尋ねる。
「ご家族の方は?」
「……故郷の村は傲慢歪虚に滅ぼされたって聞いてるから。多分、誰もいないかな。生きていれば、そうだね……皆さん達よりも幾つか下の子供もいたんだけど」
「そうだったのですか……哀しい話をさせてしまって申し訳ないです」
 丁寧に頭を下げるUiscaにルストは手を振った。
「気にしなくていいですよ。珍しい話でもないですし」
「ルストさん、このパンもどうぞですよぉ」
 空気の流れをフォローしようとハナがタイミング良く、パンを渡した。
 その一連の様子を見ていたソフィアは、そっとUiscaの耳元で言った。
「にしても、緑色の髪と瞳ねぇ……依頼主サマの関係者、なんてなぁ」
「目元とか似ていますよね」
 希に似ているようにも見える。
 緑髪の少女に聞いてみれば何か分かるのだろうか……。
 ざくろがハッとしたように手を挙げ、ハナが続くように言った。
「王国出身だったんだ。傲慢歪虚との戦いの話、知っていますか?」
「そうそう、傲慢王との決戦ですよぉ」
「そんな事があったのですか!?」
 ルストが他のハンター達と機械談義から外れ、別の会話している所で、アルトはオキナに尋ねた。
「少し話を聞きたいが……いいか?」
「なんじゃ、ヴァレンティーニの嬢ちゃんよ」
 多少の酒が入った楽しそうな雰囲気で、オキナは応じた。
「ヒトと歪虚が手を取り合う事になったら、どう思う?」
「それは、邪神の話じゃな……」
 情報通のオキナの事だ。件の話は耳に入っているのだろう。
「ネオーラ……ネル・ベル……人を従者にした歪虚が居るのなら……その逆や従者ではない対等な関係もあり得たりするのだろうか?」
「儂が思うに、整理が必要じゃな。世界を滅ぼそうとしている邪神と、例えば、十三魔のような存在は、カテゴリーとしては同じでも、一人一人、一体一体は違うはずじゃろ」
「手を取り合うのは、整理がされた上で……と?」
「組む相手が人間か歪虚か、それは儂にとってしたら、些細な問題じゃ。相手の存在を把握した上で、自分が何者であるのか、何を成すべきかを考える……儂はそう思うの」
 オキナは若い頃、容赦ない仕事ぶりから“戦慄の機導師”と呼ばれていたらしい。
 その一端を、アルトは見た気がしたのだった。


 リゼリオ郊外に突如として出現した嫉妬人形だったが、ハンター達の活躍により速やかに討伐できた。
 また、嫉妬人形の能力も、前回の情報を合わせ、解明できたのであった。


 おしまい。



 馬車に荷物を取りにいったオキナに、Uiscaはロケットペンダントを渡す。
「すみません。以前オキナさんが住んでいたお家に行った事があって、これを家の取り壊しをしていた人から預かったんです。今まで機会がなかなかなくて……」
「おぉ……懐かしい。感謝するよ、イスカ嬢ちゃんよ。これはな、若い頃の儂と妻の絵じゃ」
 懐かしそうにロケットを見つめるオキナ。
「オキナさんの事、姉さまも心配しているんですよ」
「それはすまんの。まぁ、全てが終わった後に色々と話せればいいと儂は思ってはいる」
 ロケットを大事そうに仕舞うとオキナはテントへと戻ろうと歩き出した。
 その背に向かってUiscaは声を掛ける。
「邪神との戦いの後になりますが……絶望している人を救い希望を広げる、そんな組織をノゾミちゃんたちと創りたいって思っているのです……」
 Uiscaの台詞にオキナはピタリと足を止めると、振り返る事なく、静かに答えた。
「儂には大した事はできんが、協力は約束しよう……だが、その前に、邪神との決着が最優先じゃ……この戦いに儂は一切、手は出さん。今の世代のハンター達が、世界と未来を救えるかどうか、この屋敷で見届けてさせてもらうつもりじゃ」
 挑発的とも受け取れそうな、そんなオキナの言葉だった。

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参加者一覧

  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師

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ソフィア =リリィホルム(ka2383
ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2019/06/08 12:08:15
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2019/06/08 12:04:53