キッチン・チョコレート

マスター:DoLLer

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/02/01 09:00
完成日
2015/02/09 07:55

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ごっ、ごっ、ごすっ、ごむ、ごきゃ!
 壮絶な音を響かせて、ミネアは怜悧な顔で業務用のチョコレートの塊をノミとハンマーで砕いていた。余りに凄絶な音と、眉ひとつ動かさない氷の悪魔のような表情に、市場を通りかかっていた人々は視線を奪われるが、見てはいけないような気がしてほとんどの人はそのまま足早に去っていく。
「随分、派手にやるんだね」
「ふへ?」
 一抱えはありそうだったチョコ塊を軒並み粉々にし終わったのを見届けて、一人のエルフの青年がミネアに話しかけた。ミネアはチョコを砕くことに執心してた為、この青年エルフがいったいいつからそこにいたのかさっぱり気づかず、思わず気の抜けた声を上げてしまっていた。
「チョコに恨みでもあるのかと思ったよ。ピースホライズンはみんなの快活な心で存在している都市だよ。そんな顔してちゃいけないな。何があったか教えてくれるかい?」
「あ、あはは。ごめんなさい。考え事してたらつい!」
 顔をマジマジと見られていたのだろうかと思うと、ミネアは急に恥ずかしくなり空いていたボウルで顔を隠した後、少しだけ下にずらして頭と目だけを覗かせる。
「もうすぐバレンタインですからねっ、たくさん準備しないとなーとか、誰にどんなの渡そうかなって考えてただけです」
「そうかな? チョコがまるで生涯の障碍であるかのように振る舞っていたよ」
 線の細い青年は細い白魚のような指で勢いで飛んでいったチョコの破片をつまむとぽいと口に放り込んだ。その仕草からどんな話でも聞くよ? という意志表示なのだろうと思ったが、力任せの恥ずかしい結果を口に入れられるというのは赤面を禁じ得ない。顔を隠していたボウルをそのまますっぽりと頭にかぶって彼女はことの次第を説明した。
「いや、あのほら。バレンタインには義理チョコってつきものじゃないですか。私、本業は商人なんですけど、先輩の商人のおじさんから『いやぁ、おじさんくらいになるとチョコもらえなくてね』とか『ミネアちゃんのチョコ美味しいんだろうね。もらえる人は幸せだろうな』とかもう散々言われちゃって。ははは、それでどうしようか考えていたんですよ。顔、そんなに怖かったですかね?」
「うん。誰かに復讐でもしてるのかと思ったくらい」
 青年の言葉にいよいよ恥じ入ったミネアはまるで防災訓練でもするかのようにボウルを被ったままテーブルの下にしゃがみこんだ後、ぶつぶつと本心を漏らした。
「だってぇ、毎日野菜を積んで売ってヘトヘトなのはあたしも同じだし、チョコの準備だってけっこう色々大変なんですよ! なのにおっさん共ときたらチョコくれチョコくれって……ううう。チョコはあたしが欲しいくらいなのにぃ。もう女の子に生まれて損したなって本気で思います」
「ホワイトデーがあるじゃないか」
「あんなおっさんからハンカチ一枚もらいたいと思いません。換金アイテムだとしてもお断りです」
 ズバッとした本音に青年も思わず苦笑いを漏らす声が聞こえてきた。
「でもこのチョコがすべて義理チョコ用ってわけでもないんだろう?」
「まあそうですけど……。販売用もつくらなきゃだし、あたし、基本行商ですから、向かう先で子供たちとかにも上げたいなって。最低1000個くらい作らないといけないんですよ。まだこれでも1/10くらいですよ」
 立ち上がってそう言ったミネアが述べた千という数に青年は驚いた顔をしていた。1000程度の数で驚くところを見るとこの青年は商人や職人ではないようだ。とするとハンターか何かだろうか。
 青年は頬を膨らませるミネアの顔をしばらく何かを考えるかのように指をくるくると回していた。青年にとってはおおよそ関係のない愚痴のはずだが、彼は親身になって聞いてくれるし、何かしらの答えを考えている。
 不思議な人。ミネアはそう思いつつ、彼の導き出す答えを待った。
「それなら友達と一緒に作ったらどうかな。千もの数のチョコを作るというなら君はそれなりに料理の腕もあるんだろう? 素材もあるようだしみんなで楽しく作れば早くできるだろうし、それで友達同士でプレゼントしたらどうだい?」
 !
 ミネアはぽんと手を打った。
「それいい!」
 ピースホライズンには一人でやってきたし、行商が基本のミネアにはまだ知り合いは少ないのに加え、こういう商戦時期は誰もが大忙しだけど。彼女にはチョコレートを渡したい相手がいるのだ。ハンターだ。何回かハンターに依頼した経験のある彼女としてはお礼をしたいと考えていた。同じ人には出会えないとしても。そんな彼らと一緒にチョコを作れるならどんなに楽しいことだろう。
 リアルブルーの文化によく触れているハンターたちならきっとチョコに興味のある人もいるだろう。素材は提供できるし、作り方も教えるくらいのことはできる。ついでに販売用やプレゼント用の分も一緒に作ってもらえたら、ハンターさんには練習になるし、こちらは嬉しい!
「ありがとうございます! それやってみます」
「ふふ、良かった。君はその明るい顔の方がよく似合ってる」
 その言葉を聞いて、ミネアはぽむっと顔を真っ赤にした。彼は天然で歯の浮く台詞を放つらしい。再びボウルで顔を隠しつつもミネアは深々と青年に頭を下げた。その様子を見て、青年はとても朗らかな声でつづけた。
「本命チョコ、忘れないようにね」
「余計なお世話ですっ!!」
 悪気はない、と気づいたのは、ミネアは持っているボウルではたき倒した後だった。
「あわわわわっ、ご、ごめんなさい、大丈夫ですか??」

 ともあれ、青年の提案通りミネアはさっそくハンターオフィスに相談に行ったのであった。

リプレイ本文

 ピースホライズンのとある厨房にハンター達は集まっていた。
「あたしはチョコ2種類と甘めのキャラメルと苦めのチョコの組み合わせ、ミルク多目のチョコとそれに合わせたキャラメルの2種にしようかな。型はこれから用意するんだけどね」
 シャーリーン・クリオール(ka0184)はそう言うと、カバンの中からいくつかの小さな木材を取り出した。そこにはハート、スペード、ダイヤなどのマークが描かれており、これを彫って型にするらしいことがすぐ判った。
「わ、これ可愛い。型ってこんな風に作るんだ。鳥さんのマークはシャーリーンさんのイメージにもぴったり。私は薔薇の形でチョコを作ろうって思うの。彫るの教えてもらっていいかな?」
 ランカ(ka0327)は様々な型があるのを見て、テンションが上がっているようだった。シャーリーンはいっぱいあるから色々試してみるといいよ、と言った。それから、とシャーリーンは小さな竹に穴をいくつも穴を開けたものを七夜・真夕(ka3977)に手渡した。
「糸状のチョコを重ねたのを作りたいって言ってたでしょ? これで上から溶かしたチョコを落とせば作れるんじゃないかな」
「覚えてくれてたの? ありがとう!」
 真夕は竹を受け取って嬉しさを顔いっぱいに表して礼をした。
「うちも2種類作ろうと思うんよ。飾り付けもシュガーチップも手作りするんよ」
 ミィナ・アレグトーリア(ka0317)はマシュマロや、卵、チップ用の型抜きなど準備してそう言った。本格さ具合ではかなりのもので、同じく普段からお菓子作りをしているBridget・B(ka3117)も好奇心で目を光らせる。
「組み合わせ次第で、色んなお菓子が作れそうですわ。わたくしはボンボンショコラとプラムを入れたトリュフなど作ろうと思っていますの。ガナッシュも硬めのと柔らかめのものを作りますわね」
「本格的! まずは基本形を勉強しようと思っていたけれどガナッシュも種類があるのね。どれも美味しそうだし、楽しそうだし……」
「本当ですね。色々工程もあるみたいで、迷いますね」
 最初は少し改まった言い方だった花厳 刹那(ka3984)もそれぞれの話を聞いて楽しみですっかり打ち解けてきたようだ。お菓子作りを練習するいい機会だと思っていたが、食指が働きすぎて、どこをお手伝いしようか迷ってしまう。それはパステルカラーの三角巾を丁寧に結んで、零れ落ちた黒髪をしまうエステル・クレティエ(ka3783)も同じで二人して目線を通わせて小さく困ったような笑みを浮かべた。色んな意味で悩ましいという認識は共有できたようだ。
 エステルは不機嫌そうな座った目つきでじっとしているナツキ(ka2481)にも声をかけた。
「ナツキさんはどうします?」
「ごすごきゃ、やる」
 皆、それが何の擬音なのか一瞬判らなかったが、チョコ塊を砕く音だとすぐに理解した。ミネアは少々苦い思い出に乾いた笑いをあげたが、すぐ気を取り戻してOKを出してくれた。
「それじゃ、ナツキさんがチョコを砕いて、できたものをエステルさんと華厳さんで計量して、溶かす作業をしてください。生クリームの分量はBridgetさんは柔らかいのをミィナさんは硬めのを作ってもらって空いてる時間で他の材料の準備お願いします。シャーリーンさんとランカさん、七夜さんは型抜きの製作お願いします。私、足りないところを手伝いますね」
「よし、頑張りましょう!」
 女の子たちは気合いの入った鬨の声を上げた。


 ごすっ、ごすっ、ごごすっ。ごごごごごむ ごぐんっ
 キッチン・チョコレートで一番ド派手な音はもちろんナツキの立てるチョコの破壊音である。チョコに突き立てるノミを見つめる目は猫の瞳のように細長い。……覚醒している。
 しばらくチョコの粉砕作業を続けた結果、ナツキはその眼で、どこにノミを当ててどれだけの力で打ち込めば崩れるのか、その眼がすべて教えてくれる。魔眼のようである。
「タッパーの容積がえーと……あれ、でも蒸発する分も計算に入れないとダメかな」
 ナツキによって砕かれたチョコを秤にのせたボウルに入れて計算を始める刹那。思わず学校生活で覚えた数式を頭を駆け巡るが、元の数値が出てこなければ計算は完成しない。悩んでいるところをひょいっとBridgetが覗き込むと、計量カップにすい、と音もなく生クリームを注ぎ込んで刹那に渡した。目盛りを見てもいないのに、注がれた生クリームはきちりと大きな目盛りのところで止まっている。
「Bridgetさん、見ただけでわかるんですか?」
「メイドたるもの、勘で必要な分量が分からずにどうします」
 三角巾の代わりにつけているメイドキャップをトントン。と指で示してBridgetはくすりと笑った。勘とは長らくの経験と知識が作り上げる閃きなのですわ、と付け加えた。そして続いて砂糖も加えると、ボウルはもう溢れんばかりである。
「こ、これを混ぜるんですか……?」
 エステルはヘラを持つ手が震えた。明日横笛の練習の時に手が震えたりしそうだ。後ろではまだまだナツキがチョコを砕いている。
「とりあえずやらないと何も始まらないよね。……やろっ」
 刹那も同じ気持ちのようだったが、あれこれ悩むのは性に合わない。腕まくりすると思い切って泡だて器を入れた。思った通り、ヘラを奥まで差し込んだら手元まで埋まりそうだったが、居合道で鍛え、今日も太刀を振るう彼女にとって出来ないことではない。最初は分離している分だけやりにくかったが、溶け始めると段々スムーズになっていく。
 エステルだって負けてはいられない。力ではそう負けてはいないのだ。
「ミネア先生、これでいいですか?」
「すごい上手! ゆーっくりね。私は師匠にね、恋とチョコ作りは一緒だって言われたの。焦(あせ)れば焦(こ)げる。相手の事をしっかりみて、歩調を合わせてあげるんだって」
「何もしないまま、苦い……」
 ミネアは小さく拍手して二人の手慣れた動きを喜んだ顔をしてそう言っている横でナツキが砂糖の入っていない業務用チョコの破片を口にして、眉をハの字に曲げた。うまいことを言われてやられた顔をしているミネアを見てシャーリーンはくすくすと笑い出してしまう。
「あー、笑った!」
「ははは、ごめん。じゃ、恋に疲れたら、ふんわり甘い夢はいかがかな?」
 型作りを終わらせたシャーリーンは、休憩用に作っておいたシフォンケーキを一切れ、ミネアの口に放り込んだ。抗議せんと顔を突き出したミネアはむっとした顔のままもぐもぐ。顔が、蕩けた。
「ふわふわもっちり、美味しい~」
「気のせいか、そのフレーズ、どこかで聞いたような気がするのん」
 ミィナは少し首を傾げて、完成させた星型のシュガーチップを瓶の中にさらさらと集めていった。
「わっ、これ食べられるんですか?」
 そのシュガーチップを見て、ランカの目がキラキラ輝いた。辺境の森で育った彼女にとって、こうしたものが製作可能で、しかも食べられるというのは驚きだった。
「もちろん。ピンクのは苺の色なんよ。食べてみてもええんよ~」
「やったぁ! 味見は任されましたっ」
「それだけ味見するというのも勿体ないわ。私のチョコに合わせて食べてみてはどうかしら?」
 小瓶からシュガーチップを取り出して味見しようとするランカに真夕が待ったをかけた。シャーリーンが作ってくれた竹の容器を改良して、彼女の望むチョコが作れるようになったようだ。
「リアルブルーのお菓子なのよ。本当はホワイトチョコを混ぜるんだけど、アレグトーリアさんのチップがとっても合うと思うの」
 といっても、まだできていない。どうするんだろうとランカがまじまじと見つめるのを見て真夕は竹の中にエステルが溶かしたチョコを一掬い。すると水鉄砲のように下に空けたいくつもの細かい穴からチョコが糸状に落ちてくる。
「わ、わ、垂れてますよ!」
「見ててねっ」
 勿体ない! というランカにウィンクすると真夕はまな板をキャンバスにして、チョコで縦に横に、斜めに重なる線を描く。チョコは硬いもの、というイメージを払しょくされたクリムゾンウェスト出身者はちょっとしたカルチャーショックの声を上げた。
「これにシュガーチップをかけて……た、食べるのがもったいないよっ」
 もはや芸術品っぽくみえるそれにランカの瞳にも星が宿る。見た目も綺麗だし、味も想像するだけで……ごくりっ。
「じゃ、端切れの部分だけね。はい、あーん」
「あーん」
 チョコの糸がUターンする端の部分を真夕が切り取ってランカの口に放り込んだ。見ているだけで幸せな光景。見ている方も、私も味見しようかな、なんて気になってくる。
「私のも味見してもらっていい?」
「チョコ、甘い物、大歓迎」
 刹那の問いかけに、ナツキは相変わらずの不機嫌そうな目で答えた。でももうわかってる。不機嫌じゃないってこと。刹那の作ったガナッシュクリームを別皿にとってナツキが小指ですくって口に入れる。
「ど、どうかな……?」
「もっと愛を込めるといいかも、多分」
「愛!?」
 衝撃発言だ。刹那はしばしの間どうしたものか悩んだ後、渾身の力をいれてガナッシュを混ぜ始める。
「好き~!!!!!」
「うん、きっとそれでいい。多分」
 いいわけあるかい。と方々からツッコミが入る。
「はいはい、そんなに食べていては売る分がなくなってしまいますわ。材料はおおよそできあがりましたわっ。さあ、目標の千個。一気にしあげてまいりましょう!」
 Bridgetが、パンパンっと手を鳴らして味見の時間は終了。だいたいほとんどが経験者なので味は調整する必要もなかった。
「さあ、チョコ作りといこうかね」
 シャーリーンは出来上がった型をテーブルいっぱいに広げた。そして柄杓に組み上げたチョコをまるで機械のような正確さで流し込んでいく。木目色の穴は茶色に染まって、あっというまにハート・スペード・ダイヤ・クラブ。ワンドにカップに、ローズにナイト。クイーンにバード!
「マシュマロとナッツを混ぜ入れるのねん」
 ミィナは一口大に切ったマシュマロとナッツをトレイの上に広げた。白と茶色。若草色が目の前で踊る。その上から刹那が精魂込めて作り上げたガナッシュクリームはまるで紅茶のように。
「これが冷めた後に切り分けたら、まとまった数できるのねん」
「ミィナさんとの合作なのよ」
「綺麗なチョコをもっと素敵に見えるようにね。作っておきました。蜜漬けの花びら!」
 ランカが手元かの箱を開くと、鮮やかなピンクや黄色の花びらが蜜を纏ってキラキラ輝く。早速出来上がったシャーリーンのハートチョコとミィナのカッティングトリュフチョコの下敷きに花びらを敷き詰めると、みんなからテンション高めの「おお~」という声が漏れた。店に並んでたら絶対高級チョコレートとして扱われる品である。
「あとね、一個だけ。薔薇型チョコ作ったの。花びらにチョコをかけて型を作ってね。もろくてすぐバラバラになっちゃって結局一つしかできなかったけど……後はシャーリーンさんの型で作ったの」
 そう言って大切そうに取り出したのは確かに薔薇をそのままチョコにしたような美しい仕上がり。周りから拍手が巻き起こるとランカは照れて、Bridgetに振った。
「Bridgetさんは何を作ったんですか?」
 これだけでも十分すぎるのに、まだお菓子作りの玄人さんBridgetが残っている。尋ねたランカでなくとも皆の期待は高鳴る。
 だが、当のBridgetはやや気落ちした表情だ。
「本当はキッチンメイドではなくて、ランドリーやデイリーでしたの。メアリー(キッチンメイドの呼称)ならもう少しできましたのに」
 Bridgetが氷室式冷蔵庫から5,6枚ほどまとめてトレイを取り出した。
「ボンボンショコラ、シュークリーム、メレンゲショコラ、チョコキャラメル、フォンダンショコラ……プラムのトリュフまではなんとか完成させたのですが。あと7種は完成させたかったところですわ」
 トレイはどれも別の種類のお菓子で埋まっている。エステルは目が点になった。いったいいつの間にこれだけ作っていたのだろう。刹那はどうだろうとエステルは横を見たが、彼女もまた別の意味で打ちひしがれていた。
「早すぎて、無理だった……」
 いつか男性にプレゼントするチャンスが到来した時に、なんて思っていた刹那だが、残像が付くようなBridgetの作業スピードにはついていけなかったようだ。だいたい火にかけた鍋の様子を5つ見ながら、メレンゲを作り、更にシューの皮を焼くなど人間の所業ではない。
「エステルのは?」
「私は……もうできてるかな」
 エステルがチョコを入れたトレイの蓋を開けると、芳醇な香りがふわっと部屋に広がった。チョコの甘い香りを一新するような爽やかな香り。
「果物とお茶の香り!」
 一番早く反応したのは森で果実酒を作っていたランカだ。
「あ、うちのシュガーチップ使ってくれてるのん♪」
 ミィナも香りにつられて覗き込むと、チョコの上に載せられた草花の形に配置されたシュガーチップを見て破顔した。
「皆さんのお話とか聞いて、こういうのもいいかなって。ふふ、色んなアイデアをいただきました」
 皆が揃ってチョコを見に来てくれたことに少し嬉しくなって、エステルはエプロンに刺繍されたプリムラを軽く撫でてはにかんだ。
 みんなであれこれとチョコについて語り合う中、ナツキが肝心なことをぼそりと呟いた。
「……肝心の箱、ない。作る」
 そう。箱が完成してない。
 でも、これだけ素敵なお菓子を見れたのだもの。箱作りもリボンがけも楽しく思えてくる。
「あ、それじゃ私看板作る。見ただけで惹きつけられるような物作るねっ」
 いよいよキッチン・チョコレートは閉館。さぁ。みんなにこの想いのこもったお菓子たちを渡しにいこう。

「いよーっし! 目標1000個たっせーーい!!」


 ハンターの女の子たちが作ったチョコは大人気。危うくピースホライズンの中だけで売り切れそうな勢いだった。
「素敵なチョコレートが出来たかい?」
 並べられた数々のチョコレートの包みを覗き込んだのは、この出会いをくれたエルフの青年だった。
「ばっちりですっ!」
 できたのはチョコだけじゃないんだよ。素敵な思い出と。一緒に作り上げた新たな絆もなんだ。
 声を上げて呼び込む友達を見て、ミネアは最高に嬉しそうな顔を彼に返したのであった。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 幸せの青き羽音
    シャーリーン・クリオール(ka0184
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 幸せの魔法
    ミィナ・アレグトーリア(ka0317
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • 貝焼き片手の盗人退治
    ランカ(ka0327
    人間(紅)|15才|女性|闘狩人
  • にゃんこはともだち
    ナツキ(ka2481
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人

  • Bridget・B(ka3117
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那(ka3984
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン チョコ食べたい。【相談卓】
ナツキ(ka2481
人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/01/30 00:59:45
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/28 00:42:45