豆でたおせりゃ苦労なし

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/01/28 15:00
完成日
2015/02/02 21:49

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●冷や汗とめまいの狭間で
 とある地方のとある村。林に囲まれて立地は不便そうだが、ハンターズソサエティーの支部がある街まで馬を使えば実は二時間くらいで着く程度の距離。
 小さな教会のマーク司祭は二つの問題を抱えている。
 一つは歪虚がらみ、もう一つは隣の家の子の問題だった。
 歪虚がらみは、先月くらいから村の人間が雑魔らしい影を見ているということ。それに関してはマークが調査を行い、本日、助祭にオフィスへ依頼を出しに行ってもらったので早々に解決するだろう。
 雑魔は村はずれの墓に現われ、林の中にいるようだった。人が暮らすところには出てきていないが、林に行く用も村人にはある。解決は早ければ早い方がいい。
 隣家の子の問題は、夕方には解決するかもしれない。夕方になって帰ってくるか、村人にこっぴどく叱られ連れてこられるか。
 隣の家は友人の魔術師が住んでいる。その魔術師が弟子として、共通の友人の子を預かっている。
 ここまでは非常に問題がない出来事で、才能を伸ばすのにうってつけであるとマークはうなずく。
 この魔術師がふらっと一人旅に出るという性質をもっている、マークに弟子を預けて。
 その魔術師の弟子は素直でいい子であるが、リアルブルーに関して非常に関心を持ち、清濁併せた知識を頭に詰め込むのだ。
 今、まさにその子は近所の子たちと村中を走り回って知識を実践中だ。そして止める師匠は旅に出て不在、たとえ村にいても止めない気がする。
「家から豆持ってきて何をし始めるかと思ったら……」
 足りないというので、保存していた豆を小さいカップ一杯あげた。何するかは聞かないでおいたが、聞いておけばよかったのかもしれない。
 今はどこにいるのだろうか?
 教会を空っぽにするわけにもいかず、ため息交じりにマークはいる。
 近所の婦人たちが日課の立ち話のためにやってきた。今欲しい情報が入ってくるかもしれないとマークは期待した。
「司祭さまのところのルゥルちゃん、鳥に餌をやっているみたいだけれど?」
「何か呪文を唱えてはしゃいでいるわ、うちの子も一緒なのよ」
 ルゥルは隣の子と突っ込みを入れるのを控え、いつもの笑顔でマークは応じる。
「ええ、リアルブルーに節分という行事があって、それを耳にしたようで」
「あらぁ」
 婦人たちは詳しく聞きたがる。
「季節の変わり目に行う行事で、春夏秋冬が変わる前日に邪なモノを退けて、良き精霊の加護を招くといった行事らしいです」
「豆撒くのもその一環なんですの?」
「ええ。後年残ったのは春を迎える準備の節分だそうです。いろんな変遷があったらしいですが、私もさすがに知りません。豆を撒くのは、リアルブルーの邪なモノ、オニと言うらしいですがそれが嫌いなものらしいんです」
「あら、雑魔もそれでやっつけられるならいいのに」
 婦人たちは楽しそうにしゃべる。
「それであの子たち豆を撒きながらあちこち出ているのね」
 おばちゃんたちは納得。食べ物を粗末にしているというのはちょっと怒りたいことだったが、ほほえましいということで許されることになった。それに鳥や犬が通りがかって食べているから無駄になってはいない。
「人にぶつけるのはでもねぇ?」
 一番の問題点はこれであろう。
「すみません。ルゥルを見つけ次第、それは止めます」
「人にぶつけるモノじゃないの?」
「ぶつけなくてもいいと思います」
 他人様に迷惑をかけることはいけない。助祭の帰宅を待ってルゥルを探しに行かねばならない。
 婦人たちは日課の雑談を十五分ほどして帰宅した。

●走り回る子供たち
「オニはそとー、フクはうちー」
 ルゥルと似たような年齢の子供たちが辻で豆をぶつけて走り去っていく。
 ぶつけられた方は怒るが、子供たちはきゃーと言いながら走りさる。痛くはないが、びっくりするので苦情はルゥルの保護者と認識されているマークに向かうこととなる。
 走り去った子供たちは角で息を整える。
「驚いた顔見た?」
「駄目ですよ、そういうことをするわけじゃないんですよ。いい年を迎えられますようにっていうだけです」
 などと諭しているルゥルも笑顔で楽しそうだ。
「リアルブルーの行事って面白い」
「これで悪い精霊とかいなくなって、いいことが来るんだったら楽だよね」
 子供たちもその母親たちと似たことを言う。ルゥルもうなずく。
「あれ?」
 ルゥルは辻を見て首をかしげる。
「ポルム、何かいませんでした?」
 ルゥルの頭の上に載っているパルムに尋ねる。
「そろそろお昼だろう? あっちに行くと人通るんじゃね?」
「行くですぅ」
 ルゥルと子ども二人は走ろうとして足を止めた。
 後方に肌が闇色の人間が立っている。いや、服を着ているところ以外が闇色なのである。手にしているのは刀だが、手がなく手が刀になっている。
「ウ、ウルサイ、ウルサイ……ウ、ウウウウウ」
「みぎゃっ……! みんな逃げるんです」
 ルゥルは号令をかけると、豆が入った木の箱を雑魔に投げつけてから走り出した。
 妖魔に追われ、家と違う方向に走るルゥルは村はずれまで来ていた。
 林の中の秘密基地に行くか、手前の元貴族の別荘に行くかルゥルは悩む。
 悩んでいる場合ではない。
 雑魔はしつこくルゥルを追いかけてきていた。
 豆がいけなかったのか?
 ルゥルがエルフなのがいけなかったのか?
 パルムを連れているのがいけなかったのか?
 ルゥルは知識をかき集め打開策を考えようとするが、混乱するだけだった。
「どうしたらいいんでしょうか。ルゥル、いい子にしていたのに……ひっく……いい子なのに……先生でも……ひっく……母上でも、マークさんでもいいから助けてですぅ」
 ルゥルは声を出さないように両手で口をふさぎ、ポルムはルゥルの頭を撫でて慰める。
 カタリ、ガシャン……。
 ルゥルは狭い所に入り込み、息を殺し雑魔がいなくなってくれることを祈った。

リプレイ本文

●混乱している現場から
「落ち着いてください!」
 抑えようとしている助祭を引きずり、どこからか出してきた鎧をまとったマーク司祭がいる。
「うわあああああん、司祭さまごめんなさい」
 その上、マーク司祭にしがみついて泣く二人の子供。
「ルゥルちゃん、きっとすばしっこいし……」
 その子らの母親たちが慰めている。
 雑魔退治で来たハンターたちを迎えた教会は、混乱した状況だった。
「何があったんですか?」
 鎌原 猛明(ka3958)が尋ねた瞬間、教会にいる人たちの動きがぴたりと止まった。
 落ち着きを取り戻したマークが語るには、退治を依頼していた雑魔が子らを襲ってきたという。その後、ルゥルがおとりになって逃げているらしい。
「畑にいた人たちが、ルゥルを追っていく人影を見ているんです」
 村人は追うのは怖いし、放置するわけにもいかないために報告を教会に入れていく。
「その子が隠れるならどこかの? 追っているなら雑魔もそこにいるじゃろう」
 レーヴェ・W・マルバス(ka0276)が子らに尋ねると、バラバラの回答が返ってくる。
「林の秘密基地」
「倉庫」
 秘密基地と言った子は激しく首を横に振り始める。友の睨みが怖かったようだ。
 いずれにせよ、村人が意外と目撃しているので、聞けばどちらか目星は付くだろう。
「どんな倉庫?」
 真夜・E=ヘクセ(ka3868)が首をかしげると、「村を出て北に少し行ったところにある貴族の元別荘です」とマークが答える。
「何もないわけではないのか」
 巽 宗一郎(ka3853)は真夜に安堵を与えるように側に立つ。
「ルゥル……早く助けてあげないと」
 城戸 慶一郎(ka3633)はクリスマス時期にルゥルに会っており、小さい子が怖い思いをしているだろうと胸が痛む。
「万が一、と言うこともあるからねー、出来ることはしておかないとぬ」
 コリーヌ・エヴァンズ(ka0828)は慣れた手つきでアサルトライフルにライトを取り付ける。
「パルム連れているから分かったりしないかの?」
 レーヴェはパルムに目を向けると、言葉は理解して「無理」と意思表示をしていた。
「あー、よいよい、君も捜してくれんか?」
 パルムは了解を示すが、定位置から動くことはない。
「おばちゃんたち、ルゥルを助けて」
 腕白そうな子の懇願に女性陣のこめかみがピクリと動いたかもしれないが、安心させる笑顔でうなずく。
「ルゥル、あそこで遊ぶと、いつも同じところに隠れるの」
 気の弱そうな子がルゥルがよく隠れる場所を教えた。
 一刻の猶予もないため、ハンターたちは足早にルゥル目撃情報をたどっていった。

●ホラー風味の現場から
 家と言うより館であり、館と言うには小さい。
 一階の玄関は乱暴に開けられた跡がある。一階は村人が倉庫や集会場のように使うため、適度に掃除もされきれいであり、採光があるために、明かりがなくとも基本的にはどうにかなる。
「さてさて、悪い雑魔さんはどこかなーっと」
 コリーヌのつぶやきに反応したように二階からガシャン、ガタンと音が響く。
 ルゥルは二階に隠れると子らは言っていた。
 雑魔がまだ一階にいれば陽動しつつ静かに探すこともできたが、他に敵がいると気を散らす方がよかろうとハンターはわざと音を立てた。
「ルゥル、助けに来たぞ」
「雑魔がおらんようなら、そこでおとなしく隠れておれ!」
 入口で慶一郎とレーヴェが大きな声を上げる。
 猛明は連れているソウルウルフのリキに吠えてもらう。
「こちらは気にしていないみたいだね」
 階段の上り口で宗一郎は雑魔の音の変化に注意していたが、変化がないように聞こえた。
「上は締め切っているのかな、ちょっと待ってね」
 真夜はハンディLEDライトを点灯し、先を照らした。
 一行は各々必要な灯りを手に二階に急いだ。

 ルゥルは扉が壊れる音以外に、ヒトの声を聞いた気がする。パルムのポルムにも確認取ろうとするがしゃべることも動くこともできない。
 下手にすると見つかるかもしれないから。

 雑魔は追いかけているもの以外目に入らない様子で、一つずつ扉を壊し、物を壊す。

 ガタン。

 一行が二階に上がったとき、雑魔が部屋に入ろうとしているのが見えた。
「階段上がったところにあるお部屋にルゥル、良く隠れるんだ」
 気弱そうな子が言ったとき、腕白そうな子もうなずいていた。
 上がってすぐが雑魔の入った部屋かは分からないが、素早く目を走らせたところではそこは階段に近い。
 迷っている余裕はない。
「私が援護するぬ!」
 コリーヌの銃声を合図に部屋に向かって一気に走り始める。コリーヌの弾は当たったが、雑魔は足を止めなかった。
 宗一郎と猛明を先頭に武器を構え、雑魔に続いて部屋に入った。
 ライトに照らされた部屋はそこそこの広さがあり、戦うことは可能だ。ルゥルが隠れている場合、戦闘を避けたいが、捜す間に雑魔を足止めしないとならない。
 部屋の隅に箪笥とベッドがある。ルゥルが隠れているならば箪笥の中か、ベッドの下の隙間か。
 雑魔は情報通り人間に似ているが、顔ははっきりしていないし、右手は刃と化している。部屋の真ん中に立ち、ようやく攻撃者を意識して向きを変えた。
 まるで雑魔が戦いやすい所を選んだようにも見えるが、部屋を出るために方向を変え、邪魔な存在を排除するのは必然的な行動である。
 前衛たちが雑魔と対峙しているうちに、慶一郎とレーヴェが壁沿いに部屋の奥に入って行く。箪笥とベッドのあるところにたどり着く。
 雑魔の足止めのため、宗一郎、猛明が囲むように位置を取り攻撃を行う。しかし、雑魔は百戦錬磨の戦士のように攻撃を避けた。
「古い屋敷に鎧武者なんてやめてよ、B級ホラーじゃないんだからさ……」
 真夜は嫌いなシチュエーションに気がめいるが、自分を奮い起こすために軽口をたたく。攻撃するか守りを固めるか迷うが、近くにいる前衛にウィンドガストを掛ける。
 後からきたコリーヌは隙間を縫って、部屋の中で体勢を整えた。
 雑魔は刀を構えると部屋の奥を向いた瞬間、振りかぶった。ただの攻撃ではなく、無数の刃がまき散らされたようにレーヴェ、コリーヌ、慶一郎そして猛明は感じた。とっさに武器等で受け流すが衝撃が走る。
 箪笥に当たり一部壊れた。
「みぎゃー」
「きゅー」
 ルゥルとポルムの悲鳴が上がる。
「きゅ」
 レーヴェのパルムが「いたよ」と言うように小さく鳴いた。
「ふむ……無事かの?」
 慶一郎とレーヴェはルゥルの様子を確認する。ルゥルに壊れた箪笥が当たったらしく手の甲から肘にかけて怪我しているが、何か言いたそうに動いているので大きな問題はないようだ。
「ルゥル、助けにきたよ」
 慶一郎が抱えて下ろそうと手を伸ばすとルゥルはしがみついて、床に立った。
 部屋からの脱出のため、自力で歩けるルゥルを壁側にかばいながら、雑魔側への盾として慶一郎とレーヴェは立つ。二度と攻撃は当てさせないという決心だ。
 この間にも戦況は動く。
「フェンサーの一撃とくと味わえ!」
 雑魔の隙を突き、猛明の鋭い一撃が繰り出されるが、なかなか固い。攻撃は通っているという感覚はあるし、一人で戦うわけではないため焦りは禁物だ。
 続く宗一郎の攻撃は雑魔によけられた。舌打ちをしたくなるが、まだ戦いは始まったばかりであると気を取り直す。
 雑魔が若干動いたことで、後衛の攻撃は行いやすくなっていた。
「よっし、今がチャンス!」
「まずはその危ない物を斬り飛ばしてあげるよ!」
 コリーヌの銃弾と真夜の風の魔法が十字を描くように雑魔に当たった。
 雑魔は砕けるように消えた。
「さっすがマヤ、信じてた」
 宗一郎の褒め言葉に真夜は嬉しそうに照れた。

 慶一郎とレーヴェにしがみついていたルゥルは、雑魔がいなくなったので安堵したようで声を出して泣き始める。
「良かったです……みぎゃぎゃ……」
 慶一郎はしゃがむと何もない掌を見せてルゥルの気を引いた。その手をきゅっと握り締め、再び開いた手には飴玉の包みが載っている。簡単な手品だが、ルゥルは目を丸くして泣き止む。
「ルゥル、これあげる。短冊のお願いかなった?」
「……クリスマスの時のお兄さん? 世の中うまくいきません。マークさん、お手製のキノコ型のクッキーでした」
 口をとがらせているが、ルゥルはもう泣かない。なお、短冊に書いた願いは「幻のキノコを食べたい」だった。
「ふむ、それにしても、よく判断して隠れておったの」
 ルゥルが飛び出していても、レーヴェは守りきるつもりであったが、状況は違っただろう。
 レーヴェに褒められてルゥルは照れている。
「はい、はい、怪我見てみないとねー」
 コリーヌが清潔な布を出し、応急手当する。両手の甲から腕にかけてざっくりと切れている。冬だったのが幸いで、服が少し怪我を軽減している感じであった。
 手当も終わった後、ルゥルはお礼を言っていないことに気づき、もぞもぞと居心地悪そうに手足を動かす。
「ありがとうございました」
 怖かったためか、自分がしたことへの後悔か、泣き出しそうな顔になっている。
 泣かれるのはつらい。
「動物、好きかい?」
 ルゥルがうなずいたため、猛明は連れているソウルウルフのリキを側に寄せる。リキはちょっと苦しそうだが嬉しそうにしがみついているルゥルに耐えた。
「さ、帰ろう? 外も暗くなってるよ?」
「そうだね、司祭や友達も待ってるよ」
 真夜と宗一郎に促されて、ルゥルはうなずいた。
 ルゥルは怒られるかもと思うと足が鈍くなるが、リキは進むので進まざるを得なかった。

●無事に豆まきする現場から
 教会に戻った途端、鎧を脱いでそわそわと動いていたマーク司祭が駆けつけてくる。ルゥルが無事だったことでハンターへの感謝の言葉と彼女の無茶な行動への説教、近所の子らを守った勇気への賞讃を一通りしゃべり、傷の手当のために部屋に入った。
 助祭と子らもハンター一行にお礼を言う。
「豆なんて撒くからいけないんですよね、食べ物を粗末にして」
 助祭の言葉に、子らがシュンとなるが「鳥や犬が食べていたので無駄にはなっていない」と一応反論していた。
「リアルブルーの日本にあるんだ、そういう風習が」
 宗一郎が割って入る。
「ねね、教えて欲しいなー。どんな風習なのん?」
 コリーヌはキラキラと目を輝かせ、仲間を見る。
「私もそういうのがあると聞いたが、実際にやったことはないのう」
 興味があるとレーヴェも促す。
「ついでに、教えてあげてください、それが一番安全です」
 傷の手当てを終えたルゥルを連れたマークが溜息混じりに告げた。豆を撒いて雑魔に追われた記憶が新しいルゥルはマークにしがみついて、興味と恐怖の狭間で行き来している。
 リアルブルー出身のハンターたちは互いを見て、うなずき合う。仕事が終わった後の楽しいひと時と、故郷を思う懐かしさから自然と笑みがこぼれた。
「なら、大豆はありますか? 準備をしないと」
 猛明が助祭に連れられて倉庫に大豆をとりに行く。その間にクリムゾンウェストのヒトに向けた節分講習が始まった。
「時期は立春の前日、節分にやるの。節分は季節の分かれ目を言うの」
 真夜は宗一郎に突かれ説明を始めた。
「季節の変わり目に悪い物を払って良いことを招こうっていう行事よ。今回は豆まきなのよね? 豆は魔を滅するというごろ合わせもあって、豆、すなわち大豆を撒いて鬼を追い出すのよ」
 詳しく話し始めると呪術に絡んでくることであり、変遷やら歴史がかかわってくる。
「豆、すごいねー」
「侮ってはならないの」
 コリーヌとレーヴェの合いの手が入り、聞いているルゥルたちも感心している。
「家の中から外に向かって豆を投げるんだ。その時、見えない鬼を追い出すようにするんだ。鬼は目に見えない悪い物のことをさしているんだ」
 宗一郎は人にぶつけないんだぞと、ルゥルたちにくぎを刺す。
 人に豆をぶつけていた三人は互いに目を逸らして、怒られるか何か言われるか大人たちの反応を待った。
 レーヴェが「こういう角があるらしいぞ」と指を頭に立ててコリーヌに説明をしている。
「節分には豆まき以外にも、地域によっては恵方巻きっていうのもあるんだ」
 慶一郎が恵方巻きに関して説明すると、ルゥルらは作ることを保護者に要求する。保護者たちにはやんわりと拒否されたが、ごねる間もなかった。ちょうど大豆がやってきた。
「豆まきの後、年齢の分だけ食べて無病息災を願うんだよ」
 猛明は助祭が許してくれた分の大豆が入った籠を見せた。
 台所に移動して豆を炒る。
 香りが広がっていくにつれて、ルゥル達はそわそわし始めた。

「鬼は外、福は内」
 昼間とは異なり、ルゥル達は落ち着いて楽しそうに豆を投げる。見えない悪い物を追い出すように、見えない良いものが来てくれるように、と。
 ハンターたちの声も重なり、にぎやかだ。
「年の数だけ食べるんですよね」
 ルゥルはポルムの分を取る。
「……結構な量ありますよね」
 マークが少し困ったように皿を見ていると、ルゥルが「マークさんの代わりに食べますよ」と熱い視線向ける。
「すくなーい」
 食べたがる子ほどこうなる。
「百歳超えると結構大変ねー」
「そうだの」
 コリーヌもレーヴェも微笑みながら豆を頬張る。
 少し離れた所で、宗一郎と真夜は食べていた。
「ソーイチ、それじゃ、一つ少ないよ?」
 真夜はにこりと笑いながら、素早く口移しで一つ渡す。
「これで、大丈夫……なのよね?」
 頬を赤らめつつ、満足げにささやく真夜に、宗一郎は返礼のキスを行う。
「厄払いもして、幸運の女神の祝福もあれば今年は大丈夫だな」
 子らが見ており「あの人たち、あっちっち」などとはやし立て、母親に怒られていた。

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重体一覧

参加者一覧

  • 豪傑!ちみドワーフ姐さん
    レーヴェ・W・マルバス(ka0276
    ドワーフ|13才|女性|猟撃士
  • 蝶のように舞う
    コリーヌ・エヴァンズ(ka0828
    エルフ|17才|女性|霊闘士
  • 充実異世界ライフ
    城戸 慶一郎(ka3633
    人間(蒼)|25才|男性|猟撃士

  • 巽 宗一郎(ka3853
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人

  • 真夜・E=ヘクセ(ka3868
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • ブリーダー
    鎌原 猛明(ka3958
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/24 19:50:14
アイコン ルゥル救出大作戦
鎌原 猛明(ka3958
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/01/28 09:30:38