ゲスト
(ka0000)
策を弄するモノども
マスター:まれのぞみ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 5~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/06/26 22:00
- 完成日
- 2019/07/04 01:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「やりました!?」
「ああ」
傷だらけの顔で部下が笑ってくる。
額から血を流しながら、青い顔をした隊長が応じかけた。
鎧は戦いですっかり壊れ、折れた剣を杖にしていた初老の男は安心したような表情をしかけたまま、そのまま倒れ込んだ。
「メディック!?」
戦いに勝ったという高揚が、その瞬間、凍てつき、悲鳴があがった。
遠く、南の水平線には戦いに敗れ去って行く歪虚の軍勢があった。そして、その歪虚の船団は水平線の向こう側へ、まるで蜃気楼のように消えていく。
戦いは、守備隊の勝ちに終わった……――はずだった。
●
(どうしたものか?)
(攻めきれませんな)
歪虚どもが語り合う。
(まあ、密偵の連絡では今回の攻撃で敵の守備隊には大ダメージを与えたようだとのことだがな。それに指揮官と副指揮官が負傷で動けぬことができぬようになった)
(それは、よい報で。では再攻撃でよろしいですな)
(そのつもりではあるが……今回と同じでは芸がないな)
(そうですな。楽に勝ててしまったおもしろくありませんな)
(勝つならば、勝つらしく楽しめねばならんしな。どうせ、この世界もじきに我らのものになるのだしな)
(しかり。で、いかなる策を弄しますかな?)
(おもしろければよいが……うん、そういえばあれらは使わなかったな)
(あれら?)
(あのデカぶつどもだ)
(図体ばかりでかく頭が悪く、扱いが面倒なので後方においてあります)
(ならば、あれらも暴れたくてしかたあるまい。よい、次の攻撃での先陣を命じよ。ただし、我らと共にではなくな)
(共ではなく?)
(ああ、それに密偵どもにも今回は暴れてもよいと命じよ。数体だったかな、おるのは? 人間に化けることができるヤツラだ。いい混乱要因となろう)
(そういえば人間どものことですから都市の周囲の市民たちも街に集まっておるのでございましょうな)
(捨てておけば良いものをな、まぁ、そのおかげで弄する策がはかどるというものだがな)
化け物どもが、薄気味悪い嗤い声をあげた。
「ああ」
傷だらけの顔で部下が笑ってくる。
額から血を流しながら、青い顔をした隊長が応じかけた。
鎧は戦いですっかり壊れ、折れた剣を杖にしていた初老の男は安心したような表情をしかけたまま、そのまま倒れ込んだ。
「メディック!?」
戦いに勝ったという高揚が、その瞬間、凍てつき、悲鳴があがった。
遠く、南の水平線には戦いに敗れ去って行く歪虚の軍勢があった。そして、その歪虚の船団は水平線の向こう側へ、まるで蜃気楼のように消えていく。
戦いは、守備隊の勝ちに終わった……――はずだった。
●
(どうしたものか?)
(攻めきれませんな)
歪虚どもが語り合う。
(まあ、密偵の連絡では今回の攻撃で敵の守備隊には大ダメージを与えたようだとのことだがな。それに指揮官と副指揮官が負傷で動けぬことができぬようになった)
(それは、よい報で。では再攻撃でよろしいですな)
(そのつもりではあるが……今回と同じでは芸がないな)
(そうですな。楽に勝ててしまったおもしろくありませんな)
(勝つならば、勝つらしく楽しめねばならんしな。どうせ、この世界もじきに我らのものになるのだしな)
(しかり。で、いかなる策を弄しますかな?)
(おもしろければよいが……うん、そういえばあれらは使わなかったな)
(あれら?)
(あのデカぶつどもだ)
(図体ばかりでかく頭が悪く、扱いが面倒なので後方においてあります)
(ならば、あれらも暴れたくてしかたあるまい。よい、次の攻撃での先陣を命じよ。ただし、我らと共にではなくな)
(共ではなく?)
(ああ、それに密偵どもにも今回は暴れてもよいと命じよ。数体だったかな、おるのは? 人間に化けることができるヤツラだ。いい混乱要因となろう)
(そういえば人間どものことですから都市の周囲の市民たちも街に集まっておるのでございましょうな)
(捨てておけば良いものをな、まぁ、そのおかげで弄する策がはかどるというものだがな)
化け物どもが、薄気味悪い嗤い声をあげた。
リプレイ本文
風雲急を告げる――
都市が歪虚の船団を撃退したとの一報がギルドに入ってきたのは先日のことであり、つづいて隊長、副隊長が負傷で指揮不能との続報が入ってきたのは数時間後のことであった。さらに、巨大な化物が二体、都市に近づいてきたとの連絡がきたのは、それから一日もたっていない今朝のことであった。
遠方にあって、戦況が激しく動く中では判断が後手、後手となってしまうのはこのような情報の遅延のせいであり、それが積み重なって重大な判断ミスとなることは赤青、どちらの世界であっても、歴史が挿話が語るとおりである。
このような時は現場に期待するより他にない。
つまり、現地に向かったハンターたちに都市の運命は委ねられたわけである。
●
――そうだな
情報の遅延を防ぐ知恵――いや、人の生み出した英知がある。
「そちらの状況はどうだ?」
ロニ・カルディス(ka0551)が無線を使っている。
(遠方に敵影を発見。仲間たちが壁の向こうへ向かっている。オーバー)
アルバ・ソル(ka4189)の声がする。
「武運を祈る。オーバー」
ロニの額に縦皺が浮く。
(ここにきて大物の投入か……。本隊がまだ残っている以上、これだけでは済みそうにないな。海や港の方向から他の敵が現れないか見張りを立てておく必要もありそうだな)
聖導師は室内を見回した。
しくしくと泣いた子供が母親の胸で泣いている。
顔見知りなのだろうか。婦人たちが怯えたような顔で、何事かしゃべっている。
(おや?)
無類の酒好きの鼻が動く。
アルコールの香りがしたのだ。
見れば、顔を真っ赤にしたでっぷりとした男が大きな声で文句を言っている。周囲では苦笑が起きているのは、普段から、そんな男のせいなのだろう。
なおも都市の人々が建物に入ってくる。
避難作業をしてる守備隊の者たちが、街の人々のなじみであったことが幸いした。
武威せ、護衛について居ることをアピールし住民を慰撫する必要は、思ったよりない。避難行動は、信用と信頼がなければできるものではない。
「こっちです!?」
時音 ざくろ(ka1250)が大声をあげ、手ぶりのジェスチャーで避難民たちを部屋に案内している。
その時、天井が揺れ、石のかけら落ちてきた。
地震にような衝撃波がきた。
距離があっても、それの動きはわかるようだ。
人々が怯えたように顔で見つめ合う。
「みんな落ち着いて、外ではざくろ達の仲間が戦っていてくれているから、大丈夫だから…だから、知り合いさん同士は固まって助け合って、お年寄りや子供、女性の方をしっかり支えてあげてね。そしてここは、ざくろ達が護るから!」
●
遠くに霞むような巨体がある。
海から流れ込んできた朝霧に浮かび上がる異物といっていい。
日差しにかがやいた平原から近づいてくる死の死者だ。
(歪虚の動きも活発になってきたな……いよいよ、と言う感じか……どちらにせよ、被害を出す訳にはいかない。できるだけの事はしよう)
壁から乗り出してアルバは仲間たちの戦いの様子を観察していた。
霊槍「ヴォータン」と盾を所持し、タナトスは状況次第ですぐに構えられる様に背中に背負っている。その隣では紫の色をした長い髪を揺らし、少女――イツキ・ウィオラス(ka6512)は星神器の柄を握る。
(この侵攻に、如何様な真意が有るかは知りません――いいえ、知っていたとしても、私の心が変わるワケもなし。私が為すべきは、私の手が届くものを護る事)
抜刀――
(なればこそ、断ち切りましょう!? 悪夢への道筋は、この先には続かせません)
つづいて刃を抜き、
「この街を守るぜ。そのためにも北から来る巨人を倒すぜ」
南護 炎(ka6651)が独り言つ。
アルバは頷いた。
「始めるぞ」
まずは巨人を相手としよう。
外壁の上から俯瞰して様子を窺い、敵の様子を仲間に伝えると、彼は己の業を始めた。
詠唱とともに、メテオスウォームの火球が霧の平原に向かって放たれると、それらの爆発する轟音が、開戦の合図となった。
付近にあった木を棍棒がわりにした巨人が、その衝撃に片足をつく。
そこへ、魔道エンジンを載せたママチャリが突っ込んできた。
ドリフトをかましての登場だ。
その女、名をアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)という。
(時間をかけれるほど街に被害が増えるだろう。到着後即座に戦闘を仕掛ける!?)
はじめから全力全開。
全身と剣を燃え盛る炎の様なオーラが覆う、
つづけざま、陽炎が舞ったかと思うと、幾人ものアルトが巨人に襲いかかる。
上下左右、三次元のあらゆる角度から切りつけるさまはまさに、残滓が炎の花びらの様に舞い散るがごとし。
「感謝しよう、その巨体、試し切りには丁度良い感じだった」
アルトが巨人の顔に刀を突きつけ、ニヤリと笑う。
嘲笑う――さて、この挑発にのってくるかな?
巨人が激怒したようにうなり声をあげる。
ここまではの返答はアルトが予想した範囲のものであり、想像以上のものであった。
立ち上がった巨人の目が怒りに燃え、咆吼をあげると、その肩が、ぶくぶくと盛り上がり体中の傷がみるみるうちに消えながら、その姿をも形を変えていく。
「超回復力!?」
しかし――
「容姿が変わっている?」
●
街の別方面でも巨鳥との戦いがはじまっていた。
「くそ」
キャリコ・ビューイ(ka5044)が舌打ちをした。
外壁の上に位置して、鳥を狙い撃つために白銀の銃身と碧色の銃把の対物ライフルとも言うべき長大な狙撃銃を準備していた。
パワーリロードを行い、ロングアクション中にハイペリオンで攻撃をするつもりだったのだ。
しかし、それは速い――
いや、それも想像を絶す速度だった。
地上に衝撃波を放つほどの高速。
あるいは地上ぎりぎりのところで音速を出しているかのようなスピードなのだ。ハンターでなければ、その姿を確認することさえできなかったかもしれない。
(速すぎて捉えきれないか)
それは、その腰には大精霊の力をインストールした星神器を所有する仙堂 紫苑(ka5953)も同じだった。アヌビスの能力を超える範囲を一気に駆け抜けていく。
人間の乗った飛行機ならば、エースオブエースでもなければ、ほぼ間違いなく建物と衝突しているはずであるが、それすらも軽々と避けていくのは難敵の証拠か。
建物と建物の間を水の中を泳ぐ魚のように、鳥が疾駆し、過ぎ去っていくスピードに遅れて建物の壁が、屋根が、はげ、落ちてくる。
魔導バイクにまたがった仙堂が、
「行けるか」
アクセルをふかす。
目の前を建物や道にちらかった瓦礫、落下してくる破片を交わしながら、空を見上げる。
上空を平然と飛ぶ鳥の姿が見える。
あれだけ巨大だと、何をせずとも街に被害がでるのか――
もはや街への被害は考えないことにする。
「アルマ頼んだぞ」
●
地下の天井が揺れた。
落下した時の危険性を考慮して天井に灯はなく、地面に置いたランプの薄くらがりに、怯えた人々の顔が浮かんでいる。住民には家族や顔なじみ同士で集まってもらっているが、たまたまこの街に来ていた旅人などはどうしてもいる。
おや?
お手洗いにでもいっていたのだろうか。
例の太った男が戻ってきた。
「よぉ、どうした?」
男が陽気にロニに声をかけてくる。
「いや――」
奇妙だ。
酒気がしない。
(あれほどの酒精におぼれていた男が?)
なんとなく違和感を感じる。
注意してみると手の先には血がしたたっている。
肩に手をやる。
「なんだい?」
これが只人の力か。
ハンターである彼の筋力さえも、ふりきろうとするのだ。
……――!?
もはや疑いはない。
「お前――!?」
手に力がはいる。
「どうしたんですか? 痛いじゃあないですか?」
けらけらと嗤いながら、首がくるりと回転して、背中側に顔が向く。
「化け物!?」
周囲から、その異常なできごとに気づいた人々の悲鳴があがったかと思うと、集まった人々の一部の集団が化け物へと姿を変えた。
●
外では激戦がつづく。
「やはり、まだ生きている?!」
最後のメテオスウォームを喰らわした巨人をアルバは睨む。
今回は頭の部分にダメージが集中して、暴漢にでもあった顔のように血まみれにしたが、それもじきに変形していく。傷が癒えていくのではなく変わっていくことによって傷を治しているのだろうか。
しかし――
「もはや、最初の面影もない姿になったな」
壁を破壊して、巨人は街に侵入してきた。
どうする――
決まっている。
ハンターたちがじりじりと巨人を囲み、叩き、誘導する。
イツキたちは可能な限り人も物も被害を抑える為、常に前に、懐に踏み込み街への侵攻を阻止しようとする。
南郷は、変わり果てた化け物を見上げる。
巨人の上半身すでにアメーバのような奇妙な姿、腕が肩の奇妙なところからはえ、頭も目すらなくなっている。
「目は見えているのか?」
いや、違う。
ハンターたちから攻撃を受けた方角に動く――反応しているような動きだ。
「もはや反射だけで動く、単細胞生物だな」
ならば好都合――
街にいれないという第一の作戦が失敗したのだ、気持ちを切り替え、次善の策に移ろう。
戦い、戦い、戦い――そこに達した。
街の一角。
ハンターが追い込まれる。
かつて巨人であった物体が追い込む。
いや、追い込まれたのは、どちらだったのか。
壊れた家々の並んだ一角で、突然、爆音がした。
その瞬間、巨人の片足が地面にめりこんだ。
●
「この辺りに大きめの地下室のある建物ってありますか?」
夕凪 沙良(ka5139)が、そう守備隊に尋ねたのは作戦会議中のことであった。
「ええ、そのようなものならば街のあちらこちらの。食料庫に使っているものはありますし、なにより下水もありますから」
「下水は後日の復旧を考えると手をつけたくないので、そうなると食料庫ですね」
「なにをされたいので?」
答えは、謎の微笑と、さらなる質問。
「では爆薬などは?」
「爆弾?」
それは火器があるのだからありますが――というあいまいな返事に女は目を細めて告げた。
ならば――と、女は言う。
万が一町中に入ってくるようなことがあれば、地下室に爆薬を仕掛けておき、巨人を誘導し上に来たら爆破する。そして、動けなくなった敵を倒す。
●
「絶対に負けるわけにはいかない」
南護が先陣をきって、罠にはまり動けなくなった巨人に襲いかかった。
そして、その突撃を合図にハンターたちが、まさに獲物に襲いかかる狩猟の民のように武器を手に手に襲撃をかける。
勝負はついた――
「やはり切り札は、最後までとっておくもの」
最後まで残しておいた、この二発。
龍鱗甲。
イツキが肉塊と化した巨人に撃ち込む。
まだ敵には意識――いや、防衛本能のようなものか――が残っていた。腕か、拳か――肉界が人体ほどのサイズの拳となって目の前に迫ってくる。
しかし、これは攻防一体の業。
恐れこそが最大の敵。
瞼を閉じるな。敵を見据えろ。腰に力をこめろ、そして――拳をぶち抜く!?
●
アルトが頭をひねる。
(しかし……こいつらをここまで温存しておいたのはどういう事だろうな? 指揮官と副指揮官が負傷まで待っていた? 守備隊の判断力を奪ってデカブツをぶつける、か。……あいつら囮の可能性もあるか?)
建物に半ば影となった巨体を見上げる。
(デカブツで気を引いて、その間に他が隠れて何かをする? 町に火を放ったり住民を殺して恐慌状態に陥らせ、まともな抵抗を封じるとかだろうか?)
自分の考えにアルトは愕然とした。
わかった――では、対応策があるのかと問われれば、その時に対処するよる他に手段はない。
しかも――
(かといって、このデカブツどもを放置することもできない、か。いやらしい手段だな!?)
落ちてきた建物の破片をよけて、街の反対側の壁を見る。
まだ、大鳥は健在だ。
●
「シオンー。はいですーっ」
アルマ・A・エインズワース(ka4901)の声が無線にのって聞こえる。
「キャリコさん、お願いしますですー」
対巨鳥の作戦も、巨人と同じようにすでにたててある。
問題は、鳥がこちらの意図につきあってくれるかだが――やるしかない。
「こっちだ、こっちだ!?」
ハンターたちが鳥を誘う。
「わふ、わふ。おっきな鳥さんです!」
人間を丸呑みしそうな巨大なくちばしをつきだして突っ込んでくる高速の物体。正直、ここまでスピードが速いと低空では、目が、それの姿をはっきりと捕らえることがデキないので、それが鳥であることを忘れてしまう。
巨大な矢が迫ってくるような感じですらあるのだ。
だが、対抗策はある。
守備隊を何人か借りて、行動開始前にロープを渡し、すでに街のあちこちらにロープを張り巡らしている。
蜘蛛の巣とまではいかなくとも、網の目程度にはあちこちらの路地の建物と、建物の間にロープを張ってある。
本来ならば、これで鳥を捕まえる予定であったが、敵の勢いがロープの強度を上回っている。幾つかは、その勢いで破られている。
しかし、こうなってしまえば、ひとつで敵を捕らえるためのものではない。
網のひとつ、ひとつは鳥を捕らえることができなくとも、そのひとつひとつによって、その大鳥の強みであるスピードは殺すことはできる。
先ほどより、顕かにその勢いはなくなっている。
「待っていたぞ」
鳥を落とす場所は通り、又は広場だと決めていた。
(その方が俺も気にせずぶっ放せるからな)
それが、いまならば叶う。
体は大きくとも、しょせん鳥頭である。
気がついていないようだが、それは罠にはまっていたのだ。
広場に出た。
鳥がバイクから降りた男に向かって突っ込んでくる。
剣を抜く。
「星神器「アヌビス」、こいつの能力だ」
突然、鳥の動きが止まった。
器に宿りし力、死者の掟にしばられた鳥は、もはや蜘蛛の巣に捕らえられた罪人でしかない。そして、天より罰がくだり、鳥の頭が破裂した。
「任務は完了したか? 状況確認を願う」
狙撃銃をのぞき込んみながらキャリコが現場に確認を求めていた。
●
アルマが、住民対応について事前にこう語っていた。
「住民さんには家族や仲良しのお友達同士で集まっててもらうようにお願いするのがいいと思うですっ! だって、大事な子が傍にいたら安心ですもんね! それに、知らない顔がいれば守備隊が怪しむこともできるでしょ? 知らない顔同士で固まっている場合暴れ出したとしてそこの対処もしやすい……という思考」
しかし、この考えの裏をつかれた。
無貌の化け物はモデルのない誰かに化けるだけでもなく、特定の人間にも化けることもできるようなのだ。
「どうりでな」
別に驚きはしない。
ふと唇が震える。
ロニは鎮魂歌に聞こえる旋律を歌い上げる。
歪虚は、何をしているという顔をするが、やがて無貌たちの動きが鈍り始める。
(やはりな)
化けの皮をはいでない敵影も、この建物の中にはいる。
しかし、敵味方が判別できれば十分だ。
聖なる光が無辜の民を包む。
そして――ガイウスジェイル。
ざくろがマテリアルを展開すると、まるで誘蛾灯にでも誘われるように無貌の歪虚がこぞって、彼に押しかぶさってくる。
(よし――これで難民さん達を庇える)
「超機導結界展開……ここはもう、ざくろの空間だ!」
ざくろは駆けだした。
建物の中でパニックが起きないよう、出来る限り避難民に怪我人が出ない様庇った上で避難民から遠ざける様に弾き飛ばし外へ――外へ――通路に転がっていた死体を飛び越え――外へ――外へ出た。
振り返って剣を握る。
そして、扉の前に立ちはだかると歪虚を切って、切って、切りまくり――
「はい、お疲れさま」
扉から出てきた最後の一体をざくろを切り倒すと、安堵のため息。
彼の鼻に塩の香り。
「あ、そうか……これは――」
緊張がとけると、周囲の様子が目に入ってきた。
リアルブルー時代に見た、怪獣映画のラストシーンだろうか。
すっかり破壊されつくされ、建物という建物に傷のないものはなく、あちらこちらで煙があがっている。
もはや、都市ではなく廃墟だ。
(勝ったのか――負けたのか……)
終わったという虚無感と、ほっとした安堵。
ただ、海から風が吹いている……――吹いている――潮騒がする――記憶の追憶の声がする――アルマが地図を見ながら語っていた。
(わぅ。……南に本隊が去って行って、この方角から敵さんが来てるってことはこれ囲まれてますねー)
はっとして首にしていた双眼鏡を目にあてる。
黒い、不気味な人のセンスにあらざる船団が見える。
(あれか!?)
敵の本隊か。
この状態で、敵の本体である船団に突っ込まれた。
(まずい――)
無線に手が伸びる
(みんなを集めなくちゃ)
と、その時、レンズ越しの海で動きがあった。
その船団は、やがて水平線の向こうに消えていったのだった。
「勝った――……のか?」
●
後日、情報封鎖を行っていたせいで現場の状況がわからず、せっかくの好機に都市に突入することなく、敗北、撤退していった歪虚の船団があったという噂がまことしやかに語られたのであった。
都市が歪虚の船団を撃退したとの一報がギルドに入ってきたのは先日のことであり、つづいて隊長、副隊長が負傷で指揮不能との続報が入ってきたのは数時間後のことであった。さらに、巨大な化物が二体、都市に近づいてきたとの連絡がきたのは、それから一日もたっていない今朝のことであった。
遠方にあって、戦況が激しく動く中では判断が後手、後手となってしまうのはこのような情報の遅延のせいであり、それが積み重なって重大な判断ミスとなることは赤青、どちらの世界であっても、歴史が挿話が語るとおりである。
このような時は現場に期待するより他にない。
つまり、現地に向かったハンターたちに都市の運命は委ねられたわけである。
●
――そうだな
情報の遅延を防ぐ知恵――いや、人の生み出した英知がある。
「そちらの状況はどうだ?」
ロニ・カルディス(ka0551)が無線を使っている。
(遠方に敵影を発見。仲間たちが壁の向こうへ向かっている。オーバー)
アルバ・ソル(ka4189)の声がする。
「武運を祈る。オーバー」
ロニの額に縦皺が浮く。
(ここにきて大物の投入か……。本隊がまだ残っている以上、これだけでは済みそうにないな。海や港の方向から他の敵が現れないか見張りを立てておく必要もありそうだな)
聖導師は室内を見回した。
しくしくと泣いた子供が母親の胸で泣いている。
顔見知りなのだろうか。婦人たちが怯えたような顔で、何事かしゃべっている。
(おや?)
無類の酒好きの鼻が動く。
アルコールの香りがしたのだ。
見れば、顔を真っ赤にしたでっぷりとした男が大きな声で文句を言っている。周囲では苦笑が起きているのは、普段から、そんな男のせいなのだろう。
なおも都市の人々が建物に入ってくる。
避難作業をしてる守備隊の者たちが、街の人々のなじみであったことが幸いした。
武威せ、護衛について居ることをアピールし住民を慰撫する必要は、思ったよりない。避難行動は、信用と信頼がなければできるものではない。
「こっちです!?」
時音 ざくろ(ka1250)が大声をあげ、手ぶりのジェスチャーで避難民たちを部屋に案内している。
その時、天井が揺れ、石のかけら落ちてきた。
地震にような衝撃波がきた。
距離があっても、それの動きはわかるようだ。
人々が怯えたように顔で見つめ合う。
「みんな落ち着いて、外ではざくろ達の仲間が戦っていてくれているから、大丈夫だから…だから、知り合いさん同士は固まって助け合って、お年寄りや子供、女性の方をしっかり支えてあげてね。そしてここは、ざくろ達が護るから!」
●
遠くに霞むような巨体がある。
海から流れ込んできた朝霧に浮かび上がる異物といっていい。
日差しにかがやいた平原から近づいてくる死の死者だ。
(歪虚の動きも活発になってきたな……いよいよ、と言う感じか……どちらにせよ、被害を出す訳にはいかない。できるだけの事はしよう)
壁から乗り出してアルバは仲間たちの戦いの様子を観察していた。
霊槍「ヴォータン」と盾を所持し、タナトスは状況次第ですぐに構えられる様に背中に背負っている。その隣では紫の色をした長い髪を揺らし、少女――イツキ・ウィオラス(ka6512)は星神器の柄を握る。
(この侵攻に、如何様な真意が有るかは知りません――いいえ、知っていたとしても、私の心が変わるワケもなし。私が為すべきは、私の手が届くものを護る事)
抜刀――
(なればこそ、断ち切りましょう!? 悪夢への道筋は、この先には続かせません)
つづいて刃を抜き、
「この街を守るぜ。そのためにも北から来る巨人を倒すぜ」
南護 炎(ka6651)が独り言つ。
アルバは頷いた。
「始めるぞ」
まずは巨人を相手としよう。
外壁の上から俯瞰して様子を窺い、敵の様子を仲間に伝えると、彼は己の業を始めた。
詠唱とともに、メテオスウォームの火球が霧の平原に向かって放たれると、それらの爆発する轟音が、開戦の合図となった。
付近にあった木を棍棒がわりにした巨人が、その衝撃に片足をつく。
そこへ、魔道エンジンを載せたママチャリが突っ込んできた。
ドリフトをかましての登場だ。
その女、名をアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)という。
(時間をかけれるほど街に被害が増えるだろう。到着後即座に戦闘を仕掛ける!?)
はじめから全力全開。
全身と剣を燃え盛る炎の様なオーラが覆う、
つづけざま、陽炎が舞ったかと思うと、幾人ものアルトが巨人に襲いかかる。
上下左右、三次元のあらゆる角度から切りつけるさまはまさに、残滓が炎の花びらの様に舞い散るがごとし。
「感謝しよう、その巨体、試し切りには丁度良い感じだった」
アルトが巨人の顔に刀を突きつけ、ニヤリと笑う。
嘲笑う――さて、この挑発にのってくるかな?
巨人が激怒したようにうなり声をあげる。
ここまではの返答はアルトが予想した範囲のものであり、想像以上のものであった。
立ち上がった巨人の目が怒りに燃え、咆吼をあげると、その肩が、ぶくぶくと盛り上がり体中の傷がみるみるうちに消えながら、その姿をも形を変えていく。
「超回復力!?」
しかし――
「容姿が変わっている?」
●
街の別方面でも巨鳥との戦いがはじまっていた。
「くそ」
キャリコ・ビューイ(ka5044)が舌打ちをした。
外壁の上に位置して、鳥を狙い撃つために白銀の銃身と碧色の銃把の対物ライフルとも言うべき長大な狙撃銃を準備していた。
パワーリロードを行い、ロングアクション中にハイペリオンで攻撃をするつもりだったのだ。
しかし、それは速い――
いや、それも想像を絶す速度だった。
地上に衝撃波を放つほどの高速。
あるいは地上ぎりぎりのところで音速を出しているかのようなスピードなのだ。ハンターでなければ、その姿を確認することさえできなかったかもしれない。
(速すぎて捉えきれないか)
それは、その腰には大精霊の力をインストールした星神器を所有する仙堂 紫苑(ka5953)も同じだった。アヌビスの能力を超える範囲を一気に駆け抜けていく。
人間の乗った飛行機ならば、エースオブエースでもなければ、ほぼ間違いなく建物と衝突しているはずであるが、それすらも軽々と避けていくのは難敵の証拠か。
建物と建物の間を水の中を泳ぐ魚のように、鳥が疾駆し、過ぎ去っていくスピードに遅れて建物の壁が、屋根が、はげ、落ちてくる。
魔導バイクにまたがった仙堂が、
「行けるか」
アクセルをふかす。
目の前を建物や道にちらかった瓦礫、落下してくる破片を交わしながら、空を見上げる。
上空を平然と飛ぶ鳥の姿が見える。
あれだけ巨大だと、何をせずとも街に被害がでるのか――
もはや街への被害は考えないことにする。
「アルマ頼んだぞ」
●
地下の天井が揺れた。
落下した時の危険性を考慮して天井に灯はなく、地面に置いたランプの薄くらがりに、怯えた人々の顔が浮かんでいる。住民には家族や顔なじみ同士で集まってもらっているが、たまたまこの街に来ていた旅人などはどうしてもいる。
おや?
お手洗いにでもいっていたのだろうか。
例の太った男が戻ってきた。
「よぉ、どうした?」
男が陽気にロニに声をかけてくる。
「いや――」
奇妙だ。
酒気がしない。
(あれほどの酒精におぼれていた男が?)
なんとなく違和感を感じる。
注意してみると手の先には血がしたたっている。
肩に手をやる。
「なんだい?」
これが只人の力か。
ハンターである彼の筋力さえも、ふりきろうとするのだ。
……――!?
もはや疑いはない。
「お前――!?」
手に力がはいる。
「どうしたんですか? 痛いじゃあないですか?」
けらけらと嗤いながら、首がくるりと回転して、背中側に顔が向く。
「化け物!?」
周囲から、その異常なできごとに気づいた人々の悲鳴があがったかと思うと、集まった人々の一部の集団が化け物へと姿を変えた。
●
外では激戦がつづく。
「やはり、まだ生きている?!」
最後のメテオスウォームを喰らわした巨人をアルバは睨む。
今回は頭の部分にダメージが集中して、暴漢にでもあった顔のように血まみれにしたが、それもじきに変形していく。傷が癒えていくのではなく変わっていくことによって傷を治しているのだろうか。
しかし――
「もはや、最初の面影もない姿になったな」
壁を破壊して、巨人は街に侵入してきた。
どうする――
決まっている。
ハンターたちがじりじりと巨人を囲み、叩き、誘導する。
イツキたちは可能な限り人も物も被害を抑える為、常に前に、懐に踏み込み街への侵攻を阻止しようとする。
南郷は、変わり果てた化け物を見上げる。
巨人の上半身すでにアメーバのような奇妙な姿、腕が肩の奇妙なところからはえ、頭も目すらなくなっている。
「目は見えているのか?」
いや、違う。
ハンターたちから攻撃を受けた方角に動く――反応しているような動きだ。
「もはや反射だけで動く、単細胞生物だな」
ならば好都合――
街にいれないという第一の作戦が失敗したのだ、気持ちを切り替え、次善の策に移ろう。
戦い、戦い、戦い――そこに達した。
街の一角。
ハンターが追い込まれる。
かつて巨人であった物体が追い込む。
いや、追い込まれたのは、どちらだったのか。
壊れた家々の並んだ一角で、突然、爆音がした。
その瞬間、巨人の片足が地面にめりこんだ。
●
「この辺りに大きめの地下室のある建物ってありますか?」
夕凪 沙良(ka5139)が、そう守備隊に尋ねたのは作戦会議中のことであった。
「ええ、そのようなものならば街のあちらこちらの。食料庫に使っているものはありますし、なにより下水もありますから」
「下水は後日の復旧を考えると手をつけたくないので、そうなると食料庫ですね」
「なにをされたいので?」
答えは、謎の微笑と、さらなる質問。
「では爆薬などは?」
「爆弾?」
それは火器があるのだからありますが――というあいまいな返事に女は目を細めて告げた。
ならば――と、女は言う。
万が一町中に入ってくるようなことがあれば、地下室に爆薬を仕掛けておき、巨人を誘導し上に来たら爆破する。そして、動けなくなった敵を倒す。
●
「絶対に負けるわけにはいかない」
南護が先陣をきって、罠にはまり動けなくなった巨人に襲いかかった。
そして、その突撃を合図にハンターたちが、まさに獲物に襲いかかる狩猟の民のように武器を手に手に襲撃をかける。
勝負はついた――
「やはり切り札は、最後までとっておくもの」
最後まで残しておいた、この二発。
龍鱗甲。
イツキが肉塊と化した巨人に撃ち込む。
まだ敵には意識――いや、防衛本能のようなものか――が残っていた。腕か、拳か――肉界が人体ほどのサイズの拳となって目の前に迫ってくる。
しかし、これは攻防一体の業。
恐れこそが最大の敵。
瞼を閉じるな。敵を見据えろ。腰に力をこめろ、そして――拳をぶち抜く!?
●
アルトが頭をひねる。
(しかし……こいつらをここまで温存しておいたのはどういう事だろうな? 指揮官と副指揮官が負傷まで待っていた? 守備隊の判断力を奪ってデカブツをぶつける、か。……あいつら囮の可能性もあるか?)
建物に半ば影となった巨体を見上げる。
(デカブツで気を引いて、その間に他が隠れて何かをする? 町に火を放ったり住民を殺して恐慌状態に陥らせ、まともな抵抗を封じるとかだろうか?)
自分の考えにアルトは愕然とした。
わかった――では、対応策があるのかと問われれば、その時に対処するよる他に手段はない。
しかも――
(かといって、このデカブツどもを放置することもできない、か。いやらしい手段だな!?)
落ちてきた建物の破片をよけて、街の反対側の壁を見る。
まだ、大鳥は健在だ。
●
「シオンー。はいですーっ」
アルマ・A・エインズワース(ka4901)の声が無線にのって聞こえる。
「キャリコさん、お願いしますですー」
対巨鳥の作戦も、巨人と同じようにすでにたててある。
問題は、鳥がこちらの意図につきあってくれるかだが――やるしかない。
「こっちだ、こっちだ!?」
ハンターたちが鳥を誘う。
「わふ、わふ。おっきな鳥さんです!」
人間を丸呑みしそうな巨大なくちばしをつきだして突っ込んでくる高速の物体。正直、ここまでスピードが速いと低空では、目が、それの姿をはっきりと捕らえることがデキないので、それが鳥であることを忘れてしまう。
巨大な矢が迫ってくるような感じですらあるのだ。
だが、対抗策はある。
守備隊を何人か借りて、行動開始前にロープを渡し、すでに街のあちこちらにロープを張り巡らしている。
蜘蛛の巣とまではいかなくとも、網の目程度にはあちこちらの路地の建物と、建物の間にロープを張ってある。
本来ならば、これで鳥を捕まえる予定であったが、敵の勢いがロープの強度を上回っている。幾つかは、その勢いで破られている。
しかし、こうなってしまえば、ひとつで敵を捕らえるためのものではない。
網のひとつ、ひとつは鳥を捕らえることができなくとも、そのひとつひとつによって、その大鳥の強みであるスピードは殺すことはできる。
先ほどより、顕かにその勢いはなくなっている。
「待っていたぞ」
鳥を落とす場所は通り、又は広場だと決めていた。
(その方が俺も気にせずぶっ放せるからな)
それが、いまならば叶う。
体は大きくとも、しょせん鳥頭である。
気がついていないようだが、それは罠にはまっていたのだ。
広場に出た。
鳥がバイクから降りた男に向かって突っ込んでくる。
剣を抜く。
「星神器「アヌビス」、こいつの能力だ」
突然、鳥の動きが止まった。
器に宿りし力、死者の掟にしばられた鳥は、もはや蜘蛛の巣に捕らえられた罪人でしかない。そして、天より罰がくだり、鳥の頭が破裂した。
「任務は完了したか? 状況確認を願う」
狙撃銃をのぞき込んみながらキャリコが現場に確認を求めていた。
●
アルマが、住民対応について事前にこう語っていた。
「住民さんには家族や仲良しのお友達同士で集まっててもらうようにお願いするのがいいと思うですっ! だって、大事な子が傍にいたら安心ですもんね! それに、知らない顔がいれば守備隊が怪しむこともできるでしょ? 知らない顔同士で固まっている場合暴れ出したとしてそこの対処もしやすい……という思考」
しかし、この考えの裏をつかれた。
無貌の化け物はモデルのない誰かに化けるだけでもなく、特定の人間にも化けることもできるようなのだ。
「どうりでな」
別に驚きはしない。
ふと唇が震える。
ロニは鎮魂歌に聞こえる旋律を歌い上げる。
歪虚は、何をしているという顔をするが、やがて無貌たちの動きが鈍り始める。
(やはりな)
化けの皮をはいでない敵影も、この建物の中にはいる。
しかし、敵味方が判別できれば十分だ。
聖なる光が無辜の民を包む。
そして――ガイウスジェイル。
ざくろがマテリアルを展開すると、まるで誘蛾灯にでも誘われるように無貌の歪虚がこぞって、彼に押しかぶさってくる。
(よし――これで難民さん達を庇える)
「超機導結界展開……ここはもう、ざくろの空間だ!」
ざくろは駆けだした。
建物の中でパニックが起きないよう、出来る限り避難民に怪我人が出ない様庇った上で避難民から遠ざける様に弾き飛ばし外へ――外へ――通路に転がっていた死体を飛び越え――外へ――外へ出た。
振り返って剣を握る。
そして、扉の前に立ちはだかると歪虚を切って、切って、切りまくり――
「はい、お疲れさま」
扉から出てきた最後の一体をざくろを切り倒すと、安堵のため息。
彼の鼻に塩の香り。
「あ、そうか……これは――」
緊張がとけると、周囲の様子が目に入ってきた。
リアルブルー時代に見た、怪獣映画のラストシーンだろうか。
すっかり破壊されつくされ、建物という建物に傷のないものはなく、あちらこちらで煙があがっている。
もはや、都市ではなく廃墟だ。
(勝ったのか――負けたのか……)
終わったという虚無感と、ほっとした安堵。
ただ、海から風が吹いている……――吹いている――潮騒がする――記憶の追憶の声がする――アルマが地図を見ながら語っていた。
(わぅ。……南に本隊が去って行って、この方角から敵さんが来てるってことはこれ囲まれてますねー)
はっとして首にしていた双眼鏡を目にあてる。
黒い、不気味な人のセンスにあらざる船団が見える。
(あれか!?)
敵の本隊か。
この状態で、敵の本体である船団に突っ込まれた。
(まずい――)
無線に手が伸びる
(みんなを集めなくちゃ)
と、その時、レンズ越しの海で動きがあった。
その船団は、やがて水平線の向こうに消えていったのだった。
「勝った――……のか?」
●
後日、情報封鎖を行っていたせいで現場の状況がわからず、せっかくの好機に都市に突入することなく、敗北、撤退していった歪虚の船団があったという噂がまことしやかに語られたのであった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談所 夕凪 沙良(ka5139) 人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2019/06/26 20:50:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/06/26 11:04:58 |