ゲスト
(ka0000)
いい夢見たし今年こそ本気出す
マスター:十野誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/01/31 12:00
- 完成日
- 2015/02/08 17:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「異世界に行ったら変われる……そう思っていた時期がありました――
元の世界だと、なにをやってもダメで。けれど、異世界に行ったら。イチからはじめられる場所なら……!
そう、思ってました……」
「あの。ご用件は……」
「けれど、残念ながら、この世界も現実なのよね。オレが現実でうまくやれるなんて……」
「え、えぇと。ご愁傷さま……? それより、ご用件は……」
「どうせ引きこもりですよ、だけど夢を見るぐらい良いじゃないか。オレにだってそれをするぐらいの自由は……」
目の前の男の様子に受付嬢は一つため息をつくと、彼をスルーして後ろに並んでいたハンターに向かって手招きをして先に受け付けを始める
――あ、次の方どうぞ。はい、この依頼ですね? 戦闘が発生する事がありますが、大丈夫ですか? わかりました。ではこちらが同じ依頼を受ける方の一覧で――
「だけど!」
「ちょーっと待っててくださいねー。はい。よく相談なさって行ってください。ご無事をお祈りしております……」
自分が後回しにされていることに気がついたのか、男が大きな声をあげるが、受付嬢はなだめるように声をかけると、そのまま先に案内したハンターの受付を済ませる。
「――で、なんでしょう?」
「そ、その態度は無いんじゃないか!?」
改めて視線を向けた受付嬢に、男は怯えた声をあげる
怖い目をしていただろうかーー?
思わず手元にあった手鏡を見て自分の顔つきを確認。いつもどおりね、大丈夫。
一つ咳払いをすると、彼女は改めて笑顔を浮かべて男に話かける。
「いらっしゃいませ、本日のご用件をおうかがいしま……」
「そこから!?」
「聞かなかったことにしてあげるって言ってるんです。
こほん。依頼の発注はアチラ。ハンターの悩み事相談は、また向こう。愚痴の垂れ流しに着きましては受け付けておりません。近場の酒場辺りでどうぞ」
「依頼です! 依頼を受けにきました!」
流れるように言葉をつなぐ女性に、男はあわてて言葉を返す。
男の様子は、いかにもかけだしのハンターと言ったところ。ただし、その防具にはいくつかの傷が残っており、戦闘には参加したことがあると思われる。
「では、ご希望の依頼はどちらでしょうか?」
「初夢で見たんですーー」
これまでダメだった自分が、異世界に来てもなにも変わらなかった自分が。魔法を使ってバッタバッタと雑魔を倒して大活躍。街を歩けば……
「あ、次の方どうーー」
「ごめんなさいおれがわるかったです」
「えぇぃ、泣きつかないでください。うっとうしい。
とりあえず、こちらと言うことでよいですか?」
腕にしがみつく男を振り払い、受付嬢は手元から一枚の依頼書を取り出す。
内容は、街道で商人などを襲うようになったゴブリンの退治依頼。
現れたゴブリンはいずれも並みの力を持つようだ。また、その巣まで倒す必要は無く、あくまでも街道に現れたものを倒すだけ。
簡単と言えば簡単な依頼だろう。
「えっと……」
「協力して戦っていただければ、難しくはありませんね」
どうでしょうか? と言う彼女に、男はぱあっ、と笑みを浮かべる。
「ここに女神がいた!」
「あー、はいはい。さっさと行ってください。面倒ですから」
男は受付を済ませると、彼女を何度も拝みながら窓口を後にしていく。
それを見送ると、受付嬢は後ろに残っていたハンター……貴方達にひどく申し訳なさそうな顔を見せて告げた。
「えぇと、すみません。アレと一緒に行っていただけませんか? ゴブリン退治」
「異世界に行ったら変われる……そう思っていた時期がありました――
元の世界だと、なにをやってもダメで。けれど、異世界に行ったら。イチからはじめられる場所なら……!
そう、思ってました……」
「あの。ご用件は……」
「けれど、残念ながら、この世界も現実なのよね。オレが現実でうまくやれるなんて……」
「え、えぇと。ご愁傷さま……? それより、ご用件は……」
「どうせ引きこもりですよ、だけど夢を見るぐらい良いじゃないか。オレにだってそれをするぐらいの自由は……」
目の前の男の様子に受付嬢は一つため息をつくと、彼をスルーして後ろに並んでいたハンターに向かって手招きをして先に受け付けを始める
――あ、次の方どうぞ。はい、この依頼ですね? 戦闘が発生する事がありますが、大丈夫ですか? わかりました。ではこちらが同じ依頼を受ける方の一覧で――
「だけど!」
「ちょーっと待っててくださいねー。はい。よく相談なさって行ってください。ご無事をお祈りしております……」
自分が後回しにされていることに気がついたのか、男が大きな声をあげるが、受付嬢はなだめるように声をかけると、そのまま先に案内したハンターの受付を済ませる。
「――で、なんでしょう?」
「そ、その態度は無いんじゃないか!?」
改めて視線を向けた受付嬢に、男は怯えた声をあげる
怖い目をしていただろうかーー?
思わず手元にあった手鏡を見て自分の顔つきを確認。いつもどおりね、大丈夫。
一つ咳払いをすると、彼女は改めて笑顔を浮かべて男に話かける。
「いらっしゃいませ、本日のご用件をおうかがいしま……」
「そこから!?」
「聞かなかったことにしてあげるって言ってるんです。
こほん。依頼の発注はアチラ。ハンターの悩み事相談は、また向こう。愚痴の垂れ流しに着きましては受け付けておりません。近場の酒場辺りでどうぞ」
「依頼です! 依頼を受けにきました!」
流れるように言葉をつなぐ女性に、男はあわてて言葉を返す。
男の様子は、いかにもかけだしのハンターと言ったところ。ただし、その防具にはいくつかの傷が残っており、戦闘には参加したことがあると思われる。
「では、ご希望の依頼はどちらでしょうか?」
「初夢で見たんですーー」
これまでダメだった自分が、異世界に来てもなにも変わらなかった自分が。魔法を使ってバッタバッタと雑魔を倒して大活躍。街を歩けば……
「あ、次の方どうーー」
「ごめんなさいおれがわるかったです」
「えぇぃ、泣きつかないでください。うっとうしい。
とりあえず、こちらと言うことでよいですか?」
腕にしがみつく男を振り払い、受付嬢は手元から一枚の依頼書を取り出す。
内容は、街道で商人などを襲うようになったゴブリンの退治依頼。
現れたゴブリンはいずれも並みの力を持つようだ。また、その巣まで倒す必要は無く、あくまでも街道に現れたものを倒すだけ。
簡単と言えば簡単な依頼だろう。
「えっと……」
「協力して戦っていただければ、難しくはありませんね」
どうでしょうか? と言う彼女に、男はぱあっ、と笑みを浮かべる。
「ここに女神がいた!」
「あー、はいはい。さっさと行ってください。面倒ですから」
男は受付を済ませると、彼女を何度も拝みながら窓口を後にしていく。
それを見送ると、受付嬢は後ろに残っていたハンター……貴方達にひどく申し訳なさそうな顔を見せて告げた。
「えぇと、すみません。アレと一緒に行っていただけませんか? ゴブリン退治」
リプレイ本文
●
「さて。現地に着く前に確認を致しましょうか」
天央 観智(ka0896)は、ゴブリンが出没するという街道に入る前に、ハンター達にそう言って呼びかける。
少人数の商人を選び襲うソレらに対し、悪いケースを踏まえた彼は慎重な行動を考えていた。
「3人が囮として進み、私達3人がバックアップ。そして」
「私と、ユーリィさんが木の上から攻撃ですね」
天央の言葉に続け、自らの行動を言うのはウィ=ガ(ka3596)だ。
ゴブリンが襲っているのはあくまでも戦いになれていなかった商人。ならば木の上まで確認する事は無いだろう。
樹上では地上と違って動きは取りにくいが、今回の戦いならば問題はないだろう。
「ですね。よろしくお願いいたします」
「木の上に2人の、後ろからが3人……アレ?」
言葉に頷く天央を見ていた秋田が、今気がついたというように首をかしげる。
「大丈夫だよ、秋田! 新人君のために、この僕が素晴らしい戦い方を教えてあげよう!」
秋田に声そう声をかけるのは仁川 リア(ka3483)だ。が。彼がぶん、と軽く振って見せるのは一本の片手剣。
どうみても、一般的な魔術師が持つ者ではない。
(あの、俺魔術師です、剣の振り方を聞いても……なんて言えるかぁー!)
言えるなら引きこもらないっ! などと思っているのかいないのか。秋田はそのぼっち生活で培われた、あいまいな笑みを浮かべながら仁川に答える。
「お、おぉ。それなら大丈夫です……ね……?」
「そう言えば、秋田さんは如何して変わりたいと?」
そんなやり取りを聞きつけたウィ=ガは秋田にそう声をかける。
異世界に来たことで、何かが変わるかもしれないと言うのは分かる気がすると、自らの経験を踏まえてウィ=ガは思う。ただ、何もかもが変わればいいと言うものではない。変わらないものもまた大切なのだ。
「……はっ! そうだった! 俺は変わるために来たんだった……!」
ウィ=ガの言葉の真意がどこまで届いたのか。聞いた秋田がハッとした顔になる。
「そう、そうだ……。俺はあの夢で見た……呪われしこの血脈の力が解き放たれる未来を! そして宿命の導きにより敵対してしまうあの子と、愛する子と戦わなくてはならなくなると言う未来を……!」
「奇遇ね。私もあなたのような人を夢で見たのよ。その人はね。とても強くて……頼りになって」
暑く語る秋田に声をかけるのは、桃色の髪の少女。慈姑 ぽえむ(ka3243)だ。
「ま、まさか君は……!」
「私の夢では、最後は……あっ。何でもないわ」
「なんだって……!? き、聞かせてくれ、最後はどう……」
「そうね……続きは、この依頼が終わったらにしない?」
にこり、と笑みを浮かべて言う慈姑に、秋田は頬を赤くして張り切った声を上げる。
「よし……! やってやるぜ……!」
しかし、直後に彼は現実を前に手で顔を覆う。彼の担当は囮行動の一員。想像していた活躍となんかちがう。
そこに声をかけるのは、パッツィ・フォックス(ka3851)だ。
「……新人君は元引きこもりか。あたしもだ。親近感はあるな、よろしく頼むよ」
不良じみた顔を浮かべると、彼女は紙巻き煙草を1本手にとって見せた。
「吸うか? 一本ぐらいなら恵んでやらんこともない」
「あ、えっと……」
おどつく秋田を前にしながら、パッツイは煙草をくわえて深く吸うと、不良のような笑みを浮かべる。
「く、俺だって……!」
と言って煙草を受け取ろうとするが、秋田(17歳・喫煙経験無し)は、近づいたところで煙草の煙を吸い込み、思い切りせき込んでしまう。
※ リアルブルーでは未成年の方の喫煙は禁止されています。
「くそ、夢ならどうってことは無かったはずなのに……!」
「皆さん、お話はその辺りに。そろそろゴブリン達の襲撃の有った場所です」
天央の言う通り。話しながらも進んでいた彼らの前には商人が襲われたと言う場所が近づいていた。
●
(自信かぁ……自信って自然と付いていくモノだよね……)
樹上に登ったユーリィ・リッチウェイ(ka3557)はそんなことを思う。
下から「見え……ない!」と悔しがる声が聞こえた気もするが、気のせいだろう。どこから見ても女の子だが……こう見えてユーリィは男の子だ。男の娘かもしれないが、大きな問題とは――いや、問題か?
もっとも、それをどう思うかはユーリィ次第と言うものだ。
(「付けさせる」モノじゃないと思うんだけど……でも、偶にはイイかな♪)
自分の行動により、自信ははじめて身につくものだ。ただ、これまで自信を持っていなかった者に自信を付けさせようというのなら、それは手助け程度はやっても構わないだろう。もっとも、本人がやる気があってはじめて出来ることだが。
樹上からは、下を行く3人のハンターが見える。
彼らの役目は、ゴブリンに対する囮。そのことを考えると、緊張をしていてもおかしくはない。
が。目の前の光景はそんな予想からは離れたものだった。
「いっちにっ♪ いっちにっ♪ ……どーぉ? 慣れてきたー?」
「い、いっちにっ……? いっち、に……え、えぇと……」
秋田の手を持ち、ワンドをふるう練習をさせるのは、黒の夢(ka0187)だ。
ゴブリンがその姿を現す前に慣れさせようと、彼女は秋田の身体文字通り『手取り足取り』で練習をしていた。
先達たる魔術師に手取り足取り教えてもらえる――駆け出しの魔術師ならば、あこがれるシチュエーションだろう。実戦において満足に戦えた事がない秋田にはよい訓練と言える。
もっとも。それも彼が集中出来ていたら、だが。
(……ひょっとしてわざとか……?! まさかの『当ててんのよ』か!?)
彼の背中に当たるのは、経験したことのない柔らかな感触。
煩悩と言うなかれ。彼の年齢を考えればいたって正常な反応である……!
「がんばるのである、一匹でも倒せたらイイコトしてあげるのな♪」
「ケンじゃなくて、ツルギ……って、イイコト!?」
秋田剣(アキタ・ツルギ)が抗議を取りやめて目を見開き、覚醒をしそうになる。
そんな中、周囲の気配をそれとなく伺っていた仁川が静かにと言うようなポーズを見せ、口を開く。
「来るね。準備して」
●
「ゴブ! ゴブー!(訳:ヒャハー! 生きイイえものだー!)」
「ゴォブ、ゴブ! ゴブ、ゴブ!(訳:俺ら、うばう! おまえら、命おしければ荷物おいてけ!)」
「ゴブブ!ゴブ!(訳:食い物! なければブキ!)」
勢いよく飛び出してきたのは6体のゴブリン。何かをわめき散らしながら、その手に持った粗末な刃物をハンター達に見せる。
言葉の意味は分からないが、その身ぶりからすると、荷物を置いて行けと言っているのだろう。
※ 以降、鳴き声につきましては翻訳した状態でお送りいたします。
『俺たち、ほんき!』
『勝てばメス達がよろこ……ぶ……』
『そしたら俺ら……モテ……モテ……』
『アイツらみたいに、うま……く……や……る……ん……』
ぱたぱたぱた。
何ごとか言い続けようとしていたゴブリン達に、黒の夢が放ったスリープクラウドが命中し、その意識を奪う。
『お、おまえ等やる気カァー!?』
残るゴブリンは3体。彼(たぶんオス)らは、怒りの声を上げると一斉にハンター達に迫る。
その声に怯んだのか、体を堅くする秋田の前に仁川が躍り出る。
「秋田、心配しなくても、君ならうまくできるよ!」
前に出た彼をねらい、三振りの刃物がふるわれるが、彼は背に黄金色の翼にも似たオーラを広げながら危うげなく回避。
「下手に攻撃せずに敵の出方を伺うんだ! これ、戦術の基本だよ!」
不動明王の力を得たと言われる剣を構え、仁川は背の方の秋田に声をかける。
その声にハッとした顔をすると、秋田はワンドを握り直し、改めて魔法攻撃のために集中する。
「だ、大丈夫。大丈夫……」
「ほらほら、オトコノコであろう……度胸のある男はモテるぞ?」
空振りをした短刀を構え直し、ゴブリンがそんな会話を交わす2人の前で吠え声を上げる。
『おまえら、やっつけて、モテモテに……ナンダ!?』
威勢のいい声を上げるゴブリンの足下に、枝の間をぬって飛んできた矢が突き刺さる。
矢を射られたゴブリンはその矢にどこから来たのかと前、後ろと確認するが、射手の姿は見えない。
それもその筈。ウィ=ガが矢を撃ったのはその場より離れた木の上。しかも遠射を用いて射程を伸ばした一撃だ。敵は近くにいると思いこんでいたソレが気が付けるはずもない。
『おまえ! うえ、うえ!』
きょろきょろと周りを見ていたゴブリンが、別のゴブリンからの声を聞いて上を見あげると。
『……白?!』
むごし。
時既に遅し。騒ぐゴブリン達の声に紛れながら近づいてきていたユーリィが、飛び降りながら振るった一撃の元にそのゴブリンは崩れ落ちた。
『ゴブ男ー!?(※仮名)』
その惨状に残り2体のゴブリンが悲痛な声を上げていると、そこに銃弾が飛び、手から短刀を弾き飛ばす。
「さぁて、このパッツィちゃんがぶち抜いてやろうじゃーん? 覚悟しろや雑魚共」
水中銃を構えながら、ゆらりと姿を現すのはパッツィだ。
どこか気の抜けていたような表情はなりを潜め、その顔には好戦的な笑みが浮かんでいる。
「怪我は、誰もしていないようね」
続けてその後ろからは慈姑。そして。
『コイツら、強……い……?』
退路を塞ぐように現れた天央が放ったスリープクラウドが1体の意識を奪い、その言葉を止める。
「さて。まだやりますか?」
『う、うおぉ!? オレは、勝って、モテる……!』
天央の言葉に迷うように視線を巡らせたゴブリンだが、地面に落ちていた短刀を見ると、それを拾い上げながら走り出す。行く先はこの場で最も弱そうな相手――秋田だ。
『オマエ、ぐらいなら!』
ゴブリンの突進を前に、秋田はワンドを握り直して自らの魔力を放つ。
「イイコト、のためにーー!」
掛け声はともかく。魔力の矢はその向きを誤ることなくゴブリンの胴に突き刺さり、相手をのけぞらせる。
『ナ……!?』
倒れることを堪え、踏みとどまったゴブリンの首元に仁川の剣が突きつけられる。
「まだやるかい?」
首元に突き付けられた剣と、仁川の顔を見比べると、ゴブリンは諦めたように短刀を地に落とした。
●
「イイコトーー!」
勝利を確信した秋田は真っ先に黒の夢のもとに走り寄る。
彼が倒したと言うわけではないが、その攻撃が最後のゴブリンへの決め手となったのは確かだ。
走りよってきた彼に、黒の夢はその手を広げ――
「頑張ったのなー♪」
いいこいいこ。
「……あ、あの?」
頭なでなで。
「……えっと?」
「……うな? ぎゅーってする方が良かった?」
「あれぇー!?」
頭をなでられる感触に戸惑い、秋田が愕然とした表情を浮かべる。
そんなやりとりを後ろに、天央が戦意を喪失した6体のゴブリン(ユーリィの攻撃を受けたゴブリンも気絶しただけだった)の武装を解除をする。
『おまえ、言ウ、から……』
『お前も、やる気だった……』
『モテたかった……』
うなだれながらゴブリンが何かを言うが、その言葉の意味はハンター達には分からない。
しかし、彼らの身体付きからすると、食糧などが問題であるようには思えない。なにか理由があるかもしれないが……。
「どうしたものですかね?」
「そうですね、人を襲ったのは確かですし、またやられる可能性も……」
その場に合流したウィ=ガが、そう自らの考えを口にする。
ある程度の知性を持っているが、意志疎通は難しい相手。ここで開放しても、また襲う可能性は捨てきれない。それならばいっそ……。
二人が考えていると、秋田を撫で終えた黒の夢が、ゴブリン達に近づく。
「正座なのなー」
「「「ゴブ?」」」
「正座なのなー?」
「「「ゴ、ゴブ!」」」
ゴブリン達は黒の夢の言葉は分からないものの、笑顔に圧されるように居住まいを正し、その場に座り込む。
そして黒の夢からの説教がはじまる。よく分からないと言う顔をするゴブリンにはお尻ペンペンだ。
「またやったら痛い痛いなのなー、次はこんなのじゃ済まないのなー?」
「ゴブー!?」
小気味の良い音とともに告げる黒の夢に、叩かれていないゴブリンもガタガタと震える。
『あ、あんなことやられたら……』
『メスに合わせる顔がない……!』
しばらくして、1体をその手から解放した黒の夢はにっこりと笑みを浮かべて次のゴブリンに顔を向ける。
「次はキミなのなー?」
「ゴブーー!?」
ゴブリンの悲鳴が続く中、秋田は慈姑に近づいていく。
「あ、あの……戦いが終わったらって……」
「……え? 続き? 何のこと?」
「え、さっき……」
「そんなこと言ったっけ? 気のせいじゃない?」
がくりと崩れ落ちる秋田に、ごめんねと言うと慈姑は彼から離れる。
「嘘だぁ……」
がんばったのに、とぼやく秋田は崩れ落ちていく。
そんな彼をよそに、パッツィが煙草の煙を揺らしながらぽつりと漏らした。
「……あー、これでまた暫く引きこもれるな」
●
「で? 依頼はどうでした?」
「えっと……大変でした……また引きこもりたくなりました」
「そうですか。また行きたくなったら……」
「けど。また頑張ろうと思います。戦ってる皆さん、かっこよかったですし」
「それは何よりで…………」
「あと、お尻ペンペンって良いモノなんですね!」
「なにをいってるんですかあなたは」
後日、ハンターオフィスでは新たに頑張ろうと依頼を探す新人ハンターの姿があったとか。
――良い夢見たし今年こそ本気出す 了――
「さて。現地に着く前に確認を致しましょうか」
天央 観智(ka0896)は、ゴブリンが出没するという街道に入る前に、ハンター達にそう言って呼びかける。
少人数の商人を選び襲うソレらに対し、悪いケースを踏まえた彼は慎重な行動を考えていた。
「3人が囮として進み、私達3人がバックアップ。そして」
「私と、ユーリィさんが木の上から攻撃ですね」
天央の言葉に続け、自らの行動を言うのはウィ=ガ(ka3596)だ。
ゴブリンが襲っているのはあくまでも戦いになれていなかった商人。ならば木の上まで確認する事は無いだろう。
樹上では地上と違って動きは取りにくいが、今回の戦いならば問題はないだろう。
「ですね。よろしくお願いいたします」
「木の上に2人の、後ろからが3人……アレ?」
言葉に頷く天央を見ていた秋田が、今気がついたというように首をかしげる。
「大丈夫だよ、秋田! 新人君のために、この僕が素晴らしい戦い方を教えてあげよう!」
秋田に声そう声をかけるのは仁川 リア(ka3483)だ。が。彼がぶん、と軽く振って見せるのは一本の片手剣。
どうみても、一般的な魔術師が持つ者ではない。
(あの、俺魔術師です、剣の振り方を聞いても……なんて言えるかぁー!)
言えるなら引きこもらないっ! などと思っているのかいないのか。秋田はそのぼっち生活で培われた、あいまいな笑みを浮かべながら仁川に答える。
「お、おぉ。それなら大丈夫です……ね……?」
「そう言えば、秋田さんは如何して変わりたいと?」
そんなやり取りを聞きつけたウィ=ガは秋田にそう声をかける。
異世界に来たことで、何かが変わるかもしれないと言うのは分かる気がすると、自らの経験を踏まえてウィ=ガは思う。ただ、何もかもが変わればいいと言うものではない。変わらないものもまた大切なのだ。
「……はっ! そうだった! 俺は変わるために来たんだった……!」
ウィ=ガの言葉の真意がどこまで届いたのか。聞いた秋田がハッとした顔になる。
「そう、そうだ……。俺はあの夢で見た……呪われしこの血脈の力が解き放たれる未来を! そして宿命の導きにより敵対してしまうあの子と、愛する子と戦わなくてはならなくなると言う未来を……!」
「奇遇ね。私もあなたのような人を夢で見たのよ。その人はね。とても強くて……頼りになって」
暑く語る秋田に声をかけるのは、桃色の髪の少女。慈姑 ぽえむ(ka3243)だ。
「ま、まさか君は……!」
「私の夢では、最後は……あっ。何でもないわ」
「なんだって……!? き、聞かせてくれ、最後はどう……」
「そうね……続きは、この依頼が終わったらにしない?」
にこり、と笑みを浮かべて言う慈姑に、秋田は頬を赤くして張り切った声を上げる。
「よし……! やってやるぜ……!」
しかし、直後に彼は現実を前に手で顔を覆う。彼の担当は囮行動の一員。想像していた活躍となんかちがう。
そこに声をかけるのは、パッツィ・フォックス(ka3851)だ。
「……新人君は元引きこもりか。あたしもだ。親近感はあるな、よろしく頼むよ」
不良じみた顔を浮かべると、彼女は紙巻き煙草を1本手にとって見せた。
「吸うか? 一本ぐらいなら恵んでやらんこともない」
「あ、えっと……」
おどつく秋田を前にしながら、パッツイは煙草をくわえて深く吸うと、不良のような笑みを浮かべる。
「く、俺だって……!」
と言って煙草を受け取ろうとするが、秋田(17歳・喫煙経験無し)は、近づいたところで煙草の煙を吸い込み、思い切りせき込んでしまう。
※ リアルブルーでは未成年の方の喫煙は禁止されています。
「くそ、夢ならどうってことは無かったはずなのに……!」
「皆さん、お話はその辺りに。そろそろゴブリン達の襲撃の有った場所です」
天央の言う通り。話しながらも進んでいた彼らの前には商人が襲われたと言う場所が近づいていた。
●
(自信かぁ……自信って自然と付いていくモノだよね……)
樹上に登ったユーリィ・リッチウェイ(ka3557)はそんなことを思う。
下から「見え……ない!」と悔しがる声が聞こえた気もするが、気のせいだろう。どこから見ても女の子だが……こう見えてユーリィは男の子だ。男の娘かもしれないが、大きな問題とは――いや、問題か?
もっとも、それをどう思うかはユーリィ次第と言うものだ。
(「付けさせる」モノじゃないと思うんだけど……でも、偶にはイイかな♪)
自分の行動により、自信ははじめて身につくものだ。ただ、これまで自信を持っていなかった者に自信を付けさせようというのなら、それは手助け程度はやっても構わないだろう。もっとも、本人がやる気があってはじめて出来ることだが。
樹上からは、下を行く3人のハンターが見える。
彼らの役目は、ゴブリンに対する囮。そのことを考えると、緊張をしていてもおかしくはない。
が。目の前の光景はそんな予想からは離れたものだった。
「いっちにっ♪ いっちにっ♪ ……どーぉ? 慣れてきたー?」
「い、いっちにっ……? いっち、に……え、えぇと……」
秋田の手を持ち、ワンドをふるう練習をさせるのは、黒の夢(ka0187)だ。
ゴブリンがその姿を現す前に慣れさせようと、彼女は秋田の身体文字通り『手取り足取り』で練習をしていた。
先達たる魔術師に手取り足取り教えてもらえる――駆け出しの魔術師ならば、あこがれるシチュエーションだろう。実戦において満足に戦えた事がない秋田にはよい訓練と言える。
もっとも。それも彼が集中出来ていたら、だが。
(……ひょっとしてわざとか……?! まさかの『当ててんのよ』か!?)
彼の背中に当たるのは、経験したことのない柔らかな感触。
煩悩と言うなかれ。彼の年齢を考えればいたって正常な反応である……!
「がんばるのである、一匹でも倒せたらイイコトしてあげるのな♪」
「ケンじゃなくて、ツルギ……って、イイコト!?」
秋田剣(アキタ・ツルギ)が抗議を取りやめて目を見開き、覚醒をしそうになる。
そんな中、周囲の気配をそれとなく伺っていた仁川が静かにと言うようなポーズを見せ、口を開く。
「来るね。準備して」
●
「ゴブ! ゴブー!(訳:ヒャハー! 生きイイえものだー!)」
「ゴォブ、ゴブ! ゴブ、ゴブ!(訳:俺ら、うばう! おまえら、命おしければ荷物おいてけ!)」
「ゴブブ!ゴブ!(訳:食い物! なければブキ!)」
勢いよく飛び出してきたのは6体のゴブリン。何かをわめき散らしながら、その手に持った粗末な刃物をハンター達に見せる。
言葉の意味は分からないが、その身ぶりからすると、荷物を置いて行けと言っているのだろう。
※ 以降、鳴き声につきましては翻訳した状態でお送りいたします。
『俺たち、ほんき!』
『勝てばメス達がよろこ……ぶ……』
『そしたら俺ら……モテ……モテ……』
『アイツらみたいに、うま……く……や……る……ん……』
ぱたぱたぱた。
何ごとか言い続けようとしていたゴブリン達に、黒の夢が放ったスリープクラウドが命中し、その意識を奪う。
『お、おまえ等やる気カァー!?』
残るゴブリンは3体。彼(たぶんオス)らは、怒りの声を上げると一斉にハンター達に迫る。
その声に怯んだのか、体を堅くする秋田の前に仁川が躍り出る。
「秋田、心配しなくても、君ならうまくできるよ!」
前に出た彼をねらい、三振りの刃物がふるわれるが、彼は背に黄金色の翼にも似たオーラを広げながら危うげなく回避。
「下手に攻撃せずに敵の出方を伺うんだ! これ、戦術の基本だよ!」
不動明王の力を得たと言われる剣を構え、仁川は背の方の秋田に声をかける。
その声にハッとした顔をすると、秋田はワンドを握り直し、改めて魔法攻撃のために集中する。
「だ、大丈夫。大丈夫……」
「ほらほら、オトコノコであろう……度胸のある男はモテるぞ?」
空振りをした短刀を構え直し、ゴブリンがそんな会話を交わす2人の前で吠え声を上げる。
『おまえら、やっつけて、モテモテに……ナンダ!?』
威勢のいい声を上げるゴブリンの足下に、枝の間をぬって飛んできた矢が突き刺さる。
矢を射られたゴブリンはその矢にどこから来たのかと前、後ろと確認するが、射手の姿は見えない。
それもその筈。ウィ=ガが矢を撃ったのはその場より離れた木の上。しかも遠射を用いて射程を伸ばした一撃だ。敵は近くにいると思いこんでいたソレが気が付けるはずもない。
『おまえ! うえ、うえ!』
きょろきょろと周りを見ていたゴブリンが、別のゴブリンからの声を聞いて上を見あげると。
『……白?!』
むごし。
時既に遅し。騒ぐゴブリン達の声に紛れながら近づいてきていたユーリィが、飛び降りながら振るった一撃の元にそのゴブリンは崩れ落ちた。
『ゴブ男ー!?(※仮名)』
その惨状に残り2体のゴブリンが悲痛な声を上げていると、そこに銃弾が飛び、手から短刀を弾き飛ばす。
「さぁて、このパッツィちゃんがぶち抜いてやろうじゃーん? 覚悟しろや雑魚共」
水中銃を構えながら、ゆらりと姿を現すのはパッツィだ。
どこか気の抜けていたような表情はなりを潜め、その顔には好戦的な笑みが浮かんでいる。
「怪我は、誰もしていないようね」
続けてその後ろからは慈姑。そして。
『コイツら、強……い……?』
退路を塞ぐように現れた天央が放ったスリープクラウドが1体の意識を奪い、その言葉を止める。
「さて。まだやりますか?」
『う、うおぉ!? オレは、勝って、モテる……!』
天央の言葉に迷うように視線を巡らせたゴブリンだが、地面に落ちていた短刀を見ると、それを拾い上げながら走り出す。行く先はこの場で最も弱そうな相手――秋田だ。
『オマエ、ぐらいなら!』
ゴブリンの突進を前に、秋田はワンドを握り直して自らの魔力を放つ。
「イイコト、のためにーー!」
掛け声はともかく。魔力の矢はその向きを誤ることなくゴブリンの胴に突き刺さり、相手をのけぞらせる。
『ナ……!?』
倒れることを堪え、踏みとどまったゴブリンの首元に仁川の剣が突きつけられる。
「まだやるかい?」
首元に突き付けられた剣と、仁川の顔を見比べると、ゴブリンは諦めたように短刀を地に落とした。
●
「イイコトーー!」
勝利を確信した秋田は真っ先に黒の夢のもとに走り寄る。
彼が倒したと言うわけではないが、その攻撃が最後のゴブリンへの決め手となったのは確かだ。
走りよってきた彼に、黒の夢はその手を広げ――
「頑張ったのなー♪」
いいこいいこ。
「……あ、あの?」
頭なでなで。
「……えっと?」
「……うな? ぎゅーってする方が良かった?」
「あれぇー!?」
頭をなでられる感触に戸惑い、秋田が愕然とした表情を浮かべる。
そんなやりとりを後ろに、天央が戦意を喪失した6体のゴブリン(ユーリィの攻撃を受けたゴブリンも気絶しただけだった)の武装を解除をする。
『おまえ、言ウ、から……』
『お前も、やる気だった……』
『モテたかった……』
うなだれながらゴブリンが何かを言うが、その言葉の意味はハンター達には分からない。
しかし、彼らの身体付きからすると、食糧などが問題であるようには思えない。なにか理由があるかもしれないが……。
「どうしたものですかね?」
「そうですね、人を襲ったのは確かですし、またやられる可能性も……」
その場に合流したウィ=ガが、そう自らの考えを口にする。
ある程度の知性を持っているが、意志疎通は難しい相手。ここで開放しても、また襲う可能性は捨てきれない。それならばいっそ……。
二人が考えていると、秋田を撫で終えた黒の夢が、ゴブリン達に近づく。
「正座なのなー」
「「「ゴブ?」」」
「正座なのなー?」
「「「ゴ、ゴブ!」」」
ゴブリン達は黒の夢の言葉は分からないものの、笑顔に圧されるように居住まいを正し、その場に座り込む。
そして黒の夢からの説教がはじまる。よく分からないと言う顔をするゴブリンにはお尻ペンペンだ。
「またやったら痛い痛いなのなー、次はこんなのじゃ済まないのなー?」
「ゴブー!?」
小気味の良い音とともに告げる黒の夢に、叩かれていないゴブリンもガタガタと震える。
『あ、あんなことやられたら……』
『メスに合わせる顔がない……!』
しばらくして、1体をその手から解放した黒の夢はにっこりと笑みを浮かべて次のゴブリンに顔を向ける。
「次はキミなのなー?」
「ゴブーー!?」
ゴブリンの悲鳴が続く中、秋田は慈姑に近づいていく。
「あ、あの……戦いが終わったらって……」
「……え? 続き? 何のこと?」
「え、さっき……」
「そんなこと言ったっけ? 気のせいじゃない?」
がくりと崩れ落ちる秋田に、ごめんねと言うと慈姑は彼から離れる。
「嘘だぁ……」
がんばったのに、とぼやく秋田は崩れ落ちていく。
そんな彼をよそに、パッツィが煙草の煙を揺らしながらぽつりと漏らした。
「……あー、これでまた暫く引きこもれるな」
●
「で? 依頼はどうでした?」
「えっと……大変でした……また引きこもりたくなりました」
「そうですか。また行きたくなったら……」
「けど。また頑張ろうと思います。戦ってる皆さん、かっこよかったですし」
「それは何よりで…………」
「あと、お尻ペンペンって良いモノなんですね!」
「なにをいってるんですかあなたは」
後日、ハンターオフィスでは新たに頑張ろうと依頼を探す新人ハンターの姿があったとか。
――良い夢見たし今年こそ本気出す 了――
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/01/28 19:15:20 |
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相談卓! 仁川 リア(ka3483) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/01/31 04:12:53 |