ゲスト
(ka0000)
【陽光】ドールハウス・ワンダーランド
マスター:のどか

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/07/06 07:30
- 完成日
- 2019/07/21 01:57
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その日、依頼を受けたハンター達は旧霧の山にある廃屋敷を訪れていた。
先の歪虚王との戦いに際して精霊の元へと返したこの山は、たちこめていた霧もすっかり晴れ、緑と生命に溢れる豊かな場所へと変わっていた。
否、これこそがこの山の本当の姿だったのだろう。
廃屋敷は事実上この山を支配していたジャンヌ・ポワソンが居住していた場所だ。
精霊の祠の傍に残されたそれは、今はもう誰も住んでいないものの、この山奥で取り壊すのも手間であるため、これまで放置されたままでいた。
訪れたのは他でもない。
コレクター――今はダンテリオと名乗る、ジャンヌの傍人の情報を得るためだ。
ハンター達と数度の接触例があるダンテリオだが、それまで彼に関する情報はほとんどと言って良いほどなかった。
と言うのも彼がそもそも決まった名前を持たない――というところに起因するのだが、それを知る者は少なくともオフィスやソサエティには存在していない。
土地そのものが浄化された今、自然発生であれ歪虚が出てくるということはそうそうない。
そのため昨今多方面に人手が必要であることも鑑みて少人数での調査となったが、結果としてこれが悪手だった。
ハンター達がまず向かったのは「かつてコレクターの部屋」と思われる一室。
先の屋敷攻略の際に彼が待ち構えていたコレクションルームである。
壁一面に打ち付けられた棚に色とりどりの沢山のドールハウスが並ぶ。
激しい戦闘があった結果、いくつかは棚ごと修復不能なまでに壊れてしまっていた。
床にも大量のハウス用のミニチュアや人形が転がっている。
それらも粉々になってしまったものから健在なものまでさまざまだ。
何か糸口になるものがあれば――手分けして捜索を始めた時、その声は響き渡った。
『――おや、まさかお客様がいらっしゃるとは思いませんでしたよ』
屋敷の中にどこからともなく響き渡る飄々とした声。
ダンテリオ――かつての記録から、ハンター達は咄嗟にそれを理解する。
『ああいえ、おくつろぎになってくださって構わないのですよ。私も放置してしまった忘れ物を取りに来ただけでありますがゆえ』
忘れ物……?
ハンターらは眉をひそめる。
『そこに見えるでしょう。私のコレクションですよ。少々入用になりましてね……まあ、半分は趣味も兼ねておりますが。大人しく回収させていただけるならそれで良し。私も手出しはいたしません。片腕がちょっと調子の悪いものでしてね、あまり無理はしたくないのです』
とはいえ……と、ダンテリオは自らその申し出を棄却する。
『そうもいかないようでございますか? 困りましたね……陛下も全力でとおっしゃられていたのでお相手してさしあげてもよろしいのですが、それでコレクションが破壊されるのも忍びない』
前回の戦いでそれなりの損壊が出たことは先も見た通り。
彼もまたそれを覚えている。
『こうしましょう。ゲームをしませんか?』
そして嬉しそうな声で彼は提案した。
『なに、簡単な鬼ごっこです。私が鬼で、みなさんは逃げる。私は持ち歩く鳥かごへと捕まえた方を1人1人丁寧に閉じ込める。逃げている方はそこから仲間を助けても良いし、自分だけ逃げ続けてもいい。日没――あと1時間ほどの後、1人でも捕まっていない方がいればあなた方の勝利。私は諦めて帰ります。しかし全員が捕まってしまったら――』
――みなさんには死んでいただきましょうか。
溜めるように息を吸ってから放たれた言葉に、思わず緊張が走った。
『厳密には死ぬわけでは無いのですが、まあ、みな様にとっては同じことでしょう』
そう言い加えて、彼は細かいルールを話し始める。
ゲームをゲームとして成り立たせるための禁止事項だ。
1.屋敷の外(外壁含む)に出ない
2.鬼にタッチされたのに無理に抵抗をしない
3.ゲーム中、故意にダンテリオのコレクションを破壊しない
『この3つをされてしまってはゲームの意味がありませんからね。お守りいただきましょう。契約破棄には厳罰を――が心情でございますがゆえ、ご留意ください』
含めるように、笑い声と共に言い放つ。
『さて、いかがです? 10数えるまでに答えを出していただきましょうか。日没までの時間を稼がれてもかないませんしね。ささ、お答えを』
――ゲームしますか?
――それとも戦いますか?
●解説
▼目的
A:ゲームに勝利する
B:ダンテリオを撃退する
▼概要
本シナリオはAとBから目標を選び達成していただきます。
必ず全員で同じ目標を設定してください。
統一されていない場合はAであるものとし、齟齬が生まれるプレイングは採用しないものとします。
また最初の申し出を受けて平和的にさよならしても構いませんが、その場合はシナリオ失敗となります。
先の歪虚王との戦いに際して精霊の元へと返したこの山は、たちこめていた霧もすっかり晴れ、緑と生命に溢れる豊かな場所へと変わっていた。
否、これこそがこの山の本当の姿だったのだろう。
廃屋敷は事実上この山を支配していたジャンヌ・ポワソンが居住していた場所だ。
精霊の祠の傍に残されたそれは、今はもう誰も住んでいないものの、この山奥で取り壊すのも手間であるため、これまで放置されたままでいた。
訪れたのは他でもない。
コレクター――今はダンテリオと名乗る、ジャンヌの傍人の情報を得るためだ。
ハンター達と数度の接触例があるダンテリオだが、それまで彼に関する情報はほとんどと言って良いほどなかった。
と言うのも彼がそもそも決まった名前を持たない――というところに起因するのだが、それを知る者は少なくともオフィスやソサエティには存在していない。
土地そのものが浄化された今、自然発生であれ歪虚が出てくるということはそうそうない。
そのため昨今多方面に人手が必要であることも鑑みて少人数での調査となったが、結果としてこれが悪手だった。
ハンター達がまず向かったのは「かつてコレクターの部屋」と思われる一室。
先の屋敷攻略の際に彼が待ち構えていたコレクションルームである。
壁一面に打ち付けられた棚に色とりどりの沢山のドールハウスが並ぶ。
激しい戦闘があった結果、いくつかは棚ごと修復不能なまでに壊れてしまっていた。
床にも大量のハウス用のミニチュアや人形が転がっている。
それらも粉々になってしまったものから健在なものまでさまざまだ。
何か糸口になるものがあれば――手分けして捜索を始めた時、その声は響き渡った。
『――おや、まさかお客様がいらっしゃるとは思いませんでしたよ』
屋敷の中にどこからともなく響き渡る飄々とした声。
ダンテリオ――かつての記録から、ハンター達は咄嗟にそれを理解する。
『ああいえ、おくつろぎになってくださって構わないのですよ。私も放置してしまった忘れ物を取りに来ただけでありますがゆえ』
忘れ物……?
ハンターらは眉をひそめる。
『そこに見えるでしょう。私のコレクションですよ。少々入用になりましてね……まあ、半分は趣味も兼ねておりますが。大人しく回収させていただけるならそれで良し。私も手出しはいたしません。片腕がちょっと調子の悪いものでしてね、あまり無理はしたくないのです』
とはいえ……と、ダンテリオは自らその申し出を棄却する。
『そうもいかないようでございますか? 困りましたね……陛下も全力でとおっしゃられていたのでお相手してさしあげてもよろしいのですが、それでコレクションが破壊されるのも忍びない』
前回の戦いでそれなりの損壊が出たことは先も見た通り。
彼もまたそれを覚えている。
『こうしましょう。ゲームをしませんか?』
そして嬉しそうな声で彼は提案した。
『なに、簡単な鬼ごっこです。私が鬼で、みなさんは逃げる。私は持ち歩く鳥かごへと捕まえた方を1人1人丁寧に閉じ込める。逃げている方はそこから仲間を助けても良いし、自分だけ逃げ続けてもいい。日没――あと1時間ほどの後、1人でも捕まっていない方がいればあなた方の勝利。私は諦めて帰ります。しかし全員が捕まってしまったら――』
――みなさんには死んでいただきましょうか。
溜めるように息を吸ってから放たれた言葉に、思わず緊張が走った。
『厳密には死ぬわけでは無いのですが、まあ、みな様にとっては同じことでしょう』
そう言い加えて、彼は細かいルールを話し始める。
ゲームをゲームとして成り立たせるための禁止事項だ。
1.屋敷の外(外壁含む)に出ない
2.鬼にタッチされたのに無理に抵抗をしない
3.ゲーム中、故意にダンテリオのコレクションを破壊しない
『この3つをされてしまってはゲームの意味がありませんからね。お守りいただきましょう。契約破棄には厳罰を――が心情でございますがゆえ、ご留意ください』
含めるように、笑い声と共に言い放つ。
『さて、いかがです? 10数えるまでに答えを出していただきましょうか。日没までの時間を稼がれてもかないませんしね。ささ、お答えを』
――ゲームしますか?
――それとも戦いますか?
●解説
▼目的
A:ゲームに勝利する
B:ダンテリオを撃退する
▼概要
本シナリオはAとBから目標を選び達成していただきます。
必ず全員で同じ目標を設定してください。
統一されていない場合はAであるものとし、齟齬が生まれるプレイングは採用しないものとします。
また最初の申し出を受けて平和的にさよならしても構いませんが、その場合はシナリオ失敗となります。
リプレイ本文
●
屋敷に響いた声の主――ダンテリオへハンター達はかすかな怒りを滲ませていた。
真っ先にそれを爆発させたボルディア・コンフラムス(ka0796)が、巨大な魔斧を抜き放って堂々啖呵を切る。
「寝言は寝て言えボケ。話は終わりだ!」
「そうです、ゲームなんてお断りです! ボコボコになって帰ってもらいます!」
触発された百鬼 一夏(ka7308)も声を張る。
ただ、僅かに走る緊張が小さな身体を震わせた。
「選択肢をくれるっていうならぁ、私達もあんたに選択肢をあげますぅ……今滅びるか、逃げて次に会った時滅びるか、選びなさいぃ!」
星野 ハナ(ka5852)の恫喝が最後の一押し。
声は、深いため息を伴って答えた。
『そうですか、残念ですね。それでは、殺し合うことにいたしましょうか』
殺し合い――そのひと言にハンター達は心の中のゆとりを完全に捨て去った。
ロニ・カルディス(ka0551)が盾を構えて周囲を警戒する。
「気を付けろ、どこから来るか分からないぞ!」
「上等!」
4人で背中合わせに4方を向いて、敵の襲撃に備えた。
ハナはその間に大精霊とのリンクを確認し、星のマテリアルを解放する。
――超覚醒。
この人数だ。
持てる力は全て使う。
コツリと、廊下から足音が響いた。
ハンター達はすぐに気を張るが、今度はカタリと隣の部屋から物音が聞こえる。
コツン――と天井から。
ガタン――とこの部屋の壁から。
その度に否応なしに意識を振り回される。
どこから迫るか分からない敵に、緊張だけが募っていく。
やがて、1発の銃声が屋敷に響いた。
鈍い金属音が響き、ボルディアの盾から火花が散る。
咄嗟に反応した彼女は、銃声の方向を振り返った。
「ようこそ。再びこの屋敷へ」
天井の隅に張り付いたダンテリオが、いつもの張り付いた笑顔で目を細める。
ボルディアは返事もなしに飛び掛かる。
振り上げられる斧。
ダンテリオは軌跡を予測して身を翻したが、ボルディアから放たれた炎の鎖がその身を縛る。
右、正面と、振われた斧を敵は腕で受け止めた。
「相変わらず堅いじゃねぇか」
「痛くないわけではないのですよ? ああ……痛覚はございませんので、気分的な問題ですが」
「そのうさんクセェ顔が気に食わねえんだよ!」
ダンテリオはニマニマと笑みを浮かべながら床の上へと着地する。
その瞬間、まばゆい光が部屋の中で弾けた。
一夏が放った目くらましだ。
僅かにできた隙で、ハンター達は隊列を組みなおす。
前衛のすぐ後方にロニが控え、その後方にハナが下がる。
位置取りを確保したハナは、「勇気」の理をその身を通して解放した。
星のマテリアルが、4人の身体を包み込む。
連射音が響いて、ロニが銃弾を盾で受け止めた。
障壁を通じて響いた衝撃が身に染みるものの、決して耐えられないものではない。
「マテリアル感知はあまり得意ではないのですが……陛下のことを考えれば、もう少し身に着けた方がよさそうですね」
ダンテリオは構えていたアサルトライフルを投げ捨て、左手で懐をまさぐる。
だが敵が新たな武器を抜き放つより先に、ボルディアが天井を蹴った。
猛獣が噛みつくかのような斧の連撃。
ダンテリオは1撃目こそギリギリのタイミングで躱したものの、2撃目は腕を交差して受け止める。
すかさず、一夏が追撃の拳を放つ。
「潜んだまま私たちの前に出て来なければよかったのに! “姿を現した”というリスクを、あなたには負ってもらいます!」
左の拳を引くのと同時に、右の拳で放つ白虎神拳。
だがダンテリオは避けるそぶりもなく、左の手のひらでそれをガッチリと受け止めた。
「リスクとは天秤に掛けるものです。ここで敵対した方が良いと、私は判断したにすぎませんよ」
彼の左手が負のマテリアルを帯びる――が、何かが起ころうとしたその瞬間、バチリと鋭い音と共に手が弾かれる。
一夏を覆う「勇気」のマテリアルが、拒絶反応を引き起こしていた。
「おや……なるほど、これが守護者の力というわけですか」
ダンテリオは驚いたような感心したような、曖昧な表情で目を見張る。
それから右の手で炎の鎖を引きちぎると、軽い跳躍で大きく距離を取った。
「分の悪い正面対決は行わない主義でありますがゆえ……ここは知恵を絞らせていただきましょう」
そのままくるりと踵を返して彼は廊下へと駆け出していく。
わずかに呆気にとられたハンター達は、すぐにその後を追った。
●
「人を愉しんで殺したラルヴァの眷属がぁ、悠々補給して十三魔の元に戻るのを見逃すぅ? ハンター舐めんなですぅ!」
廊下の先を駆ける敵の背中に、ハナが「正義」の波動を解き放つ。
強烈な光にさらされたダンテリオは、身を焼かれながらも歩みを止めようとはしない。
ロニが足止めを狙って闇の刃を乱れ撃ったが、敵ははらりと身をよじって回避した。
「鬼になるつもりが、追われる側になってじゃねぇか。なぁ?」
ぎりぎり魔斧の間合いで追い縋ったボルディアは、破損した床を無視して壁から壁へと飛び移るようにダンテリオの背後へと迫る。
放った炎の鎖が敵の足を絡めとる。
動きが止まったその背中へと振われる斧。
右、左と切り返し振られた刃を、ダンテリオは左右の腕で交互に受け止める。
先の出現の時に破損した方の腕だろうか。
右腕に突き立った一撃は、他の部位を穿った時よりもいく分手ごたえを感じる。
「怪我が治っていないっていうのは本当みたいだな?」
「修復はそう頻繁に行えるものではないのですよ」
嘘か真か、ダンテリオはカラカラと笑って拳による突きを繰り出した。
ボルディアの脳裏に先ほどの一夏の件がフラッシュバックして、大きくバックステップでそれをかわす。
遅れて追いついた一夏も白虎神拳の鋭い突きを放つ。
ダンテリオは今度は身を反らしてそれを回避すると、ハンドガンの引き金を引いた。
至近距離で放たれた銃弾が、ホーリーヴェールを突き破って一夏の肩を貫く。
「うう……っ!」
苦痛に表情を歪ませる一夏。
すかさずロニの回復術が彼女の傷を癒す。
「どうせ逃げるのなら、屋敷から出て行ってもらえれば我々も鬼の役などせずに済むのだがな」
彼の指摘に、ダンテリオはとぼけたように肩をすくめた。
「こちらもそうはいかないものでして……お察しくださいませんか?」
ダンテリオは足を縛る鎖を力任せに解いて、また鬼ごっこへと身をやつした。
「鳥かごなんざに人間が入るわけねぇんだ。何かしらの手を隠し持ってるのは間違いねぇ」
見失わないよう追い縋りながら、ボルディアが深く息を吐く。
ハナのスキルは虎の子で最後の要だ。
回数も限られている以上、最低限の自衛は迫られる。
一夏が同意するように深く頷いた。
「触られるのは嫌な気がします。ゲームに『鬼ごっこ』を選んだのにも意味があるんじゃないかって思うんです」
相手は嫉妬だ。
なんとなく鬼ごっこを選んだ――なんていうことは、考えられない。
きっとそのルールの裏には、ダンテリオによって有利な何かがあるに違いない。
「趣味で命を弄ぶのって虫唾が走んですよねぇ……」
最後列をついていくハナは、「信仰」の理を解放し、ファーストコンタクトで受けた仲間の傷を軒並み癒していく。
「それに、どう見てもこれ時間稼ぎですよねぇ。そういうとこも、ほんとにほんとに、ムカっときちゃいますよぅ」
言葉とは裏腹に、その心中はなんとも穏やかではない。
絶対に痛い目を見て貰う。
ブッコロリスト上位に名を連ねる相手に容赦なんて必要はない――と。
だがつかず離れずの鬼ごっこを続ける中で、4人に掛かっていた「勇気」の効力が切れる。
ハナは星に意識を働きかけ、再び理を引き出した。
追っていたダンテリオの背中が傍らの扉の中へと消えていく。
先頭のボルディアが絞められた扉を蹴破って、内部へと突入した。
「どこだ……!?」
部屋を見渡すが、ダンテリオの姿がない。
代わりに床のど真ん中に、前の戦いで開いたらしい大きな穴が開いていた。
「下か――」
気づいたのと同時に、4人の足元からおびただしい数の銃弾が飛び出す。
ハンター達は盾を構えながら部屋を駆け回り、追い回す銃撃から逃げ惑う。
よけきれない弾はロニの障壁やハナの符術が勢いを削ぎ、少しでも威力を弱めた。
ハチの巣になった床板から見える下階に、ガトリング砲を放り捨てるダンテリオの姿が見えた。
「ほんと、イライラしますよぅ……!」
穴を飛び降りながら、ハナの「信仰」が再び皆の傷を癒す。
ダンテリオの攻撃には確かな殺意は感じるものの、刺しきられるほどの勢いは感じられない。
傷は癒すことができるので劣勢という意識はないが、決して優勢とも感じられない。
結局は遊ばれているのではないか……?
募るのは漠然とした憤りと焦燥感だけだ。
「落ち着こう。感情を逆なでして勝機をうかがうことこそ嫉妬の常套戦術だろう」
「分かってはいるんですけど……1発キツイのお見舞いしなきゃ発散できそうにありません!」
諫めるように説くロニに、一夏がふんすと鼻息を鳴らしながら答える。
だからと言って突っ走るようなことはしないが、フラストレーションは積もるもの。
トータルでほんの2分にも満たない鬼ごっこ。
普段ならどうということはないものだが、命をかける戦場では恐ろしく長い時間にも感じられた。
そして刻限――ハンターらの身体を覆う「勇気」が消失する。
それを見計らったかのようにダンテリオがその歩みを止めた。
薄暗く長い長い廊下の先で、微笑みがくるりと振り返る。
●
「さて……鬼ごっこもこのくらいにしておきましょうか」
ダンテリオは懐から2丁のハンドガンを取り出す。
対峙する者たちの背筋に、嫌な汗が伝った。
「俺が支える。死なせるようなことはしない」
はっきりとロニが告げる。
それが不穏な空気を払い、今度は心に勇気を与えた。
ハナが「正義」の光を放つ。
廊下一帯を包み込んだ輝きは、人ならざる存在――ダンテリオだけを焼き払う。
その熱は敵の鋼のような身体を蝕み、叩く前の金属のようにもろく融解させた。
ボルディアと一夏が一直線の道筋を駆けた。
敵の銃弾が頬を掠めるのを厭わずに一気に距離を詰めると、先に炎の鎖が敵の身体を縛り付けた。
「ご安心ください。もう逃げるようなことは――」
言葉を言い切る前に、彼女の脚甲がダンテリオの横っ面を捉えた。
振り上げた斧を囮にした不意の一手。
彼女はそのまま空中で身を捩ると、鼻っ柱にもう一撃叩きつける。
「それ以上、何もしゃべるな」
「……これは手厳しい」
脚甲がめり込んだその下で、口元はいまだ笑顔の形に歪む。
追撃の一夏の拳がダンテリオのボディに突き刺さった。
「正義」に焼かれたその身は、これまでと比べ物にならないほど柔らかく、そして脆かった。
ダンテリオの身体が沈む。
彼は身を屈めた状態で銃口を一夏へ突き付けるとすかさず引き金を引いた。
左胸を狙った一撃。
一夏は無理矢理な体勢で身体を捻って急所への一撃を回避する。
「それでよろしいのですよ」
しりもちをついた一夏の頭上を越えて、2丁目の銃弾が放たれる。
ロニがそれを盾で受け止め、フルリカバリーを一夏へ飛ばす。
「私も前に出ますよぅ!」
守護者スキルのほとんどを使いつくしたハナが、符刀を抜き放って前線へと駆けた。
専門職でない以上はただ斬ることしかできないが、敵の標的を散らすことくらいはできるはずだと。
炎の鎖に封じられていても、銃器を扱うダンテリオにはさほど問題はない。
彼は縛りを解くようなこともせず、手に変え品を変え、ハンター達へ引き金を引き続ける。
足元にはやがておびただしいほどの重火器が転がっていた。
「うらぁ!」
ボルディアの斧を、ダンテリオはアサルトライフルの腹で受け止める。
力任せに押し返されて銃口が向くと、彼女はすぐに射線から離れる。
入れ替わりにハナの刃が閃き、タイミングを合わせるように一夏の拳も敵を貫いた。
ダンテリオもかなりの回数の攻撃を受け止めている。
鋼鉄の身体のあちこちに細かい亀裂やへこみが目立つ。
それでも倒れない。
ロニの回復術が戦場を駆ける。
それでなんとか、こちらもタフに持ちこたえていた。
「支えるというのは口だけでないようですね、素晴らしい」
そしてダンテリオも彼がチームの要となっていることを理解していた。
いつしか銃弾は集中し、時に防戦を余儀なくされる。
ボルディアが盾になるように立ち回っても、1人の力では限度があった。
「俺に構うな! 我々の目的は何だ!?」
ロニが喝を入れるが、かといって意図的な集中砲火を受ける彼を放っておくわけにもいかない。
やがてダンテリオは、燕尾服の合わせからずるりと大柄のロケットランチャーを引き出した。
「これは数に限りがあるもので――チェック、とまいりましょう」
放たれた弾頭が爆音と共に花開く。
炎と煙が晴れた先には、膝をついて動かなくなったロニの姿があった。
「うおおぉぉぉぉぉ!!!」
ボルディアが吠えながら力任せに近場の壁を破壊した。
すぐ外界に繋がっていたのか、外から差し込んだ光が薄暗い廊下をまばゆく照らす。
「これ以上は無理だ、退くぞ!」
「でも……」
「俺もまだ戦える! だがロニが倒れた! 要のお前のスキルも尽きた! 誰かを失う覚悟で泥仕合を続けるか……?」
ボルディアの言葉に、何かを言いかけたハナは口を噤む。
悔しい――だが、勝つためのビジョンも浮かばない。
「……帰るぞ」
ボルディアがロニを抱えて壁の穴から脱出する。
「ダンテリオ! 私は……絶対にあきらめませんから!」
一夏がそれに続き、ハナもしぶしぶ屋敷を脱出した。
去り際に見たダンテリオは、追う様子もなく、銃口を下げて愉しそうにその様子を眺めている。
それがまた無性に腹立たしかった。
ダンテリオも相応のダメージは追っているはずだが、まだ撤退を選ぶほどの意識を感じられなかった。
さらにダメージを重ねれば逃げ帰る可能性は高いだろう。
そのためには、ロニを見捨てて全員で攻勢に出る必要がある。
だが、確実でない可能性のために仲間の命を捨てることは3人にはできなかった。
もしくはダンテリオが屋敷に滞在する理由を奪ってしまえば――また事態は変わっていたかもしれない。
帰り道の空に叫び声が響いた。
屋敷に響いた声の主――ダンテリオへハンター達はかすかな怒りを滲ませていた。
真っ先にそれを爆発させたボルディア・コンフラムス(ka0796)が、巨大な魔斧を抜き放って堂々啖呵を切る。
「寝言は寝て言えボケ。話は終わりだ!」
「そうです、ゲームなんてお断りです! ボコボコになって帰ってもらいます!」
触発された百鬼 一夏(ka7308)も声を張る。
ただ、僅かに走る緊張が小さな身体を震わせた。
「選択肢をくれるっていうならぁ、私達もあんたに選択肢をあげますぅ……今滅びるか、逃げて次に会った時滅びるか、選びなさいぃ!」
星野 ハナ(ka5852)の恫喝が最後の一押し。
声は、深いため息を伴って答えた。
『そうですか、残念ですね。それでは、殺し合うことにいたしましょうか』
殺し合い――そのひと言にハンター達は心の中のゆとりを完全に捨て去った。
ロニ・カルディス(ka0551)が盾を構えて周囲を警戒する。
「気を付けろ、どこから来るか分からないぞ!」
「上等!」
4人で背中合わせに4方を向いて、敵の襲撃に備えた。
ハナはその間に大精霊とのリンクを確認し、星のマテリアルを解放する。
――超覚醒。
この人数だ。
持てる力は全て使う。
コツリと、廊下から足音が響いた。
ハンター達はすぐに気を張るが、今度はカタリと隣の部屋から物音が聞こえる。
コツン――と天井から。
ガタン――とこの部屋の壁から。
その度に否応なしに意識を振り回される。
どこから迫るか分からない敵に、緊張だけが募っていく。
やがて、1発の銃声が屋敷に響いた。
鈍い金属音が響き、ボルディアの盾から火花が散る。
咄嗟に反応した彼女は、銃声の方向を振り返った。
「ようこそ。再びこの屋敷へ」
天井の隅に張り付いたダンテリオが、いつもの張り付いた笑顔で目を細める。
ボルディアは返事もなしに飛び掛かる。
振り上げられる斧。
ダンテリオは軌跡を予測して身を翻したが、ボルディアから放たれた炎の鎖がその身を縛る。
右、正面と、振われた斧を敵は腕で受け止めた。
「相変わらず堅いじゃねぇか」
「痛くないわけではないのですよ? ああ……痛覚はございませんので、気分的な問題ですが」
「そのうさんクセェ顔が気に食わねえんだよ!」
ダンテリオはニマニマと笑みを浮かべながら床の上へと着地する。
その瞬間、まばゆい光が部屋の中で弾けた。
一夏が放った目くらましだ。
僅かにできた隙で、ハンター達は隊列を組みなおす。
前衛のすぐ後方にロニが控え、その後方にハナが下がる。
位置取りを確保したハナは、「勇気」の理をその身を通して解放した。
星のマテリアルが、4人の身体を包み込む。
連射音が響いて、ロニが銃弾を盾で受け止めた。
障壁を通じて響いた衝撃が身に染みるものの、決して耐えられないものではない。
「マテリアル感知はあまり得意ではないのですが……陛下のことを考えれば、もう少し身に着けた方がよさそうですね」
ダンテリオは構えていたアサルトライフルを投げ捨て、左手で懐をまさぐる。
だが敵が新たな武器を抜き放つより先に、ボルディアが天井を蹴った。
猛獣が噛みつくかのような斧の連撃。
ダンテリオは1撃目こそギリギリのタイミングで躱したものの、2撃目は腕を交差して受け止める。
すかさず、一夏が追撃の拳を放つ。
「潜んだまま私たちの前に出て来なければよかったのに! “姿を現した”というリスクを、あなたには負ってもらいます!」
左の拳を引くのと同時に、右の拳で放つ白虎神拳。
だがダンテリオは避けるそぶりもなく、左の手のひらでそれをガッチリと受け止めた。
「リスクとは天秤に掛けるものです。ここで敵対した方が良いと、私は判断したにすぎませんよ」
彼の左手が負のマテリアルを帯びる――が、何かが起ころうとしたその瞬間、バチリと鋭い音と共に手が弾かれる。
一夏を覆う「勇気」のマテリアルが、拒絶反応を引き起こしていた。
「おや……なるほど、これが守護者の力というわけですか」
ダンテリオは驚いたような感心したような、曖昧な表情で目を見張る。
それから右の手で炎の鎖を引きちぎると、軽い跳躍で大きく距離を取った。
「分の悪い正面対決は行わない主義でありますがゆえ……ここは知恵を絞らせていただきましょう」
そのままくるりと踵を返して彼は廊下へと駆け出していく。
わずかに呆気にとられたハンター達は、すぐにその後を追った。
●
「人を愉しんで殺したラルヴァの眷属がぁ、悠々補給して十三魔の元に戻るのを見逃すぅ? ハンター舐めんなですぅ!」
廊下の先を駆ける敵の背中に、ハナが「正義」の波動を解き放つ。
強烈な光にさらされたダンテリオは、身を焼かれながらも歩みを止めようとはしない。
ロニが足止めを狙って闇の刃を乱れ撃ったが、敵ははらりと身をよじって回避した。
「鬼になるつもりが、追われる側になってじゃねぇか。なぁ?」
ぎりぎり魔斧の間合いで追い縋ったボルディアは、破損した床を無視して壁から壁へと飛び移るようにダンテリオの背後へと迫る。
放った炎の鎖が敵の足を絡めとる。
動きが止まったその背中へと振われる斧。
右、左と切り返し振られた刃を、ダンテリオは左右の腕で交互に受け止める。
先の出現の時に破損した方の腕だろうか。
右腕に突き立った一撃は、他の部位を穿った時よりもいく分手ごたえを感じる。
「怪我が治っていないっていうのは本当みたいだな?」
「修復はそう頻繁に行えるものではないのですよ」
嘘か真か、ダンテリオはカラカラと笑って拳による突きを繰り出した。
ボルディアの脳裏に先ほどの一夏の件がフラッシュバックして、大きくバックステップでそれをかわす。
遅れて追いついた一夏も白虎神拳の鋭い突きを放つ。
ダンテリオは今度は身を反らしてそれを回避すると、ハンドガンの引き金を引いた。
至近距離で放たれた銃弾が、ホーリーヴェールを突き破って一夏の肩を貫く。
「うう……っ!」
苦痛に表情を歪ませる一夏。
すかさずロニの回復術が彼女の傷を癒す。
「どうせ逃げるのなら、屋敷から出て行ってもらえれば我々も鬼の役などせずに済むのだがな」
彼の指摘に、ダンテリオはとぼけたように肩をすくめた。
「こちらもそうはいかないものでして……お察しくださいませんか?」
ダンテリオは足を縛る鎖を力任せに解いて、また鬼ごっこへと身をやつした。
「鳥かごなんざに人間が入るわけねぇんだ。何かしらの手を隠し持ってるのは間違いねぇ」
見失わないよう追い縋りながら、ボルディアが深く息を吐く。
ハナのスキルは虎の子で最後の要だ。
回数も限られている以上、最低限の自衛は迫られる。
一夏が同意するように深く頷いた。
「触られるのは嫌な気がします。ゲームに『鬼ごっこ』を選んだのにも意味があるんじゃないかって思うんです」
相手は嫉妬だ。
なんとなく鬼ごっこを選んだ――なんていうことは、考えられない。
きっとそのルールの裏には、ダンテリオによって有利な何かがあるに違いない。
「趣味で命を弄ぶのって虫唾が走んですよねぇ……」
最後列をついていくハナは、「信仰」の理を解放し、ファーストコンタクトで受けた仲間の傷を軒並み癒していく。
「それに、どう見てもこれ時間稼ぎですよねぇ。そういうとこも、ほんとにほんとに、ムカっときちゃいますよぅ」
言葉とは裏腹に、その心中はなんとも穏やかではない。
絶対に痛い目を見て貰う。
ブッコロリスト上位に名を連ねる相手に容赦なんて必要はない――と。
だがつかず離れずの鬼ごっこを続ける中で、4人に掛かっていた「勇気」の効力が切れる。
ハナは星に意識を働きかけ、再び理を引き出した。
追っていたダンテリオの背中が傍らの扉の中へと消えていく。
先頭のボルディアが絞められた扉を蹴破って、内部へと突入した。
「どこだ……!?」
部屋を見渡すが、ダンテリオの姿がない。
代わりに床のど真ん中に、前の戦いで開いたらしい大きな穴が開いていた。
「下か――」
気づいたのと同時に、4人の足元からおびただしい数の銃弾が飛び出す。
ハンター達は盾を構えながら部屋を駆け回り、追い回す銃撃から逃げ惑う。
よけきれない弾はロニの障壁やハナの符術が勢いを削ぎ、少しでも威力を弱めた。
ハチの巣になった床板から見える下階に、ガトリング砲を放り捨てるダンテリオの姿が見えた。
「ほんと、イライラしますよぅ……!」
穴を飛び降りながら、ハナの「信仰」が再び皆の傷を癒す。
ダンテリオの攻撃には確かな殺意は感じるものの、刺しきられるほどの勢いは感じられない。
傷は癒すことができるので劣勢という意識はないが、決して優勢とも感じられない。
結局は遊ばれているのではないか……?
募るのは漠然とした憤りと焦燥感だけだ。
「落ち着こう。感情を逆なでして勝機をうかがうことこそ嫉妬の常套戦術だろう」
「分かってはいるんですけど……1発キツイのお見舞いしなきゃ発散できそうにありません!」
諫めるように説くロニに、一夏がふんすと鼻息を鳴らしながら答える。
だからと言って突っ走るようなことはしないが、フラストレーションは積もるもの。
トータルでほんの2分にも満たない鬼ごっこ。
普段ならどうということはないものだが、命をかける戦場では恐ろしく長い時間にも感じられた。
そして刻限――ハンターらの身体を覆う「勇気」が消失する。
それを見計らったかのようにダンテリオがその歩みを止めた。
薄暗く長い長い廊下の先で、微笑みがくるりと振り返る。
●
「さて……鬼ごっこもこのくらいにしておきましょうか」
ダンテリオは懐から2丁のハンドガンを取り出す。
対峙する者たちの背筋に、嫌な汗が伝った。
「俺が支える。死なせるようなことはしない」
はっきりとロニが告げる。
それが不穏な空気を払い、今度は心に勇気を与えた。
ハナが「正義」の光を放つ。
廊下一帯を包み込んだ輝きは、人ならざる存在――ダンテリオだけを焼き払う。
その熱は敵の鋼のような身体を蝕み、叩く前の金属のようにもろく融解させた。
ボルディアと一夏が一直線の道筋を駆けた。
敵の銃弾が頬を掠めるのを厭わずに一気に距離を詰めると、先に炎の鎖が敵の身体を縛り付けた。
「ご安心ください。もう逃げるようなことは――」
言葉を言い切る前に、彼女の脚甲がダンテリオの横っ面を捉えた。
振り上げた斧を囮にした不意の一手。
彼女はそのまま空中で身を捩ると、鼻っ柱にもう一撃叩きつける。
「それ以上、何もしゃべるな」
「……これは手厳しい」
脚甲がめり込んだその下で、口元はいまだ笑顔の形に歪む。
追撃の一夏の拳がダンテリオのボディに突き刺さった。
「正義」に焼かれたその身は、これまでと比べ物にならないほど柔らかく、そして脆かった。
ダンテリオの身体が沈む。
彼は身を屈めた状態で銃口を一夏へ突き付けるとすかさず引き金を引いた。
左胸を狙った一撃。
一夏は無理矢理な体勢で身体を捻って急所への一撃を回避する。
「それでよろしいのですよ」
しりもちをついた一夏の頭上を越えて、2丁目の銃弾が放たれる。
ロニがそれを盾で受け止め、フルリカバリーを一夏へ飛ばす。
「私も前に出ますよぅ!」
守護者スキルのほとんどを使いつくしたハナが、符刀を抜き放って前線へと駆けた。
専門職でない以上はただ斬ることしかできないが、敵の標的を散らすことくらいはできるはずだと。
炎の鎖に封じられていても、銃器を扱うダンテリオにはさほど問題はない。
彼は縛りを解くようなこともせず、手に変え品を変え、ハンター達へ引き金を引き続ける。
足元にはやがておびただしいほどの重火器が転がっていた。
「うらぁ!」
ボルディアの斧を、ダンテリオはアサルトライフルの腹で受け止める。
力任せに押し返されて銃口が向くと、彼女はすぐに射線から離れる。
入れ替わりにハナの刃が閃き、タイミングを合わせるように一夏の拳も敵を貫いた。
ダンテリオもかなりの回数の攻撃を受け止めている。
鋼鉄の身体のあちこちに細かい亀裂やへこみが目立つ。
それでも倒れない。
ロニの回復術が戦場を駆ける。
それでなんとか、こちらもタフに持ちこたえていた。
「支えるというのは口だけでないようですね、素晴らしい」
そしてダンテリオも彼がチームの要となっていることを理解していた。
いつしか銃弾は集中し、時に防戦を余儀なくされる。
ボルディアが盾になるように立ち回っても、1人の力では限度があった。
「俺に構うな! 我々の目的は何だ!?」
ロニが喝を入れるが、かといって意図的な集中砲火を受ける彼を放っておくわけにもいかない。
やがてダンテリオは、燕尾服の合わせからずるりと大柄のロケットランチャーを引き出した。
「これは数に限りがあるもので――チェック、とまいりましょう」
放たれた弾頭が爆音と共に花開く。
炎と煙が晴れた先には、膝をついて動かなくなったロニの姿があった。
「うおおぉぉぉぉぉ!!!」
ボルディアが吠えながら力任せに近場の壁を破壊した。
すぐ外界に繋がっていたのか、外から差し込んだ光が薄暗い廊下をまばゆく照らす。
「これ以上は無理だ、退くぞ!」
「でも……」
「俺もまだ戦える! だがロニが倒れた! 要のお前のスキルも尽きた! 誰かを失う覚悟で泥仕合を続けるか……?」
ボルディアの言葉に、何かを言いかけたハナは口を噤む。
悔しい――だが、勝つためのビジョンも浮かばない。
「……帰るぞ」
ボルディアがロニを抱えて壁の穴から脱出する。
「ダンテリオ! 私は……絶対にあきらめませんから!」
一夏がそれに続き、ハナもしぶしぶ屋敷を脱出した。
去り際に見たダンテリオは、追う様子もなく、銃口を下げて愉しそうにその様子を眺めている。
それがまた無性に腹立たしかった。
ダンテリオも相応のダメージは追っているはずだが、まだ撤退を選ぶほどの意識を感じられなかった。
さらにダメージを重ねれば逃げ帰る可能性は高いだろう。
そのためには、ロニを見捨てて全員で攻勢に出る必要がある。
だが、確実でない可能性のために仲間の命を捨てることは3人にはできなかった。
もしくはダンテリオが屋敷に滞在する理由を奪ってしまえば――また事態は変わっていたかもしれない。
帰り道の空に叫び声が響いた。
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