ゲスト
(ka0000)
剔抉への熾火
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2019/07/06 15:00
- 完成日
- 2019/07/13 10:57
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
テトが姿を消してから一週間以上経過していた。
先日要塞都市郊外にてハンターの情報を基にカペラは辺境ドワーフの、ファリフは辺境部族の、シェダルやフォニケは要塞都市の治安の悪い所で情報収集をしていた。
テトの行方については、同行したハンターの占いの結果でシスの拠点と同じ方向ということ。
他にフォニケを所望していたシスについても情報を漁っていたが、それは要塞都市郊外の町と違っていた。
シスは全権は握っていても、現在ほぼ引退状態。
十年くらい前まで前線にて仕事をしていた。
覚醒者であり、術の行使は可能。
数年前から自分の死後、組織をどうしていくか検討しているのだとかで、要塞都市郊外の町の元締めと話がしたいという話があった。
弟であるタイフォンとは十年以上前から水面下で対立。仕事の遂行について揉めているようだった。
情報通であり、リアルブルーからの移転者に興味があること。
シバの愛人かどうかは噂の域を出てなく、真偽は不明。
「最後、いらなくない?」
真顔で声に出すアルフェッカにフォニケは「大事よ!」と意気込む。
「だって赤き大地の戦士の誇りシバ様と恋仲にあったとかどんなラブストーリーがあったか気にならないの!?」
ぐっと両手を握りしめ、力説するフォニケ。
「ならない」
「ならねぇな」
アルフェッカとシェダルが情け容赦なく切って捨てる。
「フォニケさんは恋の話が好きなの?」
「お肉とお酒とお洒落もね」
ファリフがカペラに尋ねると、カペラは心底呆れた顔で肯定した。
「恋の話は美容にもいいのよ!」
くるりとフォニケは上半身だけ振り向く。
「お前だけだろ」
シェダルのツッコミにフォニケは無視。
「ファリフちゃんは好きな人とかいないの?」
キラキラ目を輝かせ、話を脱線するフォニケはファリフの手を取る。
「んー……好きな人でも、お婿さんでも、フェンリルより強い人がいいな」
ピンときていないが、好みだけはしっかり伝えるファリフ。
「ア、ハイ」
桁違いの強さを提示されたフォニケはすごすごと本題に戻した。
「タイフォンの話も聴いてるよ」
先日、手酷い……ではなく、見事な女装をさせられたルックスがフォニケから距離をとりつつ、報告を行う。
シスの報告時の通り、タイフォンとシスは対立。
その理由はタイフォンがタットルと影で手を組んでいるのでは……という話があるそうだ。
本来タットルとは識者の娘であるフォニケの納品を蹴ったことで対立していた。シスもタットルとの関わりを避けるように指示があったという。
要塞都市郊外の町でもタイフォンとタットルは繋がりがあるのでは……と思うところがあったそうだ。
「ねぇ、タットルの残党がタイフォンと手を組むって、あり得る?」
険しい顔をするフォニケにアルフェッカは頷く。
「あり得るね。タイフォンが手勢を集めてたとしたら、欲しいだろうし。それにタットルの残党なら、役人に突き出さないなら与すると思う。隠れる所を与えてくれる所なら猶更だ」
「どこに潜伏してるか……だな」
ふーっと紫煙を吐くシェダルはフォニケの方を向く。
「私なら、隠れるところを見つけた後は資金の工面を考えるわ。奴らが容易に隠れられて、金を工面できる場所は一つしか思いつかない」
淡々と推測を告げるフォニケを見ているファリフは「本当に安定したんだなぁ」という顔をしていた。
タットルがフォニケの故郷を滅ぼし、まだ幼かった彼女を監禁したという事が判明した頃は随分と気落ちしていたり、恐慌状態だったとファリフは記憶していた。
だが、アケルナルが囚われた後はフォニケに笑顔が戻ってきていた。
「ちょっと、それこそ話が脱線してるわ。まずはテトちゃんの行方でしょ?」
とりあえず、様子見の構えだったカペラが話に加わる。
三人はそうなんだけど……という妙な様子。
「カペラさん、テトは無事だから、他の話をしてるんだよ」
機嫌が真っ逆さまに落ちているカペラを宥めたのはファリフだ。
「ええ? だって、全然連絡とかないじゃない。人質になったのか、無事なのかも全然アクションないじゃない!」
「確かにそうだね。ボクはテトに何かあったら行動があると思ってる。タットルだって、部族なき部族の人たちに手を下した。自分達の力を誇示するために、暴力を振るったその亡骸を他の人に見えるようにしていた。恐らく、奴らも同じことをすると思う」
目を剥いて驚くカペラにファリフは説明をする。
「逆に反応がないのって……」
不安げな表情を浮かべるカペラにアルフェッカは「安心していいよ。ハンターもじき来るだろうし」と笑いかけた。
「そもそも、テトちゃんはシスの所に行く予定だった。恐らく、シスの所にいると思うよ」
「何で!? シスが何もしないで保護してるって事?」
珍しく叫ぶカペラに四人は微妙そうな顔をする。
「それは置いといて、シスの事なんだけど、その昔は闇海の魔女……だなんてあだ名をつけられたくらい鼻持ちならない人物らしいんだよ。多分……テトを盾にして、面倒事を押し付けられるんじゃないかなって、ボクは予想してる……」
げんなりとした様子を見せるファリフはどうやら、シスに手痛い目に遭っただろう人物の話でも聞いたのだろう。
「ちょーっと気になる点があるのよ。私、シスに会おうと思って」
あっけらかんと宣言するフォニケにその場の全員が「反対!」と叫んだ。
先日要塞都市郊外にてハンターの情報を基にカペラは辺境ドワーフの、ファリフは辺境部族の、シェダルやフォニケは要塞都市の治安の悪い所で情報収集をしていた。
テトの行方については、同行したハンターの占いの結果でシスの拠点と同じ方向ということ。
他にフォニケを所望していたシスについても情報を漁っていたが、それは要塞都市郊外の町と違っていた。
シスは全権は握っていても、現在ほぼ引退状態。
十年くらい前まで前線にて仕事をしていた。
覚醒者であり、術の行使は可能。
数年前から自分の死後、組織をどうしていくか検討しているのだとかで、要塞都市郊外の町の元締めと話がしたいという話があった。
弟であるタイフォンとは十年以上前から水面下で対立。仕事の遂行について揉めているようだった。
情報通であり、リアルブルーからの移転者に興味があること。
シバの愛人かどうかは噂の域を出てなく、真偽は不明。
「最後、いらなくない?」
真顔で声に出すアルフェッカにフォニケは「大事よ!」と意気込む。
「だって赤き大地の戦士の誇りシバ様と恋仲にあったとかどんなラブストーリーがあったか気にならないの!?」
ぐっと両手を握りしめ、力説するフォニケ。
「ならない」
「ならねぇな」
アルフェッカとシェダルが情け容赦なく切って捨てる。
「フォニケさんは恋の話が好きなの?」
「お肉とお酒とお洒落もね」
ファリフがカペラに尋ねると、カペラは心底呆れた顔で肯定した。
「恋の話は美容にもいいのよ!」
くるりとフォニケは上半身だけ振り向く。
「お前だけだろ」
シェダルのツッコミにフォニケは無視。
「ファリフちゃんは好きな人とかいないの?」
キラキラ目を輝かせ、話を脱線するフォニケはファリフの手を取る。
「んー……好きな人でも、お婿さんでも、フェンリルより強い人がいいな」
ピンときていないが、好みだけはしっかり伝えるファリフ。
「ア、ハイ」
桁違いの強さを提示されたフォニケはすごすごと本題に戻した。
「タイフォンの話も聴いてるよ」
先日、手酷い……ではなく、見事な女装をさせられたルックスがフォニケから距離をとりつつ、報告を行う。
シスの報告時の通り、タイフォンとシスは対立。
その理由はタイフォンがタットルと影で手を組んでいるのでは……という話があるそうだ。
本来タットルとは識者の娘であるフォニケの納品を蹴ったことで対立していた。シスもタットルとの関わりを避けるように指示があったという。
要塞都市郊外の町でもタイフォンとタットルは繋がりがあるのでは……と思うところがあったそうだ。
「ねぇ、タットルの残党がタイフォンと手を組むって、あり得る?」
険しい顔をするフォニケにアルフェッカは頷く。
「あり得るね。タイフォンが手勢を集めてたとしたら、欲しいだろうし。それにタットルの残党なら、役人に突き出さないなら与すると思う。隠れる所を与えてくれる所なら猶更だ」
「どこに潜伏してるか……だな」
ふーっと紫煙を吐くシェダルはフォニケの方を向く。
「私なら、隠れるところを見つけた後は資金の工面を考えるわ。奴らが容易に隠れられて、金を工面できる場所は一つしか思いつかない」
淡々と推測を告げるフォニケを見ているファリフは「本当に安定したんだなぁ」という顔をしていた。
タットルがフォニケの故郷を滅ぼし、まだ幼かった彼女を監禁したという事が判明した頃は随分と気落ちしていたり、恐慌状態だったとファリフは記憶していた。
だが、アケルナルが囚われた後はフォニケに笑顔が戻ってきていた。
「ちょっと、それこそ話が脱線してるわ。まずはテトちゃんの行方でしょ?」
とりあえず、様子見の構えだったカペラが話に加わる。
三人はそうなんだけど……という妙な様子。
「カペラさん、テトは無事だから、他の話をしてるんだよ」
機嫌が真っ逆さまに落ちているカペラを宥めたのはファリフだ。
「ええ? だって、全然連絡とかないじゃない。人質になったのか、無事なのかも全然アクションないじゃない!」
「確かにそうだね。ボクはテトに何かあったら行動があると思ってる。タットルだって、部族なき部族の人たちに手を下した。自分達の力を誇示するために、暴力を振るったその亡骸を他の人に見えるようにしていた。恐らく、奴らも同じことをすると思う」
目を剥いて驚くカペラにファリフは説明をする。
「逆に反応がないのって……」
不安げな表情を浮かべるカペラにアルフェッカは「安心していいよ。ハンターもじき来るだろうし」と笑いかけた。
「そもそも、テトちゃんはシスの所に行く予定だった。恐らく、シスの所にいると思うよ」
「何で!? シスが何もしないで保護してるって事?」
珍しく叫ぶカペラに四人は微妙そうな顔をする。
「それは置いといて、シスの事なんだけど、その昔は闇海の魔女……だなんてあだ名をつけられたくらい鼻持ちならない人物らしいんだよ。多分……テトを盾にして、面倒事を押し付けられるんじゃないかなって、ボクは予想してる……」
げんなりとした様子を見せるファリフはどうやら、シスに手痛い目に遭っただろう人物の話でも聞いたのだろう。
「ちょーっと気になる点があるのよ。私、シスに会おうと思って」
あっけらかんと宣言するフォニケにその場の全員が「反対!」と叫んだ。
リプレイ本文
別れて行動することになり、辺境郊外の町に着いた星野 ハナ(ka5852)と木綿花(ka6927)、レイア・アローネ(ka4082)、ルックスは元締めの店にいた。
「して、前にハンターの嬢ちゃんがタイフォンの手下にやられた件な。保護出来でよかった」
「その後動きは?」
「人を集めている」
本題を促すハナの問いに元締めは端的に答えた。
「どの一派にも属していない日雇い目当ての連中に声をかけている。タットルの残党も見かけているが、人目を避けるように動いている」
奴らが何をしようとしているのか分からず、気味が悪いという様子だ。
「タイフォンの奴、隠れ家をいくつか拵えてやがった」
元締めはハナ達に隠れ家の書付を渡した。
「そこにいるのはタイフォン部下だけなのか?」
書付を覗き見たレイアが尋ねると、元締めの答えは「否」だ。
「タットルの残党もいる。ハルシとその子分らがこの町から出られねぇように邪魔をしているようで、小競り合いをしている」
勿論、タイフォンの手下だと付け加えた。
「閉じ込められているって感じだな」
レイアが柳眉をひそめて呟く。
「この街に入る際も、見張られているようでしたね」
木綿花の言葉にハンター達は心当たりがあったようだ。ピリピリするような緊張感が町の至る所からしている。
「なぁ、元締め。やれることはないか? とはいえ、荒事しかできないが」
レイアが声をかけるが、自分に出来ることを鑑みるものの、出来ることが少なくて声が尻すぼみになってしまう。
「ありがとうよ。いつもこんな状態は抗争が起きる。仲間が巻き込まれたら救出して逃げろ」
念を押す様に言う元締めはハナの方を見やる。
「できないことをやるよりは、やれることをするのですよぅ」
にーっこり笑みを浮かべるハナにレイアと木綿花も同じ意見だった。
少し時間を巻き戻して、ディーナ・フェルミ(ka5843)とエルバッハ・リオン(ka2434)はフォニケとシスの根城を目指していた。
「ところで何でシスに会いに行こうと思ったか聞いても良いかな、フォニケさん」
ちらり、とディーナがフォニケの方へ視線を向けと、ハンカチを取り出したフォニケがディーナの口元のタレを拭う。
「今回のテトちゃんは完全に迷惑をかけてしまった。そこにいるなら、迎えに行ってあげたいって」
「いなかったら、どうなさるおつもりで?」
「シスが私を指名したことが気になったの。当時の自分にどんな価値があるのか、知りたいの」
そんな理由じゃ怒る? というような顔をするフォニケの服の袖をディーナが握りしめる。
「フォニケさん、人質交換しに行くんじゃないかって心配なの」
不安げな表情を見せるディーナにフォニケは微笑む。
「しないわ、約束する。テトちゃんさえ見つかれば、戦闘状態になってでもつれて逃げ出すわ。その時は宜しくね」
フォニケの言葉に二人は了解した。
先に来ていたオウガ(ka2124)が隠れて待っていた。
渓谷の斜面に洞窟のような住居というような建物が見える。隠れるように門番がおり、ディーナはハナより託されたチェトを振りかざす。
シスに会わせろという意図は通じており、門番が入れと促した。
洞窟の中は村とか集落という印象を受けた。集落という認識を持たされる数の人間がいるのはわかる。
時折、子供の声も聞こえる。訓練中だろう覇気のある元気な声。
「シス。連れてきた」
案内の女が建物のドアの前に立ち止まって声を出す。
「入っておくれ」
老婆の声だが、艶めいた低めの声。
ドアを開けると、三人はシスと対面を果たす。
黒い布やレースのドレス姿、スタンンドカラーで首元を覆い、踝まで長いドレスは深くスリットが入っており、裾の広いズボンを穿いていた。
老婆となった今でも妖しい美しさは失われていない。
「遅かったねぇ」
微笑むシスが立ち上がると、ディーナとエルバッハがフォニケを庇うように立つ。
「警戒するのは黒猫だけでいいよ」
呆れた口ぶりのシスはついてくるように促す。足腰も老婆のものとは思えないほどしっかりしていた。
隣の部屋のドアを開けたシスは「迎えが来たよ」と告げる。
「みんにゃ……」
客室のような簡素な部屋にいたのはテト。
「テトちゃん!」
咄嗟に走り出したのはディーナ。テトの頭と足には包帯が巻いてあり、血が滲んでいる。
「ひでぇな……」
「誰にやられましたの?」
シスに警戒しつつ、エルバッハが尋ねた。
「……タイフォンですにゃ……逃げられないように足をやられましたにゃ……」
急ぎで覚醒したディーナはテトにフルリカバリーを発動させる。
「包帯も止血程度……ってとこか……」
顔を顰めるオウガにテトは俯く。
「……得体が知れない奴に貸しを作るのは嫌でしたにゃ。にゃけど、シス以上にタイフォンが危険ですにゃ」
フルリカバリーの効果が出てくると、テトはゆっくりと立ち上がる。ぎゅっとフォニケがテトを抱きしめて謝罪をした。
「あー、テトも油断してたので気にしないでほしいにゃ」
どうやらノープランだった模様で、オウガも呆れてしまう。そもそも、元締めもこんな事態になるとは思ってなかったようなので、怒りの矛先はタイフォンとなるだろう。
現状、テトは物理的にフォニケの手の中。
このままどうするのかの思案はすぐに打ち消された。
「なんだ!?」
驚いて振り向くオウガがドアを開ける。青年が転がり込むように走ってきて、その腕には斬られただろう傷があった。
「シス! 逃げてください! ウズがいます!」
「皆、逃げるんだ! お前達もだ」
シスがハンター達を促して奥へと早歩きで進んでいく。
「ウズはタイフォンの部下の魔術師ですにゃ」
「それって、前にテトちゃんがケンカしてた時に眠らせた奴かなぁ」
テトが補足説明を入れると、ディーナが思い出したように尋ねる。
「そいつですにゃ。その後、テトは町の外に連れ出されたのですが、タイフォンの尾行をしていたシスの部下に助けてもらったのですにゃ」
「どうして助太刀をさせたのですか?」
殿を務めるエルバッハが尋ねると、先を走るシスは「後でだ!」と返す。
目の前に短剣や斧を構えた男たちが飛び出してきた。狙いはテトだ。シスには見向きもせず、テトへ向かってくる。
背後から襲ってきた男がエルバッハの背後から斬りかかった。
「この!」
狭い中で斧を振り回すわけにもいかず、オウガが咄嗟に男を蹴り倒して壁へ吹き飛ばす。
「テトちゃんは渡さないんだから!」
叫んだディーナがセイクリッドフラッシュを発動させた。光の衝撃に男達は目を眩ませる。
セイクリッドフラッシュの光と入れ違いに出入り口の方向から何かが光った。
ディーナが本能で危機を悟り、躱そうとするが腕に矢が射られてしまう。
「あ……ぅ……っ」
すぐさま矢を抜き取ったディーナは肩を落とすが、戦意は消えていない。
「あいつ……! ウズにゃ!」
矢が放たれた方向を向いていたテトが叫ぶ。その方向には黒い外套を羽織った壮年が離れたところにいた。
だが、攻撃は来ない。壮年も不思議がっていたが、すぐに理解したようだ。
「仲間が踏んだ轍をもう一度踏ませるわけにはいきません」
錬金杖を構えるエルバッハがカウンターマジックを発動させていた。もう片方の手には呪符が三枚広げて持っている。
ぱらり、と中空に呪符を広げると、稲妻が魔術師と射手に落ちた。
「どこへ向かうのですか?」
エルバッハの問いに答えたのはテト。
「町へ行きますにゃ!」
急いで犯罪者ばかりが集うあの町へ向かうことになった。
●
元締めとの話を終えたハナ達はそれぞれの行動へと赴く。
再び元締めの店の二階を借りて占術を始める。一階でルックスが守ってくれているので有難い。
気がかりなのは魔術師……というか、誘拐目的なのに何故、人を殺してテトが殺したという虚偽の情報を流したのか。
元締めからシスとタイフォンの仲はタイフォンがシスに嫌悪しているという事を教えて貰った。
シスとしては仲間だからという情はあれど、タットルと関るなという命令に背いているのであれば、かける情けはないという。裏でタットルとタイフォンが繋がっているのはシスも気付いているようだ。
味方でいてくれるならいいが、敵になるなら容赦しない。
いつかは牙を剥かれるとシスは危惧していた。
まずは魔術師の方向を占う。
「これ、シスの根城……ですよねぇ」
テトの行方を占う。
「移動……? 方向が同じ……ここ?」
シスの方向を占うと結果は同じ。
鵜呑みに鑑みると、一緒に移動しているのが濃厚のようだ。
最後にフォニケの行動を見ると、ハナはテーブルに両手をついて息を吐く。占術が正しければ、テトの回収に成功したのだろう。
「何でシスも?」
行ったのはフォニケで、テトもいる。トラブルを抱えてこっちに来るのだろうとハナは判断した。
その憂いを思いっきりぶっ飛ばすのがハンターの仕事。
元締めから隠れ家を教えて貰ったので、ハナは思い切ってタイフォンの所に行こうと扉を開けた。
ハナは軽やかな足取りで階段を降りると、ルックスが剣を抜いていることに気づく。
元締めと会った後、木綿花はハルシの所にいた。店の中にはハルシの一派がいた。
ハルシ達はタイフォンの手によってこの街から出られなくなっている。個人で行動は危険と感じて固まっているという様子。
「必要な情報かは分からんが、聞くか?」
話を切り出したハルシに木綿花は金を出そうとするが、止められた。
「シスの伝言役が殺されていた」
はっと顔を上げる木綿花は隻眼のハルシと目が合う。
本来、元締めに伝えるはずの伝言役はティアランの根城と町の間で殺されていた。
「元締めは伝言してきたのはタイフォンの部下と言ってました」
「これは俺の考えだが、シスと敵対している奴の手下が伝言役を殺してそのまま伝えると俺は思えないんだ。それに、連絡ができないように町を封鎖させている」
連絡も取れないように閉じ込めた後はどうするのか……。
「おやっさん! ドカつく足音が……」
扉近くにいた青年が短く叫ぶ。
レイアは前の依頼でハンターが情報収集している店を訪れていた。前の報告書によれば、金を出せば情報を繰れるという事だとあったから。
店の中はあまり人はいなかった。
「情報収集なら今日はいないぜ」
カウンターの奥に佇む店主がレイアに告げる。
「何故だ」
「タイフォンの奴について行ってる。金払いのいい仕事があるってよ」
この町にいる者は日稼ぎの仕事を探す者も多くいる。
「金払いがいい仕事の殆どが殺し付きの仕事だ」
「集めている人数は」
ざっと二十人と店主が答えた。
スイングドアを思い切り押し開けた男が店へ勢いよく入ってくる。
「おい! タイフォンの奴らが元締めの所に!」
その声を聞いたレイアは大急ぎで走って行くと、魔導スマートフォンに着信が入った。
ハルシの店に足音を立てながら複数の男が殺意を持って入る。
店の中にいるのはカンテレを膝の上に載せた女がひとり。
「おい。店主はどこに逃げた」
「存じません」
あどけない表情の木綿花に男は「探せ!」と声を荒げる。
木綿花がカンテレの弦を強く爪弾くと、合図を受けてカウンターや店の奥からハルシ達が飛び出してきた。
戦闘が開始されようとした時、木綿花は戦いを停止させる為にハッピークリスマスを発動。術者である木綿花を含め、全員が戦闘不能状態となる。
質問を試みようとする木綿花のインカムに着信が入る。
「テトちゃんが……!」
驚いた声を上げる木綿花だが、一瞬だけ安堵に微笑み、現状を手短に伝える。
「元締めも!?」
驚く木綿花の通話の様子を見ていたハルシが目を細める。
「行け、お嬢さん」
抵抗を試みるハルシが仲間の所に行けと木綿花に声をかけた。
向かうのは元締めの店だ。
元締めの店の前に六人の男がいた。
うち、一人が老人であり、チェトの形をした刺青を入れている。
「タイフォンですねぇ」
ゆっくりと階段を降りてきたハナが声をかける。
「あ、あの女!」
「タイフォン、ヤベーよ、あいつは!」
どうやら、タイフォンが連れている手勢の中に町のごろつきもいるようであり、今までこの町で披露したハナの実力を知っている模様。
「最初ぉ、魔術師を探して蜥蜴の尻尾を頂こうとしたんですけどぉ、テトちゃんを攫って人殺しをなすりつけようとした親玉がのこのこ姿見せるだなんて、ラッキーですぅ」
可愛らしい笑顔を見せつつもそのオーラは怒りに満ちている。
相手の言葉なんざ今のハナには必要ない。
鞘から半透明の刀身を抜いたハナは符刀にマテリアルを込める。五色光符陣を発動させ、タイフォン達の行動を阻害した。
タイフォンがゆっくりと元締めの方へと向かっていくと、奴はマテリアルを活性化させて、身体強化を行う。
「霊闘士のスキル……!」
ハナはこのままだと元締めが殺されると思ったと同時に着信が入る。
「時間稼ぐ!」
ルックスがタイフォンと一騎打ちをするように元締めの前に立つ。ハナなら血路を見い出してくれると信じて。
「お前ら逃げろ! 儂の首で済むなら差し出すわ!」
「は! 時間を稼ぐだと! 小僧め!」
吼え狂いしものを習得していないルックスにとって、今のタイフォンは剣撃を受けるのも一苦労。
「満足に歩けぬ老体をどう守る!」
元締めの足は片足しかない。いつも自分の店にしかいないのはその為。
「守ろう、お前を倒して」
そう呟くのは駆けつけたレイアだ。手にしている剣はマテリアルを受けた光の刀身から赤い光が炎のように吹き出していた。
「やってみろ!」
老体から繰り出される一撃は重く、ルックスがサポートに入ってもタイフォンは強かった。それに加え、タイフォンの部下も加勢してきた。
「元締めは何度も俺達に手を貸してくれた。悪い奴だが、命を放っておく気はねぇぜ」
横から入ってきた大斧がタイフォンの部下を吹き飛ばした。
「オウガさん!」
思わぬ援軍にルックスが歓喜の声をあげる。
後ろでは木綿花が機導砲・紅鳴をリボルバーに付与してタイフォンの部下の足を撃ち抜いていた。
「リクエストにお答えしてぇ、算段付けましたよぉ!」
全力ダッシュをして息は荒いが、明るい声でハナが符刀を構える。
「おぉ!?」
元締めが声を上げると消えてしまった。
「うん、上手く行きましたねぇ」
八卦灯篭流しが上手くいってハナは満足する。
「皆様、お気を付けて!」
タイフォンのスキル効果が切れたと判断した木綿花が叫ぶと、ハッピークリスマスを発動した。
「まて……!」
タイフォンが手を伸ばすが、ハンター達は逃げて行ってしまう。
元締めの行先は町の抜け道に隠れていたテト達だった。
「暫くお前の天下ですにゃ。にゃけど、かにゃらず取り戻しますにゃ……」
そう睨みつけたテトはハンターと共に要塞都市へ戻っていく。
「して、前にハンターの嬢ちゃんがタイフォンの手下にやられた件な。保護出来でよかった」
「その後動きは?」
「人を集めている」
本題を促すハナの問いに元締めは端的に答えた。
「どの一派にも属していない日雇い目当ての連中に声をかけている。タットルの残党も見かけているが、人目を避けるように動いている」
奴らが何をしようとしているのか分からず、気味が悪いという様子だ。
「タイフォンの奴、隠れ家をいくつか拵えてやがった」
元締めはハナ達に隠れ家の書付を渡した。
「そこにいるのはタイフォン部下だけなのか?」
書付を覗き見たレイアが尋ねると、元締めの答えは「否」だ。
「タットルの残党もいる。ハルシとその子分らがこの町から出られねぇように邪魔をしているようで、小競り合いをしている」
勿論、タイフォンの手下だと付け加えた。
「閉じ込められているって感じだな」
レイアが柳眉をひそめて呟く。
「この街に入る際も、見張られているようでしたね」
木綿花の言葉にハンター達は心当たりがあったようだ。ピリピリするような緊張感が町の至る所からしている。
「なぁ、元締め。やれることはないか? とはいえ、荒事しかできないが」
レイアが声をかけるが、自分に出来ることを鑑みるものの、出来ることが少なくて声が尻すぼみになってしまう。
「ありがとうよ。いつもこんな状態は抗争が起きる。仲間が巻き込まれたら救出して逃げろ」
念を押す様に言う元締めはハナの方を見やる。
「できないことをやるよりは、やれることをするのですよぅ」
にーっこり笑みを浮かべるハナにレイアと木綿花も同じ意見だった。
少し時間を巻き戻して、ディーナ・フェルミ(ka5843)とエルバッハ・リオン(ka2434)はフォニケとシスの根城を目指していた。
「ところで何でシスに会いに行こうと思ったか聞いても良いかな、フォニケさん」
ちらり、とディーナがフォニケの方へ視線を向けと、ハンカチを取り出したフォニケがディーナの口元のタレを拭う。
「今回のテトちゃんは完全に迷惑をかけてしまった。そこにいるなら、迎えに行ってあげたいって」
「いなかったら、どうなさるおつもりで?」
「シスが私を指名したことが気になったの。当時の自分にどんな価値があるのか、知りたいの」
そんな理由じゃ怒る? というような顔をするフォニケの服の袖をディーナが握りしめる。
「フォニケさん、人質交換しに行くんじゃないかって心配なの」
不安げな表情を見せるディーナにフォニケは微笑む。
「しないわ、約束する。テトちゃんさえ見つかれば、戦闘状態になってでもつれて逃げ出すわ。その時は宜しくね」
フォニケの言葉に二人は了解した。
先に来ていたオウガ(ka2124)が隠れて待っていた。
渓谷の斜面に洞窟のような住居というような建物が見える。隠れるように門番がおり、ディーナはハナより託されたチェトを振りかざす。
シスに会わせろという意図は通じており、門番が入れと促した。
洞窟の中は村とか集落という印象を受けた。集落という認識を持たされる数の人間がいるのはわかる。
時折、子供の声も聞こえる。訓練中だろう覇気のある元気な声。
「シス。連れてきた」
案内の女が建物のドアの前に立ち止まって声を出す。
「入っておくれ」
老婆の声だが、艶めいた低めの声。
ドアを開けると、三人はシスと対面を果たす。
黒い布やレースのドレス姿、スタンンドカラーで首元を覆い、踝まで長いドレスは深くスリットが入っており、裾の広いズボンを穿いていた。
老婆となった今でも妖しい美しさは失われていない。
「遅かったねぇ」
微笑むシスが立ち上がると、ディーナとエルバッハがフォニケを庇うように立つ。
「警戒するのは黒猫だけでいいよ」
呆れた口ぶりのシスはついてくるように促す。足腰も老婆のものとは思えないほどしっかりしていた。
隣の部屋のドアを開けたシスは「迎えが来たよ」と告げる。
「みんにゃ……」
客室のような簡素な部屋にいたのはテト。
「テトちゃん!」
咄嗟に走り出したのはディーナ。テトの頭と足には包帯が巻いてあり、血が滲んでいる。
「ひでぇな……」
「誰にやられましたの?」
シスに警戒しつつ、エルバッハが尋ねた。
「……タイフォンですにゃ……逃げられないように足をやられましたにゃ……」
急ぎで覚醒したディーナはテトにフルリカバリーを発動させる。
「包帯も止血程度……ってとこか……」
顔を顰めるオウガにテトは俯く。
「……得体が知れない奴に貸しを作るのは嫌でしたにゃ。にゃけど、シス以上にタイフォンが危険ですにゃ」
フルリカバリーの効果が出てくると、テトはゆっくりと立ち上がる。ぎゅっとフォニケがテトを抱きしめて謝罪をした。
「あー、テトも油断してたので気にしないでほしいにゃ」
どうやらノープランだった模様で、オウガも呆れてしまう。そもそも、元締めもこんな事態になるとは思ってなかったようなので、怒りの矛先はタイフォンとなるだろう。
現状、テトは物理的にフォニケの手の中。
このままどうするのかの思案はすぐに打ち消された。
「なんだ!?」
驚いて振り向くオウガがドアを開ける。青年が転がり込むように走ってきて、その腕には斬られただろう傷があった。
「シス! 逃げてください! ウズがいます!」
「皆、逃げるんだ! お前達もだ」
シスがハンター達を促して奥へと早歩きで進んでいく。
「ウズはタイフォンの部下の魔術師ですにゃ」
「それって、前にテトちゃんがケンカしてた時に眠らせた奴かなぁ」
テトが補足説明を入れると、ディーナが思い出したように尋ねる。
「そいつですにゃ。その後、テトは町の外に連れ出されたのですが、タイフォンの尾行をしていたシスの部下に助けてもらったのですにゃ」
「どうして助太刀をさせたのですか?」
殿を務めるエルバッハが尋ねると、先を走るシスは「後でだ!」と返す。
目の前に短剣や斧を構えた男たちが飛び出してきた。狙いはテトだ。シスには見向きもせず、テトへ向かってくる。
背後から襲ってきた男がエルバッハの背後から斬りかかった。
「この!」
狭い中で斧を振り回すわけにもいかず、オウガが咄嗟に男を蹴り倒して壁へ吹き飛ばす。
「テトちゃんは渡さないんだから!」
叫んだディーナがセイクリッドフラッシュを発動させた。光の衝撃に男達は目を眩ませる。
セイクリッドフラッシュの光と入れ違いに出入り口の方向から何かが光った。
ディーナが本能で危機を悟り、躱そうとするが腕に矢が射られてしまう。
「あ……ぅ……っ」
すぐさま矢を抜き取ったディーナは肩を落とすが、戦意は消えていない。
「あいつ……! ウズにゃ!」
矢が放たれた方向を向いていたテトが叫ぶ。その方向には黒い外套を羽織った壮年が離れたところにいた。
だが、攻撃は来ない。壮年も不思議がっていたが、すぐに理解したようだ。
「仲間が踏んだ轍をもう一度踏ませるわけにはいきません」
錬金杖を構えるエルバッハがカウンターマジックを発動させていた。もう片方の手には呪符が三枚広げて持っている。
ぱらり、と中空に呪符を広げると、稲妻が魔術師と射手に落ちた。
「どこへ向かうのですか?」
エルバッハの問いに答えたのはテト。
「町へ行きますにゃ!」
急いで犯罪者ばかりが集うあの町へ向かうことになった。
●
元締めとの話を終えたハナ達はそれぞれの行動へと赴く。
再び元締めの店の二階を借りて占術を始める。一階でルックスが守ってくれているので有難い。
気がかりなのは魔術師……というか、誘拐目的なのに何故、人を殺してテトが殺したという虚偽の情報を流したのか。
元締めからシスとタイフォンの仲はタイフォンがシスに嫌悪しているという事を教えて貰った。
シスとしては仲間だからという情はあれど、タットルと関るなという命令に背いているのであれば、かける情けはないという。裏でタットルとタイフォンが繋がっているのはシスも気付いているようだ。
味方でいてくれるならいいが、敵になるなら容赦しない。
いつかは牙を剥かれるとシスは危惧していた。
まずは魔術師の方向を占う。
「これ、シスの根城……ですよねぇ」
テトの行方を占う。
「移動……? 方向が同じ……ここ?」
シスの方向を占うと結果は同じ。
鵜呑みに鑑みると、一緒に移動しているのが濃厚のようだ。
最後にフォニケの行動を見ると、ハナはテーブルに両手をついて息を吐く。占術が正しければ、テトの回収に成功したのだろう。
「何でシスも?」
行ったのはフォニケで、テトもいる。トラブルを抱えてこっちに来るのだろうとハナは判断した。
その憂いを思いっきりぶっ飛ばすのがハンターの仕事。
元締めから隠れ家を教えて貰ったので、ハナは思い切ってタイフォンの所に行こうと扉を開けた。
ハナは軽やかな足取りで階段を降りると、ルックスが剣を抜いていることに気づく。
元締めと会った後、木綿花はハルシの所にいた。店の中にはハルシの一派がいた。
ハルシ達はタイフォンの手によってこの街から出られなくなっている。個人で行動は危険と感じて固まっているという様子。
「必要な情報かは分からんが、聞くか?」
話を切り出したハルシに木綿花は金を出そうとするが、止められた。
「シスの伝言役が殺されていた」
はっと顔を上げる木綿花は隻眼のハルシと目が合う。
本来、元締めに伝えるはずの伝言役はティアランの根城と町の間で殺されていた。
「元締めは伝言してきたのはタイフォンの部下と言ってました」
「これは俺の考えだが、シスと敵対している奴の手下が伝言役を殺してそのまま伝えると俺は思えないんだ。それに、連絡ができないように町を封鎖させている」
連絡も取れないように閉じ込めた後はどうするのか……。
「おやっさん! ドカつく足音が……」
扉近くにいた青年が短く叫ぶ。
レイアは前の依頼でハンターが情報収集している店を訪れていた。前の報告書によれば、金を出せば情報を繰れるという事だとあったから。
店の中はあまり人はいなかった。
「情報収集なら今日はいないぜ」
カウンターの奥に佇む店主がレイアに告げる。
「何故だ」
「タイフォンの奴について行ってる。金払いのいい仕事があるってよ」
この町にいる者は日稼ぎの仕事を探す者も多くいる。
「金払いがいい仕事の殆どが殺し付きの仕事だ」
「集めている人数は」
ざっと二十人と店主が答えた。
スイングドアを思い切り押し開けた男が店へ勢いよく入ってくる。
「おい! タイフォンの奴らが元締めの所に!」
その声を聞いたレイアは大急ぎで走って行くと、魔導スマートフォンに着信が入った。
ハルシの店に足音を立てながら複数の男が殺意を持って入る。
店の中にいるのはカンテレを膝の上に載せた女がひとり。
「おい。店主はどこに逃げた」
「存じません」
あどけない表情の木綿花に男は「探せ!」と声を荒げる。
木綿花がカンテレの弦を強く爪弾くと、合図を受けてカウンターや店の奥からハルシ達が飛び出してきた。
戦闘が開始されようとした時、木綿花は戦いを停止させる為にハッピークリスマスを発動。術者である木綿花を含め、全員が戦闘不能状態となる。
質問を試みようとする木綿花のインカムに着信が入る。
「テトちゃんが……!」
驚いた声を上げる木綿花だが、一瞬だけ安堵に微笑み、現状を手短に伝える。
「元締めも!?」
驚く木綿花の通話の様子を見ていたハルシが目を細める。
「行け、お嬢さん」
抵抗を試みるハルシが仲間の所に行けと木綿花に声をかけた。
向かうのは元締めの店だ。
元締めの店の前に六人の男がいた。
うち、一人が老人であり、チェトの形をした刺青を入れている。
「タイフォンですねぇ」
ゆっくりと階段を降りてきたハナが声をかける。
「あ、あの女!」
「タイフォン、ヤベーよ、あいつは!」
どうやら、タイフォンが連れている手勢の中に町のごろつきもいるようであり、今までこの町で披露したハナの実力を知っている模様。
「最初ぉ、魔術師を探して蜥蜴の尻尾を頂こうとしたんですけどぉ、テトちゃんを攫って人殺しをなすりつけようとした親玉がのこのこ姿見せるだなんて、ラッキーですぅ」
可愛らしい笑顔を見せつつもそのオーラは怒りに満ちている。
相手の言葉なんざ今のハナには必要ない。
鞘から半透明の刀身を抜いたハナは符刀にマテリアルを込める。五色光符陣を発動させ、タイフォン達の行動を阻害した。
タイフォンがゆっくりと元締めの方へと向かっていくと、奴はマテリアルを活性化させて、身体強化を行う。
「霊闘士のスキル……!」
ハナはこのままだと元締めが殺されると思ったと同時に着信が入る。
「時間稼ぐ!」
ルックスがタイフォンと一騎打ちをするように元締めの前に立つ。ハナなら血路を見い出してくれると信じて。
「お前ら逃げろ! 儂の首で済むなら差し出すわ!」
「は! 時間を稼ぐだと! 小僧め!」
吼え狂いしものを習得していないルックスにとって、今のタイフォンは剣撃を受けるのも一苦労。
「満足に歩けぬ老体をどう守る!」
元締めの足は片足しかない。いつも自分の店にしかいないのはその為。
「守ろう、お前を倒して」
そう呟くのは駆けつけたレイアだ。手にしている剣はマテリアルを受けた光の刀身から赤い光が炎のように吹き出していた。
「やってみろ!」
老体から繰り出される一撃は重く、ルックスがサポートに入ってもタイフォンは強かった。それに加え、タイフォンの部下も加勢してきた。
「元締めは何度も俺達に手を貸してくれた。悪い奴だが、命を放っておく気はねぇぜ」
横から入ってきた大斧がタイフォンの部下を吹き飛ばした。
「オウガさん!」
思わぬ援軍にルックスが歓喜の声をあげる。
後ろでは木綿花が機導砲・紅鳴をリボルバーに付与してタイフォンの部下の足を撃ち抜いていた。
「リクエストにお答えしてぇ、算段付けましたよぉ!」
全力ダッシュをして息は荒いが、明るい声でハナが符刀を構える。
「おぉ!?」
元締めが声を上げると消えてしまった。
「うん、上手く行きましたねぇ」
八卦灯篭流しが上手くいってハナは満足する。
「皆様、お気を付けて!」
タイフォンのスキル効果が切れたと判断した木綿花が叫ぶと、ハッピークリスマスを発動した。
「まて……!」
タイフォンが手を伸ばすが、ハンター達は逃げて行ってしまう。
元締めの行先は町の抜け道に隠れていたテト達だった。
「暫くお前の天下ですにゃ。にゃけど、かにゃらず取り戻しますにゃ……」
そう睨みつけたテトはハンターと共に要塞都市へ戻っていく。
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相談卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2019/07/05 08:26:38 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2019/07/05 08:18:48 |